次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
[第1実施例]
図1は、この発明の第1の実施例に従う、車両に搭載され、該車両の運転を支援するための装置のブロック図である。
周辺状況取得部10は、車両の周辺の状況を取得するための装置であり、一実施例では、車両の周辺を撮像する撮像装置により実現されることができ、この実施例では、車両の前方を撮像するよう該車両に取り付けられたカメラである。撮像装置として、たとえばCMOSカメラおよびCCDカメラを用いることができる。
制御部12は、車両に搭載された電子制御ユニット(ECU)において実現されることができる。ECUは、中央処理装置(CPU)およびメモリを備えるコンピュータである。制御部12は、目標経路設定部21、走行軌跡検出部22、偏差算出部23、所定範囲設定部24、ステアリング制御部25、方向指示器制御部26を備える。
目標経路設定部21は、撮像装置10によって撮像された画像に基づいて、車両の目標経路を設定する。目標経路の設定手法は、任意の適切な手法により実現されることができる。この実施例では、撮像された画像を、タッチパネルを備える表示装置(図示せず)上に表示し、車両の乗員による該タッチパネルに対する操作に基づいて、目標経路が設定される。
たとえば、図2(a)は、車両30の前方に障害物33aおよび33bが存在している状態を示しており、車両30の先頭中央に取り付けられた撮像装置10により撮像される領域が符号35により表されている。図2(b)は、図2(a)において撮像装置10により撮像されて表示装置上に表示される画像35の一例である。
乗員は、該撮像された画像35上で、所望の目標位置Dをタッチパネル上で指定する。これに応じて、図2(c)に示されるように、目標経路設定部21が、自車両の現在位置Aから該目標位置Dまでの経路Lを算出し、これを目標経路に設定する。車両の現在位置Aと目標位置Dとの間の経路の設定は、任意の適切な手法により実現されることができる。たとえば、特開2005―35498号公報には、円のモデルを用いて経路を設定する手法が開示されている。
なお、以下の説明において、車両30の位置Aは、該車両の後輪の車軸中心を基準としている。したがって、目標経路Lは、該後輪の車軸中心の目標軌跡と考えることができる。しかしながら、他の位置、たとえば車両の重心位置等を基準としてもよい。
代替的に、撮像されて表示装置上に表示された画像上で、自車両から、所望の目標位置まで、経路を指で描画することにより、目標経路を設定するようにしてもよい(たとえば、特開2002−362271号公報参照)。さらなる代替形態として、目標位置および目標経路を、目標経路設定部21が設定するようにしてもよい。たとえば、図3に示すように、白線37a〜37cにより画定される駐車スペースPに車両30を後退させながら駐車させる場合、車両30の所定位置に設けられた撮像装置(図示せず)により撮像されて表示装置上に表示された画像上で、該駐車スペースPの入口の両端P1およびP2を乗員がタッチパネル上で指定する。この指定に応じて、目標経路設定部21は、指定された位置P1とP2の間の中央の位置を算出し、これを目標位置Dに設定すると共に、車両の現在位置Aと目標位置Dに基づいて目標経路Lを算出する。
図1に戻り、走行軌跡検出部22は、運転状態検出部11によって検出された車両30の運転状態に基づいて、車両30の走行軌跡を検出する。走行軌跡は、任意の適切な手法により検出されることができる。たとえば、運転状態検出部11は、車速センサおよび操舵角センサを備えている。走行軌跡検出部22は、車速センサにより検出された車両の速度を時間で積分することにより、車両30の移動距離を算出することができる。また、操舵角センサによって検出された車両30の操舵輪の操舵角に基づいて、車両30の移動方向を求めることができる。移動距離と移動方向により、車両30の走行軌跡、より具体的には、前述した車両30の後輪の車軸中心位置Aの軌跡を検出することができる。車速を用いる変わりに、運転状態検出部11に車輪速センサを備えるようにし、該センサからの車輪パルスの数に基づいて移動距離を検出するようにしてもよい。また、車速センサおよび車輪速センサに代えて、加速度センサを用いて移動距離を検出するようにしてもよい。
偏差算出部23は、車両30の走行軌跡の、目標経路Lからのずれ(偏差)を算出する。偏差は、目標経路Lに対し、走行軌跡が、車両30の進行方向に向かって左右にどの程度ずれているかを示す。
該偏差は、たとえば、図4(a)に示すように、目標経路Lが設定された時の車両30の位置Aを原点Oとしたxおよびy座標を設定し、車両30の現在位置Aと、それに対応する目標経路L上の位置とを比較することにより、算出されることができる。たとえば、或る時点における偏差は、該時点における自車両30の位置Aから、目標経路Lに対して垂線を下ろし、該垂線の長さを算出することにより求めることができる。また、自車両30の位置Aの座標と、該垂線が目標経路Lに交差する点の座標を比較することにより、自車両30の位置Aが、目標経路Lに対して、右側に存在するのか、左側に存在するのかを判別することができる。ここで、「右側」は、車両30の進行方向に向かって右側を示し、「左側」は、車両30の進行方向に向かって左側を示す。この実施例では、偏差算出部23は、右側への偏差をプラスの値として算出し、左側への偏差をマイナスの値として算出する。
図1に戻り、ステアリング制御部25は、上記算出された偏差が、目標経路Lを中心とした所定範囲の幅内に収まるように、ステアリング機構14を介してステアリングに対する荷重を制御する。該ステアリング荷重制御のため、所定範囲設定部24が、該所定範囲を、目標位置Dに近づくにつれて狭くなるよう設定する。
ここで、再び図4(a)を参照すると、該所定範囲が、目標経路Lを中心とした左側ラインL1と右側ラインL2によって画定されている。目標経路Lと左側ラインL1との間の幅Wおよび目標経路Lと右側ラインL2との間の幅Wは、この実施例では同じ値を持ち、目標位置Dに近づくにつれて、該幅Wは狭くなるよう設定される。
この実施例では、幅Wは、最大値Wmaxから最小値Wminに向けて、目標経路Lに沿って徐々に小さくなるよう設定される。したがって、所定範囲設定部24は、図4(b)に示すように、設定された目標経路Lの原点Oから目標位置Dまでの各位置に対し、WmaxからWminの範囲の幅Wを割り当てる。該割り当ては、図4(b)に示すようなテーブル(マップ)の形式で記憶装置に記憶されることができる。
所定範囲設定部24は、走行軌跡検出部22によって検出された車両30の現在位置Aに対応する目標経路L上の位置(前述したように、現在位置Aから目標経路L上に垂線を下ろした位置とすることができる)に基づいて、図4(b)のような割り当てを参照することにより、対応する幅Wの値を求める。
なお、割り当ては、図4(b)に示される形態に限定されるものではなく、たとえば、目標経路Lに沿って幅Wが線形に変化するように割り当ててもよいし、目標経路Lに沿って幅Wがステップ状に変化するように割り当ててもよい。
ステアリング制御部25は、上記算出された偏差が、こうして求めた幅Wにより定義される左側ラインL1と右側ラインL2との間に収まるように、ステアリング機構14を介してステアリングの荷重を制御する。
ステアリング機構14は、ステアリングホイール(ハンドル)を含む、操舵輪(前輪)を動かす装置である。ステアリングの荷重は、操舵力を増加させることにより、実現されることができる。操舵力を増加させるにつれ、ステアリングホイールは重くなる。ステアリング機構14は、マニュアル操舵装置およびパワーステアリング装置のいずれでもよいが、パワーステアリング装置により実現される場合には、パワーアシスト力を減じることにより操舵力を増加させるようにしてもよい。操舵力のこのような制御手法は、たとえば、特開2004−237983号公報に開示されている。
ここで、図5(a)を参照すると、ステアリング制御部25によるステアリング荷重の制御形態の一例が示されている。横軸は、目標経路Lからの車両の位置Aの偏差を表す。縦軸は、ステアリングに印加される荷重の大きさおよびその方向を表す。図4(a)を参照して説明したように、偏差について、プラス「+」は、車両30の位置Aが、目標経路Lに対し、該車両30の進行方向に向かって右側にずれていることを示し、マイナス「−」は左側にずれていることを示す。荷重について、プラス「+」は、車両30の進行方向に向かって右方向への荷重を示し、マイナス「−」は左方向への荷重を示す。横軸の「W」には、図4(b)のような割り当てを参照することにより取得された値が設定される。
上記のように算出された偏差が値0と+Wの間にあるとき、車両30の位置Aが、目標経路Lと右側ラインL2の間にあり、よって目標経路Lに対して右側に偏差していることを示す。したがって、ステアリング制御部25は、ステアリングに対して左方向に所定の荷重Fをかけるように、ステアリング機構14を制御する。これにより、右側ラインL2よりも右側に車両30が逸脱しにくいようにする。他方、算出された偏差が値0と−Wの間にあるとき、車両30の位置Aが、目標経路Lと左側ラインL1の間にあり、よって目標経路Lに対して左側に偏差していることを示す。したがって、ステアリング制御部25は、ステアリングに対して右方向に所定の荷重Fをかけるように、ステアリング機構14を制御する。これにより、左側ラインL1よりも左側に車両が逸脱しにくいようにする。
図5(b)は、図5(a)のようなステアリング荷重制御によって実現される仮想的な路面形状41を示す。目標経路Lを中心とした左側ラインL1と右側ラインL2により画定される経路内に車両の位置Aが存在しているときには、ステアリングに一定の荷重Fがかかるので、該経路を、L1とL2の間で溝を形成する仮想路面形状41と考えることができる。車両を該溝から逸脱させるためには、運転者は、荷重Fより大きい力でステアリングを操作する必要がある。たとえば、該溝を左側に逸脱するには、ステアリングを左方向に、荷重Fよりも大きい力で操作する必要がある。このような仮想路面形状41は、運転者に、溝のような仮想の“わだち”が存在しているような操舵感覚を与える。したがって、運転者は、“わだち”にタイヤがはまるように操舵することにより、車両を目標経路に沿って走行させるのが容易になる。
図4(a)および(b)を参照して説明したように、幅Wは、目標位置Dに近づくにつれて狭くなる。したがって、図5(a)の荷重Fがステアリングに印加される範囲43の横軸方向の幅は、目標位置Dに近づくにつれて狭くされる。このようにすることにより、運転者は、よりスムーズに、車両30を目標経路Lに合わせ易くなる。
上記形態では、図4(b)に示すように、WmaxからWminの範囲の幅Wの値を、目標経路Lに割り当てたが、このような割り当てを行うことなく、幅Wの値を制御してもよい。たとえば、ステアリング制御部25は、所定時間間隔または車両30の所定の移動距離ごとに、幅Wの値を所定値だけデクリメントする。ここで、幅Wの初期値は、所定の最大値Wmaxとする。車両30が目標位置Dに到達する前に、幅Wの値が所定の最小値Wminに達したならば、該デクリメント処理を停止し、その後は、幅Wの値を最小値Wminに一定にしつつ、ステアリング荷重を制御する。
図1に戻り、方向指示器制御部26は、車両30のインスツルメントパネル上に設けられている、方向指示器のインジケータ16を、算出された偏差に応じて制御する。
ここで、図6を参照すると、左方向のインジケータ51および右方向のインジケータ52の一例が示されている。方向指示器制御部26は、算出された偏差が、目標経路Lに対して左側にずれていることを示し、かつ、該偏差の大きさがWを超えたならば(すなわち、偏差<−W)、右方向を示すインジケータ52を点灯する。運転者は、右方向インジケータ52が点灯するのを視認することにより、目標経路Lに復帰するために右方向にステアリングを操舵すべきであることを認識することができる。
他方、方向指示器制御部26は、算出された偏差が、目標経路Lに対して右側にずれていることを示し、かつ、該偏差の大きさがWを超えたならば(すなわち、偏差>+W)、左方向を示すインジケータ51を点灯する。運転者は、左方向インジケータ51が点灯するのを視認することにより、目標経路Lに復帰するために左方向にステアリングを操舵すべきであることを認識することができる。
代替的に、インジケータを点灯することに代えて、点滅させてもよい。また、偏差の大きさに応じて、インジケータの点滅形態を変化させるようにしてもよい。一実施例では、偏差の大きさが大きくなるにつれて、インジケータの点滅速度を速くする。こうして、偏差が大きいほど、運転者に、目標経路に復帰するよう注意を促すことができる。また、他の実施例では、偏差の大きさが大きくなるにつれて、インジケータの点滅回数を増やす。たとえば、点滅する回数を予め設定し、該点滅回数を、偏差の大きさが大きくなるほど増やす。こうして、偏差が大きいほど、目標経路に復帰するよう、運転者の注意をより強く促すことができる。
上記実施例では、目標経路Lを、車両30の現在位置Aから目標位置Dまで設定したが、目標位置Dを超えて延長するよう設定してもよい。この場合、目標位置Dを超えた部分については、ステアリング荷重制御を行ってもよいし、行わなくてもよい。たとえば、該超えた部分については、幅Wを、目標位置Dにおける値に一定としつつステアリング荷重を制御してもよく、この形態が、図7(a)に示されている。目標経路Lの目標到達位置D以降の部分Lxにおいて、幅Wは一定となるよう制御されている。
図7(b)は、図1の撮像装置10が、車両30の後方を撮像するよう取り付けられており、車両30が、障害物33cおよび33dの間に設定された目標位置Dに向けて目標経路Lに沿って後退する形態を示している。このような後退する形態に対しても、図4および図5を参照して説明したのと同様の手法でステアリング荷重制御を行うことができる。
[第2実施例]
第1の実施例で説明した原点Oから目標位置Dまでの目標経路Lが、車両30の操舵角を所定値に維持しながら走行した場合の経路である(すなわち、目標経路Lが、該操舵角に対応する車両30の旋回半径の1つの円弧を形成する)場合には、原点Oから目標位置Dにわたり、車両30の操舵角を該所定値に維持しながら車両30を走行させることにより、目標経路Lに沿って目標位置Dに車両30を到達させることができる。この第2の実施例は、このような場合に対応しており、第1の実施例のように、車両の現在位置Aが、目標経路Lを中心とした所定範囲の幅内にあるかどうかを判断することに代えて、車両の現在の操舵角が、該目標経路Lに沿って走行するための目標操舵角を中心とした所定範囲の角度内にあるかどうかを判断し、該判断の結果に応じてステアリング荷重制御を行う。
第2の実施例に従う運転支援装置は、図1に示されるのと同様のブロック図により実現されることができ、ここでは、第1の実施例と異なる点についてのみ説明する。
目標経路設定部21は、第1の実施例と同様に、任意の手法で目標位置Dおよび該目標位置Dまでの目標経路Lを設定することができるが、前述したように、この実施例では、目標経路Lは、車両30の所定の旋回半径の円弧を形成するものとする。目標経路設定部21は、該旋回半径に応じて目標操舵角を設定する。
たとえば、図8(a)を参照すると、図4(a)と類似した図が示されている。目標位置Dは、上記第1の実施例と同様に、任意の手法により設定されることができる。車両30の現在位置Aと目標位置Dとの間の目標経路Lを、たとえば前述したような円のモデルを用いた周知の手法により設定すると、目標経路Lは、ここでは半径R1を有する円弧として設定されている。すなわち、車両30は、旋回半径R1で旋回すると、目標経路Lに沿って走行することができる。目標経路設定部21は、該旋回半径R1に応じて目標操舵角を設定することができる。
他の例として、図8(b)を参照すると、図3と類似した図が示されており、車両30が、白線37a〜37cにより画定される駐車スペースPに駐車させる場合の、車両30が経由すべき目標位置Dが示されている。車両30の操舵角を所定値(たとえば、車両の先頭に向かって左側への最大操舵角)に維持しながら該車両30を後退させることによって、目標位置Dを経由して駐車スペースPに駐車させることができるが、そのための該車両30の後退を開始する位置Aは、該駐車スペースPの位置(具体的には、位置P1またはP2)に対して予め決まっている。駐車スペースPの位置P1またはP2が、たとえば撮像画像上で乗員によって指定されることにより、該位置Aを算出して、車両30を該位置Aまで自動誘導し、該位置Aから、運転者が、ステアリングの操舵角を該所定値に維持しながら後退させる駐車支援の手法が知られている(たとえば、特開2000−335436号公報)。このような場合、目標経路設定部21は、該所定値を目標操舵角に設定する。目標経路Lは、位置Aから目標位置Dまで、該目標操舵角に対応する旋回半径R2を持つ円弧として表される。
偏差算出部23は、車両30の現在の操舵角の、目標操舵角に対するずれ(偏差)を算出する。現在の操舵角は、前述したように、走行軌跡検出部22により検出される。
或る時点における偏差は、該時点における自車両30の位置Aにおける操舵角と、目標操舵角との差を算出することにより求められ、該偏差の値により、車両30が、目標経路Lに対して右側にどの程度ずれているのか、または左側にどの程度ずれているのかを判別することができる。ここで、「右側」は、車両30の進行方向に向かって右側を示し、「左側」は、車両30の進行方向に向かって左側を示す。この実施例では、偏差算出部23は、右側への偏差をプラスの値として算出し、左側への偏差をマイナスの値として算出する。
ステアリング制御部25は、上記算出された偏差が、目標操舵角に対して所定範囲の角度内に収まるように、ステアリング機構14を介してステアリングに対する荷重を制御する。このステアリング荷重制御のため、所定範囲設定部24は、該所定範囲を、目標位置Dに近づくにつれて狭くなるよう設定する。
ここで図9(a)を参照すると、図8(a)と同じ目標経路Lが示されている。上記所定範囲が、目標操舵角(操舵輪が向くべき方向)を表すラインM(以下、目標操舵角ラインと呼ぶ)を中心として角度θを有する左側ラインL1と右側ラインL2によって画定されている。図には、車両30の操舵輪61が、目標操舵角に一致している状態が示されている。目標操舵角ラインMと左側ラインL1との間の角度θおよび目標操舵角ラインMと右側ラインL2との間の角度θは、この実施例では同じ値を持ち、目標位置Dに近づくにつれて、該角度θは小さくなるよう設定される。
この実施例では、角度θは、最大値θmaxから最小値θminに向けて、目標経路Lに沿って徐々に小さくなるよう設定される。したがって、所定範囲設定部24は、図9(b)に示すように、原点O(目標経路Lおよび目標操舵角が設定された時点の車両30の位置Aである)から目標位置Dまでの目標経路L上の各位置に対し、θmaxからθminの範囲の角度θを割り当てる。該割り当ては、図9(b)に示すようなテーブル(マップ)の形式で記憶装置に記憶されることができる。
所定範囲設定部24は、走行軌跡検出部22によって検出された車両30の現在位置Aに対応する目標経路L上の位置(前述したように、現在位置Aから目標経路L上に垂線を下ろした位置とすることができる)に基づいて、図9(b)のような割り当てを参照することにより、対応する角度θの値を求める。
なお、割り当ては、図9(b)に示される形態に限定されるものではなく、たとえば、目標経路Lに沿って角度θが線形に変化するように割り当ててもよいし、目標経路Lに沿って角度θがステップ状に変化するように割り当ててもよい。
ステアリング制御部25は、上記算出された偏差が、こうして求めた角度θにより定義される左側ラインL1と右側ラインL2との間に収まるように、ステアリング機構14を介してステアリングの荷重を制御する。
ここで、図10(a)を参照すると、ステアリング制御部25によるステアリング荷重の制御形態の一例が示されており、これは、図5(a)と類似している。横軸は、目標操舵角からの車両の現在の操舵角の偏差を表す。縦軸は、ステアリングに印加される荷重の大きさおよびその方向を表す。図9(a)を参照して説明したように、偏差について、プラス「+」は、車両30が、目標操舵角に対し、該車両30の進行方向に向かって右側にずれていることを示し、マイナス「−」は、左側にずれていることを示す。また、荷重について、プラス「+」は、車両30の進行方向に向かって右方向への荷重を示し、マイナス「−」は左方向への荷重を示す。横軸の「θ」には、図9(b)のような割り当てを参照することにより取得された値が設定される。
上記のように算出された偏差が値0と+θの間にあるとき、車両30の現在の操舵角が、目標操舵角ラインMと右側ラインL2の間にあり、よって、車両30が目標経路Lに対して右側に偏差していることを示す。したがって、ステアリング制御部25は、ステアリングに対して左方向に所定の荷重Fをかけるように、ステアリング機構14を制御する。これにより、右側ラインL2よりも右側に車両30が逸脱しにくいようにする。他方、算出された偏差が値0と−θの間にあるとき、車両30操舵角が、目標操舵角ラインMと左側ラインL1の間にあり、よって、車両30が目標経路Lに対して左側に偏差していることを示す。したがって、ステアリング制御部25は、ステアリングに対して右方向に所定の荷重Fをかけるように、ステアリング機構14を制御する。これにより、左側ラインL1よりも左側に車両30が逸脱しにくいようにする。
図10(b)は、図10(a)のようなステアリング荷重制御によって実現される仮想的な路面形状41を示し、これは、図5(b)と同様であるが、仮想路面形状すなわち溝41の幅Wθは、目標操舵角に対して角度θだけ操舵角が偏差した時の目標経路Lからのずれの量に相当する。このように、第2の実施例においても、運転者に、仮想的な“わだち”を運転するような操舵感覚を与えることができるので、車両30が目標経路Lから逸脱しすぎないように、運転者の運転を支援することができる。
図9(a)および(b)を参照して説明したように、角度θは、目標位置Dに近づくにつれて小さくなる。したがって、図10(a)の荷重Fがステアリングに印加される範囲63の横軸方向の幅は、目標位置Dに近づくにつれて狭くされる。このようにすることにより、運転者は、よりスムーズに、車両30を目標経路Lに合わせ易くなる。
上記形態では、図9(b)に示すように、θmaxからθminの範囲の角度θの値を、目標経路Lに割り当てたが、このような割り当てを行うことなく、角度θの値を制御してもよい。たとえば、ステアリング制御部25は、所定時間間隔または車両30の所定の移動距離ごとに、角度θの値を所定値だけデクリメントする。ここで、角度θの初期値は、所定の最大値θmaxとする。車両30が目標位置Dに到達する前に、角度θの値が所定の最小値θminに達したならば、該デクリメント処理を停止し、その後は、角度θの値を最小値θminに一定にしつつ、ステアリング荷重を制御する。
第1の実施例の所で説明した、方向指示器のインジケータについての制御は、第2の実施例についても同様に適用されることができる。方向指示器制御部26は、算出された偏差が、目標操舵角に対して左側にずれていることを示し、かつ、該偏差の大きさがθを超えたならば(すなわち、偏差<−θ)、右方向を示すインジケータ52(図6)を点灯する。他方、方向指示器制御部26は、算出された偏差が、目標操舵角に対して右側にずれていることを示し、かつ、該偏差の大きさがθを超えたならば(すなわち、偏差>+θ)、左方向を示すインジケータ51(図6)を点灯する。こうして、運転者に、目標経路Lに復帰すべきステアリング操舵方向を認識させることができる。さらに、第1の実施例で述べたのと同様に、偏差の大きさが大きくなるにつれて、インジケータの点滅速度を速くしてもよいし、また、偏差の大きさが大きくなるにつれて、インジケータの点滅回数を増やしてもよい。
以上のように、第1および第2の実施例を説明してきたが、これら第1および第2の実施例を、設定された目標経路Lに応じて切換えるようにしてもよい。たとえば、設定された目標経路Lが、或る値の旋回半径を有する1つの円弧から形成される場合には、第2の実施例のように、現在の操舵角が、該旋回半径に対応する目標操舵角を中心とした所定範囲の角度内にあるかどうかに従って運転を支援し、設定された目標経路Lが、たとえば複数の値の旋回半径を有する複数の円弧から形成される場合には、第1の実施例のように、車両の現在位置が、目標経路を中心とした所定範囲の幅内にあるかどうかに従って運転を支援するようにしてもよい。
[他の実施例]
第1および第2の実施例の所で述べたように、図5(b)および図10(b)に示す仮想路面形状41は一例であり、様々な仮想路面形状を実現することができる。仮想路面形状の他の例が、図11(a)、(b)および図12(a)、(b)に示されている。ここでは、第1の実施例に従う、所定範囲の幅Wに基づくステアリング荷重制御を示す。しかしながら、第2の実施例に従う、所定範囲の角度θに基づくステアリング荷重制御にも同様に適用可能であることは言うまでもない。
これらの仮想路面形状71〜74は、いずれも、図5(b)を参照して述べたように、溝または窪みを形成しており、よって、運転者に、L1とL2の間に“わだち”が存在しているような操舵感覚を与えることができる。したがって、運転者は、車両のタイヤが“わだち”にはまるようにステアリング操作を行うことにより、目標経路Lから所定量以上逸脱することなく、車両を走行させることができる。
また、第1および第2の実施例では、図1の周辺状況取得部10を、撮像装置により実現していた。代替形態として、周辺状況取得部10を、障害物検出装置により実現することができる。障害物検出装置は、一例として、超音波の発信器と受信器とを備え、発信器によって発信した超音波が障害物に当たることによって生ずる反射信号を受信器によって受信することによって障害物の存在を検出するとともに、発信してから受信するまでの時間によって障害物までの距離を検出する。代替的に、超音波の代わりに光を使用し、測定光を発光すると共に、障害物からの反射光を受光し、発光した時点から受光した時点までの時間差あるいは発光された光と受光された光の位相差に基づいて、障害物までの距離を測定するような障害物検出装置でもよい。
このような障害物検出装置を、たとえば、車両の前方の障害物を検出するように、1または複数台車両に搭載することにより、図2(a)に示すような障害物33aおよび33bを検出することができる。車両が後退する場合でも、車両の後方の障害物を検出する障害物検出装置を1または複数台車両に搭載することにより、図7(b)に示すような障害物33cおよび33dを検出することができる。
目標経路設定部21は、こうして検出された障害物を回避するような経路を設定し、これを目標経路とすることができる。たとえば、図2(a)に示すような形態の場合、検出された障害物33aおよび33bから所定距離以上離れるよう目標経路を設定する。その後、前述した第1または第2の実施例の手法に従い、ステアリング荷重制御を実施することができる。ここで、所定範囲設定部24は、障害物に近づくにつれて、幅Wまたは角度θにより規定される上記所定範囲が狭くなるように、該幅Wまたは角度θの値を設定することができ、ステアリング制御部25は、該設定された幅Wまたは角度θの値に従って、図5(a)または図10(a)のようなステアリング荷重制御を実施する。こうして、障害物に近づくにつれて、仮想的な“わだち”の幅が狭くなるので、運転者が車両を目標経路に合わせるのがより容易になる。
たとえば、図13を参照すると、障害物81aおよび81bが車両30の前方に存在しており、両者は、車両30に搭載された障害物検出装置(図示せず)によって検出される。目標経路Lは、障害物81aおよび81bを回避するように設定されている。この例では、障害物81bよりも、障害物81aの方が車両30に近い。したがって、障害物81aに近づくまでに、上記幅Wが狭くされている。図には、原点Oから、障害物検出装置によって検出された障害物81aの位置を示すライン83と目標経路Lの交点である位置85に至るまでに、上記幅Wが狭くされている状態が示されている。
また、図に示すように、障害物81aの側面を通過する間にわたり、該幅Wを、狭めた状態に維持するのが好ましい。このようにすることにより、運転者は、障害物に近づくまでに車両30を目標経路Lに合わせると共に、障害物の横を通り過ぎる間にわたって目標経路Lから大きく逸脱しないように、車両30を走行させることが容易となる。
図13において、目標経路Lが、或る値の旋回半径の1つの円弧から形成される場合には、幅Wに関する制御に代えて、第2の実施例に従う角度θに関する制御を実施してもよいのは、言うまでもない。
さらなる代替形態では、障害物検出装置と撮像装置を組み合わせて、図1の周辺状況取得部10を構成してもよい。たとえば、撮像装置により取得された画像上で目標位置が設定されると共に、障害物検出装置によって障害物が検出される。目標経路設定部21は、障害物を回避しつつ、目標位置に到達するための目標経路を設定する。このような経路を設定できなかった場合には、たとえば、運転者に警告等の通知を発することができる。
この形態において、自車両と目標位置の間に障害物が存在するときには、たとえば、該障害物に近づくほど幅Wまたは角度θを狭めるように制御し、障害物から該目標位置までは、該狭めた幅Wまたは角度θを一定に維持するよう制御してもよい。代替的に、障害物の位置に応じて、上記幅Wまたは角度θを増減させるようにしてもよい。たとえば、障害物に近づくほど幅Wまたは角度θを徐々に狭め、障害物を通過した後は該狭めた幅Wまたは角度θを増やし(一時に増やしてもよいし徐々に増やしてもよい)、目標位置に近づくにつれて、再び幅Wまたは角度θを徐々に狭めることができる。
さらに、上記の第1の実施例では、左側ラインL1と目標経路Lとの間の幅Wと、右側ラインL2と目標経路Lとの間の幅Wとを同じ値になるよう設定し、上記の第2の実施例では、左側ラインL1と目標操舵角ラインMとの間の角度θと、右側ラインL2と目標操舵角ラインMの間の角度θとを同じ値になるよう設定したが、本願発明は、これに限定されるものではない。たとえば、障害物検出装置を備える場合には、障害物が検出された方向の幅(または角度)を、障害物が検出されない方向の幅(または角度)よりも狭くなるように設定してもよい。また、第1および第2の実施例では、ステアリング荷重について、左方向への荷重の大きさと右方向への荷重の大きさとを同じ値にしているが、本願発明は、これに限定されるものではない。たとえば、障害物が検出されない方向への荷重を、障害物が検出された方向への荷重よりも大きくするようにしてもよい。これにより、障害物が検出された方向にステアリングホイールが操舵されるのを、より回避することができる。
なお、前述したように設定された目標経路は、表示装置上に表示してもよいし、しなくてもよい。本願発明によれば、表示装置上で運転者が目標経路を確認しなくとも、仮想的な“わだち”があるように運転が支援されるので、運転者は、目標経路から大きく逸脱しないように車両を走行させることができる。
図14は、前述した第1の実施例に従う、制御部12により実行されるステアリング荷重の制御プロセスのフローである。この実施例では、このプロセスは、所定の時間間隔により実行されることができる。代替的に、車両の所定の移動距離ごとに実行するようにしてもよい。
ステップS1において、目標経路が設定されているかどうかを判断し、設定されていなければ、当該プロセスを抜ける。設定されていれば、ステップS2に進む。ステップS2において、車両が目標位置に到達したかどうかを判断し、到達していれば、当該プロセスを抜け、到達していなければ、ステップS3に進む。
ステップS3において、車両の走行軌跡を検出する。これにより、車両の現在位置を検出することができる。ステップS4において、車両の現在位置の、目標経路に対する偏差を算出する。前述したように、車両の現在位置と、目標経路上の対応する位置との間の距離に基づいて、該偏差を算出することができる。
ステップS5において、車両の現在位置に対応する目標経路上の位置に応じた幅Wの値を求める。前述したように、たとえば図4(b)を参照することにより、幅Wを求めることができる。
ステップS6において、ステップS3において算出された偏差が、−Wから+Wの所定範囲内にあるかどうかを判断する。所定範囲内にあれば、ステップS7に進み、該偏差が、左側の偏差か、右側の偏差かを判別する。偏差が−W〜0の間にあるとき左側の偏差と判断され、偏差が0〜Wの間にあるとき右側の偏差と判断される。
左側の偏差の場合には、車両が目標経路に対して左側にずれていることを示すので、ステップS8において、ステアリングを右方向に荷重する。こうして、ステアリングホイールの右方向への操作が重くなるので、車両がより左側に逸脱するのを回避するよう運転を支援することができる。他方、右側の偏差の場合には、車両が目標経路に対して右側にずれていることを示すので、ステップS9において、ステアリングを左方向に荷重する。こうして、ステアリングホイールの左方向への操作が重くなるので、車両がより右側に逸脱するのを回避するよう運転を支援することができる。
ステップS6において、算出された偏差が、−Wから+Wの所定範囲内に無いとき、ステップS10において、ステップS7と同様に、該偏差が、左側の偏差か、右側の偏差かを判別する。偏差が−Wより小さい値を持つとき(偏差<−W)、左側の偏差と判断され、偏差が+Wより大きい値を持つとき(偏差>+W)、右側の偏差と判断される。左側の偏差の場合には、車両が目標経路から大きく左側に逸脱していることを示すので、ステップS11において、方向指示器の右方向インジケータを点灯または点滅する。こうして、運転者に、目標経路に復帰するためにステアリングホイールを右方向に操舵するよう促すことができる。他方、右側の偏差の場合には、車両が目標経路から大きく右側に逸脱していることを示すので、ステップS12において、方向指示器の左方向インジケータを点灯または点滅する。こうして、運転者に、目標経路に復帰するためにステアリングホイールを左方向に操舵するよう促すことができる。前述したように、偏差の大きさが大きくなるにつれて点滅速度を速くしたり、または、偏差の大きさが大きくなるにつれて点滅回数を増やしたりしてもよい。
図14に示すプロセスは、第2の実施例にも同様に適用されることができる。この場合、目標操舵角に対する車両の現在の操舵角に対する偏差を算出すると共に(ステップS4)、当該プロセスの幅Wに代えて、第2の実施例の所で説明した角度θを用いればよい(ステップS5)。
以上のように、この発明の特定の実施形態について説明したが、本願発明は、これら実施形態に限定されるものではない。