JP5031863B2 - 流体軸受装置 - Google Patents

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Description

本発明は、流体軸受装置に関する。
流体軸受装置は、軸受隙間に生じる流体の潤滑膜で回転体を支持するものである。この種の軸受装置は、高速回転時における回転精度、静粛性等に優れており、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的にはHDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等におけるスピンドルモータ用の軸受装置として、あるいはレーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイールモータ、ファンモータなどのモータ用軸受装置として好適に使用される。
流体軸受装置は、通常、ハウジングや軸受スリーブ、軸部材などの部品で構成され、情報機器の益々の高性能化に伴って必要とされる高い回転性能を確保すべく、各部品の寸法精度や組立て精度を高める努力がなされている。その一方で、情報機器の低価格化の傾向に伴い、この種の流体軸受装置に対するコスト低減の要求も益々厳しくなっている。これらの要求を受けて、最近では、流体軸受装置の構成部品であるハウジングやシール部材などを樹脂材料で成形することが検討されている(例えば、特許文献1や特許文献2を参照)。
一方で、この種の流体軸受装置を、HDD等の磁気ディスク装置用のスピンドルモータに組込んで使用する場合、流体軸受装置のモータへの組付けは、通常ハウジングの外周面をモータブラケットの内周面に接着剤で接着固定することにより行われる。しかしながら、ハウジングを接着性に乏しい材料、例えば樹脂材料で形成する場合、磁気ディスク装置を内蔵した情報機器の落下に伴う衝撃により接着面が剥離し、軸受装置、ひいては磁気ディスク装置の機能低下を招く恐れがある。
構成部品間の接着力向上を図るための手段としては、従来、ショットブラスト等で成形品表面を機械的に粗面化する方法や、接着面に金属イオンを含むプライマーを塗布する等の方法が提案されているが、これらの方法では十分な接着力を得難いのが実情であった。
例えば、特開2005−344793号公報(特許文献3)には、樹脂製ハウジングの内周面に紫外線を照射した後、当該照射領域に接着剤を塗布することで、軸受となる円筒状スリーブの外周面と、樹脂製ハウジングの内周面とを接着固定する方法が提案されている。この方法によれば、紫外線を照射した面が活性化され、反応性が高まる。そのため、接着剤との親和性が向上し、従来に比べて高い接着強度を得ることができる。
特開2003−314534号公報 特開2005−265119号公報 特開2005−344793号公報
しかしながら、本来、低コスト化を狙って構成部品の樹脂化を図るべきところ、接着力不足から別途紫外線照射による表面改質工程を追加したのでは、その分のコスト増を招き、当初目的を没却させる結果となりかねない。また、上述の手段を用いる場合、製造ライン中で、特定の箇所が紫外線の照射により改質されたか否かを目視で確認することは困難
であり、これにより品質管理が不十分となる恐れがある。別途表面状態を化学的な検査手法等で評価することで管理できる可能性もあるが、その分工程の増加につながり、検査のための設備投資はさらなる高コスト化を招く。
以上の事情に鑑み、本発明では、特段の表面処理を施すことなく、流体軸受装置を構成する樹脂部の接着性改善を低コストに図ることを技術的課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、固定体と回転体との間の軸受隙間に形成される流体膜を介して回転体を支持するもので、固定体または回転体の少なくとも一部を構成し、接着剤を介して他部材に固定される樹脂部を備えたものにおいて、樹脂部を、液晶ポリマー(LCP)をベース樹脂とし、かつ1分子当りに2以上のエポキシ基を有するエポキシ指数0.5meq/g以上のエポキシ化合物を、樹脂組成物中のエポキシ基量が8meq/100g以上となるようベース樹脂に配合してなる樹脂組成物で形成すると共に、接着剤として、エポキシ基を含有し、かつ接着剤中のエポキシ基量が8meq/100g以上となるものを使用したことを特徴とする流体軸受装置を提供する。なお、ここでいう他部材は、樹脂部と共に固定体あるいは回転体を構成するものだけでなく、流体軸受装置の構成部品以外の部材、例えば流体軸受装置を組み込んで使用するモータなどのベース、ブラケット等を含む。
本発明は、樹脂部を形成する樹脂組成物に、エポキシ基を含有する化合物(エポキシ化合物)を配合すると共に、接着剤にもエポキシ基を有するものを使用することが接着性の改善に有効である、との本発明者の知見に基づき創作されたものである。加えて、本発明は、以下の知見に基づき、樹脂組成物に配合すべきエポキシ化合物の種類、およびその配合量を規定することにより、樹脂部の大幅な接着力向上を可能としたものである。
すなわち、本発明は、液晶ポリマー(LCP)をベース樹脂とする樹脂組成物に、エポキシ基を含有させたものを用いると共に、樹脂成形品と他部材との接着固定にエポキシ基を含有する接着剤を用いることで、両者間に形成されるエポキシ結合を接着性の改善に寄与させることを狙ったものである。加えて、樹脂組成物中のエポキシ基量(エポキシ官能基の密度)を8meq/100g以上となるように上記エポキシ化合物を配合してなる樹脂組成物を用いることで、上述のエポキシ結合を接着強度の向上に実質的に寄与するレベルにまで引き上げることを可能にした。これにより、かかる樹脂組成物で形成される樹脂成形品と接着剤との親和性(接着性)を高めることができ、接着相手材となる他部材(モータブラケットなど)との接着強度を向上させることができる。併せて、本発明では、樹脂組成物に配合する上記エポキシ化合物として、エポキシ指数が0.5meq/g以上のものを選定した。これは、樹脂部が流体軸受装置の構成部品であることから、比較的小サイズに成形した場合の成形精度を考慮してなされたものである。かかる構成によれば、樹脂組成物中のベース樹脂に対するエポキシ化合物の配合割合を抑えることができる。
従って、以上の組成を有する樹脂組成物、および接着剤を組み合わせて用いることで、樹脂組成物の成形時における流動性(成形性)を良好に維持して接着面等の成形精度を確保することができ、他部材との接着力を大幅に高めることができる。かつ、この接着力向上を、特段の表面処理を行うことなく低コストに達成することができる。
さらなる接着力の向上を図るのであれば、接着剤中のエポキシ基量が8meq/100g以上であるものを用いるのが好ましい。樹脂組成物(ベース樹脂)に配合するエポキシ化合物の量と、接着剤中のエポキシ基量とを共に上記の範囲に設定したものを使用することで、より一層の高い接着性改善効果を得ることが可能となる。
樹脂組成物中のエポキシ基量は、20meq/100g以下であることが好ましい。樹脂組成物中のエポキシ基量を上記範囲内に抑えることにより、例えば射出成形中に発生す
るガスの量を抑えて、成形型中に多量のガスが残存することに起因する成形品の寸法不良や外観不良などの不具合を解消することができる。
樹脂組成物中におけるエポキシ化合物の配合割合は、20vol%以下であることが好ましい。エポキシ化合物の配合割合を上記範囲内に抑えることにより、ベース樹脂が本来有する優れた物理的、化学的特性、あるいは良好な成形性(高い流動性)を十分に発現することができる。特に、流体軸受装置を構成する樹脂部であれば、耐油性や耐摩耗性に優れた材料をベース樹脂にする場合も考えられるが、その場合であっても、エポキシ化合物の配合割合を上記範囲内に抑えることにより、ベース樹脂が有する優れた特性を低減させることなくハウジングに付与することが可能となる。
このように、流体軸受装置の構成部品には、その用途に合わせて、種々の物理的、化学的特性が要求され、これらの要求に応じ得る樹脂材料が選択、使用されるが、この際、選定した樹脂材料が、必ずしも紫外線に対して耐性を有するものとは限らない。樹脂材料によっては、紫外線の照射により分解を生じる可能性もあり、常に紫外線照射による表面改質処理が実施できるわけではない。これに対して、本発明に係る流体軸受装置であれば、紫外線の照射処理を行うことなく接着力の向上が可能であるため、成形品に要求される特性のみ有する樹脂材料であれば問題なく使用することができる。
上記エポキシ化合物として、例えばポリオレフィンを主鎖とし、グリシジルメタクリレート(GMA)を側鎖としてグラフトさせたもの、あるいはビスフェノールA型(BPA)エポキシ化合物が好ましく使用可能である。特に、これら例示のエポキシ化合物は、何れも1分子当りに2以上のエポキシ基を有するものであり、接着性の向上に大きく寄与する。
上記構成の樹脂部は、流体軸受装置の構成要素である固定体または回転体の、少なくとも一部を構成するものに適用可能であるが、特に接着固定される他部材との間に高い接着強度を必要とするハウジングに適している。すなわち、固定体の外側を構成するハウジングを上述の樹脂部とすることで、例えば互いに接着固定されるモータブラケットとの間で高い接着強度を得ることができる。
上記構成の流体軸受装置は、例えば流体軸受装置と、ハウジングを接着固定することで流体軸受装置を内側に保持する他部材と、固定体と回転体何れかの側にそれぞれ配設され、相互間で励磁力を生じるコイルおよびマグネットとを備えたモータとして好適に提供可能である。
以上のように、本発明によれば、特段の表面処理を施すことなく、流体軸受装置を構成する樹脂部の接着性改善を低コストに図ることができる。
本発明の第1実施形態に係る流体軸受装置を組込んだスピンドルモータの断面図である。 第1実施形態に係る流体軸受装置の断面図である。 軸受スリーブの断面図である。 ハウジングの上端面図である。 本発明の第2実施形態に係る流体軸受装置の断面図である。 本発明の第3実施形態に係る流体軸受装置の断面図である。 本発明の第4実施形態に係る流体軸受装置の断面図である。 実施例に係る材料組成およびその試験結果を示す図である。 比較例に係る材料組成およびその試験結果を示す図である。 比較例に係る材料組成およびその試験結果を示す図である。
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドル
モータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部2を備えた回転体3を回転自在に非接触支持する流体軸受装置(動圧軸受装置)1と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、モータブラケット6とを備えている。ステータコイル4は他部材としてのモータブラケット6の外径側に取付けられ、ロータマグネット5は回転体3の外周に取付けられている。流体軸受装置1のハウジング7は、モータブラケット6の内周に固定される。回転体3には、図示は省略するが、磁気ディスク等のディスク状情報記録媒体(以下、単にディスクという。)が一又は複数枚保持される。このように構成されたスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する励磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って、回転体3に保持されたディスクが軸部2と一体に回転する。
図2は、流体軸受装置1の縦断面図を示している。この流体軸受装置1は、ハウジング7と、ハウジング7に固定された軸受スリーブ8と、ハウジング7および軸受スリーブ8に対して相対回転する回転体3とを主に備えている。この場合、流体軸受装置1の固定体は、ハウジング7と軸受スリーブ8、およびハウジング7の一端を閉塞する蓋部材10とで構成される。なお、説明の便宜上、軸方向両端に形成されるハウジング7開口部のうち、蓋部材10で封口される側を下側、封口側と反対の側を上側として以下説明する。
回転体3は、例えばハウジング7の開口側に配置されるハブ部9と、軸受スリーブ8の内周に挿入される軸部2とを有する。
ハブ部9は金属材料あるいは樹脂材料で形成され、ハウジング7の開口側(上側)を覆う円盤部9aと、円盤部9aの外周部から軸方向下方に延びた筒状部9bと、筒状部9bのさらに外周に設けられたディスク搭載面9cおよび鍔部9dとで構成される。図示されていないディスクは、円盤部9aの外周に外嵌され、ディスク搭載面9cに載置される。そして、図示しない適当な保持手段(クランパなど)によってディスクがハブ部9に保持される。
軸部2は、この実施形態ではハブ部9と一体に形成され、その下端に抜止めとしてフランジ部2bを別体に備えている。フランジ部2bは、金属製で、例えばねじ結合等の手段により軸部2に固定される。
軸受スリーブ8は、例えば焼結金属からなる多孔質体で円筒状に形成される。この実施形態では、軸受スリーブ8は、銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成され、その外周面8bをハウジング7の内周面7cに接着することで固定される。ここで、軸受スリーブ8の固定手段は特に限定されず、例示の接着(ルーズ接着や圧入接着を含む)のほか、圧入、溶着など適宜の手段を使用することができる。また、軸受スリーブ8は、樹脂やセラミック等の非金属材料からなる多孔質体で形成することもでき、また焼結金属等の多孔質体以外にも、内部空孔を持たない、あるいは潤滑油の出入りができない程度の大きさの空孔を有する構造の材料で形成することもできる。
軸受スリーブ8の内周面8aの全面又は一部円筒領域には、ラジアル動圧発生部として複数の動圧溝を配列した領域が形成される。この実施形態では、例えば図3に示すように、複数の動圧溝8a1をヘリングボーン形状に配列した領域と、複数の動圧溝8a2を同じくへリングボーン形状に配列した領域とが軸方向に離隔して形成される。上側の動圧溝8a1の形成領域では、動圧溝8a1が、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。
軸受スリーブ8の下端面8cの全面または一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図示は省略するが、複数の動圧溝をスパイラル形状に配列した領域が形成される。この動圧溝形成領域はスラスト軸受面として、フランジ部2bの上端面2b1と対向し、軸部2(回転体3)の回転時には、上端面2b1との間に後述する第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。
ハウジング7は、この実施形態では樹脂部として円筒状に形成される。詳細には、ハウジング7は、その軸方向両端を開口した形状をなし、その他端側を蓋部材10で封口している。一端側の端面(上端面)の全面または一部環状領域には、スラスト軸受面7aが設けられる。この実施形態では、スラスト軸受面7aに、スラスト動圧発生部として、例えば図4に示すように複数の動圧溝7a1をスパイラル形状に配列した領域が形成される。このスラスト軸受面7a(動圧溝7a1形成領域)は、ハブ部9の円盤部9aの下端面9a1と対向し、回転体3の回転時には、下端面9a1との間に後述する第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。
ハウジング7の他端側を封口する蓋部材10は、金属材料あるいは樹脂材料で形成され、ハウジング7の他端内周側に設けられた段部7bに固定される。ここで、固定手段は特に限定されず、例えば接着(ルーズ接着、圧入接着を含む)、圧入、溶着(例えば超音波溶着)、溶接(例えばレーザ溶接)などの手段を、材料の組合わせや要求される組付け強度、密封性などに合わせて適宜選択することができる。
ハウジング7の外周には、上方に向かって漸次拡径するテーパ状のシール面7dが形成される。このテーパ状のシール面7dは、筒状部9bの内周面9b1との間に、ハウジング7の封口側(下方)から開口側(上方)に向けて半径方向寸法が漸次縮小した環状のシール空間S1を形成する。このシール空間S1は、軸部2およびハブ部9の回転時、第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間の外径側と連通している。
また、ハウジング7外周の下端には接着固定面7eが形成される(図1を参照)。接着固定面7eは、この実施形態では径一定の円筒状をなし、モータブラケット6の内周面6aに接着固定される。これにより、流体軸受装置1がモータに組み込まれる。ここで、ハウジング7とモータブラケット6との接着には、エポキシ基を含有する接着剤、例えばエポキシ系接着剤が使用される。
上記形状をなすハウジング7は、液晶ポリマー(LCP)をベース樹脂とする樹脂組成物で形成される。このベース樹脂には、エポキシ基を含有する化合物(エポキシ化合物)が配合される。具体的には、エポキシ指数が0.5meq/g以上のエポキシ化合物が、樹脂組成物中のエポキシ基量が8meq/100g以上となるように配合される。
このように、ハウジング7(を形成する樹脂組成物)と、ハウジング7とモータブラケット6との接着に使用される接着剤共にエポキシ基を含有したものとし、かつ上記エポキシ化合物を上述の範囲内でベース樹脂に配合してなる樹脂組成物でハウジング7を形成することで、ベース樹脂(LCP)が本来有する耐熱性や耐油性、低アウトガス性、さらには機械的強度や成形時の良好な流動性(低溶融粘度)を充分に発現しつつも、モータブラケット6との接着性(接着強度)を大幅に向上させたハウジング7を得ることができる。接着強度のさらなる向上を図るのであれば、接着剤についても、そのエポキシ基量を8meq/100g以上とする接着剤を用いるのがよい。
また、上述のようにして、接着剤およびハウジング7の材料組成を調整するだけで、モータブラケット6との接着強度を高めることが可能であるため、紫外線の照射処理など、ハウジング7表面(接着固定面7e)を活性化させるための処理が不要となる。そのため
、ハウジング7の接着力向上を比較的低コストで達成することができる。また、紫外線に対して耐性のない、あるいは小さい樹脂材料であってもハウジング7のベース樹脂に使用できることになるため、より材料選択の自由度を高めることができる。
また、上記エポキシ化合物は、樹脂組成物中のエポキシ基量が20meq/100g以下となるようにベース樹脂に配合されるのが好ましい。これは、樹脂組成物中のエポキシ基量が上記範囲(20meq/100g)を超えると、ハウジング7の成形時、樹脂組成物中から無視できない量のガスが発生し、このガスが成形型中に残存することで、成形品としてのハウジング7の寸法不良や外観不良などの不具合を招く恐れがあるためである。
エポキシ化合物としては、上記範囲内のエポキシ指数を有するものであれば使用することができるが、その中でもポリオレフィンを主鎖とし、グリシジルメタクリレート(GMA)を側鎖としてグラフトさせたエポキシ化合物、あるいはビスフェノールA型エポキシ化合物が好適に使用可能である。なお、上記例示のエポキシ化合物には、側鎖にグリシジルメタクリレート(GMA)のみを有するコポリマータイプの他、側鎖にエポキシ基を含まないスチレンなどをさらにグラフトさせて、ターポリマー化したものも知られているが、上記のように、エポキシ基を含む化合物のみを側鎖にグラフトしてなるコポリマータイプを用いるほうが、スチレンなどを用いたターポリマー体を用いるよりも耐熱性の観点から望ましい。
上記ベース樹脂およびエポキシ化合物を含む樹脂組成物には、充填材として炭素繊維が配合可能である。これによれば、ハウジング7自体の強度向上が可能となり、かつハウジング7の温度変化に伴う寸法変化を抑えて高い寸法安定性を得ることができる。この結果、使用時における第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間を高精度に維持することが可能となる。また、炭素繊維をベース樹脂に配合することで炭素繊維の持つ高い導電性が発現され、ハウジング7に充分な導電性(例えば体積抵抗で1.0×106Ω・cm以下)を付与することができる。これにより、使用時にディスクに帯電する静電気を回転体3およびハウジング7(さらに軸受スリーブ8を経由する場合もある)を介して接地側部材(モータブラケット6など)に逃がすことができる。
炭素繊維には、例えばPAN系やPich系など種々のものが使用可能であるが、補強効果や衝撃吸収性の観点から、比較的高い引張強度(好ましくは3000MPa以上)を有するものが好ましく、特に高い導電性を併せ持つものとしては、PAN系炭素繊維が好ましい。
上述の炭素繊維による補強効果や静電除去効果等を充分に発揮するため、炭素繊維のベース樹脂への充填量は10〜35vol%、より好ましくは15〜25vol%とするのがよい。これは、炭素繊維の充填量が10vol%未満だと、炭素繊維による補強効果や静電除去効果が充分に発揮されない他、他部材との摺動部分におけるハウジング7の耐摩耗性、特に摺動相手材の耐摩耗性が確保されず、充填量が35vol%を超えると、ハウジング7の成形性が低下し、高い寸法精度を得ることが困難になるためである。
上記ベース樹脂およびエポキシ化合物に炭素繊維を配合した樹脂組成物の溶融粘度は、キャビティー内を溶融樹脂で高精度に充填するため、360℃、せん断速度1000s-1において1000Pa・s以下に抑えるのがよい。従って、炭素繊維を除く樹脂組成物(ベース樹脂とエポキシ化合物)の溶融粘度は、炭素繊維の充填による粘度増加を補償するためにも、310℃、せん断速度1000s-1において100Pa・s以下であることが好ましい。
このように、ハウジング7を上述の樹脂組成物で形成すれば、耐熱性や耐油性、成形時
の流動性に優れると共に成形時のアウトガスや吸水を小さく抑えることができ、さらにはモータブラケット6との高い接着力を兼ね備えたハウジング7を形成することができる。これにより、流体軸受装置1およびこの軸受装置を組込んだディスク駆動装置の耐久性、信頼性を高めることができる。さらには、炭素繊維を用途に応じて適量配合することで、機械的強度、耐衝撃性、寸法安定性、静電除去性にも優れたハウジング7を得ることができる。
流体軸受装置1の内部には潤滑油が充填され、潤滑油の油面は常にシール空間S1内に維持される。潤滑油としては、種々のものが使用可能であるが、特にHDD等のディスク駆動装置用の流体軸受装置に提供される潤滑油には、低蒸発率及び低粘度性が要求されることから、エステル系の潤滑油が好適である。
上記構成の流体軸受装置1において、軸部2(回転体3)の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の動圧溝8a1、8a2形成領域)は、軸部2の外周面2aとラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間の潤滑油が動圧溝8a1、8a2の軸方向中心m側に押し込まれ、その圧力が上昇する。このような動圧溝8a1、8a2の動圧作用によって、軸部2を回転自在にラジアル方向に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とがそれぞれ構成される。
これと同時に、ハウジング7のスラスト軸受面7a(動圧溝7a1形成領域)とこれに対向するハブ部9(円盤部9a)の下端面9a1との間のスラスト軸受隙間、および軸受スリーブ8の下端面8c(動圧溝形成領域)とこれに対向するフランジ部2bの上端面2b1との間のスラスト軸受隙間に、動圧溝の動圧作用により潤滑油の油膜がそれぞれ形成される。そして、これら油膜の圧力によって、回転体3をスラスト方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1と第2スラスト軸受部T2とがそれぞれ構成される。
以上、本発明の第1実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
結晶性樹脂は、特に高い耐油性を備えているので、樹脂との反応性が高い上述のエステル系潤滑油を使用する場合であっても、樹脂の劣化や、樹脂との反応に伴う潤滑油の劣化を防ぐことができる。また、上記結晶性樹脂は、耐油性の他にも、耐熱性、機械的強度に優れ、かつ固化時のアウトガス発生量が少ない、吸水性が低いなどの長所を有する。一方で、非晶性樹脂は、特に成形時の寸法精度や温度変化に対する寸法安定性優れ、また切削加工時におけるバリの発生も小さく抑えられる等、加工性にも優れている。従い、液晶ポリマー(LCP)は特に流体軸受装置1に要求される特性をバランス良く備えた材料であるため、より好適に使用することができる。
また、第1実施形態では、ハウジング7を形成する樹脂組成物として、1種類のベース樹脂(液晶ポリマー(LCP))にエポキシ化合物および炭素繊維を配合した場合を説明したが、液晶ポリマー(LCP)を含む2種類以上の樹脂材料を組み合わせたものをベース樹脂として使用しても構わない。また、本発明の効果を妨げるものでない限り、ベース樹脂となる樹脂材料やエポキシ化合物、炭素繊維以外の無機物、あるいは有機物を付加することも可能である。例えば、ゴム成分等の有機物や金属繊維、ガラス繊維、ウィスカ等の無機物を付加しても構わない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が耐油性に優れた離型剤として、カーボンブラックが導電化剤としてそれぞれ配合可能である。
また、第1実施形態では、ハウジング7の上端面に複数の動圧溝7a1を配列したスラスト軸受面7aを設けると共に(スラスト軸受部T1)、軸受スリーブ8の下端面8cに複数の動圧溝を配列したスラスト軸受面を設けた場合を説明したが(スラスト軸受部T2)、本発明は、スラスト軸受部T1のみを設けた流体軸受装置にも同様に適用することができる。この場合、軸部2は、フランジ部2bを有しない径一定の形状になる。従って、ハウジング7は、蓋部材10を底部として一体に樹脂材料で形成することで、有底円筒形にすることができる。また、軸部2とハブ部9とは金属あるいは樹脂で一体成形できる他、軸部2をハブ部9と別体に形成することもできる。この場合、軸部2を金属製とし、この金属製の軸部2をインサート部品としてハブ部9と一体に回転体3を樹脂で型成形することもできる。
図5は、本発明の第2実施形態に係る流体軸受装置11を示している。この実施形態において、軸部(回転体)12は、その下端に一体または別体に設けられたフランジ部12bを備えている。また、ハウジング17は、円筒状の側部17aと、側部17aと別体構造をなし、側部17aの下端部に配設される底部17bとを備えている。ハウジング17の側部17aの上端部には内周側に突出したシール部13がハウジング17と一体に形成される。シール部13の内周面とこれに対向する軸部12の外周面との間にシール空間S2が形成される。ハウジング17の底部17bの上端面17b1には、図示は省略するが、例えば複数の動圧溝をスパイラル状に配列した領域が形成されるとともに、軸受スリーブ18の下端面18cにも、同様の形状に動圧溝を配列した領域が形成される。そして、軸受スリーブ18の下端面18cと軸部12のフランジ部12bの上端面12b1との間に第1スラスト軸受部T11が構成され、ハウジング17の底部17bの上端面17b1とフランジ部12bの下端面12b2との間に第2スラスト軸受部T12が構成される。
この実施形態においては、シール部13と一体に形成されるハウジング17の側部17aが樹脂部に該当する。そのため、ハウジング17の側部17aを形成する樹脂組成物、および側部17aとモータブラケット(図示は省略)との間の接着剤に、第1実施形態と同様、エポキシ基を含有したものを使用し、かつエポキシ化合物の種類およびベース樹脂への配合量を設定することで、モータブラケット(図示は省略)との間で高い接着強度を有するハウジング17を得ることができる。また、底部17bを樹脂材料で形成する場合には、側部17aと同様の材料組成とすることもでき、これにより、ハウジング17と底部17bとの間の接着力を向上させることができる。
図6は、本発明の第3実施形態に係る流体軸受装置21を示している。この実施形態において、シール部23は、ハウジング27の側部27aと別体に形成され、ハウジング27の上端部内周に接着、圧入、あるいは溶着等の手段により固定される。また、ハウジング27の底部27bは、ハウジング27の側部27aと一体に樹脂材料で型成形され、有底円筒状の形態を成している。従い、この実施形態では、有底円筒状のハウジング27が樹脂部に該当する。また、軸部(回転体)22、軸受スリーブ28、スラスト軸受部T21、T22は、それぞれ図5における軸部12、軸受スリーブ18、スラスト軸受部T11、T12に対応している。なお、これ以外の構成は、第2実施形態に準じるので説明を省略する。
この実施形態においても、ハウジング27が樹脂部に該当する。ハウジング27を形成する樹脂組成物、およびハウジング27の側部27aとモータブラケット(図示は省略)との間の接着剤に、第1実施形態と同様、エポキシ基を含有したものを使用し、かつエポキシ化合物の種類およびベース樹脂への配合量を設定することで、モータブラケット(図示は省略)との間で高い接着強度を有するハウジング27を得ることができる。
もちろん、本発明は、図示したものに限らず、他の構成に係る流体軸受装置にも適用することが可能である。例えば図6に示すシール部23を軸部22に固定(あるいは一体化)し、このシール部23の外周面と、この外周面と対向するハウジング27の側部27aの内周面との間にシール空間を形成した構成をなす流体軸受装置にも、本発明を適用することができる。図7はその一例であり、第4実施形態に係る流体軸受装置31を示している。この図に係る流体軸受装置31において、軸部32の一端側に固定された第1シール部33の外周面33aと、この面に対向するハウジング37の内周面37aとの間に第1シール空間S3が形成されている。また、軸部33の他端側にもシール部(第2シール部34)が固定され、この第2シール部34の外周面34aと、この面に対向するハウジング37の内周面37aとの間に第2シール空間S4が形成されている。また、第1シール部33の下端面33bと、この面に対向する軸受スリーブ38の上端面38bとの間に第1スラスト軸受部T31が構成されると共に、第2シール部34の上端面34bと、この面に対向する軸受スリーブ38の下端面38cとの間に第2スラスト軸受部T32が構成される。
従い、この実施形態においても、ハウジング37を樹脂部として形成する場合、ハウジング37を形成する樹脂組成物、およびハウジング37とモータブラケット(図示は省略)との間の接着剤に、第1実施形態と同様、エポキシ基を含有したものを使用し、かつエポキシ化合物の種類およびベース樹脂への配合量を設定することで、モータブラケット(図示は省略)との間で高い接着強度を有するハウジング37を得ることができる。
また、以上の実施形態(第1〜第4実施形態)では、ハウジング7、17、27、37を樹脂部として形成した場合を説明したが、これ以外の構成部品に本発明を適用することも可能である。すなわち、ハウジング7に固定される軸受スリーブ8や蓋部材10、シール部23、軸部32に固定される第1、第2シール部33、34などを樹脂部として本発明を適用することもできる。また、樹脂部は回転体または固定体の一部を構成するものでもよいので、例えば図2において軸部2をハブ部9とは別体に金属で形成し、この軸部2をインサート部品としてハブ部9を上記材料組成をなす樹脂組成物で成形することも可能である。また、アセンブリ可能であるならば、既述の構成部品同士(例えばハウジング7と軸受スリーブ8など)を一体化したものについて本発明を適用することも可能である。
また、以上の実施形態(第1〜第4実施形態)では、ラジアル軸受部R1、R2およびスラスト軸受部T1〜T32として、へリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝により流体の動圧作用を発生させる構成を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ラジアル軸受部R1、R2として、図示は省略するが、軸方向の溝を円周方向の複数箇所に形成した、いわゆるステップ状の動圧発生部、あるいは、円周方向に複数の円弧面を配列し、対向する軸部2(あるいは軸部12〜32)の外周面2aとの間に、くさび状の径方向隙間(軸受隙間)を形成した、いわゆる多円弧軸受を採用してもよい。
あるいは、ラジアル軸受面となる軸受スリーブ8の内周面8aを、動圧発生部としての動圧溝や円弧面等を設けない真円状内周面とし、この内周面と対向する軸部2の真円状外周面2aとで、いわゆる真円軸受を構成することができる。
また、スラスト軸受部T1、T2の一方又は双方は、同じく図示は省略するが、スラスト軸受面となる領域に、複数の半径方向溝形状の動圧溝を円周方向所定間隔に設けた、いわゆるステップ軸受、あるいは波型軸受(ステップ型が波型になったもの)等で構成することもできる。もちろん、他のスラスト軸受部T11〜T32についても同様に構成することができる。
また、以上の実施形態では、動圧発生部を何れも固定体(ハウジング7や軸受スリーブ8など)の側に設けた場合を説明したが、その一部あるいは全てを回転体(軸部2やハブ部9など)の側に設けることも可能である。
本発明の有用性を明らかにするため、組成の異なる複数の樹脂組成物について、当該成形品(樹脂部)の接着力に対する評価を行った。ベース樹脂には、液晶ポリマー(LCP)を使用した。ベース樹脂に配合するエポキシ化合物には、それぞれエポキシ指数の異なる4種類ないし5種類のエポキシ化合物を使用した。充填材には、1種類の炭素繊維を使用した。また、接着剤には、比較のため、エポキシ系とアクリル系の2種類(何れも嫌気性)を使用した。これらベース樹脂とエポキシ化合物、および接着剤との組み合わせとその配合比は、実施例と比較例共に図8〜図10の上段に示す通りである。
なお、この実施例では、LCP(ここでは液晶ポリエステル)に住友化学(株)製のスミカスーパーE6000シリーズを使用した。5種類のエポキシ化合物(エポキシ化合物No.1〜No.5)には、No.1から順に、住友化学(株)製のボンドファースト(グレード;2C、エポキシ指数;0.42meq/g)、東亞合成(株)製のレゼダ(グレード;GP301、エポキシ指数;0.57meq/g)、住友化学(株)製のボンドファースト(グレード;E、エポキシ指数;0.84meq/g)、住友化学(株)製のボンドファースト(グレード;CG5004、エポキシ指数;1.34meq/g)、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン(グレード;N−695P、エポキシ指数;4.65meq/g)をそれぞれ使用した。また、炭素繊維(ここではPAN系)として東邦テナックス(株)製のHM35−C6S(繊維径;7μm、平均繊維長;6mm、引張り強さ;3240MPa)を使用した。この実施例では離型剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を配合しており、具体的にはセントラルガラス(株)製のセフラルルーブを使用した。また、エポキシ系接着剤には(株)スリーボンド製のTB1350を、アクリル系接着剤にはアセック(株)製のAS5850をそれぞれ使用した。
これら原料を図8〜図10に示す配合比を基にドライブレンドしたものを、サイドフィード付き二軸式押出機(スクリューL/D比;約30)内に供給し、スクリュー回転速度:150rpm、温度:340〜370℃で溶融混練した。混練後、φ4mmのダイ穴から溶融ストランドを引き出し、冷却後、米粒大の樹脂組成物ペレットを製作した。なお、図8〜図10に示す組成のうち、炭素繊維を含む組成物については、二軸押出機のサイドフィード部から所定の速度で供給し、溶融混練中における炭素繊維の折損が生じ難いようにした。
以下、接着力の評価試験手順を示すと共に、その評価基準を示す。
(1)試験手順
(1−A)供試体作成
上記樹脂組成物を用い、φ10mm×15mmの円柱状成形体<A>を射出成形にて成形
する。一方、アルミニウム(A5056相当)を用い、φ20mm×φ10mm×10mmのモータブラケット模擬治具<B>を製作し、この治具中央部に、前記円柱状成形体<B>との直径すき間(接着すき間)が25μmとなるよう内径寸法を規定した穴を加工する。なお、円柱状成形体<A>のうち、比較例の一部に係る供試体には、接着面となる領域に、照射条件3000mj/cm2以上で紫外線を照射し、表面の活性化を図った。
(1−B)接着準備
成形体<A>およびモータブラケット模擬治具<B>の表面を充分に脱脂し、成形体<A>の接着面(成形体<A>の表面)にプライマを、モータブラケット模擬治具<B>の接着面(成形体<A>を上記治具<B>に挿入した際、成形体<A>と相対する治具<B>の表面)に接着剤をそれぞれ塗布する。本発明に係る実施例では、上述のエポキシ系接着剤を、比較例ではエポキシ系接着剤とアクリル系接着剤とをそれぞれ使用した。
(1−C)硬化工程
成形体<A>を治具<B>に挿入し、90℃×1hで加熱硬化させる。なお、今回の実験では、プライマとして、(株)スリーボンド製のTB1390Fをそれぞれ使用した。また、接着剤の塗布量を約10mg、プライマの塗布量を約1mg(溶剤分揮発後の成形体の重量増加分として測定)とした。
(1−D)抜去力測定
硬化後、治具<B>から成形体<A>を引抜き、抜去時において計測された最大荷重を接着力とした。
(2)評価基準
合格判定基準としては、接着力が1000N以上のものを合格(○)、1000N未満のものを不合格(×)とした。
なお、樹脂組成物中のエポキシ基量[meq/100g]は、実施例及び比較例として形成された供試体中に含まれるエポキシ基量の理論値を示し、下記の計算式に基づいて算出される。
樹脂組成物中のエポキシ基量[meq/100g]
=当該樹脂組成物に配合したエポキシ化合物のエポキシ指数[meq/g]
×エポキシ化合物の配合比率[wt%(=g/100g)]
図8〜図10の下段に、各供試体の接着力に関する評価結果を示す。比較例B−4、6、7、10〜14(LCP)のように、接着剤にアクリル系を使用した場合だと、十分な接着力(<1000N)を得ることができなかった。エポキシ基を有する接着剤を使用した場合であっても、成形体(樹脂組成物)中、あるいは接着剤中のエポキシ基量が小さい場合(比較例B−1、3、5、8)には、十分な接着力(<1000N)を得ることができなかった。これに対して、本発明に係る実施例(B−1〜B−7)では、何れも所定量以上のエポキシ基量(8meq/100g)を有することから、ベース樹脂の種類によらず高い接着力を得ることができた。具体的には、比較例B−2、B−9のように、予め接着面に紫外線照射処理を施したものと比べて同等あるいはそれ以上の接着力を得ることができた。
1、11、21、31 流体軸受装置
2、12、22、32 軸部
2b フランジ部
3 回転体
6 モータブラケット
7、17、27、37 ハウジング
8、18、28、38 軸受スリーブ
9 ハブ部
10 蓋部材
13、23、33、34 シール部
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2、T11、T12、T21、T22、T31、T32 スラスト軸受部
S1、S2、S3、S4 シール空間

Claims (7)

  1. 固定体と回転体との間の軸受隙間に形成される流体膜を介して回転体を支持するもので、固定体または回転体の少なくとも一部を構成し、接着剤を介して他部材に固定される樹脂部を備えた流体軸受装置において、
    樹脂部を、液晶ポリマー(LCP)をベース樹脂とし、かつ1分子当りに2以上のエポキシ基を有するエポキシ指数0.5meq/g以上のエポキシ化合物を、樹脂組成物中のエポキシ基量が8meq/100g以上となるようベース樹脂に配合してなる樹脂組成物で形成すると共に、
    接着剤として、エポキシ基を含有し、かつ接着剤中のエポキシ基量が8meq/100g以上となるものを使用したことを特徴とする流体軸受装置。
  2. 樹脂組成物中のエポキシ基量が20meq/100g以下である請求項1記載の流体軸受装置。
  3. 樹脂組成物中におけるエポキシ化合物の配合割合が20vol%以下である請求項1記載の流体軸受装置。
  4. ポリオレフィンを主鎖とし、グリシジルメタクリレート(GMA)を側鎖としてグラフトさせたエポキシ化合物がベース樹脂に配合される請求項1記載の流体軸受装置。
  5. ビスフェノールA型エポキシ化合物がベース樹脂に配合される請求項1記載の流体軸受装置。
  6. 固定体の外側を構成する、樹脂部としてのハウジングを備えた請求項1記載の流体軸受装置。
  7. 請求項記載の流体軸受装置と、ハウジングを接着固定することで流体軸受装置を内側に保持する他部材と、固定体と回転体何れかの側にそれぞれ配設され、相互間で励磁力を生じるコイルおよびマグネットとを備えたモータ。
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