JP5019524B2 - 新規ポリ(メタ)アクリレート共重合体ならびに小胞体及びゴルジ体への送達方法 - Google Patents
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Description
このような、糖脂質などの生合成、修飾に重要なゴルジ体や小胞体に所望の物質を選択的に送達する手法は知られてない。
式(I):
で示される繰り返し単位(以下「単位I」ともいう)、
式(II):
で示される繰り返し単位(以下「単位II」ともいう)、及び
式(III):
で示される繰り返し単位(以下「単位III」ともいう)
を含有する共重合体
[式中、
R1、R2、及びR4は、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり;
R3は、炭素数8〜24の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和の1価の炭化水素基(この炭化水素基は、非置換であるか、又はハロゲン若しくはアジド基で置換されている)であり;
R5は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は(ポリ)オキシエチレン基であり;
R6は、炭素数1〜4の2価の炭化水素基であり;
R7、R8、及びR9は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基であり;
Aは、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びエーテル結合からなる群から選択される2価の結合であり;
Lは、単結合であるか又は連結基であり;
Xは、送達されるべき物質の残基である]、ならびにその共重合体を用いる所望の物質の小胞体及びゴルジ体への送達方法に関する。
上記の炭化水素基の炭素数は、通常8〜24であるが、所望の物質を好適に送達できる点から、12〜24が好ましく、その点に加えて、送達された物質が送達された小胞体やゴルジ体から漏れにくくなることも加味できる点から、18〜24が好ましい。
上記の不飽和の炭化水素基は、炭素−炭素単結合の他に、炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合あるいはその両方を、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、最も好ましくは1個含んでいてもよい。上記炭化水素基は、得られる共重合体に良好な細胞膜透過性を付与できる点から、飽和しているものが好ましい。
上記炭化水素基として、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、マルガリル基、ステアリル基、ノナデシル基、アラキジル基、ベヘニル基などの直鎖の高級アルキル基;イソステアリル基などの分岐鎖の高級アルキル基;ミリストレイル基、パルミトレイル基、オレイル基、リノール基、リノレル基、アラキドル基、12−ドコセル基などの不飽和の高級炭化水素基が例示される。また、これらの中でも、得られる共重合体に細胞膜との良好な親和性を付与できることから、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、特にパルミチル基が好ましい。
R6は、炭素数1〜4の2価の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが例示され、エチレンが特に好ましい。
R7、R8、及びR9は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基、例えばメチル又はエチルであり、特にR7、R8、及びR9が、同時に、水素原子又はメチル、特にメチルであることが好ましい。
Aは、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びエーテル結合からなる群から選択される2価の結合であり、エステル結合、アミド結合、特にエステル結合が好ましい。
上記結合が小胞体及びゴルジ体において生理学的に切断、例えば加水分解又は酵素によって切断されると、送達されるべき物質が、本発明の共重合体から遊離し、小胞体及びゴルジ体中でその活性や機能を発揮し得ることもある。このような遊離を可能にして送達されべき物質の活性を発現させる点から、上記結合はエステル結合やアミド結合が好ましい。逆に送達されるべき物質の遊離を抑えることで細胞内の糖鎖合成を抑制することができる場合もある。このような遊離を抑える点から、上記結合はエーテル結合が好ましい。
である。
本発明の共重合体において単位Iと単位IIと単位IIIとの含有比は、本発明の共重合体に適切な細胞膜貫通性、水溶性、生体適合性などを付与する点から、モル比で0.1〜2:0.1〜2:1、特に0.1〜1:0.1〜1:1、とりわけ0.1〜1:0.2〜1:1であるのが好ましい。
上記の単位の比率を変化させる手法は、特に制限されず、原料となる単量体の混合比を調整する方法が例示される。
上記の培養条件は、培養される細胞の種類に応じて当業者が適宜選択してもよいが、血清を培地中に含むことが、所望の物質の小胞体及びゴルジ体への選択的送達が高まる点から好ましい。この点から、血清は上記培養液中に5〜10%含有されるのが好ましい。血清は、細胞培養に通常用いられているものであれば特に制限されず、ウシ胎児血清(FBS)、新生ウシ血清、仔ウシ血清、ウマ血清が例示される。
このような共重合体の境界ミセル濃度(cmc)は慣用の方法で測定できる。
例えば、ピレンを蛍光プローブとして用いて本発明の共重合体の凝集濃度を求めてもよい。ピレンは親水場では334.5nmに発光ピークを示し、疎水場では高波長側にシフトし、336.5nmに発光ピークを示す。共重合体が凝集しピレンが取り込まれると、発光ピークがシフトすることを利用して凝集濃度を求めることができる。溶液中での共重合体の濃度をさまざまに変化させ、それに伴うピレンの励起スペクトルを観察し、その蛍光強度比(334.5nm/336.5nm)を求め、この蛍光強度比を共重合体濃度のLog値に対してプロットする。その変極点を計算することで凝集濃度が求まる。
で示される化合物(以下「単量体I」ともいう)、
式(V):
で示される化合物(以下「単量体II」ともいう)、及び
式(VI):
で示される化合物(以下「単量体III」ともいう)
を重合させて、本発明の共重合体を得ることができる[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、A、L、及びXは、前記で定義されたとおりである]。
すなわち、本発明はこの方法で得られる共重合体にも関する。
開始剤としては、通常のラジカル開始剤であればいずれも用いることができ、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチルアミド二水和物、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスマレノニトリルなどの脂肪酸アゾ化合物、t−ブチルペルオキシネオデカノエート(商品名「パーブチルND」、日本油脂(株)製、以下P−NDと略記する)、又はこれらの混合物などが例示される。上記重合開始剤には各種レドックス系の促進剤を用いてもよい。重合開始剤の使用量は、単量体I、II、及びIIIの合計100重量部に対して0.01〜5.0重量部が好ましい。
このようにして得られた共重合体の精製は、再沈澱法、透析法、限外濾過法など一般的な精製法により行うことができる。
上記単量体中の(ポリ)オキシエチレン部分のオキシエチレン単位の繰り返し数は、本発明の共重合体に適切な水溶性と生体適合性を付与する単位IIIの機能を損なわない限り特に制限されず、例えば、1〜10である。
で示される2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである。
なお、NMR測定には日本電子製のECP-600核磁気共鳴分光計(1H 600MHz;13C 150MHz)を使用して行った。共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、島津製作所製(LC−9A、RID−6A、SPD−10A)を利用し、測定には東ソー製のカラム、TSK-gel G4000PWXL、G3000PWXL、G2000PWXL、G-Oligo PWXLを使用して、GPC法で測定した。標準にはプルランを用いた。試薬は、和光純薬工業株式会社及び東京化成工業より購入し精製せずに用いた。カラムクロマトグラフィー用シリカゲルは、MERCK silica gel(70-230 mesh)を用いた。薄層クラマトグラフィーは、MERCK TLC plate silica gel(60 F2540.25mm)を用いた。
5−アミノ−1−ペンタノールをアクリル化してからグリコシレーションさせた。イミデート基を導入したアセチルラクトース(3)と、5−アミノ−1−ペンタノールをアクリル化して得たN−アクリルペンタノール(10)とをグリコシレーションさせたところ、約10%の収率で化合物7を得た。次いで、脱アセチル化を行ってラクトース担持単量体1を得た。
アルゴン雰囲気下、アセチルラクトース(30g、29.5mol)を80mlのDMFに溶解し、氷浴下でヒドラジン一水和物(1.43ml、1.0eq)を加えた。複数のアセチル基が外れるのを防ぐため、未反応物が残っている状態で濃縮した。続いて、アルゴン雰囲気下、1,2-ジクロロエタン(15ml)に溶解し、トリクロロアセトニトリル(15ml、5.1eq)を加え、室温で撹拌した。氷冷下でDBU(1.8ml、0.4eq)を滴下し、室温で一晩撹拌した。反応終了後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、ベンゼンによる凍結乾燥の後、白黄色固体の標記化合物3(12.8g、2工程、収率55.8%)を得た。
5−アミノ−1−ペンタノール(5ml、46.0mmol)、炭酸ナトリウム(5.85g、1.2eq)をメタノール(50ml)に溶解させ、氷浴下でアクリル酸クロリド(4.5ml、1.2eq)を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応終了後、濃縮し、オープンカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=4:1)により精製し、化合物10(4.79g、62.8%)を得た。
アルゴン雰囲気下、化合物3(3g、3.84mmol)をジクロロメタン(90ml)に溶解し、化合物10(0.91mg、1.5eq)とモレキュラーシーブス(9g)を加え、-30℃まで冷却し、30分撹拌した。三フッ化ホウ素・エーテル錯体(420μl、0.4eq)を0.1Mになるようにジクロロメタンにより希釈し、数回に分けて滴下し-30℃で3時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮しオープンカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:4)で精製し、標記化合物7(0.315g、10.6%)を得た。
化合物7(995mg、1.5mmol)をメタノール(30ml)に溶解させ、ナトリウムメトキシド(4.0mg、0.75eq)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、陽イオン交換樹脂を加え、反応液を中和し、ろ過により樹脂を取り除いた後濃縮し、ラクトース担持単量体1として標記化合物1(720mg)を得た。
片側がFmoc基で保護された1,5−ジアミノペンタンと蛍光物質フルオレセインイソチオシアネート(FITC)を用い、蛍光標識担持単量体13を合成した(スキーム2)。
(9H−フルオレン−9−イル)メチル 5−(アンモニウムクロリド)ペンチルカルバメート(200 mg、0.55 mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、193μl、2.0eq)をDMF(4 ml)に溶解させ、氷浴下でアクリル酸クロリド(50 μl、1.1eq)を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応終了後、反応液を水に滴下することで再沈殿を行った。遠心により沈殿物を集め、10%クエン酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液により洗浄を行った後、凍結乾燥させ白色の標記化合物15を得た。
化合物15(200.1mg、529μmol)をジエチルアミン(10ml)に溶解させ、終夜で攪拌した。反応終了後、濃縮し、クロロホルムにより抽出を行い、水相を集め、凍結乾燥させ白色の標記化合物16(119.2mg、144%)を得た。NMRにより化合物16とジエチルアミンが約1:1で混じっていることが確認できた。
化合物16(19.6mg、2.0eq)、トリエチルアミン(9.9μl、1.1eq)をDMF(250μl)、メタノール(50μl)に溶解させ、遮光下で、FITC(25.6mg、64.2μmol)を加え終夜で攪拌した。反応終了後、分取TLC(クロロホルム:メタノール=2:1)により精製し、蛍光標識担持単量体13として標記化合物13(7.2mg、20.5%)を得た。
ステアリルメタクリレート(11)は東京化成から購入(M0593)し、MPC(12)は文献(特許2870727 または Polymer Journal, 22(5), 355-360 (1990))に従って合成した。
アルゴン雰囲気下、前記で合成したラクトース担持単量体1と、ステアリルメタクリレート(11)と、MPC(12)と、得られる共重合体の細胞内における存在位置を示す前記で合成した蛍光標識担持単量体13とを、これら単量体を併せた全濃度が0.5Mとなるように、表1に示したモル比でDMSO:水=1:1溶媒に溶解させた。これに開始剤としてAPSを2.5×10-2Mとなるように加え、60℃で20時間攪拌した。アセトンを用いた再沈殿法により精製してから、3500cut offの透析膜を用いて3日間透析した後、凍結乾燥させて、例1〜6の共重合体を得た。得られた共重合体の分子量、共重合体中の各単位の組成を表1に示す。
前記で合成した共重合体を細胞に投与し、その結果を顕微鏡により観察することで、該共重合体の細胞内における挙動を観察した。従来の合成修飾剤は細胞に投与すると細胞膜表面を修飾している。そこで、今回合成した共重合体が、細胞に取り込まれないのか、細胞膜に局在するのか、それとも細胞中に取り込まれるのかを確認した。
DMEM(Gibco製)、DMEM/F12(Gibco製)、ウシ胎児血清(FBS)、グルタミン(商品名「ニッスイ」、日水製薬製)、トリプシン-EDTA液(0.25%トリプシン、1mM EDTA-4Na含有)、ダルベッコPBS(−)粉末(商品名「ニッスイ」、日水製薬製)、HBSS(Gibco製)
ヒト子宮頸癌由来細胞(Hela)を用いた。DMEM/F1培地(2mMグルタミン、10%FBS含有)を用い、37℃、5%CO2下で培養し、2〜3日ごとに継代を行った。継代の際には、培地を除去した後、トリプシン-EDTA液を2ml加え、細胞表層を洗浄し、除去した後再度トリプシン-EDTA液を2ml加え、37℃、5%CO2下で5分ほどインキュベートした。このトリプシン-EDTA液を、あらかじめ10ml程度のDMEM/F12培地を加えてあった15ml遠沈管に加え、遠心分離(1000rpm、5分、室温)することで細胞を沈殿させ、上清を除去して、細胞を回収した。その後、再度10mlのDMEM/F12培地を加え、懸濁させ、血球計算板で細胞数を数え1.0×106cells/7ml/dishとなるように播種した。
実験は以下の手順により行った。また、共重合体が取り込まれている細胞内の位置は、共重合体に含まれる蛍光標識からの蛍光を検出することで特定した。核の位置はpropidium iodide(PI)で染色することで特定し、ゴルジ体及び小胞体の位置はWGAレクチン−Alexa647で染色することで特定した。
1) 消毒したカバーガラスを6wellプレートに入れ、24時間前培養した(37℃、5%CO2、3.0×105cells/well)。
2) 培地を除去し、50μg/mlに調整した前記合成した共重合体の溶液を添加し(2ml/well)、1時間インキュベートした(37℃、5%CO2)。
3) HBSSで洗浄した(2ml/well×2回)。
4) メタノールを添加し(0.5ml/well)、5分間インキュベート(室温)して固定した。
5) HBSSで洗浄した(2ml/well×2回)。
6) HBSSを用いて5μg/mlに希釈したWGAレクチン−Alexa647を添加(2ml/well)し、10分間インキュベートした(室温)。
7) HBSSで洗浄した(2ml/well×2回)。
8) HBSSを用いて0.5μg/mlに希釈したPIを添加(1ml/well)し、5分間インキュベートした(37℃、5%CO2)。
9) HBSSで洗浄した(2ml/well×2回)。
10) プレパラート上に退色防止剤をカバーガラス1枚につき1滴滴下した。
11) ピンセットを用いて、カバーガラスを取り出し、退色防止剤を滴下した上に、観察面が下になるようにのせた。
12) カバーガラスの周囲をマニュキュアで覆った。
13) 細胞を観察した。
共重合体中の脂質の有無による違い
ステアリル基を有する共重合体(例4)及びそれを有さない共重合体(例5)をそれぞれ細胞に投与することで、脂質の有無による違いを調べた。その結果を図1に示した。図1より、例4の共重合体をHela細胞に投与したAの写真に注目すると、細胞のいずれかの部位に共重合体が取り込まれていることが確認できた。そこで、核及びゴルジ体・小胞体をそれぞれ染色した写真B及び写真Cと比較したところ、多くの共重合体がゴルジ体・小胞体の染色部位の局在と一致することがわかった。このことより、取り込まれた共重合体はゴルジ体及び小胞体に局在し、核にまでは運搬されないということがわかった。次に、例5の共重合体を細胞に投与した写真Eと比較すると、例5の共重合体はほとんど細胞に取り込まれないことがわかった。
ラクトース及びステアリル基を有する例1〜3の共重合体をそれぞれ細胞に投与した。その結果を図2に示した。図2より、例1〜3の共重合体をHela細胞に投与したA、E、Iの写真に注目すると、ラクトースを多く含む共重合体は細胞に導入されず、ラクトースの含有率を減少させると、細胞により取り込まれやすくなっていることがわかった。また、核及びゴルジ体・小胞体を染色した写真と比較すると、細胞内に取り込まれた多くのポリマーはゴルジ体・小胞体のマーカーの局在と一致することがわかった。ラクトースの含有率が大きくなると、ポリマーの親水性が大きくなるため細胞に取り込まれにくくなるのではないかと考えられる。
例3の共重合体を用いて、インキュベート時間と共重合体の局在を確認した。その結果を図3に示した。図3より、5分間インキュベートした時点ですでに細胞に取り込まれ、かつゴルジ体・小胞体に局在していることがわかった。インキュベート時間が1時間の場合までは、ゴルジ体や小胞体に共重合体が局在していたが、3及び6時間のインキュベート後ではポリマーが細胞全体に広がっていった。
10%FBSを含む培地ではなくITS-X(GIBCO社製)を含む培地を用いて例3の共重合体溶液を調整することで、共重合体の取り込みに対する血清の影響を検討した。その結果を図4に示した。ITS-Xを含む培地と比較して、10%FBSを含む培地の方が、共重合体の細胞内への取り込みが大きいことがわかった。単純な濃度拡散によって細胞内に共重合体が取り込まれるのではなく、キャリアー及びエンドサイトーシス経由で細胞内に取り込まれている可能性が考えられる。
このように細胞内の糖やタンパク質の生合成を制御できるので、糖鎖異常の糖タンパク質や糖脂質などの産生を抑え、正常な糖タンパク質や糖脂質などの生合成を促し、糖鎖異常の糖タンパク質や糖脂質などによる疾患、例えばガンや脳疾患を治療又は予防することができる。
また、ペプチドやタンパク質などへ糖鎖を付与して、糖ペプチド薬剤の生産、あるいは多糖の生産において利用することもできる。特に、本発明の共重合体は、Helaに投与した場合、小胞体やゴルジ体により選択的に送達されることから、このような物質生産ではHela細胞を使用するのが好ましい。
Claims (10)
- 式(I):
で示される繰り返し単位、
式(II):
で示される繰り返し単位、及び
式(III):
で示される繰り返し単位
を含有し、式(I)で示される単位と式(II)で示される単位と式(III)で示される単位との含有比がモル比で0.1〜2:0.1〜2:1であり、数平均分子量が1×10 3 〜1×10 5 である、共重合体
[式中、
R1、R2、及びR4は、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり;
R3は、炭素数8〜24の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和の1価の炭化水素基(この炭化水素基は、非置換であるか、又はハロゲン若しくはアジド基で置換されている)であり;
R5は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は(ポリ)オキシエチレン基であり;
R6は、炭素数1〜4の2価の炭化水素基であり;
R7、R8、及びR9は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基であり;
Aは、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びエーテル結合からなる群から選択される2価の結合であり;
Lは、単結合であるか又は連結基であり;
Xは、送達されるべき物質の残基である]。 - 式(III)で示される繰り返し単位が
である、請求項1記載の共重合体。 - 式(IV):
で示される化合物、
式(V):
で示される化合物、及び
式(VI):
で示される化合物
を重合させて得られる、式(I)で示される単位と式(II)で示される単位と式(III)で示される単位[ここで、式(I)、(II)及び(III)で示される単位は、請求項1に定義されたとおりである]との含有比がモル比で0.1〜2:0.1〜2:1であり、数平均分子量が1×10 3 〜1×10 5 である、共重合体
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、A、L、及びXは、請求項1に定義されたとおりである]。 - 式(VI)で示される化合物が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである、請求項3記載の共重合体。
- R3が炭素数12〜24の炭化水素基である、請求項1〜4のいずれか1項記載の共重合体。
- Lが炭素数1〜12の炭化水素基(この炭化水素基は、中断されていないか、あるいは互いに隣接しない酸素原子若しくは硫黄原子又はその両方により1箇所以上で中断されている)である、請求項1〜5のいずれか1項記載の共重合体。
- 送達されるべき物質が標識である、請求項1〜6のいずれか1項記載の共重合体。
- 請求項7記載の共重合体を含む、小胞体及びゴルジ体の標識用試薬。
- 所望の物質を小胞体及びゴルジ体に送達するための、請求項1〜6のいずれか1項記載の共重合体の使用。
- 所望の物質が標識である、請求項9記載の使用。
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