しかしながら、可食性フィルムは酸素ガスに関してはガスバリア性が高いものがあるものの、他のガスや水蒸気に関してはバリア性の低いものが多く、ガスや水蒸気の透過によって袋状収容体に収容された製剤が劣化・変質するおそれがある。また、製剤が揮発成分を含有する場合、その成分が可食性フィルムを透過して袋状収容体の外部に揮散してしまうおそれもある。更に、袋状収容体を構成する可食性フィルムが水溶性の場合は、外部環境中の水分によって吸湿し、形状に変化を生ずるおそれやフィルム同士が付着するおそれがある。そのため、上記の発明は保存性の点で更なる工夫を要するものであった。
加えて、製剤を袋状収容体ごと服用するためには、環境中のホコリや微生物等の付着による袋状収容体の汚染を防止する必要もある。ここで、製剤包装体の保存性を高めると共に袋状収容体の汚染を防止するためには、製剤包装体を更に包装することを想定し得るが、上記の製剤包装体は服用に際して煩雑な作業を要さず服用し易いという利点を有するため、更に包装することによってこの利点が失われないことが要請される。
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、可食性フィルムにより形成された袋状収容体に製剤が収容された製剤包装体であって、保存性が高められ、ホコリ等の付着による汚染が防止されていると共に、服用し易い製剤包装体の提供を課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明にかかる製剤包装体は、「重畳された可食フィルムがシールされて形成された周状のシール部を備える袋状収容体、及び、経口摂取用の薬物成分を含有し前記袋状収容体に収容された製剤を備える製剤包装体であって、前記シール部の内周を外側から囲むように前記袋状収容体に設けられた切り離し線と、前記袋状収容体を表裏面からそれぞれ被覆すると共に、前記切り離し線より外側で前記袋状収容体に接着されたガスバリア性の一対の被覆フィルムとを」具備している。
「可食フィルム」は、可食性のフィルム形成剤を用いて形成することができ、可食性のフィルム形成剤としては、例えば、キチン、キトサン、カゼイン、カゼインナトリウム、ゼラチン、コラーゲン、大豆タンパク、卵白、デンプン、ペクチン、アラビノキシラン、大豆多糖類、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、グルコマンナン、ガラクトマンナン、キサンタンガム、プルラン、ツェイン、セラック等の天然高分子、デキストリン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、ヒプロメロース(HPMC;旧日本薬局方名「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、水溶性ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の半合成高分子、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコールポリビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド(PAA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)等の合成高分子を使用することができる。また、複数種類のフィルム形成剤を適宜配合して使用することもできる。
「可食フィルム」は、上記の可食性のフィルム形成剤に加えて、他の成分を含有させて形成させることもできる。例えば、可塑剤として、クエン酸トリエチル、グリセリン、ソルビトール、トリアセチン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプルピレン(5)グリコール、ポリソルベート、マクロゴール、モノステアリン酸グリセリン、マンニトール等を含有させることにより、可食フィルムの柔軟性を高め、ひび割れや破れ等の発生を防止することができる。また、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、キシリトール、カンゾウ等の矯味剤やスペアミントフレーバー、レモンフレーバー、メントール等の香料を含有させることにより、袋状収容体に味付けや香り付けをし、収容される製剤の味や臭いをマスキングすることができる。更に、乳化剤や着色剤等を含有させて可食フィルムを形成することもできる。
「シール」は、外部加熱による加熱圧着や、電波や超音波を用いた内部加熱による加熱圧着により行うことができる。或いは、糊化した高粘度のデンプン等を接着剤とした圧着や、可食フィルムの周縁部に水等を塗布し部分的に溶解させて圧着する等、加熱を伴わない圧着により行うこともできる。なお、凹型と凸型を用いてシールすることにより、エンボス圧着加工を行うこともできる。また、シール部の「周状」は、ある程度の幅を有する周状であっても、幅が小さく線に近い周状であっても良い。
可食フィルムの「重畳」としては、二枚の可食フィルムが重ね合わされた態様、一枚の可食フィルムが折り返されて重ね合わされた態様を例示することができる。また、袋状収容体の形状は特に限定されず、平面視で四角形、三角形、五角形、六角形等の多角形状や、円形、楕円形等とすることができる。
「製剤」の剤形は特に限定されず、散剤(粉末剤)、顆粒剤、丸剤、錠剤、液剤、練剤等を用いることができる。また、後述のフィルム状製剤やその粉砕剤を用いることもできる。更に、製剤に含有される「薬物成分」は、経口摂取用であれば特に限定されず、いわゆる西洋薬の医薬品の成分に加え、生薬や生薬を組み合わせた漢方薬の成分とすることができる。なお、本発明では、「製剤」は医薬品に限定されるものではなく、ビタミンやミネラル等不足しがちな栄養成分の補給を目的とした食品のうち、顆粒剤、錠剤など通常の食品の形態ではない栄養補助食品をも含む意で用いている。
なお、製剤として液剤を収容する場合は、液剤に対して不溶性のフィルム形成剤を用いて可食フィルムを形成する、或いは、液剤に対して不溶性の層を可食フィルムの内側にコーティングすることが望ましい。例えば、液剤が水系の場合、水溶性高分子を架橋構造とすることにより水に難溶とした可食フィルムを使用することができる。或いは、水溶性の可食フィルムの内側に疎水性材料をコーティングしても良く、疎水性材料としては、セラック、蜜蝋、サトウキビ蝋、カルナウバ蝋、ロジン等の天然樹脂を使用することができる。
「切り離し線」としては、切り残された部分を有する比較的長い切込み線やミシン目状の切断線を例示することができる。また、切り離し線が「シール部の内周を外側から囲むように」設けられる形態としては、ある程度の幅のあるシール部の領域中に切り離し線が設けられる場合、シール部を内側にし、シールされていない領域中に切り離し線が設けられる場合を例示することができる。なお、切り離し線はシール部の内周の形状とは無関係に設けることができ、例えば、シール部が円周状や四角形の周状に形成されているとき、切り離し線はこれを囲むように円形状、半円形状、楕円形状、四角形状に設けることができる。また、これらの形状において、外周が波形やギザギザした歯形状となるように切り離し線を設けることもできる。
「ガスバリア性の被覆フィルム」としては、ガスバリア性を有する包装用フィルムとして周知のものを使用することができ、例えば、アルミニウム箔、蒸着やスパッタリングによって金属や無機酸化物の薄膜が形成されたフィルム、ポリ塩化ビニリデン等のガスバリア性の高い材料をコーティングしたフィルムを使用することができる。
なお、「ガスバリア性」は一般的に二酸化炭素、窒素、酸素で評価されることも多く、日本工業規格ではガス透過度(JIS K7126)と水蒸気の透過に関する透湿度(JIS K7107)とを区別しているが、本明細書及び特許請求の範囲では、水蒸気に対するバリア性を含めて「ガスバリア性」の語を用いている。
被覆フィルムと袋状収容体(袋状収容体を構成する可食フィルム)との「接着」は、プルラン、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール等の熱可塑性のフィルム形成剤で可食フィルムを形成し、被覆フィルムと加熱圧着することにより行うことができる。或いは、これらの熱可塑性のフィルム形成剤、または大豆タンパクや卵白等のタンパク質を接着剤として被覆フィルム及び可食フィルムの少なくとも何れか一方に塗布し、加熱圧着することにより行うことができる。
上記の構成により、本発明によれば、製剤が収容されている袋状収容体が表裏面から被覆フィルムで被覆されているため、袋状収容体へのホコリや微生物等の付着による汚染が防止される。また、被覆フィルムはガスバリア性であるため、ガスの透過による製剤の変質・劣化や、製剤中の揮発成分の外部への散失が抑制されると共に、袋状収容体を構成する可食フィルムの吸湿が抑制される。
そして、袋状収容体では周状のシール部に囲まれた未シール部によって形成される中空空間に製剤を収容でき、シール部の内周を外側から囲むように切り離し線が設けられていることにより、切り離し線より内側の部分を製剤を含めて他の部分から切り離し、服用することができる。このとき、被覆フィルムは切り離し線より外側で袋状収容体に接着されており、切り離して服用する部分(以後、便宜上「経口投与部」と称する)には被覆フィルムが接着されていないため、経口投与部を被覆する部分の被覆フィルムを取り除き易く、経口投与部のみを容易に服用することができる。なお、服用のし易さを考慮すると、経口投与部の最長部分の長さが10mm〜20mmとなるように切り離し線を設けることが望ましい。
本発明にかかる製剤包装体は、「一対の前記被覆フィルムの少なくとも何れか一方は、第一被覆フィルム及び第二被覆フィルムによって構成され、前記第一被覆フィルムは、前記袋状収容体に接着されると共に、前記袋状収容体の少なくとも前記切離し線より内側の部分を露呈させる開口部を具備し、前記第二被覆フィルムは前記開口部を被覆すると共に、少なくとも前記開口部の周縁に沿って前記第一被覆フィルムに剥離可能に接着されている」ものとすることができる。
第一被覆フィルム及び第二被覆フィルムによって構成される被覆フィルムは、一対の被覆フィルムの一方であっても両方であっても構わない。また、第一被覆フィルム及び第二被覆フィルムは、同一種類のフィルムであっても異なる種類のフィルムであっても良い。
「開口部」は、袋状収容体の少なくとも切り離し線より内側の部分、すなわち経口投与部を開口内に露呈させるものであれば良く、袋状収容体において切り離し線より若干外側の部分を含めて開口内に露呈させるものであっても良い。また、開口部は経口投与部の位置(切り離し線の設けられる位置)に対応して設けられるが、開口部の形状は経口投与部の形状とは無関係に設定することができる。例えば、経口投与部が円形であっても四角形であっても、開口部はこれを露呈させるように円形、楕円形、四角形等の種々の形状に設けることができる。
第二被覆フィルムは「少なくとも開口部の周縁に沿って」第一被覆フィルムに接着されるものであれば、開口部の周縁部のみで第一被覆フィルムに接着されるものであっても、第一被覆フィルムの全面に接着されるものであっても良い。また、第一被覆フィルムと第二被覆フィルムとの「接着」は、ポリエチレンやポリプロピレン等の接着剤層(シーラント)を積層し、加熱圧着することにより行うことができる。なお、「剥離可能な接着」の「剥離」は、凝集剥離、層間剥離、界面剥離の何れであっても良い。
上記構成により、本発明によれば、可食フィルムで構成された袋状収容体は、開口部から露呈する部分を除いて第一被覆フィルムによって被覆されていると共に、開口部から露呈する部分は第二被覆フィルムによって被覆されており、加えて、第二被覆フィルムは少なくとも開口部の周縁に沿って第一被覆フィルムと接着されているため、袋状収容体の表裏面は被覆フィルムによって全体的に被覆されていることとなる。これにより、ホコリや微生物等の付着による経口投与部の汚染が防止されると共に、可食フィルムの吸湿や、ガスの透過による製剤の変質・劣化が抑制される。
また、第一被覆フィルムには開口部が設けられ、しかも開口内に経口投与部が位置するように設けられているため、開口部を被覆する第二被覆フィルムを取り除くことにより、経口投与部が容易に外部環境中に露呈する。このとき、第二被覆フィルムの第一被覆フィルムへの接着は剥離可能なものであり、第二被覆フィルムは経口投与部には接着されていないため、第二被覆フィルムを容易に開口部から取り除くことができる。これにより、開口部に露呈した経口投与部を切り離し、簡易且つ速やかに服用することができる。
本発明にかかる製剤包装体は、「前記第一被覆フィルムはアルミニウム箔であり、前記第二被覆フィルムは透明または半透明のフィルムである」ものとすることができる。
「透明または半透明」のガスバリア性の被覆フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等の透明または半透明のプラスチックフィルムに、真空蒸着やプラズマ蒸着等によって酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の薄膜が形成されたフィルムを使用することができる。
上記構成により、袋状収容体に直接接着される第一被覆フィルムが、ガスバリア性や遮光性に非常に優れるアルミニウム箔で構成されているため、袋状収容体を構成する可食フィルムの保存性が高いものとなる。また、開口部を被覆する第二被覆フィルムが透明または半透明であるため、製剤が収容されている部分を視認することができる。これにより、需要者が安心感を持って使用することができると共に、同様の形態の製剤包装体が複数ある場合でも内容物を識別し易く、製剤の誤用を防止することができる。
本発明にかかる製剤包装体は、「前記第二被覆フィルムは、端部に摘み用舌片となる領域を残して前記第一被覆フィルムに接着されている」ものとすることができる。
上記構成により、本発明によれば、第二被覆フィルムの端部に第一被覆フィルムに接着されていない部分が設けられており、これを摘み用舌片として用いることができる。そして、摘み用舌片を指先で摘むことにより第二被覆フィルムをめくり上げる操作がし易く、第二被覆フィルムを容易に剥離することができる。
また、摘み用舌片となる端部以外の部分では第二被覆フィルムが第一被覆フィルムに接着されているため、第二被覆フィルムにおいて接着されていない部分の面積が多い場合に比べ、剥離させる必要のないときに第二被覆フィルムが不用意に剥がれてしまうおそれを低減することができる。
なお、摘み用舌片となる部分の第二被覆フィルムは、第一被覆フィルムの端部より外側に突出させることにより、より指先で摘み易いものとすることができる。この場合、突出させる部分の形状は三角形状、半円弧状など種々の形状とすることができる。
本発明にかかる製剤包装体は、「前記袋状収容体は、少なくとも一方向に複数が連設され、前記第二被覆フィルムは、隣接する前記袋状収容体の境界に略対応する位置に設けられた破断部を具備する」ものとすることができる。
複数の袋状収容体の「連設」は、少なくとも一方向に連設されるものであれば、一列に連設されるものであっても、二列以上の複数列に連設されるものであっても良い。
「破断部」としては、ミシン目状の切断線、切り残された部分を有する比較的長い切込み線、一軸延伸フィルムにVノッチ等の開封端を形成したもの、カットテープを例示することができる。
上記構成により、本発明によれば、複数が連設された形態が製剤包装体の一単位となるため、流通過程での取扱いや需要者による保存・携帯が便利なものとなる。更に、使用の際は、第二被覆フィルムに形成された破断部を破断させることにより、個々の袋状収容体ごとに第二被覆フィルムを剥離することができる。これにより、隣接する袋状収容体に影響を与えることなく、第二被覆フィルムを一個単位ずつ剥離することができる。
本発明にかかる製剤包装体は、「前記破断部は不連続な切断線で構成され、前記第二被覆フィルムの一方の側辺を始端とし他方の側辺に向かって延びると共に、終端は前記第二被覆フィルムの側辺より内側に位置する」ものとすることができる。
上記に例示した破断部のうち、ミシン目状の切断線、切り残された部分を有する切込み線が「不連続な切断線」に該当する。
上記構成により、本発明によれば、破断部たる不連続な切断線の終端が第二被覆フィルムの側辺にまで達していないため、第二被覆フィルムを剥離する際、終端より先の部分が切り離されることなく製剤包装体に付いたまま残る。これにより、経口投与部を一個ずつ切り離して服用するたびごとに、第二被覆フィルムが一片ずつ切り離されてゴミとなることを防止することができる。
以上のように、本発明の効果として、可食性フィルムにより形成された袋状収容体に製剤が収容された製剤包装体であって、保存性が高められ、ホコリ等の付着による汚染が防止されていると共に、服用し易い製剤包装体を提供することができる。
以下、本発明の最良の一実施形態である製剤包装体について、図1乃至図7を用いて説明する。ここで、図1は本実施形態の製剤包装体の(a)斜視図及び(b)分解斜視図であり、図2は図1(a)におけるX−X線端面図であり、図3はシールする領域を説明する平面図であり、図4は他の実施形態の製剤包装体を示す斜視図であり、図5は更に他の実施形態の製剤包装体を示す分解斜視図であり、図6は図5の製剤包装体の斜視図であり、図7は製剤包装体の使用方法を説明する説明図である。なお、図1,図2,図4〜図7では、構成を明示するためにフィルムの厚さ方向の寸法を誇張して表している。また、図3では、シールされた領域または接着された領域を網掛けで表している。更に、何れの図面においても袋状収容体に収容されている製剤は省略している。
本実施形態の製剤包装体11は、図1及び図2に示すように、重畳された可食フィルム1がシールされて形成された周状のシール部2(図3(a),(b)参照)を備える袋状収容体3と、経口摂取用の薬物成分を含有し袋状収容体3に収容された製剤とを備える製剤包装体11であって、シール部2の内周2cを外側から囲むように袋状収容体3に設けられた切り離し線30と、袋状収容体3を表裏面からそれぞれ被覆すると共に、切り離し線30より外側で袋状収容体3に接着されたガスバリア性の一対の被覆フィルム20a,20bとを具備している。
ここで、可食フィルム1は、例えば、可食性のフィルム形成剤を液媒体に溶解させ高粘度の溶液を調製する工程と、高粘度溶液を基面上に流延する工程と、流延された溶液を乾燥させてフィルムを形成させる工程と、形成されたフィルムを基面から剥離する工程を経て製造することができる。
本実施形態では、重畳された可食フィルム1は、シール部2の内周2cが円形となるように加熱圧着(ヒートシール)されている。なお、このシールは、図3(a)に示すようにシール部2が幅のある円周状(ドーナツ状)に形成されるものであっても、図3(b)に示すように未シール部となる部分を円形に残し、その他の部分が全面的にシールされてシール部2が形成されるものであっても良い。
製剤は、シール部2の内側の未シール部によって形成される中空空間4に収容されるが、このような製剤の封入は、例えば次のように行うことができる。まず、未シール部に相応する円形の凹部が形成された基面に可食フィルム1を載せ、基面に穿設された微小な貫通孔を介して、基面の裏面から空気を吸引すると、可食フィルム1が基面の凹部に沿って変形する。そこに計量された製剤を入れ、その上からもう一枚の可食フィルム1をかぶせてヒートシールする。これにより、可食フィルム1による袋状収容体3の形成と、袋状収容体3への製剤の封入とが同時に行われる。なお、可食フィルム1のヒートシールは、後述する被覆フィルム20b,21,22のヒートシールと同時に行うこともできる。
なお、ヒートシールを良好に行うために、可食フィルム1の少なくともシール部2となる部分に、ゼラチン、カゼインナトリウム、ツェイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、加工デンプン、プルラン、アラビノキシラン、大豆タンパク等のヒートシール性に優れる可食性のフィルム形成剤を積層しても良い。
上記のように、可食フィルム1で構成された袋状収容体3に製剤を収容し、袋状収容体3ごと製剤を服用することにより、可食フィルム1の溶解性を調整し薬物成分を主に体内のどこで吸収させるかを、製剤ではなく袋状収容体によって調整することができる。例えば、即効性が要求される製剤の場合は、ゼラチン、プルラン、アルギン酸ナトリウム等の水溶性の可食フィルムで袋状収容体を構成させることにより、口腔内の水分によって袋状収容体を溶解または崩壊させ、薬物成分を口腔内の粘膜から速やかに吸収させることができる。また、フィルム形成剤の水溶性が高い場合は、袋状収容体は口腔内の水分によって自然に溶解または崩壊し易く、水なしで服用することも可能となり、嚥下機能の低い人であっても製剤を服用し易いものとなると共に、場所を問わず服用できる携帯性に優れた製剤となる。逆に、可食フィルムの水溶性を低下させて口腔内で溶け難いものとし、薬物成分を穏やかに作用させることもできる。また、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE等の胃溶性の可食性フィルム形成剤や、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等の腸溶性の可食性フィルム形成剤を用いて可食フィルムを形成することにより、製剤の溶解性に関わらず製剤を胃溶性や腸溶性にすることができる。
袋状収容体3において、経口投与部8を切り離し可能とする切り離し線30は、切り残されたつなぎ部35と、比較的長い切込み31,32(図3(d)参照)によってシール部2の内周2cとほぼ同心の略円形に形成されている。この切り離し線30より内側の部分が、袋状収容体3から切り離されて服用される経口投与部8に相当する。
一対の被覆フィルム20a,20bのうち、袋状収容体3の裏面を被覆する被覆フィルム20bはアルミニウム箔によって構成されている。一方、袋状収容体3の表(おもて)面を被覆する被覆フィルム20aは第一被覆フィルム21及び第二被覆フィルム22によって構成されている。ここで、本実施形態の第一被覆フィルム21はアルミニウム箔であり、開口部25を具備している。この開口部25は円形であり、その直径は経口投与部8の外形の直径よりやや大きく(直径として1〜5mm程度大きく)設定されている。そして、図3(c)に示すように開口部25が経口投与部8と同心となる位置で、開口部25を除く第一被覆フィルム21が全面的に袋状収容体3の表面の可食フィルム1に接着され、開口部25からは経口投与部8及びその周縁の可食フィルム1が露呈している。
また、第二被覆フィルム22は、透明なポリエチレンテレフタレートに無機酸化物が蒸着されたフィルムで構成されている。ここで、第二被覆フィルム22の形状は、略四角形の部分の一辺からこの一辺を底辺とする略三角形が延設された略五角形とされており、図3(d)に示すように略四角形の部分が開口部25を被覆する部分を除き第一被覆フィルム21に剥離可能に接着されることにより、未接着の略三角形の部分が摘み用舌片27となっている。更に、本実施形態では、第一被覆フィルム21及び被覆フィルム20aにおいて、摘み用舌片27の頂点に対応する位置に、略円弧状の切欠き部29が設けられている。
ここで、袋状収容体3を構成する可食フィルム1と第一被覆フィルム21(アルミニウム箔)との接着、及び可食フィルム1と被覆フィルム20b(アルミニウム箔)との接着は、タンパク質、或いは、プルラン、HPMC、PVA等の熱可塑性樹脂を接着層としてヒートシールすることにより行うことができる。また、第一被覆フィルム21(アルミニウム箔)と第二被覆フィルム22(透明のガスバリア性フィルム)との接着は、第一被覆フィルム21及び第二被覆フィルム22の少なくとも何れか一方に接着層を積層し、ヒートシールすることにより行うことができる。例えば、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等、種類の異なる熱可塑性樹脂を混合した接着層を第一被覆フィルム21及び第二被覆フィルム22の両方に積層してヒートシールすることにより、凝集剥離可能に両者を接着することができる。
なお、可食フィルム1と第一被覆フィルム21とを接着させるヒートシール、可食フィルム1と被覆フィルム20bとを接着させるヒートシール、及び、第一被覆フィルム21と第二被覆フィルム22とを接着させるヒートシールは、同時に行うことも別個に行うこともできる。また、これらのヒートシールは、上述のように、重畳させた可食フィルム1同士をシールするヒートシールと、同時に行うことも別個に行うこともできる。
一個の製剤包装体11が一個の袋状収容体3を具備する上記の形態の他、図4に示すように、複数の袋状収容体3が一列に連設された製剤包装体12とすることもできる。この製剤包装体12の第二被覆フィルム22には、隣接する袋状収容体3の境界に対応する位置に、ミシン目状の切断線40が形成されている。この切断線40は、第二被覆フィルム22の一方の側辺を始端41として他方の側辺に向かって延びるており、終端42は第二被覆フィルム22の側辺にまで達することなく、側辺より内側に位置している。なお、切断線40が本発明の「破断部」及び「不連続な切断線」に相当する。
また、複数の袋状収容体3を複数列に連設させることもでき、例えば、図5及び図6に示すように、袋状収容体3が二列に連設された製剤包装体13とすることもできる。この製剤包装体13においても、製剤包装体12の場合と同様に、切断線40は第二被覆フィルム22の側辺を始端41とすると共に終端42は側辺より内側に位置しているため、一列目に属する切断線40と二列目に属する切断線40は、連続することなく離れている。
なお、製剤包装体11,12,13の何れにおいても、切り離し線30は円弧状の三つの切込みが三箇所のつなぎ部35を介して略円形を形成するように設けられており、図3(d)に示すように、三つの切込みのうち一つの切込み31は半円分の円弧状であり、二つの切込み32は四分の一円分の円弧状に形成されている。そして、略円形の切り離し線30において、第二被覆フィルム22に摘み用舌片27が設けられている側の側辺側の半円部分に切込み31が配設されている。換言すれば、略円形の切り離し線30において、側辺側の半円部分にはつなぎ部35は存在しない設定となっている。
次に、上記の実施形態の製剤包装体11,12,13の使用方法について、製剤包装体13を例として図7を用いて説明する。なお、図7において斜線を付した部分は、透明な第二被覆フィルムである。
使用の際は、まず摘み用舌片27を指先で摘み、持ち上げる。このとき、第一被覆フィルム21及び被覆フィルム20bには、摘み用舌片27の頂点に対応する位置に切欠き部29が形成されているため、摘み用舌片27がより摘み易いものとなっている。
製剤包装体11の場合は、更に摘み用舌片27をめくり上げて第二被覆フィルム22を剥離すれば、経口投与部8が開口部25内に露呈する。製剤包装体12,13の場合は、隣接する袋状収容体3との境界に対応する位置に設けられている切断線40に沿って、第二被覆フィルム22を切断させながらめくり上げることにより、一個の経口投与部8が開口部25内に露呈する。このとき、切断線40の終端42は第二被覆フィルム22の側辺には達していないため、第二被覆フィルム22は完全に剥離されることなく製剤包装体13に付いたまま残る。
そして、開口部25に露呈している経口投与部8を切り離し線30で切り離すことにより、経口投与部8のみを製剤包装体13から分離させ、服用することができる。経口投与部8を切り離す際は、略円形の切り離し線30において摘み用舌片27が設けられている側の側辺側の半円部分にはつなぎ部35は存在しないため、切り離し線30より外側の部分を下方に向けて撓ませることにより、半円形の切込み31に沿って経口投与部8が浮き上がる。これにより、経口投与部を切り離す操作を極めて容易に行うことができる。また、開口部25の径は経口投与部8の径より若干大きく設定されており、切り離し線30が開口部25の内周縁と重畳していないため、このことによっても経口投与部8を切り離す操作がし易いものとなっている。
上記のように、本実施形態の製剤包装体11,12,13によれば、可食フィルム1で構成された袋状収容体3には、開口部25から露呈する部分を除いて第一被覆フィルム21が接着されていると共に、開口部25から露呈する部分は第二被覆フィルム22によって被覆されており、加えて、第二被覆フィルム22は開口部25を被覆する部分及び摘み用舌片27を除いて第一被覆フィルム21に接着されているため、袋状収容体3の表裏面は被覆フィルム21,22,20bによって全体的に被覆されている。これにより、ホコリや微生物等の付着による経口投与部8の汚染が防止されると共に、可食フィルム1の吸湿や、ガスの透過による製剤の変質・劣化が抑制される。
また、第二被覆フィルム22を剥離すれば、第一被覆フィルム21の開口部25に経口投与部8が容易に露呈するため、切り離し線30で経口投与部8を切り離し、簡易且つ速やかに服用することができる。加えて、第二被覆フィルム22の端部には第一被覆フィルム21に接着されていない摘み用舌片27が設けられており、第一被覆フィルム21及び被覆フィルム20bにおいて摘み用舌片27に対応する位置には切欠き部29が形成されているため、摘み用舌片27を指先で摘んで第二被覆フィルム22を剥離する操作がし易いものとなっている。
更に、袋状収容体3に直接接着される被覆フィルム20b及び第一被覆フィルム21が、ガスバリア性及び遮光性に非常に優れるアルミニウム箔で構成されているため、袋状収容体3を構成する可食フィルム1の保存性が高いものとなっている。また、開口部25を被覆する第二被覆フィルム22が透明であり、第二被覆フィルム22を介して経口投与部8を視認することができるため、需要者が製剤が収容された様子を確認することができ、安心感を持って使用できる製剤包装体11,12,13となる。また、製剤の誤用を防止することもできる。
また、製剤包装体12,13では複数の袋状収容体3が連設された形態が一単位となるため、流通過程での取り扱いや需要者による保存・携帯が便利なものとなっている。更に、製剤包装体12,13の第二被覆フィルム22には切断線40が設けられているため、隣接する経口投与部8を被覆する部分の第二被覆フィルム22に影響を及ぼすことなく、一個の経口投与部8を被覆する部分の第二被覆フィルム22のみを剥離することができる。加えて、第二被覆フィルム22は完全には剥離されずに製剤包装体に付いたまま残るため、経口投与部8を一個ずつ切り離して服用する度ごとに、剥離された第二被覆フィルム22が一片ずつ切り離されてゴミとなることが防止されている。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、第一被覆フィルムがアルミニウム箔で構成されると共に第二被覆フィルムが透明のフィルムで構成される場合を例示したが、これに限定されず、経口投与部を外部から視認する必要がない場合は、第一被覆フィルム及び第二被覆フィルムを共にアルミニウム箔で構成させることもできる。これにより、ガスバリア性や遮光性により優れた被覆フィルムとなる。
また、摘み用舌片を略三角形状に形成した場合を例示したが、これに限定されず、外側に膨出する円弧状や四角形状に形成することもできる。更に、開口部を円形とする場合を例示したが、これに限定されず、楕円形や多角形等の種々の形状にすることができる。
加えて、切り離し線がつなぎ部と切込みで形成される場合を例示したが、これに限定されず、例えば切り離し線をミシン目状に形成することができる。また、切り離し線の形状も略円形に限定されない。例えば、楕円形や角部が略円弧状とされた四角形とすれば、経口投与部の外形が丸みを帯びた形状となり、円形の場合と同様に口腔内での違和感の少ないものとなる。
また、一対の被覆フィルムの一方が第一被覆フィルム及び第二被覆フィルムで構成される場合を例示したが、これに限定されず、両方の被覆フィルムが共に第一被覆フィルム及び第二被覆フィルムで構成されていても良い。これにより、製剤包装体の表裏面のどちら側からでも、第二被覆フィルムを剥離し経口投与部を切り離すことができる。
或いは、図8に示すように、一対の被覆フィルムがそれぞれ単一の被覆フィルム20a,20bで構成される製剤包装体14とすることができる。この場合、少なくとも何れか一方の被覆フィルムにおいて、切り離し線30より内側の可食フィルム1を可食フィルム1に接着されることなく被覆する部分に、被覆フィルムを剥離可能とする剥離手段49を設けると良い。図8では、円形の切り離し線30より若干小径の円形に形成されたミシン目状の切れ目線で剥離手段49を構成させた場合を例示している。このような構成としても、上記の実施形態の製剤包装体11,12,13よりは程度が劣るものの、ホコリ等の付着による経口投与部の汚染が抑制されると共に、可食フィルム1の吸湿や、ガスの透過による製剤の変質・劣化を抑制することができる。
更に、被覆フィルムに印刷や金・銀等の箔押し加工を施すことにより、包装される製剤に関する文字情報や記号等を付すことができる。また、被覆フィルムに着色を施すことにより、製剤包装体に識別性を付与することができる。
なお、製剤包装体12,13では、五個の経口投与部を具備して一列を構成する場合を図示したが、連設される個数はこれに限定されない。例えば、七個の経口投与部を具備して一列を構成するものとすれば、一週間単位での製剤の服用に適したものとなる。