JP4502948B2 - 耐食性および脆性破壊発生特性に優れた船舶用鋼材 - Google Patents
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(1)フェライト面積率が75%以上。
(2)t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下。
(3)t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下。
(a)Cu:1.5%以下(0%を含まない)、Cr:1%以下(0%を含まない)、Ni:2%以下(0%を含まない)、Ti:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素、
(b)Ca:0.02%以下(0%を含まない)、
(c)Mo:0.5%以下(0%を含まない)および/またはW:0.3%以下(0%を含まない)、或いは
(d)B:0.01%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上の元素、
等を含有させることも有効である。含有させる成分の種類に応じて船舶用鋼材の特性が更に改善されるからである。
Cは、材料の強度を確保するために必要な元素である。船舶の構造部材として要求される最低強度(使用する鋼材の肉厚にもよるが、概ね400MPa程度)を得るためには、0.01%以上含有させる必要がある。C含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.04%以上とする。しかし0.2%を超えて過剰に含有させると靱性や溶接性が劣化する。こうしたことから、C含有量の上限は0.2%とした。C含有量の好ましい上限は0.18%であり、より好ましくは0.16%以下とする。
Siは、脱酸作用を有する他、強度を確保するためにも必要な元素であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。従ってSiは0.01%以上とする。Si含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましくは0.05%以上とする。しかし1%を超えて過剰に含有させると溶接性やHAZ靭性が劣化する。従ってSiは1%以下とする。Si含有量の好ましい上限は0.8%であり、より好ましくは0.6%以下とする。
MnもSiと同様に脱酸作用を有する他、強度を確保するために必要な元素であり、0.01%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。従ってMnは0.01%以上とする。Mn含有量の好ましい下限は0.05%であり、より好ましくは0.10%以上とする。しかし2%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。従ってMnは2%以下とする。Mn含有量の好ましい上限は1.80%であり、より好ましくは1.60%以下とする。
AlもSi、Mnと同様に脱酸および強度確保のために必要であり、0.005%に満たないと脱酸効果が得られない。従ってAlは0.005%以上とする。Al含有量の好ましい下限は0.010%であり、より好ましくは0.015%以上とする。しかし0.1%を超えて添加すると溶接性やHAZ靭性を害するため、Al添加量の上限は0.1%とした。Al含有量の好ましい上限は0.09%であり、より好ましくは0.08%以下とする。
Coは、高塩分環境において鋼材の耐食性向上に大きく寄与する緻密な表面錆皮膜を形成するのに必要不可欠な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Co含有量は0.01%以上とすることが必要である。Co含有量の好ましい下限は0.015%であり、より好ましくは0.020%以上とする。しかし1%を超えて過剰に含有させると溶接性やHAZ靭性が劣化する。こうしたことからCo含有量の上限は1%とした。Co含有量の好ましい上限は0.8%であり、より好ましくは0.6%以下とするのが良い。
Mgは、溶解することによってpH上昇作用を示すことから、鉄の溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して、腐食反応を抑制し、耐食性を向上させる作用を有する。こうした効果を発揮させるためには、Mgは0.0005%以上含有させることが必要である。Mg含有量の好ましい下限は0.0007%であり、より好ましくは0.0010%以上含有させるのが良い。しかし0.02%を超えて含有させると加工性や溶接性を劣化させる。こうしたことからMg含有量の上限は0.02%とした。Mg含有量の好ましい上限は0.018%であり、より好ましくは0.015%以下とするのが良い。
Cu,Cr,NiおよびTiは、いずれも耐食性向上に有効な元素である。
Caは、Mgと同様に、溶解することによってpH上昇作用を示し、鉄の溶解が起こっている局部アノードにおける加水分解反応によるpH低下を抑制して腐食反応を抑制し、耐食性向上に有効な元素である。Caによるこうした効果は0.0005%以上含有させることによって有効に発揮される。Caを含有させるときのより好ましい下限は0.0010%である。しかし0.02%を超えて過剰に含有させると、加工性や溶接性を劣化させることになる。従ってCaは0.02%以下であることが好ましい。Caを含有させるときのより好ましい上限は0.015%である。
MoとWは、腐食の均一性を高めて局部腐食による穴あきを抑制する作用がある。これらの元素は、特にCoと同時に含有させることによって、顕著な均一腐食性向上作用が発揮される。こうした効果を発揮させるためには、いずれの元素も0.01%以上含有させることが好ましい。Moを含有させるときのより好ましい下限は0.02%であり、Wを含有させるときのより好ましい下限は0.02%である。しかし過剰に含有させると溶接性やHAZ靭性が劣化する上、大幅なコスト高となる。従ってMoについては0.5%以下、Wについては0.3%以下とすることが好ましい。Moを含有させるときのより好ましい上限は0.3%であり、Wを含有させるときのより好ましい上限は0.2%である。
船舶用鋼材では、適用する部位によってはより高強度化が必要な場合があるが、B,VおよびNbはこうした強度向上に必要な元素である。
累積圧下率(%)=[(t0−t1)/t0]×100 …(a)
但し、粗圧延開始温度が1000℃を超える場合には、鋼片のt/2位置における温度が1000℃での鋼片厚みをt0とし、粗圧延開始温度が1000℃を下回る場合には、粗圧延開始時における鋼片厚みをt0として上記累積圧下率を算出する。一方、粗圧延終了温度が900℃より下回る場合には、900℃での鋼片厚みをt1とし、粗圧延終了温度が900℃に達しない場合(900℃超の場合)には、粗圧延終了時における鋼片厚みをt1として上記累積圧下率を算出する。
Ar3変態点(℃)=868−369×[C]+24.6×[Si]−68.1×[Mn]−36.1×[Ni]−20.7×[Cu]−24.8×[Cr]+29.6×[Mo]+190×[V] …(b)
但し、[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示している。
真ひずみ=ln(t2/t3) …(c)
但し、仕上げ圧延開始温度が850℃を超える場合には、鋼片のt/2位置における温度が850℃での鋼片厚みをt2とし、仕上げ圧延開始温度が850℃を下回る場合には、仕上げ圧延開始時における鋼片厚みをt2として上記真ひずみを算出する。一方、仕上げ圧延終了温度が「Ar3変態点+40℃」より下回る場合には、「Ar3変態点+40℃」での鋼片厚みをt3とし、仕上げ圧延終了温度が「Ar3変態点+40℃」に達しない場合(「Ar3変態点+40℃」超の場合)には、仕上げ圧延終了時における鋼片厚みをt3として上記真ひずみを算出する。
1.プロセスコンピュータを用い、加熱開始から加熱終了までの雰囲気温度や在炉時間に基づいて鋼片の表面から裏面までの任意の位置(例えば、t/4位置やt/2位置)の加熱温度を算出する。
2.算出した加熱温度を用い、圧延中の圧延パススケジュールやパス間の冷却方法(水冷あるいは空冷)のデータに基づいて、板厚方向の任意の位置における圧延温度を計算しつつ圧延を実施する。
3.鋼板の表面温度は圧延ライン上に設置された放射型温度計を用いて実測する。但し、プロセスコンピュータでも理論値を計算しておく。
4.粗圧延開始時、粗圧延終了時、仕上圧延開始時にそれぞれ実測した鋼板の表面温度を、プロセスコンピュータから算出される計算温度と照合する。
5.計算温度と実測温度の差が±30℃以上の場合は、計算表面温度が実測温度と一致するように再計算してプロセスコンピュータ上の計算温度とし、±30℃未満の場合は、プロセスコンピュータから算出された計算温度をそのまま用いる。
6.次に、この温度を用い、制御対象としている領域の圧延温度を管理する。
鋼板のおもて面と裏面を含むと共に、圧延方向に平行で且つ鋼材表面(鋼材のおもて面)に対して垂直な面が露出するようにサンプルを切り出し、この露出面を研磨して鏡面仕上げした。露出面の研磨には#150〜#1000までの湿式エメリー研磨紙を用いて研磨した後、研磨剤としてダイヤモンドスラリー用いて鏡面仕上げした。
得られた鋼板を切断および表面研削を行って、最終的に100×100×25(mm)の大きさの試験片を作製した(試験片A)。試験片Aの外観形状を図4に示す。
まず海洋環境を模擬して、海水噴霧試験と恒温恒湿試験の繰り返しによる複合サイクル腐食試験を行った。
脆性破壊発生特性は、社団法人日本溶接協会(WES)発行のWES1108(1995年2月1日制定)で規定される亀裂先端開口変位試験(CTOD試験)の結果に基づいて評価した。試験片としては、WES1109(1995年制定)のP.6の図6に示されている「標準三点曲げ試験片」を用いた。試験温度は−40℃とし、δc−40℃(mm)を測定した。本発明では、δc−40℃が0.20mm以上の場合を合格とする。
Claims (6)
- C :0.01〜0.2%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.01〜1%、
Mn:0.01〜2%、
Al:0.005〜0.1%を夫々含有する他、
Co:0.010〜1%および
Mg:0.0005〜0.02%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材であり、
該鋼材の圧延方向に平行で且つ鋼材表面に対して垂直な面の金属組織を観察したときに、下記(1)〜(3)を満足することを特徴とする耐食性および脆性破壊発生特性に優れた船舶用鋼材。
(1)フェライト面積率が75%以上。
(2)t/2位置におけるフェライト粒の平均円相当径が20.0μm以下。
(3)t/4位置におけるフェライト粒の平均アスペクト比が2.0以下。
但し、tは鋼材の厚み(mm)を意味する。 - 前記Coの含有量[Co]と前記Mgの含有量[Mg]の比の値([Co]/[Mg])が2〜350である請求項1に記載の船舶用鋼材。
- 更に他の元素として、
Cu:1.5%以下(0%を含まない)、
Cr:1%以下(0%を含まない)、
Ni:2%以下(0%を含まない)、
Ti:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1または2に記載の船舶用鋼材。 - 更に他の元素として、
Ca:0.02%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の船舶用鋼材。 - 更に他の元素として、
Mo:0.5%以下(0%を含まない)および/または
W:0.3%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の船舶用鋼材。 - 更に他の元素として、
B :0.01%以下(0%を含まない)、
V :0.1%以下(0%を含まない)および
Nb:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の船舶用鋼材。
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