JP4990789B2 - Gpr40とホスホリパーゼとを用いる疾患に有用な物質のスクリーニング方法 - Google Patents
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Description
本発明は、Gタンパク質共役型受容体タンパク質であるGPR40と、ホスホリパーゼまたはその塩との細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングする方法、およびそのようなスクリーニングを実施するためのスクリーニング用キットに関する。
多くのホルモンや神経伝達物質などの生理活性物質は、細胞膜に存在する特異的なレセプター蛋白質を介して、生体の機能を調節している。これらのレセプターの多くは、細胞膜を7回貫通する構造を有しており、細胞内で三量体のGタンパク質 (guanine nucleotide-binding protein) と共役していることから、Gタンパク質共役型受容体 (GPCR: G-protein coupled receptor) と呼ばれている。
本発明のスクリーニング方法には、ホスホリパーゼを使用する。ホスホリパーゼとしては、ホスホリパーゼA1、A2、B、CおよびDが挙げられるが、本発明においては、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2が好ましく、ホスホリパーゼA2がより好ましい。ホスホリパーゼA2は、性質により、分泌型(sPLA2)、細胞質型(cPLA2)、およびカルシウム非依存型(iPLA2)に分類できる。ヘビ毒やハチ毒に含まれるPLA2は分泌型PLA2に分類される。本発明においては、分泌型が好ましい。また、ハチ毒およびヘビ毒など毒素のホスホリパーゼA2を用いることもできる。本発明によれば、ホスホリパーゼは、分泌型のホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、および、ヘビ毒ホスホリパーゼA2がより好ましいものとして挙げられる。
(A) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号7〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列)を含む、ポリペプチド;
(B) 前記(A)のアミノ酸配列において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;
(C) 前記(A)のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(D) 前記(A)のアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;および、
(E) 前記(A)のアミノ酸配列をコードする塩基配列に対して80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上)の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
なお前記「ジスルフィド結合をしたもの」とは、ホスホリパーゼの分子内において、特定箇所アミノ酸(例えば、システイン等)と、別の特定箇所のアミノ酸(例えば、システイン等)とが−S−S−結合により架橋されている状態をいう。
これら本発明に使用するホスホリパーゼ(すなわち、ホスホリパーゼ、その改変ポリペプチド、その相同ポリペプチド)およびその部分ポリペプチドは、種々の公知の方法、例えば遺伝子工学的手法、合成法などによって得ることができる。具体的には、遺伝子工学的手法の場合、ホスホリパーゼまたはその部分ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することによって調製することができる。前記の分離および精製方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。また、合成法の場合は、液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。化学修飾物の合成は常法により行なうことができる。また、適当なタンパク質分解酵素で切断することによって所望の部分ポリペプチドを調製することができる。
本発明に使用するホスホリパーゼ(すなわち、ホスホリパーゼ、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、前記ホスホリパーゼ、前記改変ポリペプチド、前記相同ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。
なお、本明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明に使用するホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドは、具体的には下記の(I)〜(VI)からなる群より選択されるものが挙げられる:
(I) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号13〜18で表されるいずれかの塩基配列)からなる、ポリヌクレオチド;
(II) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号7〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列)からなるポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(III) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号7〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列)を含み、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(IV) 「前述のアクセッション番号により特定されるいずれかのアミノ酸配列(好ましくは、配列番号7〜12で表されるいずれかのアミノ酸配列)の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(V) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号13〜18で表されるいずれかの塩基配列)からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、ホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;および
(VI) 前述のアクセッション番号により特定されるいずれかの塩基配列(好ましくは、配列番号13〜18で表されるいずれかの塩基配列)に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、しかも、前記のホスホリパーゼと実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
トリンジェントな条件としては68℃とすることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、ホスホリパーゼのアイソフォーム、アレリック変異体、及び対応する他種生物由来の遺伝子を得るための条件を設定することができる。
プラスミドに本発明の遺伝子のDNA断片を組み込む方法としては、例えば、「Sambrook, J.ら,モレキュラークローニング,ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning,A Laboratory Manual, second edition)、Cold Spring Harbor Laboratory, 1.53(1989)」に記載の方法などが挙げられる。簡便には、市販のライゲーションキット(例えば、宝酒造製等)を用いることもできる。このようにして得られる組換えプラスミドは、宿主細胞(例えば、E.coli TB1,LE392またはXL-1Bluc等)に導入する。形質転換に使用するプラスミドは、上記のようなホスホリパーゼをコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知のベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。例えば、ホスホリパーゼ単独でもよいし、ホスホリパーゼとタグとなるようなタンパク質(例えば、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP))との融合タンパク質を発現ベクターに組み込んでもよい。
形質転換体は、所望の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより調製することができる。用いられる宿主細胞としては、本発明の発現ベクターに適合し、形質転換されうるものであれば特に制限はなく、本発明の技術分野において通常使用される天然細胞、または人工的に樹立された組換細胞など種々の細胞を用いることが可能である。例えば、細菌(エシェリキア属菌、バチルス属菌)、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属など)、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などが挙げられる。
本発明のスクリーニング方法に使用するGPR40は、ホスホリパーゼ(例えば、sPLA2)による活性化作用を有し、GPR40発現細胞の細胞刺激活性(例えば、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化の検出するレポーターアッセイ系により測定するか、細胞内のカルシウムイオンの遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変化、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c−fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性、インスリン分泌活性、細胞増殖活性など)を有するものであれば、その起源は特に限定されず、例えばGPR40を発現する臓器、組織、細胞などの天然由来のもの、公知の遺伝子工学的手法、合成法などにより人為的に調製したものも包含される。また、GPR40の部分ポリペプチドとして後述のスクリーニング方法に使用可能であれば特に限定されず、例えばホスホリパーゼによる細胞刺激活性化作用を有する部分ポリペプチド、細胞膜外領域に相当するアミノ酸配列を含む部分ポリペプチドなども使用することもできる。
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド;
(b) 配列番号2のアミノ酸配列において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;
(c) 配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(d) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド;および、
(e) 配列番号1で表される塩基配列に対して80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上)の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。
これら本発明に使用するGPR40(すなわち、GPR40、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)およびその部分ポリペプチドは、種々の公知の方法、例えば遺伝子工学的手法、合成法などによって得ることができる。具体的には、遺伝子工学的手法の場合、GPR40またはその部分ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを適当な宿主細胞に導入し、得られた形質転換体から発現可能な条件下で培養し、発現タンパク質の分離および精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から所望のポリペプチドを分離および精製することによって調製することができる。前記の分離および精製方法としては、例えば硫安塩析、イオン交換セルロースを用いるイオン交換カラムクロマトグラフィー、分子篩ゲルを用いる分子篩カラムクロマトグラフィー、プロテインA結合多糖類を用いる親和性カラムクロマトグラフィー、透析、または凍結乾燥などを挙げることができる。また、合成法の場合は、液相法、固相法など常法に従い合成することが可能であり、通常、自動合成機を利用することができる。化学修飾物の合成は常法により行なうことができる。また、適当なタンパク質分解酵素で切断することによって所望の部分ポリペプチドを調製することができる。
本発明に使用するGPR40(すなわち、GPR40、改変ポリペプチド、相同ポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、前記GPR40、前記改変ポリペプチド、前記相同ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである限り、特に限定されるものではない。
なお、本明細書における用語「ポリヌクレオチド」には、DNAおよびRNAの両方が含まれる。本発明に使用するGPR40をコードするポリヌクレオチドは、具体的には下記の(i)〜(vi)からなる群より選択されるものが挙げられる:
(i) 配列番号1で表される塩基配列からなる、ポリヌクレオチド;
(ii) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(iii) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、しかも、前記のGPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(iv) 「配列番号2で表されるアミノ酸配列の1または複数個(好ましくは1または数個)の箇所において、1または複数個(好ましくは1または数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、しかも、GPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチド」をコードする、ポリヌクレオチド;
(v) 配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、しかも、GPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;および
(vi) 配列番号1で表される塩基配列に対して80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、しかも、前記のGPR40と実質的に同じ活性を有するポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
「欠失」には、アミノ酸配列の端からアミノ酸残基を欠失したものおよびアミノ酸は配列の途中のアミノ酸残基が欠失したものも含まれる。
1つのアミノ酸をコードするコドンは複数存在する。従って、配列番号2、配列番号4、または配列番号6で示されるアミノ酸配列またはその活性部分をコードするいずれのDNAも本発明の範囲に含まれる。
前記形質転換に使用されるプラスミドは、上記のようなGPR40をコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、用いる宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターに、当該ポリヌクレオチドを挿入することにより得られるプラスミドを挙げることができる。
また、前記形質転換体も、上記のようなGPR40をコードするポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば当該ポリヌクレオチドが宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、当該ポリヌクレオチドを含むプラスミドの形で含有する形質転換体であることもできるし、あるいは、GPR40を発現していない形質転換体であることもできる。当該形質転換体は、例えば前記プラスミドにより、あるいは、前記ポリヌクレオチドそれ自体により、所望の宿主細胞を形質転換することにより得ることができる。
また、GPR40を含有する本発明に使用する細胞膜断片は、例えば前記のGPR40を発現する細胞を破砕した後、細胞膜が多く含まれる画分を分離することにより得ることができる。細胞の破砕方法としては、例えばホモジナイザー(例えばPotter−Elvehiem型ホモジナイザー)で細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーまたはポリトロン(Kinematica社)による破砕、超音波による破砕、あるいは、フレンチプレスなどで加圧しながら細いノズルから細胞を噴出させることによる破砕などを挙げることができる。また、細胞膜の分画方法としては、例えば遠心力による分画法、例えば分画遠心分離法または密度勾配遠心分離法を挙げることができる。
前記したように、本発明によれば、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを用いることを特徴とする、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質のスクリーニング方法が提供される。この方法は、被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを接触させ、次いで、細胞刺激活性を測定して、被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とにおける測定結果を比較することを含んでなる。
前記CREをプロモーター領域に有するレポーター遺伝子を導入されている細胞においては、例えば、細胞内のcAMPの濃度上昇や細胞内Ca2+濃度の上昇により、レポーター遺伝子の発現量が増加する。また、アデニル酸シクラーゼの活性化剤(例えばフォルスコリンなど)で細胞の基礎的なcAMP量を増大させておいて活性を測定することもできる。レポーター遺伝子産物の発現量は、細胞培養上清や細胞抽出物に含まれるレポーター遺伝子産物と反応した基質から生成した発光物質の量に由来する発光を測定する方法、もしくはレポーター遺伝子として産生された蛍光タンパク質由来の蛍光を測定する方法などにより容易に測定することが可能である。
本発明によるスクリーニング用キットは、GPR40を含む生体膜、またはそれを含む細胞と、ホスホリパーゼまたはその塩とを少なくとも含んでなる。好ましくは、このキットは、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするためのものである。前記スクリーニング用キットは、所望により、本発明によるスクリーニング方法を実施するための種々の試薬、例えば結合反応用緩衝液、洗浄用緩衝液、説明書、および/または器具などをさらに含むことができる。
GPR40は、膵臓のβ細胞での高い発現が報告されており、マウス膵臓β細胞由来細胞株MIN6や、すい臓の初代培養細胞のからのインスリン分泌促進作用との関連が報告されている(国際公開WO2003/068959号パンフレット, Ito Y et al., Nature, 422 (6928):173-6, 2003)。インスリンは、血糖値の調節や、トリグリセリドの貯蔵、血中脂肪酸の調節などの作用を有する。また、GPR40は、乳がんの増殖に関与していることが報告されている(Hardy S et al., The Journal of Biological Chemistry, 280(14):13285-91, 2005)。さらに、GPR40の発現を低下させたマウスにおいては、肥満によって引き起される高インスリン血症や、脂肪肝、高グリセリド血症などが緩和することが報告されている(Steneberg P et al., Cell Metabolism, 1(4):245-58, 2005)。これらのことから、GPR40が、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病)、II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病)、糖尿病性の合併症や変性疾患(例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)、高血糖、多尿、ケトン血症、アシドーシス、インスリン抵抗性、耐糖能障害、神経変性疾患、インスリノーマ、癌、高インスリン血症、高グリセリド血症、脂肪肝、インスリン過剰分泌による低血糖、動脈硬化、高脂血症、脳卒中、肥満、糖尿病や肥満によって引き起こされる各種疾患などと関連していることが予想される。
(1A)疾病または症状の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない患者において、疾病または症状が起こることを予防すること;
(1B)疾病症状を阻害する、即ち、その進行を阻止または遅延すること;
(1C)疾病症状を緩和すること、即ち、疾病または症状の後退、または症状の進行の逆転を引き起こすこと等を含む。
ヒトGPR40(以下、ヒトGPR40を、単にGPR40またはhGPR40と称することもある。)をコードするポリヌクレオチドの単離のため、配列番号1で表される903bpの核酸配列を基にして、常法にしたがって、5’側プライマー(5'-ttgatatcgccgccaccatggacctgcccccgcagct-3')(配列番号19)と3’側プライマー(5' -ttacttctgggacttgccccctt-3')(配列番号20)とで表されるPCRプライマーを設計した。Human Pancreas QUICK-CloneTM cDNA (クロンテック社)を鋳型にして、配列番号19と配列番号20との組合せからなるPCRプライマーと、Expand High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)とを用い、94℃5分の後、94℃1分、58℃2分、72℃1分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。増幅したPCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社(Invitrogen社))に挿入し、ABI prism DNA sequencing kit(パーキンエルマーアプライドサイエンス社(Perkin-Elmer Applied Biosystems社))により配列を確認した。その結果、pCR2.1に挿入された903塩基対の配列は、配列番号1における1番目から903番目と同一配列であり、GPR40−pCR2.1を得ることができた。
pBabe Puro(Morgenstern J.P. and Land H. Nucleic Acids Res. 18(12):3587-96, 1990)(配列番号21)をSalIおよびClaIで切断することによりSV40 promoter−puro(r)領域を除いた後、末端をクレノー断片(Klenow fragment)(宝酒造株式会社)により平滑化した。ここへ、pIREShyg(クロンテック社(Clontech社))をNsiIおよびXbaIで切断することにより切り出し、T4ポリメラーゼ(宝酒造株式会社)により末端を平滑化したIRES−hyg(r)領域を挿入し、pBabeXIHを得た。
実施例2で得たレトロウイルス発現用プラスミドpBabeCLXIHを、制限酵素HpaIで切断した。ここへ実施例1で得たGPR40−pCR2.1を、EcoRVで切断することにより切り出したGPR40をコードするcDNAを挿入することにより、pBabeCL(GPR40)IHを得た(図1)
2×106個の293−EBNA細胞(インビトロジェン社(Invitrogen社))を、DMEM培地(シグマ社(Sigma社))(10% fetal bovine serum(FBS)、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)(以下、「EBNA培養液」と称する)10mlを用いて、10cm径コラーゲンコートディッシュ(旭テクノグラス社)で培養した。翌日、pV−gp(pVpack−GP(ストラタジーン社(Stratagene社))をNsiIおよびXbaIで切断することによりIRES−hisDを除きT4ポリメラーゼによる平滑化後、自己環化したもの)、pVPack−VSV−G(ストラタジーン社(Stratagene社))、および実施例3で得た遺伝子導入用レトロウイルスベクタープラスミド(pBabeCL(GPR40)IH)それぞれ3.3μgを、リポフェクション試薬であるFuGENE 6 Transfection Reagent(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用い、293−EBNA細胞にトランスフェクションした。トランスフェクション24時間後に培養液を回収し、1,200×gで10分間遠心した。その上清を0.45μmのフィルター(ミリポア(Millipore)社)でろ過し、GPR40遺伝子導入用レトロウイルスベクターを得た。
(1) サイクリックAMP応答配列を含むレポーターDNAの作成
Durocher Y et al. Anal Biochem 284(2):316-26, 2000 を参考にサイクリックAMP(cAMP)に応じた転写が見られるユニットを以下のように構築した。
cAMP responsive element(CRE)を含むユニットの作成のために、CREx2hb用として、配列番号22(5'-cccaagcttgatatcgaattcgacgtcacagtatgacggcca tgggaattcgacgtcacagtatgacggccatggggatcccg-3')および,配列番号23(5'-cgggatccccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcgatatcaagcttggg-3')で表されるオリゴDNAを、CREx2bp用として配列番号24(5'-tgcactgcaggaattcccatggccgtcatactgtgacgtcgaattcccatggccgtcata ctgtgacgtcggatcccg-3')および、配列番号25(5'-cgggatccgacgtcacagtatgacggccatgggaattcgacgtcacagtatgacggccatgggaattcctgcagtgca-3')で表されるオリゴDNAを常法に従い作成した。それぞれの組合せから成るオリゴDNAを95℃に熱処理後、徐々に温度を室温まで下げることにより二本鎖DNA(CREx2hb,およびCREx2bp)を形成させた。CREx2hbをHindIIIおよびBamHI、CREx2bpをBamHIおよびPstIで消化するとともに、pBluescriptIISK(+)(ストラタジーン社(Stratagene社))をHindIIIおよびPstIで消化した。消化したDNAを電気泳動して両端に制限酵素部位をもつDNAを精製した後、これら3つのDNA(CREx2hb、CREx2bp、pBluescriptSK(+))を一度に連結し(ligation)、得られたプラスミドの配列を解析して、CRE4/pBluescriptIISK(+)を作成した。
ヒトゲノムDNA(Roche Diagnostics社)を鋳型として、上述の配列番号26および配列番号27の組合せからなるPCRプライマーと、組換えTaqポリメラーゼ(Takara社)を用いて、94℃30秒、55℃30秒、72℃1分のサイクルを35回繰り返すことによりPCRしたところ、264bpのDNA(配列番号28)が得られた。この264bpのDNAをPstIで消化するとともにCRE4/pBluescriptIISK(+)のPstIサイトに挿入し、得られたプラスミドの配列を確認してCRE4VIP/pBluescriptIISK(+)を作成した(図2)。このCRE4VIP/pBluescriptIISK(+)を、HindIIIとSmaIで消化した後、得られたCRE4VIPプロモーター断片の末端平滑化を行った。
サイクリックAMP応答配列によりレポーター遺伝子PLAPが誘導されるレトロウイルスベクタープラスミドpBabeCLcre4vPdNNを用い、実施例4に記載の方法に準じてレトロウイルスベクターを調製した。調製したレトロウイルスベクターをHEK293細胞に導入し、限界希釈法により細胞をクローン化して、PLAP誘導の反応性が最も良かったクローン(以下、「SE302」と称する)を以下の実験に供した。
実施例5で構築したSE302細胞を、コラーゲンコート6穴プレート(旭テクノグラス社)に1穴当たり1.2×105個になるように播種した。培地はDMEM(Sigma社))(10% FBS、ペニシリン 100ユニット/ml、ストレプトマイシン100μg/mlを含む)を用いた。翌日、実施例4で得たGPR40含有ウイルスベクター液、および、最終濃度8μg/mlのpolybrene(別名 hexadimethrine bromide, Sigma社)をSE302細胞に加えた。350μg/mlのハイグロマイシン(インビトロジェン社(Invitrogen社))含有の培養液で培養し、この条件で増殖してきた細胞をGPR40遺伝子導入SE302細胞(以下、「GPR40−SE302細胞」と称する)として実験に供した。
(1)GPR43をコードするポリヌクレオチドの調製
ヒトGPR43(以下、ヒトGPR43を、単にGPR43と称することもある。)をコードするポリヌクレオチドの単離のため、GenBankアクセッション番号NM005306を参考にして、配列番号29で表される993bpの核酸配列を基にして、常法にしたがって、5’側プライマー(5'-ttaagcttgccgccaccatgctgccggactggaagagct-3')(配列番号30)と3’側プライマー(5'-ctactctgtagtgaagtccgaa-3')(配列番号31)とで表されるPCRプライマーを設計した。Human Lung QUICK-CloneTM cDNA (クロンテック社)を鋳型にして、配列番号30と配列番号31との組合せからなるPCRプライマーと、Expand High Fidelity PCR System(ロシュ ジアグノスティックス社(Roche Diagnostics社))とを用い、94℃5分の後、94℃1分、58℃2分、72℃1分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。増幅したPCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社(Invitrogen社))に挿入し、ABI prism DNA sequencing kit(パーキンエルマーアプライドサイエンス社(Perkin-Elmer Applied Biosystems社))により配列を確認した。その結果、pCR2.1に挿入された993塩基対の配列は、配列番号29における1番目から993番目と同一配列であり、GPR43−pCR2.1を得ることができた。
実施例2で得たレトロウイルス発現用プラスミドpBabeCLXIHを、制限酵素HpaIで切断した。ここへ上記(1)で得たGPR43−pCR2.1を、制限酵素HindIIIおよびBamHIで切断し、末端を平滑化することにより得たGPR43をコードするcDNAを挿入することにより、pBabeCL(GPR43)IHを得た。
上記(2)で得られたpBabeCL(GPR43)IHプラスミドを、実施例4記載の方法に従い、pV−gp、および、pVPack−VSV−G(Stratagene社)と共に293−EBNA細胞(インビトロジェン社(Invitrogen社))にトランスフェクションした。24時間後に培養上清を回収し、得たGPR43遺伝子導入用レトロウイルスベクター液を、実施例6記載と同様の方法でSE302細胞に感染させた。350μg/mlのハイグロマイシン(インビトロジェン社(Invitrogen社))含有の培養液で培養し、この条件で増殖してきた細胞をGPR43遺伝子導入SE302細胞(以下、「GPR43−SE302細胞」と称する)として実験に供した。
前記実施例6、7で構築したGPR40−SE302細胞、GPR43−SE302細胞を、転写活性測定用培地(DMEMに、65℃にて30分熱処理したFBSを最終濃度10%になるように加えたもの)にて懸濁した後、96穴プレート(ベクトンディッキンソン社)に、1×104細胞/wellで播種した。また、コントロール細胞としては、緑色蛍光タンパク質(GFP、インビトロジェン社(Invitrogen社))を発現させたSE302細胞(以下、「GFP−SE302細胞」)を用いた。具体的には、実施例3、4に示す方法にGFP発現用ウイルス得た後、実施例6に示す方法でSE302に感染させてGFP−SE302細胞を作製した。細胞播種24時間後、最終濃度0.3μMとなるように調製したフォルスコリンおよび試料を添加した。更に24時間培養後、細胞上清を5μl回収してポリプロピレン製384穴ホワイトプレート(ナルジェヌンクインターナショナル株式会社)に移し、20μlのアッセイ用緩衝液(280mmol/L Na2CO3−NaHCO3、8mmol/L MgSO4、pH10)および25μlのLumiphos530(ルミジェン社(Lumigen社))を添加した。室温で2時間反応させた後、各穴の化学発光をFusionプレートリーダー(パーキンエルマー社(Perkin Elmer社))にて測定し、転写活性量とした。この測定値をもとにして、転写活性量促進/抑制を以下に示した式(I)で計算し、[% of control]で表した。試料添加群の活性は、それぞれのプレート毎に設置した対照の値を用いて算出した。
ここで、上記式中、
X: 試料添加群のPLAP転写活性
F: ポジティブコントロール(試料無添加、フォルスコリン刺激あり)の2穴のPLAP転写活性の平均値
C: ネガティブコントロール(試料無添加、フォルスコリン刺激なし)の2穴のPLAP転写活性の平均値
である。
ブタ膵臓由来sPLA2(Phospholipase A2 from porcine pancreas (ammonium sulfate suspension using soybean L-α-phosphatidylcholine) 600ユニット/mg protein,シグマ社(Sigma社))を遠心後、ペレットを水に溶かし、実施例8に記載する方法にしたがってPLAP活性を測定した。図5に示すように、GPR40−SE302細胞において濃度依存的なPLAP活性の上昇が検出されたが、GPR43−SE302細胞、および、GFP−SE302細胞ではPLAP活性の上昇が検出されなかった。このブタ膵臓由来sPLA2は、主に Group IB secretory phospholipase A2(GIB−sPLA2)(Swiss Protアクセッション番号P00592)であることが確認されていることから(Ta-min Chang et al., J. Biol. Chem. 274(16):10758-10764, 1999)、GPR40がGIB−sPLA2によって活性化されることが示された。
ヒト、およびマウスGroup X secretory Phospholipase A2(GX−sPLA2)の前駆体をコードするcDNAを以下に示す方法にしたがって行った。
hGX−sPLA2の前駆体をコードするポリヌクレオチドの単離は、配列番号13(GenBank アクセッション番号NM_003561)であらわされる核酸配列を基にして、hGX−sPLA2のコード領域441番目から938番目に対してgkプライマーを設計し5’側プライマー(5'-atggggccgctacctgtgtgcctgcc-3')(配列番号32)、および、3’側プライマー(5'-tcagtcacacttgggcgagtccggc-3')(配列番号33)、Human Lung QUICK-Clone cDNA(クロンテック社)を鋳型として、PCRを行った。FastStart High Fidelity PCR System(ロシュ・ジアグノスティックス社(Roche Diagnostics社))を用い、94℃5分の後、94℃1分、61℃1分、72℃3分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。PCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社(Invitrogen社))に挿入し配列を確認したところ、挿入された498塩基対の配列は、配列番号13における441番目から938番目と同一配列であり、hGX−sPLA2−pCR2.1を得ることができた。
mGX−sPLA2をコードするポリヌクレオチドの単離は、配列番号14(GenBank アクセッション番号NM_011987)であらわされる核酸配列を基にして、mGX−sPLA2のコード領域175番目から630番目に対してプライマー5’側プライマー(5'-atgctgctgctactgctgctgttgc-3')(配列番号34)、および、3’側プライマー(5'-tcaattgcacttgggagagtccttc-3')(配列番号35)を設計した。鋳型なるcDNAは、C57BL/6NCrjマウス(日本チャールズリバー株式会社)から摘出した大腸より、RNeasy Mini kit (キアゲン社(QIAGEN社))を用いて抽出したRNAを、TaqMan Reverse Transcription Reagents(アプライドバイオシステムズ社)を用い25℃10分、48℃60分、95℃10分逆転写することにより得た。FastStart High Fidelity PCR System(Roche Diagnostics社)を用い、94℃5分の後、94℃1分、58℃1分、72℃3分のサイクルを35回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。PCR産物をpCR2.1(インビトロジェン社(Invitrogen社))に挿入し配列を確認したところ、挿入された456塩基対の配列は、配列番号14における175番目から630番目と同一配列であり、mGX−sPLA2−pCR2.1を得ることができた。
C末Hisタグ付きヒトGX−sPLA2(hGX−sPLA2−His6)は、実施例10で得たhGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として5’側プライマー(5'-gatatcgccgccaccatggggccgctacctgtg-3')(配列番号36)および3’側プライマー(5'-gatatctcaatggtgatggtgatgatggtcacacttgggcgagtc-3')(配列番号37)を用いてPCRを行った。同様に、C末Hisタグ付きマウスGX−sPLA2(mGX−sPLA2−His6)は、実施例10で得たmGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として、5’側プライマー(5'-gatatcgccgccaccatgctgctgctactgctg-3')(配列番号38)および3’側プライマー(5'-gatatctcaatggtgatggtgatga tgattgcacttgggagagtc-3')(配列番号39)を用いてPCRを行った。PCRは、FastStart High Fidelity PCR System(ロシュ ジアグノスティックス社(Roche Diagnostics社))を用い、94℃5分の後、94℃1分、61℃1分(hGX−sPLA2の場合)もしくは58℃1分(mGX−sPLA2の場合)、72℃3分のサイクルを15回繰り返し、最後に72℃7分の伸張反応を行った。得られたPCR産物をそれぞれpCR2.1(インビトロジェン社(Invitrogen社))に挿入し、hGX−sPLA2−His6−pCR2.1およびmGX−sPLA2−His6−pCR2.1を得た。
C末Hisタグ付きGX−sPLA2の遺伝子導入用バキュロウイルスは、BAC−TO−BAC Baculovirus Expression Systems(インビトロジェン株式会社)を用いて、キットに含まれるマニュアルに従って作製した。具体的には、実施例11で得たhGX−sPLA2−His6―pCR2.1、および、mGX−sPLA2−His6−pCR2.1を、制限酵素XbaIおよびHindIIIで切断し、同じくXbaIおよびHindIIで切断しておいたpFASTBAC1プラスミドに挿入することにより、それぞれhGX−sPLA2−His6−pFASTBACおよび、mGX−sPLA2−His6−pFASTBACを得た。これらプラスミドを、キット付属のDH10BACコンピテントセルにトランスポジションすることにより、バクミドDNAを回収した。バクミドDNAを、SF900 II SFM(インビトロジェン社)で培養したSf9細胞に、セルフェクチン試薬(インビトロジェン社)を用いてトランスフェクションし、3日後に培養上清を回収することにより、ヒトおよびマウスC末Hisタグ付きGX−sPLA2遺伝子導入用バキュロウイルスを得た。
実施例12で得たヒトおよびマウスC末Hisタグ付きGX−sPLA2遺伝子導入用バキュロウイルスを、それぞれSf9細胞に感染させ、三角フラスコ中で振とう培養を行った。60時間後に培養液を遠心することにより培養上清を得た。培養上清に最終濃度 10 mM イミダゾール(シグマ社(Sigma社))を加え、 Ni Sepharose 6 Fast Flow カラム(アマシャムバイオサイエンス社)に付した。カラムの5倍量のBinding Buffer(10mMイミダゾール、500mM NaCl、20mM NaH2PO4、pH7.4)で洗浄した後、溶出バッファー(Elution Buffer)(500mM イミダゾール、500mM NaCl、20mM NaH2PO4、50mM Tris−HCl、pH7.4)で溶出した。溶出液を0.1% TFAで5倍希釈した後、HF MEGA BOND ELUTE C18カラム(バリアン社)に付した。カラムを、0.1% TFAを含む50% アセトニトリルで溶出し、凍結乾燥により、ヒトおよびマウスの精製C末Hisタグ付きGX−sPLA2(それぞれ、hGX−sPLA2−His、および、mGX−sPLA2−His)を得た。
実施例13で得たhGX−sPLA2−HisおよびmGX−sPLA2−Hisの凍結乾燥粉末を、適量の0.1% TFA溶液に溶かした。これらを用いて、実施例8記載の方法によりGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図6に示すように、hGX−sPLA2−His(図6−A)および、mGX−sPLA2−His(図6−B)の濃度に応じて、GPR40−SE302細胞おけるPLAP活性の上昇が観察されたが、GFP−SE302細胞においては特異的なPLAP活性の上昇は観察されなかった。このことから、GPR40がヒトおよびマウスのGX−sPLA2によって活性化されることが明らかになった。
ハチ毒PLA2(bvPLA2)(Phospholipase A2 from honey bee venom (salt-free, lyophilized powder, 600〜1800ユニット/mg protein)、シグマ社(Sigma社))を水に溶かし、実施例8に記載する方法にしたがってGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図7に示すように、GPR40−SE302細胞において、濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出されたが、GFP−SE302およびGPR43−SE302においてはPLAP活性の上昇は観察されなかった。このことから、GIB−sPLA2、GX−sPLA2などの分泌型PLA2のみではなく、ハチ毒由来のPLA2によってもGPR40が活性化されることが示された。
ヘビ毒PLA2(snake venom PLA2)(Phospholipase A2 from Naja mossambica mossambica, lyophilized powder, 〜1,500 units/mg protein, pH 8.9, 25℃ (using soybean L-α-phosphatidylcholine)、シグマ社(Sigma社))を水に溶かし、実施例8に記載する方法にしたがってGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。図8に示すように、GFP−SE302およびGPR43−SE302と比較して、GPR40−SE302細胞において、濃度依存的なPLAP活性の顕著な上昇が検出された。このことから、ヘビ毒由来PLA2によっても、GPR40が活性化されることが示された。
1mM Fura2-AM(Dojin)20μlを、5 mLのアッセイバッファー (Hanks液に、10 mM HEPES (pH 7.4), 0.05%グルコース、2.5 mM プロベネシドを加えたもの)で希釈した。約5×107個のGPR40−SE302細胞をトリプシンで処理し、遠心した後、上記のFura−2含有アッセイバッファーに懸濁し、室温で2時間、振とう培養をおこなった。その後、遠心にて細胞を回収し、8×105個/100μlの細胞が含まれるようにアッセイバッファーに懸濁し、Blak walled 96-well plate with half area (コーニング社)に、1穴あたり50μlずつ分注した。別の96wellプラスチックプレート(ファルコン社)に、実施例15で用いたハチ毒PLA2(bvPLA2)(Phospholipase A2 from honey bee venom、シグマ社(Sigma社))溶液を分注し、FDSS-6000(浜松フォトニクス社)にセットした。FDSS-6000で蛍光読み取り開始後10秒後にリガンドが添加されるようにプログラムし、蛍光の経時変化を調べた。図9(A)に示すように、GPR40発現細胞において、ハチ毒PLA2添加後により蛍光の変化が観察されたことから、細胞内カルシウム濃度が変化していることが示唆された。また、0.1,0.3,1.0,3.0μg/mlのハチ毒PLA2によりGPR40の蛍光は濃度依存的に変化した(図9(A))。一方、GPR43発現細胞においては、0.1,0.3,1.0,3.0μg/mlのハチ毒PLA2いずれの濃度を存在させた場合にも、蛍光の変化は観察されなかったことから(図9(B))、ハチ毒PLA2がGPR40特異的に細胞内カルシウム濃度を変化させることが示唆された。
C末FLAGタグ付きヒトGX−sPLA2(hGX−sPLA2−FLAG)は、実施例10で得たhGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として配列番号36に示す5’側プライマー、および、3’側プライマー(5'-gatatctcacttgtcatcgtcgtccttgtagtcgtcacacttgggcga-3')(配列番号40)を用いてPCRを行うことにより得た(配列番号41)。同様に、C末FLAGタグ付きマウスGX−sPLA2(mGX−sPLA2−FLAG)は、実施例10で得たmGX−sPLA2−pCR2.1を鋳型として配列番号38に示す5’側プライマー、および、3’側プライマー(5'-gatatctcacttgtcatcgtcgtccttgtagtcattgcacttgggaga-3')(配列番号42)のプライマーを用いてPCRを行うことにより得た(配列番号43)。得られたPCR産物を再びpCR2.1(インビトロジェン社)に挿入して、それぞれ、hGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1およびmGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を得た。
実施例18で得たhGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を、制限酵素EcoRVで消化し、切り出したフラグメントをpYNGベクター(片倉工業株式会社)のEcoRVサイトにサブクローニングした。タンパク質産生サービス(Superworm(商標) system)(片倉工業株式会社)に受託し、カイコサナギ抽出液を得た。カイコサナギ抽出液をANTI−FLAG(商標) M2 Agarose(シグマ社)に付し、付属のマニュアルに従い精製を行った。sPLA2酵素活性は、sPLA2アッセイ・キット(Cayman Chemical 社)を用いて付属のマニュアルに従い行った。活性分画をVYDAC(商標) Protein & Peptide C18カラム(#218TP54、VYDAC社)に付した後、0.1% TFAを含む24〜42%アセトニトリルの濃度勾配により溶出した。得られたピークのうち、もっとも比活性の高かったシングルピークをレコンビナントhGX−sPLA2として、PLAPアッセイに用いた。なお、レコンビナントの蛋白濃度は、Dcプロテインアッセイ(BioRad社)を用い測定した。得られたレコンビナントhGX−sPLA2を0.1%TFAに溶かし、実施例8に記載する方法にしたがってGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。
図10に示すように、GPR40−SE302細胞において濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出されたが、GPR43−SE302、および、GFP−SE302ではPLAP活性の上昇が検出されなかった。このことから、C末FLAGタグ付きhGX−sPLA2によってもGPR40が活性化されることが示された。
実施例18で得たmGX−sPLA2−FLAG−pCR2.1を、制限酵素BamHI、XbaIで消化し、切り出したフラグメントをpFastBac(インビトロジェン社)のBamHI、XbaIサイトにサブクローニングし、mGX−sPLA2−FLAG−pFAST Bacを得た。Bac−to−Bac(商標)バキュロウイルス発現系(Bac-to-Bac Baculovirus Expression System)(インビトロジェン社)を用いてバキュロウイルスを得た後、昆虫細胞Sf−9感染させた。Sf−9細胞は、SF−900II培地(インビトロジェン社)(ペニシリン/ストレプトマイシン、2.5% FCS)を用いて培養した。バキュロウイルス感染Sf−9細胞培養上清をANTI−FLAGR M2 Agarose(シグマ社)に付し、付属のマニュアルに従い精製を行った。sPLA2酵素活性は、sPLA2アッセイ・キット(Cayman Chemical 社)を用いて付属のマニュアルに従い行った。活性分画をVYDAC(商標) Protein & Peptide C18カラム(#218TP54、VYDAC社)に付した後、0.1% TFAを含む24〜54%アセトニトリルの濃度勾配により溶出した。得られたピークのうち、もっとも比活性の高かったシングルピークをレコンビナントhGX−sPLA2として、PLAPアッセイに用いた。なお、レコンビナントの蛋白濃度は、Dcプロテインアッセイ(BioRad社)を用い測定した。得られたレコンビナントmGX−sPLA2を0.05% TFA、1% BSA(Fatty Acid Free、シグマ社))に溶かし、実施例8に記載する方法にしたがってGPR40−SE302細胞におけるPLAP活性を測定した。
図11に示すように、GPR40−SE302細胞において濃度依存的にPLAP活性の上昇が検出されたが、GPR43−SE302、および、GFP−SE302ではPLAP活性の上昇が検出されなかった。このことから、C末FLAGタグ付きmGX−sPLA2によってもGPR40が活性化されることが示された。
Claims (13)
- 被検物質が、GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質であるかをスクリーニングする方法であって、
被検物質存在下および被検物質非存在下のそれぞれにおいて、
GPR40を含む細胞と、
分泌型ホスホリパーゼA2またはその塩とを接触させ、次いで、
細胞刺激活性を測定して、
被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合とを比較する工程
を含むことを特徴とする、方法。 - 分泌型ホスホリパーゼA2が、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIA分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIC分泌型ホスホリパーゼA2、グループIID分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIE分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIF分泌型ホスホリパーゼA2、グループIII分泌型ホスホリパーゼA2、グループV分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、グループXIIA分泌型ホスホリパーゼA22、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
- 分泌型ホスホリパーゼA2が、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
- 被検物質存在下の場合と被検物質非存在下の場合との間で、結果に相違が出た場合に、その物質をGPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質の候補であると決定する工程をさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 被検物質存在下の場合が、被検物質の非存在下の場合と比べて細胞刺激活性が上昇している場合、その被検物質をGPR40アゴニストと決定する工程をさらに含んでなる、請求項4に記載の方法。
- 被検物質存在下の場合が、被検物質の非存在下の場合と比べて細胞刺激活性が抑制される場合、その被検物質をGPR40アンタゴニストと決定する工程をさらに含んでなる、請求項4に記載の方法。
- 細胞刺激活性の測定を、シグナル伝達物質生成によるレポーター遺伝子の翻訳・転写量の変化を検出するレポーターアッセイ系により測定するか、または、細胞内カルシウムイオン遊離、アデニル酸シクラーゼの活性化、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化もしくは活性化、pHの変動活性、MAPキナーゼのリン酸化もしくは活性化、c-fosの活性化、グリセロール生成活性、脂肪分解活性およびインスリン分泌活性からなる群より選択されるパラメータを測定することによって行う、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- GPR40が、下記(a)〜(e)からなる群より選択されるポリペプチドからなる、請求項1〜7のいずれか−項に記載の方法:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
(b)配列番号2のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド;
(d)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、および、
(e)配列番号1で表される塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。 - GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするためのキットであって、GPR40を含む細胞と、分泌型ホスホリパーゼA2またはその塩とを少なくとも含んでなる、スクリーニング用キット。
- GPR40が、下記(a)〜(e)からなる群より選択されるポリペプチドからなる、請求項9に記載のキット:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
(b)配列番号2のアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる、ポリペプチド、
(d)配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド、および、
(e)配列番号1で表される塩基配列に対して90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドによりコードされてなるポリペプチドであって、GPR40と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチド。 - 分泌型ホスホリパーゼA2が、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIA分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIC分泌型ホスホリパーゼA2、グループIID分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIE分泌型ホスホリパーゼA2、グループIIF分泌型ホスホリパーゼA2、グループIII分泌型ホスホリパーゼA2、グループV分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、グループXIIA分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項9又は10に記載のキット。
- 分泌型ホスホリパーゼA2が、グループIB分泌型ホスホリパーゼA2、グループX分泌型ホスホリパーゼA2、ハチ毒ホスホリパーゼA2、ヘビ毒ホスホリパーゼA2、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項9〜11のいずれか一項に記載のキット。
- GPR40を介した細胞刺激活性を変化させる物質をスクリーニングするための、GPR40を含む細胞と、分泌型ホスホリパーゼA2またはその塩の使用。
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