JP5019201B2 - 導電性塗料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、上記ポリピロール類水分散液を製造する際、酸化重合の酸化剤として使用した塩化第二鉄または硫酸第二鉄及びこれらの酸化剤由来の鉄イオン等が前記水分散液中に残留するため、前記水分散液を使用して塗膜を形成した場合、塗膜中に酸化剤を含むイオン性化合物が混入されるため、混入した酸化剤等により腐食性を呈するという問題及び塗膜の抵抗値の経時安定性が悪くなるという問題があった。
(1)特許文献3に記載の煩雑な精製工程を必要とせず、
(2)分散安定性に優れ、
(3)酸化剤として機能するイオン性化合物の混入が無い、
導電性微粒子を水中に分散させてなる導電性塗料及びその製造方法の提供を目的とする。
(1)導電性微粒子を水中に分散させてなる導電性塗料であって、
前記導電性微粒子は、ポリピロールおよび/またはポリピロール誘導体よりなり、粒径が200nm以下であり、前記微粒子中に、酸化剤のアニオン部とアニオン系界面活性剤、または酸化剤のアニオン部を含有してなる微粒子である導電性塗料、
(2)前記(1)記載の導電性塗料の製造方法であって、
前記導電性微粒子が、有機溶媒と、水と、アニオン系又はノニオン系界面活性剤とを含む乳化液中で、酸化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸第二鉄塩(該アルキルは7ないし20個の炭素原子を有する。)又はアルキルナフタレンスルホン酸第二鉄塩(該アルキルは7ないし20個の炭素原子を有する。)を用いてピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーを酸化重合させることにより得られることを特徴とする製造方法、
(3)前記アニオン系又はノニオン系界面活性剤の量は、前記モノマー1molに対して0.05〜0.20molであることを特徴とする、前記(2)記載の導電性塗料の製造方法、
(4)前記アルキルベンゼンスルホン酸第二鉄塩又はアルキルナフタレンスルホン酸第二鉄塩の量は、前記モノマー1molに対して0.1〜1.5molであることを特徴とする、前記(2)又は(3)記載の導電性塗料の製造方法、
に関する。
本発明に使用される導電性微粒子は、粒径を200nm以下とすることで分散安定性の良い水分散液とすることができる。
また、本発明の該導電性塗料には、腐食性や塗膜の抵抗値の経時安定性の悪化を招く酸化剤として機能するイオン性化合物が製造過程において殆ど混入されないため、該製造方法は、経済性に優れた工業プロセスとなりうるものである。
上記の酸化剤は、主に有機相中に溶解するため、これにより、水相中へのイオン性化合物の混入が抑制されるものと考えられる。
そして、酸化剤のアニオン部が導電性微粒子に含まれることが、導電性微粒子の長期にわたる水中での分散安定性の要因の1つであると考えられる。
また、導電性微粒子に取り込まれた酸化剤のアニオン部は、導電性微粒子の表面抵抗値を低下させるドーパントとしても作用する。
また、本発明の導電性塗料の特徴は、前記導電性微粒子の分散液中に酸化剤等のイオン性化合物の混入が殆どないため、更なる精製を必要としないことである。
乳化液中において重合して得た本発明に使用する導電性微粒子は、図1の電子顕微鏡写真で示されるように、ほぼ均一な粒径を有する粒子であるが、その形成メカニズムの詳細については、まだ解明するに至っていない。
本発明の導電性塗料の製造では、攪拌が停止されると、反応系は有機相と水相の二相に分かれるが、酸化剤等は有機相中に溶解して残存する。ここで水相を分液回収すると、水に分散したポリピロール微粒子を入手することができる。
3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール等が挙げられる。特に好ましいのはピロールである。
疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
具体的には、花王(株)社のエマルゲンシリーズ、レオドールシリーズ、エマゾールシリーズ、エキセルシリーズ、エマノーンシリーズ、アミートシリーズが好適に使用できる。尚、旭電化(株)社の反応性ノニオン系界面活性剤、例えば、アデカリアソープNE−10、アデカリアソープNE−20、アデカリアソープNE−30、アデカリアソープNE−40、アデカリアソープNE−50も好適に使用できる。
尚、上記アルキルが有する炭素原子数の範囲は、通常7ないし20個であり、好ましくは、7ないし16個である。
アルキル基の長さはC7以下になると、酸化剤のアニオン部は界面活性剤としての機能が低くなり、水系にポリピロールを微分散することができなくなる。一方、アルキル基の長さがC20以上になると、親油性が増大することで、酸化剤の有機相における存在比が
増大することから、有機相でのピロールの重合反応が活発になり、結果として、水相でのポリピロールの形成が抑制される。
(a)アニオン系またはノニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーを乳化液中に分散させる工程、(c)モノマーを酸化剤により酸化重合する工程、
(d)水相を分液し導電性微粒子を回収する工程。
また、これらの導電性微粒子は、乾燥させて粉末状の導電性微粒子とすることができ、該粉末状導電性微粒子は、合成樹脂成型品等に導電性充填材等として用いることもできる。
スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム2.5mmolをトルエン150mLに溶解し、さらにイオン交換水175mLを加え20℃に保持しつつ乳化するまで攪拌した。得られた乳化液にピロールモノマー27.5mmolを加え、30分攪拌し、次いでアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸第二鉄溶液50g(0.02mol相当)を添加し、2時間反応を行った。反応終了後、水相を回収し、黒色の導電性微粒子の水分散液
を得た。
図1から明らかなように、実施例1の導電性微粒子は非常に均一な粒径を有するものである。
尚、実施例1で得られた導電性微粒子の粒径分布をMicrotrac社製Nanotrac UPA150を用いてレーザードップラー法により測定した結果、平均114nmであった。
実施例1において、酸化剤をアルキル(C16)ベンゼンスルホン酸第二鉄溶液53g(0.02mol相当)に代えた以外は、実施例1と同様な方法でピロールモノマーを重合した。その結果、導電性微粒子が得られた。得られた導電性微粒子の粒径分布を、Nanotrac UPA150を用いてレーザードップラー法により測定した結果、平均118nmであった。
実施例1において、酸化剤をアルキル(C20)ベンゼンスルホン酸第二鉄溶液55g(0.02mol相当)に代えた以外は、実施例1と同様な方法でピロールモノマーを重合した。その結果、導電性微粒子が得られた。得られた導電性微粒子の粒径分布を、Nanotrac UPA150を用いてレーザードップラー法により測定した結果、平均121nmであった。
実施例1において、酸化剤をアルキル(C7)ベンゼンスルホン酸第二鉄溶液47g(0.02mol相当)に代えた以外は、実施例1と同様な方法でピロールモノマーを重合した。その結果、導電性微粒子が得られた。得られた導電性微粒子の粒径分布を、Nanotrac UPA150を用いてレーザードップラー法により測定した結果、平均153nmであった。
実施例1において、乳化剤をノニオン系界面活性剤エルゲマン430(花王(株)、HLB=16.2)に代えた以外は、実施例1と同様な方法でピロールモノマーを重合した。その結果、導電性微粒子が得られた。得られた導電性微粒子の粒径分布を、Nanotrac UPA150を用いてレーザードップラー法により測定した結果、平均94nmであった。
実施例1において、酸化剤をパラトルエンスルホン酸第二鉄に代えた以外は、実施例1と同様な方法でピロールモノマーを重合した。その結果、導電性微粒子が得られず、その凝集体(サイズ:10μm以上)が得られた。
実施例1において、酸化剤をアルキル(C6)ベンゼンスルホン酸第二鉄に代えた以外は、実施例1と同様な方法でピロールモノマーを重合した。その結果、導電性微粒子が得られたが、その粒径分布を、Nanotrac UPA150を用いてレーザードップラー法により測定した結果、平均730nmであった。
実施例1において、酸化剤をアルキル(C21)ベンゼンスルホン酸第二鉄に代えた以
外は、実施例1と同様な方法でピロールモノマーを重合した。その結果、導電性微粒子が得られたが、その粒径分布を、Nanotrac UPA150を用いてレーザードップラー法により測定した結果、平均800nmであった。
実施例1において、酸化剤をアルキル(C26)ベンゼンスルホン酸第二鉄に代えた以外は、実施例1と同様な方法でピロールモノマーを重合した。その結果、導電性微粒子が得られず、ポリピロールは凝集体(サイズ:10μm以上)となり、トルエン相中に移行した。
実施例1において、酸化剤をFeCl3に代え、ドデシルベンゼンスルホン酸を追加添
加した以外は、実施例1と同様な方法でピロールモノマーを重合した。その結果、導電性微粒子が得られず、ポリピロールは凝集体(サイズ:10μm以上)となり、トルエン相中に移行した。
分散安定性
○:1ヶ月以上安定に分散している
△:1週間で凝集が起こり沈殿する
×:分散してもすぐ凝集する
透明性
○:目視で透明である
△:塗膜中に黒い点が見える
×:厚い塗膜しかできず、塗膜が不透明である
結果を以下の表1に示す。
料として十分に使用可能である。また、導電性微粒子を水に分散させた分散液を基材に塗布した場合の透明性も良好であり、非常に好ましいものであった。
さらに、実施例1〜5において、1週間経過後の塗膜抵抗値を測定したところ、表1に示す初期の塗膜抵抗値とほぼ同等の値であった。なお、実施例1〜5で製造された導電性塗料中には、酸化剤として機能した鉄イオンが微量含有されているが、塗膜抵抗値の経時安定性を悪くする量ではなかった。
比較例1においては、微粒子を形成することができず、ポリピロールは凝集体を形成し、トルエン相中に移行した。
比較例2及び3においては、微粒子は形成できたものの、粒径は200nm以上となり、塗料の分散安定性及び塗膜の透明性は実施例1〜5で示されたものには及ばなかった。
また、比較例2において、1週間経過後の塗膜抵抗値を測定したところ、1013Ωであった。つまり、塗膜抵抗値の経時安定性が悪いものであった。この原因として、比較例2で製造された導電性塗料中に、酸化剤として機能した鉄イオンが含有されており、この鉄イオンが塗膜中で腐食したことが考えられる。
比較例4においては、微粒子を形成できなかった。ポリピロールは凝集体を形成し、トルエン相中に移行した。
比較例5においては、微粒子を形成できなかった。
以上により、本発明に使用する酸化剤は、そのアニオン部が特定のアルキル鎖長を有する界面活性剤としての機能を有するものであることが必要であることが明らかとなった。
この場合、窒素原子の含有量は導電性微粒子中のピロールの量に対応し、硫黄原子の含有量は導電性微粒子中のアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンの量に対応することになる。
分析に用いたサンプルは、以下に示す2種のサンプルを用いた。
(1)実施例5で得られた導電性微粒子の分散液から水を留去して乾燥させたポリピロール微粒子
(2)上記で得られたポリピロールの乾燥物をブタノールと水で十分洗浄した後、乾燥させたポリピロール微粒子
尚、ポリピロール微粒子中におけるピロールとアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンは、下式で示されるような構造をとっていると考えられ、そして、該構造からアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンは導電性微粒子の抵抗値を低下させるドーパントとして作用していると考えられる。
、即ち、3つのピロールに対して1つのアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンが存在する場合であり、この場合、1010Ω未満の抵抗値が得られやすくなる。
上記の場合のピロールとアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンの質量比は、ピロール:アルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオン=1:1.66となる。
上記の計算方法は以下の通りであるが、ここで、ピロールの分子量は65.3、アルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンの分子量は325として計算した。
65.3×3:325=1:1.66
上記(1)及び(2)で得られたポリピロール微粒子の実測による窒素原子の含有量及び硫黄原子の含有量からピロールとアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンの質量比を算出し、上記計算による理想的な質量比との対比を行った。
尚、計算式は以下の通り。
ピロールの質量=窒素原子の含有量×65.3/14
アルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンの質量=硫黄原子の含有量×325/32
上記の計算の結果、(1)で得られたポリピロール微粒子は、ピロール:アルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオン=1:2であり、(2)で得られたポリピロール微粒子は、ピロール:アルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオン=1:1.5であった。
(2)で得られたポリピロール微粒子の質量比は、理想的な質量比1:1.66に近い値である1:1.5であった。即ち、最も効果的にアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンがドーパントとして作用する、3つのピロールに対して1つのアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンが存在する構造に近い構造であることが確認できた。
以上により、洗浄により、過剰なアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンが除去され、洗浄後に残存するアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンはドーパントとして作用するものと推定された。
また、洗浄を行わなかった(1)で得られたポリピロール微粒子を用いて作成された塗膜の抵抗値は、8.1×108Ωであったのに対して、洗浄を行った(2)で得られたポ
リピロール微粒子を用いて作成された塗膜の抵抗値は、3.2×107Ωと1桁低い値を
示した。
これにより、洗浄により除去されたアルキル(C12)ベンゼンスルホン酸アニオンはドーパントとして作用しておらず、そのため、除去されることにより、逆に抵抗値が低下したものと考えられた。
Claims (3)
- 導電性塗料の製造方法であって、
該導電性塗料は、導電性微粒子を水中に分散させてなる導電性塗料であって、
前記導電性微粒子は、ポリピロールおよび/またはポリピロール誘導体よりなり、粒径が200nm以下であり、前記微粒子中に、酸化剤のアニオン部とアニオン系界面活性剤、または酸化剤のアニオン部を含有してなる微粒子である導電性塗料であり、
前記導電性微粒子が、有機溶媒と、水と、アニオン系又はノニオン系界面活性剤とを含む乳化液中で、酸化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸第二鉄塩(該アルキルは7ないし20個の炭素原子を有する。)又はアルキルナフタレンスルホン酸第二鉄塩(該アルキルは7ないし20個の炭素原子を有する。)を用いてピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーを酸化重合させることにより得られることを特徴とする製造方法。 - 前記アニオン系又はノニオン系界面活性剤の量は、前記モノマー1molに対して0.05〜0.20molであることを特徴とする、請求項1記載の導電性塗料の製造方法。
- 前記アルキルベンゼンスルホン酸第二鉄塩又はアルキルナフタレンスルホン酸第二鉄塩の量は、前記モノマー1molに対して0.1〜1.5molであることを特徴とする、請求項1又は2記載の導電性塗料の製造方法。
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