JP5011734B2 - 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及びこの方法を用いて得られる酸化アルミニウム単結晶 - Google Patents
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しかし、酸化アルミニウム単結晶をチョクラルスキー法で成長させると、結晶中に無数の微小な気泡が発生しやすい。この微小な気泡には、エピ成長基板となるウエハーをポリッシュ研磨したときに、ピット(直径数μmの微小な窪み)を発現させる相対的に大きな気泡と光散乱レーザートモグラフ法(非特許文献1参照)に従い、レーザー光を照射したときに雲状に確認できるマイクロバブルといわれるものがある。これらの中でマイクロバブルの影響は、未だ確定されていないものの、ピットと共にLED特性に悪影響を与えると言われている。
したがって、まず、原料に含まれるガス成分を融解前にできるだけ除去して融液中に存在する過飽和のガス成分を減少させ、融解後は対流を強化し攪拌の効果を増加させることで、単結晶育成時に結晶内に取り込まれる微小な気泡の量を少なくすれば、ピツトやマイクロバブルの発生を抑えることができるものと考えられる。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、坩堝の材料がイリジウムであることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、散乱光強度(酸化アルミニウム単結晶の側面にレーザー光を照射して、入射するレーザー光に対して90゜の方向に放射される散乱光をCCDカメラに取り込み、画像処理装置で強度を0〜255までの256階調に処理し、画像中の結晶部分40mm四方の強度平均を散乱光強度として算出する)が、140以下であることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶が提供される。
こうして得られた単結晶は、微小な気泡に起因するピット、マイクロバブル、結晶欠陥等が低減しており、さらに坩堝材料からのインクルージョン(内包物)がなくなるために、高品質なものとなり、この単結晶を用いれば優れた特性を有する電子部品材料、光学用部品材料を提供できる。
本発明の酸化アルミニウム単結晶の製造方法は、炉体内の坩堝に単結晶用原料を入れて加熱溶融し、原料融液から成長結晶を引き上げる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、上記単結晶用原料として、比表面積1m2/g以下のチタンを含まない酸化アルミニウム焼結体を用い、かつ、該単結晶用原料を加熱溶融し、単結晶を育成する際に、炉体内雰囲気中の酸素濃度を酸素分圧で10〜500Paに設定してマイクロバブルの発生を抑制することを特徴とする。
また、酸化アルミニウム焼結体の直径や密度は、特に制限されないが、取り扱い上、例えば、直径は、10mm以下、好ましくは5mm以下であるものがよく、密度は、5g/cm3以下、好ましくは3g/cm3以下であるものがよい。
本出願人は、原料形態の異なる4種類の原料A〜Dを用意し、炉体内を、酸素および窒素または不活性ガスの混合雰囲気とし、酸素分圧を1、30、100、300、そして500Paと変化させ、原料を加熱溶融して酸化アルミニウム単結晶を育成し、これらの原料から育成した単結晶の散乱光強度を測定することにより、単結晶に含まれるマイクロバブルの量の変化を、まず調査した。
なお、原料Aは直径0.3μmの酸化アルミニウム紛で、比表面積が5〜10m2/g程度、原料Bは焼結体の形をした酸化アルミニウム原料で、比表面積が0.8〜0.9m2/gである。また、原料C、および原料Dはクラックルとよばれているもので、ベルヌーイ法で製造された酸化アルミニウム単結晶を直径20mm以下に粉砕したものである。このクラックル原料の比表面積は0.1m2/g未満である。
その結果、図2のグラフに示すように、育成時の酸素分圧および原料の違いによって光散乱強度が変化し、育成時の酸素分圧が低いほど、散乱光強度は小さい傾向があり、また、原料の形態によって散乱光強度が大きく異なることがわかった。
また、前述したように、クラックル原料は、酸化アルミニウム粉末を溶融して得た融液を用いてベルヌーイ法で製造された酸化アルミニウム単結晶を直径20mm以下に粉砕したものである。従って、このクラックル原料では、比表面積が原料Bより小さくても、原料粒子の中に多数の気泡が含まれている。よって、両者を原料として用いて得られた単結晶の散乱光強度とピット数とが原料Aを用いて得た単結晶のそれらと原料Bを用いて得た単結晶のそれらとの中間に位置する結果も上記解釈を裏付けていると言える。
例えば、焼成するとαアルミナに転化するαアルミナ前駆体のゾル又はゲルにαアルミナ粒子を種として添加し、ゾルはゲル化した後、この種晶を添加されたαアルミナ前駆体のゲルを900〜1350℃の温度で焼結し、得られる焼結生成物を粉砕する。
図2によれば、酸素分圧が低くなるほど散乱光強度が小さく、単結晶育成時に結晶内に析出するマイクロバブルが減少した単結晶が得られている。酸素分圧が10Pa未満では、結晶中にイリジウムがインクルージョンとして取り込まれやすい。また、500Paを超えるとマイクロバブルの発生が増加するので好ましくない。
単結晶の育成は、炉内雰囲気を低酸素濃度雰囲気とする以外は常法に従い、回転数や引き上げ速度を調整してネック部および肩部を形成し、引き続き直胴部を形成する。このとき、放射温度計などを用いて単結晶と原料融液との界面近傍における融液表面の温度を測定することが好ましい。結晶形状の調節は、育成中の結晶重量を測定し、直径や育成速度などを計算によって導き出し、回転速度や引き上げ速度を調整して行う。また、結晶重量の変化を高周波誘導コイル投入電力にフィードバックして融液温度をコントロールできる。
こうした問題は、特許文献2に記載のように、例えば育成中に結晶の回転数を大きく上げて結晶成長速度を調節することにより解決でき、また、例えば、本出願人による特開2005−231958に開示されている坩堝底部に加熱ヒーターを有する育成炉を用いて融液の対流を調節すれば、回転数を大きく上げることなく解決できる。
本発明の酸化アルミニウム単結晶は、上記の製造方法により得られるアルミニウム及び酸素の2元素を含む単結晶である。
更には、下記の光散乱レーザートモグラフ法によって求められる散乱光強度が140以下まで減少した単結晶である。散乱光強度は、円筒状に加工された酸化アルミニウム単結晶の側面にレーザー光を照射して、入射するレーザー光に対して90゜の方向に放射される散乱光をCCDカメラに取り込み、画像処理装置で算出する。
育成した単結晶に取り込まれた微小な気泡は、前記光散乱レーザートモグラフ法に従って観察した。具体的には、図1に示したように、円筒状に加工した酸化アルミニウム単結晶の側面にレーザー光を照射して、酸化アルミニウム単結晶端面より射出される散乱光をCCDカメラに取り込み、画像処理装置で散乱光強度を算出した。この結果、散乱光強度が140以下であれば、育成した単結晶中のマイクロバブル量は少ないと判断される。
育成した単結晶から50枚のウエハーをスライスし、ポリッシュ研磨して、ピットがどの程度あるか測定した。ピット数は少ないほど良好な単結晶が育成されていることを示している。
特開2005−231958に開示されている坩堝底部に加熱ヒーターを有する育成炉を用い、このイリジウム製坩堝に出発原料として4N(99.99%)の酸化アルミニウム原料(原料B)を10kg投入した。原料は比表面積0.8〜0.9m2/gの焼結体である。酸素分圧100Paでこの原料を融点に達するまで12時間かけて徐々に加熱し、原料の融解後もこの低酸素濃度を維持した。原料の融解から6時間経過後、a軸方向に切り出した酸化アルミニウム単結晶を種結晶として用い、種結晶を融液近くまで降下させた。この種結晶を毎分2回転の速度で回転させながら徐々に降下させ、種結晶の先端を融液に接触させて温度を徐々に降下させながら、引上速度2mm/hrの速度で種結晶を上昇させて結晶成長を行った。
その結果、直径102mm、直胴部の長さ118mmの単結晶が得られた。また、結晶底部の成長界面を測定したところ、32mm凸であった。さらに、この単結晶を円筒状に加工し、波長532nmのレーザーを照射し結晶内部の散乱光を測定したところ、散乱光強度は68であった。ピット数を測定したところ、表1に示したとおり、3インチウエハー内に平均3.2個であった。
酸素分圧を300Paとした以外は、上記実施例1と同様にして結晶成長を行った。その結果、直径105mm、直胴部の長さ120mmの単結晶を得た。
また、結晶底部の成長界面を測定したところ、26mm凸であった。さらに、この単結晶を円筒状に加工し、波長532nmのレーザーを照射し結晶内部の散乱光を測定したところ、散乱光強度は103であった。ピット数を測定したところ、表1に示したとおり、3インチウエハー内に平均5.3個であった。
イリジウム製坩堝に出発原料として4N(99.99%)のAl2O3原料(原料A)を10kg投入した。この原料は、直径0.3μmの酸化アルミニウム紛で、比表面積が5〜10m2/gである。
実施例1と同様に酸素分圧100Paで、この原料を融点に達するまで12時間かけて徐々に加熱し、原料の融解から6時間経過後、a軸方向に切り出した酸化アルミニウム単結晶を種結晶として用い、種結晶を融液近くまで降下させた。この種結晶を毎分2回転の速度で回転させながら徐々に降下させ、種結晶の先端を融液に接触させて温度を徐々に降下させながら引上速度2mm/hの速度で種結晶を上昇させて結晶成長を行った。
その結果、直径100mm、直胴部の長さが115mmで目視では気泡が観察されない結晶を得た。また、結晶底部の成長界面を測定したところ、30mm凸であった。さらに、この結晶を円筒状に加工し、波長532nmのレーザーを照射し結晶内部の散乱光を測定したところ、散乱光強度は84であった。ピット数を測定したところ、表1に示したとおり、平均1256個であった。
原料として比表面積が小さいクラックル原料(原料C)を用い結晶を育成した。原料Cは、ベルヌーイ法で製造された酸化アルミニウム単結晶を直径20mm以下に粉砕したものであり、比表面積は0.1m2/g未満である。結晶内部の散乱光を測定したところ、散乱光強度は91であった。ピット数を測定したところ、表1に示したとおり、平均326個であった。
原料として比較例2とは異なる、比表面積が小さいクラックル原料(原料D)を用い結晶を育成した。原料Dは、ベルヌーイ法で製造された酸化アルミニウム単結晶を直径20mm以下に粉砕したもので、比表面積は0.1m2/g未満である。結晶内部の散乱光を測定したところ、散乱光強度は81であった。ピット数を測定したところ、表1に示したとおり、平均52個であった。
酸素分圧を1Pa以下とした以外は、上記実施例1と同様にして結晶成長を行った。直径103mm、直胴部の長さ95mmの結晶を得たところで坩堝底に結晶底部が接触したので、育成を中止した。結晶底部の成長界面を測定したところ88mm凸と大きかった。結晶内部の散乱光の強度を測定したところ散乱光強度は42と小さかった。ところが、比較的大きな散乱体が観測され、インクルージョン(内包物)が存在する可能性があることがわかった。また、この結晶をウエハー状にスライスしポリッシュ研磨したところ、ピット(直径数μmの微小な窪み)は確認されなかったが、何れのウエハーにも、差し渡し数μmの大きさの突起状異物が数個程度ウエハー上に観測され、これをEPMAで分析したところイリジウムであった。
酸素分圧を600Pa以下とした以外は、実施例1と同様にして結晶成長を行った。直径103mm、直胴部の長さ121mmの結晶を得た。結晶底部の成長界面を測定したところ30mm凸であった。さらに、この結晶を円筒状に加工し、波長532nmのレーザーを照射し結晶内部の散乱光の強度を測定したところ、散乱光強度は150であり、良好とされる140を越えていた。ピット数を測定したところ、表1に示したとおり、3インチウエハー内に平均18369個であった。
2 レーザー光
3 散乱光
4 CCDカメラ
5 画像処理装置
Claims (5)
- 炉体内の坩堝に単結晶用原料を入れて加熱溶融し、原料融液から成長結晶を引き上げる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、
上記単結晶用原料として、比表面積1m2/g以下のチタンを含まない酸化アルミニウム焼結体を用い、かつ、該単結晶用原料を加熱溶融し、単結晶を育成する際に、炉体内雰囲気中の酸素濃度を酸素分圧で10〜500Paに設定してマイクロバブルの発生を抑制することを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法。 - 前記結晶用原料が、10時間以上かけて徐々に加熱溶融されることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
- 前記坩堝の材料がイリジウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のいずれかの酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかの製造方法によって得られる酸化アルミニウム単結晶。
- 散乱光強度(酸化アルミニウム単結晶の側面にレーザー光を照射して、入射するレーザー光に対して90゜の方向に放射される散乱光をCCDカメラに取り込み、画像処理装置で強度を0〜255までの256階調に処理し、画像中の結晶部分40mm四方の強度平均を散乱光強度として算出する)が、140以下であることを特徴とする請求項4に記載の酸化アルミニウム単結晶。
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