実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における炊飯器の全体構成を示す縦断面図である。上部が開口された炊飯器本体1内に、コイルベース2が固着されている。コイルベース2の外壁部には、本発明の加熱手段に相当する電磁誘導加熱用の加熱コイル3が設けられている。加熱コイル3は、コイルベース2の下面及びコイルベース2の下面から側面に向かうコーナー部に設けられており、高周波電流が供給されるようになっている。コイルベース2の底部中央には孔が形成され、この孔に貫通して本発明の温度検出手段に相当する温度センサ4が設けられている。
コイルベース2内には、内鍋5が着脱自在に収納されるようになっており、内鍋5が収納時には、内鍋5の底面略中央部に温度センサ4が接触するようになっている。また、コイルベース2の側面には、本発明の加振手段に相当する加振装置6が設けられている。なお、本実施形態1ではコイルベース2の側面に加振装置6を設けたが、これに限らず内鍋5を加振できる場所であれば良い。例えばコイルベース2に穴を開けて内鍋5に直接接するようにしても良いし、別の部位に取り付けてもかまわない。
内鍋5の上部開口は、内蓋7により覆われている。内蓋7はこれを覆う外蓋8と着脱可能に連結され、外蓋8は炊飯器本体1に開閉自在にヒンジ結合されるようになっている。内蓋7及び外蓋8には、これらを貫通する蒸気口が設けられ、この蒸気口に炊飯時に蒸気とともに御粘が吹出すのを防止する弁体9が取り付けられている。
炊飯器本体1の上部には、外蓋8に覆われない位置に操作パネル10が設けられており、操作パネル10の下方には、制御基板11が設けられている。この制御基板11には、本発明の制御手段に相当する制御装置12が備えられている。
炊飯を行いたい場合は、所定量の米を内鍋5内に入れ、次いで米量に応じた水を入れる。その後、内鍋5をコイルベース2内に収納し、外蓋8を閉める。そして、操作パネル10の炊飯スイッチ(図示せず)を押せば、炊飯が開始される。制御装置12では、操作パネル10の炊飯スイッチが押されると、制御装置12に搭載されているマイコン(図示せず)に登録されている制御プログラムに従って炊飯処理を行う。制御装置12は、加熱コイル3に高周波電流を通電し、高周波磁界を発生させ、加熱コイル3と内鍋5の加熱コイル対向面を励磁させ、内鍋5底面に渦電流を誘起する。これにより、この渦電流と内鍋5の持つ抵抗によりジュール熱を生じ、内鍋5の底面が発熱して加熱が行われる。また、加振装置6に通電して内鍋5側面を加振することで、内鍋5に入れられた米と水を撹拌する。制御装置12は、温度センサ4によって計測された内鍋5底面温度と制御装置12に搭載されているマイコンに組み込まれた時間測定手段(図示せず)の情報をもとに、制御プログラムに従って加熱コイル3への高周波電流の通電のオンオフ等の調整を行い、内鍋5の温度を制御する。また、加振装置6への通電のオンオフ等の調整を行い、加振のオンオフを制御する。
次に炊飯工程について説明する。炊飯スイッチ(図示せず)が押され炊飯が開始されると、予熱工程、沸騰工程、及び蒸らし工程を順次経て炊飯は終了する。予熱工程は約15分から20分程度の時間を要する。内鍋5内の水温を60℃程度まで上げて、その後内鍋5内の水温を一定に制御する工程である。米に水を吸わせる作用、及び糖化酵素の働きを活性化させ糖度を増加させる作用がある。沸騰工程は、内鍋5内の水温を上げて水を沸騰状態にし、内鍋5内の水がなくなるまで沸騰を継続させる工程である。米のでんぷんをアルファ化させる作用がある。内鍋5内の水がなくなると、それまで水の蒸発潜熱で消費されていた熱が内鍋5の温度を上昇させることに使われるようになり、急激に内鍋5の温度が上昇する。これをドライアップと呼び、鍋底の温度センサ4でこの温度上昇をとらえて沸騰工程を終了とし、以降蒸らし工程に入る。そして10分から15分程度蒸らした後、炊飯を終了する。各工程では内鍋5の温度が最適な値となるよう、制御装置12により制御されている。
沸騰工程ででんぷんをアルファ化させおいしいご飯とするためには、米の芯まで十分に水が含水していることが重要である。沸騰工程に入ってしまうと、米表面が糊化するため米内への吸水は難しくなる。そのため、予熱工程で米の芯まで十分に吸水させることが重要である。つまり予熱工程の吸水具合によりおいしさが異なってくることとなる。
また、予熱工程中において、内鍋5内に入れられた米や水の温度ムラもご飯のおいしさに関与する要素である。予熱工程中の糖化酵素の働きにより、ご飯のおいしさの一要素である糖が生成されるが、この糖化酵素が最も活性化する温度帯域は概40℃から60℃、特に活性化する温度は55℃から60℃とされており、また、60℃を超えると糖化酵素が失活するとされている。内鍋5内に入れられた米や水の温度ムラが大きいと、内鍋5内の場所によって糖化酵素が活性化する温度帯域にとどまる時間が異なる。その結果、内鍋5内の場所によってご飯の甘さが異なったりすることがある。つまり、予熱工程中において、内鍋5内に入れられた米や水の温度ムラを極力抑えることで、糖化酵素が十分に働きおいしいご飯を炊くことができる。
このように、予熱工程での米の含水率向上及び内鍋5内に入れられた米や水の温度ムラの抑制が、おいしいご飯を炊くために重要な要素となっていることがわかる。従来から、これらを改善させるには、予熱工程で超音波振動子を用いた高周波の加振装置で内鍋5を加振することが効果的であるとされている。しかし、超音波振動子を用いた高周波の加振装置は、超音波振動子や超音波振動子を駆動するための電源部が炊飯器の原価に対し高価となり、炊飯器を安価で提供できないという問題点があった。また、超音波振動子を用いた高周波の加振装置は周波数が高く振幅が小さいため、内鍋5の加振を目視や体感によって確認するのが困難であり、目に見えたり又は体感できるようなわかりやすい商品訴求が難しいという問題点があった。
そこで、加振装置12の加振周波数を商用電源周波数とした。この利点は、高価な電源部を必要とせず直接コンセントから得られる商用電源を用いることができるので、低コストな炊飯器を提供できる点である。また、加振周波数が50[Hz]または60[Hz]といった低周波による振動なので、少ない電力で大きな振幅を内鍋5に与えることができ、目に見えたり又は体感できるような体感でわかりやすい商品訴求ができる点である。
図2は、本実施形態1における加振装置6の一例を示す断面模式図である。加振装置6のケース13は、例えば縦長の略直方体の形状をしており、このケース13の上面内側には振動子14aが設けられている。この振動子14aは、弾性体であるばね15a及び永久磁石16で構成されている。ばね15aの一端はケース13の上面内側に固定されており、他端には永久磁石16が下向きに取り付けられている。一方、ケース13の下面内側には、永久磁石16と対向して電磁石17が設けられている。この電磁石17はコイル18と鉄芯19で構成されており、コイル18には商用電源から交流電流を供給することができる。なお、商用電源とは商用電源相当を意味するものであり、自家発電等も含む概念である。
コイル18に交流電流が供給されると、電磁石17の磁極は商用電源周波数でS極とN極とに周期的に切り替わる。一方、永久磁石16の磁極はS極又はN極のどちらか一方であり変化しない。このため、永久磁石16と電磁石17の間では、同じ磁極による反発と異なる磁極による吸引を、商用電源周波数で繰り返すこととなる。その結果、ばね15aは商用電源周波数で伸縮することとなり、振動子14aが商用電源周波数で振動する。すなわち加振装置6が商用電源周波数で内鍋5を加振することとなる。
なお、本実施形態1では、交流電流の全波を永久磁石16のコイル18に供給したが、交流電流の半波を電磁石17のコイル18に供給しても加振装置6を商用電源周波数で振動させることが可能である。この場合、永久磁石16と電磁石17の間では、同じ磁極による反発と反発しない状態、又は異なる磁極による吸引と吸引しない状態を商用電源周波数で繰り返すこととなる。
ところで、日本国内には50[Hz]と60[Hz]の2つの商用電源周波数があり、どちらの周波数で炊飯器が使用されるかはわからない。商用電源周波数が50[Hz]の地域では、加振装置6は50[Hz]で加振することとなる。商用電源周波数が60[Hz]の地域では、加振装置6は60[Hz]で加振することとなる。どちらの商用電源周波数で炊飯器が使用されても性能が変わらないように工夫しなければならないが、加振装置6の振動子14aはばね15aと重りとしても作用する永久磁石16で構成されているため共振周波数を持ち、商用電源周波数の違いによって振動子14aの振幅、つまり加振装置6の加振効果が異なることとなる。
図3は、本実施形態1における振動子14aの共振周波数と振幅との関係を示す特性図である。縦軸の振幅は、商用電源周波数50[Hz]の交流電源を電磁石17のコイル18に供給した状態(つまり加振周波数50[Hz]のとき)における、共振周波数が50[Hz]である振動子14aの振幅を10とした相対値で表している。この振動子14aの振幅は、電磁石17の極性変化に伴う吸引反発力を外力とした商用電源周波数による強制振動とみなし、以下に示す数1から数4によって求めた。
νを外力による振動数(商用電源周波数つまり加振周波数)、ω0を振動子14aの共振周波数、mを永久磁石16の質量、kをばね15aのばね定数、fを外力(つまり永久磁石16と電磁石17との吸引反発力)、γを空気の抵抗力とし、
とすると、νによる振幅A(ν)は、
で与えられる。図3は、ν、m、f、γに具体的数値(例えばν=50[Hz]、m=10[g]、k=[10N/mm]、f=1[N]、γ=0.000018[kg・s/m2 ])を単位系を合わせて代入し、振動子14aの共振周波数ω0(ばね15aのばね定数k)をパラメータとして数値を変更しながら計算した後、商用電源周波数50[Hz]の交流電源を電磁石17のコイル18に供給した状態(つまり加振周波数50[Hz]のとき)における、共振周波数が50[Hz]である振動子14aの振幅が10となるように正規化したものである。
図4は、図3を表形式にまとめたものである。図4において、左から第1列目は振動子14aの共振周波数である。第2列目は、各共振周波数の振動子14aにおける、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅である。第3列目は、各共振周波数の振動子14aにおける、加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅であり、こちらも同様に商用電源周波数50[Hz]の交流電源を電磁石17のコイル18に供給した状態(つまり加振周波数50[Hz]のとき)における、共振周波数が50[Hz]である振動子14aの振幅が10となるように正規化している。第4列目及び第5列目は、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅と加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅との比を示している。すなわち、第4列目は、加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅に対する加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅の大きさを示しており、また第5列目は、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅に対する加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅の大きさを示している。
例えば、共振周波数が48[Hz]の振動子14aに注目すると、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅の大きさは、加振周波数と共振周波数が近いため大きな振幅(正規化値で3.43)が得られる。しかし、加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅の大きさは、加振周波数と共振周波数が離れるため、それほど大きな振幅(正規化値で0.55)とはならない。また、加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅に対する加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅の大きさは6.2倍となる。一方、共振周波数が55[Hz]の振動子14aに注目すると、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅の大きさは正規化値で1.35となり、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅の大きさは正規化値で1.23となる。また、加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅に対する加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅の大きさは1.1倍であり、ほぼ等しい振幅であることがわかる。
図5は、本実施形態1における振動子14aの振幅の大きさと米の含水率との関係図である。この図は、加振装置6で内鍋5を加振しながら炊飯したときの、予熱工程終了後の米の含水率を示す。ある振動子14aの振幅の大きさを基準とし(振幅1)、振幅1及び振幅1/2のときの米の含水率を測定した。また、内鍋5を加振せずに炊飯したとき(振幅0)の、予熱工程終了後の米の含水率も測定した。この図から、振幅の大きさによって吸水率に差が出ることがわかる。また、振幅1のときと振幅1/2のときの米の含水率の差は小さいが、振幅1及び振幅1/2のときと振幅0のときの米の含水率の差は大きいことがわかる。
図6は、本実施形態1における振動子14aの振幅の大きさとご飯の食味との関係図である。この図は加振装置6で内鍋5を加振しながら炊飯したときのご飯の食味を示す。図5と同様にある振動子14aの振幅の大きさを基準とし(振幅1)、振幅1及び振幅1/2のときのご飯のおいしさを食味評価した。また、内鍋5を加振せずに炊飯したとき(振幅0)の、ご飯のおいしさも食味評価した。食味評価の方法としては、複数人の被験者にそれぞれのご飯を食べ比べしてもらい、ご飯のおいしさを5段階(5点満点)で評価してもらった。この図から、振幅1のときと振幅1/2のときのご飯の食味は小さいが、振幅1及び振幅1/2のときと振幅0のときのご飯の食味の差は大きいことがわかる。
ご飯は、十分に吸水され加熱されることでお米の芯までアルファ化が進み、おいしいご飯が炊ける。つまり、吸水率の高い方がおいしいご飯が炊ける。図5及び図6より、振幅が1/2以上であれば含水率も食味も差は小さく、許容できる範囲内であることがわかる。50[Hz]又は60[Hz]のどちらの商用電源周波数の地域で炊飯してもご飯の炊きあがりをほぼ同じにするためには、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅と加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅の比が1/2倍〜2倍以内とすれば良いことがわかる。
図3より、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅と加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅との比が1/2倍〜2倍以内に収まる範囲は、振動子14aの共振周波数が55[Hz]付近、30[Hz]付近以下の範囲、及び70[Hz]付近以上の範囲であることがわかる。図4を用いてもう少し細かく説明する。
図4において、網掛けをしていない部分が、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅と加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅との比が1/2倍〜2倍以内に収まる範囲である。まず、振動子14aの共振周波数が53.5[Hz]〜56.9[Hz]の範囲が、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅と加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅との比が1/2倍〜2倍以内に収まる範囲となっている。厳密に53.5[Hz]から56.9[Hz]の範囲内でなければならないということはなく、このレベルの周波数は通常1[Hz]単位で扱うことが多いので、55[Hz]に対し±2[Hz](53[Hz]から57[Hz])の範囲にあれば、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅と加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅との比は約1/2倍〜2倍に収まる範囲と考えられる。
なお、この範囲の共振周波数における振動子14aの振幅は正規化値で0.96から1.94となり、後述する他の範囲に比べて振幅が大きいことがわかる。これは、より効率的に振幅が得られることを意味し、もっとも良い位置である。ただし、振動子14aの共振周波数が設計値から外れると大きく振幅比が狂うことになるので、振動子14aの構成要素の寸法精度等に注意を要する必要がある。
他の加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅と加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅との比が1/2倍〜2倍に収まる範囲は、低周波側では38.1[Hz]以下、また高周波側では68.2[Hz]以上となっている。この値も、このレベルの周波数は通常1[Hz]単位で扱うことが多いので、39[Hz]以下または68[Hz]以上であれば、加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅と加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅との比は約2倍以内に収まる範囲と考えられる。これら加振周波数50[Hz]時の振動子14aの振幅と加振周波数60[Hz]時の振動子14aの振幅との比が1/2倍〜2倍に収まる範囲に振動子14aの共振周波数を設定すれば、50[Hz]又は60[Hz]のどちらの商用電源周波数の地域で炊飯しても、ご飯の炊きあがりをほぼ同じにすることができる。
なお、この範囲の共振周波数における振動子14aの振幅は正規化値で0.68以下となり、先に説明した共振周波数55±2[Hz]の範囲よりも振幅が小さいことがわかる。これは、若干加振装置6の加振効果が落ちることを意味する。しかし、振動子14aの構成要素の寸法誤差等から設計値が若干外れても、振幅比への影響は少なく大きな値の変化にはならない。したがって、寸法精度の低い振動子14aの構成要素を使用することができコストを抑制できる利点がある。また、共振周波数39[Hz]以下の場合はより低周波であり音が聞こえにくい利点がある。共振周波数68[Hz]以上の場合は、振動子14aの構成要素であるばね15aのばね定数kが大きくなるのでばねが硬くなり、振動子14aはふらつかずに安定して振動するという利点もある。
図7は、本実施形態1における加振装置6の別の一例を示す斜視図である。本実施形態1では、図2に示す構成の加振装置6を用いて説明してきたが、これはあくまでも一例であり、図7に示す加振装置6を用いても同様の効果を得ることができる。加振装置6のケース13は、例えば略直方体の形状をしており、このケース13内の上側には振動子14bが設けられている。この振動子14bは、弾性体である梁20及び永久磁石16で構成されている。梁20は、一端はケース13の側面内側に固定され水平に設けられている。梁20の他端には永久磁石16が下向きに取り付けられている。一方、ケース13の下面内側には、永久磁石16と対向して電磁石17が設けられている。この電磁石17はコイル18と鉄芯19で構成されており、コイル18には商用電源から交流電流を供給することができる。
コイル18に交流電流が供給されると、電磁石17の磁極は商用電源周波数でS極とN極とに周期的に切り替わる。一方、永久磁石16の磁極はS極又はN極のどちらか一方であり変化しない。このため、永久磁石16と電磁石17の間では、同じ磁極による反発と異なる磁極による吸引を、商用電源周波数で繰り返すこととなる。その結果、ばね15aは商用電源周波数で横方向に振動することとなり、振動子14が商用電源周波数で振動する。すなわち加振装置6が商用電源周波数で内鍋5を加振することとなる。梁20は横方向に振動するので、永久磁石16と電磁石17がぶつかる心配がなく、永久磁石16と電磁石17の距離をぎりぎりまで詰めて加振装置6を設計することができる。したがって、永久磁石16も電磁石17も磁力の小さいもので構成できるので加振装置6のコストを抑制でき、さらに加振装置6の小型化も可能となる利点がある。
なお、本実施形態1では、交流電流の全波を永久磁石16のコイル18に供給したが、交流電流の半波を電磁石17のコイル18に供給しても加振装置6を商用電源周波数で振動させることが可能である。この場合、永久磁石16と電磁石17の間では、同じ磁極による反発と反発しない状態、又は異なる磁極による吸引と吸引しない状態を商用電源周波数で繰り返すこととなる。また、ケース13を設けず、振動子14bを例えばコイルベース2の側面に直接取り付ける形態としても良い。
図8は、本実施形態1における加振装置6のさらに別の一例を示す断面模式図である。加振装置6のケース13は、例えば縦長の略円筒形の形状をしており、このケース13の上面内側には振動子14cが設けられている。この振動子14cは、ダイヤフラム21及び永久磁石16で構成されている。このダイヤフラム21は例えば弾性体であるゴム製であり、ダイヤフラム21の周縁はケース13の側面内側に固定されている。また、ダイヤフラム21の略中央には永久磁石16が下向きに取り付けられている。一方、ケース13の下面内側には、永久磁石16と対向して電磁石17が設けられている。この電磁石17はコイル18と鉄芯19で構成されており、コイル18には商用電源から交流電流を供給することができる。
コイル18に交流電流が供給されると、電磁石17の磁極は商用電源周波数でS極とN極とに周期的に切り替わる。一方、永久磁石16の磁極はS極又はN極のどちらか一方であり変化しない。このため、永久磁石16と電磁石17の間では、同じ磁極による反発と異なる磁極による吸引を、商用電源周波数で繰り返すこととなる。その結果、ダイヤフラム21は商用電源周波数で振動することとなり、振動子14aが商用電源周波数で振動する。すなわち加振装置6が商用電源周波数で内鍋5を加振することとなる。振動子をゴム製のダイヤフラム21及び永久磁石16で構成することにより、加振装置6のコストを抑えて、かつさびに強い加振装置6を得ることができる利点がある。
なお、商用電源電圧は全波で駆動した例で示しているが、半波で加振しても同様の効果を得る。この場合は、磁石と電磁石の強い吸引−磁石と電磁石の鉄芯との弱い吸引、あるいは、磁石と電磁石の強い反発−磁石と鉄芯との弱い吸引、を繰り返すことなり、結局商用周波数で加振されることになる。
以上説明してきた加振装置6は炊飯器に1つだけ取り付ける例として説明してきたが、複数個設けても良い。例えば同じ加振装置6を2個取り付けることで、より内鍋5加振することができ、米の含水率や食味の向上に効果的である。また、振幅の小さい加振装置6を複数個付けることで、1個あたりの加振装置6を小型化でき、1個では設置できなかった隙間にも設置できるようになる。この結果、温度の低い部分への加振装置6の設置も可能となるので、ケース13を耐熱性の低い低コストの材質で製作可能となり、炊飯器の小型化やコストダウンが可能となる。
このように構成された炊飯器においては、加振装置6の加振周波数を商用電源周波数としているので、高価な電源部を必要とせず直接コンセントから得られる商用電源を用いることができるため、低コストでおいしいご飯を提供できる炊飯器を得ることができる。また、低周波による振動を与えることにより、目に見えたり又は体感できるようなわかりやすい商品訴求ができる炊飯器を得ることができる。
また、加振周波数50[Hz]時の振動子14b及び振動子14cの振幅と、加振周波数60[Hz]時の振動子14b及び振動子14cの振幅の比が1/2倍〜2倍以内となっているので、50[Hz]又は60[Hz]のどちらの商用電源周波数の地域で炊飯してもご飯の炊きあがりをほぼ同じにすることができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、50[Hz]又は60[Hz]のどちらの商用電源周波数の地域で炊飯しても、ご飯の炊きあがりをほぼ同じにするため、加振周波数50[Hz]時の振動子14b及び振動子14cの振幅と、加振周波数60[Hz]時の振動子14b及び振動子14cの振幅との比が約2倍以内に収まる範囲に振動子の共振周波数を設定した。振動子の共振周波数がそれぞれ例えば50[Hz]及び例えば60[Hz]となる複数の加振装置を炊飯器に設けても、本発明を実施することが可能である。なお、本実施形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一機能については同一の符号を用いて述べることとする。
図9は、本実施形態2における加振装置6の一例を示す断面模式図である。加振装置6は、本発明の第1の加振手段に相当する加振装置6aと本発明の第2の加振手段に相当する加振装置6bにより構成されている。加振装置6aのケース13aは、例えば縦長の略円筒形の形状をしており、このケース13aの上面内側には本発明の第1の振動子に相当する振動子14dが設けられている。この振動子14dは、共振周波数が50[Hz]の振動子であり、本発明の第1の弾性体に相当するばね15b及び本発明の第1の永久磁石に相当する永久磁石16aで構成されている。ばね15bの一端はケース13aの上面内側に固定されており、他端には永久磁石16aが下向きに取り付けられている。一方、ケース13aの下面内側には、永久磁石16と対向して本発明の第1の電磁石に相当する電磁石17aが設けられている。この電磁石17aはコイル18と鉄芯19で構成されており、コイル18には商用電源から交流電流を供給することができる。
加振装置6bのケース13bは、例えば縦長の略直方体の形状をしており、このケース13bの上面内側には本発明の第2の振動子に相当する振動子14eが設けられている。この振動子14eは、共振周波数が60[Hz]の振動子であり、本発明の第2の弾性体に相当するばね15c及び本発明の第2の永久磁石に相当する永久磁石16で構成されている。ばね15cの一端はケース13bの上面内側に固定されており、他端には永久磁石16bが下向きに取り付けられている。一方、ケース13bの下面内側には、永久磁石16bと対向して本発明の第2の電磁石に相当する電磁石17bが設けられている。この電磁石17bはコイル18と鉄芯19で構成されており、コイル18には商用電源から交流電流を供給することができる。
これら加振装置6a及び加振装置6bをそれぞれ例えばコイルベース2に設置するが、並べて接近させて設置しても良いし、別々に設置しても良い。これら加振装置6a及び加振装置6bを並べて設置するか、または上方から見てコイルベース2の左右対称位置に設置することで、加振箇所が同一箇所又は対称箇所となるのでバランスが良く望ましい。しかし、設置スペースの制約からばらばらに設置することになっても加振効果には変わりは無い。
炊飯器は50[Hz]又は60[Hz]のどちらの商用電源周波数で使用されるかわからないが、このように加振装置6a及び加振装置6bをそれぞれ例えばコイルベース2に設置することで、どちらの商用電源周波数で使用されても、振動子14d又は振動子14eの共振周波数と等しいので、共振周波数での大きな振幅を得ることができる。図4より、加振周波数50[Hz]時の振動子14dの振幅の大きさは正規化値で10となり、加振周波数60[Hz]時の振動子14eの振幅の大きさは正規化値で8となる。したがって、加振周波数50[Hz]時の振動子14dの振幅と加振周波数60[Hz]時の振動子14eの振幅との比は2倍以内に収まる。
このように構成された炊飯器においては、50[Hz]又は60[Hz]のどちらの商用電源周波数の地域で炊飯してもご飯の炊きあがりをほぼ同じにすることができる。また、どちらの商用電源周波数で使用されても、振動子14d又は振動子14eの共振周波数と等しいので、共振周波数での大きな振幅を得ることができ、炊飯器の小型化やコストダウンが可能となる。
なお、本実施形態2では、振動子14d及び振動子14eの構成要素としてそれぞればね15b及びばね15cを用いたが、図7に示すような梁を構成要素とする振動子としてもよいし、図8に示すようなダイヤフラムを用いた振動子としてもよい。
実施の形態3.
実施の形態2では、加振装置6を、共振周波数がそれぞれ例えば50[Hz]及び例えば60[Hz]となる2つの加振装置6a及び加振装置6bで構成した。1つの加振装置6に共振周波数がそれぞれ例えば50[Hz]及び例えば60[Hz]となる振動子を設けても、本発明を実施することが可能である。
図10は、本実施形態3における加振装置6の一例を示す断面模式図である。加振装置6のケース13は、例えば縦長の略円筒形の形状をしており、ケース13内は仕切板22a及び仕切板22bで仕切られている。つまり、ケース13内は、仕切板22a及び仕切板22bによって仕切られることで、3つの空間が形成されている。なお、仕切板22a及び仕切板22bのかわりにつめ等で支える形態としても良く、その場合は3つの空間は閉じたものとはならないが、動作に変わりはない。ケース13内の下段の空間には、下面内側に本発明の第1の振動子に相当する振動子14fが設けられている。この振動子14fは、共振周波数が50[Hz]の振動子であり、本発明の第1の弾性体に相当するばね15d及び本発明の第1の永久磁石に相当する永久磁石16aで構成されている。ばね15dの一端はケース13の下面内側に固定されており、他端には永久磁石16aが上向きに取り付けられている。ケース13内の上段の空間には、上面内側に本発明の第2の振動子に相当する振動子14gが設けられている。この振動子14gは、共振周波数が60[Hz]の振動子であり、本発明の第2の弾性体に相当するばね15e及び本発明の第2の永久磁石に相当する永久磁石16bで構成されている。ばね15eの一端はケース13の上面内側に固定されており、他端には永久磁石16bが下向きに取り付けられている。ケース13内の中段の空間には、永久磁石16a及び永久磁石16bとそれぞれ対向して電磁石17が設けられている。この電磁石17はコイル18と鉄芯19で構成されており、コイル18には商用電源から交流電流を供給することができる。
コイル18に交流電流が供給されると、永久磁石16a側の電磁石17の磁極は商用電源周波数でS極とN極とに周期的に切り替わる。また、永久磁石16b側の電磁石17の磁極は商用電源周波数でS極とN極とに周期的に切り替わる。一方、永久磁石16a及び永久磁石16bの磁極はS極又はN極のどちらか一方であり変化しない。このため、永久磁石16a及び永久磁石16bと電磁石17の間では、同じ磁極による反発と異なる磁極による吸引を、商用電源周波数で繰り返すこととなる。その結果、ばね15d及びばね15eは商用電源周波数で伸縮することとなり、振動子14f及び振動子14gが商用電源周波数で振動する。そして、加振装置6が商用電源周波数で内鍋5を加振することとなる。
このように構成された炊飯器においては、実施の形態2と同様に50[Hz]又は60[Hz]のどちらの商用電源周波数の地域で炊飯してもご飯の炊きあがりをほぼ同じにすることができる。また、どちらの商用電源周波数で使用されても、振動子14d又は振動子14eの共振周波数と等しいので、共振周波数での大きな振幅を得ることができ、炊飯器の小型化やコストダウンが可能となる。さらに、加振装置6に設けられる電磁石は1つのみでよいので、さらなる炊飯器の小型化やコストダウンが可能となる。
1 炊飯器本体、2 コイルベース、3 加熱コイル、4 温度センサ、5 内鍋、6 加振装置、6a,6b 加振装置、7 内蓋、8 外蓋、9 弁体、10 操作パネル、11 制御基板、12 制御装置、13 ケース、13a,13b ケース、14a〜14g 振動子、15a〜15e ばね、16 永久磁石、16a,16b 永久磁石、17 電磁石、17a,17b 電磁石、18 コイル、19 鉄芯、20 梁、21 ダイヤフラム、22a,22b 仕切板。