JP4985506B2 - 光学フィルム、偏光板及び画像表示装置 - Google Patents
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Description
また、透湿度が高いためPVAなどの偏光子と貼り合わせる際に、PVAや接着剤の水分透過性に優れるなど加工性も良いため、偏光子保護フィルムとして一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、セルロース系フィルム(例えばTACフィルム)は吸水性も高いため、偏光子の性能低下、吸水による寸法安定性などに問題があった。
そこで、偏光子保護膜として、フィルムとして透湿度の低い、一軸延伸された高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンフィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、一軸延伸されたポリエチレン又はポリプロピレンには、位相差が発生し、偏光板としての機能低下をもたらすという問題があった。
ところで、偏光子などの有機部材は、紫外線による劣化を防止するため、紫外線防護フィルターなどを設置する、あるいは紫外線吸収剤を含有する保護フィルムにより保護することが一般的である。保護フィルムに用いられる紫外線吸収剤としては、例えばTACフィルムの場合は、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などの多種多様なものが一般的に挙げられる。
しかし、これらの紫外線吸収剤を、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする光学フィルムに適用する場合、(i)フィルム表面に染み出すといった紫外線吸収剤のブリードアウトなどにより、フィルムの成形加工時の安定性が低下する、(ii)成形加工時の蒸散などによる紫外線吸収剤の消失により、紫外線吸収能の確保のために紫外線吸収剤使用量が増加する、(iii)添加量に対して紫外線吸収性能が低すぎる、などの問題があり、どの紫外線吸収剤であっても制限なく適用できるわけではなく、またポリプロピレン系樹脂のなかでもその種類によって、適用しうる紫外線吸収剤は異なる。このように、本発明で用いられるメタロセン触媒により合成されたポリプロピレン系樹脂を主成分とする光学フィルムに使用しうる、紫外線吸収剤の検討が望まれている。
すなわち、本発明の課題は、可視光線透過率が高く、複屈折が小さいなどの光学特性に優れ、良好な機械強度、耐熱性及び透湿性と優れた紫外線吸収性能とを有し、かつ着色やブリードなどの問題が生じることがない偏光子の保護膜用光学フィルム、該フィルムを偏光子の片面又は両面に保護膜として利用した偏光板、及び該偏光板を用いた画像表示装置を提供することである。
すなわち、本発明は、
[1]メタロセン触媒により合成されたポリプロピレン系樹脂を主成分とし、これにベンゾトリアゾール系フェノールを配合してなるポリプロピレン系樹脂混合物から構成され、前記ベンゾトリアゾール系フェノールの含有量が前記ポリプロピレン系樹脂混合物に対して0.3〜5.5質量%であり、波長250nm以上280nm未満の範囲の光線透過率の最大値をX(%)とし、波長280nm以上370nm以下の光線透過率の最大値をY(%)としたときに、X>20、Y<15、かつX+Y<70の条件を満たす保護膜用光学フィルム、
[2]上記[1]に記載の光学フィルムを偏光子の少なくとも片面に形成してなる偏光板、及び
[3]上記[2]に記載の偏光板を用いてなる画像表示装置、
を提供するものである。
これに加えて、本発明の光学フィルムは、従来汎用されているTACフィルムと比較した場合、これと同等以上の保護機能を有する。特にTACフィルムは親水性であり、防湿性が殆んどないのに対し、本発明の光学フィルムは疎水性であるので、偏光板の耐久性を大幅に向上させることができる。
一般的に、光エネルギーは、紫外線は波長の長い順にUV−A(380〜315nm)、UV−B(315〜280nm)、及びUV−C(280〜100nm)に分類される。波長が短くなると光学フィルムに対する傷害性は強くなるが、オゾン層や大気中の酸素などが波長の短い太陽光線を吸収するため、280nm以下の紫外線は地上に到達する量が少ない。ポリプロピレン系樹脂の劣化は、波長280〜400nmの光の照射によるものが大半であり、なかでもポリプロピレン系樹脂の主要吸収波長は、310nm(UV−B領域)、330nm(UV−A領域)、370nm(UV−A領域)であることが知られている。従って、ポリプロピレン系樹脂の紫外線による劣化を防止するためには、添加した紫外線吸収剤によってUV−A領域の光とUV−B領域の光を吸収することが必要である。
また、波長280nm以上370nm以下の範囲では、光線透過率は0%であることが望ましいが、当該範囲内における最大値Yが、Y<15、かつX+Y<70を満たしていれば、ピークを有していてもよい。
本発明において、上記した光線透過率は、特定の紫外線吸収剤とその使用量とにより調整されるものである。紫外線吸収剤、及びその使用量については、後述する。
次に、本発明の光学フィルムを構成する材料について、ポリプロピレン系樹脂から説明する。本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂は、後述するメタロセン触媒により合成されたものであり、プロピレンとα−オレフィンの共重合体であることが好ましい。α−オレフィンとしては、エチレン、炭素数4〜18の1−オレフィンが用いられ、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1などを挙げることができる。共重合体中のプロピレン単位の割合は、好ましくは80モル%以上であり、コモノマーは20モル%以下である。コモノマーとして、上記のα−オレフィンは1種類に限られず、2種類以上を用いることができ、共重合体をターポリマーのような多元系共重合体とすることもできる。
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂は、曲げ弾性率が700MPa以上であることが好ましく、900MPa以上であることがより好ましい。曲げ弾性率が上記範囲内であると、光学フィルムとして十分な強度が得られ、後加工を容易に行うことができる。
また、該ポリプロピレン系樹脂は、融点(Tm)が130℃以上であることが好ましい。融点(Tm)が130℃以上であれば、未延伸フィルムの場合は、曲げ弾性率が高くなり、光学フィルムとして強度が増し、後加工に影響を与えることがなく好ましい。
さらに、該ポリプロピレン系樹脂は、引張強度が20MPa以上であることが好ましい。20MPa以上であると、光学フィルムを、接着剤層を介して偏光子にロール・ツウ・ロールの方法で貼り合わせる時に、配向がかからず、光学フィルムに当初の光学設計を超えた位相差を発生させないため、偏光板の性能を維持できる。
本発明の光学フィルムに用いられるポリプロピレン系樹脂混合物は、その紫外線吸収性能により所望の光学フィルムの光線透過率を達成するために、ベンゾトリアゾール系フェノールを含有する。ベンゾトリアゾール系フェノールは、下記一般式(1)で表されるように、ベンゾトリアゾール基の窒素原子に、置換されていてもよいフェノール基が少なくとも1つ結合したものである。
ポリプロピレン系樹脂混合物は、上記したベンゾトリアゾール系フェノールに加えて、紫外線吸収金属酸化物を含有していてもよい。紫外線吸収金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、及び酸化鉄が好ましく挙げられ、なかでも酸化亜鉛、及び酸化チタンが好ましい。これらの紫外線吸収剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して使用される。
紫外線吸収金属酸化物の一次粒子の平均粒子径は、可視光線透過率を良好にしながら紫外線吸収性能を確保する観点から5〜90nmであることが好ましく、5〜70nmがより好ましく、5〜50nmがさらに好ましい。紫外線吸収金属酸化物の平均粒子径は、上記の観点から小さければ小さいほど好ましいが、製造コストを鑑みると、下限は5nmである。ここで、平均粒子径は、カーボンブラックをクロロホルムなどの溶媒で十分に希釈分散させた分散液を、コロジオン膜付メッシュ上に展開、乾燥させた後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影したTEM写真のコンピューター画像解析を行い、抽出された各凝集体の面積と等しい面積を有する円の直径(等面積円径)を粒径とし、得られた粒径分布より求めた算術平均径(数平均値)である。
紫外線吸収金属酸化物の含有量は、光学フィルムの良好な紫外線吸収性能を確保しつつ、良好な透明性を得るために、ポリプロピレン系樹脂混合物に対して、通常0.08〜5.5質量%程度である。
本発明では、ポリプロピレン系樹脂混合物は、引張強度を向上させて、かつ透明性を向上させるために、さらにソルビトール系添加物を含有していてもよい。ソルビトール系添加物としては、位相差への影響が微小であるジベンジリデンソルビトール系添加物が好ましい。
ジベンジリデンソルビトール系添加物としては、1,3−2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−2,4−ジパラメチルジベンジリデンソルビトールなどのジ−置換ジベンジリデンソルビトール、及びジ−置換ベンジリデンソルビトールとジグリセリンモノ脂肪酸エステルとを配合したものなどが好ましく挙げられる。
ジベンジリデンソルビトール系添加物は、透明化核剤として、ポリプロピレン樹脂の透明性向上と強度向上に寄与することが知られているが、本発明において、偏光子の保護膜用光学フィルムに使用しても位相差への影響が微小であることを見出したものである。
また、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルを添加したジ−置換ベンジリデンソルビトールを用いる場合、ジ−置換ベンジリデンソルビトールの含有量は、ポリプロピレン系樹脂組成物に対して0.03〜0.3質量%とすることが好ましく、混合するジグリセリンモノ脂肪酸エステルの含有量は、ポリプロピレン系樹脂組成物に対して0.01〜0.2質量%とすることが好ましい。
また本発明における光学フィルムには、得られるフィルムの所望物性に応じて、必要な透明性を損なわない範囲で、各種オレフィン樹脂や添加剤を配合することができる。
オレフィン樹脂としては、チーグラー触媒で合成されたホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどが挙げられ、これを光学フィルムに対して10質量%を超えない範囲で少量ブレンドしても良い。
また、添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、アンチブロッキング剤、滑剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、などが挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、ラジカル捕捉剤として機能するものである。このようなヒンダードアミン系光安定剤(HALS)としては、N,N′,N′′,N′′′−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、デカンニ酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2′−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。
また、光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性のものを用いることもできる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物などが用いられる。
以下、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。本発明の光学フィルムは、上記したポリプロピレン系樹脂、ベンゾトリアゾール系フェノール、及びその他の各種成分を含むポリプロピレン系樹脂混合物を押出しコーティング成形法、キャスト法、Tダイ押出し成形法、インフレーション法、射出成形法などの各種成形法によって製造することができる。さらに、該光学フィルムを用いた偏光板は、上記した各種成形法によって直接、偏光子の上に作製することができるし(図1参照)、上記した各種成形法によって、光学フィルム4をあらかじめ作製しておき、その後、接着剤層を介して偏光子に貼り合わせて作製してもよい。本発明では、偏光子上に作製される光学フィルムが配向しないことが望まれるため、延伸のかからない未延伸のTダイ押出し成形が望ましい。
また、上記した各種成形法による成形は、加熱下において行ってもよい。加熱の温度条件は、160〜250℃が好ましく、180〜220℃がより好ましい。
また、保護膜4をあらかじめ、Tダイ法で製膜しておき、接着剤層2をあらかじめ塗布して偏光子3と貼り合わせても良い。
本発明に係る偏光板は、偏光子の片面又は両面に、上記本発明の光学フィルムを貼合したものであり、コストを考慮すると偏光子の片面に光学フィルムを貼合したものが好ましい。ここで、該光学フィルムは偏光子と接着されて、保護膜としての機能を果たす。偏光板を、光学フィルムにより保護せずに液晶表示装置内に適用した場合、外光及びバックライトの紫外線光により偏光子及び液晶の劣化が生じてしまう可能性がある。このような劣化を防止するために、本発明の偏光板は、液晶表示装置内において液晶セルと貼り合わせて用いられる場合は、液晶表示装置内における外光側の偏光板を上偏光板、バックライト側の偏光板を下偏光板とすると、該上偏光板の片面であって液晶セルとは反対側の面、及び該下偏光板の片面であって液晶セルとは反対側の面に、本発明の光学フィルムを貼合する態様を有することが好ましい。
ポリビニルアルコール系偏光子としては、例えばポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質を吸着させて一軸延伸したものが挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適に用いられる。これら偏光子の厚さは特に制限されず、一般的に、1〜100μm程度である。
PVA系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%の範囲である。このPVA系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。PVA系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000、好ましくは1,500〜10,000の範囲である。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、PVA系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100質量部あたり0.01〜0.5質量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり0.5〜10質量部程度である。この水溶液の温度は、通常20〜40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30〜300秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたPVA系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100質量部あたり2〜15質量部程度、好ましくは5〜12質量部程度である。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100質量部あたり2〜20質量部程度、好ましくは5〜15質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常100〜1,200秒程度、好ましくは150〜600秒程度、さらに好ましくは200〜400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃である。
こうして、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたPVA系樹脂フィルムからなる偏光子が得られる。
光学フィルムと偏光子との貼合の方法としては、上述のように、接着剤層を介して行われる。
接着剤層を形成する接着剤としては、PVA系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフトさせたポリオレフィンもしくは該グラフトさせたポリオレフィンをブレンドしたポリオレフィン系接着剤などが挙げられる。その他、透明性を有する接着剤、例えば、ポリビニルエーテル系、ゴム系などの接着剤を使用することができる。なかでも、PVA系接着剤が好ましい。
PVA系樹脂の重合度などは特に限定されないが、接着性などが良好になることから、平均重合度100〜3000程度、好ましくは500〜3000、平均ケン化度85〜100モル%程度、好ましくは90〜100モル%程度のものを用いることが好ましい。
紫外線硬化型樹脂としては、例えば紫外線硬化型アクリルウレタン、紫外線硬化型エポキシアクリレート、紫外線硬化型(ポリ)エステルアクリレート、紫外線硬化型オキセタンなどから選ばれる一種類以上の紫外線硬化樹脂が挙げられる。
ハードコート層の厚みは、0.1〜100μmが好ましく、特に好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜20μmである。また、ハードコート層の間にプライマー処理をすることもできる。
本発明の光学フィルムが少なくとも片面に形成してなる偏光板は、例えば液晶セルなどに貼り合わせて使用される。図2に、本発明の光学フィルム及び偏光板を有する液晶セルの構成例を示す。図2において、6は液晶セルを示す。この液晶セル6は、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型などや、ツイストネマチック型、スーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型などのものが例示される。図2の液晶セルの構成例は、この液晶セル6の上に、粘着剤層(図示せず。以下同じ。)を介して、位相差板8が積層され、この上に、粘着剤層(図示せず)を介して、本発明の偏光板7が積層されたものである。ここで、光学素子2は、当該位相差板8と偏光板7とが積層されており、偏光板7は、中心に偏光子3を有し、その両側の表面に、接着剤層5を介して、本発明の光学フィルムで構成される保護膜4が積層されている。本発明の偏光板7と位相差板8、位相差板8と液晶セル6の積層に際しては、あらかじめ偏光板7、位相差板8及び液晶セル6に粘着剤層を設けておくこともできる。
該粘着剤には、光学的透明性、適度な濡れ性、凝集性、接着性などの粘着特性、耐候性、耐熱性などに優れることが求められる。さらに吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差などによる光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる画像表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着剤層が求められる。
塗工方法は、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなど、各種方法が可能であるが、グラビアコートが最も一般的である。
また、粘着剤層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1μm〜500μmであり、5μm〜200μmが好ましく、特に10μm〜100μmが好ましい。
本発明の偏光板は、有機EL表示装置にも好適に使用し得る。
一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体などからなる正孔注入層と、アントラセンなどの蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体などからなる電子注入層の積層体や、これらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体など、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は、一般には複屈折層によって楕円偏光となるが、複屈折層がλ/4板でしかも偏光板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、複屈折層で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
本発明の光学フィルムは、タッチパネルの偏光板にも好適に使用し得る。一般に、タッチパネルは、操作者が表示画面の上部に設けられた透明な面をペン、または指でタッチすることで、装置、システムの操作を行うものである。画面上を直接タッチすることは、カーソルを方向キーで押して位置を確定することに比べれば、より直接的であり、また直感的でもあることから、近年、非常に多用されるようになっている。また、近年、携帯電話、およびPDA(Personal Digital Assistants;個人用の携帯情報端末)などの携帯端末市場の成長は著しく、太陽光のもとでの視認性、および薄型軽量が強く要求されるようになった。タッチパネルには種々の方式があり、その得失により使い分けられている。タッチパネルには、抵抗膜方式、光学式、静電容量結合方式(アナログ容量結合方式とも呼ばれる)、赤外線方式、超音波式、および電磁誘導式などの方式がある。ここでは、抵抗膜方式のタッチパネルの例で説明する。
直線偏光板、あるいは偏光板にλ/4板を組み合わせて積層した円偏光板をタッチパネルの最表面に使用すれば、タッチパネルとして十分な強度を得ることができ、かつ、反射防止の効果により視認性が向上する。タッチパネルの偏光板は、図3において9、図4において17である。これらタッチパネルの偏光板に本発明の光学フィルムが好適に使用できる。
本発明の光学フィルムと偏光子からなる偏光板とλ/4板を、λ/4板の面内の遅相軸と偏光板の偏光軸との角度が実質的に45°になるように積層すると円偏光板が得られる。実質的に45°とは、40〜50°であることを意味する。λ/4板の面内の遅相軸と偏光膜の偏光軸との角度は、41〜49°であることが好ましく、42〜48°であることがより好ましく、43〜47°であることがさらに好ましく、44〜46°であることが最も好ましい。
本発明の光学フィルムを使用した円偏光板、又は直線偏光板は、透過型・反射型どちらのタッチパネルにも使用できる。
(評価方法)
1.曲げ弾性率
JIS K7171に準拠して測定した。
2.面内位相差の評価
面内位相差を、波長589.3nm、入射角0度で位相差測定機(「KOBRA−WR(型番)」:王子計測機器株式会社製)を用いて測定した。
3.透明性
JIS K7105に準拠して測定した。
4.紫外線吸収性能の評価
波長260nm(UV−C領域)、310nm(UV−B領域)での光線透過率を、紫外線可視吸光分析計(「UV−2400(型番)」:島津製作所株式会社製)を用いて計測し、各々をX(%)、Y(%)とした。
X(%)の評価
○:20以上
×:20未満
Y(%)の評価
○:10未満
×:10以上
X+Yの評価
○:70未満
×:70以上
5.可視光透過率の評価
波長550nm、750nmでの光線透過率を、紫外線可視吸光分析計(「UV−2400(型番)」:島津製作所株式会社製)を用いて計測した。
○:透過率が80%以上100%以下
×:透過率が80%未満
6.紫外線吸収剤のブリード(滲み出し)の評価
光学フィルムの外観(紫外線吸収剤のブリードの有無)を、フィルム作製後、下記の2条件で1,000時間経過の後、目視にて下記評価基準により評価した。
(条件)
条件1)80℃ドライ
条件2)60℃,90%8(相対湿度)
(評価基準)
○:ブリード(滲み出し)が全くない。
△:ブリード(滲み出し)が発生し、部分的に白化が認められるが、実用上は支障ない。
×:ブリード(滲み出し)が発生し、全体的に白化が認められる。
メタロセン触媒により合成したポリプロピレン樹脂(「ウィンテック(商品名)」:日本ポリプロ株式会社製、曲げ弾性率;900MPa、融点142℃、以下「mPP−A」と表記する。)に、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系フェノール(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、「TINUVIN329(商品名)」:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を添加してポリプロピレン系樹脂混合物を調整した。ここで、ベンゾトリアゾール系フェノールの含有量は、ポリプロピレン系樹脂混合物に対して1.0質量%とした。このポリプロピレン系樹脂混合物を、加工温度200℃・引取りロール温度50℃の条件で、100μmの厚みでTダイ押し出し成形することにより、光学フィルムを得た。当該光学フィルムについて、上記評価方法にて評価した。結果を第1表及び第2表に示す。また、波長250〜800nmにおける全光線透過率のグラフを図5に示す。
実施例1において、ベンゾトリアゾール系フェノールの含有量を0.5質量%とした以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表及び第2表に示す。
実施例1において、ベンゾトリアゾール系フェノールの含有量を5質量%とした以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表及び第2表に示す。
実施例1において、mPP−Aにかえて、メタロセン触媒により合成したポリプロピレン樹脂(「ウィンテック(商品名)」;日本ポリプロ株式会社製、曲げ弾性率;700MPa、融点125℃、以下「mPP−B」と表記する。)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表及び第2表に示す。
実施例1において、ベンゾトリアゾール系フェノールを、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニル(「TINUVIN328(商品名)」:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)とした以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表及び第2表に示す。
実施例1において、ベンゾトリアゾール系フェノールの含有量を0.25質量%とした以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表及び第2表に示す。
実施例1において、ベンゾトリアゾール系フェノールの含有量を6質量%とした以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表及び第2表に示す。
実施例1において、ベンゾトリアゾール系フェノールをベンゾフェノン系化合物(オクタベンゾン,「CHIMASSORB81(商品名)」:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表及び第2表に示す。
実施例1において、ベンゾトリアゾール系フェノールをベンゾフェノン系化合物(2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール,「TINUVIN1577FF(商品名)」:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表及び第2表に示す。
実施例1のベンゾトリアゾール系フェノールを、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(「TINUVIN P(商品名)」:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表及び第2表に示す。
また、本発明の光学フィルムは、外部からの衝撃や変形に対し抵抗力を有し、紫外線吸収性能も良好であるため、この光学フィルムを偏光子に貼り合わせて用いることで、液晶表示素子としての強度や信頼性を顕著に向上させた偏光板が得られる。
さらに、本発明の光学フィルムは、従来汎用されているTACフィルムと比較すると、TACフィルムが親水性であり、防湿性が殆んどないのに対し、本発明の光学フィルムは疎水性であるので、偏光板の耐久性を大幅に向上させることができる。従って、本発明の光学フィルムは、偏光板の少なくとも一面に積層されて液晶セル表面基板と接着される保護膜として好適に使用でき、さらには偏光板の他面側の保護膜に使用することもできる。
2:光学素子
3:偏光子
4:保護膜(光学フィルム)
5:接着剤層
6:液晶セル
7:偏光板
8:位相差板(複屈折層)
9:タッチパネルの偏光板
10:反射防止膜
11:λ/4板
12:偏光子の保護膜[上]
12’:偏光子の保護膜[下]
13:偏光子(PVA)
14:ガラス
15:ITO保護膜
16:偏光子の保護膜[下外]
17:タッチパネルの偏光板
Claims (8)
- メタロセン触媒により合成されたポリプロピレン系樹脂を主成分とし、これにベンゾトリアゾール系フェノールを配合してなるポリプロピレン系樹脂混合物から構成され、前記ベンゾトリアゾール系フェノールの含有量が前記ポリプロピレン系樹脂混合物に対して0.3〜5.5質量%であり、波長250nm以上280nm未満の範囲の光線透過率の最大値をX(%)とし、波長280nm以上370nm以下の光線透過率の最大値をY(%)としたときに、X>20、Y<15、かつX+Y<70の条件を満たす保護膜用光学フィルム。
- ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率が700MPa以上である請求項1に記載の光学フィルム。
- ベンゾトリアゾール系フェノールの分子量が250〜400である請求項1又は2に記載の光学フィルム。
- ベンゾトリアゾール系フェノールが2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、又は2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノールである請求項1又は2に記載の光学フィルム。
- 光学フィルムが未延伸フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルムを偏光子の少なくとも片面に形成してなる偏光板。
- 液晶セルと貼り合わせて用いられ、かつ光学フィルムが偏光子の液晶セル側とは反対に形成してなる請求項6に記載の偏光板。
- 請求項6又は7に記載の偏光板を用いてなる画像表示装置。
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