JP5001504B2 - 構造粘性の、有機溶剤及び外部乳化剤不含の粉末クリヤーコートスラリー、その製造方法及びその使用 - Google Patents
構造粘性の、有機溶剤及び外部乳化剤不含の粉末クリヤーコートスラリー、その製造方法及びその使用 Download PDFInfo
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Description
本発明は、有機溶剤及び外部乳化剤不含の、構造粘性を有する新規の粉末クリヤーコートスラリーに関する。更に本発明は、前記粉末クリヤーコートスラリーの製造のための新規方法に関する。とりわけ本発明は、自動車第一塗装及び自動車補修塗装、コイルコーティング、コンテナコーティング及び電子工学的な部材の被覆又は含浸を含む工業的塗装、家具、窓、ドア及び建築物の内部及び外部の塗装のためのクリヤーコートの製造のための新規粉末クリヤーコートスラリーの使用に関する。
【0002】
国際特許出願WO00/15721号から、平均粒度0.8〜20μm及び最大粒度30μmを有し、その際、0.05〜1ミリ当量/gのイオン形成基の含量、0.05〜1ミリ当量/gの中和剤の含量及び1000s- 1の剪断速度において(i)50〜1000mPasの粘度、10s- 1の剪断速度において(ii)150〜8000mPasの粘度及び1s- 1の剪断速度において(iii)180〜12000mPasの粘度を有する、有機溶剤及び外部乳化剤不含の粉末クリヤーコートスラリーは公知である。この公知の粉末スラリーは架橋剤として、トリメチロールプロパンとウレタン基を有する三量体とのモル比3:1で反応させ、次いで残りの遊離イソシアネート基を3,5−ジメチルピラゾールで封鎖した、イソホロンジイソシアネートをベースとする封鎖されたポリイソシアネートを含有する。国際特許出願WO00/15721号の第11頁第23から25行目では、特許出願DE19617086号A1、DE19631269号A1又はEP0004571号A1にも記載される封鎖されたポリイソシアネートを使用してよいことが指摘されている。特にそれらにはヘキサメチレンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化された及び水素化されていないトルイリデンジイソシアネート、キシリリデンジイソシアネート、4,4′−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネートをベースとする封鎖されたポリイソシアネートが提案されている。しかしながらポリイソシアネートの構造及び公知の粉末クリヤーコートスラリーをベースとするクリヤーコートの白化傾向は回復できない。
【0003】
公知の粉末クリヤーコートスラリーは比較的少ない数の加工工程で製造できる。この場合、該粉末クリヤーコートスラリーは<1%の残留溶剤含量及びその低い粒度というその典型的な粉末特性に基づいて有利な適用方法を有する。該スラリーは適用後に室温又は少し高められた温度での蒸発段階の間に粉末状に乾燥する。焼き付けの後に、約40〜60μmの乾燥層厚を有する高い光沢のワキ(Kocher)不含のクリヤーコートが得られる。
【0004】
しかしながら例えば一定湿度条件又は熱水試験における湿度負荷において、該クリヤーコートは白色着色(白化)の傾向があり、これは特に自動車分野での広範な使用を妨げる。
【0005】
匹敵する粉末クリヤーコートスラリーは事前に公表されていないドイツ特許出願DE10001442.9号に記載されている。
【0006】
本発明の課題は、依然として先行技術の粉末クリヤーコートスラリーの全ての利点を有するが、湿度負荷の後にもはや白化しない新規の粉末クリヤーコートスラリーを提供することである。
【0007】
それに応じて、固体及び/又は高粘性の、貯蔵条件及び使用条件下に寸法安定な平均粒度0.8〜20μm及び最大粒度30μmの粒子を含有し、その際、該粒子は少なくとも1つのバインダー及び少なくとも1つの架橋剤を含有する構造粘性の、有機溶剤及び外部乳化剤不含の粉末クリヤーコートスラリーにおいて、架橋剤として
(A)ソフトセグメントをクリヤーコートの三次元網状構造に導入する少なくとも1つの架橋剤、かつ
(B)ハードセグメントをクリヤーコートの三次元網状構造に導入する少なくとも1つの架橋剤、又は選択的に
(A/B)ソフトセグメントと同様にハードセグメントもクリヤーコートの三次元網状構造に導入する少なくとも1つの架橋剤
を使用することを特徴とする粉末クリヤーコートスラリーが見いだされた。
【0008】
以下では、有機溶剤及び外部乳化剤不含の新規の構造粘性の粉末クリヤーコートスラリーを簡略化のために“本発明によるスラリー”と呼称する。
【0009】
先行技術に関して、本発明のもととなる課題を、ハードセグメント及びソフトセグメントを本発明によるスラリーから製造されるクリヤーコートに導入する架橋剤を用いることによって解決できることは意想外であり、かつ当業者に予測できることではない。全く反対に、先行技術に関しては、かかる架橋剤の使用は白化の傾向に影響がないべきであると見込まれていた。それというのも先行技術からは相応の関連性を導き出すことができないからである。
【0010】
本発明によるスラリーの本発明により重要な成分は、ソフトセグメントをクリヤーコートの三次元網状構造に導入する少なくとも1つの架橋剤(A)、ハードセグメントをクリヤーコートの三次元網状構造に導入する少なくとも1つの架橋剤(B)である。前記の架橋剤(A)及び(B)の代わりに又はその他にソフトセグメントと同様にハードセグメントもクリヤーコートの三次元網状構造に導入する少なくとも1つの架橋剤(A/B)であってもよい。
【0011】
架橋剤(A)及び(B)は架橋剤(A/B)よりも容易に製造でき、かつ構造と同様に量比を介しても個々のケースの要求に容易に適合できるので、架橋剤(A)及び(B)が有利である。
【0012】
本発明の範囲において、ソフトセグメントとは、三次元網状構造の成分としてそのガラス転移温度Tgを低下させる分子構成要素を表す。ハードセグメントとは、それに対して三次元網状構造の成分としてそのガラス転移温度Tgを高める分子構成成分を表す。
【0013】
適当なハードセグメント及びソフトセグメントの例は二価の有機基である。
【0014】
適当なソフトな二価の有機基の例は、置換又は非置換の、有利には非置換の直鎖状又は分枝鎖状の、有利には直鎖状の4〜20個の、有利には5〜10個の、特に6個の炭素原子を有するアルカンジイル基である。
【0015】
良好に適当な直鎖状のアルカンジイル基の例は、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナン−1,9−ジイル、デカン−1,10−ジイル、ウンデカン−1,11−ジイル、ドデカン−1,12−ジイル、トリデカン−1,13−ジイル、テトラデカン−1,14−ジイル、ペンタデカン−1,15−ジイル、ヘキサデカン−1,16−ジイル、ヘプタデカン−1,17−ジイル、オクタデカン−1,18−ジイル、ノナデカン−1,19−ジイル又はエイコサン−1,20−ジイル、有利にはテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナン−1,9−ジイル、デカン−1,10−ジイル、特にヘキサメチレンである。
【0016】
置換基として、主に不活性である、すなわち架橋剤(A)、(B)及び(A/B)又は本発明によるスラリーの別の成分と反応しない全ての有機官能基が該当する。
【0017】
適当な不活性有機基の例はハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基又はアルコキシ基である。
【0018】
ハードな二価の有機基は芳香族又は脂環式の基である。本発明によるクリヤーコートの耐候性に関しては、有利には脂環式基が使用される。それらの中でも、他方では置換又は非置換の、有利には非置換の4〜20個の炭素原子を有するシクロアルカンジイル基が有利であり、かつ従って本発明によれば有利に使用される。
【0019】
適当な4〜20個の炭素原子を有するシクロアルカンジイル基の例は、シクロブタン−1,3−ジイル、シクロペンタン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,3−又は−1,4−ジイル、シクロヘプタン−1,4−ジイル、ノルボルナン−1,4−ジイル、アダマンタン−1,5−ジイル、デカリン−ジイル、3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン−1,5−ジイル、1−メチルシクロヘキサン−2,6−ジイル、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイル、1,1′−ジシクロヘキサン−4,4′−ジイル又は1,4−ジシクロヘキシルヘキサン−4,4′′−ジイル、特に3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン−1,5−ジイル又はジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイルである。
【0020】
適当な置換基の例は前記に記載されている。
【0021】
本発明によれば、少なくとも1つ、有利には少なくとも2つ、特に少なくとも3つの前記のソフトセグメントをクリヤーコートに導入する全ての架橋剤(A)が該当する。
【0022】
本発明によれば、少なくとも1つ、有利には少なくとも2つの、特に少なくとも3つの前記のハードセグメントをクリヤーコートに導入する全ての架橋剤(B)が該当する。
【0023】
更に、少なくとも1つ、有利には少なくとも2つの前記のソフトセグメント並びに少なくとも1つ、有利には1つの前記のハードセグメント又は少なくとも1つ、有利には1つの前記のソフトセグメント及び少なくとも1つ、有利には少なくとも2つの前記のハードセグメントを導入する全ての架橋剤(A/B)が該当する。
【0024】
それらの構造的多様性及びそれらの容易な入手性に基づいて、前記のセグメントを有する封鎖されたポリイソシアネートが特に有利であり、かつ従って本発明によれば架橋剤(A)及び(B)及び/又は(A/B)としてより特に有利に使用される。
【0025】
適当な封鎖されたポリイソシアネート(A)及び(B)又は(A/B)は封鎖されたイソシアネート基に関しては>2、有利には2.1〜10、好ましくは2.5〜8、特に有利には2.8〜6、より特に有利には3〜5、特に3〜4の官能性を有する。
【0026】
有利には封鎖されたポリイソシアネート(A)及び(B)又は(A/B)は相応のセグメントを有するジイソシアネートから製造される。
【0027】
封鎖されたポリイソシアネート(A)又は(A/B)の製造に用いられる適当なポリイソシアネートの例はテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート、特にヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0028】
封鎖されたポリイソシアネート(B)又は(A/B)の製造に用いられる適当なポリイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート又は4,4′−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、特にイソホロンジイソシアネートである。
【0029】
ジイソシアネートは慣用かつ公知の反応を用いてポリイソシアネートに変換される。得られたポリイソシアネートはイソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、カルボジイミド基、尿素基及び/又はウレットジオン基を有するオリゴマーである。適当な製造方法の例は、例えば特許文献及び特許出願CA2163591号、US4419513号A、US4454317号A、EP0646608号A1、US4801675号A1、EP0183976号A1、DE4015155号A1、EP0303150号A1、EP0496208号A1、EP0524500号A1、EP0566037号A1、US5258482号A、US5290902号A、EP0649806号A1、DE4229183号A1又はEP0531820号A1から公知である。
【0030】
より特に有利にはヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートのオリゴマーが使用される。
【0031】
これらのポリイソシアネートは更に適当な封鎖剤で封鎖される。適当な封鎖剤の例は、
i)フェノール、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、t−ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、この酸のエステル又は2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;
ii)ラクタム、例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム又はβ−プロピオラクタム;
iii)活性メチレン化合物、例えばジエチルマロネート、ジメチルマロネート、アセト酢酸エチルエステル又はアセト酢酸メチルエステル又はアセチルアセトン;
iv)アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、t−アミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、グリコール酸、グリコール酸エステル、乳酸、乳酸エステル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、エチレンクロロヒドリン、エチレンブロムヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−シクロヘキシルジメタノール又はアセトシアンヒドリン;
v)メルカプタン、例えばブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール又はエチルチオフェノール;
vi)酸アミド、例えばアセトアニリド、アセトアニシジンアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド又はベンズアミド;
vii)イミド、例えばスクシンイミド、フタルイミド又はマレイミド;
viii)アミン、例えばジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン又はブチルフェニルアミン;
ix)イミダゾール、例えばイミダゾール又は2−エチルイミダゾール;
x)尿素、例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素又は1,3−ジフェニル尿素;
xi)カルバメート、例えばN−フェニルカルバミド酸フェニルエステル又は2−オキサゾリドン;
xii)イミン、例えばエチレンイミン;
xiii)オキシム、例えばアセトンオキシム、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソブチルケトキシム、ジアセチルモノキシム、ベンゾフェノンオキシム又はクロロヘキサノンオキシム;
xiv)亜硫酸の塩、例えば重亜硫酸ナトリウム又は重亜硫酸カリウム;
xv)ヒドロキサム酸エステル、例えばベンジルメタクリロヒドロキサメート(BMH)又はアリルメタクリロヒドロキサメート;又は
xvi)置換されたピラゾール又はトリアゾール;並びに
xvii)前記の封鎖剤の混合物
である。
【0032】
特に有利には置換されたピラゾール(xvi)、例えば3,4−ジメチルピラゾール及び/又は3,5−ジメチルピラゾール又は3,4−ジメチルピラゾール及び/又は3,5−ジメチルピラゾール及びトリメチロールプロパンからなる混合物(xvii)が使用される。
【0033】
より特に更に適当な封鎖されたポリイソシアネート(A)のための例は、3,5−ジメチルピラゾールで封鎖されているヘキサメチレンジイソシアネートの三量体又はシアヌレートである。
【0034】
より特に更に適当な封鎖されたポリイソシアネート(B)のための例は、イソホロンジイソシアネート及びトリメチロールプロパンのモル比3:1における、遊離イソシアネート基が3,5−ジメチルピラゾールで封鎖されている反応生成物である。
【0035】
本発明によるスラリーの粒子中の前記の架橋剤の含量は非常に広範に変更でき、かつ第一にバインダー中の補足的な反応性官能基の数及び架橋剤の官能性に依存する。有利には本発明によるスラリーはその固体に対して5〜60、有利には15〜55、特に有利には25〜50、特に30〜45質量%の架橋剤を含有する。
【0036】
この場合、架橋剤(A)と架橋剤(B)との混合比は同様に広範に変化できる。有利には(A):(B)での当量比は10:1〜1:10、有利には9:1〜1:5、特に有利には8:1〜1:4、より特に有利には6:1〜1:2、特に4:1〜1:1である。
【0037】
前記の本発明により使用されるべき架橋剤(A)及び(B)及び/又は(A/B)の他に、本発明によるスラリーはなおも少なくとも1つの他の慣用かつ公知の架橋剤を副次的な量で、すなわち本発明によるスラリーの架橋挙動がまず第一に前記の本発明により使用されるべき架橋剤によって影響される量で含有してよい。有利には、付加的な架橋剤の量は架橋剤の全質量に対して10質量%以下である。適当な付加的な架橋剤の例は、例えば特許文献US4939213号A、US5084541号A又はUS5288865号A又は欧州特許出願EP0604922号A1に記載されるトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンである。
【0038】
本発明によるスラリーに関しては、更に固体粒子の平均粒度が0.8〜20μm、特に有利には3〜15μmであることが重要である。平均粒度とは、レーザ回折法により測定される50%中間値、すなわち粒子の50%が≦中間値の粒度を有し、かつ粒子の50%が≧中間値の粒度を有することを表す。
【0039】
かかる平均粒度及び<1%の溶剤含量を有するスラリーはより良好な適用挙動を示し、かつ自動車工業で目下自動車の仕上げ塗装で実施されるように適用される>30μmの被膜厚さにおいて、一般にワキ及び“マッドクラッキング”の傾向がわずかであるにすぎない。
【0040】
粒度は、粒子がその大きさに基づいて焼き付け時にもはや完全に均展できず、かつそれにより被膜の均展に悪影響を及ぼす場合にその上限と見なされる。しかしながら、その外見により少ない要求がある場合には上限はより高くてもよい。上限としては、30μmが合理的であると見なされる。それというのもこの粒度からは、スプレーノズル及び高感度の適用装置の運搬装置の閉塞が考えられるべきであるからである。
【0041】
本発明によるスラリー中に含まれる粒子は固体及び/又は高粘性である。本発明の範囲において、“高粘性”とは、粒子が粉末クリヤーコートスラリーの貯蔵及び使用の慣用かつ公知の条件下に主に固体粒子のように挙動することを意味する。
【0042】
本発明によるスラリー中に含まれる粒子は更に寸法安定性である。本発明の範囲においては、“寸法安定”とは粒子が粉末クリヤーコートスラリーの貯蔵及び使用の慣用かつ公知の条件下に凝集せず、より小さな粒子に分解せずに、剪断力の作用下にも主にその本来の形状を保持することを意味する。
【0043】
本発明によるスラリーは有機溶剤不含である。本発明の範囲において、このことは、揮発性溶剤の残留含量<1質量%、有利には0.5質量%、特に有利には<0.2質量%を有することを意味する。本発明によれば、残留含量がガスクロマトグラフィーによる検出限界未満である場合により特に有利である。
【0044】
同様に本発明の範囲において、“外部乳化剤不含”という記載を表す。
【0045】
前記の本発明により使用されるべき粒度は、バインダーが3〜56gKOH/g固体(0.05〜1.0ミリ当量/g固体のMEQ酸又はMEQアミン)に相応して、有利には28(MEQ酸又はMEQアミン:0.5)、特に17(MEQ酸又はMEQアミン:0.3)まで有する場合に付加的な外部乳化剤を使用せずに得られる。
【0046】
有利にはかかる基の低い含量を達成することが試みられる。それというのも慣例の架橋剤、例えば封鎖されたポリイソシアネートの使用において、この種の遊離基は被膜中に残留し、かつこれらは周囲物質及び化学物質に対する安定性を低下させることがあるからである。他方で、酸基含量は望ましい安定性を保証するためになおも十分に高くなくてはならない。
【0047】
イオン形成基は中和剤によって100%又は<100%までだけ部分中和される。中和剤の量は本発明によるスラリーのMEQ値が1ミリ当量/g固体未満、有利には0.5ミリ当量/g固体未満、特に0.3ミリ当量/g固体未満であるように選択される。本発明によれば、中和剤の量が0.05ミリ当量/g固体のMEQ値に少なくとも相当する場合に有利である。
【0048】
従ってバインダーの化学的性質は一般に、中和によって塩の基に変換可能であり、それにより粒子の水中でのイオン安定性を引き受けることができるイオン形成基が含まれている限りは限定はない。
【0049】
イオン形成基としては酸基、例えばカルボン酸基、スルホン酸基又はリン酸基が該当する。それによれば中和剤として塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、アンモニア又はアミンが使用される。アルカリ金属水酸化物は制限された量でのみ使用できる。それというのもアルカリ金属イオンは焼き付けにおいて揮発性でなく、かつその有機物質との非認容性によって被膜を混濁させかつ光沢の損失をもたらすからである。従ってアンモニア又はアミンが有利である。アミンの場合において、水溶性の第三級アミンが有利である。例えばN,N−ジメチルエタノールアミン又はアミノメチルプロパノールアミン(AMP)が挙げられる。
【0050】
カチオン形成基として、第一級、第二級又は第三級のアミンが該当する。それに応じて、中和剤として、特に低分子有機酸、例えばギ酸、酢酸又は乳酸が使用される。
【0051】
カチオン形成基を有するバインダーは電着塗料の分野から公知である。例えば特許出願EP0012463号A1又はEP0612818号A1又は特許文献US4071428号Aが指摘される。
【0052】
自動車用上塗りにおける本発明によるスラリーの未着色のクリヤーコートとしての有利な使用のために、イオン形成基として酸基を有するポリマー又はオリゴマーが有利である。それというのも前記のいわゆるアニオン性バインダーは一般に、カチオン性バインダーの種類よりも黄変に対してより良好な耐性を有するからである。
【0053】
カチオンに変換可能な基、例えばアミノ基を有するカチオン性バインダーも、使用分野がその典型的な副特性、例えばその黄変傾向を克服するのであれば原則的に同様に使用できる。
【0054】
アニオン形成基を有するバインダーとして、前記の酸基を有する任意の樹脂を使用してよい。しかしながら、これらはその他になおも架橋性を保証する更なる基を有することが重要である。本発明によればヒドロキシル基が有利である。
【0055】
本発明により使用されるべき前記の種類のオリゴマー及びポリマーとしては、ヒドロキシル基を有する、有利には直鎖状及び/又は分枝鎖状の及び/又はブロック状の、櫛状の及び/又はランダムに構成されたポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、アルキド、ポリウレタン、アクリル化ポリウレタン、アクリル化ポリエステル、ポリラクトン、ポリカーボネート、ポリエーテル、(メタ)アクリレートジオール又はポリ尿素が該当する。
【0056】
ヒドロキシル基の他に、該オリゴマー及びポリマーはなおも別の官能基、例えばアクリロイル基、エーテル基、アミド基、イミド基、チオ基、カーボネート基又はエポキシ基を、これらが架橋反応を妨げない限りは有してよい。
【0057】
前記のオリゴマー及びポリマーは当業者に公知であり、かつ多くの適当な化合物は市販されている。
【0058】
本発明によれば、ポリアクリレート、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリウレタン及び/又はアクリル化ポリウレタンが有利であり、かつ従って有利に使用される。
【0059】
適当なポリアクリレートの例は、欧州特許出願EP−A−0767185号及び米国特許文献US5480493号A、US5475073号A又はUS5534598号Aに記載されている。特に有利なポリアクリレートの更なる例は商標名Joncryl(R)、例えばJoncryl(R)SCX912及び922.5として市販されている。前記のポリアクリレートの製造は一般に公知であり、かつ例えば標準的な研究 Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第4版、第14/1巻、24頁〜255頁、1961に記載されている。
【0060】
本発明により有利に使用されるポリエステル及びアルキド樹脂の製造は一般に公知であり、かつ例えば標準的な研究 Ullmanns Encyklopaedie der technische Chemie、第3版、第14巻、Urban & schwarzenberg, Muenchen, Berlin, 1963、80頁〜89頁及び99頁〜105頁並びに書籍:J. Bourryの“Resines Alkydes-Polyesters”、Paris, Dunod出版,1952、C.R.Martensの“Alkyd Resins”,Reinhold出版社,New York, 1961並びにT.C.Pattonの“Alkyd Resin Technology”、Intersience出版,1962に記載されている。
【0061】
本発明により特に有利に使用されるべきポリウレタン及び/又はアクリル化ポリウレタンは例えば特許出願EP0708788号A1、DE4401544号A1又はDE19534361号A1に記載されている。
【0062】
本発明によるスラリーは非イオン性及びイオン性の増粘剤を含有する。これによって、比較的大きな固体の及び/又は高粘性の粒子の沈殿の傾向は効果的に回避される。
【0063】
非イオン性増粘剤の例は、ヒドロキシエチルセルロース及びポリビニルアルコールである。いわゆる非イオン性会合増粘剤は、多様な選択において同様に市場で使用可能である。これらは一般に、水希釈可能なポリウレタン、水溶性ポリエーテルジオール、脂肪族ジイソシアネート及び一官能性のヒドロキシル化合物と親有機性基との反応生成物である水希釈可能なポリウレタンからなる。
【0064】
同様にイオン性増粘剤も市販されている。これらの増粘剤は通常アニオン性基を有し、かつ特に部分的又は完全に中和されていてよい酸基を有する特定のポリアクリレート樹脂をベースとする。
【0065】
適当な本発明により使用されるべき増粘剤の例は、Johan Bielemannにより教科書“Lackadditive”、Wiley-VCH, Weinheim, New Yrok, 1998,31頁〜65頁から公知である。
【0066】
本発明によるスラリーのために、前記の増粘剤型の両者が含まれていることが重要である。添加されるべき増粘剤の量及びイオン性と非イオン性の増粘剤との比は本発明によるスラリーの所望の粘度に依存し、これらは必要な沈殿安定性及び噴霧適用の特定の要求から予め規定される。従って当業者は増粘剤の量及び増粘剤型の互いの比は簡単な考察をもとに場合により予備試験を利用して規定できる。
【0067】
有利には1000s- 1の剪断速度において50〜1000mPas、10s- 1の剪断速度において150〜8000mPas及び1s- 1の剪断速度において180〜12000mPasの粘度範囲に調整する。
【0068】
この“構造粘性”として公知の粘度挙動は、一方で噴霧適用の要求かつ他方では貯蔵安定性及び沈殿安定性に関する要求を考慮した状態を記載している:
運動状態、例えば塗装装置の環状回路における本発明によるスラリーのポンピング及び噴霧において、本発明によるスラリーは良好な加工性を保証する低粘性状態をとる。それに対して剪断要求がないと粘性は増大し、かつ既に塗装されるべき基体上に存在する塗料が垂直面で低減された流れ傾向を示す(“流れ形成(Laeuferbildung)”)ことが保証される。同様に非運動状態におけるより高い粘性は、例えば貯蔵時に固体の及び/又は高粘性の粒子の沈殿を非常に大部分で妨げるか、又は貯蔵の間に僅かにのみ沈殿する本発明による粉末スラリーの再撹拌を保証することをもたらす。
【0069】
本発明によるスラリーの粒子は前記の主成分の他に、クリヤーコート中に通常使用される添加剤を含有してよい。この場合、これらの添加剤がバインダーのガラス転移温度Tgを主に低下させないことが重要である。
【0070】
適当な添加剤の例は、ポリマー、架橋のための触媒、脱蔵剤、消泡剤、付着促進剤、基体湿潤の改善のための添加剤、表面光沢の改善のための添加剤、艶消し剤、光安定剤、腐食防止剤、殺生剤、難燃剤又は重合抑制剤、特にJohan Bielemannの書籍“Lackadditive”,Wiley-VCH,Weinheim, New York, 1998に記載されるような光阻害剤(Photoinhibitor)である。
【0071】
本発明によるスラリーに被膜中に架橋導入可能な均展助剤、反応性希釈剤又は架橋性成分を添加してよい。しかしながらこれらの成分は有利には本発明によるスラリーの外側の水相中に見られ、分散有機相中に見られないことが重要であり、これらはガラス転移温度Tgの低下をもたらし、それによって場合により沈殿される粒子の凝集又は凝結をもたらす。
【0072】
前記の種類の適当な化合物の例はポリオールである。適当なポリオールの例は、位置異性のジエチルオクタンジオール又はヒドロキシル基を有するハイパーブランチ型の化合物又はデンドリマー又はヒドロキシル基を有する複分解オリゴマーであり、例えばこれらは特許文献DE19809643号A1、DE19840605号A1又はDE19805421号A1に記載される。
【0073】
本発明によれば、本発明によるスラリーを以下に記載される方法によって製造することが有利である。
【0074】
有利な方法においては、イオン的に安定化可能なバインダー及び架橋剤並びに場合により添加剤を有機溶剤中に混合し、かつ中和剤の使用と一緒に水中に二次分散法により分散させる。更に水によって撹拌下に希釈する。まず油中水エマルジョンが形成し、それを更なる希釈により水中油エマルジョンに変える。この点は一般にエマルジョンに対して<50質量%の固体含量で達成され、かつ見た目には希釈の間に粘性の激しい低下で確認できる。
【0075】
こうして得られるなおも溶剤を含有するエマルジョンを引き続き共沸蒸留によって溶剤を除去する(ストリッピング)。
【0076】
蒸留温度はまず第一にバインダーのガラス転移温度Tgに依存する。凝塊、すなわち本発明により僅かに安定化されたにすぎない粒子の凝集が蒸留の間に別個の連続的な有機相を形成することを回避するために、蒸留温度はガラス転移温度Tg未満に保持することが重要である。ガラス転移温度は代わりに分散液の最低被膜形成温度とも記載できる。最低被膜形成温度は、分散液をドクターブレードを用いてガラス板上に施与し、勾配炉で加温することによって導き出すことができる。粉末状の層が被膜形成する温度を最低被膜形成温度と呼ぶ。補足的に、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme出版,Stuttgart, New York, 1998>>最低被膜形成温度<<、391頁に指摘される。
【0077】
バインダーの最低被膜形成温度が少なくとも0℃、有利には少なくとも10℃、特に有利には少なくとも15℃、より特に有利には少なくとも20℃、特に少なくとも25℃である場合に有利である。
【0078】
更に、蒸留されるべき溶剤を70℃未満、有利には50℃未満、特に40℃未満の蒸留温度で留去することが有利である。場合により、蒸留圧はこの場合、高沸点溶剤で前記の温度範囲が維持されるように選択される。
【0079】
最も単純な場合において、共沸蒸留を、エマルジョンを室温に置いて開放された容器において数日間撹拌することによって行ってよい。有利な場合において溶剤を含有するエマルジョンを真空蒸留において溶剤を除去する。
【0080】
蒸気又は留去された量の水及び溶剤を高粘度を回避するために水で置き換える。水の添加は蒸気除去又は蒸留の前、後又はその間に分けて添加を行ってよい。
【0081】
溶剤の損失により、分散される粒子のガラス転移温度Tgが増大し、かつ従来の溶剤含有エマルジョン(液中液分散液)の代わりに液中固分散液又は本発明によるスラリーが形成する。
【0082】
本発明によるスラリーの粒子は湿式状態においてなおも機械的に粉砕でき、これは湿式磨砕と呼ばれる。有利にはこの場合に粉砕物の温度が70℃、有利には60℃、特に50℃を超過しない条件が使用される。有利にはその粉砕プロセスの間の特異的なエネルギー入力は10〜1000、有利には15〜750、特に20〜500Wh/gである。
【0083】
湿式磨砕のために、高い又は低い剪断場を生じる非常に多様な装置を使用してよい。
【0084】
低い剪断場を生じる適当な装置の例は慣用かつ公知の撹拌釜、スリット型均質機、マイクロ流動化装置又は溶解機である。
【0085】
高い剪断場を生じる適当な装置の例は慣用かつ公知の撹拌ミル又はインライン溶解機である。
【0086】
特に有利には、高い剪断場を生じる装置が使用される。それらの中でも、撹拌ミルが本発明により有利であり、かつ従ってより特に有利に使用される。
【0087】
一般に湿式磨砕においてスラリーを、所望の粒度に達成し、かつ本発明によるスラリーが得られるまで適当な装置、例えばポンプ、前記の装置によって供給し、かつそこに循環させる。
【0088】
エネルギー的な理由から、粉砕されるべきスラリーは一部だけの、有利には5〜90、有利には10〜80、特に20〜70質量%の、本発明によるスラリー中に含まれる前記の増粘剤を含有する場合に特に有利である。有利な方法の前記の変法を使用する場合には残りの増粘剤の量を湿式磨砕の後に添加し、それによって本発明によるスラリーが得られる。
【0089】
本発明によるスラリーは有利には10〜60質量%、特に20〜50質量%の固体含量を有する。
【0090】
本発明によるスラリーは更にその使用の前に濾過してよい。このために、慣用かつ公知の濾過装置及びフィルタが使用され、例えばこれらは公知の粉末クリヤーコートスラリーの濾過のためにも考慮される。フィルタのメッシュ幅は広範に変化してよく、かつ第一に本発明によるスラリーの粒子の粒度及び粒度分布に依存することがある。従って当業者は適当なフィルタをその物理的パラメータを元に容易に規定することができる。適当なフィルタの例はバッグフィルタである。これらは商標名Pong(R)又はCuno(R)として市販されている。有利にはメッシュ幅10〜50μmを有するバッグフィルタ、例えばPong(R)10乃至Pong(R)50が使用される。
【0091】
この場合、すなわち湿式磨砕に際して、含まれる粒子の最低被膜形成温度を超過する場合でさえも問題なく濾過できるという本発明によるスラリーの特定の利点が明らかになる。
【0092】
本発明によるクリヤーコートの製造のために、本発明によるスラリーを被覆されるべき基体状に適用する。この場合、特定の措置をとる必要はないが、適用は慣用かつ公知の方法によって行ってよく、これは更に本発明によるスラリーの特定の利点である。
【0093】
その適用の後に、本発明によるスラリーは問題なく乾燥し、かつ作業温度、一般に室温において被膜形成を示さない。すなわち湿式層として適用された本発明によるスラリーは室温又は軽く高められた温度において、そこに含まれる粒子はその本来の固体又は高粘性の形を変えずに水を放出してフラッシュオフされる。粉末状の固体被膜は残留水を流動性の湿式被膜より容易に蒸発することが可能である。それによって、硬化された被膜中に閉じこめられる蒸発した水の気泡(“ワキ”)のリスクが回避される。意想外にもこの場合、本発明によるスラリーは“マッドクラッキング”のより低い傾向を有すると、より一層その粒度が大きくなる。
【0094】
後続の焼き付け工程において、十分に水不含の粉末層は溶融し、かつ架橋する。多くの場合において、時間的偏りを有する均展プロセス及び架橋反応を、段階加熱プログラム又はいわゆる加熱傾斜(Aufheizrampe)を行うことによって実施することが有利な場合がある。適当な架橋温度は120〜160℃である。相応の焼き付け時間は20〜60分である。
【0095】
この場合に得られる本発明によるクリヤーコートは優れた応用技術的特性を有する。このように本発明によるクリヤーコートは全ての慣用かつ公知の色付与及び/又は効果付与するベースコート塗装上又は基体、例えば金属、ガラス、木材又はプラスチック上に固着する。該塗装は高い光沢を有し、平坦であり、耐引掻性、耐候性であり、損傷、例えばワキを含まない。更に該塗装はその有利な特性プロフィールに基づいて自動車と層の他の使用、特にコイルコーティング、コンテナコーティング及び電子工学的部材の被覆又は含浸を含む工業的塗装並びに家具、窓、ドア及び建築物の内部及び外部の領域における塗装のためにも考慮される。しかしながらとりわけ本発明によるクリヤーコートは湿気負荷によりもはや白化を示さない。従って少なくとも1つの本発明によるクリヤーコートを有する本発明による色付与及び/又は効果付与する多層塗装は特に高い実用価値及び特に長い寿命を有する。
【0096】
実施例
製造例1
バインダーとしての溶液ポリアクリレート樹脂の製造
442.84部のメチルエチルケトン(MEK)を反応容器に装入し、かつ80℃に加熱した。装入物に80℃で4時間以内に2つの別個の供給容器を介して、47.6部のTBPEH(t−ブチルペルエチルヘキサノエート)及び33.5部のMEKからなる開始剤並びに183.26部のt−ブチルアクリレート、71.4部のn−ブチルメタクリレート、95.2部のシクロヘキシルメタクリレート、121.38部のヒドロキシエチルメタクリレート及び4.76部のアクリル酸からなるモノマー混合物を供給した。該反応混合物を更に1.5時間80℃でなおも保持した。引き続き真空中で500ミリバールにおいて反応混合物の一部の揮発性成分を5時間の間に、固体含量が70質量%になるまで除去した。次いで50℃に加熱し、かつ樹脂溶液を排出した。
【0097】
樹脂溶液は以下の特徴を示した:
固体:70.2%(130℃で1時間)
粘度:4.8dPas(コーンプレート粘度計、23℃;キシレンで希釈した55%の溶液)
酸価:43.4mgKOH/g固体樹脂
製造例2
架橋剤としての封鎖されたポリイソシアネート(A)の製造
534部のDesmodur(R)N3300(バイエルAG社の商用のヘキサメチレンジイソシアネートの三量体)及び200部のMEKを装入し、かつ40℃に加熱した。引き続き冷却下に100部の3,5−ジメチルピラゾールを添加し、次いで発熱反応が生じた。発熱が弱まった後に、更に100部の3,5−ジメチルピラゾールを添加した。再び発熱が弱まった後に、66部の3,5−ジメチルピラゾールをなおも添加した。引き続き冷却を次第に停止させ、それに対して反応混合物を緩慢に80℃に加熱した。該反応混合物を前記の温度で、そのイソシアネート含量が<0.1%に低下するまで保持した。引き続き反応生成物を冷却し、かつ排出した。封鎖されたポリイソシアネート(A)は80質量%(130℃で1時間)の固体含量及び3.4dPas(MEK中70%;コーンプレート粘度計、23℃)の粘度を示した。
【0098】
製造例3
架橋剤としての封鎖されたポリイソシアネート(B)の製造
837部のイソホロンジイソシアネートを適当な反応容器中に装入し、かつ0.1部のジブチルスズジラウレートを添加した。次いで、168部のトリメチロールプロパン及び431部のMEKからなる溶液を緩慢に供給した。発熱反応によって温度が上昇した。80℃に到達した後に、温度を外部の冷却によって一定に保持し、かつ供給路を場合により軽く閉じた。供給が終わった後に、なおも前記の温度で約1時間、固体のイソシアネート含量が15.7%(NCO基に対する)に到達するまで保持した。引き続き該反応混合物を40℃に冷却し、かつ155部のMEK中の362部の3,5−ジメチルピラゾールの溶液を30分以内で添加した。反応混合物を発熱によって80℃に加熱した後に、該温度を30分間、NCO含量が0.1%より低く低下するまで一定に保持した。次いで47部のn−ブタノールを該反応混合物に添加し、更に30分間80℃で保持し、かつ短時間の冷却の後に排出した。
【0099】
該反応生成物は69.3%(130℃で1時間)の固体含量を示した。
【0100】
例1
本発明による粉末クリヤーコートスラリーの製造
321.4部の製造例1によるバインダー溶液、57.9部の製造例3による架橋剤溶液(B)及び120.7部の製造例2による架橋剤(A)を室温で開放された撹拌容器中で撹拌下に15分間混合した。次いで7.2部のCyagard(R)1164(Cytec社のUV吸収剤)、2.2部のTinuvin(R)フリューシッヒ 123(Tinuvin (R) fluessig 123)(立体障害アミン“HALS”Ciba Geigy社)、3部のN,N−ジメチルエタノールアミン、1.8部のベンゾイン及び0.6部のジブチルスズジラウレートを添加し、かつ室温で更に2時間撹拌した。次いで該混合物を225.7部の脱イオン水で少量に分けながら希釈した。15分間の間隔の後に、更に260部の脱イオン水を添加した。理論的固体含量37%を有するエマルジョンが形成された。
【0101】
該エマルジョンを283部の脱イオン水で希釈し、かつ真空下に回転蒸発器上で揮発性有機溶剤及び水からなる同量の混合物を、固体含量が再び37質量%になるまで除去し(130℃で1時間)、それによってスラリーが得られた。
【0102】
所望の粘度挙動の調整のために、1000部のスラリーに22.6部のAcrysol(R)RM−8W(Rohm & Haas社の商用の増粘剤)及び6.5部のViscalex(R)HV30(Allied Colloids社の商用の増粘剤)を添加した。得られた粉末クリヤーコートスラリーは以下の特徴を示した:
固体(130℃で1時間):36.6%
粒度:6.4μm(D.50;Malvern社のレーザ回折測定装置)
粘度挙動:10s- 1の剪断速度で1920mPas
100s- 1の剪断速度で760mPas
1000s- 1の剪断速度で230mPas
比較試験V1
本発明によるものでない粉末クリヤーコートスラリーの製造
301.6部の製造例1によるバインダー溶液及び217.4部の製造例3による架橋剤溶液(B)を例1に記載のように互いに混合した。次いで7.2部のCyagard(R)1146(Cytgec社のUV吸収剤)、2.2部のTinuvin(R)123、2.8部のN,N−ジメチルエタノールアミン、1.8部のベンゾイン及び0.6部のジブチルスズジラウレートを添加した。2時間の撹拌後に、207部の脱イオン水を少量に分けて添加し、かつ得られた混合物を15分後に更に260部の脱イオン水で希釈した。理論的固体含量37%を有するエマルジョンが得られた。
【0103】
該エマルジョンを320.6部の脱イオン水で更に希釈し、かつ真空下に回転蒸発器上で揮発性有機溶剤及び水からなる同様の混合物を、固体含量が再び37質量%に到達するまで除去した(130℃で1時間)。
【0104】
適当な粘度挙動を調整するために、1000部のスラリーに22.6部のAcrysol(R)RM−8W(Rohm & Haas社の商用の増粘剤)及び6.5部のViscalex(R)HV30(Allied Colloids社の商用の増粘剤)を添加した。
【0105】
得られた粉末クリヤーコートスラリーは以下の特徴を示した:
固体(130℃で1時間):36.4%
粒度:7.2μm(D.50;Malvern社のレーザ回折測定装置)
粘度挙動:10s- 1の剪断速度で1405mPas
100s- 1の剪断速度で690mPas
1000s- 1の剪断速度で265mPas
例2及び比較試験V2
本発明によるクリヤーコート(例2)及び本発明によるものでないクリヤーコート(比較試験V2)の製造
例1の本発明による粉末クリヤーコートスラリー及び比較試験V1の適用のための第1の試験組において、以下にメタリック色調“メテオルグレー(Meteorgrau)”について記載されるいわゆる統合系を製造した。
【0106】
商慣習上の電着によってカソード的に被覆される鋼製パネル上にカップガンを用いてまず機能層(Ecoprime(R)Meteorgrau;BASFコーティングAG社)を適用した。5分間の室温でのフラッシュオフの後に、該層上に同様にしてメテオルグレーの水性メタリックベースコート(Ecostar(R)Meteorgrau;BASFコーティングAG社)を適用し、引き続き80℃で5分間、予備乾燥させる。
【0107】
該パネルの冷却の後に、同様に本発明による例1の粉末クリヤーコートスラリー及び比較試験V1の粉末クリヤーコートスラリーを適用した。次いで該パネルをまず5分間フラッシュオフし、かつ引き続き40℃で15分間、予備乾燥させた。次いでこれらのパネルを145℃で30分間焼き付けた。
【0108】
本発明による水性メタリック−全塗装(例2)及び本発明によるものでない水性メタリック−全塗装(比較試験V2)が色調“メテオルグレー”で得られた。適用された湿式層は、焼き付け後に機能層及び水性メタリックベースコートに関してそれぞれ15μmの乾燥層厚になるように選択される。本発明によるクリヤーコート(例2)及び本発明によるものでないクリヤーコート(比較試験V2)はそれぞれ40〜45μmの層厚を有していた。該表はクリヤーコートの重要な応用技術的特性に関する展望を与える。
【0109】
第1の試験組を繰り返すが、第2の試験組において例1の粉末クリヤーコートスラリー及び比較試験V1の粉末クリヤーコートスラリーをウェッジの形で施与するので、20〜100μmのクリヤーコートの乾燥層厚が得られた。該表はワキ安定性の限界に関する情報を与えた。
【0110】
該表中に挙げられる試験結果は、比較試験V2のクリヤーコートは熱水試験において白化する傾向があるにもかかわらず高いワキ安定性を有することを報告している。それに対して例2のクリヤーコートは高い光沢、高い輝き及び匹敵するワキ安定性を有するが、熱水試験において該クリヤーコートは白化する傾向がない。
【0111】
表:
本発明によるクリヤーコート(例2)及び本発明によるものでないクリヤーコート(比較試験V2)の応用技術的特性
1)測定装置 製造元Byk社;
2)90℃の熱水中でのパネルの貯蔵の後;評価のために、1cm幅の粘着テープで縁部を保護した;試験終了後の除去の後に保護されていない表面への損傷がよりよく観察できた。
Claims (18)
- 固体及び/又は高粘性の、貯蔵条件及び使用条件下に寸法安定な平均粒度0.8〜20μm及び最大粒度30μmの粒子を含有し、その際、該粒子は少なくとも1つのバインダー及び少なくとも1つの架橋剤を含有する構造粘性の、有機溶剤及び外部乳化剤不含の粉末クリヤーコートスラリーにおいて、前記架橋剤が、
(A)ソフトセグメントをクリヤーコートの三次元網状構造に導入する少なくとも1つの架橋剤、かつ
(B)ハードセグメントをクリヤーコートの三次元網状構造に導入する少なくとも1つの架橋剤、又は選択的に
(A/B)ソフトセグメントとハードセグメントの両方をクリヤーコートの三次元網状構造に導入する少なくとも1つの架橋剤
を含有し、ソフトセグメントが、三次元網状構造の成分としてそのガラス転移温度T g を低下させる分子構成成分であり、かつハードセグメントが、三次元網状構造の成分としてそのガラス転移温度T g を高める分子構成成分であることを特徴とする、構造粘性の粉末クリヤーコートスラリー。 - 分子構成成分が二価の有機基である、請求項1記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- ソフトの二価の有機基が置換又は非置換の直鎖状又は分枝鎖状の4〜20個の炭素原子を有するアルカンジイル基である、請求項2記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- ハードの二価の有機基が置換又は非置換の4〜20個の炭素原子を有するシクロアルカンジイル基である、請求項2記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- 架橋剤(A)、(B)及び/又は(A/B)として封鎖されたポリイソシアネートを使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- 封鎖されたポリイソシアネート(A)として、イソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、カルボジイミド基、尿素基及び/又はウレットジオン基を有するヘキサメチレンジイソシアネートのオリゴマーを使用する、請求項5記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- 封鎖されたポリイソシアネート(B)として、イソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレタン基、カルボジイミド基、尿素基及び/又はウレットジオン基を有するイソホロンジイソシアネートのオリゴマーを使用する、請求項5記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- 封鎖剤として、
i)フェノール、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、t−ブチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、これらの酸のエステル又は2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;
ii)ラクタム、例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム又はβ−プロピオラクタム;
iii)活性メチレン化合物、例えばジエチルマロネート、ジメチルマロネート、アセト酢酸エチルエステル又はアセト酢酸メチルエステル又はアセチルアセトン;
iv)アルコール類、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、t−アミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、グリコール酸、グリコール酸エステル、乳酸、乳酸エステル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、エチレンクロロヒドリン、エチレンブロムヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−シクロヘキシルジメタノール又はアセトシアンヒドリン;
v)メルカプタン、例えばブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール又はエチルチオフェノール;
vi)酸アミド、例えばアセトアニリド、アセトアニシジンアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド又はベンズアミド;
vii)イミド、例えばスクシンイミド、フタルイミド又はマレイミド;
viii)アミン、例えばジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン又はブチルフェニルアミン;
ix)イミダゾール、例えばイミダゾール又は2−エチルイミダゾール;
x)尿素、例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素又は1,3−ジフェニル尿素;
xi)カルバメート、例えばN−フェニルカルバミド酸フェニルエステル又は2−オキサゾリドン;
xii)イミン、例えばエチレンイミン;
xiii)オキシム、例えばアセトンオキシム、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジイソブチルケトキシム、ジアセチルモノキシム、ベンゾフェノンオキシム又はクロロヘキサノンオキシム;
xiv)亜硫酸の塩、例えば重亜硫酸ナトリウム又は重亜硫酸カリウム;
xv)ヒドロキサム酸エステル、例えばベンジルメタクリロヒドロキサメート(BMH)又はアリルメタクリロヒドロキサメート;又は
xvi)置換されたピラゾール又はトリアゾール;並びに
xvii)前記の封鎖剤の混合物
を使用する、請求項5から7までのいずれか1項記載の粉末クリヤーコートスラリー。 - 置換されたピラゾール(xvi)として3,4−ジメチルピラゾール及び/又は3,5−ジメチルピラゾールを使用し、かつ混合物(xvii)として3,4−ジメチルピラゾール及び/又は3,5−ジメチルピラゾール及びトリメチロールプロパンを使用する、請求項8記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- 10〜60質量%の固体含有率を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- 固体の粒子の平均粒度が3〜15μmである、請求項1から10までのいずれか1項記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- イオン性増粘剤及び非イオン性会合増粘剤を含有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- 固体の粒子がバインダーとしてポリオールを含有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- バインダーとしてポリアクリレートを含有する、請求項13記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- 0.05〜1ミリ当量/gのイオン形成基の含量、0.05〜1ミリ当量/gの中和剤の含量及び1000s-1の剪断速度において(i)50〜1000mPasの粘度、10s-1の剪断速度において(ii)150〜8000mPasの粘度及び1s-1の剪断速度において(iii)180〜12000mPasの粘度を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- 20℃より高い最低皮膜形成温度を有する、請求項1から15までのいずれか1項記載の粉末クリヤーコートスラリー。
- 自動車第一塗装及び自動車補修塗装、家具、窓、ドア及び建築物の内部及び外部の塗装並びにコイルコーティング、コンテナコーティング及び電子工学的な部材の被覆又は含浸を含む工業的塗装のためのクリヤーコートの製造のための、請求項1から16までのいずれか1項記載の粉末クリヤーコートスラリーの使用。
- 請求項1から16までのいずれか1項記載の粉末クリヤーコートスラリーを使用して製造できる、クリヤーコート及び多層の色付与及び/又は効果付与する塗装。
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