以下、図面を参照して、本発明に係る衝突回避支援装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係る衝突回避支援装置を、車両に搭載される運転支援装置に適用する。本実施の形態に係る運転支援装置は、自車の前方に存在する車両を検出し、前方車両を検出した場合には自車と前方車両との衝突の可能性を予測し、衝突の可能性が高い場合には前方車両との衝突を回避するための車両制御を行う。特に、本実施の形態では、運転支援装置における幾つかの機能のうち、対象の前方車両を二輪車(オートバイ)とし、右カーブにおける二輪車との衝突に対応するための右カーブ時二輪車対応機能について詳細に説明する。本実施の形態には、温度による識別方法の違いにより2つの形態がある。
二輪車は、カーブでは車体を傾けることで旋回しているので、路面摩擦係数が低いなどの条件下で運転操作が不適切だと転倒する場合がある。二輪車がカーブの内側車線を走行している場合(左側通行国では、二輪車にとっては左カーブを走行している場合)に転倒すると、二輪車では制御不能となり、外側車線(対向車線)に飛び出してゆく可能性がある。特に、転倒時にライダが二輪車から投げ出された場合、外側車線に二輪車自体とライダとが別々に飛び出してゆく虞がある。その外側車線を自車が走行している場合(左側通行国では、自車にとっては右カーブを走行している場合)、二輪車が転倒してから外側車線に飛び出してくるまでは僅かな時間であるが、自車では二輪車とライダとを判別し、少なくともライダとの衝突を極力回避する必要がある。しかし、二輪車から投げ出されたライダはどのような形状(転がり方)かが判り難く、形状も一定でないので、画像などから二輪車とライダとを判別することは難しい。
二輪車は、エンジンやマフラが剥き出しの車両であるため、非常に高温な部位(例えば、エンジン、マフラでは100℃以上)がある。一方、ライダは、最大でも体温程度である。したがって、二輪車とライダとでは、明らかな温度差があり、温度による識別が可能である。そこで、右カーブ時二輪車対応機能では、対向車線走行中の二輪車の転倒を検出した場合に二つの物体に分離すると、各物体の温度をそれぞれ検出し、温度の高いほうの物体を二輪車とみなし、温度の低いほうの物体をライダとみなして、温度の低いほうの物体との衝突を優先的に回避するような車両制御を行う。
図1及び図2を参照して、第1の実施の形態に係る運転支援装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る運転支援装置の構成図である。図2は、右カーブでの自車と対向車線の二輪車との位置関係を示す図である。
運転支援装置1では、幾つかの機能のうち右カーブ時二輪車対向機能が働いている場合、右カーブの対向車線に二輪車の転倒し、二体に分離したことを検出すると、その各物体と自車とが衝突する可能性が高い場合には各物体の温度を検出し、温度の低いほうの物体を優先して衝突回避のための車両制御を行う。特に、運転支援装置1では、各物体に高温の部位があるか否かでライダか二輪車かを判別する。そのために、運転支援装置1は、カメラ10、ナビゲーションシステム11、車速センサ12、加速度センサ13、舵角センサ14、遠赤外線サーモグラフィ15、ブレーキECU[Electronic Control Unit]20、操舵ECU21、運転支援ECU31を備えており、運転支援ECU31に二輪車転倒進路計算部33、自車進路計算部34、衝突確率計算部35、二輪車温度検出部36a、自車制御判定部37aが構成される。
なお、第1の実施の形態では、カメラ10及び二輪車転倒進路計算部33が特許請求の範囲に記載する二輪車転倒検出手段及び分離判定手段に相当し、二輪車転倒進路計算部33が特許請求の範囲に記載する二輪車側進路予測手段に相当し、自車進路計算部34が特許請求の範囲に記載する自車進路予測手段に相当し、遠赤外線サーモグラフィ15及び二輪車温度検出部36aが特許請求の範囲に記載する温度検出手段に相当し、衝突確率計算部35及び自車制御判定部37aが特許請求の範囲に記載する衝突予測手段に相当し、自車制御判定部37a及びブレーキECU20と操舵ECU21が特許請求の範囲に記載する衝突回避支援手段に相当する。
カメラ10は、自車の前方に取り付けられる。カメラ10では、自車の前方を撮像し、その撮像した画像を取得する。そして、カメラ10では、その撮像画像のデータを示す画像信号を運転支援ECU31に送信する。カメラ10は、左右方向に撮像範囲が広く、走行している車線及び対向車線を十分に撮像可能である。
ナビゲーションシステム11は、自車の現在位置や走行方向の検出及び目的地までの経路案内などを行うシステムである。特に、ナビゲーションシステム11では、検出した現在位置や現在位置周辺の地図情報をナビ信号として運転支援ECU31に送信する。
車速センサ12は、自車の車速を検出するセンサである。このセンサとしては、例えば、車輪速を取得するためのセンサである。車速センサ12では、自車の車速を検出し、その検出した車速を示す車速信号を運転支援ECU31に送信する。
加速度センサ13は、自車の加速度(プラス値の場合には加速を示し、マイナス値の場合には減速を示す)を検出するセンサである。加速度センサ13では、自車の加速度を検出し、その検出した加速度を示す加速度信号を運転支援ECU31に送信する。なお、自車の加速度は、加速度センサを用いずに、車速センサ12で検出した車速の時間変化から求めてもよい。
舵角センサ14は、自車の舵角(ドライバがステアリングホイールから入力した操舵角、転舵輪の転舵角など)を検出するセンサである。舵角センサ14では、舵角を検出し、その検出した舵角を示す舵角信号を運転支援ECU31に送信する。
遠赤外線サーモグラフィ15は、自車の前方に取り付けられる。遠赤外線サーモグラフィ15では、遠赤外線を利用して自車の前方の所定範囲の温度を測定する。そして、遠赤外線サーモグラフィ15では、その所定範囲の温度分布情報(例えば、温度分布の画像)を示す温度分布信号を運転支援ECU31に送信する。遠赤外線サーモグラフィ15は、カメラ10での撮像範囲と同程度の範囲の温度を測定可能である。
ブレーキECU20は、各輪のブレーキ(ひいては、制動力)を制御する制御装置である。ブレーキECU20では、ドライバによるブレーキ操作などに基づいて目標減速度を設定する。そして、ブレーキECU20では、その目標減速度になるために必要な各輪のホイールシリンダ(図示せず)のブレーキ油圧を設定し、そのブレーキ油圧を目標油圧信号としてブレーキアクチュエータ(図示せず)に送信する。特に、ブレーキECU20では、運転支援ECU31からブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に示される目標減速度となるための目標油圧信号をブレーキアクチュエータに送信する。
ブレーキアクチュエータは、各輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータでは、ブレーキECU20からの目標油圧信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。目標油圧になると、自車は、ブレーキECU20で設定した目標減速度となる。
操舵ECU21は、操舵機構(ステアリングホイールから転舵輪までの機構)に付加する操舵トルクを制御する制御装置である。操舵ECU21では、ドライバによって入力されるステアリング操作による操舵トルクなどに基づいて目標操舵トルク(アシストトルク)を設定する。そして、操舵ECU21では、その目標操舵トルクを目標操舵トルク信号として操舵アクチュエータ(図示せず)に送信する。特に、操舵ECU21では、運転支援ECU31から操舵制御信号を受信すると、操舵制御信号に示される目標操舵トルクを示す目標操舵トルク信号を操舵アクチュエータに送信する。なお、操舵トルクは、例えば、プラス値の場合には右回転方向のトルクを示し、マイナス値の場合には左回転方向のトルクを示す。
操舵アクチュエータは、操舵機構に所定のトルクを付加するアクチュエータである。操舵アクチュエータでは、操舵ECU21からの目標操舵トルク信号に応じて作動し、操舵機構に所定の回転方向のトルクを付加する。
運転支援ECU31は、CPU[Central ProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、運転支援装置1を統括制御する。運転支援ECU31では、ROMに格納されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することにより、二輪車転倒進路計算部33、自車進路計算部34、衝突確率計算部35、二輪車温度検出部36a、自車制御判定部37aを構成する。
運転支援ECU31では、各種情報の検出手段10〜15から各種信号を取り入れ、その各種信号に基づいて各部33,34,35,36a,37aの処理を行う。そして、運転支援ECU31では、減速制御が必要な場合には目標減速度を設定し、目標減速度に基づいてブレーキECU20にブレーキ制御信号を送信し、また、操舵制御が必要な場合には目標操舵トルクを設定し、目標操舵トルクに基づいて操舵ECU21に操舵制御信号を送信する。
二輪車転倒進路計算部33では、カメラ10からの自車前方の撮像画像あるいはナビゲーションシステム11の現在位置周辺の地図情報に基づいて、自車が右カーブ走行中か否かを判定する。右カーブ走行中と判定した場合、二輪車転倒進路計算部33では、カメラ10からの自車前方の撮像画像に基づいて、対向車線を二輪車が走行中かを検出する。この検出方法としては、従来の方法を適用し、例えば、パターンマッチングを用いる。対向車線走行中の二輪車を検出できた場合、二輪車転倒進路計算部33では、カメラ10からの自車前方の撮像画像に基づいて、二輪車が転倒したか否かを判定する。この判定方法としては、従来の方法を適用し、例えば、パターンマッチングを用いる。
二輪車が転倒したと判定した場合、二輪車転倒進路計算部33では、カメラ10からの自車前方の撮像画像に基づいて、走行中には二輪車とライダからなる一体であった物体が転倒後に二つの物体に分離したか否かを判定する。二つの物体に分離したと判定した場合、二輪車転倒進路計算部33では、分離した各物体の位置情報(画像上の位置情報あるいは地図上での位置情報)を計算する。この位置情報は、分離した物体が占める領域を示す位置情報とする。
転倒後に二つの物体に分離したと判定した場合、二輪車転倒進路計算部33では、カメラ10からの自車前方の撮像画像の現在から過去の所定期間の時系列データ(自車から撮像できている二輪車のカーブ走行期間及び分離後の時系列データ)に基づいて、分離した二つの物体の進路をそれぞれ計算する。この進路予測方法は、従来の方法を適用する。この各予測進路には、地図上での位置情報の他に、各位置での速度情報や加速度情報なども含むものとする。予測進路は、時々刻々と更新される。
自車進路計算部34では、ナビゲーションシステム11からの自車の現在位置情報とカーブの地図情報、車速センサ12からの車速情報、加速度センサ13からの加速度情報、舵角センサ14からの舵角情報に基づいて、自車の進路を計算する。この進路予測方法は、従来の方法を適用する。この予測進路には、地図上での位置情報の他に、各位置での速度情報や加速度情報なども含むものとする。予測進路は、自車の進行に伴って時々刻々と更新される。
衝突確率計算部35では、二輪車転倒進路計算部33で計算した二つの物体の各予測進路と自車進路計算部34で計算した自車の予測進路とに基づいて、分離した二つの各物体と自車との衝突確率をそれぞれ計算する。この計算では、必要に応じて、分離した物体と自車の速度などの他の情報が利用される。衝突確率の計算方法は、従来の方法を適用する。自車の予測進路と各物体の予測進路との交点が衝突予測地点になる。衝突予測地点は、自車と各物体の進行に伴って変化し、時々刻々と更新される。衝突確率は、自車が衝突予測地点に到達するまでの時間と分離後の物体が衝突予測地点に到達するまでの時間とが近いほど高くなる。
二輪車温度検出部36aでは、遠赤外線サーモグラフィ15からの所定範囲の温度分布情報から、二輪車転倒進路計算部33で検出した分離後の二つの物体の温度をそれぞれ検出する。この際、二輪車転倒進路計算部33で検出した分離後の物体の位置情報(領域情報)に基づいて、所定範囲の温度分布情報からその物体の領域内の温度情報を抽出する。検出する物体の温度としては、物体の領域内の最高温度だけを検出してもよいし、あるいは、領域内での全温度や温度範囲などを検出してもよい。
自車制御判定部37aでは、衝突確率計算部35で計算した各物体の衝突確率が閾値より大きいか否かをそれぞれ判定する。閾値は、衝突確率に基づいて自車と分離後の物体との衝突の可能性が高いか否かを判定するための閾値であり、実験などに予め設定される。二つの物体両方の衝突確率が閾値以下の場合、自車制御判定部37aでは、二輪車が転倒し、二体に分離した場合でも衝突する可能性が低い(あるいは、可能性がない)と判断する。
一つの物体だけとの衝突確率が閾値より大きい場合、自車制御判定部37aでは、その物体と衝突する可能性が高いと判断する。そして、自車制御判定部37aでは、自車の車速、加速度、衝突予測地点までの距離などに基づいて、その物体が衝突予測地点を通過してから自車が通過するために必要な目標減速度あるいは衝突予測地点の手前で自車が停止するために必要な目標減速度を計算する。
二つの物体両方との衝突確率が閾値より大きい場合、自車制御判定部37aでは、二つの物体と衝突する可能性が高いと判断する。そして、自車制御判定部37aでは、二輪車温度検出部36aで検出した二つの物体の温度に基づいて、各物体において100℃以上の部位があるか否かをそれぞれ判定する。二輪車のエンジンやマフラなどの高温部は100℃以上あるので、二輪車とライダ(人)とを判別するために、100℃で識別する。なお、人(ライダ)は最高でも体温程度なので、体温よりも十分に高い温度であれば、100℃よりも低い温度で識別してもよい。
物体に100℃以上の部位がないと判定した場合、自車制御判定部37aでは、その物体(温度が低い方の物体)がライダであると推定する。そして、自車制御判定部37aでは、自車の車速、加速度、衝突予測地点までの距離及びその物体の予測進路などに基づいて、その物体との衝突を回避するための目標減速度又は/及び目標操舵トルクを計算する。この際、自車の状況と物体の予測進路に基づいて、減速制御と操舵制御のうちのいずれの制御が必要かあるいは両方の制御が必要かを判断する。そして、減速制御が必要と判断した場合には、上記と同様な処理により目標減速度を計算する。操舵制御が必要と判断した場合には、その物体の進路を避ける方向に自車が進行するために必要な目標操舵トルクを計算する。
物体に100℃以上の部位があると判定した場合、自車制御判定部37aでは、その物体(温度が高いほうの物体)が二輪車自体であると推定する。そして、自車制御判定部37aでは、その物体に対する衝突回避のための優先度を下げる。ここでは、温度が低いほうの物体についての衝突回避のための車両制御が優先されるので、その車両制御を優先的に行った上で、温度が高いほうの物体についての衝突回避あるいは衝突による影響軽減のための車両制御もできるのであれば行う。
図2の例では、右カーブ走行中の自車Cの前方で、ライダRと一体であった二輪車Mがカーブの内側車線を走行中に転倒し、転倒後にライダRが投げ出された場合を示している。この際、転倒後の二輪車M’は内側車線を移動したが、投げ出されたライダRは外側車線(自車Cの走行車線)の方向に飛び出した。そのため、自車Cでは、ライダRとの衝突を優先的に回避するための車両制御を行い、カーブの内側車線側に進むように右旋回するとともに減速する。この右旋回によってライダRとの衝突を確実に回避でき、減速によって二輪車M’との衝突を回避あるいは衝突による影響を軽減できる。
図1及び図2を参照して、運転支援装置1における右カーブ時二輪車対応機能での動作について説明する。特に、運転支援ECU31における処理について図3のフローチャートに沿って説明する。図3は、第1の実施の形態に係る運転支援ECUにおける右カーブ時二輪車対応機能の処理の流れを示すフローチャートである。
カメラ10では、一定時間毎に、自車の前方を撮像し、その撮像画像を示す画像信号を運転支援ECU31に送信している。ナビゲーションシステム11では、一定時間毎に、現在位置や現在位置周辺の地図情報を示すナビ信号を運転支援ECU31に送信している。車速センサ12では、一定時間毎に、自車の車速を検出し、その車速を示す車速信号を運転支援ECU31に送信している。加速度センサ13では、一定時間毎に、自車の加速度を検出し、その加速度を示す加速度信号を運転支援ECU31に送信している。舵角センサ14では、一定時間毎に、自車の舵角を検出し、その舵角を示す舵角信号を運転支援ECU31に送信している。遠赤外線サーモグラフィ15では、一定時間毎に、自車の前方の温度を測定し、その温度分布を示す温度分布信号を運転支援ECU31に送信している。運転支援ECU31では、一定時間毎に、これらの各信号を受信する。
一定時間毎に、運転支援ECU31では、自車前方の撮像画像に基づいて、右カーブを走行中に対向車線走行中の二輪車を検出できたか否かを判定する(S10)。S10にて二輪車を検出できないと判定した場合、運転支援ECU31では、今回の処理を終了し、一定時間後に次回のS10での判定を行う。
S10にて二輪車を検出できたと判定した場合、運転支援ECU31では、自車前方の撮像画像に基づいて、二輪車が転倒したか否かを判定する(S11)。S11にて二輪車が転倒していないと判定した場合、運転支援ECU31では、今回の処理を終了し、一定時間後に次回のS10での判定を行う。
S11にて二輪車が転倒したと判定した場合、運転支援ECU31では、自車前方の撮像画像に基づいて、乗員と一体で走行していた二輪車が二体に分離したか否かを判定する(S12)。S12にて二体に分離していないと判定した場合、運転支援ECU31では、今回の処理を終了し、一定時間後に次回のS10での判定を行う。
S12にて二体に分離したと判定した場合、運転支援ECU31では、自車前方の撮像画像の時系列データに基づいて、分離後の二つの物体の進路をそれぞれ予測する(S13)。また、運転支援ECU31では、自車の現在位置情報、カーブの地図情報、車速情報、加速度情報、舵角情報に基づいて自車の進路を予測する(S14)。そして、運転支援ECU31では、二つの物体の各予測進路と自車の予測進路とに基づいて、二つの各物体と自車との衝突確率をそれぞれ計算する(S15)。
運転支援ECU31では、二つの衝突確率について閾値より大きいか否かをそれぞれ判定する(S16)。S16にて両方の衝突確率が閾値以下と判定した場合、分離した二つの物体との衝突の監視を継続するために、運転支援ECU31では、今回の処理を終了し、一定時間後に次回のS10での判定を行う(S17)。
S16にて衝突確率が閾値より大きいと判定した場合、運転支援ECU31では、二つの物体両方との衝突回避が困難か否か(つまり、二つの衝突確率両方が閾値より大きいか否か)を判定する(S18)。
S18にて一つの物体だけ衝突回避が困難と判定した場合、その物体(衝突確率が高いほうの物体)との衝突を回避するために、運転支援ECU31では、自車の車速、加速度、衝突予測地点までの距離などに基づいて目標減速度を計算し、目標減速度を示すブレーキ制御信号をブレーキECU20に送信する(S19)。このブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキECU20では、ブレーキ制御信号に示される目標減速度となるための目標油圧信号をブレーキアクチュエータに送信する。この目標油圧信号を受信すると、ブレーキアクチュエータでは、目標油圧信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。目標油圧になると、自車では、制動力が作用し、目標減速度となる。これによって、自車は、減速し、分離後の物体が衝突予測地点を通過してから通過するかあるいは衝突予測地点の手前で停止する。
S18にて二つの物体両方との衝突回避が困難と判定した場合、運転支援ECU31では、遠赤外線サーモグラフィ15からの所定範囲の温度分布情報に基づいて、分離後の二つの物体の温度(特に、最高温度)をそれぞれ検出する(S20)。そして、運転支援ECU31では、各物体について100℃以上の高温の部位があるか否かを判定する(S21)。
S21にて物体には100℃以上の高温の部位がないと判定した場合、その高温部位のない物体をライダとみなし、その物体との衝突を優先して回避するために、優先運転支援ECU31では、自車の車速、加速度、衝突予測地点までの距離などに基づいて目標減速度を計算し、目標減速度を示すブレーキ制御信号をブレーキECU20に送信する、又は/及び、自車の車速、加速度、衝突予測地点までの距離やその物体の予測進路などに基づいて目標操舵トルクを計算し、目標操舵トルクを示す操舵制御信号を操舵ECU21に送信する(S22)。このブレーキ制御信号をブレーキECU20で受信すると、ブレーキECU20やブレーキアクチュエータなどでは上記と同様の動作を行う。また、この操舵制御信号を受信すると、操舵ECU21では、操舵制御信号に示される目標操舵トルクとなるための目標操舵トルク信号を操舵アクチュエータに送信する。この目標操舵トルク信号を受信すると、操舵アクチュエータでは、目標操舵トルク信号に応じて作動し、操舵機構に操舵トルクを付加する。目標操舵トルクになると、自車では、転舵輪が所定回転方向に転舵し、その物体を回避する方向に旋回する。
S21にて物体には100℃以上の高温の部位があると判定した場合、その高温部位のある物体を二輪車とみなし、運転支援ECU31では、その物体との衝突を回避するための優先度を下げる(S23)。S22での温度の低い物体との衝突を回避するための車両制御に加えて、温度の高い物体との衝突を回避するための車両制御ができる場合、運転支援ECU31では、上記と同様の処理により可能な範囲内の減速制御又は/及び操舵制御を行う。
この運転支援装置1によれば、二輪車が転倒し、二輪車とライダとが分離した場合でも、分離後の二つの物体との衝突の可能性が高いときには温度の低いほうの物体との衝突を優先的に回避するように車両制御することにより、ライダとの衝突を極力防止することができる。さらに、運転支援装置1によれば、温度の低いほうの物体との衝突を回避するための車両制御に加えて温度の高いほうの物体との衝突を回避するための車両制御もできる場合には、二輪車との衝突を防止又は衝突による影響を軽減することもできる。また、運転支援装置1によれば、分離後の一つの物体との衝突の可能性が高い場合にはその物体との衝突を回避するように減速制御することにより、その物体との衝突を極力防止することができる。
図1及び図2を参照して、第2の実施の形態に係る運転支援装置2について説明する。運転支援装置2では、第1の実施の形態に係る運転支援装置1の構成と同様の構成について、同一の符号を付与し、その説明を省略する。
運転支援装置2は、第1の実施の形態に係る運転支援装置1と比較すると、温度による識別方法だけが異なり、各物体の温度の平均値を比較してライダか二輪車かを判別する。そのために、運転支援装置2は、カメラ10、ナビゲーションシステム11、車速センサ12、加速度センサ13、舵角センサ14、遠赤外線サーモグラフィ15、ブレーキECU20、操舵ECU21、運転支援ECU32を備えており、運転支援ECU32に二輪車転倒進路計算部33、自車進路計算部34、衝突確率計算部35、二輪車温度検出部36b、自車制御判定部37bが構成される。
なお、第2の実施の形態では、遠赤外線サーモグラフィ15及び二輪車温度検出部36bが特許請求の範囲に記載する温度検出手段に相当し、衝突確率計算部35及び自車制御判定部37bが特許請求の範囲に記載する衝突予測手段に相当し、自車制御判定部37b及びブレーキECU20と操舵ECU21が特許請求の範囲に記載する衝突回避支援手段に相当する。
運転支援ECU32は、CPU、ROM、RAMなどからなる電子制御ユニットであり、運転支援装置2を統括制御する。運転支援ECU32では、ROMに格納されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することにより、二輪車転倒進路計算部33、自車進路計算部34、衝突確率計算部35、二輪車温度検出部36b、自車制御判定部37bを構成する。運転支援ECU32は、第1の実施の形態に係る運転支援ECU31と比較すると、二輪車温度検出部36bと自車制御判定部37bの処理だけが異なるので、二輪車温度検出部36bと自車制御判定部37bについてのみ詳細に説明する。
二輪車温度検出部36bでは、遠赤外線サーモグラフィ15からの所定範囲の温度分布情報から、二輪車転倒進路計算部33で検出した分離後の二つの物体の温度の平均を計算する。この際、二輪車転倒進路計算部33で検出した分離後の物体の位置情報(領域情報)に基づいて、所定範囲の温度分布情報からその物体の領域内の温度を全て抽出し、その抽出した領域内の全ての温度の平均を計算する。
自車制御判定部37bでは、第1の実施の形態に係る自車制御判定部37aと比較すると、分離後の二つの物体に対する温度判定処理だけが異なるので、その処理についてのみ説明する。
二つの物体両方との衝突確率が閾値より大きい場合、二つの物体と衝突する可能性が高いと判断し、自車制御判定部37bでは、二輪車温度検出部36bで計算した二つの物体についての平均温度を比較する。二輪車は、エンジンやマフラなどの高温部を有しているので、平均温度も比較的高くなる。一方、ライダは、最高でも体温程度なので、二輪車の平均温度に比べると明らかに低い平均温度となる。
物体の平均温度が低いと判定した場合、自車制御判定部37bでは、その物体がライダであると推定し、その物体との衝突を優先的に回避するために第1の実施の形態に係る自車制御判定部37aと同様の車両制御を行う。一方、物体の平均温度が高いと判定した場合、自車制御判定部37bでは、その物体が二輪車であると推定し、その物体に対する衝突回避のための優先度を下げる(可能な場合には第1の実施の形態に係る自車制御判定部37aで説明したように車両制御を行う)。
図1及び図2を参照して、運転支援装置2における右カーブ時二輪車対応機能での動作について説明する。特に、運転支援ECU32における処理について図4のフローチャートに沿って説明する。図4は、第2の実施の形態に係る運転支援ECUにおける右カーブ時二輪車対応機能の処理の流れを示すフローチャートである。
カメラ10、ナビゲーションシステム11、車速センサ12、加速度センサ13、舵角センサ14、遠赤外線サーモグラフィ15では、第1の実施の形態で説明した同様の動作をそれぞれ行う。
一定時間毎に、運転支援ECU32では、第1の実施の形態において説明した動作のS10〜S19の各処理と同様の処理を行う(S30〜S39)。
S38にて二つの物体両方との衝突回避が困難と判定した場合、運転支援ECU32では、遠赤外線サーモグラフィ15からの所定範囲の温度分布情報に基づいて、分離後の二つの物体の平均温度をそれぞれ検出する(S40)。そして、運転支援ECU32では、各物体について平均高温を比較する(S41)。
S41にて物体の平均温度が低いと判定した場合、その平均温度の低い物体をライダとみなし、その物体との衝突を優先して回避するために、優先運転支援ECU32では、第1の実施の形態において説明したS22の車両制御と同様の車両制御を行う(S42)。ブレーキ制御信号をブレーキECU20で受信すると、ブレーキECU20やブレーキアクチュエータなどでは第1の実施の形態において説明した動作と同様の動作を行う。また、操舵制御信号を操舵ECU21で受信すると、操舵ECU21や操舵アクチュエータなどでは第1の実施の形態において説明した動作と同様の動作を行う。
S41にて物体の平均高温が高いと判定した場合、その平均温度の高い物体を二輪車とみなし、運転支援ECU32では、その物体との衝突を回避するための優先度を下げ、S42での車両制御に加えて車両制御が可能であれば平均温度の高い物体との衝突を回避するための車両制御を行う(S43)。
この運転支援装置2によれば、第1の実施の形態に係る運転支援装置1と同様の効果を有する。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では運転支援装置に適用したが、自動運転を行う自動運転車にも適用可能である。
また、本実施の形態では二輪車が転倒する可能性の高いカーブに適用したが、直線路にも適用可能である。
また、本実施の形態では二輪車とライダとの二体に分離する場合に適用したが、二輪車の後部座席にも乗員がいることも想定し、三体に分離する場合にも適用可能である。
また、本実施の形態では衝突回避のための車両制御としてブレーキ制御及び操舵制御を適用したが、ブレーキ制御だけなどの他の車両制御を適用してもよいし、また、運転支援としては衝突の可能性や衝突回避に向けたブレーキ操作や操舵操作の必要性などを知らせる情報提供を行うものでもよい。
また、本実施の形態では分離した各物体の温度を検出するために遠赤外線サーモグラフィを用いたが、他の温度検出手段を用いてもよい。
また、本実施の形態ではカメラによる撮像画像を利用した二輪車の検出方法及び進路の予測方法を示したが、二輪車の検出方法や進路の予測方法については撮像画像を利用しない他の方法でもよい。例えば、インフラ側で検出した二輪車の情報を路車間通信で受信し、その二輪車の情報を利用する方法がある。
また、本実施の形態では自車の現在位置、車速、加速度、舵角を利用した自車の進路の予測方法を示したが、自車の進路の予測方法については他の方法でもよい。例えば、自動運転車の場合、自動運転するための走行予定進路を利用する方法がある。
また、本実施の形態では左側通行国を想定し、自車が右カーブを走行中のときの対向車線走行中の二輪車を対象としたが、右側通行国の場合、自車が左カーブを走行中のときの対向車線走行中の二輪車を対象とする。
1,2…運転支援装置、10…カメラ、11…ナビゲーションシステム、12…車速センサ、13…加速度センサ、14…舵角センサ、15…遠赤外線サーモグラフィ、20…ブレーキECU、21…操舵ECU、31,32…運転支援ECU、33…二輪車転倒進路計算部、34…自車進路計算部、35…衝突確率計算部、36a,36b…二輪車温度検出部、37a,37b…自車制御判定部