JP5003179B2 - 高張力厚鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高張力厚鋼板の製造方法に関し、詳しくは、建築物、水圧鉄管、海洋構造物や低温ガス貯蔵タンクなど大形鉄鋼構造物の素材として好適な高張力厚鋼板の製造方法に関する。さらに詳しくは、板厚方向の靱性のバラツキが少ない高張力厚鋼板の製造方法に関する。
なお、本明細書における「厚鋼板」とは、板厚が20mm以上の鋼板を指す。
近年、溶接構造物の大型化の傾向は顕著になってきており、それに対応してこれら構造物に使用される鋼板への高強度化および厚肉化の要求が高まっている。
例えば、揚水型発電所の水圧鉄管や海洋構造物のジャッキアップ型掘削リグのラック材等に、厚肉の780MPa級の高張力鋼板が使用されるに至っている。さらに、現在では、880MPaを超える引張強さを有する高張力厚鋼板の供給が望まれるようになっている。厚鋼板の高強度化は、単に構造物の質量低減にとどまらず、溶接施工費用の大幅な低減をもたらすので、その要求には根強いものがある。
高張力厚鋼板は、巨大な力を支える構造物に使用されることが多いので、一旦破壊が発生すれば市民生活に影響する大事故へと発展する。このため、高張力厚鋼板には優れた耐脆性破壊特性が必要とされる。
一般に、靱性の評価方法としては、小型のシャルピー試験が用いられるが、試験片の採取位置は、海洋構造物を除いて、板厚表面および板厚1/4位置(以下、「1/4t位置」ともいう。)が代表位置とされる。この場合、板厚全体の耐脆性破壊特性を安定化させるには板厚中心位置(以下、「1/2t位置」ともいう。)まで靱性のバラツキが小さいことが前提となる。
しかしながら、一般に、1/2t位置のほうが靱性は低く、この傾向は、鋼板が高強度化するほど、また、厚肉化するほど、顕著となる。したがって、板厚方向の靱性のバラツキを抑制することができる高張力厚鋼板の製造技術に対する要望が極めて大きくなっている。
そこで、前記した要望に応えるべく、特許文献1に、重量割合にて、C:0.03〜0.2%、Si:0.6%以下、Mn:0.3〜3%、Nb:0.02〜0.15%、sol.Al:0.001〜0.1%、Ti:0〜0.05%、Cr:0〜1%、Mo:0〜1%、Cu:0〜2%、Ni:0〜3%、V:0〜0.2%およびB:0〜0.003%を含有する鋼を、1100〜1250℃に加熱し、900〜1050℃の温度域での累積圧下率30%以上の圧延を行って900℃以上で圧延を終了し、圧延後900〜1000℃の温度域に3分以上保持した後に、2℃/秒以上の冷却速度で300℃以下まで冷却するか、または、2〜50℃/秒の冷却速度で400〜600℃まで加速冷却する工程を含む「靱性の優れた厚鋼板の製造方法」が開示されている。
特開平10−152722号公報
前述の特許文献1で開示された技術は、圧延後に補熱を行って、強度と靱性に優れた厚鋼板を製造する技術であるため、補熱のための設備を設ける必要があって設備コストが嵩み、コストの増加を避けられない。さらに、必ずしも、板厚方向の靱性のバラツキ抑制について十分に検討されたものではない。
そこで、本発明の目的は、板厚方向の靱性のバラツキが少なく、大型溶接構造物の素材、なかでも、揚水型発電所の水圧鉄管や海洋構造物のジャッキアップ型掘削リグのラック材等の素材として好適な高張力厚鋼板を低コストで製造する方法を提供することである。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、種々の検討を行った。その結果、下記(a)〜(d)の知見を得た。
(a)熱間圧延後に厚鋼板を直接水冷するにあたり、圧延終了後に適度の時間が経過した後で適正な温度域から水冷を開始すれば、高張力厚鋼板の板厚方向の靱性のバラツキを抑制することができる。
この理由の1つは、圧延終了直後では厚鋼板の板厚方向の各位置における温度分布が一定ではないため、圧延終了後に時間をおくことなく直ちに水冷すると、板厚方向の各位置にて、仕上げ直後の温度分布に応じた特性バラツキが発生してしまうのに対して、適度の時間を経過させることで、圧延直後の温度分布が均一化され、その結果、特性バラツキが抑制されるものと考えられる。
(b)B(ボロン)は、鋼の焼入れ性を顕著に向上させる元素として知られているが、この効果はBがオーステナイト結晶粒界に偏析した場合にのみ発現されるものである。したがって、厚鋼板の中心部まで焼きが入るようにして、板厚方向における特性のバラツキを抑制するためには、含有させたBをオーステナイトの結晶粒界に偏析させることが極めて重要となる。
(c)熱間圧延終了直後は、Bのオーステナイト結晶粒界への偏析が均一ではなく、直接水冷した際の焼入れ性が不均一となる。しかしながら、圧延終了後に適度の時間を経過させることで、Bのオーステナイト結晶粒界への均一な偏析が促進されて良好な焼入れ性が得られるので、特性バラツキが抑制される。
(d)上記の圧延終了から水冷開始までに必要な経過時間は、熱伝導や拡散速度等により決定されるが、工業的には20秒以上の確保にて十分である。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(5)に示す高張力厚鋼板の製造方法にある。
(1)質量%で、B:0.0005〜0.0020%を含有する鋼片を、900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上の圧延を行い、圧延終了後20秒以上の時間が経過した後に、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止することを特徴とする高張力厚鋼板の製造方法。
(2)質量%で、B:0.0005〜0.0020%を含有する鋼片を、900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上の圧延を行い、圧延終了後20秒以上の時間が経過した後に、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止し、その後さらに、500〜650℃の温度で、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持することを特徴とする高張力厚鋼板の製造方法。
(3)鋼片が、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.02〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.012%以下、S:0.003%以下、Cr:0.2〜1.2%、Nb:0.005〜0.030%、V:0.005〜0.05%、Ti:0.002〜0.02%、sol.Al:0.02〜0.08%、B:0.0005〜0.0020%、N:0.005%以下およびO:0.002%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなるものであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
(4)鋼片が、質量%で、さらに、Cu:0.8%以下およびMo:0.8%以下の1種以上を含有するものであることを特徴とする上記(3)に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
(5)鋼片が、質量%で、さらに、Ni:1.8%以下を含有するものであることを特徴とする上記(3)または(4)に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
なお、鋼片の「加熱温度」とは炉内雰囲気温度を指す。また、圧延開始から水冷停止までの「温度」は被処理材である鋼板の表面温度をいう。さらに、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持する500〜650℃の温度は、炉内雰囲気温度を指す。
また、850℃以下の温度での「累積圧下率」とは、圧延終了後の厚鋼板の板厚と、最初に850℃以下の温度で圧下が加わる際の被圧延材の板厚(以下、「原板厚」という。)との差の原板厚に対する百分率を指す。
以下、上記(1)〜(5)に示す高張力厚鋼板の製造方法に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(5)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明によれば、板厚方向の靱性のバラツキが少なく、大型溶接構造物の素材、なかでも、揚水型発電所の水圧鉄管や海洋構造物のジャッキアップ型掘削リグのラック材等の素材として好適な高張力厚鋼板を低コストで製造することができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)鋼片の化学組成:
本発明に係る高張力厚鋼板の素材となる鋼片は、Bを0.0005〜0.0020%含むものとする必要がある。以下、このことについて説明する。
B:0.0005〜0.0020%
Bは、既に述べたように、オーステナイト結晶粒界に偏析して、鋼の焼入れ性を顕著に向上させる作用を有する。さらに、Bを有効活用すれば、厚鋼板の板厚方向の焼入れムラを抑制できるので、板厚方向の特性バラツキを抑制することもできる。こうした効果を得るためには、0.0005%以上のB含有量が必要である。しかしながら、Bの含有量が0.0020%を超えると、ホウ化物の析出による靱性劣化および溶接性の低下を招く。したがって、Bの含有量は、0.0005〜0.0020%とする。
上記の理由から、本発明(1)および本発明(2)においては、高張力厚鋼板の素材として、Bを0.0005〜0.0020%含む鋼片を用いることとした。
本発明に係る高張力厚鋼板の素材となる鋼片はBを含有すればよいが、好ましい化学組成としては、C:0.03〜0.15%、Si:0.02〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.012%以下、S:0.003%以下、Cr:0.2〜1.2%、Nb:0.005〜0.030%、V:0.005〜0.05%、Ti:0.002〜0.02%、sol.Al:0.02〜0.08%、B:0.0005〜0.0020%、N:0.005%以下およびO:0.002%以下を含み、必要に応じて、(1)Cu:0.8%以下およびMo:0.8%以下の1種以上、(2)Ni:1.8%以下、から選ばれる1群以上の元素を含有し、残部はFeおよび不純物からなるものが挙げられる。
以下、上記したCからNiまでの各元素のうち、既に述べたBを除いた元素について、詳しく説明する。
C:0.03〜0.15%
Cは、厚鋼板の強度上昇に極めて有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.03%未満では所望の強度確保が困難になる場合があり、また、焼入れ性が低下して十分な焼入れ組織を生成させることが困難になる場合がある。一方、Cの含有量が過剰になり、特に、0.15%を超えると、溶接性および継手靱性の著しい低下を招く場合がある。このため、含有させる場合のCの含有量は0.03〜0.15%とすることが好ましい。より好ましいCの含有量は、0.03〜0.12%である。
Si:0.02〜0.5%
Siは、Alとともに脱酸剤として有効な元素であり、また、厚鋼板の強度上昇にも極めて有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.02%未満では前記した効果を得難い場合がある。一方、Siの含有量が過剰になり、特に、0.5%を超えると、溶接熱影響部靱性の低下を招く場合がある。このため、含有させる場合のSiの含有量は0.02〜0.5%とすることが好ましい。一層好ましいSiの含有量は、0.05〜0.3%である。
Mn:0.5〜2.0%
Mnは、鋼の焼入れ性を向上させて靱性を確保する作用を有する。しかしながら、その含有量が0.5%未満では前記した効果を得難い場合がある。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、焼戻し脆性が大きくなり、溶接性が劣化するなどの問題を生じる場合がある。このため、含有させる場合のMnの含有量は0.5〜2.0%とすることが好ましい。より好ましいMnの含有量は、0.7〜1.5%である。
P:0.012%以下
Pは、厚鋼板の機械的特性、なかでも低温靱性を低下させる場合がある元素である。このため、Pの含有量は極力低減することが望ましい。しかしながら、Pの除去には著しいコスト上昇を伴うため、0.012%をP含有量の上限とすることが好ましい。より好ましいPの含有量は、0.010%以下である。
S:0.003%以下
Sは、粒界への偏析およびMnS生成を通じて、靱性および溶接性を低下させる場合がある元素である。このため、Sの含有量は極力低減することが望ましい。しかしながら、Sの除去には著しいコスト上昇が避けられないため、0.003%をS含有量の上限とすることが好ましい。一層好ましいSの含有量は、0.002%以下である。
Cr:0.2〜1.2%
Crは、鋼材の強度を上昇させる作用を有する。しかしながら、その含有量が0.2%未満では前記効果を得難い場合がある。一方、Crの含有量が1.2%を超えると、前記効果が飽和するばかりか、溶接性の著しい低下をもたらす場合がある。このため、含有させる場合のCrの含有量は0.2〜1.2%とすることが好ましい。より好ましいCrの含有量は0.3〜1.0%である。
Nb:0.005〜0.030%
Nbは、オーステナイトの低温域で微細なNb炭窒化物を形成することによりオーステナイト粒を微細化する作用を有する。さらに、析出したNb炭窒化物は圧延などによる加工を受けた未再結晶オーステナイト粒の回復、再結晶を抑制する効果を有しており、母材靱性の確保にも有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.005%未満ではこれらの効果を得難い場合がある。一方、Nbを0.030%を超えて含有させると、溶接時に割れを招く場合がある。このため、含有させる場合のNbの含有量は0.005〜0.030%とすることが好ましい。一層好ましいNbの含有量は、0.01〜0.025%である。
V:0.005〜0.05%
Vは、前記Crに比べて極めて少量を含有させることで析出強化による強度上昇効果が得られる元素である。しかしながら、その含有量が0.005%未満では前記効果を得難い場合がある。一方、Vを0.05%を超えて含有させても前記の効果が飽和し、また、溶接部靱性の劣化を招いてしまう場合がある。したがって、含有させる場合のVの含有量は0.005〜0.05%とすることが好ましい。なお、より好ましいV含有量の範囲は、0.01〜0.04%である。
Ti:0.002〜0.02%
Tiは、鋼中のフリーNを固定して、スラブ表面や厚鋼板表面の清浄性を確保するのに極めて有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.002%未満では前記の効果を得難い場合がある。一方、Tiの含有量が過剰になり、特に、0.02%を超えると、衝撃特性の著しい低下をきたす場合がある。したがって、含有させる場合のTiの含有量は0.002〜0.02%とすることが好ましい。より好ましいTiの含有量は、0.005〜0.015%である。
sol.Al:0.02〜0.08%
Alは、鋼中のフリーNをAlNとして固定し無害化する作用を有する。しかしながら、Alの含有量がsol.Al(「酸可溶性Al」)として0.02%未満では前記の効果を得難い場合がある。一方、Alをsol.Alとして0.08%を超えて含有させても前記の効果が飽和したり、溶接熱影響部靱性の低下を招く場合がある。このため、含有させる場合のsol.Alの含有量は0.02〜0.08%とすることが好ましい。なお、より好ましいsol.Alの含有量は、0.03〜0.06%である。
N:0.005%以下
Nは、固溶状態で存在した場合には母材および継手の靱性の低下を招くことがある元素である。このため、Nの含有量は極力低減して、0.005%以下とすることが好ましい。なお、より好ましいNの含有量は、0.004%以下である。
O:0.002%以下
Oは、不可避不純物であり、酸化物として鋼中に存在するが、母材および継手の靱性を低下させたり、溶接性を劣化させる場合がある元素である。このため、Oの含有量は極力低減することが望ましく、0.002%以下とするのがよい。
Cu:0.8%以下
Cuは、強度を向上させる作用を有する。しかしながら、Cuを0.8%を超えて多量に含有させると溶接性が損なわれたり、いわゆる「Cuチェッキング」による高温割れをきたす場合がある。このため、含有させる場合のCuの含有量は0.8%以下とすることが好ましい。
なお、前記したCuの効果は、その含有量が0.1%以上で確実に得られる。したがって、含有させる場合のCuのより好ましい含有量は、0.1〜0.8%であり、また、さらに一層好ましい含有量は0.1〜0.5%である。
Mo:0.8%以下
Moは、強度を上昇させる作用を有する。しかしながら、Moを0.8%を超えて含有させても前記効果が飽和してコストが嵩む場合があり、また、溶接性の著しい低下をきたす場合もある。このため、含有させる場合のMoの含有量は0.8%以下とすることが好ましい。
なお、前記したMoの効果は、その含有量が0.1%以上で確実に得られる。したがって、含有させる場合のMoの好ましい含有量は、0.1〜0.8%であり、また、さらに一層好ましい含有量は0.1〜0.6%である。
上記のCuおよびMoは、それぞれ単独であるいは両者を複合して含有させることができる。
Ni:1.8%以下
Niは、低温靱性および脆性破壊伝播停止特性を向上させる作用を有する。しかしながら、Niを1.8%を超えて含有させても、コスト上昇の割にはその効果が小さい場合がある。したがって、含有させる場合のNiの含有量は1.8%以下とすることが好ましい。
なお、前記したNiの効果は、その含有量が0.1%以上で確実に得られる。したがって、含有させる場合のNiの好ましい含有量は、0.1〜1.8%であり、また、さらに一層好ましい含有量は0.3〜1.5%である。
上記の理由から、本発明(3)においては、高張力厚鋼板の素材として、C、Si、Mn、P、S、Cr、Nb、V、Ti、sol.Al、B、NおよびOを上述した範囲で含有し、残部はFeおよび不純物からなる鋼片を用いることとした。
また、本発明(4)においては、高張力厚鋼板の素材として、上記本発明(3)の場合に加えて、さらに、CuおよびMoの1種以上を上述した範囲で含有する鋼片を用いることとした。
本発明(5)においては、高張力厚鋼板の素材として、上記の本発明(3)または本発明(4)の場合に加えて、さらに、Niを上述した範囲で含有する鋼片を用いることとした。
(B)高張力厚鋼板の製造方法:
高張力厚鋼板は、前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼を溶製した後、連続鋳造や分塊圧延を行って得た鋼片を、「900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上の圧延を行い、圧延終了後20秒以上の時間が経過した後に、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止する」ことによって、あるいは、「900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上の圧延を行い、圧延終了後20秒以上の時間が経過した後に、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止し、その後さらに、500〜650℃の温度で、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持する」ことによって製造する。
なお、上記鋼片の製造に際しては、コスト低減の観点から、連続鋳造によってスラブを作製することが好ましい。
さらに、板厚中心位置の介在物制御の観点から、連続鋳造過程においては、溶鋼の温度を過度に高くせず、溶鋼組成から決まる凝固温度に対してその差が50℃以内になるように管理するとともに、凝固直前の電磁攪拌および凝固時の圧下を行うことが好ましい。
(B−1)熱間圧延:
熱間圧延は、前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼片を、900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上となるように行う必要がある。
先ず、鋼片を900〜1180℃に加熱するのは、加熱温度が900℃未満の低い温度では、Bの析出物、さらにはNbの析出物のマトリックスへの固溶が十分でなく、所望の強度が確保できない。一方、1180℃を超える高い加熱温度では、圧延前のオーステナイト粒を細粒かつ整粒に保つことができなくなり、その後の圧延においてもオーステナイト粒が均一細粒化されないからである。
次に、上記温度域に加熱した鋼片に対して、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上となるようにするのは、未再結晶域の圧下を十分に確保することで、良好な「強度−靱性バランス」を具備させるのに必要な歪の導入を実現するためである。
なお、圧延は、その終了温度が680℃以上となるように行うことが肝要である。これは、特性バラツキを小さくするためには、圧延終了後、650℃以上の高温から水冷を開始してフェライトの生成を避ける必要があるが、圧延終了温度が680℃を下回る場合には、厚鋼板内の温度分布の均一化のためやBのオーステナイト結晶粒界への均一な偏析を促進して良好な焼入れ性を得るための時間を確保すれば、水冷開始温度が650℃を下回ってしまい、フェライトが生成して特性バラツキが大きくなるからである。
したがって、本発明(1)および本発明(2)においては、前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼片を、900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上となるように行うこととした。
なお、900〜1180℃に加熱した鋼片に対して施す熱間圧延における850℃以下の温度での累積圧下率の上限は、再結晶温度域での圧下量の確保および圧延能率の向上の理由から70%とするのが好ましい。
既に述べたように、鋼片の「加熱温度」とは炉内雰囲気温度を指す。また、上記の圧延開始から終了までの「温度」は被処理材である鋼板の表面温度をいう。
(B−2)圧延終了後水冷開始までに経過させる時間:
前記(B−1)項の熱間圧延を終了した後は、水冷開始までに20秒以上の時間を経過させる必要がある。
これは、圧延終了後に20秒以上の時間を経過させることによって、厚鋼板内の温度分布の均一化がなされるとともに、Bのオーステナイト結晶粒界への均一な偏析が促進されて良好な焼入れ性が確保されて、特性バラツキが抑制されるからである。
なお、圧延終了後水冷開始までに経過させる時間の上限は、例えば、圧延設備、圧延環境や厚鋼板の板厚などに応じて、圧延終了から厚鋼板の表面温度が650℃に低下するまでの時間を測定して適宜決定すればよい。
したがって、本発明(1)および本発明(2)においては、(B−1)項の熱間圧延を終了した後、水冷開始までに20秒以上の時間を経過させることとした。
(B−3)圧延後の水冷:
圧延終了後に前記(B−2)項の時間を経過した後は、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止する必要がある。
これは、ベイナイトおよびマルテンサイトの変態温度域である500℃前後において、十分な冷却速度を確保することで、厚鋼板のミクロ組織として、マルテンサイトとベイナイトの混合組織を安定して得るためである。
したがって、本発明(1)および本発明(2)においては、(B−2)項の時間を経過させた後、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止することとした。
なお、水冷開始温度の上限は、未再結晶温度域での圧下およびその後の待ち時間の確保の観点より800℃とするのが好ましい。
既に述べたように、上記の水冷開始から停止までの「温度」は被処理材である鋼板の表面温度をいう。
(B−4)水冷後の熱処理:
前記(B−3)項の圧延後の水冷を停止した後は、必要に応じてさらに、500〜650℃の温度で、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持する条件での熱処理(焼戻し)を行ってもよい。
これは、500〜650℃の温度で焼戻しすることによって、マルテンサイト組織中への微細炭化物生成が促進され、鋼材靱性の安定化を図ることが可能であるためである。
なお、対象とする厚鋼板の板厚によって、板厚中心位置までを均一に再加熱するための時間が変化するが、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持すれば、全厚にわたって均一な加熱が行えるので、より安定かつ確実に、均一な特性を確保することが可能となる。
したがって、本発明(2)においては、(B−3)項の圧延後の水冷を停止した後、さらに、500〜650℃の温度で、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持することとした。
既に述べたように、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持する500〜650℃の温度は、炉内雰囲気温度を指す。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
転炉溶製後に連続鋳造して、表1に示す化学組成を有する鋼1〜6の鋼片(スラブ)を作製し、得られた各鋼片から、表2に示す条件で40mmの鋼板を製造した。
表1中の鋼1〜4は、化学組成におけるBが本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、表1中の鋼5および鋼6は、化学組成におけるBが本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。
なお、表2の「焼戻し」欄における「−」は焼戻しを実施していないことを示す。
Figure 0005003179
Figure 0005003179
このようにして得た各鋼板について、機械的性質としての引張特性、衝撃特性を調査した。
引張特性は、平行部の直径が14mmのJIS Z 2201(1998)に記載の4号引張試験片を採取して室温で行い、降伏強度(YS)と引張強度(TS)を測定した。上記の引張試験片は、厚鋼板の幅方向中央部において、1/4t位置から圧延方向(すなわち、鋼板の長さ方向)と直角の方向に採取した。
なお、650MPa以上のYSと750MPa以上のTSを有することを引張特性の目標とした。
衝撃特性は、得られた厚鋼板の幅方向中央部における1/4t位置および1/2t位置から、圧延方向と直角の方向について、JIS Z 2202(1998)に記載の幅10mmの「Vノッチ試験片」を採取してシャルピー衝撃試験を行い、1/4t位置および1/2t位置のそれぞれにおける破面遷移温度(vTs)を求め、1/4t位置と1/2t位置のvTsの差(以下、「ΔvTs」という。)で評価した。
なお、耐脆性破壊特性に優れる厚鋼板として1/2t位置でのvTsの目標を−40℃以下、ΔvTsの目標を50℃以下とした。
表3に、上記の各試験結果をまとめて示す。
Figure 0005003179
表3から、本発明の方法で製造した試験番号1、試験番号5、試験番号9、試験番号13および試験番号14の高張力厚鋼板は板厚方向の靱性のバラツキが少ない。
これに対して、本発明で規定する条件から外れた方法で製造した試験番号の厚鋼板の場合、降伏強度(YS)および引張強度(TS)については目標値を上回っているものの、板厚方向の靱性のバラツキが大きい。
すなわち、試験番号2および試験番号3の厚鋼板は、鋼片の加熱温度が本発明で規定する条件から外れているため、板厚方向の靱性バラツキが大きい。
試験番号4、試験番号8および試験番号12の厚鋼板は、圧延終了後、水冷開始までの経過時間が20秒を下回っており、板厚方向の靱性バラツキが大きい。
試験番号6および試験番号7の厚鋼板は、熱間圧延の条件が本発明で規定する条件から外れているため、板厚方向の靱性バラツキが大きい。
試験番号10および試験番号11の厚鋼板は、圧延後の水冷条件が本発明で規定する条件から外れているため、板厚方向の靱性バラツキが大きい。
試験番号15および試験番号16の厚鋼板は、B含有量が本発明で規定する条件から外れているため、板厚方向の靱性バラツキが大きい。

Claims (5)

  1. 質量%で、B:0.0005〜0.0020%を含有する鋼片を、900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上の圧延を行い、圧延終了後20秒以上の時間が経過した後に、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止することを特徴とする高張力厚鋼板の製造方法。
  2. 質量%で、B:0.0005〜0.0020%を含有する鋼片を、900〜1180℃に加熱した後、850℃以下の温度での累積圧下率が50%以上で、圧延終了温度が680℃以上の圧延を行い、圧延終了後20秒以上の時間が経過した後に、650℃以上の温度から水冷を開始し、200℃以下の温度で水冷を停止し、その後さらに、500〜650℃の温度で、保持時間(分)≧板厚(mm)/2を満たす時間保持することを特徴とする高張力厚鋼板の製造方法。
  3. 鋼片が、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:0.02〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.012%以下、S:0.003%以下、Cr:0.2〜1.2%、Nb:0.005〜0.030%、V:0.005〜0.05%、Ti:0.002〜0.02%、sol.Al:0.02〜0.08%、B:0.0005〜0.0020%、N:0.005%以下およびO:0.002%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
  4. 鋼片が、質量%で、さらに、Cu:0.8%以下およびMo:0.8%以下の1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項3に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
  5. 鋼片が、質量%で、さらに、Ni:1.8%以下を含有するものであることを特徴とする請求項3または4に記載の高張力厚鋼板の製造方法。
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