本発明に係る自走式掃除機システムの一実施例を、図1ないし図8を用いて説明する。自走式掃除機システムは、塵埃を自走して掃除する掃除機1と、この掃除機1が有する蓄電池22に給電する充電装置200とを備えている。図1に、自走式掃除機1の断面図を示す。同図(a)は、同図(b)のA−A断面図であり上面図、同図(b)は縦断面図である。掃除機1の進行方向は図1の左方向である。
自走式掃除機1の外形は、上面カバー27および側面カバー23により、ほぼ円筒形に形成されている。掃除機1内部であって下部両側面には、走行用の一対の駆動輪4a、4bが取付けられている。この駆動輪4a,4bは、ベースに取付けたモータ2a,2bにより個別に駆動される。モータ2a,2bの出力を減速する減速機5がモータ2a,2bに取り付けられている。
左右の走行用モータ2a、2bの回転軸端には、エンコーダ3a、3bが取り付けられている。エンコーダ3a、3bは、走行用モータ2a、2bの回転速度を掃除機1内の後部上方に取付けたコントローラ6に出力する。コントローラ6は、走行用モータ2a、2bに印加する電圧を別個に制御する。コントローラ6は、エンコーダ3a、3bが検出した走行用モータ2a、2bの回転速度をフィードバック制御して、駆動輪4a、4bの回転速度を制御する。
進行方向を制御するときは、一対のモータ2a、2bを同回転速度および同方向に回転させて、掃除機1を直進させる、また、モータ2a、2bを同回転速度および反対方向に回転させて、掃除機1をその場で回転させる。
ヒンジピン8a、8bが、減速機5a、5bを進行方向に直交する水平軸回りに回転自由に支持する。減速機5a、5bは、サスペンション7a、7bを介して掃除機1の上部に接続されている。減速機5a、5bがヒンジピン8a、8b回りに回転すると、駆動輪4a、4bがほぼ上下方向に変位する。掃除機1を床の上に置くと、掃除機1の自重によりサスペンション7a、7bのばねが最も縮む。駆動輪4bと減速機5bは、図1(b)の実線で示す位置(α)に位置する。掃除機1を持ち上げると、サスペンション7a、7bのばねが伸び、最大で同図に破線で示した位置(β)まで減速機5a、5bと駆動輪4a、4bが変位する。これにより、自走式掃除機1が走行する床面が凹凸していても、確実に駆動輪4a,4bを接地させることができる。
掃除機1の進行方向後ろ側には、左右に変位可能な吸口体30が取付けられている。この吸口体30の変位の様子を、図2を用いて説明する。同図(a)に示すように、吸口体30は、通常動作時には掃除機1内部に収納されている。この状態では、自走式掃除機1の外形は、ほぼ円筒形である。掃除機1の外形が円筒形なので、掃除機1が障害物に接していなければ、障害物に妨げられることなくその場で旋回できる。したがって、任意の方向に方向転換できる。
なお、自走式掃除機1の外形は円筒形に限らず、半球形、切頭円錐形等の丸みを帯びた形状であればよい。これらの形状においても、障害物に妨げられることなく、進行方向を変えるために旋回可能である。
吸口体30が掃除機1の内部に位置していると、吸口体30は壁際などには届かない。その場合、図2(b)に示すように吸口体30の可動範囲内であって掃除機1の右端(線γ)よりも外側に吸口体30の先端を突出させる。これにより、壁際まで吸口体30の先端が届く。
自走式掃除機1の中央部には、各部に電力を供給する蓄電池22が搭載されている。蓄電池22は、ニッケル水素電池である。蓄電池22の電圧は、コントローラ6が備える検出回路で検出される。検出された電圧出力をコントローラ6が監視して、蓄電量を逐次把握する。掃除機1の前側表面には、充電端子14が取り付けられている。充電端子14に規定の電圧が印加されると、掃除機1内部の蓄電池22が充電される。
掃除機1の上部には、カバー27が取付けられている。このカバー27の詳細を、図3に示す。図3は、掃除機1の上面図であり、図の上側が進行方向である。進行方向後ろ側には、複数のスイッチ15、15、…を有する操作パネル46が取り付けられている。このスイッチ15は、電源のオン/オフ、自走式掃除機1へのマニュアル指令に用いる。操作パネル46上には、発光ダイオードのインジケータ47も取付けられている、インジケータ47は、電源のオン/オフや蓄電池22の残量を示す。インジケータ47に、液晶ディスプレイを用いてもよい。
上面カバー27上であって操作パネルの近くに、赤外線リモコン受信部16が取り付けられている。この受信部16は、外部に設けた図示しない赤外線リモコン送信機100からの信号を受信するのに用いられる。受信部16が受信した信号に基づいて、掃除機1を前進または後退、旋回、集塵ファンを起動/停止させる。また、自律清掃動作を開始させたり中断させたりする。
掃除機1の外周部には、円筒形の側面カバー23が配置されている。側面カバー23の上部は内側に曲がっており、その端部には上面カバー27との係合部が形成されている。側面カバー23の内部であって側面カバー23の近傍には、赤外線距離センサ10a〜10cが配置されている。赤外線距離センサ10a〜10cは、このセンサ10a〜10cの正面に位置する物体までの距離を計測する。センサ10a〜10cの出力は、コントローラ6により監視されている。側面カバー23の赤外線距離センサ10a〜10cの受光部に対向する部分は、赤外線を透過する材質である。これにより、自走式掃除機1と周辺の物体との間の距離をコントローラ6が認識できる。
掃除機1内部には、図示しないジャイロセンサが取り付けられている。ジャイロセンサは、自走式掃除機の鉛直方向軸周りの角速度をコントローラ6に出力する。これにより、駆動輪4a、4bが床上をスリップしても、自走式掃除機1の角速度を検出できる。
掃除機1の下部であって前側両側部には、下向きに段差センサ12a、12bが取り付けられている。この段差センサ12a、12bは、反射式の赤外線測距センサであり、センサ12a,12bの受光部から所定距離だけ離れた範囲内の物体の有無を出力する。これにより自走式掃除機1の進行方向の床が、落ち込んでいてもその落ち込みを検出できる。掃除機1が走行中に段差センサ12aまたは12bが段差を検出したら、掃除機1を一旦停止させる。そして、段差がない方向へ掃除機1を方向転換させる。これにより、段差から掃除機1が転落するのを回避する。段差センサ12には赤外線センサ以外に、超音波センサや接触スイッチも使用できる。
掃除機1内部の集塵構造の詳細を、以下に説明する。左右方向に可動な吸口体30に隣接して、集塵ケース21が設置されている。図2に示すように、吸口体30には、集塵ケース21と接する面に穴70が開けられている。集塵ケース21にも、吸口体30と接する面に穴71が開けられている。吸口体30と集塵ケース21に開けられた穴70、71を、吸口体30が吸い込んだ塵芥を含んだ空気が流通する。
集塵ケース21の穴71の周囲には、パッキン36が取り付けられている。パッキン36は、吸口体30と集塵ケース21の間を、気密に保つために用いられる。パッキン36が吸口体30と接する部分の表面は、滑らかに加工されている。
ベース45上には、集塵ファン20が取付けられている。ベース45の下面側に、集塵ケース21が保持されている。集塵ファン20は、集塵ケース21とベースを介して接続されている。ベース45の、集塵ケース21と集塵ファン20との接続部には、吸込み空気の通風用穴が開けられている。集塵ケース21を掃除機1に取り付けた状態では、図示しないパッキンが流路の気密を保つ。
集塵ケース21が集塵ファン20に面する部分には、不織布のフィルタ54が取り付けられている。集塵ファン20が動作して生じた圧力差により、吸口体30から塵埃を含む空気が吸引される。塵埃を含む空気は、吸口体30から集塵ケース21を通って集塵ファン20へ抜ける。そして、集塵フィルタ54により塵埃と空気とが分離され、分離された塵埃は集塵ケース21の内部に貯められる。
吸口体30と集塵ケース21のそれぞれに穴70、71を開けて風路を形成したので、吸口体30は集塵ケース21上のパッキン36と摺動しながら左右に変位できる(図2参照)。そのためホースやパイプが不要であり、掃除機1を小型化できる。集塵ケース21と吸口体30を一体にして変位させる場合に比べて変位部位を軽量化でき、吸口体30を変位させるのに要する力が小さくて済む。その結果、吸口体30を左右方向に動かす駆動装置を小型化できる。吸口体30が変位可能な範囲は、図2(b)に示すように、吸口体30を最も突き出したときに、吸口体30の穴70がパッキン36に囲まれた範囲からはみ出ない範囲で、かつ、吸口体30の左端がパッキン36の左端を越えない範囲である。
集塵ケース21は、ベース45に取り付けた図示しないガイドにより、横方向の動きを規制されている。しかしながら、前方向にはガイドに沿ってスライドできる。これにより、集塵ケース21を、掃除機1から取り外しできる。集塵ケース21の後端に設けたパッキン36が吸口体30に接する位置まで自走式掃除機1内に集塵ケース21を押し込むと、掃除機1側に形成した窪み29に集塵ケースに設けた爪28が嵌合する。これにより、集塵ケース21の進行方向の動きを規制できる。
爪28は、弾性体であり、集塵ケース21を強く前方に引っ張ると、爪28が下側にへこむ。そして、爪28と掃除機1側の窪み29との嵌合が外れ、掃除機1から集塵ケース21を容易に取り外すことができる。集塵ケース21の上ふたは、集塵ケース21から取り外し可能である。そのため、集塵ケース21を取り外せば、集塵ケース21内に貯まった塵埃を容易に捨てられる。また、集塵ケースは取り外し可能であり、集塵ケース21と吸口体30の摺動面とが露出しているので、摺動面のクリーニングが容易である。
吸口体30を左右方向に変位させるために、吸口体送りモータ32と、このモータ32に取付けたエンコーダ34と、モータ32軸に接続されたボールねじ37と、吸口体原点検出スイッチ90と、吸口体30を上方から吊り支持する支持アーム42とを有している。
吸口体30は、支持アーム42を介してボールねじ37に接続されている。ボールねじ37は、ベース45にほぼ剛に取付けた支持部材45aに保持された軸受35により回転自在に支持されている。支持アーム42をボールねじ37に接続する接続部はこま43であり、内面側にめねじが切られている。ボールねじ37が回転すると、吸口体30およびこま43、支持アーム42が横方向に動く。
エンコーダ34は、こま43の変位量を検出して、コントローラ6に出力する。吸口体原点検出スイッチは90は、こま43が所定の範囲内であればこま43がスイッチオンされるように配置されている。そしてこま43が所定範囲外になるとスイッチオフされる。このオン/オフ切換え位置を、原点に定める。吸口原点検出スイッチ90が検出した原点とエンコーダ34の出力値とを組み合わせると、支持アーム42の位置の絶対値が知られる。本実施例では機械的な方法で位置の原点を定めたが、光学センサを用いてもよいことはいうまでもない。
支持アーム42の途中には、横方向に変位可能なスライダ33が取り付けられている。スライダ33を中立の位置へ復帰させるために、スライダ33はばね33bを有している。吸口体30に横方向の力が作用すると、その力の大きさに応じてスライダが変位する。モータ32を回転させると、吸口体30は集塵ケース21との間を摺動しながら横方向に変位する。
本実施例によれば、吸口体30の先端がスライダ33を介して支持アーム42に支持されているので、壁際などまで吸口体30の先端を届けることができる。また、突き出した吸口体30の先端が壁などの外部の物体に触れた場合に、物体からの反力で自走式掃除機1の向きが変わるのを防止できる。スライダ33のばねの強さを充分弱くすれば、突き出した吸口体30の先端に物体が触れても、吸口体30および触れた物体が損傷するのを防止できる。
吸口体30が自走式掃除機1から突出する部分の近傍に、接触検出センサ44を貼り付ける。接触検出センサ44は、シート上に複数のスイッチを配置したものであり、壁や障害物などが接触するとスイッチが押下げられる。接触検出センサ44は、接触した位置をコントローラ6に出力する。これにより、吸口体30の突出部に、壁や障害物が触れるのを検出できる。
このように構成した自走式掃除機1の動作を、以下に説明する。自走式掃除機1は自律走行モードと手動走行モードの2種類の走行モードを有する。自律走行モードでは、自走式掃除機1に搭載された各種センサの情報に基づいて自律走行する。手動走行モードでは、リモコン送信機100から送信された信号に基づいて前進、後退または旋回などの単一の動作をする。
自走式掃除機1の起動時は、手動走行モードに設定される。手動走行モードでは、使用者がリモコン送信機100を用いて掃除機1の走行方向を指示する。したがって、手動走行モードに設定して、使用者が掃除機1を持ち上げることなく、掃除をする部屋まで掃除機1を変位させれば、使用者の肉体的な負担を軽減できる。手動モードで動作しているときに、リモコン送信機100または掃除機1の操作パネル46上のスイッチから掃除機1に指示すると、自走式掃除機1は自律走行モードに移行する。自律走行モードでは、予めコントローラ6に記憶したアルゴリズムに基づいて、赤外線距離センサ10a〜c等の各種センサの出力を用いて、部屋全体を隈なく掃除するように走行する。
本実施例に記載の自走式掃除機1を用いると、自律走行時に壁際や障害物のそばまで掃除できる。そのため、自走式掃除機1が壁際を掃除するときは、壁に沿って自走式掃除機1を走行させる。壁沿いの走行時には、自走式掃除機1と壁面との間に所定の間隔を維持させる。この所定間隔は、吸口体30を最も突き出したときに、壁に吸口体30が当たる距離以下である。
赤外線測距センサ10aが測定した壁までの距離と、目標とする距離の差を求める。2つの距離の差が正の場合には自走式掃除機1を壁に近づけるよう指示する。2つの距離の差が負の場合には、自走式掃除機1を壁から遠ざけるように指示する。接触検出センサ44が吸口体突出部の先端が壁に触れていることを検出するまで、吸口体30を突出させる。あるいは、赤外線測距センサ10aが検出した自走式掃除機1から壁までの距離に基づいて、吸口体30の突出量を決定する。後者の方法によれば、吸口体30の突出量を調整すれば、吸口体30の先端を壁に接触させずに壁の近くまで掃除できる。
本実施例によれば、万一走行時に突出した吸口部30の前面に障害物が引っかかっても、接触検出センサ44が障害物を検出できるので、吸口部を自走式掃除機1内に一旦格納することにより、障害物を避けて掃除を続行できる。
壁際の掃除の際には、部屋の隅等で自走式掃除機1を旋回させる必要が、しばしば生じる。図4に、自走式掃除機1を旋回させる様子を示す。自走式掃除機1が自律走行モードで壁に沿って走行中に部屋の隅に到達すると、赤外線距離センサ10a、10bが壁を検出する。そこで、自走式掃除機1は、隅を掃除しながらその場で旋回する動作に移行する。このとき吸口体30の先端が壁に沿って変位するように吸口体30の突出量を制御すれば、隅部の未清掃領域を低減できる。
吸口体30の突出量は、通常の壁に沿う変位時と同様に、接触検出センサ44の情報に基づくか、赤外線距離センサ10aが検出した自走式掃除機1から壁までの距離の情報に基づいて決定する。赤外線距離センサ10aは吸口体30の先端よりも、自走式掃除機1の回転方向(図4では反時計回り)において先行しているので、隅部の形状を吸口体30の先端が通過する前に把握できる。これにより、隅部の形状に合わせて、吸口体30を壁などに触れることなくかつできる限り接近する位置に制御できる。摩耗しやすい素材で壁できているときでも、壁を傷つけることがない。なお、吸口体30の先端の突出量を決定するときに、部屋の隅部形状が直角等の隅部形状であると仮定したプログラムを用いることもできる。この場合、掃除機1の制御が簡単になる。
側面カバー23には、吸口体30を突出す部分に切り欠きが形成されている。この切り欠きにより、吸口体30が円滑に変位できる。側面カバー23の前側面の下部は、集塵ケース21を取り外すために、上下にスライドして開くハッチ26が設けられている。
側面カバー23の内周面近くのベース45に、ほぼ等間隔に4本のばね25a〜25dが取付けられている。ばね25a〜25dはピアノ線であり、長手方向にほとんど伸縮しないが、曲げ方向には容易に変位する。そして、荷重が取り除かれると、元に復帰する。ばね25a〜25dは、鉛直方向に配置されている。ばね25a〜25d部の詳細を、図5に部分断面図で示す。上面カバー27の上端部には、内側に下がった段27aが形成されている。段27aは、側面カバー23が下側に変位するのを防止する。この段27aにより、側面カバー23に下向きの力が作用しても上面カバー27がこの力を支持して、ばね25a〜dが座屈するのを回避する。
なお、上面カバー27の段27aにより側面カバー23の水平方向の変位可能量を、3mm程度に制限している。さらに、ばね25a〜25dは引張り力に対してほとんど変形しないので、自走式掃除機1の側面カバー23を持ち上げても、側面カバー23はベース45から離れることがない。
側面カバー23の水平方向の変位を検出するスイッチ24a〜24dが、側面カバー23と僅かな隙間をおいて配置されている。スイッチ24a〜24dは、ベース45に垂直に設けられたブラケット72a〜72dの先端に保持される。側面カバー23が、水平方向のいずれかの方向に変位すると、1または2個のスイッチ24a〜24dと側面カバー23とが接触し、スイッチ24a〜24dが作動する。どのスイッチ24a〜24dが作動したかにより、物体の大体の方向を知ることができる。スイッチ24a〜24dの出力は、コントローラ6に出力される。したがって、掃除機1の側面に物体が接触して側面カバー23が変位すれば、物体との接触を検出できる。
本実施例によれば、側面カバー23を全周一体型としてばねにより柔に支持し、ほぼ90度ピッチで4個の接触型スイッチを設けているので、どの位置で物体と接触しても、検出の死角がない。また、検出機構に要する部品が少なく、構造が単純であり安価である。これらの検出に要する部品を、掃除機1の側面カバー23の近傍に配置できるので、自走式掃除機1の中央部に他の部品のための空間を確保できる。側面カバー23を上面カバー27で支持しているので、上下方向の外力に対して強い構造である。物体のおおよその方向を知ることができるので、回避行動をとりやすい。
なお、ばね25a〜25dの剛性を変えるだけで、検出感度を容易に変更できる。上面カバー27と側面カバー23の水平方向のクリアランスを変えれば、側面カバー23の水平方向の可動範囲を変更できる。ばね25a〜25dの剛性と水平方向の可動範囲を適宜に組み合わせることにより、ソフトタッチの接触検出も可能となる。この設定では、自走式掃除機1と周辺の物体とが接触して互いに傷つくのを防止できる。
本実施例では側面カバーを支持するために4本のばね25a〜25dを用い、変位を検出するために4個のスイッチ24a〜24dを使用しているが、この個数は4に限るものではない。ばね25の本数とスイッチ24の個数は、異なっていてもよい。このスイッチは、上記実施例で用いた丸みを帯びた形状に限らず角部に丸みを有する多面体等の形状でもよい。いずれの場合でも検出に死角を生じない。
吸口体30には、図示しない圧力センサが取り付けられている。圧力センサが検出した圧力は、コントローラ6に出力される。自走式掃除機1を使用中に吸引口40が紙等で塞がれ、塵埃を吸引できなくなる事態が生じることがある。このとき、吸口体30内部の圧力は急激に低下している。長時間この状態が続くと、集塵ファン20を駆動するモータ20aが過負荷状態になり、自走式掃除機1が故障する。そこで、吸口体30内部の圧力変化を圧力センサが検出して、モータ20aの過負荷状態を回避する。
具体的には、圧力センサ13が急激な圧力低下を検出したら、一旦掃除機1の吸引を停止する。吸引を停止すると吸口体30内部の圧力が大気圧に等しくなり、吸引口40に張り付いていた物が取れ易くなる。次いで、掃除機1を所定距離だけ走行させて、吸引口40に張付いた物を取る。吸引を再開し圧力が正常時の状態に復帰したことを確認して、掃除を再開する。圧力差が正常時の状態に復帰していないときは、上記吸引停止と掃除機1の走行とを繰り返す。この手順を所定回数繰り返しても正常な圧力とならないときは、吸引を停止して掃除を中止する。異常を使用者に知らせるために、インジケータ47にエラー表示をする。
集塵ケース21に塵埃が貯まるにしたがって、吸込み状態で吸口体30内部の圧力低下が小さくなる。圧力センサが集塵ファン20動作時の圧力を監視しているので、集塵ケース21内の塵埃の貯まり具合を検出できる。この塵埃の貯まり状況を、インジケータ47が使用者に示す。塵埃の貯まり状況を検出できるので、集塵ケース21からの塵埃取り出しタイミングを自動的に知ることができる。
掃除機1は、蓄電池22を動力源としているので、充電動作が必要となる。また、集塵ケース21の容量にも限度があるので、所定量塵埃が溜まったら、集塵ケース21から塵埃を取出す必要がある。本実施例では、これらの動作を掃除機1が自律的に実行している。この様子を、図6ないし図8を用いて説明する。
図6は、自走式掃除機1と部屋の片隅に設けた充電装置200の模式図であり、同図(a)はその上面図、同図(b)はその側面図である。充電装置200は、下板部201および側壁部202、ボックス部203、充電装置ガイド部204を備える。図7は、充電装置ガイド部の詳細であり、同図(a)はその上面図、同図(b)は側面図、同図(c)は同図(a)のA−A断面図である。
ボックス部203は、建物側に設けた電源供給部である。ガイド部204はボックス部20に接続されており、掃除機1を充電するときに掃除機1側の接点と円滑に接続できるようにするものである。ボックス部203のガイド部204側の端面には、充電端子205が設けられている。充電端子205はボックス部203内に設けた充電回路230に電気的に接続されている。充電回路230には、商用電源が供給されている。
ボックス部203には、充電装置集塵ファン206と充電装置集塵ケース207および充電装置コントローラ250が設けられている。充電装置集塵ケース207は、自走式掃除機1の集塵ケース21よりも集塵容量が大きい。充電装置コントローラ250は、充電回路230が充電端子205に流れる電流および電圧を監視および制御するとともに、充電装置集塵ファン206の動作を制御する。
充電装置ガイド部204には、先端に行くにつれ横幅が狭まったガイド208とこのガイド208に囲まれた台形の吸塵口209が形成されている。ガイド208の上面縁部には、フランジ208aが形成されている。吸塵口209の上面は、ガイド208の上面よりも高い。吸塵口209は、ガイド内部に形成された吸込み流路210を介して充電装置集塵ケース207に連通している。
充電装置集塵ファン206が動作すると、吸塵口209から空気が吸い込まれる。そして、吸い込まれた空気に含まれる塵埃が、充電装置集塵ケース207内に保持したフィルタ207aで分離され、充電装置集塵ケース207に貯められる。これにより、掃除機1の集塵ケース21に貯まった塵埃が、充電装置200側の集塵ケース207に変位する。
図8に、図7に示した充電装置200のガイド部204が係合する自走式掃除機1の集塵ケース21部の詳細を示す。図8は自走式掃除機1の下面図であり、同図(a)は、集塵ケース21の下面に設けたシャッター59を閉じた状態であり、同図(b)は開いた状態である。
集塵ケース21の底面には排塵口60が形成されており、この排塵口6をシャッター59が覆っている。シャッター59は、自走式掃除機1の進行方向にスライドする。集塵ケース21の後部に、ばね61が保持されており、このばね61がシャッター59を左方向に押し付けている。掃除機1の通常動作時は、排塵口60はシャッター61で覆われていて、集塵ケース21内の塵埃がこぼれない(図8(a)参照)。
シャッター59を右側に押すと、ばね61が縮んで図8(b)に示したように、排塵口60が現れる。シャッター59の前縁部には、下方に曲がる曲がり部62が形成されている。自走式掃除機1を充電装置200に係合させるときは、曲がり部62の下端が、充電装置ガイド208の上面より高く、吸塵口209の縁より低くなるようにする。排塵口58の両脇に、ガイド63が設けられている。ガイド63は、充電装置200のガイド208と雌雄嵌合の関係にある。自走式掃除機1を充電装置200に係合するときに、ガイド63の高さとガイド208の高さが合致するように各ガイド63、208の高さを設定する。また、ガイド208とガイド63が係合するとき、掃除機1の充電端子14に充電端子205が接触するように各充電端子を14、205を設定する。
このように構成した自走式掃除機1の排塵動作を、図6および図8を用いて以下に説明する。予め充電装置200の側壁部202を、部屋の壁に接して設置する。自走式掃除機1の動作中に蓄電池22の電圧が所定値を下回ったら、コントローラ6が電池残量が少ないと判断する。そして、充電動作に移行する。
充電動作に移行したら、自走式掃除機1は直進して部屋の壁を探す。側面カバースイッチ24a〜24dまたは吸口体30の接触検出センサ44の出力から、壁に達したとコントローラ6が判断したら、壁が掃除機1の右側にくるように、壁沿い走行をする。壁沿い走行を続けて、充電装置200に達したら、充電装置200の側壁部202に沿って下板部201に乗り上げる。
この側壁部202沿いの走行時には、ガイド208と側壁部202の距離に基づいて定めた距離だけ側壁から離れて掃除機1を前進させる。これにより、自走式掃除機1が充電装置200の下板部201に乗り上げると、充電装置200側のガイド208と自走式掃除機1側のガイド63が、ほぼ正対する。
自走式掃除機1が側壁部202沿いに走行を続けると、自走式掃除機1側のガイド63の前端が、充電装置200側のガイド208の先端に自動的に嵌合する。そして、最終的には2つのガイド208、63が密着する。その際、自走式掃除機1側の充電端子14と充電器200側の充電端子205が接触して、通電が開始され、蓄電池22が充電される。
自走式掃除機1が側壁部202沿い走行を続けているときに、自走式掃除機1のシャッター59は充電装置200の吸塵口209の縁に引っかかる。次いでシャッター59がガイド部204に押されて開き、吸塵口209と排塵口58が正対する。自走式掃除機1のコントローラ6は、接触端子14が充電装置200側の充電端子205と通電していることを検出したら、掃除機1の走行を停止させる。
充電装置コントローラ250は、充電端子205に流れる電流を検出して、自走式掃除機1が充電装置200に係合したと判断する。コントローラ250は、充電装置集塵ファン206を所定時間動作させて、自走式掃除機1の集塵ケース21から充電装置集塵ケース207に塵埃を吸引する。所定時間吸引を続ける。
塵埃の吸引が終了したと判断した後であって、充電装置コントローラ250または自走式掃除機1のコントローラ6が蓄電池22の充電が完了したと判断したら、自走式掃除機を後退させる。そして、充電装置200側の充電端子208と自走式掃除機側の充電端子14を切り離す。または、自走式掃除機1のコントローラ6か充電装置コントローラ250を用いて、蓄電池22への電圧印加を停止する。充電および排塵の双方が終了したので、必要に応じて掃除を再開する。
本実施例によれば、従来人手により廃棄していた集塵ケース21内の塵埃を、充電装置200側の集塵ケース207に変位させるので、自律掃除のためには大容量が必要であった掃除機1側の集塵ケース21の容量を低減できる。これにより、掃除機を小型化できる。なお、上記実施例では、フィルタを用いて塵芥を分離しているが、電気掃除機で使用される遠心分離方式を用いてもよい。
また本実施例によれば、大容量の蓄電池や集塵ケースを搭載しなくても広い面積または長時間の掃除が可能になる。物理的なガイドを用いているので、単純な構造で確実性の高い自動充電および排塵システムを実現できる。
本発明の他の実施例を、図9に示す。上記実施例では集塵ケースを掃除機の下部に配置していたが、本実施例では集塵ケースを掃除機の上部に配置している。そのため、充電装置側に設けた集塵手段も、上記実施例とは相違している。図9は、掃除機1aが充電装置200aに収容された状態を示し、同図(a)はその上面図、同図(b)はその側面断面図である。
掃除機1aの集塵ケース21aは、上面カバー27bに設けられた集塵ケースホルダ73に保持されている。集塵ケース21aの上面には逆止弁77が設けられており、逆止弁77の周囲には、外側から見て凹んだテーパ状の口金76が形成されている。口金76の材料は、鉄などの強磁性体材料である。集塵ケース21aの上面の材質は、口金76と逆止弁77以外は透明樹脂である。
吸口体30は上記実施例と同様に、左右方向に変位可能である。吸口体30と集塵ケース21aとを、上下方向に伸びたダクト78が接続している。ダクト78の上端部には、摺動板74が取り付けられている。摺動板74は、集塵ケースホルダ73に取り付けられたパッキン75と摺動可能である。上記実施例において集塵ケース21の底面に取り付けていたガイド63を、掃除機1aの底面に取り付けている。ただし、ガイド63の周辺に配したシャッター59や排塵口60は、本実施例では不要である。
本実施例でも、充電装置200aの構成は上記実施例と同様であるが、側板部202aとボックス部203aだけは上記実施例と相違する。ボックス部203aは、側板部202aの上方に位置しており、掃除機1aが充電装置200aに係合した状態で、掃除機1aのほぼ前側半分だけを覆う位置にある。充電装置集塵ファン206からフレキシブルなホース220が伸びており、ホース220が塵埃を吸引する。
ホース220の先端には電磁石221が取り付けられており、充電装置コントローラ250が電流制御するのを可能にしている。ホース220の先端はボックス部203aの外側まで引き出されており、掃除機1aを充電位置に位置決めしたときには、口金76がホース220先端の直下に位置する。充電装置200aのガイド部204は、上記実施例と同様である。
このように構成した本実施例の動作を、以下に説明する。掃除機1aが充電装置200aと係合するまでは上記実施例と同様である。充電装置200aと掃除機1aが係合すると、掃除機1aは走行を停止する。充電装置200aは掃除機1a側の充電端子14と充電装置側の充電端子205が接触したことを検出して、充電を開始する。
充電器コントローラ250が、ホース220先端の電磁石221に通電を開始する。電磁石221が磁化して、強磁性体の口金76との間に引力が作用する。フレキシブルなホース220が伸びて、ホース220の先端と口金76が結合する。このとき電磁石221と口金76は、テーパによる嵌め合い構造であるから確実に密着する。
充電装置集塵ファン206を動作させて、生じた圧力で逆止弁77を開く。集塵ケース21a内の塵埃を充電装置集塵ケース207に吸引する。所定時間充電装置集塵ファン206を動作させたら、電磁石221への通電を停止する。ホース220の弾性により、口金76からホース220の先端が離れる。これにより、集塵ケース21からの塵埃の排出が終了する。以降の動作は上記実施例と同様である。
本実施例によれば、側壁部202aを充電装置200aの両側に設けているので、掃除機1が充電装置200aの側方から充電装置200a内に進入するのを防止できる。集塵ケース21を本体上面に設け、透明樹脂製としたので、目視によって集塵ケース21内の塵埃量を確認できる。また、貴重品などを吸引して誤って塵埃と一緒に捨てる事態を防止できる。ボックス部203aを縦方向に高い構造としたので、充電装置200aが占有床面積を低減できる。ボックス部203aが、掃除機1aの前側だけを覆っているので、掃除機1aの後側に配置した操作パネル46や赤外線リモコン受信部16を露出できる。その結果、充電装置200a内に掃除機1aが収容されていても、容易に操作および遠隔操作できる。
本実施例の変形例を、図10に示す。この図10は、掃除機1aと充電装置200cの側面断面図である。本変形例でも上記実施例と同様、ボックス部203cは側板部202cの上方に位置しているが、上記実施例とはボックス部203cが側板部202c全体の上方にある点で相違する。
充電装置200cの上面に、掃除機1aに設けられていた操作パネル222と赤外線リモコン受信部223とを設ける。操作パネル220と赤外線リモコン受信部223の出力は、ボックス部203c内部に設けたコントローラ250に入力される。ボックス部203cの下面に、赤外線リモコン送信部224を設ける。この送信部224は、コントローラ250からの指令を受けて充電装置200c内でリモコン信号を送信するのに用いる。自走式掃除機1を収容する部分の内面側の上部には、自走式掃除機1の充電装置200cへの進入を検出する進入検出センサ29が設けられており、このセンサの出力はコントローラ250に入力される。
操作パネル222上のスイッチが押されたとき、および赤外線リモコン受信部223が図示しない赤外線リモコン送信機からの信号を受信したときには、対応する信号を赤外線リモコン送信部224が掃除機1aのリモコン受信部16に送信する。これにより、充電装置200c内に掃除機1aが収容されていても、掃除機1aを操作できる。また、充電装置200cの上側全体がボックス部203cになっているので、充電装置200cをさらにコンパクトにできる。
自走式掃除機1aが充電装置200c内に進入したことを進入検出センサ229が検出したら、コントローラ250は掃除機1aに、赤外線リモコン送信部224から充電装置200c内に掃除機1aが進入したことを示す信号を発信するように指令する。これにより掃除機1aが走行中に予定外に充電装置200c進入しても、掃除機1aが充電装置200cと係合する前に掃除機1aの進路を変更できる。
また、掃除機1aが充電装置200cの内部に進入していないときは進入検出センサ229が作動しないので、充電装置200cへ進入していないことが分かり走行速度を高めることができる。その結果、掃除機1aを充電装置200cに係合させるときには充電装置200c近くまで高速に走行させ、充電装置200cの近傍で走行速度を低下させるだけで、素早く充電装置200cに掃除機をたどらせることができる。この結果、充電装置200cに着く前は走行速度を上げ、充電装置200cに到達したらゆっくり走行させることができるので、掃除の効率が向上するとともに充電および排塵動作を確実に行える。
なお、充電装置200cの外部に赤外線リモコン送信部224から発信された信号が漏れないように、赤外線リモコン送信部224の位置や側板部202の形状を定めれば、進入検出センサ229を省いてもよい。この場合、赤外線リモコン送信部224から常時進入を示す信号を発信するようにすればよい。
1…(自走式)掃除機、2a、2b…走行用モータ、3a、3b…走行用モータエンコーダ、4a、4b…駆動輪、5a、5b…減速機、6…コントローラ、7a、7b…サスペンション、8a、8b…ヒンジピン、10a〜10c…赤外線距離センサ、12a、12b…段差センサ、14…充電端子、15…本体操作スイッチ、16…受信部、19…キャスタ、20…集塵ファン、21…集塵ケース、22…蓄電池、23…側面カバー、24a〜24d…スイッチ、25a〜25d…ばね、26…ハッチ、27…上面カバー、28…つめ、29…凹み、30…吸口体、32…吸口体送りモータ、33…ばね、34…エンコーダ、35…軸受、36…パッキン、37…ボールねじ、40…吸引口、42…支持アーム、43…こま、44…接触センサ、45…ベース、46…操作パネル、47…インジケータ、50…パッキン、59…シャッター、60…排塵口、61…スプリング、62…曲がり部、63…ガイド、70…穴(吸口体)、71…穴(集塵ケース)、72…ブラケット、73…集塵ケースホルダ、74…摺動板、75…パッキン、76…口金、77…逆止弁、78…ダクト、90…吸口体原点検出スイッチ、100…赤外線リモコン送信機、200…充電装置、201…下板部、202…側板部、203…ボックス部、204…ガイド部、205…充電端子、206…充電装置集塵ファン、207…充電装置集塵ケース、208…ガイド、209…吸塵口、210…流路、220…ホース、221…電磁石、229…進入検出センサ、230…充電回路、250…コントローラ。