JP5002991B2 - 耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法及び被膜鋼板 - Google Patents

耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法及び被膜鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板に関し、特に、自動車や建築物の内外面パネルに有利に適用できる、耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法及び被膜鋼板に関する。
フェライト系ステンレス冷延鋼板の加工性を改善する手法として、例えば特許文献1に開示されているように、C,Nの低減に加え、Ti又はNbを添加する手法が一般に知られている。また、特許文献2では、高温巻取りによる熱延制御に加え、鋼中のP,S,C,N含有量を規定することにより、延性低下、硬質化を招くリン化物(FeTiP)の析出を抑制し、焼鈍省略が可能となる製造方法を開示している。なお、非特許文献1にはHall−Petchの関係についての解説がある。
特開平3−264652号公報 特開平5−320772号公報 社団法人金属学会編集「鉄鋼材料」平成7年第3冊p.56
自動車の軽量化のニーズにより、サイドパネル等、自動車の内外面パネルのハイテン化が進行している。また、塗装工程の簡略化、省略の観点から、ステンレス冷延鋼板を内外面パネルに使用する検討が進められている。内外面パネルには、張出し成形性、絞り成形性に加え、耐面歪み性が重要な特性として要求される。特に、プレス成形品の面精度の向上は、中でも重要な課題であることはいうまでもない。併せて表面の性状、研磨性も重要な因子となる。
ところが、前記特許文献1,2に開示されている従来技術では、いずれもTi又はNbを単独または複合添加して鋼中のC,Nを炭窒化物として固定(IF化)することで延性やr値を改善し、自動車排ガス系材料としては十分な加工性が得られているが、自動車や建築物の内外面パネルにフェライト系ステンレス冷延鋼板を適用する際に問題になっていた上記の耐面歪み性及び表面性状を改善するには不十分であった。
本発明は、かかる従来技術の難点を克服し、自動車や建築物の内外面パネルに有利に適用できる、耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法及び被膜鋼板を提供することを課題とする。
発明者らは、耐面歪み性を向上させるため、Nb添加フェライト系ステンレス冷延鋼板の低YR(YR:降伏比=YS/TS(×100%)、YS:降伏応力、TS:引張強さ)化を達成するための手段を検討した。従来、YSを低下させる方法として、高純度化や結晶粒の粗大化が図られてきたが、これらの方法ではYSと共にTSも低下してしまうという弊害があった。これに対し、発明者らは、Nbと共にTiを微量添加することにより、冷延鋼板のYSが低下することを新たに見出した。
すなわち、発明者らは、Nb添加フェライト系ステンレス鋼についてTi含有量を種々変化させて小型鋼塊を溶製し、熱延‐冷延‐焼鈍した鋼板の組織と機械的特性を詳細に調べた結果、Ti含有量が0.003〜0.030質量%でかつNb/Ti(Nb含有量(質量%)/Ti含有量(質量%)の比)が10.0以上になるようにTiを微量添加することにより、冷延鋼板の低YS、低YRを達成した。
このように鋼板の機械的特性が変化した理由として、Nb添加鋼ではNb系炭窒化物が析出するが、微量のTiを添加することでTiNが形成され、Nb系炭窒化物の組成や析出状態が変化するためと考える。ただし、過剰のTi添加はTiNのみならずTi(C,N),TiCの形成を促進し、余剰Nbが固溶Nbとして存在してYSが向上するため、添加量に適正範囲があるものと考える。
さらに、TiN平均径を0.1〜3.0μmの範囲に規制することで、TiNに起因した擦り疵を低減できて優れた表面性状とすることができる。加えてTiNの析出量が同じであっても溶接部の組織を微細化することができる。
本発明は、これらの知見に立脚してなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
1. 質量%で、
C:0.020%以下、
Si:0.5%以下、
Mn:0.3%以下、
P:0.04%以下、
S:0.010%以下、
Cr:8〜30%、
Al:1.0%以下、
Nb:0.05〜0.5%、
Ti:0.003〜0.030%、
N:0.020%以下を含有し、
かつ、Nb/Ti≧10.0、及びNb≧16(C+N)を満足し、
残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、
TiN平均径が0.1〜3.0μmであり、YRが60%以下である、
耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法であって、
前記組成になる溶鋼を溶製し、連続鋳造して鋼素材となし、これに熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷延、仕上げ焼鈍を順次施し、
前記連続鋳造で、溶鋼過熱度を15〜60℃とし且つ1500〜1300℃間の平均冷却速度を5℃/秒以上として前記TiN平均径を0.1〜3.0μmに制御することを特徴とする耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:3.0%以下を含有する前項1に記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
Ni:1.0%以下、
Cu:1.0%以下、
Co:1.0%以下
のうち1種又は2種以上を含有する前項1又は2に記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
B:0.005%以下
を含有する前項1〜3のいずれかに記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
Ta:0.2%以下
V:0.2%以下、
W:0.2%以下
のうち1種又は2種以上を含有する前項1〜4のいずれかに記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
6. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
Mg:0.0005〜0.0100%
を含有する前項1〜5のいずれかに記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
Ca:0.05%以下
を含有する前項1〜6のいずれかに記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
8. 結晶粒の粒度番号が6.0以上である前項1〜7のいずれかに記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
9. 前項1〜8のいずれかに記載の製造方法で得られた耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の表面に、膜厚0.5〜100μmの潤滑コート塗布膜を形成してなる被膜鋼板。
本発明によれば、フェライト系ステンレス冷延鋼板の耐面歪み性や表面研磨性が向上し、自動車の内外面パネル、建材の内外面パネル用途への適用範囲が広がる。
以下、本発明における諸要件の限定理由等について説明する。なお、組成の成分元素の含有量の単位は質量%であり、%と略記される。
C:0.020%以下
Cは、固溶炭素として含有すると鋼が硬質化(固溶強化)する。また、熱延板や冷延板の{111}集合組織形成を阻害し、鋼板のr値向上を阻害する。特に0.020%を超えるとその悪影響が顕著になるので、0.020%以下に規制する。また、Cは固溶強化、析出強化により鋼を硬質化し、延性を低減するため、成形加工に用いる鋼板中には極力低い方が好ましい。しかし過度な低減は、精錬負荷を大きくするとともに、結晶粒の著しい粗大化を招くため、析出物制御も難しくなる。これらの観点から、その含有量は0.0005%超、0.008%以下が好ましい。
Si:0.5%以下
Siは、耐酸化性、耐食性の向上に有効な元素であり、大気環境での耐食性を向上させる。また、脱酸剤として鋼中の酸素除去に用いられる。しかしながら、Si含有量が多くなると固溶Siの増加に伴い鋼が硬質化し、延性も低下するので0.5%を上限とする。なお、好ましくは0.05〜0.2%である。
Mn:0.3%以下
Mnは、耐酸化性を向上させるのに有効な元素であるが、過剰に含有されると鋼の靭性を劣化させ、溶接部の耐二次加工脆性をも劣化させるので、0.3%以下に限定する。
P:0.04%以下
Pは、固溶すると鋼を硬質化し延性を著しく低下させる。よって低い方が望ましい。また、微細な隣化物として析出し、加工性および耐食性を損ねる。特に、0.04%を超えるとその影響が顕著になるので、0.04%以下とする。なお、製鋼コスト、リサイクルや鋼の精錬負荷という観点から好適範囲は0.005〜0.025%である。
S:0.010%以下
Sは可溶性のMnSを形成し鋼の耐食性を低下させるため低い方が好ましい。ただし、製鋼時の脱S処理にかかる経済的負荷を考慮して、その含有量は0.010%以下とする。なお、好ましくは0.002〜0.006%である。
Cr:8〜30%
Crは、耐食性の向上に有効な元素である。しかし無塗装で使用するために必要な耐食性を確保するには8%以上含有する必要がある。なお、海岸環境や溶接部も含めた耐食性を確保するためには、不動態皮膜が安定になる11%以上の含有が好ましい。一方、Crは鋼の加工性を低下させる元素であり、特に30%を超えて含有すると、その影響が顕著になるとともに他元素との複合添加によりσ相やχ相の析出で鋼が脆くなるので、30%を上限とする。自動車や内外装建材の内外面パネルとして使用する場合、加工性と耐食性の観点から15〜24%の添加が好適である。
Al:1.0%以下
Alは、製鋼における脱酸剤として必要であるが、過度の添加は酸化物系介在物を生成する。その結果、表面外観および耐食性の劣化を招くので1.0%以下とする。
Nb:0.05〜0.5%、かつNb≧16(C+N)
Nbは、C、NをNb系炭窒化物として析出、固定することにより耐食性及び加工性(延び、r値)を向上させる効果を有しており、所定量添加することが必要である。ただし、含有量が0.05%未満の場合、又はNb/(C+N)≧16を満たさない場合、C、Nを十分に析出物として固定できないため鋼中に固溶C、Nが残存し、加工性や耐食性の低下を招く。よって、Nbは0.05%以上かつNb/(C+N)≧16とする。一方、0.5%を超えて含有すると固溶Nb量が増加し、鋼の硬化、延性低下、靭性低下を招くため、0.5%を上限とする。なお、16≦Nb/(C+N)≦40の範囲が好適である。
Ti:0.003〜0.030%、かつNb/Ti≧10.0
Tiは本発明で最も重要な元素である。Tiは鋼中の炭素、窒素と炭窒化物を形成し、Nb同様Cr系炭窒化物形成を抑制し、耐食性及び加工性(伸び、r値)を向上させる効果を有する。しかし、本発明では、Nbを主な安定化元素として添加したNb添加フェライト系ステンレス鋼において、Tiを微量添加することにより、低YS、低YR化を達成し、耐面歪み性に優れたステンレス冷延鋼板が得られることを新たに見出した。そのメカニズムは未だ明らかではないが、TiはNbより窒化物を形成しやすいため、鋼中の窒素をTi系窒化物(TiN)として固定し、Nb炭窒化物の組成や析出形態を変化させ、これら析出物の鋼中における溶解度等に影響を与えるためと考えられる。その効果を得るには、Ti含有量は0.003%以上でかつNb/Ti≧10.0を満たす必要がある(図2)。ただし、Nb/Ti<10.0又はTiを0.030%超で添加するとTi炭窒化物の形成が促進され、固溶Nb量が増加するため十分な低YS、低YR化効果が得られない(図2)。
N:0.020%以下
Nは、Cと同様に固溶による鋼板の硬質化を招き、微細析出物を形成して{111}集合組織形成を阻害し、r値向上を阻害する。また、Tiと共にTiNを形成し、冷延板特に光沢品の擦り疵の原因となり、表面性状を低下させる原因になるので、上限を0.020%とする。なお母相(マトリックス)中のNをTiNとして固定することでYSを効果的に低下させるには0.005%以上のN含有が好ましい。なお、精錬負荷も考慮し、0.005〜0.015%が好適範囲である。
Mo:3.0%以下
Moは、ステンレス鋼の耐食性向上に有効な元素である。内外板パネル用途に使用する場合、美観上、機能上の理由から耐食性の確保が重要となる。Moは耐食性、耐錆性向上に有効な元素であるが、3.0%超添加すると鋼板が硬質化し、プレス成形等の加工が難しくなるので、上限を3.0%とした。
Ni,Cu,Co:各1.0%以下の1種又は2種以上
Ni、Cu、Coはいずれも耐食性および熱延板靭性改善に有効な元素である。しかし、それぞれ1.0%を超えると鋼が硬質化し、加工性への弊害が大きくなるので、各上限を1.0%とした。
B:0.005%以下
Bは耐2次加工脆性の向上に有効な元素である。しかし0.005%超の添加は、鋼を硬質化し逆に鋼の1次加工性、2次加工性を阻害するので、上限を0.005%とした。なお、より好ましくは0.0003(この下限は効果がより明確に現れる臨界値)〜0.0010%である。
Ta,V,W:各0.2%以下の1種又は2種以上
これら元素は、炭窒化物を形成し、耐食性向上に寄与するが、炭化物、窒化物をも形成し、鋼中の炭窒化物の形成に影響を与える。また、固溶元素として存在すると鋼を硬質化し加工性の低下を引き起こす。この弊害を回避するために各上限を0.2%とした。好ましくは0.01〜0.10%である。
Mg:0.0005〜0.0100%
Mgは脱酸剤や耐火物から解離して鋼中に溶存する。また、MgはMg-Alスピネルの酸化物系介在物を形成し、TiNの核生成サイトとして働きNのTiN化を助長する働きがある。またTiNがフェライトの核生成サイトとなるため、等軸晶率上昇、熱延板組織の微細化や溶接性向上に有効に働く。この作用は0.0005%以上で顕著になる。しかし、0.0100%を超えると酸化物系介在物が鋼中に多数残存し、耐食性低下を引き起こすことになる。よって、0.0005〜0.0100%とした。好ましくは0.002〜0.005%である。
Ca:0.05%以下
Caは鋳造性を高める観点から添加されるが、添加量が多くなると特に耐食性を著しく阻害する。そこでその含有量を0.05%以下とした。
本発明では、組成全体から以上の含有成分を除いた残部は、Feおよび不可避的不純物である。
TiN平均径:0.1〜3.0μm
TiN平均径は例えば次のようにして求める。試験片の板面に垂直で、かつ圧延方向に平行な断面を10%AA液(10%アセチルアセトン‐1%塩化テトラメチルアンモニウム‐メタノール)で電解した後、抽出レプリカを採取し、透過型電子顕微鏡(加速電圧200kV)で0.2万〜6万倍の倍率で、視野にあるTiNを50個(あるいはこれ以上)観察する。なお、析出物は、個々にEDAXを用いて元素分析を行い、組成を調べることにより、TiN析出物であると同定できる。TiNの形状はほぼ立方体または直方体である(図1)。個々のTiNについて、直方体の各面のうちの観察面とほぼ平行となる面をなす長方形の長辺方向の切断線分を長軸とし、この長軸と直交する方向(短辺方向)の切断線分を短軸として、(長軸長さ+短軸長さ)/2を求め、これを全TiN観察個数について平均したものをTiN平均径とする。
このTiN平均径が3.0μmを超えると表面疵の数が急に増加する(図3)ので、TiN平均径は3.0μm以下とする必要がある。なお、本発明の組成範囲内でTiN平均径を0.1μm未満に制御することは、現状の技術では困難であるため、TiN平均径の下限を0.1μmとした。
YR(=YS/TS(×100%))≦60%
張出し成形性の低下を抑えて耐面歪み性を向上させるには、所定の強度(TS)と延性を確保し、しかも耐座屈応力を低くする、すなわちYSを低くすることが重要であり、YRは60%以下とする必要がある。なお、YRは低いほど、鋼板は成形性及び耐面歪み性に優れたものとなる。
結晶粒径:粒度番号6.0以上
結晶粒径は鋼材のYSと関連があることが知られている。すなわち、Hall-Petchの関係式、σ=σ+KL−1/2(σ:降伏応力(YS),σ:転位が粒内を運動する時の摩擦力,L:平均粒径,K:定数)に従うと、結晶粒が粗大化するに伴いYSは低下することが一般的に知られている(例えば非特許文献1)。しかしながら、粒度番号が6.0未満になると、プレス成形性等の厳しい加工によりオレンジピールと呼ばれる表面の凹凸が形成され美観を損なうと共に成形限界を低下させることになる。内外板パネルはこのような凹凸を嫌うため、厳しい加工が施された場合でも、表面凹凸が気にならない粒度番号6.0以上とした。この粒度番号はJIS G 0552に定める切断法で測定し、圧延方向(L方向)に平行な板厚断面における×100倍の観察面について5視野観察しその平均値として求める。
潤滑コート塗布膜:膜厚0.5〜100μm
フェライト系ステンレス鋼板は、軟鋼板やオーステナイト系ステンレス鋼板に比べ延性が低いため、張出し成形性に劣る欠点を有している。そこでパネル等の成形を考えると、鋼板表面の摺動性を改善するために潤滑コートを塗布することが有効である。ただし、塗布膜の膜厚が0.5μm未満では十分な効果が得られず、一方、100μm超ではプレス成形時、潤滑コートの剥離が著しくなり、押し疵や粉等の原因となるので、膜厚の範囲を0.5〜100μmとした。潤滑コートの好ましい種類としては、アクリル樹脂等の高分子系樹脂やシリコン系樹脂等が挙げられる。
次に、本発明の製造対象であるフェライト系ステンレス冷延鋼板を製造する方法について説明する。
本発明の製造対象である前記鋼板は、製鋼工程で本発明の組成要件を満たすように溶製・鋳造した鋼素材を、熱間圧延工程、熱延板焼鈍工程(例えば箱焼鈍)、酸洗工程で順次処理して熱延板となし、これをさらに冷延工程、仕上げ焼鈍工程(例えば連続焼鈍)で順次処理して冷延焼鈍板となすという方法で製造するのが好適である。
製鋼工程では、鋼組成の調整に加え、TiN平均径の制御も行なう。TiN平均径を0.1〜3.0μmに制御するには、連続鋳造における溶鋼過熱度(鋳造温度−鋼の凝固開始温度)を15〜60℃とし、TiNが析出・粗大化する温度域である1500〜1300℃間の平均冷却速度を5℃/秒以上とすることが肝要である。好ましくは7℃/秒以上である。
なお、以上説明した本発明の製造対象である前記鋼板を用いて、溶接によりパイプに組み立てる場合には、TIG、MIG、ERW等のアーク溶接や、電縫溶接、レーザー溶接など、通常の溶接方法はすべて適用可能である。
表1に示す化学組成になる鋼スラブを、1150℃×1時間の条件で加熱後、熱間圧延し、板厚5.0mmの熱延板となした。次いで、この熱延板を950〜1100℃の温度範囲で焼鈍し、さらに板厚0.8mmに冷間圧延して冷延板となし、これを850〜1100℃の温度範囲で仕上げ焼鈍し、冷延焼鈍板を得た。この冷延焼鈍板について以下の特性を調べた。
・圧延方向(L方向)に平行な板厚断面におけるフェライト結晶粒の粒度番号をJIS G 0552(切断法)に準拠して求めた。
・JIS13号B試験片を用い、L方向(圧延方向)、D方向(圧延方向に対して45°の方向)、C方向(圧延方向に対して90°の方向)のYS、TS、El(伸び)を測定し、YR(=YS/TS(×100%))を計算した。
・JIS13号B試験片を用い、15%の単軸引張予歪を与えて、3点法に従うL,D,C各方向のr値(r,r,r)を求め、平均r値(=(r+2r+r)/4)を計算し、これのn数3点の平均値を求めた。
・冷延焼鈍板から採取した試験片の板面に垂直でかつ圧延方向に平行な断面を10%AA液で電解した後、抽出レプリカを採取し、透過型電子顕微鏡(加速電圧200kV)により、0.5万倍で観察し、50〜60個のTiNについて平均径を測定した。平均径の定義は前述のとおりである。
・TiN平均径が表面性状に及ぼす影響を評価するために、冷延焼鈍板から採取した300mm×200mmのサンプルを同一条件でバフ研磨し、その表面を詳細に目視観察し、微細な欠陥(疵)の数を数えた。バフ研磨は各サンプル5枚ずつ行い、数えた疵の数は単位面積あたりの数に換算した。
これらの調査の結果を表2に示す。
表2より、本発明例では、YR≦60%が達成され、表面疵の数も高々1個/mである。
さらに、溶接部の粒成長抑制効果を検証する目的で、板No.12と15の冷延焼鈍板についてTIG溶接を行い、溶接部の組織とTiN粒子径の関係を調べた。その結果、本発明例(No.12;TiN平均径≦3.0μm)では、溶接部の光学顕微鏡観察組織が比較例(No.15;TiN平均径>3.0μm)に比べて明らかに微細であった。
代表的なTiN析出物の形態を示すSEM撮影写真複写図である。 Ti含有量及びNb/TiとYRの関係を示すグラフである。 TiN平均径と表面疵の数の関係を示すグラフである。

Claims (9)

  1. 質量%で、
    C:0.020%以下、
    Si:0.5%以下、
    Mn:0.3%以下、
    P:0.04%以下、
    S:0.010%以下、
    Cr:8〜30%、
    Al:1.0%以下、
    Nb:0.05〜0.5%、
    Ti:0.003〜0.030%、
    N:0.020%以下を含有し、
    かつ、Nb/Ti≧10.0、及びNb≧16(C+N)を満足し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、
    TiN平均径が0.1〜3.0μmであり、YRが60%以下である、
    耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法であって、
    前記組成になる溶鋼を溶製し、連続鋳造して鋼素材となし、これに熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷延、仕上げ焼鈍を順次施し、
    前記連続鋳造で、溶鋼過熱度を15〜60℃とし且つ1500〜1300℃間の平均冷却速度を5℃/秒以上として前記TiN平均径を0.1〜3.0μmに制御することを特徴とする耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:3.0%以下を含有する請求項1に記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
    Ni:1.0%以下、
    Cu:1.0%以下、
    Co:1.0%以下
    のうち1種又は2種以上を含有する請求項1又は2に記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
    B:0.005%以下
    を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
    Ta:0.2%以下
    V:0.2%以下、
    W:0.2%以下
    のうち1種又は2種以上を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
  6. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
    Mg:0.0005〜0.0100%
    を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
  7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、
    Ca:0.05%以下
    を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
  8. 結晶粒の粒度番号が6.0以上である請求項1〜7のいずれかに記載の耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法で製造した耐面歪み性及び表面性状に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板の表面に、膜厚0.5〜100μmの潤滑コート塗布膜を形成してなる被膜鋼板。
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