JP7326832B2 - 油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法 - Google Patents

油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Description

本発明は、油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法に関する。油脂の口腔内感覚を増強する物質は、食品分野等で有用である。
油脂は、食品に含有される栄養素の一つであり、特有の好ましい口腔内感覚を引き起こす。しかしながら、油脂はカロリーが高く、過剰摂取により高脂血症や肥満症等の疾病を引き起こすという問題がある。そのため、油脂の口腔内感覚を増強する技術の開発が求められてきた。
特許文献1および特許文献2には、Gタンパク共役型受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)であるGPR113を用いた脂肪様の味を示す物質のスクリーニング方法が開示さ
れている。
特許文献3には、Gタンパク共役型受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)であ
るGPR120を用いた油脂の口腔内感覚を増強させる物質のスクリーニング方法が開示されている。
国際公開2016/210162号パンフレット 国際公開2017/030862号パンフレット 特許公開2016/214135号パンフレット
本発明は、油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、GPR120/GPR113がGPR120ア
ゴニスト等の油脂の口腔内感覚を増強する物質に強く応答することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
目的物質をスクリーニングする方法であって、
下記工程(A)~(C):
(A)GPR120/GPR113と試験物質を接触させる工程;
(B)前記試験物質に対する前記GPR120/GPR113の応答を測定する工程;および
(C)前記応答に基づいて前記試験物質を目的物質として同定する工程;
を含み、
前記応答が認められた場合に、前記試験物質を目的物質として同定し、
前記目的物質が、油脂の口腔内感覚を増強する物質であり、
前記GPR120/GPR113が、GPR120タンパク質およびGPR113タンパク質の組み合わせである
、方法。
[2]
前記応答が、前記GPR120/GPR113と前記試験物質との結合、または前記試験物質による
前記GPR120/GPR113の活性化である、前記方法。
[3]
前記GPR120/GPR113が、細胞、細胞膜、人工脂質二重膜小胞、または人工脂質二重膜に
担持された形態で使用される、前記方法。
[4]
前記GPR120/GPR113が、細胞に担持された形態で使用される、前記方法。
[5]
前記細胞が、動物細胞である、前記方法。
[6]
前記細胞が、Gタンパク質のαサブユニットを有する、前記方法。
[7]
前記αサブユニットが、GαsまたはGαqである、前記方法。
[8]
前記工程(B)および(C)が、それぞれ、下記工程(B1)および(C1)により実施される、前記方法:
(B1)前記工程(A)を実施した際の前記GPR120/GPR113の活性化の程度D1を測定す
る工程;
(C1)前記活性化の程度D1に基づいて前記試験物質を目的物質として同定する工程。[9]
前記工程(C1)が、下記工程(C2)により実施される、前記方法:
(C2)前記活性化の程度D1と対照条件における前記GPR120/GPR113の活性化の程度D
2との差に基づいて前記試験物質を目的物質として同定する工程。
[10]
前記対照条件が、下記条件(C2-1)または(C2-2)である、前記方法:
(C2-1)前記GPR120/GPR113と前記試験物質を接触させない条件;
(C2-2)前記GPR120/GPR113と前記試験物質を接触させる条件であって、該試験物質
の濃度が前記工程(A)における該試験物質の濃度よりも低い濃度である条件。
[11]
さらに、前記活性化の程度D2を測定する工程を含む、前記方法。
[12]
前記活性化の程度D1が前記活性化の程度D2よりも高い場合に、前記試験物質を目的物質として同定する、前記方法。
[13]
前記応答が、細胞内カルシウム濃度または細胞内cAMP濃度を指標として測定される、前記方法。
[14]
前記GPR120タンパク質が、下記(A)または(B)に記載のタンパク質である、前記方法:
(A)哺乳類のGPR120タンパク質;
(B)2種またはそれ以上の哺乳類のGPR120タンパク質のキメラタンパク質。
[15]
前記GPR120タンパク質が、下記(a)、(b)、または(c)に記載のタンパク質である、前記方法:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、に対する応答性を有するタンパク質;
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、GPR113タンパク質との組み合わせで目的物質に対する応答性を有するタン
パク質。
[16]
前記GPR113タンパク質が、下記(A)または(B)に記載のタンパク質である、前記方法:
(A)哺乳類のGPR113タンパク質;
(B)2種またはそれ以上の哺乳類のGPR113タンパク質のキメラタンパク質。
[17]
前記GPR113タンパク質が、下記(a)、(b)、または(c)に記載のタンパク質である、前記方法:
(a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、GPR120タンパク質との組み合わせで目的物質に対する応答性を有するタンパク質;
(c)配列番号4に示すアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、GPR120タンパク質との組み合わせで目的物質に対する応答性を有するタンパク質。
[18]
目的物質が、GPR120アゴニストである、前記方法。
[19]
さらに、同定された目的物質の油脂の口腔内感覚を増強する機能を評価する工程を含む、前記方法。
[20]
前記評価が、官能評価によって実施される、前記方法。
[21]
GPR120タンパク質をコードする遺伝子およびGPR113タンパク質をコードする遺伝子が導入された細胞。
[22]
動物細胞である、前記細胞。
本発明によれば、油脂の口腔内感覚を増強する物質を効率的にスクリーニングすることができる。
細胞内カルシウム濃度を指標として測定した、GPR113単独発現細胞、GPR120単独発現細胞、GPR120/GPR113共発現細胞、およびGPR120/mGluR4共発現細胞のリノール酸(linoleic acid)に対する応答を示す図。 細胞内カルシウム濃度を指標として測定した、GPR113単独発現細胞、GPR120単独発現細胞、GPR120/GPR113共発現細胞、およびGPR120/mGluR4共発現細胞のcompound 1(4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid)に対する応答を示す図。 細胞内カルシウム濃度を指標として測定した、GPR113単独発現細胞、GPR120単独発現細胞、GPR120/GPR113共発現細胞、およびGPR120/mGluR4共発現細胞のcompound 2(2-[3-fluoro-(pyridin-3-yloxy)phenyl]-1,2-benzisothiazol-3(2H)-one-1,1-dioxide)に対する応答を示す図。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法は、GPR120/GPR113を利用した油脂の口腔内感覚を増強する物質のスクリ
ーニング方法である。油脂の口腔内感覚を増強する物質を「目的物質」ともいう。本発明の方法においては、GPR120/GPR113を利用して、目的物質を同定する(すなわち試験物質
が目的物質であるかを同定する)ことができる。本発明の方法においては、具体的には、試験物質に対するGPR120/GPR113の応答に基づいて、目的物質を同定する(すなわち当該
試験物質が目的物質であるかを同定する)ことができる。すなわち、本発明の方法は、具体的には、(A)GPR120/GPR113と試験物質を接触させる工程;(B)前記試験物質に対
する前記GPR120/GPR113の応答を測定する工程;及び、(C)前記応答に基づいて前記試
験物質を目的物質として同定する工程、を含む、目的物質のスクリーニング方法であってよい。
<1>目的物質
「目的物質」とは、油脂の口腔内感覚を増強する物質をいう。すなわち、目的物質は、油脂の口腔内感覚を増強する機能を有する。「油脂の口腔内感覚」とは、舌の上で感知される油脂の感覚をいう。油脂の口腔内感覚としては、油脂のコーティング感が挙げられる。「油脂のコーティング感」とは、油脂が舌の上を覆い舌の上にまとわりつく感覚をいう。なお、油脂を口腔内に含んでから、0秒以降~2秒までの期間を「トップ」、2秒以降~5秒までの期間を「ミドル」、5秒以降の期間を「ラスト」ともいう。目的物質は、例えば
、トップ、ミドル、およびラストから選択される1つまたはそれ以上の期間において油脂の口腔内感覚を増強する物質であってよい。目的物質は、例えば、油脂を含有する対象物(例えば飲食品)に配合して使用した際に油脂の口腔内感覚を増強する物質であってよい。油脂を含有する対象物については後述する。目的物質は、油脂の非共存下で、油脂の口腔内感覚を呈してもよく、呈しなくてもよい。
目的物質は、例えば、GPR120アゴニストであってよい。すなわち、GPR120アゴニストは、油脂の口腔内感覚を増強する物質(目的物質)として機能してよい。「GPR120アゴニスト」とは、GPR120タンパク質の応答を惹起する物質をいう。
目的物質は、単一の成分からなるもの(すなわち純物質)であってもよく、2種またはそれ以上の成分の組み合わせからなるもの(すなわち混合物)であってもよい。「混合物」を「組成物」ともいう。目的物質が混合物である場合、当該混合物が油脂の口腔内感覚を増強する機能を有する限り、当該混合物を構成する各成分は、単独で、油脂の口腔内感覚を増強する機能を有していてもよく、有していなくてもよい。
<2>試験物質
「試験物質」とは、目的物質の候補として本発明の方法に用いられる物質をいう。試験物質は、特に制限されない。試験物質は、単一の成分からなるもの(すなわち純物質)であってもよく、2種またはそれ以上の成分の組み合わせからなるもの(すなわち混合物)であってもよい。試験物質が混合物である場合、当該混合物を構成する成分の種類数や構成比率は、特に制限されない。試験物質は、公知物質であってもよく、新規物質であってもよい。試験物質は、天然物であってもよく、人工物であってもよい。試験物質は、例えば、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリーであってもよい。試験物質としては、例えば、アルコール、ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル、炭化水素、糖、有機酸、核酸、アミノ酸、ペプチド、その他の有機または無機の各種成分が挙げられる。また、試験物質としては、特に、既存の食品添加物が挙げられる。「既存の食品添加物」とは、食品添加物としての使用が認められている物質をいう。試験物質としては、1種の試験物質を用いてもよく、2種またはそれ以上の試験物質を組み合わせて用いてもよい。2種またはそれ以上の成分をまとめてGPR120/GPR113に接触させて
本発明の方法を実施することにより、それらの成分の組み合わせが全体として目的物質であるかを同定することができる。「2種またはそれ以上の成分をまとめてGPR120/GPR113
に接触させる」場合としては、混合物である試験物質をGPR120/GPR113に接触させる場合
や、2種またはそれ以上の試験物質をまとめてGPR120/GPR113に接触させる場合が挙げら
れる。
試験物質は、例えば、既存の食品添加物等の、上記例示したような物質を含むように選択されてよい。すなわち、試験物質としては、例えば、1種の既存の食品添加物を用いてもよく、2種またはそれ以上の食品添加物を組み合わせて用いてもよく、1種またはそれ以上の食品添加物と1種またはそれ以上の他の成分とを組み合わせて用いてもよい。
また、試験物質は、例えば、遊離脂肪酸以外の物質を含むように選択されてよい。すなわち、本発明の方法からは、試験物質が遊離脂肪酸からなる場合が除かれてもよい。また、本発明の方法からは、試験物質が遊離脂肪酸を含む場合が除かれてもよい。
また、試験物質は、例えば、既知の目的物質以外の物質を含むように選択されてよい。「既知の目的物質」とは、油脂の口腔内感覚を増強する機能を有することが既知である物質をいう。すなわち、本発明の方法からは、試験物質が既知の目的物質からなる場合が除かれてもよい。また、本発明の方法からは、試験物質が既知の目的物質を含む場合が除かれてもよい。既知の目的物質としては、既知のGPR120アゴニストである、リノール酸(linoleic acid)、4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid、2-[3-fluoro-(pyridin-3-yloxy)phenyl]-1,2-benzisothiazol-3(2H)-one-1,1-dioxideが挙げられる。
<3>GPR120/GPR113
「GPR120/GPR113」とは、GPR120タンパク質およびGPR113タンパク質の組み合わせをい
う。
「GPR120タンパク質」とは、GPR120遺伝子にコードされるタンパク質をいう。GPR120タンパク質は、Gタンパク共役型受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)である。GPR120タンパク質を単に「GPR120」ともいう。GPR120タンパク質としては、1種のGPR120タ
ンパク質を用いてもよく、2種またはそれ以上のGPR120タンパク質を組み合わせて用いてもよい。
「GPR113タンパク質」とは、GPR113遺伝子にコードされるタンパク質をいう。GPR113タンパク質は、Gタンパク共役型受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)である。GPR113タンパク質を単に「GPR113」ともいう。GPR113タンパク質としては、1種のGPR113タ
ンパク質を用いてもよく、2種またはそれ以上のGPR113タンパク質を組み合わせて用いてもよい。
GPR120タンパク質およびGPR113タンパク質を総称して、「GPCR」ともいう。GPR120遺伝子およびGPR113遺伝子を総称して、「GPCR遺伝子」ともいう。
GPR120/GPR113は、目的物質に対する応答性を有する。すなわち、両GPCR(すなわちGPR120タンパク質およびGPR113タンパク質)の組み合わせは、目的物質に対する応答性を有
する。言い換えると、各GPCRは、他のGPCRとの組み合わせで、目的物質に対する応答性を有する。各GPCRは、単独で、目的物質に対する応答性を有していてもよく、いなくてもよい。例えば、GPR120タンパク質は、単独で、目的物質に対する応答性を有していてよい。また、例えば、GPR113タンパク質は、単独で、目的物質に対する応答性を有していなくてよい。GPR120/GPR113は、各GPCRと比較して、目的物質に対する高い応答性を有していて
よい。例えば、GPR120/GPR113は、GPR120タンパク質と比較して、目的物質に対する高い
応答性を有していてよい。また、例えば、GPR120/GPR113は、GPR113タンパク質と比較し
て、目的物質に対する高い応答性を有していてよい。「目的物質に対する応答性を有する
」とは、目的物質により活性化されることを意味してよい。
目的物質に対する応答性については、本発明の方法における目的物質に対するGPR120/GPR113の応答の測定についての記載を準用できる。
GPCR遺伝子およびGPCRとしては、各種生物のGPCR遺伝子およびGPCRが挙げられる。生物としては、例えば、哺乳類等の動物が挙げられる。哺乳類等の動物として、具体的には、例えば、Homo sapiens(ヒト)、Mus musculus(マウス)、Rattus norvegicus(ラット
)、Canis lupus familiaris(イヌ)、Felis catus(ネコ)、Bos taurus(ウシ)、Sus
scrofa(ブタ)、Pan troglodytes(チンパンジー)、Macaca fascicularis(カニクイ
ザル)、Equus caballus(ウマ)が挙げられる。哺乳類等の動物としては、特に、ヒトが挙げられる。各種生物のGPCR遺伝子の塩基配列およびGPCRのアミノ酸配列は、例えば、NCBIやEnsembl等の公開データベースから取得できる。ヒトのGPR120遺伝子(cDNA)の塩基
配列およびGPR120タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号1および2に示す。ヒトのGPR113遺伝子(cDNA)の塩基配列およびGPR113タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号3および4に示す。
すなわち、GPCR遺伝子は、例えば、上記例示したGPCRのアミノ酸配列をコードする塩基配列(例えば配列番号1または3の塩基配列等の上記例示した生物のGPCR遺伝子の塩基配列)を有する遺伝子であってよい。また、GPCRは、例えば、上記例示したGPCRのアミノ酸配列(例えば配列番号2または4のアミノ酸配列等の上記例示した生物のGPCRのアミノ酸配列)を有するタンパク質であってよい。なお、「(アミノ酸または塩基)配列を有する」という表現は、特記しない限り、当該「(アミノ酸または塩基)配列を含む」ことを意味し、当該「(アミノ酸または塩基)配列からなる」場合も包含する。
また、GPCRとしては、キメラGPCRも挙げられる。キメラGPCRとしては、キメラGPR120タンパク質やキメラGPR113タンパク質が挙げられる。なお、キメラGPCRの説明で言及される「GPCR」とは、キメラGPR120タンパク質の場合にはGPR120タンパク質を、キメラGPR113タンパク質の場合にはGPR113タンパク質を指す。「キメラGPCR」とは、GPCRのキメラタンパク質(すなわち、2種またはそれ以上のGPCRのキメラタンパク質)をいう。また、言い換えると、「キメラGPCR」とは、GPCRのキメラ配列を有するタンパク質(すなわち、2種またはそれ以上のGPCRのキメラ配列を有するタンパク質)をいう。「GPCRのキメラ配列」とは、GPCRのアミノ酸配列のキメラ配列(すなわち、2種またはそれ以上のGPCRのアミノ酸配列のキメラ配列)をいう。「GPCRのキメラ配列」とは、具体的には、GPCRのアミノ酸配列であって、その部分配列が、1種またはそれ以上の他のGPCRのアミノ酸配列の部分配列で置換されたアミノ酸配列をいう。キメラGPCRの構築におけるアミノ酸配列の置換は、GPCRのアミノ酸配列中の対応する部位間で実施することができる。「GPCRのアミノ酸配列中の対応する部位」とは、それらGPCRのアミノ酸配列のアラインメントにおいて対応する位置に配列される部位をいう。キメラGPCRとしては、例えば、上記例示したGPCRのキメラタンパク質(具体的には、上記例示したGPCRから選択される2種またはそれ以上のGPCRのキメラタンパク質)が挙げられる。キメラGPCRとして、具体的には、例えば、哺乳類のキメラGPCR(具体的には、哺乳類のGPCRから選択される2種またはそれ以上のGPCRのキメラタンパク質)が挙げられる。すなわち、GPCRは、例えば、上記例示したGPCRのアミノ酸配列のキメラ配列(具体的には、上記例示したGPCRのアミノ酸配列から選択される2種またはそれ以上のアミノ酸配列のキメラ配列)を有するタンパク質であってもよい。キメラGPCRとしては、他のGPCRとの組み合わせで目的物質に対する応答性を有するものを選択することができる。
キメラGPCRを構成するGPCRの種類数は、特に制限されない。キメラGPCRを構成するGPCRの種類数は、2種であってもよく、3種またはそれ以上であってもよい。
キメラGPCRにおける各GPCRの構成比率は特に制限されない。各GPCRの構成比率は、キメラGPCRを構成するGPCRの構成比率の合計が100%を超えない範囲で適宜設定することができる。各GPCRの構成比率は、例えば、1%以上、3%以上、5%以上、10%以上、20%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または99%以上であってもよく、99%以下、97%以下、95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、3%以下、または1%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。「各GPCRの構成比率」とは、キメラGPCRを構成するアミノ酸残基の総数に対する各GPCRに由来するアミノ酸残基の個数の比率をいう。なお、キメラGPCRを構成するアミノ酸残基が当該キメラGPCRを構成するGPCRの保存配列に該当する場合、当該アミノ酸残基はそれらGPCRのいずれに由来するとみなしてもよい。
キメラGPCRにおける各GPCRに由来する部位の分布態様は特に制限されない。キメラGPCRにおいて、各GPCRに由来する部位は、1ヶ所に固まって存在していてもよく、2ヶ所またはそれ以上に分散して存在していてもよい。例えば、或るGPCR(GPCRA)の内部のアミノ酸配列を別のGPCR(GPCRB)のアミノ酸配列で置換してキメラGPCRをデザインした場合、GPCRAのアミノ酸配列は当該キメラGPCRのN末側とC末側に分散して残存する。
同様に、GPCR遺伝子としては、キメラGPCR遺伝子が挙げられる。キメラGPCRについての記載は、キメラGPCR遺伝子にも準用できる。
GPCR遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記例示したGPCR遺伝子、例えば配列番号1または3の塩基配列等の上記例示した生物のGPCR遺伝子の塩基配列またはそれらのキメラ配列を有する遺伝子、のバリアントであってもよい。同様に、GPCRは、元の機能が維持されている限り、上記例示したGPCR、例えば配列番号2または4のアミノ酸配列等の上記例示した生物のGPCRのアミノ酸配列またはそれらのキメラ配列を有するタンパク質、のバリアントであってもよい。なお、そのような元の機能が維持されたバリアントを「保存的バリアント」という場合がある。「GPR120遺伝子」および「GPR113遺伝子」という用語は、それぞれ、上記例示したGPR120遺伝子およびGPR113遺伝子に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。同様に、「GPR120タンパク質」および「GPR113タンパク質」という用語は、それぞれ、上記例示したGPR120タンパク質およびGPR113タンパク質に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。保存的バリアントとしては、例えば、上記例示したGPCR遺伝子やGPCRのホモログや人為的な改変体が挙げられる。
また、由来する生物種で特定されるGPCR遺伝子は、当該生物種において見出されるGPCR遺伝子そのものに限られず、当該生物種において見出されるGPCR遺伝子の塩基配列を有する遺伝子およびそれらの保存的バリアントを包含するものとする。同様に、由来する生物種で特定されるGPCRは、当該生物種において見出されるGPCRそのものに限られず、当該生物種において見出されるGPCRのアミノ酸配列を有するタンパク質およびそれらの保存的バリアントを包含するものとする。それら保存的バリアントは、当該生物種において見出されてもよく、見出されなくてもよい。例えば、「哺乳類のGPCR」という用語は、哺乳類において見出されるGPCRのアミノ酸配列を有するタンパク質およびそれらの保存的バリアントを包含するものとする。また、例えば、「哺乳類のキメラGPCR」という用語は、哺乳類において見出されるGPCRのアミノ酸配列のキメラ配列を有するタンパク質およびそれらの保存的バリアントを包含するものとする。言い換えると、「哺乳類のキメラGPCR」を構成するGPCRは、哺乳類において見出されるGPCRそのものに限られず、それらの保存的バリアントであってもよい。
「元の機能が維持されている」とは、遺伝子またはタンパク質のバリアントが、元の遺伝子またはタンパク質の機能(活性や性質)に対応する機能(活性や性質)を有することをいう。遺伝子についての「元の機能が維持されている」とは、遺伝子のバリアントが、元の機能が維持されたタンパク質をコードすることをいう。すなわち、各GPCR遺伝子についての「元の機能が維持されている」とは、遺伝子のバリアントが他のGPCRとの組み合わせで目的物質に対する応答性を有するタンパク質(GPCR)をコードすることをいう。また、各GPCRについての「元の機能が維持されている」とは、GPCRのバリアントが他のGPCRとの組み合わせで目的物質に対する応答性を有することをいう。
GPCRの組み合わせが目的物質に対する応答性を有することは、例えば、当該組み合わせを目的物質と接触させた際の当該組み合わせの応答を測定することにより、確認できる。
以下、保存的バリアントについて例示する。
GPCR遺伝子のホモログまたはGPCRのホモログは、例えば、上記例示したGPCR遺伝子の塩基配列または上記例示したGPCRのアミノ酸配列を問い合わせ配列として用いたBLAST検索
やFASTA検索によって公開データベースから容易に取得することができる。また、GPCR遺
伝子のホモログは、例えば、各種生物の染色体を鋳型にして、これら公知のGPCR遺伝子の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより取
得することができる。
GPCR遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記アミノ酸配列(例えば配列番号2または4のアミノ酸配列等の上記例示した生物のGPCRのアミノ酸配列またはそれらのキメラ配列)において、1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。例えば、コードされるタンパク質は、そのN末端および/またはC末端が、延長または短縮されていてもよい。なお上記「1又は数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には、例えば、1~50個、1~40個、1~30個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1~3個を意味する。
上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、および/または付加は、タンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸
性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln
、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加には、遺伝子が由来する生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
また、GPCR遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記アミノ酸配列全体に対して、例えば、50%以上、65%以上、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、
さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の同一性(identity)を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
また、GPCR遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記塩基配列(例えば配列番号1または3の塩基配列等の上記例示した生物のGPCR遺伝子の塩基配列またはそれらのキメラ配列)から調製され得るプローブ、例えば上記塩基配列の全体または一部に対する相補配列、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子、例えばDNA、であって
もよい。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、同一性が高いDNA同
士、例えば、50%以上、65%以上、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上
、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するDNA同士がハイブ
リダイズし、それより同一性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常
のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2~3回洗浄する条件を挙げることができる。
上述の通り、上記ハイブリダイゼーションに用いるプローブは、遺伝子の相補配列の一部であってもよい。そのようなプローブは、公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、上述の遺伝子を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。例えば、プローブとしては、300 bp程度の長さのDNA断片を用いる
ことができる。プローブとして300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリ
ダイゼーションの洗いの条件としては、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。
また、宿主によってコドンの縮重性が異なるので、GPCR遺伝子は、任意のコドンをそれと等価のコドンに置換したものであってもよい。すなわち、GPCR遺伝子は、例えば、遺伝コードの縮重による上記例示したGPCR遺伝子のバリアントであってもよい。例えば、GPCR遺伝子は、使用する宿主のコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変されてよい。
なお、本発明において、「遺伝子」という用語は、目的のタンパク質をコードする限り、DNAに限られず、任意のポリヌクレオチドを包含してよい。すなわち、「GPCR遺伝子」
とは、GPCRをコードする任意のポリヌクレオチドを意味してよい。GPCR遺伝子は、DNAで
あってもよく、RNAであってもよく、その組み合わせであってもよい。GPCR遺伝子は、一
本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。GPCR遺伝子は、一本鎖DNAであってもよく
、一本鎖RNAであってもよい。GPCR遺伝子は、二本鎖DNAであってもよく、二本鎖RNAであ
ってもよく、DNA鎖とRNA鎖からなるハイブリッド鎖であってもよい。GPCR遺伝子は、単一のポリヌクレオチド鎖中に、DNA残基とRNA残基の両方を含んでいてもよい。GPCR遺伝子がRNAを含む場合、上記例示した塩基配列等のDNAに関する記載は、RNAに合わせて適宜読み
替えてよい。GPCR遺伝子は、イントロンを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。GPCR遺伝子の態様は、その利用態様等の諸条件に応じて適宜選択できる。
なお、アミノ酸配列間の「同一性」とは、blastpによりデフォルト設定のScoring Parameters(Matrix:BLOSUM62;Gap Costs:Existence=11, Extension=1;Compositional Adjustments:Conditional compositional score matrix adjustment)を用いて算出されるアミノ酸配列間の同一性を意味する。また、塩基配列間の「同一性」とは、blastnによりデフォルト設定のScoring Parameters(Match/Mismatch Scores=1,-2;Gap Costs=Linear)を用いて算出される塩基配列間の同一性を意味する。
また、GPCRは、GPCRの保存配列(すなわち、2種またはそれ以上のGPCRのアミノ酸配列の保存配列)の一部または全部を有していてもよい。なお、保存配列の説明で言及される「GPCR」とは、GPR120タンパク質が有する保存配列の場合にはGPR120タンパク質を、GPR113タンパク質が有する保存配列の場合にはGPR113タンパク質を指す。GPCRは、例えば、上記例示したGPCRの保存配列(具体的には、上記例示したGPCRから選択される2種またはそれ以上のGPCRのアミノ酸配列の保存配列)の一部または全部を有していてもよい。GPCRは、具体的には、例えば、哺乳類のキメラGPCRの保存配列(具体的には、哺乳類のGPCRから選択される2種またはそれ以上のGPCRのアミノ酸配列の保存配列)の一部または全部を有していてもよい。保存配列は対象のアミノ酸配列のアラインメントにより決定できる。保存配列の一部または全部としては、保存配列の10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、90%以上、または100%の領域が挙げられる。
また、GPCRは、上述したようなGPCRのアミノ酸配列に加えて、その他のアミノ酸配列を含んでいてもよい。すなわち、GPCRは、上述したようなGPCRのアミノ酸配列とその他のアミノ酸配列との融合タンパク質であってもよい。その他のアミノ酸配列は、GPR120/GPR113が目的物質に対する応答性を有する限り、特に制限されない。その他のアミノ酸配列と
しては、例えば、HisタグやV5エピトープタグ等のタグ配列が挙げられる。その他のアミ
ノ酸配列は、例えば、GPCRのN末端、若しくはC末端、又はその両方に連結されていてよい。
GPCRは、目的物質のスクリーニングに利用可能な任意の形態で使用することができる。すなわち、具体的には、GPCRは、GPR120/GPR113が試験物質と接触でき、且つGPR120/GPR113が目的物質に対する応答性を有する限り、任意の形態で使用することができる。GPCRの使用形態は、本発明の方法の実施態様等の諸条件に応じて適宜設定できる。
GPCRは、例えば、精製物や粗精製物等の所望の程度に単離された形態で使用されてもよく、素材に含有された形態で使用されてもよい。GPCRは、具体的には、例えば、構造物に担持された形態で使用されてもよい。構造物としては、例えば、細胞、細胞膜、人工脂質二重膜小胞、人工脂質二重膜が挙げられる。構造物としては、特に、細胞が挙げられる。言い換えると、GPCRは、例えば、GPCRを有する細胞、GPCRを有する細胞膜、GPCRを有する人工脂質二重膜小胞、またはGPCRを有する人工脂質二重膜等のGPCRを有する(担持する)構造物の形態で使用することができる。これらGPCRを有する構造物も、例えば、所望の程度に単離された形態で使用されてもよく、素材に含有された形態で使用されてもよい。また、GPCRは、器具の一部を構成していてもよい。すなわち、GPCRは、例えば、GPCRを備える器具の形態で使用することもできる。GPCRを備える器具としては、例えば、GPCRが固定化された器具や、GPCRを有する構造物(脂質二重膜等)を備える器具が挙げられる。脂質二重膜を備える器具としては、例えば、脂質二重膜を配列したチップ(WO2005/000558;Watanabe R. et al., Arrayed lipid bilayer chambers allow single-molecule analysis
of membrane transporter activity. Nat Commun. 2014 Jul 24;5:4519.;Kamiya K. et
al., Preparation of artificial cell membrane and single ion channel measurement, Electrochemistry, 83, 1096-1100 (2015))や、液滴接触法により調製された脂質二重膜を備えるイオンチャネル測定デバイス(Kawano R. et al., Automated Parallel Recordings of Topologically Identified Single Ion Channels, Scientific Reports, 3, No. 1995 (2013))が挙げられる。これらの形態のGPCRは、いずれも、本発明の方法で使用
されるGPCRの範囲に含まれる。
GPCRは、例えば、GPCR遺伝子を発現させることにより製造できる。GPCR遺伝子の発現は、例えば、細胞を用いて実施してもよいし、無細胞タンパク質合成系を用いて実施してもよい。細胞を用いたGPCR遺伝子の発現については、後述するGPCRを有する細胞の説明を参照できる。発現したGPCRは、適宜、上述したような形態で取得し、本発明の方法に利用で
きる。
GPCRを有する細胞を「本発明の細胞」ともいう。GPCRは、例えば、細胞膜に局在して機能し得る。よって、本発明の細胞は、GPCRを、例えば、細胞膜に有していてよい。
GPCRは、GPCR遺伝子から発現する。よって、本発明の細胞は、GPCR遺伝子を有する。本発明の細胞は、具体的には、GPCR遺伝子を発現可能に有する。なお、本発明の細胞は、GPCRを発現するまでGPCR遺伝子を有していれば足りる。すなわち、本発明の細胞は、GPCRの発現後には、GPCR遺伝子を有していてもよく、いなくてもよい。また、本発明の細胞は、言い換えると、GPCR遺伝子を発現した細胞であり、また、GPCRを発現した細胞である。なお、「GPCR遺伝子の発現」と「GPCRの発現」とは同義に用いられ得る。
本発明の細胞は、各GPCR遺伝子について、1コピーのGPCR遺伝子を有していてもよく、2コピーまたはそれ以上のGPCR遺伝子を有していてもよい。また、本発明の細胞は、各GPCR遺伝子について、1種のGPCR遺伝子を有していてもよく、2種またはそれ以上のGPCR遺伝子を有していてもよい。また、本発明の細胞は、各GPCRについて、1種のGPCRを有していてもよく、2種またはそれ以上のGPCRを有していてもよい。
本発明の細胞は、本来的にGPCR遺伝子を有するものであってもよく、GPCR遺伝子を有するように改変されたものであってもよい。
本来的にGPCR遺伝子を有する細胞としては、上記のようなGPCR遺伝子が由来する生物の細胞、例えば、ヒト等の哺乳類の味細胞、が挙げられる。本来的にGPCR遺伝子を有する細胞は、例えば、当該細胞を含む生物体や組織から取得することができる。
GPCR遺伝子を有するように改変された細胞としては、GPCR遺伝子が導入された細胞が挙げられる。本発明の細胞は、例えば、GPR120遺伝子および/またはGPR113遺伝子が導入された細胞であってよい。本発明の細胞は、例えば、GPR120遺伝子およびGPR113遺伝子が導入された細胞であってもよい。
なお、本発明の細胞およびそれを取得するために用いられる細胞(例えば、GPCR遺伝子が導入される又は導入された細胞)を総称して「宿主細胞」ともいう。
宿主細胞は、機能するGPCRを発現でき、以て目的物質のスクリーニングに利用可能なものであれば特に制限されない。宿主細胞としては、例えば、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、および動物細胞が挙げられる。好ましい宿主細胞としては、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、および動物細胞等の真核細胞が挙げられる。より好ましい宿主細胞としては、動物細胞が挙げられる。動物としては、例えば、哺乳類、鳥類、両生類が挙げられる。哺乳類としては、例えば、げっ歯類や霊長類が挙げられる。げっ歯類としては、例えば、チャイニーズハムスター、ハムスター、マウス、ラット、モルモットが挙げられる。霊長類としては、例えば、ヒト、サル、チンパンジーが挙げられる。鳥類としては、例えば、ニワトリが挙げられる。両生類としては、例えば、アフリカツメガエルが挙げられる。また、宿主細胞が由来する組織または細胞は特に制限されない。宿主細胞が由来する組織または細胞としては、例えば、卵巣、腎臓、副腎、舌上皮、嗅上皮、松果体、甲状腺、メラノサイトが挙げられる。チャイニーズハムスターの細胞としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞株(CHO)が挙げられる。CHOとして、具体的には、例えば、CHO-DG44やCHO-K1が挙げられる。ヒトの細胞としては、例えば、ヒト胎児腎細胞由来細胞株(HEK)が挙げられる。HEKとして、具体的には、例えば、HEK293やHEK293Tが挙げら
れる。サルの細胞としては、例えば、アフリカミドリザル腎細胞由来細胞株(COS)が挙
げられる。COSとして、具体的には、例えば、COS-1が挙げられる。アフリカツメガエルの
細胞としては、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞が挙げられる。昆虫細胞としては、例えば、Sf9、Sf21、SF+等のSpodoptera frugiperda由来細胞や、High-Five等のTrichoplusia ni由来細胞が挙げられる。宿主細胞は、個々の独立した細胞(例えば遊離の細胞)
であってもよいし、組織等の集合体を形成していてもよい。
GPCR遺伝子は、GPCR遺伝子を有する生物からのクローニングにより取得できる。クローニングには、同遺伝子を含むゲノムDNAやcDNA等の核酸を利用できる。また、GPCR遺伝子
は、化学合成によっても取得できる(Gene, 60(1), 115-127 (1987))。
取得したGPCR遺伝子は、そのまま、あるいは適宜改変して、利用することができる。すなわち、GPCR遺伝子を改変することにより、そのバリアントを取得することができる。遺伝子の改変は公知の手法により行うことができる。例えば、部位特異的変異法により、DNAの目的部位に目的の変異を導入することができる。すなわち、例えば、部位特異的変異
法により、コードされるタンパク質が特定の部位においてアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むように、遺伝子のコード領域を改変することができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., 61, in PCR technology, Erlich, H. A. Eds., Stockton press (1989);Carter, P., Meth. in Enzymol., 154, 382 (1987))や、ファージを用いる方法(Kramer,W. and Frits, H. J., Meth. in Enzymol.,
154, 350 (1987);Kunkel, T. A. et al., Meth. in Enzymol., 154, 367 (1987))が挙げられる。また、GPCR遺伝子のバリアントを化学合成によって直接取得してもよい。
GPCR遺伝子を宿主細胞に導入する形態は特に制限されない。GPCR遺伝子は、発現可能に宿主細胞に保持されていればよい。具体的には、例えば、GPCR遺伝子をDNA等の転写を要
する形態で導入する場合、宿主細胞において、GPCR遺伝子は、当該宿主細胞で機能するプロモーターの制御下で発現可能に保持されていればよい。宿主細胞において、GPCR遺伝子は、染色体外に存在していてもよく、染色体上に導入されていてもよい。2つまたはそれ以上の遺伝子を導入する場合、各遺伝子が、発現可能に宿主細胞に保持されていればよい。
GPCR遺伝子を発現させるためのプロモーターは、宿主細胞において機能するものであれば特に制限されない。「宿主細胞において機能するプロモーター」とは、宿主細胞においてプロモーター活性を有するプロモーターをいう。プロモーターは、宿主細胞由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。プロモーターは、GPCR遺伝子の固有のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。プロモーターは、GPCR遺伝子の固有のプロモーターよりも強力なプロモーターであってもよい。例えば、動物細胞において機能するプロモーターとしては、SV40プロモーター、EF1aプロモーター、RSVプロモーター、CMVプロモーター、SRalphaプロモーターが挙げ
られる。また、プロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得し利用してもよい。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載されている。
GPCR遺伝子は、例えば、同遺伝子を含むベクターを用いて宿主細胞に導入することができる。GPCR遺伝子を含むベクターを、「GPCR遺伝子の発現ベクター」ともいう。GPCR遺伝子の発現ベクターは、例えば、GPCR遺伝子を含むDNA断片をベクターと連結することによ
り、構築することができる。GPCR遺伝子の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより、同遺伝子を宿主細胞に導入することができる。ベクターは、薬剤耐性遺伝子などのマーカーを備えていてもよい。また、ベクターは、挿入された遺伝子を発現するためのプロモーター等の発現調節配列を備えていてもよい。ベクターは、宿主細胞の種類やGPCR遺伝子の導入形態等の諸条件に応じて適宜選択できる。例えば、動物細胞への遺伝子導入に用い
ることができるベクターとしては、プラスミドベクターやウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルスベクターやアデノウイルスベクターが挙げられる。プラスミドベクターとしては、例えば、pcDNAシリーズベクター(pcDNA3.1等;Thermo Fisher Scientific)、pBApo-CMVシリーズベクター(タカラバイオ)、pCI-neo(Promega)が挙げられる。なお、ベクターの種類や構成によっては、ベクターは、宿主細胞の染色体に組み込まれ得るし、宿主細胞の染色体外で自律複製し得るし、あるいは宿主細胞の染色体外に一時的に保持され得る。例えば、SV40複製起点等のウイルスの複製起点を有するベクターは、動物細胞の染色体外で自律複製し得る。具体的には、例えば、pcDNAシリーズベクターはSV40複製起点を有しており、SV40のラージT抗原を発現する
宿主細胞(COS-1やHEK293T等)において染色体外で自律複製し得る。
また、GPCR遺伝子は、例えば、同遺伝子を含む核酸断片を宿主細胞に導入することによっても、宿主細胞に導入することができる。GPCR遺伝子を含む核酸断片を、「GPCR遺伝子断片」ともいう。そのような断片としては、直鎖状DNAや直鎖状RNAが挙げられる。直鎖状RNAとしては、例えば、mRNAやcRNAが挙げられる。
ベクターや核酸断片等の核酸を宿主細胞に導入する方法は、宿主細胞の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。例えば、動物細胞等の宿主細胞にベクターや核酸断片等の核酸を導入する方法としては、DEAEデキストラン法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法が挙げられる。また、ベクターがウイルスベクターである場合は、同ベクター(ウイルス)を宿主細胞に感染させることにより、宿主細胞に同ベクターを導入することができる。
また、本来的にGPCR遺伝子を有する細胞を、GPCR遺伝子の発現が増大するよう改変して用いてもよい。「遺伝子の発現が増大する」とは、同遺伝子の細胞当たりの発現量が非改変細胞と比較して増大することを意味する。ここでいう「非改変細胞」とは、標的の遺伝子の発現が増大するように改変されていない対照細胞を意味する。非改変細胞としては、野生型の細胞や改変元の細胞が挙げられる。GPCR遺伝子の発現を増大させる手法としては、GPCR遺伝子のコピー数を増加させることやGPCR遺伝子の転写効率や翻訳効率を向上させることが挙げられる。GPCR遺伝子のコピー数の増加は、GPCR遺伝子を宿主細胞に導入することにより達成できる。GPCR遺伝子の導入は、上述したように実施できる。なお、導入されるGPCR遺伝子は、宿主細胞由来であってもよく、異種由来であってもよい。GPCR遺伝子の転写効率や翻訳効率の向上は、プロモーター等の遺伝子の発現調節配列の改変により達成できる。例えば、GPCR遺伝子の転写効率の向上は、GPCR遺伝子のプロモーターをより強力なプロモーターに置換することにより達成できる。
本発明の細胞は、目的物質のスクリーニングに利用できる限り、その他の任意の性質を有していてよい。そのような性質としては、例えば、目的物質に対するGPR120/GPR113の
応答を測定するために有用な性質が挙げられる。本発明の細胞の性質についての記載は、その他の態様でGPR120/GPR113を用いる場合にも準用できる。その他の態様でGPR120/GPR113を用いる場合としては、GPR120/GPR113を有する、人工脂質二重膜小胞、細胞膜、また
は人工脂質二重膜を用いる場合が挙げられる。
本発明の細胞は、例えば、GPR120/GPR113以外の呈味受容体(「他の呈味受容体」とも
いう)を有していてもよく、有していなくてもよい。本発明の細胞は、他の呈味受容体を有さないのが好ましい場合があり得る。他の呈味受容体を有さない細胞としては、他の呈味受容体をコードする遺伝子を有さない細胞や、他の呈味受容体をコードする遺伝子を有するが同遺伝子を発現していない細胞が挙げられる。本発明の細胞は、例えば、本来的に他の呈味受容体を有さないものであってもよく、他の呈味受容体を有さないように改変されたものであってもよい。他の呈味受容体を有さないように細胞を改変することは、例え
ば、他の呈味受容体をコードする遺伝子をノックアウトすることにより達成できる。
また、本発明の細胞は、例えば、シグナル伝達に関与するタンパク質を有していてよい。言い換えると、本発明の細胞は、シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子を有していてよい。シグナル伝達に関与するタンパク質としては、例えば、Gタンパク
質、アデニル酸シクラーゼ、プロテインキナーゼA、ホスホリパーゼC、イノシトール1,4,5-三リン酸(IP3)受容体、カルシウムチャネルが挙げられる。Gタンパク質としては、G
タンパク質のαサブユニット(Gαタンパク質)が挙げられる。Gαタンパク質としては、GαsやGαqが挙げられる。Gαqとしては、Gα15やGα16が挙げられる。Gαsを有する細胞は、例えば、さらに、アデニル酸シクラーゼを有していてよい。Gαqを有する細胞は、例えば、さらに、ホスホリパーゼCを有していてよい。ホスホリパーゼCを有する細胞は、例えば、さらに、IP3受容体を有していてよい。ホスホリパーゼCを有する細胞は、例えば、さらに、カルシウムチャネルを有していてよい。Gタンパク質としては、キメラGタンパク質(すなわち、2種またはそれ以上のGタンパク質のキメラタンパク質)も挙げられる。
キメラGタンパク質としては、キメラGαタンパク質(すなわち、2種またはそれ以上のG
αタンパク質のキメラタンパク質)が挙げられる。キメラGαタンパク質としては、由来
および/または種類の異なる2種またはそれ以上のGαタンパク質のキメラタンパク質が
挙げられる。キメラGαタンパク質として、具体的には、GαsまたはGαqと、他のGαタンパク質とのキメラタンパク質が挙げられる。そのようなキメラGαタンパク質として、具
体的には、Gαqと、transducinまたはgustducinとのキメラタンパク質が挙げられる。そ
のようなキメラGαタンパク質として、より具体的には、Gα15-trans48LD(特開2015-192664)やGα16-gust44(特開2016-214135)が挙げられる。「Gαs」には、Gαsと他のGα
タンパク質とのキメラタンパク質も包含されてよい。「Gαq」には、Gαqと他のGαタン
パク質とのキメラタンパク質も包含されてよい。
シグナル伝達に関与するタンパク質およびそれをコードする遺伝子としては、各種生物のタンパク質および遺伝子が挙げられる。生物としては、例えば、哺乳類等の動物が挙げられる。哺乳類等の動物として、具体的には、例えば、Homo sapiens(ヒト)、Mus musculus(マウス)、Rattus norvegicus(ラット)等の上述したものが挙げられる。哺乳類
等の動物としては、特に、ヒトが挙げられる。各種生物のシグナル伝達に関与するタンパク質のアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の塩基配列は、例えば、NCBIやEnsembl等の公開データベースから取得できる。キメラタンパク質の各構成要素についても同様
である。
また、本発明の細胞は、例えば、測定するパラメーターに応じた構成要素を有していてよい。そのような構成要素としては、カルシウム指示薬等のプローブや、ルシフェラーゼ遺伝子等のレポーター遺伝子が挙げられる。カルシウム指示薬等のプローブを遺伝子から発現する場合、本発明の細胞は、当該プローブをコードする遺伝子を有していてよい。
本発明の細胞は、本来的に上記例示したような性質を有するものであってもよく、上記例示したような性質を有するように改変されたものであってもよい。細胞の改変については、GPCR遺伝子の導入等のGPCR遺伝子に関する細胞の改変の記載を準用できる。上記例示したような遺伝子は、宿主細胞由来の遺伝子であってもよく、異種由来の遺伝子であってもよい。また、上記例示したような遺伝子は、GPCR遺伝子と、同一の由来であってもよく、そうでなくてもよい。2つまたはそれ以上の遺伝子を導入する場合、各遺伝子が、発現可能に宿主細胞に保持されていればよい。それらの遺伝子は、例えば、全てが単一の発現ベクター上に保持されていてもよく、全てが染色体上に保持されていてもよい。また、それらの遺伝子は、例えば、複数の発現ベクター上に別々に保持されていてもよく、単一または複数の発現ベクター上と染色体上とに別々に保持されていてもよい。上記例示したような遺伝子およびそれにコードされるタンパク質は、それぞれ、例えば、公知の遺伝子お
よびタンパク質の塩基配列およびアミノ酸配列を有していてよい。また、上記例示したような遺伝子およびそれにコードされるタンパク質は、それぞれ、例えば、公知の遺伝子およびタンパク質の保存的バリアントであってもよい。遺伝子およびタンパク質の保存的バリアントについては、GPCR遺伝子およびGPCRの保存的バリアントに関する記載を準用できる。
Gαsについての「元の機能」とは、目的物質に応答したGPR120/GPR113(例えば目的物
質に応答したGPR120タンパク質)と共役してアデニル酸シクラーゼを活性化する機能であってよい。アデニル酸シクラーゼの活性化により、例えば、細胞内cAMP濃度が増加してよい。すなわち、Gαsについての「元の機能」とは、具体的には、目的物質に応答したGPR120/GPR113(例えば目的物質に応答したGPR120タンパク質)と共役して細胞内cAMP濃度を
増加させる機能であってもよい。
Gαqについての「元の機能」とは、目的物質に応答したGPR120/GPR113(例えば目的物
質に応答したGPR120タンパク質)と共役してホスホリパーゼCを活性化する機能であって
よい。ホスホリパーゼCの活性化により、例えば、細胞内IP3濃度および/または細胞内ジアシルグリセロール(DAG)濃度が増加してよい。細胞内IP3濃度および/または細胞内DAG濃度の増加により、例えば、細胞内カルシウム濃度が増加してよい。すなわち、Gαqに
ついての「元の機能」とは、具体的には、目的物質に応答したGPR120/GPR113(例えば目
的物質に応答したGPR120タンパク質)と共役して細胞内IP3濃度および/または細胞内DAG濃度を増加させる機能であってもよく、GPR120/GPR113(例えば目的物質に応答したGPR120タンパク質)と共役して細胞内カルシウム濃度を増加させる機能であってもよい。
GPCR遺伝子を有する細胞は、そのまま、あるいは適宜GPCR遺伝子を発現させて、GPCRを有する細胞(本発明の細胞)として使用することができる。すなわち、GPCR遺伝子を有する細胞が既にGPCR遺伝子を発現している場合、当該細胞は、そのまま、GPCRを有する細胞(本発明の細胞)として使用してもよい。また、GPCR遺伝子を有する細胞にGPCR遺伝子を発現させることにより、GPCRを有する細胞(本発明の細胞)が得られる。例えば、GPCR遺伝子を有する細胞を培養することにより、GPCR遺伝子を発現させることができ、以てGPCRを有する細胞(本発明の細胞)が得られる。具体的には、例えば、GPCR遺伝子の導入(例えばトランスフェクション)後、宿主細胞の培養を継続し、GPCR遺伝子を発現させることができる。培地組成や培養条件は、GPCR遺伝子を有する細胞を維持する(例えば増殖させる)ことができ、GPCR遺伝子が発現する限り、特に制限されない。培養の際に、GPCR遺伝子を有する細胞は、増殖してもよく、しなくてもよい。培地組成や培養条件は、宿主細胞の種類等の諸条件に応じて適宜設定することができる。培養は、例えば、動物細胞等の細胞の培養に利用される通常の培地および通常の条件をそのまま、あるいは適宜改変して用いて実施することができる。例えば、動物細胞の培養に利用できる培地として、具体的には、Opti-MEM培地(Thermo Fisher Scientific)、DMEM培地、RPMI 1640培地、CD293培地が挙げられる。培養は、例えば、36℃~38℃で、5%CO等のCO含有雰囲気下で静置培養により行うことができる。また、必要に応じて、選択薬剤や発現誘導剤を用いることができる。
GPCRが発現したことは、他のGPCRと組み合わせた際の目的物質に対する応答を測定することにより確認できる。また、GPCRが発現したことは、GPCR遺伝子から転写されるmRNAの量を測定することや、抗体を用いてウェスタンブロットによりGPCRを検出することでも確認できる。
本発明の細胞は、例えば、そのまま(培養物に含まれたまま)、あるいは培地から回収して、本発明の方法に使用することができる。また、培養物やそれから回収した細胞は、例えば、適宜、洗浄、濃縮、希釈、固定化等の処理をしてから、本発明の方法に使用して
もよい。このように、本発明の細胞は、例えば、所望の程度に単離された形態で使用されてもよく、素材に含有された形態で使用されてもよい。GPCRを有する他の構造物についても同様である。
GPCRを有する細胞膜は、例えば、本発明の細胞から調製することができる。GPCRを有する細胞膜は、具体的には、例えば、本発明の細胞を破砕した際の膜画分として得られる。
また、GPCRを利用してGPCRを有する人工脂質二重膜小胞や人工脂質二重膜を製造することができる。例えば、予め調製された人工脂質二重膜小胞や人工脂質二重膜にGPCRを組み込むことで、GPCRを有する人工脂質二重膜小胞や人工脂質二重膜を調製することができる。また、例えば、GPCRを原料として人工脂質二重膜小胞や人工脂質二重膜にGPCRを調製することで、GPCRを有する人工脂質二重膜小胞や人工脂質二重膜を調製することができる。GPCRを有する人工脂質二重膜小胞や人工脂質二重膜の調製には、GPCRを有する膜画分等の適切な形態のGPCRを用いることができる。人工脂質二重膜小胞や人工脂質二重膜は、例えば、公知の手段により製造できる。例えば、人工脂質二重膜の製造法としては、Montal-Mueller法や、液滴接触法(Kawano R. et al., Automated Parallel Recordings of Topologically Identified Single Ion Channels, Scientific Reports, 3, No. 1995 (2013)
)が挙げられる。例えば、US2018-0095071には、培養細胞から得た粗精製膜画分を用いて人工脂質二重膜を調製したことが開示されている。人工脂質二重膜小胞は、GPCRを、例えば、その膜に有していてよい。脂質二重膜小胞としては、リポソームが挙げられる。
細胞膜や人工脂質二重膜等の膜は、例えば、当該膜により区分された空間が生じるように使用することができる。そのような膜は、例えば、2つのウェル等の2つの空間を区分するように使用することができる。すなわち、そのような膜は、例えば、2つのウェル等の2つの空間を備える反応系であって、当該2つの空間が当該膜によって互いに区分されている反応系を提供するように使用することができる。そのような2つの空間は、その境界の少なくとも一部がそのような膜により区分されていればよい。そのような反応系は、例えば、上述したような装置として提供されてよい。
本発明の方法においては、両GPCR(すなわちGPR120タンパク質およびGPR113タンパク質)の組み合わせが利用される。両GPCRは、まとめて製造されてもよく、そうでなくてもよい。両GPCRがまとめて製造される場合、それらGPCRはそのまま本発明の方法に使用することができる。また、両GPCRがまとめて製造されない場合、それらGPCRは製造後に適宜組み合わせて本発明の方法に使用することができる。両GPCRは、具体的には、それらGPCRが共同で機能できるよう、それらGPCRが共存した状態で本発明の方法に使用すればよい。例えば、両GPCRを構造物に担持した形態で使用する場合、それらGPCRを単一の構造物に担持した形態で使用することができる。両GPCRは、例えば、単一の細胞に担持した形態で使用することができる。そのような細胞は、例えば、両GPCRを宿主細胞で共発現することにより得られる。
<4>本発明の方法
本発明の方法は、in vitroで実施することができる。
まず、GPR120/GPR113と試験物質を接触させることができる。
GPR120/GPR113と試験物質との接触が実施される系を「反応系」ともいう。GPR120/GPR113と試験物質との接触は、適当な液体中で実施することができる。GPR120/GPR113と試験
物質との接触が実施される液体を「反応液」ともいう。すなわち、例えば、適当な反応液中でGPR120/GPR113と試験物質とを共存させることにより、GPR120/GPR113と試験物質とを接触させることができる。具体的には、例えば、GPR120/GPR113(例えばGPR120/GPR113を
有する細胞等の上記例示したような形態のもの)および試験物質を適当な液体媒体中に溶解、懸濁、分散等して共存させることにより、GPR120/GPR113と試験物質とを接触させる
ことができる。液体媒体としては、水や水性緩衝液等の水性媒体が挙げられる。なお、2種またはそれ以上の成分をまとめてGPR120/GPR113に接触させる場合、それらの成分とGPR120/GPR113との接触は、同時に開始してもよく、そうでなくてもよい。すなわち、例えば、或る成分とGPR120/GPR113との接触を開始した後、別の成分をさらに反応系に添加して
もよい。反応条件(GPR120/GPR113と試験物質との接触を実施する条件)は、目的物質の
スクリーニングが可能である限り、特に制限されない。反応条件は、GPR120/GPR113の使
用形態、試験物質の種類、GPR120/GPR113の応答の測定手法等の諸条件に応じて適宜設定
できる。反応条件としては、例えば、タンパク質とリガンド間の相互作用等の物質間の相互作用を測定する際の公知の反応条件をそのまま、あるいは適宜改変して利用してもよい。試験物質の濃度は、例えば、0.01 nM~500 mM、10 nM~100 mM、または1μM~10 mMで
あってもよい。GPR120/GPR113の濃度は、例えば、1 pg/mL~10 mg/mLであってもよい。また、GPR120/GPR113を有する細胞を用いる場合、GPR120/GPR113を有する細胞の濃度は、例えば、10 cell/mL~10,000,000 cell/mLであってもよい。GPR120/GPR113と試験物質との
接触は、適当な時点で終了してもよいし、しなくてもよい。GPR120/GPR113と試験物質と
の接触は、通常、試験物質に対する少なくともGPR120/GPR113の応答の測定時まで継続さ
れていてよい。GPR120/GPR113と試験物質との接触の継続時間は、例えば、0.1秒以上
、0.5秒以上、1秒以上、5秒以上、10秒以上、20秒以上、30秒以上、40秒以上、50秒以上、1分以上、2分以上、3分以上、5分以上、10分以上、30分以上、1時間以上、または2時間以上であってもよく、24時間以下、12時間以下、6時間以下、2時間以下、または1時間以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。GPR120/GPR113と試験物質との接触の継続時間は、具体的には、例えば、1
時間~6時間であってもよい。反応系は、目的物質のスクリーニングが可能である限り、GPR120/GPR113(例えばGPR120/GPR113を有する細胞等の上記例示したような形態のもの)および試験物質に加えて、その他の成分を含有していてよい。その他の成分は、GPR120/GPR113の使用形態、試験物質の種類、GPR120/GPR113の応答の測定手法等の諸条件に応じて適宜設定できる。その他の成分としては、カルシウム塩等の塩類、グルコース等の炭素源、その他の培地成分、pH緩衝剤が挙げられる。また、その他の成分としては、銅イオンが挙げられる。
次いで、試験物質に対するGPR120/GPR113の応答を測定することができる。GPR120/GPR113が物質に対して応答することを、「物質がGPR120/GPR113の応答を惹起する」ともいう
試験物質に対するGPR120/GPR113の応答としては、GPR120/GPR113と試験物質との結合や、試験物質によるGPR120/GPR113の活性化が挙げられる。
試験物質に対するGPR120/GPR113の応答を測定するタイミングは、試験物質が目的物質
であった場合に測定可能な程度に試験物質に対するGPR120/GPR113の応答が生じている時
点であれば特に制限されない。試験物質に対するGPR120/GPR113の応答を測定するタイミ
ングは、GPR120/GPR113の使用形態、試験物質の種類、GPR120/GPR113の応答の測定手法等の諸条件に応じて適宜設定できる。試験物質に対するGPR120/GPR113の応答を測定するタ
イミングは、具体的には、GPR120/GPR113と試験物質との接触が開始した時点から、試験
物質に対するGPR120/GPR113の応答が消失する時点までの適当な時点であってよい。試験
物質に対するGPR120/GPR113の応答を測定するタイミングは、例えば、試験物質に対するGPR120/GPR113の最大の応答が得られる時点(例えば、試験物質のGPR120/GPR113への結合
量が最大となる時点や、試験物質によるGPR120/GPR113の活性化の程度が最大となる時点
)であってもよい。また、試験物質に対するGPR120/GPR113の応答を測定するタイミング
は、例えば、GPR120/GPR113と試験物質との接触が開始した時点の0.1秒後以降、0.
5秒後以降、1秒後以降、5秒後以降、10秒後以降、20秒後以降、30秒後以降、40秒後以降、50秒後以降、1分後以降、2分後以降、3分後以降、5分後以降、10分後以降、30分後以降、1時間後以降、または2時間後以降であってもよく、24時間後まで、12時間後まで、6時間後まで、2時間後まで、1時間後まで、30分後まで、10分後まで、5分後まで、3分後まで、2分後まで、または1分後までであってもよく、それらの矛盾しない組み合わせであってもよい。試験物質に対するGPR120/GPR113の応答
を測定するタイミングは、具体的には、例えば、GPR120/GPR113と試験物質との接触が開
始した時点の1秒後以降10分後までであってもよい。
次いで、試験物質に対するGPR120/GPR113の応答に基づいて、当該試験物質が目的物質
であるかを同定することができる。すなわち、試験物質に対するGPR120/GPR113の応答に
基づいて、当該試験物質を目的物質として同定することができる。
具体的には、試験物質に対するGPR120/GPR113の応答が認められた場合に、当該試験物
質を目的物質として同定することができる。すなわち、例えば、GPR120/GPR113と試験物
質との結合または試験物質によるGPR120/GPR113の活性化が認められた場合に、当該試験
物質を目的物質として同定することができる。
試験物質によるGPR120/GPR113の活性化は、前記工程(A)を実施した際の(すなわちGPR120/GPR113と試験物質を接触させる条件における)GPR120/GPR113の活性化の程度(活
性化の程度D1)を指標として決定することができる。すなわち、上記工程(B)は、例えば、(B1)活性化の程度D1を測定する工程であってよい。また、上記工程(C)は、例えば、(C1)活性化の程度D1に基づいて試験物質が目的物質であるかを同定する工程であってよい。
試験物質によるGPR120/GPR113の活性化は、具体的には、前記工程(A)を実施した際
の(すなわちGPR120/GPR113と試験物質を接触させる条件における)GPR120/GPR113の活性化の程度(活性化の程度D1)と対照条件におけるGPR120/GPR113の活性化の程度(活性
化の程度D2)とを比較することにより決定できる。すなわち、上記工程(C1)は、例えば、(C2)活性化の程度D1と活性化の程度D2との差に基づいて試験物質が目的物質であるかを同定する工程であってもよい。
「対照条件」とは、下記条件(C2-1)または(C2-2)をいう:
(C2-1)GPR120/GPR113と試験物質を接触させない条件;
(C2-2)GPR120/GPR113と試験物質を接触させる条件であって、当該試験物質の濃度
が上記工程(A)における当該試験物質の濃度よりも低い濃度である条件。
言い換えると、試験物質によるGPR120/GPR113の活性化は、例えば、試験物質の有無ま
たは濃度差によるGPR120/GPR113の活性化の程度の差を指標として決定できる。
上記条件(C2-1)としては、GPR120/GPR113と試験物質を接触させる前の条件が挙
げられる。上記条件(C2-1)としては、GPR120/GPR113と試験物質を接触させた後の
条件であって、試験物質が実質的に(例えば完全に)反応系から除去され、且つ試験物質に対するGPR120/GPR113の応答が実質的に(例えば完全に)消失している条件も挙げられ
る。上記条件(C2-2)における試験物質の濃度は、活性化の程度D1と活性化の程度D2とで測定可能な程度に差が認められる濃度であれば特に制限されない。上記条件(C2-2)における試験物質の濃度は、例えば、上記工程(A)における試験物質の濃度の、90%以下、70%以下、50%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下の濃度であってよい。対照条件は、試験物質の有無または濃度以外は、試験物質に対するGPR120/GPR113の応答を評価することができる限り、特に制限されな
い。対照条件は、試験物質の有無または濃度以外は、例えば、上記工程(A)の条件と同一であってよい。
本発明の方法は、活性化の程度D2を測定する工程を含んでいてもよい。活性化の程度D1と活性化の程度D2は、単一の反応系において時間差で測定されてもよいし、それぞれ別個の反応系において同時にあるいは時間差で測定されてもよい。活性化の程度D2は、活性化の程度D1よりも先に測定されてもよく、後に測定されてもよい。例えば、活性化の程度D2を測定した後、反応系に試験物質を添加して活性化の程度D1を測定してもよい。
活性化の程度D1が高い場合に、試験物質によるGPR120/GPR113の活性化が認められた
と判断できる。具体的には、活性化の程度D1が活性化の程度D2よりも高い場合に、試験物質によるGPR120/GPR113の活性化が認められたと判断できる。例えば、活性化の程度
D2に対する活性化の程度D1の比率が112%以上、113%以上、114%以上、115%以上、117%以上、120%以上、125%以上、130%以上、140%以上、150%以上、160%以上、170%以上、180%以上、190%以上、200%以上、250%以上、または300%以上である場合に、試験物質によるGPR120/GPR113
の活性化が認められたと判断してもよい。活性化の程度D2に対する活性化の程度D1の比率として、具体的には、例えば、実施例に記載のΔF/F値が挙げられる。
試験物質に対するGPR120/GPR113の応答を測定する手法は特に制限されない。試験物質
に対するGPR120/GPR113の応答を測定する手法は、GPR120/GPR113の使用形態や測定する応答の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。すなわち、試験物質に対するGPR120/GPR113の応答は、例えば、GPR120/GPR113と試験物質との結合または試験物質によるGPR120/GPR113の活性化を測定できる適当な手法により測定することができる。
GPR120/GPR113と試験物質の結合を測定する手法は特に制限されない。GPR120/GPR113と試験物質の結合は、例えば、タンパク質とリガンド間の結合等の物質間の結合を測定する公知の手法により測定することができる。そのような手法としては、例えば、等温滴定型熱量測定(Isothermal Titration Calorimetry;ITC)、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance;SPR)、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance;NMR)蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy;FCS)が挙げられる。
試験物質によるGPR120/GPR113の活性化を測定する手法は特に制限されない。試験物質
によるGPR120/GPR113の活性化は、例えば、GPCR等の受容体の活動を測定する公知の手法
により測定することができる。そのような手法としては、例えば、細胞内カルシウム濃度を測定する方法や細胞内cAMP濃度を測定する方法が挙げられる。すなわち、試験物質によるGPR120/GPR113の活性化は、例えば、細胞内カルシウム濃度または細胞内cAMP濃度を指
標として測定することができる。すなわち、試験物質によるGPR120/GPR113の活性化は、
具体的には、例えば、GPR120/GPR113を有する細胞を用いて、細胞内カルシウム濃度また
は細胞内cAMP濃度を指標として測定することができる。例えば、GPR120/GPR113が試験物
質によって活性化されると、Gαsと共役してアデニル酸シクラーゼを活性化し、以て細胞内cAMP濃度が増加してよい。また、例えば、GPR120/GPR113が試験物質によって活性化さ
れると、Gαqと共役してホスホリパーゼCを活性化し、以て細胞内IP3濃度および/または細胞内ジアシルグリセロール濃度が増加してよい。細胞内IP3濃度および/または細胞内
ジアシルグリセロール濃度の増加により、例えば、細胞内カルシウム濃度が増加してよい。細胞内cAMP濃度を測定する手法としては、例えば、ELISAやレポーターアッセイが挙げ
られる。レポーターアッセイとしては、例えば、ルシフェラーゼアッセイが挙げられる。レポーターアッセイによれば、cAMP濃度に依存して発現するように構成されたレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子等)を利用して細胞内cAMP濃度を測定することができる。
細胞内カルシウム濃度を測定する手法としては、例えば、カルシウムイメージングが挙げられる。カルシウムイメージングにおいては、カルシウム指示薬を利用して細胞内カルシウム濃度を測定することができる。カルシウム指示薬としては、カルシウム感受性蛍光色素やカルシウム感受性蛍光タンパク質が挙げられる。カルシウム感受性蛍光色素としては、例えば、Fura 2、Fluo 4が挙げられる。また、カルシウム感受性蛍光タンパク質としては、例えば、Cameleon、TN-XL、GCaMP、G-GECOが挙げられる。Cameleonとして、具体的には、例えば、Yellow Cameleon 2.60(YC2.60)(PNAS vol.101:10554-10559 (2004))が
挙げられる。カルシウムイメージングにおけるシグナル(例えば蛍光)の検出は、蛍光検出器等のシグナルの種類に応じた検出器を用いて実施することができる。蛍光検出器としては、例えば、FV1200(オリンパス社製)等の共焦点レーザー顕微鏡やFDSS7000(浜松ホトニクス社製)等のハイスループットスクリーニングシステムが挙げられる。FDSS7000は、96穴や384穴プレート等のマルチウェルプレートの測定に対応しており、複数の試験物
質をまとめて試験できる。「カルシウム濃度」とは、遊離カルシウムイオン濃度を意味してよい。
GPR120/GPR113を有する細胞を用いたGPR120/GPR113の活性化の測定についての記載は、その他の態様でGPR120/GPR113を用いる場合にも準用できる。その他の態様でGPR120/GPR113を用いる場合としては、GPR120/GPR113を有する、人工脂質二重膜小胞、細胞膜、また
は人工脂質二重膜を用いる場合が挙げられる。その他の態様でGPR120/GPR113を用いる場
合としては、特に、GPR120/GPR113が内部空間を有する形態で使用される場合が挙げられ
る。
すなわち、例えば、GPR120/GPR113を有する人工脂質二重膜小胞を用いて、GPR120/GPR113を有する細胞を用いる場合と同様の手法によりGPR120/GPR113の活性化を測定すること
ができる。そのような場合、GPR120/GPR113を有する細胞を用いたGPR120/GPR113の活性化の測定についての記載における「細胞」は、「人工脂質二重膜小胞」と読み替えることができる。
また、例えば、GPR120/GPR113を有する細胞膜や人工脂質二重膜等の膜を当該膜により
区分された空間が生じるように用いて、GPR120/GPR113を有する細胞を用いる場合と同様
の手法によりGPR120/GPR113の活性化を測定することができる。具体的には、例えば、そ
のような膜が2つの空間を区分するように使用される場合、すなわち、そのような膜が、2つの空間を備える反応系であって、当該2つの空間が当該膜によって互いに区分されている反応系を提供するように使用される場合、GPR120/GPR113を有する細胞を用いる場合
と同様の手法によりGPR120/GPR113の活性化を測定することができる。そのような場合、
膜により区分された空間を細胞の内部(「内部空間」ともいう)とみなすことがでる。具体的には、それら2つの空間の内、一方を細胞の内部(「内部空間」ともいう)とみなすことができ、他方を細胞の外部(「外部空間」ともいう)とみなすことができる。それらの空間の内、試験物質を含有する方を外部空間とみなすことができる。そのような場合、GPR120/GPR113を有する細胞を用いたGPR120/GPR113の活性化の測定についての記載における「細胞内カルシウム濃度」および「細胞内cAMP濃度」は、それぞれ、「内部空間内のカルシウム濃度」および「内部空間内のcAMP濃度」と読み替えることができる。
いずれの場合も、GPR120/GPR113の使用態様に応じて、測定可能なパラメーターを選択
することができる。
なお、「或るパラメーターを測定し、試験物質に対するGPR120/GPR113の応答を測定す
るための指標として利用する」とは、当該応答を測定できる(すなわち、当該応答が認められるかを判定できる)限り、当該パラメーターを反映するデータを取得して利用することで足り、当該パラメーターの値自体を取得することは必要としない。すなわち、或るパ
ラメーターを反映するデータを取得した場合、当該データから当該パラメーターの値自体を算出することは必要としない。具体的には、例えば、カルシウムイメージングにより細胞内のカルシウム濃度を測定し、試験物質によるGPR120/GPR113の活性化を測定するため
の指標として利用する場合、当該活性化を測定できる(すなわち、当該活性化が認められるかを判定できる)限り、細胞内のカルシウム濃度を反映するデータ(例えば、蛍光強度)を取得して利用することで足り、当該データから細胞内のカルシウム濃度自体を算出することは必要としない。
このようにして目的物質を同定することができる。本発明の方法は、さらに、同定された目的物質の油脂の口腔内感覚を増強する機能を評価する工程を含んでいてもよい。すなわち、同定された目的物質の油脂の口腔内感覚を増強する機能を評価することにより、当該目的物質が実際に油脂の口腔内感覚を増強するかを確認することができる。同定された目的物質の油脂の口腔内感覚を増強する機能を評価する手法は特に制限されない。同定された目的物質の油脂の口腔内感覚を増強する機能は、例えば、物質の呈味を評価する公知の手法により評価することができる。そのような手法としては、官能評価(官能試験による評価)が挙げられる。同定された目的物質の油脂の口腔内感覚を増強する機能は、具体的には、例えば、目的物質の共存下での油脂の口腔内感覚と、目的物質の非共存下での油脂の口腔内感覚とを比較することにより、評価することができる。
スクリーニングされた目的物質の用途は、特に制限されない。目的物質は、例えば、油脂を含有する対象物(例えば飲食品)に配合して使用することができる。目的物質の配合により、油脂を含有する対象物において油脂の口腔内感覚を増強することができる。また、目的物質の配合により、油脂を含有する対象物において油脂の含有量を低減しても、油脂の口腔内感覚を維持することができる。油脂としては、トリグリセリド(すなわちトリアシルグリセロール)が挙げられる。油脂として、具体的には、動物由来の油脂(動物油脂)や植物由来の油脂(植物油脂)が挙げられる。油脂を含有する飲食品としては、油脂を0.5重量%以上、好ましくは2.0重量%以上含有する飲食品が挙げられる。油脂を含有する飲食品として、具体的には、ドレッシング、チーズ、バター、マーガリン、マヨネーズ、ラード、スープ、カレー、ヨーグルト、フライ食品、スナック菓子、クリーム、チョコレートが挙げられる。目的物質の使用量は、油脂の口腔内感覚の増強に有効な量であれば、特に制限されない。目的物質の使用量は、油脂を含有する対象物の種類等の諸条件に応じて適宜設定できる。目的物質の使用量は、例えば、油脂を含有する対象物(例えば飲食品)における濃度として、0.0001重量ppm~1000重量ppm、好ましくは0.0002重量ppm~500重量ppmであってよい。また、目的物質は、例えば、新たな目的物質の開発のための原料と
して使用することもできる。
以下、非限定的な実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
<1>ヒトGPR120タンパク質発現ベクターの構築
ヒトGPR120タンパク質をコードする全長cDNAの配列は、NCBIのGenBankに登録されてい
る(accession No. NM_001195755)(配列番号1)。ヒトmRNAを鋳型とし、配列番号5と6に示すプライマーを用いてRT-PCR反応を行い、ヒトGPR120タンパク質をコードする全長cDNAを含むDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を、GENEART Seamless cloning and Assembly kit(A13288、ライフテクノロジーズ社)を用いてプラスミドpcDNA3.1(+)(ライフテクノロジーズ社)のHindIII-XbaIサイトにサブクローニングし、ヒトGPR120タンパク質発現ベクターを構築した。なお、前記プラスミドpcDNA3.1(+)は、サイトメガロウイルス
由来のプロモーター配列を有しており、クローニング断片にコードされるポリペプチドを動物細胞で発現させるために使用することができる。
<2>ヒトGPR113タンパク質発現ベクターの構築
ヒトGPR113タンパク質をコードする全長cDNAの配列は、NCBIのGenBankに登録されてい
る(accession No. NM_001145168)(配列番号3)。ヒトmRNAを鋳型とし、配列番号7と8に示すプライマーを用いてRT-PCR反応を行い、ヒトGPR113タンパク質をコードする全長cDNAを含むDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を、GENEART Seamless cloning and Assembly kit(A13288、ライフテクノロジーズ社)を用いてプラスミドpcDNA3.1(+)(ライフテクノロジーズ社)にサブクローニングし、ヒトGPR113タンパク質発現ベクターを構築した。
<3>ヒトmGluR4タンパク質発現ベクターの構築
ヒトmGluR4タンパク質をコードする全長cDNAの配列は、NCBIのGenBankに登録されてい
る(accession No. NM_000841)(配列番号11)。ヒトmRNAを鋳型とし、配列番号9と
10に示すプライマーを用いてRT-PCR反応を行い、ヒトmGluR4タンパク質をコードする全長cDNAを含むDNA断片を増幅した。得られたDNA断片を、制限酵素HindIII(ニューイング
ランドバイオラボ)とNotI(ニューイングランドバイオラボ)を用いてプラスミドpcDNA3.1(+)(ライフテクノロジーズ社)にサブクローニングし、ヒトmGluR4タンパク質発現ベ
クターを構築した。なお、mGluR4はGPR120の機能に無関係な受容体(ネガティブコントロール)として用いた。
<4>培養細胞への遺伝子導入とGPR120アゴニストに対する応答評価
PEAKrapid細胞(ATCC CRL-2828)にGα15-trans48LDの発現ベクターpGα15-trans48LD
(特開2015-192664)を常法により導入し、Gα15-trans48LDを恒常的に発現する細胞を得た。10% Fetal bovine serum(ニチレイ)および1% Pen Strep(GIBCO)を含むDMEM/Ham's F-12(ナカライテスク)培地を用いて維持した同細胞をD-PBS(-)(ナカライテスク
)で洗浄後、0.25% Trypsin EDTA(GIBCO)を用いて細胞をフラスコから回収した。遠心
分離(1,200 rpm, 3min)を行って上清を除去し、5% FBS DMEM/Ham’s F-12中で0.75×107 cell/mlになるように懸濁した。これを150 cm2フラスコ(IWAKI)に10 ml播種し、一晩培養(37℃、5% CO2)した。翌日、培地をOpti-MEM(invitrogen、Life Technologies社
)30 mlに交換して、Opti-MEMとLipofectamin2000(invitrogen、Life Technologies社)を用いて調製した4種の発現ベクター混合物溶液(1.GPR113発現ベクターとpcDNA3.1(+)、2.GPR120発現ベクターとpcDNA3.1(+)、3.GPR120発現ベクターとGPR113発現ベクタ
ー、および4.GPR113発現ベクターとmGluR4発現ベクター;それぞれ、1:1の比率で混合
した総計60.0μgの発現ベクター)を細胞懸濁液にゆっくり添加し、6時間培養(37℃、5% CO2)することで遺伝子を導入した。
遺伝子導入後、D-PBS(-)で細胞を洗浄し、0.25% Trypsin EDTA(GIBCO)を用いて細
胞をフラスコから剥がして回収した。細胞数をカウント後、5% FBS DMEM(2.78 mMグルコース含有、GIBCO)培地中に0.5×106cell/mlになるように懸濁した。この細胞懸濁液を、D-Lysine coat 96well plate(BDバイオサイエンス)の各ウェルに7.0×104 cellになる
ように播種し、一晩培養した。
培養後、96ウェルの培地をすべて捨て、Assay用buffer(20 mM HEPES, 146 mM NaCl, 1
mM MgSO4, 1.39 mMグルコース, 1 mM CaCl2, 2.5 mM Probenecid)で80倍に希釈した細
胞内カルシウムイオン測定用染色液Calcium assay kit Express(Molecular Device)を200 μl加え、37℃で30分、室温にて45分静地し、染色を行った。染色後、Assay用buffer
で調製した試験物質溶液をFDSSμCELL(浜松ホトニクス)を用いて50 μl/wellでプレー
トに添加し、刺激後120秒間までの蛍光値を測定した。刺激前後の蛍光値(Ex480:Em540)を測定することで、刺激物の添加によりGPR120とGタンパク質を介して引き起こされる細胞内遊離カルシウムイオン濃度の変化を定量的に測定した。蛍光値の測定および解析には、FDSSμCELL付属のソフト(FDSS7000EX)を用いて行い、ΔF/F値は下記式により算出し
、それを評価に用いた。ΔF/F値は添加した試験物質に対する細胞の応答の強さを示す。
ΔF/F=(刺激後の蛍光最大値-刺激後の蛍光最小値)/刺激前の蛍光値
得られたΔF/F値を用いて各試験物質に対するEC50値を解析ソフトGraphpad Prism 7(Graphpad)を用いて算出した。EC50値は最大反応の50%を生じさせる試験物質の濃度である。すなわちEC50値が低いほど試験物質を検出する感度が高く、より低濃度領域で試験物質できることを示す。
試験物質としては、以下の3種のGPR120アゴニストを用いた:リノール酸(linoleic acid;WAKO)、compound 1(4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid:TUG-891、Mol Pharmacol.84(5):710-25.)、compound 2(2-[3-fluoro-(pyridin-3-yloxy)phenyl]-1,2-benzisothiazol-3(2H)-one-1,1-dioxide;WO2010104195のExample 9)。compound 1およびcompound 2は、自社で合成して用いた。
GPR120アゴニストに対する細胞の応答(ΔF/F値)を図1~3に示す。EC50値を表1に
示す。GPR113単独発現細胞の場合、いずれのGPR120アゴニストについても、GPR120アゴニストの濃度の増大に伴うΔF/F値の増大がほとんど認められなかった。すなわち、GPR113
単独発現細胞は、いずれのGPR120アゴニストに対しても応答を示さなかった。一方、GPR120単独発現細胞、GPR120/GPR113共発現細胞、およびGPR120/mGluR4共発現細胞の場合、いずれのGPR120アゴニストについても、GPR120アゴニストの濃度の増大に伴うΔF/F値の増
大が認められた。すなわち、GPR120単独発現細胞、GPR120/GPR113共発現細胞、およびGPR120/mGluR4共発現細胞は、いずれのGPR120アゴニストに対しても応答を示した。GPR120/mGluR4共発現細胞は、いずれのGPR120アゴニストに対しても、GPR120単独発現細胞と同程
度の応答を示した。一方、GPR120/GPR113共発現細胞は、いずれのGPR120アゴニストに対
しても、GPR120単独発現細胞およびGPR120/mGluR4共発現細胞と比較して、より低濃度で
応答を示し、すなわち、より低いEC50値を示した。このように、GPR113は単独ではGPR120アゴニストに応答しないにも関わらず、GPR120とGPR113を組み合わせることで、GPR120を単独で用いる場合よりも高い感度でGPR120アゴニストを検出することが可能であることが示された。GPR120アゴニストは、油脂の口腔内感覚を増強する物質として機能してよい。すなわち、GPR120とGPR113を組み合わせることで、高い感度で油脂の口腔内感覚を増強する物質を検出することが可能であることが示された。
Figure 0007326832000001
〔配列表の説明〕
配列番号1:ヒトのGPR120遺伝子(cDNA)の塩基配列
配列番号2:ヒトのGPR120タンパク質のアミノ酸配列
配列番号3:ヒトのGPR113遺伝子(cDNA)の塩基配列
配列番号4:ヒトのGPR113タンパク質のアミノ酸配列
配列番号5~10:プライマー
配列番号11:ヒトのmGluR4遺伝子(cDNA)の塩基配列

Claims (20)

  1. 目的物質をスクリーニングする方法であって、
    下記工程(A)~(C):
    (A)GPR120/GPR113と試験物質を接触させる工程;
    (B)前記試験物質に対する前記GPR120/GPR113の応答を測定する工程;および
    (C)前記応答に基づいて前記試験物質を目的物質として同定する工程;
    を含み、
    前記応答が認められた場合に、前記試験物質を目的物質として同定し、
    前記目的物質が、油脂の口腔内感覚を増強する物質であり、
    前記GPR120/GPR113が、GPR120タンパク質およびGPR113タンパク質の組み合わせである
    、方法。
  2. 前記応答が、前記GPR120/GPR113と前記試験物質との結合、または前記試験物質による
    前記GPR120/GPR113の活性化である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記GPR120/GPR113が、細胞、細胞膜、人工脂質二重膜小胞、または人工脂質二重膜に
    担持された形態で使用される、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記GPR120/GPR113が、細胞に担持された形態で使用される、請求項1~3のいずれか
    1項に記載の方法。
  5. 前記細胞が、動物細胞である、請求項3または4に記載の方法。
  6. 前記細胞が、Gタンパク質のαサブユニットを有する、請求項3~5のいずれか1項に
    記載の方法。
  7. 前記αサブユニットが、GαsまたはGαqである、請求項6に記載の方法。
  8. 前記工程(B)および(C)が、それぞれ、下記工程(B1)および(C1)により実施される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法:
    (B1)前記工程(A)を実施した際の前記GPR120/GPR113の活性化の程度D1を測定す
    る工程;
    (C1)前記活性化の程度D1に基づいて前記試験物質を目的物質として同定する工程。
  9. 前記工程(C1)が、下記工程(C2)により実施される、請求項8に記載の方法:
    (C2)前記活性化の程度D1と対照条件における前記GPR120/GPR113の活性化の程度D
    2との差に基づいて前記試験物質を目的物質として同定する工程。
  10. 前記対照条件が、下記条件(C2-1)または(C2-2)である、請求項9に記載の方法:
    (C2-1)前記GPR120/GPR113と前記試験物質を接触させない条件;
    (C2-2)前記GPR120/GPR113と前記試験物質を接触させる条件であって、該試験物質
    の濃度が前記工程(A)における該試験物質の濃度よりも低い濃度である条件。
  11. さらに、前記活性化の程度D2を測定する工程を含む、請求項9または10に記載の方法。
  12. 前記活性化の程度D1が前記活性化の程度D2よりも高い場合に、前記試験物質を目的物質として同定する、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記応答が、細胞内カルシウム濃度または細胞内cAMP濃度を指標として測定される、請求項3~12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記GPR120タンパク質が、下記(A)または(B)に記載のタンパク質である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法:
    (A)哺乳類のGPR120タンパク質;
    (B)2種またはそれ以上の哺乳類のGPR120タンパク質のキメラタンパク質。
  15. 前記GPR120タンパク質が、下記(a)、(b)、または(c)に記載のタンパク質である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法:
    (a)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、GPR113タンパク質との組み合わせでリノール酸、4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid、または2-[3-fluoro-(pyridin-3-yloxy)phenyl]-1,2-benzisothiazol-3(2H)-one-1,1-dioxideに対する応答性を有するタンパク質;
    (c)配列番号2に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、GPR113タンパク質との組み合わせでリノール酸、4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid、または2-[3-fluoro-(pyridin-3-yloxy)phenyl]-1,2-benzisothiazol-3(2H)-one-1,1-dioxideに対する応答性を有するタンパク質。
  16. 前記GPR113タンパク質が、下記(A)または(B)に記載のタンパク質である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法:
    (A)哺乳類のGPR113タンパク質;
    (B)2種またはそれ以上の哺乳類のGPR113タンパク質のキメラタンパク質。
  17. 前記GPR113タンパク質が、下記(a)、(b)、または(c)に記載のタンパク質である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法:
    (a)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
    (b)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸残基の置換、欠失
    、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、GPR120タンパク質との組み合わせでリノール酸、4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid、または2-[3-fluoro-(pyridin-3-yloxy)phenyl]-1,2-benzisothiazol-3(2H)-one-1,1-dioxideに対する応答性を有するタンパク質;
    (c)配列番号4に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、GPR120タンパク質との組み合わせでリノール酸、4-[(4-Fluoro-4'-methyl[1,1'-biphenyl]-2-yl)methoxy]-benzenepropanoic acid、または2-[3-fluoro-(pyridin-3-yloxy)phenyl]-1,2-benzisothiazol-3(2H)-one-1,1-dioxideに対する応答性を有するタンパク質。
  18. 目的物質が、GPR120アゴニストである、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
  19. さらに、同定された目的物質の油脂の口腔内感覚を増強する機能を評価する工程を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記評価が、官能評価によって実施される、請求項19に記載の方法。
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