JP4982768B2 - 粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法 - Google Patents

粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4982768B2
JP4982768B2 JP2008101939A JP2008101939A JP4982768B2 JP 4982768 B2 JP4982768 B2 JP 4982768B2 JP 2008101939 A JP2008101939 A JP 2008101939A JP 2008101939 A JP2008101939 A JP 2008101939A JP 4982768 B2 JP4982768 B2 JP 4982768B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solution
channel
flow path
particle
particles
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008101939A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009213460A (ja
Inventor
真澄 山田
純 小林
雅之 大和
実 関
光夫 岡野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokyo Womens Medical University
Original Assignee
Tokyo Womens Medical University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokyo Womens Medical University filed Critical Tokyo Womens Medical University
Priority to JP2008101939A priority Critical patent/JP4982768B2/ja
Publication of JP2009213460A publication Critical patent/JP2009213460A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4982768B2 publication Critical patent/JP4982768B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)

Description

本発明は、動植物細胞、バクテリア、ウイルス等の細胞またはそれらの構成要素であるオルガネラ等の生物粒子、また、ポリマー粒子、セラミックス粒子や金属微粒子を、連続的かつ迅速に複数種類の流体中を通過させることによって、ある一定の時間、その表面および/または内部において物理的、化学的、あるいは生物学的な反応や修飾を行うための流路構造および方法に関する。
一般に、ポリマー粒子や金属粒子をある一定の時間、ある化学物質を含む溶液中に導入し、その後別の溶液で洗浄する、という技術は、粒子を利用した免疫分析、あるいは粒子を利用したDNA・ペプチド・ポリマーなどの固相合成等の分野において、非常に有用である。
また、細胞をある一定の時間、たとえば1ミリ秒から1分程度の任意の時間のみ、ある溶液中に導入し、物理的、化学的、あるいは生物学的な処理を行い、さらにその処理を止めるために別の溶液中に導入する、という一連の技術は、たとえば細胞表面で起こる膜タンパク質分子の構造変化、細胞内でのシグナル伝達の解明などの研究分野において非常に重要であり、さらに、化学物質の細胞に対する急性毒性を評価する際にも非常に有用である。
さらに、細胞、オルガネラ、微生物などの粒子を、ある特定の表面分子に対する抗体マーカー等で染色する技術は、細胞集団の解析や分画等のための技術であるフローサイトメトリーにおいて不可欠であり、そのような染色の際に、染色時間を正確にコントロールすることは非常に重要である。
従来、細胞や粒子をある一定の時間、ある化学物質を含む溶液を用いて処理する、あるいは、粒子表面においてある一定の時間化学反応を行うためには、粒子や細胞の懸濁溶液にある試薬を混合し、一定の時間後、膜状の構造あるいは遠心分離法を用いて、その溶液を回収する、あるいは他の溶液と交換する、という手法が用いられてきた。また、粒子を用いた固相合成を行う際には、カラムに粒子を充填し、反応溶液や洗浄溶液を段階的に導入し、溶液を交換する、という手法が用いられる。
しかしながら、このような手法には、細胞や粒子を連続的に処理することは不可能である。たとえば、10秒程度以下の短時間での溶液の交換は困難であった。また、溶液を交換する際に、異なる組成の溶液の完全な交換が不可能であった。すなわち、交換する前の溶液の一部が交換した後の溶液中に混入してしまう、といった問題点生じていた。
一方、たとえば細胞表面で起こる膜分子の構造変化を観察するときは、細胞を非常に短い時間、たとえば数十ミリ秒程度だけ、所定の試薬によって処理する、あるいは刺激を与え、さらにその処理反応を急激に停止するための手法として、急速冷凍法が用いられてきた。そのための装置としては、細胞懸濁液と細胞処理溶液を混合するためのフローセルと液体窒素やドライアイス等によって凍結を行うためのバイアルからなる装置が用いられてきた。しかしながら、この急速冷凍法には、細胞を生きたまま回収することが不可能であること、凍結した溶液から細胞処理のための試薬を取り除くことが困難であり、従って、一段階の処理しか実施できなかった。すなわち、複数の試薬を用いて洗浄と反応を繰り返すための段階的な処理ができない、といった問題点があった。
「インターナショナル・レヴュー・オブ・サイトロジー(International Review of Cytology)」Vol.55,133−176,2006.
一方、最近、微細加工技術を利用して作製した流路構造を有するマイクロ流路システム(マイクロ流体デバイス、マイクロチップとも呼ばれる)を用いて、細胞や粒子が懸濁している溶液、つまりキャリアとなる溶液を交換する、というシステムが提案された。ここでは、たとえば超音波や誘電泳動とマイクロ流路内の層流を組み合わせることで、細胞をある溶液からある溶液の中に連続的に導入する、という操作が行われている。しかしながら、これらのマイクロ流路システムでは、外部から物理的な力を加えるための装置が必要である、多段階の溶液の交換には不向きである、といった問題点があった。また、これらのマイクロ流路システムにおいても、溶液の交換が短時間で達成されないため、分子拡散により溶液間での混合が起き、完全な交換ができず、すなわち、交換する前後の溶液がある程度混合してしまう、という問題点があった。
「アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)」77(5),1216−1221,2005. 「ラボ・オン・ア・チップ(Lab on a Chip)」4(2),148−151,2004.
本発明は、従来の技術の有する上記したような種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、粒子や細胞をある試薬によって一定時間処理する場合に、交換前後の溶液間で混合がほとんど起きることなく、粒子や細胞の処理を可能とするシステムを提供しようとするものである。
また、本発明の目的とするところは、粒子や細胞を処理する際に、送液装置以外の物理的な制御装置を必要としないシステムを提供しようとするものである。
また、本発明の目的とするところは、粒子や細胞を処理する際に、目的によっては、多段階での処理を可能とし、また細胞を用いる場合は、細胞を凍結することなく回収することを可能とするシステムを提供しようとするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて研究開発を行ってきた。その結果、主流路内に粒子懸濁溶液、粒子処理溶液、および粒子洗浄溶液をそれぞれ連続的に導入した際、主流路内において、粒子懸濁溶液、粒子処理溶液、および粒子洗浄溶液がそれぞれ99%以上の純度でほとんど混合することなく流れる状況が形成され、かつ粒子はその溶液の流れの中を順に通過することで一定時間処理される、粒子処理用マイクロ流路システムを利用することで目的通りの処理を実施することができるようになることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、平均粒径がRμm(Rは1以上100以下)である粒子の表面および/または内部を連続的に処理するための、主流路(D)に対し導入流路および導出流路を有するマイクロ流路システムであり、そのシステムが、(1)導入口(DP)より溶液A(組成a)が連続的に導入される直径1.5Rμm〜30Rμmの主流路(流路部D1)と、合流点(DP1)において主流路(流路部D1)に合流し溶液Aとは異なる組成の溶液B(組成b)が連続的に導入される導入流路(P1)、並びに合流点(DP1)より下流における分岐点(DR1)において主流路(流路部D1)より分岐し溶液Aおよび一部の溶液Bが排出される直径0.5Rμm〜10Rμmの導出流路(R1)、並びに分岐点(DR1)より下流における主流路(処理部DE)、から構成され、(2)さらに、主流路(処理部DE)の下流における直径1.5Rμm〜30Rμmの主流路(流路部D2)と、合流点(DP2)において主流路(流路部D2)に合流し溶液C(組成c)が連続的に導入される導入流路(P2)、並びに合流点(DP2)より下流における分岐点(DR2)において主流路(流路部D2)より分岐し、主流路(処理部DE)内を通過した溶液および一部の溶液Cが排出される直径0.5Rμm〜10Rumの導出流路(R2)、並びに分岐点(DP2)の下流における主流路(D)の導出口(DR)、から構成され、(3)主流路(D)における分岐点(DR1)から主流路(処理部DE)へと流れる溶液の純度が、導入流路(P1)より導入された溶液B(組成b)の99%以上であり、(4)さらに主流路(D)における分岐点(DR2)から導出口(DR)へと流れる溶液の純度が、導入流路(P2)より導入された溶液C(組成c)の99%以上であり、(5)当該粒子が溶液A(組成a)と共に主流路(D)に導入され、主流路(D)内を流れる各組成の溶液内を連続的に通過し、導出口(DR)より回収されることを特徴とする、粒子処理用マイクロ流路システムを提供する。加えて、本発明ではそのマイクロ流路システムを利用した粒子処理方法を提供する。
本発明の技術であれば粒子懸濁溶液、粒子処理溶液、粒子洗浄溶液を、それぞれある形状を持つ微細な流路構造に連続的に導入するだけで、外部からの電気的、機械的な操作を用いることなく、処理したい粒子を連続的に短時間処理することができるようになる。そして、その粒子の処理時間は、1ミリ秒から1分の間の任意の時間にすることができ、しかもその時間を正確に制御することができる、という優れた効果を発揮する。更に本発明であれば、粒子を複数の種類の溶液中を通過させる際、それらの溶液間の混合がほとんど起こることなく、ほぼ理想的な濃度条件での粒子の処理もできるようになる。従って、本発明は、免疫染色後の細胞を光学的に検出し、電気的にソーティングするためのFACS(Fluorescence−Activated Cell Sorting)システム等のセルソーターにおいて、細胞の染色などの前処理のための装置・手法として組み入れることもできるようになる。
以下、添付の書類に基づいて、本発明による粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法の最良の形態を詳細に説明するものとする。
図1には、本発明における請求項1に記載の、粒子処理用マイクロ流路システムの流路構造の概略図例が示されている。図1において、主流路(D)は、3つの部分、主流路(流路部D1)、主流路(処理部DE)、主流路(流路部D2)から構成されており、主流路(流路部D1)は、導入流路(P1)および複数の導出流路(R1)とそれぞれ接続されており、また、主流路(流路部D2)は導入流路(P2)および複数の導出流路(R2)とそれぞれ接続されている。この流路構造において、流路構造は平面的でも3次元的に構成されていても良く、また、流路深さは一定であっても部分的に異なっていても良く、特に限定される者ではない。さらに、径の同じ円管、あるいは径の異なる円管が少なくとも部分的に接続された構造であっても良い。しかしながら、流路構造が少なくとも部分的に平面的に構成されているものの方が、流路設計における抵抗値の設定が容易になり、また、流路構造の作製が容易になる、という点において好ましい。
本発明において、流路構造を作製する場合には、たとえばモールディングやエンボッシングといった鋳型を用いる作製技術が流路構造を容易に作製可能であるという点において好まししいが、その他にも、ウェットエッチング、ドライエッチング、レーザー加工、電子線直接描画、機械加工等の作製技術を用いることも可能であり、特に制約されるものではない。
本発明において、流路構造を作製する場合のマイクロ流体システムの材質は特に限定されるものではないが、たとえばPDMS(ポリジメチルシロキサン)、アクリル等の各種ポリマー材料、ガラス、シリコン、セラミクス、ステンレスなどの各種金属等が挙げられ、また、これらの材料のうち任意の2種類以上の材料からなる基板を組み合わせて用いても良い。
さらに、図1に示す流路構造において、導入流路および分岐流路は、それぞれ主流路に対し直角になるように接続されている。この角度は必ずしも直角である必要はないが、主流路と分岐および導入流路の合流する角度における鋭角部分が、15度以上になることが好ましく、より好ましくは30度以上、最も好ましくは45度以上である。15度以下の角度であると効率が悪くなり本発明として好適でない。
図2には、粒子処理用マイクロ流路システムにおける流路構造の、より詳細な流路構造の概略図かつ実施図例と、粒子の移動の様子が示されており、図2(a)には流路構造の概略図かつ実施図例と内部の溶液の様子が、図2(b)にはある一つの分岐点における粒子の挙動が示されている。
図1、或いは図2の流路構造に、導入口(DP)から粒子懸濁溶液である溶液Aを、導入流路(P1)から粒子処理溶液である溶液Bを、さらに導入流路(P2)から粒子洗浄溶液である溶液Cを、それぞれ連続的に導入することで、粒子の処理を行う。
本発明で必須な条件としては、主流路(処理部DE)を流れる溶液における溶液Bの純度が99%以上となることであり、また、主流路(流路部D2)における分岐点(DR2)より下流側の領域を流れる溶液における溶液Cの純度が99%以上となることである。さらに、導入口(DP)より溶液Aとともに導入した粒子のうち少なくとも一部が、主流路(D)における導出口(DR)より回収されるということが挙げられる。
本発明では、これらの条件が満たされるための、流路内各部における流量の絶対値に関しては、主流路(D)において、導入された複数の溶液間での混合がほとんど起こらないような状態が保たれる必要があるという観点から、流路内で安定な層流が保たれることが好ましく、流速がある値以下になる条件下で、具体的には、レイノルズ数が1000以下になる条件下で送液操作を行うことが好ましく、好ましくはレイノルズ数が800以下、さらに好ましくは500以下である。しかしながら、直径が1mm以下の流路の場合では、通常乱流は形成されないため、上述のような条件を達成することは容易である。
本発明では、次に、適切な流路設計および/あるいは入口流量の調節を行うことにより、図2(a)に示すように、導入口(DP)より導入した溶液Aが、全て導出流路(R1)より排出され、さらに、導入流路(P1)より導入した溶液Bのうち少なくとも一部が導出流路(R1)より排出されるようになることが好ましい。その場合、マイクロ流路内では層流が支配的であるため、溶液Aと溶液Bの境界面は、分子拡散以外の要因では混合されず、主流路Dにおける下流側、つまり主流路(処理部DE)において、流量の絶対値を一定の値以上にすることにより、溶液Bの純度を99%以上、より好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上にすることができる。
本発明では、導入口(DP)から導入された溶液Aが、主流路(処理部DE)内に混入することを防ぐために、導出流路(R1)より排出される溶液の流量は、導入口(DP)より導入した溶液Aの流量の1.1倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.2倍以上、最も好ましくは1.3倍以上が良い。1.1倍以下であると溶液Aが混入する程度が高くなり本発明として好適なものではなくなる。
本発明において、図1における流路構造においては、合流点(DP1)と分岐点(DR1)が、また、合流点(DP2)と分岐点(DR2)が、それぞれ互いに主流路の反対側の壁面に設置されており、このような配置によって、導出流路(R1)からの溶液Aの効率的な排出と、導出流路(R2)からの、主流路(処理部DE)を通過してきた溶液の効率的な排出が可能になるため、このような配置は好ましい。ただし、このような配置関係は必ずしも必要ではなく、合流点と分岐点が、主流路における同じ壁面に設置されていても良い。
本発明において、溶液Aと溶液Bの導入流量比に関しては、溶液Aの流量割合が多すぎる場合には、溶液Aが主流路(処理部DE)に混入してしまう、という問題が生じ、また、溶液Bの流量割合が多すぎる場合には、溶液Aとともに導入される粒子の処理量が少なくなる、という問題が生じるが、主流路(処理部DE)を流れる溶液における溶液Bの純度が結果的に99%以上、より好ましくは99.9%以上になるような導入流量比であれば、どのような比率であっても良い。その際、溶液Aと溶液Bの導入流量比は、操作の都合上、1:10〜10:1の間であることが好ましく、好ましくは1:7〜7:1が良く、より好ましくは1:3〜3:1の範囲にあることが良い。同様に、適切な流路設計および/あるいは入口流量の調節を行うことにより、図2(a)に示すように、主流路(処理部DE)を通過してきた、粒子処理溶液が、全て導出流路(R2)より排出され、さらに、導入流路(P2)より導入した溶液Cのうち少なくとも一部が導出流路(R2)より排出されるようにすることが可能であり、その場合も同様に、主流路(処理部DE)を通過してきた溶液と溶液Cの境界面は、分子拡散以外の要因では混合されないため、主流路(D)における下流側、つまり導出口(DR)側において、溶液Cの純度を99%以上、より好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上にすることができる。なお、主流路(処理部DE)を通過してきた溶液が、主流路(流路部D2)における分岐点(DR2)より下流を流れる溶液内に混入することを防ぐために、導出流路(R2)より排出される溶液の流量は、主流路(処理部DE)を通過した溶液の流量の1.1倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.2倍以上、最も好ましくは1.3倍以上が良い。
本発明では、流路内部におけるこれらの流量条件を達成するためには、流路のネットワークを抵抗回路のアナロジーとして考える。すなわち、流量分配は圧力に比例し流路の抵抗に反比例する、という考えに基づいて予測あるいは計算することができ、流路内の各地点における圧力と、流路構造の抵抗値を考えることにより、各地点における流量の分配割合を調節あるいはあらかじめ計算することができる。
本発明では、さらに、流路内部におけるこれらの流量条件を達成するための導入量の調節方法として、各導入口からシリンジポンプ等を用いて溶液を導入し、その際の流量をそれぞれある一定の値に調節する方法を採用することが操作上簡便であり好ましいが、各導入口および導出口をそれぞれある一定の圧力下に保つことによる送液方法を採用することで、流量を調節することができる他、それらの手法の組み合わせによる手法を採用することもでき、いずれの場合であっても、流路構造を抵抗回路とみなした場合の圧力・流量・抵抗値を考えることで計算もしくは調節が可能である。
本発明では、導入口(DP)から導入した粒子の少なくとも一部が、導入口(DR)から回収される必要があるが、そのための手段として、本発明では、分岐点(DR1およびDR2)における主流路の径と、導出流路へ分配される流量の割合の関係から、たとえ導出流路の径が粒子の径より大きい場合であっても、ある一定以上の大きさをもつ粒子は分岐流路へと導入されることがないという原理に着目している。具体的には、導入口(DP)より導入された粒子は、主流路(D)における、導出流路(R1)および導出流路(R2)への分岐点(DR1)および分岐点(DR2)において、たとえ粒子が壁近傍を流れていた場合でも、また、たとえ粒子の直径が導出流路の直径より小さい場合でも、導出流路内に導入されないようにすることが可能である。その原理としては、「水力学的フィルトレーション(Hydrodynamic Filtration)」と呼ばれる原理を用いることができ、より具体的には、図2(b)に示すように、流路内におけるある分岐点において、分岐の中に導入される仮想的な流れの幅(W1)よりも半径が大きな粒子は、分岐の中に導入されない、という原理である。その仮想的な流れの幅は、流路幅W0と、流量Q1と流量Q2の比から決める、ということが好ましい。
「ラボ・オン・ア・チップ(Lab on a Chip)」5(11),1233−1239,2005.その際、流量Q1と流量Q2の比についても、流路のネットワークを抵抗回路のアナロジーとして考えることで計算することができ、各分岐点(DR1およびDR2)におけるこれらの値は、流路の幅・長さ・深さをあらかじめある計算された値に設定することによって、任意に設定・調節することができる。
本発明では、流路の幅W0を、処理対象となる粒子の平均直径Rに対して、なるべく小さな値にすることで、効率的な溶液の導出が可能となる。W0の値は、好ましくは1.5R〜30Rの範囲にあれば良く、より好ましくは1.7〜20Rが良く、最も好ましくは1.8〜10Rの範囲が良い。しかしながら、流路幅と粒子径がほぼ同じ値の場合には、流路の閉塞等の問題が生じやすくなるため、W0の値は、好ましくは、2〜10Rの範囲であり、最も好ましくは、2〜3Rの範囲である。
本発明においては、導出流路(R1およびR2)の幅を小さくすることで、より短い導出流路を用いた場合であっても、効率的な溶液排出および粒子操作が可能となるため、この幅は、粒子の平均直径Rに対して、0.5R〜10Rの範囲にあることが好ましい。ただし、導出流路の場合も、幅が平均粒径Rより小さい場合には、流路の閉塞等の問題が生じやすくなるため、W0の値は、より好ましくは0.7〜8Rが良く、最も好ましくは1〜5Rの範囲が良い。導出流路(P1およびP2)の幅に関しては、どのような値であっても構わないが、実際の操作の都合上、極端に大きいあるいは小さい値は避けた方が好ましく、具体的には、主流路(流路部D1またはD2)の幅に対して、0.1倍〜10倍の範囲にあることが好ましい。
本発明では、各導入口における溶液の導入流量は、導入口(DP)より導入した粒子の少なくとも一部が導出口(DR)より排出されるようにするためにも、それぞれある一定の範囲内になるように設定する必要があり、そのための必要条件としては、分岐点(DR1およびDR2)における流れの幅W1が、導入した粒子のうち最大のものの半径より小さくなる、ということであり、より好ましい条件としては、W1は0.5R以下になることである。
本発明において、溶液Cの導入流量に関しては、溶液Cの流量が溶液Aおよび/あるいは溶液Bの導入流量に対し多い場合には、主流路(処理部DE)内の流れが逆転し、溶液Cが主流路(処理部DE)に混入してしまうという問題が生じて好ましくない。また、溶液Cの流量が少なすぎる場合には、主流路(処理部DE)内を通過してきた、溶液Bを99%以上の純度で含む溶液が、主流路(流路部D2)における分岐点(DR2)より下流に混入してしまう、という問題が生じるため、これらの問題を防ぐという観点から、溶液Cの導入流量はある一定の範囲にある必要があるが、結果的に、主流路(処理部DE)を流れる溶液における溶液Bの純度が結果的に99%以上、より好ましくは99.9%以上になり、かつ、主流路(流路部D2)における分岐点(DR2)より下流の範囲において、溶液Cの純度が99%以上、より好ましくは99.8以上が良く、最も好ましくは99.9%以上になるよれば良い。
本発明では、導出流路(R1およびR2)の本数に関しては、僅かな流量を主流路から繰り返し引き抜くことで、小さな粒子であっても、あるいは、粒子の直径が導出流路の直径より小さい場合であっても、粒子は導出流路(R1およびR2)に導入されることなく、粒子を主流路の導出口(DR)より回収することが可能となる。導出流路の本数については、それぞれ少なくとも2本以上、好ましくは10本以上、さらに好ましくは20本以上であれば良いが、この本数に関しても、主流路(処理部DE)を流れる溶液における溶液Bの純度が結果的に99%以上になり、より好ましくは99.9%以上になり、かつ、主流路(流路部D2)における分岐点(DR2)より下流の範囲において、溶液Cの純度が99%以上、より好ましくは99.9%以上になる本数であれば良い。
本発明では、一定以上の大きさの粒子が導出流路に導入されないようにするために、導出流路(R1およびR2)の1本1本の抵抗値をそれぞれある至適な値に設定する必要がある。その値を保持しつつ全体の長さを一定にするために、導出流路(R1およびR2)の内径が、流れの方向に沿って徐々にあるいは段階的に大きくなるような流路設計を行うことが好ましく、さらに、図2(a)に示すように、導出流路それぞれを、細い部分と太い部分によって構成し、さらにその長さの比を変化させることがより好ましく、このような流路設計によって、導出流路の全体の長さを一定に保ちつつ、至適な抵抗値の設定を簡便に行うことが可能である。
本発明では、また、図2(a)に示したように、導出流路(R1およびR2)を最終的にそれぞれ合流させ、ひとつの排出口に接続することは、溶液回収操作を簡便に行うという意味において好ましいが、この排出口はそれぞれ1つあるいは複数のいずれでも良く、導出流路のすべてあるいは一部が独立になっていても良い。
本発明では、導出流路(R1およびR2)の間隔は、流路構造の作製技術の都合上ゼロにすることは不可能である。しかしながら、主流路(流路部D1およびD2)における、各分岐点間の抵抗値を極力減少させることによって、流路システム全体のサイズをコンパクトにでき、また、複数の導出流路を狭い範囲に密集して並列化することで、導出流路からの溶液の排出を効率的に行うことが可能となる。その際は、可能な限り小さい値に設定することが好ましく、具体的には、対象となる粒子の平均直径Rに対し、5R以下に設定することが好ましく、より好ましくは4R以下、最も好ましくは3R以下に設定することが良い。
以上のような流路構成および/あるいは流量調整により、導入口(DP)より導入された粒子は、主流路(D)中を、主流路(流路部D1)、主流路(処理部DE)、主流路(流路部D2)の順に通過し、導出口(DR)より排出されるが、それらを通過する際に、溶液A(組成a)、溶液B(組成b)の純度が99%以上の溶液、溶液C(組成c)の純度が99%以上の溶液中を、それぞれ順に通過することとなり、一定の時間、粒子処理溶液である溶液B中を通過することとなる。つまり、粒子懸濁溶液(溶液A)を導入口(DP)から、粒子処理溶液(溶液B)を導入流路(P1)から、粒子洗浄溶液(溶液C)を導入流路(P2)から、それぞれ連続的に導入するだけで、複雑な装置を用いることなく、連続的かつ正確かつ簡便に、粒子処理溶液の有する物理・化学・生物学的な性質によって、粒子を処理することが可能となる。その際、粒子を処理する時間、つまり、粒子が高純度(99%以上)の溶液B中を通過する時間は、主流路(処理部DE)の体積を変化させる、あるいは、導入流量の絶対値を変化させる、あるいはその両方により、たとえば1ミリ秒以上1分以下の範囲において自由に制御できるようになる。そのため、通常のフィルトレーションや遠心分離法では不可能な、10秒以下の短時間での粒子の処理が可能となり、また、通常の100ミリ秒程度の細胞処理のために用いられる、フローセルと凍結バイアルを組み合わせた複雑な装置等を必要とすることなく、100ミリ秒程度、あるいはそれ以下の短時間での処理も可能となる。
また、これらの流路においては、分岐点(DR1)を通過した粒子は、主流路(D)における分岐点(DR1)の存在する壁面に沿って一列に流れるため、粒子の流れる位置が、主流路の流れと垂直な方向の断面において一定となり、滞留時間の均一化を図ることができる、つまり、処理時間の均一化を図ることができる。
図3(a)および(b)には、多段階処理のためのマイクロ流体システムの概略図かつ実施図例を示すが、これらの図のように、図1におけるシステムユニット(U)を繰り返し、さらに、それぞれのユニットにおける導入流路から、異なる組成を持つ溶液を導入することで、2種類以上の溶液を用いた粒子の処理が可能となる。なお、それぞれのシステムユニットにおける、導入流路、導出流路の向きを、図3(a)に示すように同じになる向きに配置しても良く、図3(b)のように交互になる向きに配置しても良い。また、システムユニット(U)を、3つ以上直列に接続しても良く、その場合は、3種類以上の溶液を用いた処理が可能となるため、目的に応じて多段階の処理が可能となるほか、2種類以上の処理の間に、粒子の洗浄処理を行うことも可能となる。
なお、上記の流路システムにおいて、安定な層流を保持する必要があるという観点上、形成される流路はマイクロ流路であるものが好ましく、この場合のマイクロ流路とは、具体的には、レイノルズ数を1000以下にすることが容易な流路である。
本発明のマイクロ流路システムを用いて、処理を行う対象となる粒子としては、目的に応じて、ポリスチレン等のポリマー粒子、金属微粒子、セラミックス粒子、またはそれらの表面に物理的あるいは化学的な処理を施した粒子を用いることができる他、動植物細胞、細菌、ウイスルやそれらの構成要素であるオルガネラ等の生物粒子を用いることができる。
本発明において、これらの粒子の形状は球形あるいは非球形のいずれの場合も考えうるが、非球形の粒子の場合、その粒子を代表する最も短い径、つまり、その粒子を閉じ込めることができる最小体積の直方体における最小の辺の長さの値の半分が、図2(b)におけるW1よりも大きい場合には、そのような粒子は、分岐流路に導入されることがない、ということを、流路の設計において考慮に入れることが好ましい。
本発明において、粒子懸濁溶液としては、目的に応じて様々な溶液を用いることができ、例えば粒子としてポリマー粒子や金属粒子を用いる場合には、各種化学物質を含む水溶液の他、有機溶液、イオン性流体等を用いることができる。さらに、粒子として細胞等の生物粒子を用いる場合には、細胞培養液や緩衝液などの細胞と等張の水溶液を用いるのが好ましい。ただし、たとえばバクテリアや植物細胞のような比較的低張あるいは高張溶液に対し耐性をもつ細胞の場合には、必ずしも等張である必要はない。また、操作の都合上、溶液の密度と粒子の密度の差が大きくない系がより好ましい。
本発明において、粒子処理溶液としては、化学反応種を含む水溶液あるいは有機溶媒などの他、粒子懸濁溶液とは温度の異なる溶液、放射性物質を含む溶液等、粒子にとって物理的、化学的、あるいは生物学的に刺激を与えうる物質あるいは性質を含む溶液を用いることができる。また、粒子として細胞を用いる場合は、細胞に対する刺激物質、あるいは細胞表面での分子反応・相互作用を起こす物質等を適宜含んだ溶液の他、高張・低張溶液、酸・アルカリ溶液、有機溶液、ウイルスやナノ粒子等の懸濁液を、対象とする処理系に応じて用いることができる。
本発明において、粒子洗浄溶液としては、粒子懸濁溶液と同じものを用いることができるほか、化学反応を停止するための停止剤を含んだ溶液等を用いることができる。また、粒子として細胞を用いる場合は、粒子懸濁溶液とは種類の異なる各種緩衝役、培養液などを用いることができ、さらに、細胞表面で起こる反応を停止するための固定液として、たとえばホルムアルデヒド水溶液、パラホルムアルデヒド水溶液、メタノールあるいはその水溶液、エタノールあるいはその水溶液等を用いることもできる。
本発明において、粒子懸濁溶液、粒子処理溶液、粒子洗浄溶液の粘度に関しては、これらの粘度における差が小さい系がより好ましいが、粒子の処理を可能とするシステムであれば、粘度に差があっても構わない。
本発明において、これらの溶液を送液する手段としては、シリンジポンプを用いた定流量送液の他、ボンベ、圧力装置等を用いた定圧送液のほかに、電気浸透流や遠心力等を用いた送液方法などを用いることができる。
本発明において、導出口から流出する、粒子を含むあるいは含まない溶液を回収するために、導出口に、回収のためのチューブ構造あるいは溶液回収ウェル等を設けることが望ましい。ただし、処理後の粒子を回収せずに、たとえば粒子の分析・検出を行うためには、フローサイトメトリー等の装置と連結することで、細胞の評価を行う系との統合なども可能であり、また、粒子として細胞を用いる場合には、流路構造内にせき止め構造あるいは機構を備えることで、処理後の細胞を流路システム内で培養することもできる。
以上に述べたシステム構成および操作により、粒子や細胞を、目的に応じたある一定の時間だけ、正確かつ簡便かつ連続的に処理することが可能となる。
以下、添付の書類に基づいて、本発明による粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法の実施例を詳細に説明するものとする。
図4に示す通り、本発明による粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法のマイクロ流路システムを作成した。図4(a)はマイクロ流路システムの全体図、図4(b)(c)はそれぞれ、図4(a)における部分AとBの拡大図、図4(d)は、図4(a)に示したマイクロ流路システムとは異なる形状の主流路(処理部DE)を有するマイクロ流路システムにおける、図4(a)における部分Bに相当する部分の拡大図である。
このマイクロ流路システムは、粒子懸濁溶液、粒子処理溶液、粒子洗浄溶液を、それぞれ導入口1,2,3から、流量比約1:1:0.3で導入すると、それぞれの溶液の粘度がほぼ等しい場合には、導入口1から導入された直径約7μm以上の大きさの粒子は、途中で粒子処理溶液の流れの中を通過しつつ、導出口1へと排出されるように設計されている。このマイクロ流路システムは、微細な溝構造を有する平板状のポリマー基板(PDMS(ポリジメチルシロキサン))と、溝構造を有さない平板状の基板(ガラス板)を上下にボンディングすることにより形成されている。上部のポリマー基板の下面には、流路構造が形成されており、その深さは約40μmである。この値に関しては、用いる対象の大きさに応じて、1μmから1cmまでの任意の値の流路構造を採用することが可能であり、また、下部の基板の上面にも同様の加工が施されていても良く、流路構造は部分的に深さが異なっていても良い。
本発明において、導入口1、2、3はそれぞれ、細胞懸濁溶液、細胞処理溶液、細胞洗浄溶液の入口であり、導出口1,2,3は粒子および/あるいは溶液の排出口であるが、それらの位置において、上部の基板に貫通孔が形成されており、その貫通孔によって外部と流路の接続が可能となる。なおこのような貫通孔は上下どちらの基板に形成されていても良い。
本発明において、導入口における貫通孔に対して、外径2mm、内径1mmのシリコーンチューブが、導出口における貫通孔に対して、外径1mm、内径0.5mmのシリコーンチューブがそれぞれ接続されているが、より細い、あるいは太いチューブ、あるいは他の材質のチューブ等を送液する装置の必要性に応じて接続することができる。尚、このマイクロ流路システムにおいて、主流路は導入口1と導入口2を接続する流路であるが、導入口付近の流路構造(幅500μm)は、この場合は導入口(DP)の一部であり、主流路(D)の一部とは定義されない。
本発明において、このマイクロ流路システムにおいて、導入口の内部に、フィルター構造が設けられており、このフィルター構造によって、流路を閉塞させるほどの大きな粒子が主流路に入るのを防ぐことが可能になっているが、導入口の構造の一部として、フィルター構造が無くても良く、また、他の構造を採用することもできる。
本発明における主流路(D)の全体の長さは7.5mmであり、主流路(流路部D1)と主流路(流路部D2)の幅はともに35μmであり、主流路(処理部DE)の幅は、図4(c)に示す流路システムの場合は100μm、図4(d)に示す流路システムの場合は、300μmである。
本発明で提案したマイクロ流路システムでは、主流路(処理部DE)の幅および/あるいは長さを変化させることで、粒子が粒子処理溶液中を通過する時間を大幅に変化させることができるため、流速を変化させることにより、図3(c)に示した構造では、典型的には10ミリ秒から100ミリ秒、図3(d)に示した構造では、100ミリ秒から1秒程度に変化させることができる。これらの値は、主流路(処理部DE)のデザインの異なる流路構造を採用することによって、0.1ミリ秒以上の1分以下の任意の値に調節することが可能である。
また、導出流路(R1)および導出流路(R2)は、それぞれ40本の導出流路から成り、導出流路(群)はそれぞれ導出口2、導出口3に接続されている。導出流路(R1およびR2)の長さは、それぞれ12mm、7mmであった。さらにそれぞれの導出流路は、図2(a)に示すように、幅が細い部分と幅が太い部分からなっており、それぞれの幅は20μm、35μmであり、また導出流路の中心間の距離は60μmである。なお、請求項7における、導出流路の1本1本の間隔とは、この場合35μmである。これらの値も、対象となる細胞の大きさによって、1μm以上の任意の値に設定することが可能である。
このような流路設計によって、それぞれ40の分岐点(DR1およびDR2)において、その各分岐点を通過する流量のおよそ2.5%ずつが導出流路に分配されるようになっており、この値は、図2(b)におけるW1の値に換算すると、約3.5μmである。なおこれらの値は、流路の構造によって決まり、対象とする粒子の大きさによって、0.1%から30%の間で任意に設定することができる。また、これらの流量の分配割合は、流量・管径・圧力損失の関係を表したハーゲン・ポアズイユの式などをもとに計算することができる。また、導入口1、2、3から流量比約1:1:0.3で、粘度の同じ溶液を導入すると、導出口1,2,3からはそれぞれ、導入した全流量の約7%、68%、25%が流出するような設計になっており、これらの数値も、流量と抵抗の関係から計算する、あるいは任意の値に設定することができる。
以上の構成において、上記したマイクロ流路システムを用いた、短時間の粒子処理の実施例として、化学物質の暴露時間が細胞の生存率および表面構造に与える影響を評価するための細胞処理、より具体的には、界面活性剤を用いた細胞処理について説明する。
まず、粒子懸濁溶液としてはPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を用い、また、細胞処理溶液として、界面活性剤の持つ急性細胞毒性を評価するために、非イオン性界面活性剤Triton−X 100を0.1または0.2%(w/v)を含むPBSを用い、さらに、細胞洗浄溶液としても、細胞懸濁溶液として用いた溶液と同じく、PBSを用いた。また、細胞としてはHeLa細胞(直径8−30μm、平均直径18μm)を用い、PBSに懸濁した後に、40μmのフィルターを用いて、大きな細胞塊や粉塵等の除去を行った。
そして、用意した細胞懸濁溶液、細胞処理溶液、細胞洗浄溶液を、導入口1、2、3から、それぞれ連続的に供給した。なお、流体の供給のために、シリンジポンプを用いた定流量送液を行った。
この流路構造を用いた場合、入口流量比が約1:1:0.3の場合、直径約7μm以上の細胞は、導入口1から導出口1へと流れつつ、主流路(流路部D1)において、40の分岐点(DR1)における20番目の分岐点から、40の分岐点(DR2)における19番目の分岐点の間の領域において、細胞処理溶液(純度99%以上)の流れの中を通過する。
なお、モデル粒子として、粒径10μmのポリスチレン微粒子を0.5%(w/v)Tween80水溶液に懸濁させた懸濁溶液を導入口1から、粒子を懸濁させない溶液を導入口2、3から、それぞれシリンジポンプを用いて流量30、30、10μL/minで導入したところ、分岐点(DR1)より下流の主流路においては、粒子は壁側にそってほぼ一列に流れ、さらに、導入した粒子のほぼ100%は導出口1から排出されることが確かめられた。
さらに、溶液AとしてPBS、溶液Bとして蛍光物質を含むPBS、溶液CとしてPBSを、それぞれ導入口1、2、3から流速30、30、10μL/minで、図4(a)に示すマイクロ流路システムに導入し、蛍光物質の濃度を定量したところ、主流路(D)における、主流路(処理部DE)内での蛍光物質濃度は、導入口2から導入した溶液の蛍光物質濃度のほぼ100%であり、また、導出口1から排出された溶液中の蛍光物質濃度は、導入口2から導入した蛍光物質濃度の0.1%以下であり、これらの溶液間にほとんど混合が起こっていないことが確かめられた。
また、実際に、細胞としてHeLa細胞を用いた処理を行い、全体の流量を35μL/minから140μL/minに変化させ、また、図4(c)(d)にそれぞれ示した2種類の流路構造を用いることで、滞留時間(処理時間)を約10−200ミリ秒の間に変化させることができ、さらに、ハイスピードカメラを用いて観察を行った結果、滞留時間の平均値に対する標準偏差は、いずれの流速条件下でも10%以下であることが確認できた。
Triton−X 100の暴露時間による細胞生存率の変化を確認したところ、細胞の生存率は、処理時間が30ミリ秒程度以下の場合には、処理前と比較してほとんど差がないが、40ミリ秒程度を超えると劇的に減少し、100ミリ秒以上の場合には、ほぼ生存率は0%になることが分かった。
図5には、処理前後の細胞の表面を電子顕微鏡によって観察した写真を示した。図5(a)(b)(c)はそれぞれ、処理前、0.2% Triton−X100で約20ミリ秒処理、100ミリ秒処理、の細胞の写真であるが、処理時間が100ミリ秒の場合では、細胞の表面が大幅にダメージを受けている様子が観察され、化学物質の暴露時間の細胞に与えるダメージを、定性的・定量的に評価することに成功した。
なお、以上の実施例においては、界面活性剤が直接的にHeLa細胞表面の膜構造に与えるダメージについての評価を行ったが、目的に応じて、他の細胞種や化学物質を用いて、化学物質のもつ急性毒性の評価を行うことも可能である。
また、たとえば、細胞の膜上に存在するタンパク質の急速な構造変化を観察する場合には、処理溶液として、薬理活性を有する金属イオン・有機小分子・ペプチド等を含む溶液を、また、洗浄溶液として、細胞を固定化する成分を含んだ溶液をそれぞれ導入することで、処理時間を厳密に制御しつつ、細胞表面での分子構造変化を観察することが可能となる。
たとえば、表面に活性分子種を有する粒子を単体として用い、粒子処理溶液としてモノマー分子を含む溶液を、粒子洗浄溶液として反応停止作用のある溶液を用いることで、粒子表面において時間を制御しつつ高分子の重合を行うことができる。
さらに、同様な粒子を用い、表面における化学反応と洗浄を繰り返すことで、粒子を用いたDNA等の合成を、連続的かつ非常に迅速に行うことが可能となる。
本発明は、たとえば化学物質の細胞に対する毒性や薬理効果を評価するための、暴露時間と濃度を正確にコントロールできる手段を提供できる。また、本発明は、以上説明したように構成されているので、たとえば細胞生物学や構造生物学等の研究分野において、通常の装置では評価できない急速な膜分子構造変化を観察することができるため、たとえば新薬を設計・創造するための有用な手段となりうる。さらに、本発明は、以上説明したように構成されているので、たとえばFACSのようなフローサイトメトリー等の装置において、細胞を一定の時間処理あるいは染色するための前処理を簡便、正確、かつ連続的に行うことを可能とするシステムとして、広く利用されることが期待される。また、さらに、本発明は、以上説明したように構成されているので、たとえば粒子を用いた化学合成を行う際に、反応時間を正確に制御しつつ、多段階の反応を連続的に行うことができるため、鎖長を制御した高分子合成や、DNA・ペプチド等の合成を正確に行うことが可能となり、幅広い応用が期待される。
本発明による粒子処理用マイクロ流路システムを示す概略図である。 本発明による粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法の概略図、および原理図であり、図2(a)はマイクロ流路システムおよび内部の流れを模式的に表した図であり、図2(b)は主流路における粒子の動きと仮想的な流れを模式的に示した図である。 本発明による粒子処理用マイクロ流路システムの、図1および図2に示したシステムとは異なる形態を有するシステムの概略図を模式的に示した図である。 実施例1における粒子処理用マイクロ流路システムであり、図4(a)は流路システムの全体図であり、図4(b)と図4(c)は、図4(a)における部分AおよびBの拡大図、図4(d)は、図4(a)に示すマイクロ流体システムとは主流路(処理部DE)の形状の異なるマイクロ流路システムにおける図4(a)中の部分Bに相当する部分の拡大図である。 実施例1における液粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法を用いて処理した細胞の電気顕微鏡写真を示し、図5(a)(b)(c)はそれぞれ、Triton−X100を含む溶液を用いて(a)処理していない、(b)約20ミリ秒の処理を行った、(c)約100ミリ秒の処理を行った、HeLa細胞の電気顕微鏡写真である。

Claims (16)

  1. 平均粒径がRμm(Rは1以上100以下)である粒子の表面および/または内部を連続的に処理するための、主流路(D)に対し導入流路および導出流路を有するマイクロ流路システムであり、そのシステムが、
    (1)導入口(DP)より溶液A(組成a)が連続的に導入される直径1.5Rμm〜30Rμmの主流路(流路部D1)と、合流点(DP1)において主流路(流路部D1)に合流し溶液Aとは異なる組成の溶液B(組成b)が連続的に導入される導入流路(P1)、並びに合流点(DP1)より下流における分岐点(DR1)において主流路(流路部D1)より分岐し溶液Aおよび一部の溶液Bが排出される直径0.5Rμm〜10Rμmの導出流路(R1)、並びに分岐点(DR1)より下流における主流路(処理部DE)、から構成され、
    (2)さらに、主流路(処理部DE)の下流における直径1.5Rμm〜30Rμmの主流路(流路部D2)と、合流点(DP2)において主流路(流路部D2)に合流し溶液C(組成c)が連続的に導入される導入流路(P2)、並びに合流点(DP2)より下流における分岐点(DR2)において主流路(流路部D2)より分岐し、主流路(処理部DE)内を通過した溶液および一部の溶液Cが排出される直径0.5Rμm〜10Rμmの導出流路(R2)、並びに分岐点(DP2)の下流における主流路(D)の導出口(DR)、から構成され、
    (3)主流路(D)における分岐点(DR1)から主流路(処理部DE)へと流れる溶液の純度が、導入流路(P1)より導入された溶液B(組成b)の99%以上であり、
    (4)さらに主流路(D)における分岐点(DR2)から導出口(DR)へと流れる溶液の純度が、導入流路(P2)より導入された溶液C(組成c)の99%以上であり、
    (5)当該粒子が溶液A(組成a)と共に主流路(D)に導入され、主流路(D)内を流れる各組成の溶液内を連続的に通過し、導出口(DR)より回収されることを特徴とする、
    粒子処理用マイクロ流路システム。
  2. 請求項1の(1)の構成であるシステムユニット(U)が複数回繰り返され、使用される溶液が溶液B(組成b)あるいはそれ以外のものである、請求項1に記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  3. 導出流路(R1)および導出流路(R2)の本数がそれぞれ20本以上である、請求項1,2記載のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  4. 導出流路(R1)および導出流路(R2)の内径が、流れの方向に沿って徐々にあるいは段階的に大きくなる、請求項1〜3のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  5. 主流路(D)、導入流路(P1およびP2)、並びに導出流路(R1およびR2)が、導入口および導出口を除いて同一平面内に加工されており、流路の直径とは、流路の幅である、請求項1〜4のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  6. 合流点(DP1)と分岐点(DR1)が、互いに主流路の反対側の壁面に存在する、請求項5記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  7. 導出流路(R1)および導出流路(R2)の1本1本の間隔が5Rμm以下である、請求項1〜6のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  8. 主流路(D)に導入される溶液A(組成a)の流量に対し、導出流路(R1)から排出される溶液Aを含む溶液の流量が1.2倍以上である、請求項1〜7のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  9. 主流路(処理部DE)を流れる溶液の流量に対し、導出流路(R2)から排出される当該溶液を含む溶液の流量が1.2倍以上である、請求項1〜8のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  10. 主流路(D)内の粒子が、分岐点(DR1)より下流において1列に並んで流れる、請求項1〜9のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  11. 主流路(処理部DE)における粒子の滞留時間が10秒以下である、請求項1〜10のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  12. 主流路(処理部DE)における粒子の滞留時間が100ミリ秒以下である、請求項1〜10のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  13. 溶液C(組成c)が溶液A(組成a)である、請求項1〜12のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  14. 使用する粒子が細胞、ウイルス、バクテリア等の生体粒子である、請求項1〜13のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  15. 使用する粒子の形状が球形もしくは非球形であり、粒子の粒径とは、その粒子を閉じ込めることができる最小体積の直方体あるいは立方体における最小の辺の長さである、請求項1〜14のいずれか1項記載の粒子処理用マイクロ流路システム。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項記載のマイクロ流路システムを利用する、粒子処理方法。
JP2008101939A 2008-03-12 2008-03-12 粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法 Expired - Fee Related JP4982768B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008101939A JP4982768B2 (ja) 2008-03-12 2008-03-12 粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008101939A JP4982768B2 (ja) 2008-03-12 2008-03-12 粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009213460A JP2009213460A (ja) 2009-09-24
JP4982768B2 true JP4982768B2 (ja) 2012-07-25

Family

ID=41186034

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008101939A Expired - Fee Related JP4982768B2 (ja) 2008-03-12 2008-03-12 粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4982768B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010071857A (ja) * 2008-09-19 2010-04-02 Sekisui Chem Co Ltd 血漿分離装置
JP5594658B2 (ja) * 2010-01-21 2014-09-24 一般財団法人生産技術研究奨励会 物質分布制御方法、デバイス、細胞培養方法、細胞分化制御方法
KR101993907B1 (ko) * 2015-04-16 2019-06-27 주식회사 엘지화학 고농도 그래핀 용액의 제조 방법
JP6647140B2 (ja) * 2016-05-23 2020-02-14 新日本無線株式会社 生体試料採取器及び生体試料の採取方法
WO2018212309A1 (ja) * 2017-05-17 2018-11-22 公立大学法人大阪府立大学 粒子捕捉装置及び粒子捕捉方法
WO2020036115A1 (ja) * 2018-08-14 2020-02-20 株式会社 TL Genomics 流体デバイス
WO2020045434A1 (ja) * 2018-08-28 2020-03-05 京セラ株式会社 粒子分離デバイスおよび粒子分離装置
DE102021208185A1 (de) * 2021-07-29 2023-02-02 Carl Zeiss Microscopy Gmbh Probenträger und dessen Verwendung sowie Verfahren, insbesondere zur Detektion von Pathogenen
JP2024013993A (ja) * 2022-07-21 2024-02-01 株式会社Screenホールディングス 分離装置

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001281233A (ja) * 2000-03-28 2001-10-10 Inst Of Physical & Chemical Res 水性分配用マイクロチップおよびそれを用いた水性分配方法
JP2007021465A (ja) * 2005-07-12 2007-02-01 Minoru Seki 粒子を連続的に濃縮・分離するための流路構造および方法
JP2007175684A (ja) * 2005-12-26 2007-07-12 Minoru Seki 微粒子の濃縮・分級のための流路構造および方法
JP5121155B2 (ja) * 2006-03-14 2013-01-16 独立行政法人物質・材料研究機構 形質転換細胞集団の作成方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009213460A (ja) 2009-09-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4982768B2 (ja) 粒子処理用マイクロ流路システムおよび粒子処理方法
US11944971B2 (en) Sorting particles in a microfluidic device
US11052392B2 (en) Microfluidic device for cell separation and uses thereof
Kang et al. Intracellular nanomaterial delivery via spiral hydroporation
US20140008210A1 (en) Methods and compositions for separating or enriching cells
Chung et al. Highly permeable silicon membranes for shear free chemotaxis and rapid cell labeling
KR101807256B1 (ko) 입자 분리 장치 및 입자 분리 방법
JP2008136475A (ja) 細胞捕捉装置及びそれを利用した細胞操作方法
JP6746619B2 (ja) マイクロ流体デバイス
US20160237397A1 (en) Methods and devices for breaking cell aggregation and separating or enriching cells
Ahmed et al. A pumpless acoustofluidic platform for size-selective concentration and separation of microparticles
Zhang et al. Design of a single-layer microchannel for continuous sheathless single-stream particle inertial focusing
EP3684507B1 (en) Particle sorting in a microfluidic system
JP7417294B2 (ja) クロスフローろ過装置
Wang et al. On-Chip Label-Free Sorting of Living and Dead Cells
JP2022032224A (ja) 粒子分離装置及び分離方法
JP2021065880A (ja) 粒子分離装置及び分離方法
Chen et al. Microfluidics chips for blood cell separation
Chen acoustofluidics in biomedical applications

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110117

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120308

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120315

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120330

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150511

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees