JP2022032224A - 粒子分離装置及び分離方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、HDFにおける粒子分離処理用を向上させる粒子分離装置および粒子分離方法を提供することにある。【解決手段】分岐口を備える主流路の壁面における流路幅を長くするという単純な流路構造の改良により、粒子分離処理量が分岐口を備える主流路の壁面における流路幅の長さに略比例して向上することを見出した。【選択図】 図2
Description
本発明は、流体中に含まれる粒子の分離装置及び前記装置を用いた流体中に含まれる粒子を操作する方法に関するものである。
マイクロスケール又はそれ以下の粒子や細胞を大きさごとに分離する技術は、生化学、診断医療や様々な工業分野で用いられる技術である。例えば、他の細胞に分化する造血幹細胞や、ES細胞のような幹細胞は、細胞分化の研究のために多くの細胞群から幹細胞のみを分離する必要がある。また、がんを診断するために、患者の血液中に循環腫瘍癌細胞(CTC)が含まれるかどうかの検査はがん検診の新たな方法で着目されている。一般にこれらの幹細胞やCTCは他の細胞とそのサイズが異なっているため、そのサイズ差を利用して他の細胞群から分離することが期待できるため、マイクロスケールまたはそれ以下のサイズ差で粒子や細胞を分離する技術は極めて重要な技術である。
それらの粒子や細胞を分離する技術として、比較的操作が簡便なものでは遠心分離やフィルトレーションといった手法、外力を利用する電場や磁場を用いた手法などが知られている。しかしながら、遠心分離やフィルトレーションは細胞分離に用いると物理的な刺激を与えてしまうため、生存率の低下につながることに加え、 分離精度が低いといった問題点がある。また、電場や磁場を用いる手法は、サンプルを修飾するといった操作が必要である場合があることに加え、外力を負荷する装置や設備が必要となるため操作が煩雑になるといった問題がある。
一方、近年フォトリソグラフィーや3Dプリンティングといった微細加工技術を利用して、幅が数ミクロン~数百ミクロンの微小な流路(マイクロ流路)を用いた粒子や細胞の分離技術が広く研究、開発されている(非特許文献1乃至2)。マイクロ流路内では層流が安定的に保たれるため、流路内の流体を精密に制御でき、流体に懸濁した粒子や細胞を高精度に分離することができる。
例えば、特許文献1に、ハイドロダイナミックフィルトレーション(HYDRO-DYNAMIC FILTRATION)(以下HDFと記載)という手法が報告されている。この手法は複雑な機器・装置を必要とせず、マイクロチップ中の流路内に粒子を含む流体を導入するだけで、サイズによって粒子を連続的に分離でき、複数のフラクションへの分離も可能となる。つまり、例えば大きさで分離する場合、大きいものと小さいものという2段階だけではなく、大きさによる3グループ以上の集団へと分離することができる。
HDFは、主流路に対して分岐する流路を少なくとも1以上持つ流路構造を用い、分岐流路へ流れる粒子の直径が、当該粒子の直径と、分岐流路の分岐口の形状及び大きさ、並びに分岐流路の長さなどのスケールのうちいずれか1つ以上が適当に調節されることによって決まることに着目した分離方法であり、連続的にかつ精密に分離が可能な技術である。HDFでは、特許文献1に記載のように、1つの流体導入口と2つ以上の流体回収口を持つ構造を用いることができ、例えば流体導入口から目的の粒子を含む液(以下、サンプル液)を流し、分岐流路においてある一定の直径以下の粒子のみが流れることで粒子分離を実施することができる。
ここで、俯瞰図(図1)の流路構造において、流路の流れ方向(長手方向)をx軸とし、紙面奥行き方向をz軸、前記x、z軸に直交する方向をy軸とした場合に、HDFにおける粒子分離処理量は、一般に、サンプル液の流量の増大、または当該流路構造を持つマイクロチップを並列化することによって向上する(非特許文献4)。
Analytical Chemistry、76、5465-5471、2004.
Lab on a chip、9、939-948、2009.
Lab on a chip、5、778-784、2005.
Lab on a chip、10、1828-1837、2019.
しかしながら、処理量を向上させるためにサンプル液の流量を増大させた場合、圧損の上昇による影響で流路の破断や配管接続部からの液漏れが問題となる。また流路の材質が可撓性材料(例えばポリジメチルシロキサン(以下PDMS))の場合は、流量増加に伴うせん断力の上昇により狭隘部のy軸方向の流路幅50が拡幅し、分離能が低下することも懸念されるなど、流量の増大による処理量の増加には限界がある。一方でマイクロチップを並列化した場合、並列数に比例して処理量が増大するものの、マイクロチップの材料、製造コストもこれに比例して増加することになり、産業利用上の障壁となりうる。
本発明は、HDFと同様の分離原理を利用し、より簡便で低コストでありながら、単位時間当たりの粒子分離処理量を向上させるための粒子分離装置及びその方法を提供する。
本発明は上記課題を鑑み、z軸方向の流路幅51を長くするという単純な流路構造の改良により、粒子分離処理量がz軸方向の流路幅51の長さに略比例して向上することに着目してなされたものである。
従って、前記観点において、本発明は以下のものに関する。
[1] 少なくとも2組の対向する2つの壁面から形成され、1の末端において少なくとも1の流体導入口に流体的に接続され、もう一方の末端において少なくとも1の流体回収口に流体的に接続される主流路と、
主流路の1の壁面から分岐し、末端において少なくとも1の流体回収口に流体的に接続される少なくとも1の分岐流路と、
を含む粒子分離装置であって、
(1)主流路と分岐流路の分岐点において形成された分岐口が、分岐口が形成された主流路の壁面における流路幅に渡って連続又は断続的に位置し
(2)前記分岐流路の分岐口の形状及び大きさ、並びに分岐流路の長さが適当に調節されることで、ある一定サイズ以上の大きさを持つ粒子が流入しない前記分岐流路を備え、
(3)分岐口を備える主流路の壁面における流路幅が、分岐口を備える主流路の壁面と、分岐口を備える主流路の壁面に対向する主流路の壁面との間の距離よりも長いことを特徴とする、前記粒子分離装置。
[2]前記分岐流路が少なくとも2以上存在し、かつ前記分岐流路の各末端が合流流路に各々合流し、前記合流流路は1以上の流体回収口をもつことを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[3]前記合流流路の2組の対向する壁面のうち何れか一方または両方が、流体の流れに対して下流方向に沿って拡大していくことを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[4]前記分岐流路のz軸方向の長さが、前記主流路のz軸方向の長さとほぼ同一であることを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[5]前記分岐流路が複数のピラー形状により構成されることを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[1] 少なくとも2組の対向する2つの壁面から形成され、1の末端において少なくとも1の流体導入口に流体的に接続され、もう一方の末端において少なくとも1の流体回収口に流体的に接続される主流路と、
主流路の1の壁面から分岐し、末端において少なくとも1の流体回収口に流体的に接続される少なくとも1の分岐流路と、
を含む粒子分離装置であって、
(1)主流路と分岐流路の分岐点において形成された分岐口が、分岐口が形成された主流路の壁面における流路幅に渡って連続又は断続的に位置し
(2)前記分岐流路の分岐口の形状及び大きさ、並びに分岐流路の長さが適当に調節されることで、ある一定サイズ以上の大きさを持つ粒子が流入しない前記分岐流路を備え、
(3)分岐口を備える主流路の壁面における流路幅が、分岐口を備える主流路の壁面と、分岐口を備える主流路の壁面に対向する主流路の壁面との間の距離よりも長いことを特徴とする、前記粒子分離装置。
[2]前記分岐流路が少なくとも2以上存在し、かつ前記分岐流路の各末端が合流流路に各々合流し、前記合流流路は1以上の流体回収口をもつことを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[3]前記合流流路の2組の対向する壁面のうち何れか一方または両方が、流体の流れに対して下流方向に沿って拡大していくことを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[4]前記分岐流路のz軸方向の長さが、前記主流路のz軸方向の長さとほぼ同一であることを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
[5]前記分岐流路が複数のピラー形状により構成されることを特徴とする、前記記載の粒子分離装置。
本発明により、HDFと同様の分離原理を利用しながら、より簡便で低コストかつ高い粒子分離処理量を達成した粒子分離装置及びその方法を提供することができる。これにより、従来では困難であった、粒子サイズによる精密な分離と高い粒子分離処理量の両立が可能となる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示にのみ限定されるものでは無い。
図2に、本発明における粒子分離装置及び方法の実施形態を備えた、マイクロチップの概略図をそれぞれ示している。図2に示すx軸方向は主流路100中の流体が流れる方向を示し、分岐流路の分岐口を備える主流路壁面に平行であって、主流路100中の流体が流れる方向に直交する方向をz軸方向とし、x軸とz軸に直交する方向をy軸方向とする。1の実施形態では、分岐流路はy軸方向に形成することができ、それにより分岐流路が、主流路に対し直交する。
1の実施形態では、主流路100は、x-z平面に平行な1組の対向する壁面10a、10bと、x-y平面に平行な1組の対向する壁面11a、11bとで囲まれる空間をもつものとする。この時、本発明においては、z軸方向の流路幅51が、y軸方向の流路幅50よりも長いことを特徴としており、少なくとも3倍以上長く、好ましくは5倍以上長く、より好ましくは10倍以上長いことが好ましい。本発明において、分岐口が形成された主流路の壁面における流路幅は、当該壁面に交わる主流路壁面間の距離を指し、一の態様ではz軸方向の流路幅51を指す。本発明において、分岐口を備える主流路の壁面と、分岐口を備える主流路の壁面に対向する主流路の壁面との間の距離とは、y軸方向の流路幅50を指す。
本発明の粒子分離装置の主流路の1の末端において、少なくとも1の流体導入口に流体的に接続され、もう一方の末端において少なくとも1の流体回収口に流体的に接続される。流体的に接続とは、流路内に流体を配置した際に、流体が漏出することなく接続されていることを意味する。末端側が壁面により取り囲まれることで、流体導入口又は流体回収口に流体的に接続される。主流路と流体導入口又は流体回収口との接続のために、中継流路や拡大流路を備えてもよい。
図2における主流路100の流路構造は、どの地点においてもy-z平面断面形状が矩形であり、流路幅50は均一である。また、流路幅50の長さが一定となるように、必要に応じて主流路中へピラー構造を設けてもよい。ピラーの断面形状(x-z平面断面形状)は構造作製の容易さの観点で、矩形や略円形であることが好ましいが、多角形や不定形を用いてもよい。但し前記ピラー構造は、図2においてx-z平面に平行な主流路壁面に接して存在するものとする。
上述の主流路の断面形状(図2におけるy-z平面)は、流路構造の作製上の容易さから矩形であることが望ましいが、円形や楕円形、多角形などの断面であってもよく、また部分的に矩形以外の形状であってもよい。同様に主流路100の流路構造中の流路幅50はその作製上の容易さから一定であることが好ましいが、部分的に深さが異なっていてもよい。一方で、より正確に流体を下流へ送りたい場合は、部分的に深さが異なる構造を設けて圧損を調整することで、サンプル液が導入される流路への逆流を抑制する、またはヘッド圧等の外的要因により引き起こされる流量変動を抑制することが可能となるため、部分的に深さが異なる構造を設けた方が好ましい場合もある。
主流路100のx-z平面の形状(即ちy軸方向から俯瞰した場合の形状)は、図2(b-1)のように、流体導入口12、流体導入口中継流路14、流体導入口拡大流路16、分離流路18、流体回収口拡大流路17、流体回収口中継流路15、流体回収口13から構成されても良いが、流路構造の簡略化のために、流体導入口中継流路14、流体回収口中継流路15を削除してもよく(図2(b-2))、更に流体導入口拡大流路16、流体回収口拡大流路17を削除してもよい(図2(b-3))。
ここで、流体導入口と流体回収口は、任意の形状であってよく、一例として図2記載の円形以外に矩形、略円形を用いてもよい。流体導入口はマイクロチップの外から導入された流体を保持する機能を果たすものであればよく、流体回収口は流体をマイクロチップの外へ排出または回収する機能を果たすものであればよい。
流体導入口中継流路は、流体導入口と流体導入口拡大流路を流体的に接続させる流路であればよく、例えば、x-y平面に平行な1組の対向する壁面間の距離は、流体導入口の直径と同一またはそれ以下であることが好ましい。
流体回収口中継流路は、流体回収口と流体回収口拡大流路を流体的に接続させる流路であればよく、例えば、x-y平面に平行な1組の対向する壁面間の距離は、流体回収口の直径と同一またはそれ以下であることが好ましい。
流体導入口拡大流路は、流体導入口または流体導入口中継流路から流入してきた流体を分離流路へ流出させる役割を果たせばよく、図2記載の通り、下流へ向かって徐々に流路幅51が拡大してもよく、下流へ向かって枝分かれしていく流路構造を用いても良い。
流体回収口拡大流路は、流体回収口または流体回収口中継流路へ流体を流出させる役割を果たせばよく、図2記載の通り、下流へ向かって徐々に流路幅51が縮小してもよく、下流へ向かって枝分かれが合流していく流路構造を用いても良い。
ここで、上述の枝分かれの構造は、マイクロチップ内の流路に流体を均一に導入するための1以上の分岐部からなる構造であり、分岐部が多い方が流路に均一に流体を導入することができるため、流路幅に合わせて分岐の数を調整することが好ましい。これは、一般に、図2におけるx、y、z軸方向の少なくとも1つ以上の長さがマイクロ~ミリレベルの構造をもつ流路において、流速分布が壁面近傍と流路中央で異なる現象に基づく施策であり、流体を均一に導入するという目的を達成するものであれば必ずしも前記枝分かれ構造を用いる必要はなく、他の構造を用いても良く、例えば1以上のピラー構造を設ける態様としてもよい。
分岐流路101は、主流路の1の壁面から分岐して形成される。主流路と分岐流路との接触部において分岐口を形成する。一の実施形態では、y-z平面に平行な1組の対向する壁面20a、20bと、x-y平面に平行な1組の対向する壁面21a、21bとで囲まれる空間をもち、分岐流路の何れかの末端が主流路へ流体的に接続しているものとする(図2)。これにより主流路と分岐流路の分岐点において形成された分岐口が、分岐口が形成された主流路の壁面における流路幅に渡って、連続的に位置することになる。この時、本発明においては、x-z平面に平行方向の流路幅61が、x-y平面に平行方向の流路幅60よりも長いことを特徴としており、少なくとも3倍以上長く、好ましくは5倍以上長く、より好ましくは10倍以上長いことが好ましい。また、分岐流路の流路幅61は主流路の流路幅51と同等の長さであることが好ましい。
分岐流路は、図2記載の通り、流路構造の作製上の容易さからx-z平面の断面が矩形であることが望ましいが、円形や楕円形、多角形などの断面であってもよく、また部分的に矩形以外の形状であってもよい。同様に、x-y平面の断面についても矩形であることが望ましいが、円形や楕円形、多角形などの断面であってもよく、また部分的に矩形以外の形状であってもよい。
分岐流路101の末端の内、主流路へ流体的に接続していない側の末端は、図2記載の通り開放系にされていてもよく、何れかの回収手段と流体的に接続していても良い。
分岐流路101は少なくとも1本設けることが好ましく、分離後のサンプルの純度を上げるために、複数本設けることがさらに好ましい。
前記分岐流路の分岐口の形状及び大きさ、並びに分岐流路の長さを調節することで、分岐流路における流量の調節が可能になる。分岐流路における流量と、主流路下流における流量比により、分岐流路へ流入する粒子の直径の制御が可能になる。分岐流路が、主流路に対し直交する態様では、x、z軸方向の長さを調節することで分岐口の形状及び大きさが決定され、分岐流路のy軸方向の長さを調節することで、分岐流路の長さを調節することができる。分岐口の形状及び大きさが大きいほど、分岐流路下流へと流れる流入量が多くなる。分岐流路の長さを長くするほど、分岐流路への流入量が減少する。
分岐流路が、主流路に対し直交し、かつ複数の分岐流路101を設けた態様において、各分岐流路のx、y、z軸方向の長さは、少なくとも何れかの長さが適当に調節されることで、ある一定サイズ以上の大きさを持つ粒子が流入しないよう設計されている必要があり、複数の分岐流路のx、y、z軸方向の長さはそれぞれ異なっていても良い(即ち、ある分岐流路Aと別の分岐流路Bがあった場合に、分岐流路Aのx軸方向の長さと、分岐流路Bのx軸方向の長さは異なっても良い)。
更に、分岐流路101が複数存在する態様において、各分岐流路101の主流路へ流体的に接続していない側の末端の何れか複数もしくは全てを、合流流路19で流体的に接続し、分岐流路内を流れる粒子をまとめて回収してもよい。この場合、図2の態様と比較し、流体回収口の総数が減るため、装置構造全体としての構造を簡略化できる点で好ましい。
また前述の合流流路は、合流流路の流体回収口側、即ち下流に進むにしたがって、x-y平面またはx-z平面に平行な1組の対向する壁面間の距離が徐々に、または段階的に拡大してもよく、場合によっては徐々に、または段階的に縮小してもよい。
分岐流路101は、図2記載の直方体構造以外に、図4記載のピラー構造を用いても良い。この場合、ピラーの断面形状(x-z平面断面形状)は構造作製の容易さの観点で、矩形や略円形であることが好ましいが、多角形や不定形を用いてもよい。但し前記ピラー構造は、x-z平面に平行な主流路壁面に接して存在するものとする。これにより主流路と分岐流路の分岐点において形成された分岐口が、分岐口が形成された主流路の壁面における流路幅に渡って、断続的に位置することになる。
ピラー構造の分岐流路101を用いる場合も同様に、各分岐流路101の主流路へ流体的に接続していない側の末端の何れか複数もしくは全てを、合流流路で流体的に接続し、分岐流路内を流れる粒子をまとめて回収してもよい(図5)。本態様でも同様に、前述の合流流路は、合流流路の流体回収口側、即ち下流に進むにしたがって、x-y平面またはx-z平面に平行な1組の対向する壁面間の距離が徐々に、または段階的に拡大してもよく、場合によっては徐々に、または段階的に縮小してもよい。
さらに、これまでに記載した分岐流路101は、x軸に直交しy軸に平行な方向へ伸びているもの、即ち主流路100と分岐流路をx-y平面で俯瞰した際の、両流路の角度が90°となるもののみを記載しているが、それ以上またはそれ以下の角度で前記両流路が流体的に接続されていてもよい。
本発明に記載のマイクロチップは、粒子をその大きさにより分離し、適当な回収系を用いることにより、サンプル液中の粒子を粒径ごとに分取するためのマイクロチップであり、例えば、PDMSなどの高分子(ポリマー)材料や、ガラスや金属等の硬く撓みが少ない材料により形成された平板上の構造を有していてよい。
ここで回収系とは、分離した粒子を回収するために用いられる構造ないし機構であり、例えば図2の流体回収口が該当し、前記流体回収口へ接続する樹脂製または金属製等の配管や、分離した粒子を回収する容器も含まれる。さらに前記配管の下流側の出口へ、分離した粒子を回収する容器を準備してもよい。この時、前記流体回収口や配管内を通過する流体の抵抗により、前記2つの流体回収口へ流入してくる流体の分配比が変化する可能性があるため、前記流体回収口や配管の内径、長さを適宜調整することが好ましい。
マイクロチップを作製する場合に用いる技術としては、例えば、モールディングやエンボッシングといった鋳型を用いる作製技術は、流路構造を正確かつ容易に作製可能であるという点において好ましいが、その他にも、フォトリソグラフィー、ソフトリソグラフィー、ウェットエッチング、ドライエッチング、ナノインプリンティング、レーザー加工、電子線直接描画、機械加工等、3Dプリンターの作製技術を用いることも可能である。但し、一般的なフォトリソグラフィーにより鋳型、流路を作製する場合、作製可能なアスペクト比(構造深さ/構造幅;但しここでの構造深さとは、フォトリソグラフィーにおいてレジストを感光させる紫外光の進行方向の構造長さを構造深さ、前記進行方向に対して垂直方向の構造長さを構造幅とする)3以上の構造の作製には、高精度な微細加工技術が必要であり、流路作製の操作が煩雑化し、コストの増加にもつながってしまうため、低アスペクト比の構造でもマイクロチップを構成できるよう、主流路を1層目、分岐流路を2層目とし、これらを積層させた構造を用いてもよい。例えば、図2記載の構造であれば、図2(c)記載のように、主流路を持つ1層目と、分岐流路となる貫通構造を複数持つ2層目を積層するかたちで構成してもよく、図3記載の構造であれば、図3(b)記載のように、主流路を持つ1層目と、分岐流路となる貫通構造を複数持つ2層目と、合流流路を持つ3層目を積層するかたちで構成してもよい。また、図4の通り分岐流路をピラー構造として用いる場合は、前述の貫通構造をピラー構造にすることで構成すればよく、さらに3層目として合流流路を持つ3層目を積層し図5の構成としても良い。
また、マイクロチップを作製する場合の材質としては、PDMS、アクリル等の各種ポリマー材料を用いることができ、また、これらの材料のうち、任意の2種類の基板を組み合わせて用いることも可能である。ただし、流路自体を安価に作製し、ディスポーザブルな装置を提供するためには、ポリマー材料を用いることが好ましい。
続いて、本発明の分離原理について図6を用いて詳しく説明する。
HDFにおける粒子分離において、主流路上流から導入された粒子が、そのまま主流路の下流へと流れていくか、分岐流路へ流入するかについては、(1)粒子の直径(2)当該粒子の重心位置が主流路内のどこに存在しているか、に依存して決定する。すなわち、図6に示した境界線80と、分岐流路101が存在する側の主流路壁面10aとの間に粒子の重心位置が存在する粒子は分岐流路へ、それ以外の粒子は主流路側へと流入する。ここで、境界線80と、分岐流路101が存在する側の主流路壁面10aとの間に粒子の重心位置が存在する粒子は、それだけ粒子の重心位置が壁面近くにまで存在できるという点で直径が小さい粒子であり、直径の大きい粒子の重心位置は壁面近傍には存在し得ないために、図6の通り、粒子そのものの直径により分離が可能となる(境界線80と、分岐流路101が存在する側の主流路壁面10aとの間の距離をw1とすると、分岐流路に流入する粒子は、半径がw1よりも小さいものとなる)。当然、境界線80と、分岐流路101が存在しない側の主流路壁面10bとの間に重心位置が存在する直径の小さい粒子は、そのまま主流路下流へと流れていくために分離がされないため、分岐流路を複数設ける、または主流路の流れを往復させることで繰り返し分離を行うことで、分離したい粒子の純度を上げることが可能になる。
HDFにおける粒子分離において、主流路上流から導入された粒子が、そのまま主流路の下流へと流れていくか、分岐流路へ流入するかについては、(1)粒子の直径(2)当該粒子の重心位置が主流路内のどこに存在しているか、に依存して決定する。すなわち、図6に示した境界線80と、分岐流路101が存在する側の主流路壁面10aとの間に粒子の重心位置が存在する粒子は分岐流路へ、それ以外の粒子は主流路側へと流入する。ここで、境界線80と、分岐流路101が存在する側の主流路壁面10aとの間に粒子の重心位置が存在する粒子は、それだけ粒子の重心位置が壁面近くにまで存在できるという点で直径が小さい粒子であり、直径の大きい粒子の重心位置は壁面近傍には存在し得ないために、図6の通り、粒子そのものの直径により分離が可能となる(境界線80と、分岐流路101が存在する側の主流路壁面10aとの間の距離をw1とすると、分岐流路に流入する粒子は、半径がw1よりも小さいものとなる)。当然、境界線80と、分岐流路101が存在しない側の主流路壁面10bとの間に重心位置が存在する直径の小さい粒子は、そのまま主流路下流へと流れていくために分離がされないため、分岐流路を複数設ける、または主流路の流れを往復させることで繰り返し分離を行うことで、分離したい粒子の純度を上げることが可能になる。
ここで境界線80について説明する。層流条件におけるマイクロ流路内での速度分布は、圧力送液の場合は図6に記載の通り放物線状の速度分布を示す。この時、主流路100y軸方向の流路幅50の半値をrとすると、放物線の関数u(r)は、主流路100のy-z平面の断面が円管の場合はハーゲン・ポアズイユの式より、矩形の場合は、矩形の速度分布式(H.Bruus,Theoretical Microfluidics, Oxford University Press, 1st edn,2007)より導出され、境界線80で分割される放物線内を各々積分した面積Sb、Smは、主流路下流へと流れる流量をQm、分岐流路下流へと流れる流量をQbとすると、Sb:Sm=Qb:Qmの関係が成り立つ。従って、Qb、Qmの比を調整することで、境界線80の位置を調整することが可能で、これにより分岐流路101へ流入する粒子の直径の制御が可能となる。ここで、主流路下流へと流れる流量Qm、分岐流路下流へと流れる流量Qbそれぞれは、前述の通り、主流路100または分岐流路101の分岐口の形状及び大きさ、並びに分岐流路の長さによって調整されるため、分離したい粒子の直径に応じて、適宜調整されるべきである。分岐流路が、主流路に対し直交する態様では、分岐流路のx、z軸方向の長さを調節することで分岐口の形状及び大きさ決定され、分岐流路のy軸方向の長さを調節することで、分岐流路の長さを調節することができる。
流路内部における流量条件を達成するための導入量の調節方法として、導入口からシリンジポンプ等を用いて溶液を導入することが操作上簡便であり好ましいが、ペリスタポンプ等の他のポンプを用いる手法、ボンベ、圧力装置等を用いた定圧送液方法、液面差を用いる方法、電気浸透流や遠心力等を用いた送液方法などを用いることも可能である。また、流体回収口から陰圧を付す圧力装置を用いることもできる。
なお、粒子の安定的かつ効率的な分離を達成するためには、流路内で安定な層流が保たれることが望ましく、具体的には、レイノルズ数が2300以下になる条件下で送液操作を行うことが好ましく、1000以下になる条件がさらに好ましい。
分離を行う粒子としては、目的に応じて、ポリスチレン等のポリマー粒子、金属微粒子、セラミックス粒子、またはそれらの表面に物理的あるいは化学的な処理を施した粒子を用いることができる。また、本発明では、粒子にかかる外圧や変形を及ぼす力が少ないため、従来の分離方法であるフィルターなどでは、破裂や破壊が生じてしまう微粒子や細胞、その構成要素であるオルガネラなどの生物粒子、ウイルス、細菌、エクソソーム等の細胞外小胞、タンパク質、タンパク質凝集体を処理できる、という優れた効果を発揮する。分級対象とする粒子の最大直径はマイクロチップにおける主流路のy軸方向の長さ未満であれば、任意の大きさの粒子を分離することができる。例えば、主流路のy軸方向の長さが100μmである流路を用いる場合、分離される粒子の最大直径は、100μm未満である。
粒子を懸濁させた流体としては、任意の液体または気体を用いることができ、目的に応じて様々な溶液を用いることができる。例えば、粒子としてポリマー粒子や金属粒子を用いる場合には、各種化学物質を含む水溶液の他、有機溶液、イオン性流体等を用いることができる。さらに、粒子として細胞等の生物粒子を用いる場合には、細胞培養液や生理緩衝液などの細胞と等張の水溶液を用いるのが好ましい。ただし、例えばバクテリアや植物細胞のような比較的低張あるいは高張溶液に対し耐性をもつ細胞の場合には、必ずしも等張である必要はない。また、操作の都合上、溶液の密度と粒子の密度の差が大きくない系がより好ましい。流体の粘度に関しては、これらの粘度における差が小さい系がより好ましいが、粒子の処理を可能とするシステムであれば、粘度に差があってもよい。
10a、b 主流路壁面(x-z平面に平行)
11a、b 主流路壁面(x-y平面に平行)
12 主流路流体導入口
13 主流路流体回収口
14 流体導入口中継流路
15 流体回収口中継流路
16 流体導入口拡大流路
17 流体回収口拡大流路
18 分離流路
19 合流流路
20a、b 分岐流路壁面(x-z平面に平行)
21a、b 分岐流路壁面(x-y平面に平行)
30 回収流路
50 x-y平面に平行方向の主流路幅
51 x-z平面に平行方向の主流路幅
60 x-y平面に平行方向の分岐流路幅
61 x-z平面に平行方向の分岐流路幅
80 境界線
100 主流路
101 分岐流路
300a、300b 粒子
500 領域
11a、b 主流路壁面(x-y平面に平行)
12 主流路流体導入口
13 主流路流体回収口
14 流体導入口中継流路
15 流体回収口中継流路
16 流体導入口拡大流路
17 流体回収口拡大流路
18 分離流路
19 合流流路
20a、b 分岐流路壁面(x-z平面に平行)
21a、b 分岐流路壁面(x-y平面に平行)
30 回収流路
50 x-y平面に平行方向の主流路幅
51 x-z平面に平行方向の主流路幅
60 x-y平面に平行方向の分岐流路幅
61 x-z平面に平行方向の分岐流路幅
80 境界線
100 主流路
101 分岐流路
300a、300b 粒子
500 領域
Claims (5)
- 少なくとも2組の対向する2つの壁面から形成され、1の末端において少なくとも1の流体導入口に流体的に接続され、もう一方の末端において少なくとも1の流体回収口に流体的に接続される主流路と、
主流路の1の壁面から分岐し、末端において少なくとも1の流体回収口に流体的に接続される少なくとも1の分岐流路と、
を含む粒子分離装置であって、
(1)主流路と分岐流路の分岐点において形成された分岐口が、分岐口が形成された主流路の壁面における流路幅に渡って連続又は断続的に位置し
(2)前記分岐流路の分岐口の形状及び大きさ、並びに分岐流路の長さが適当に調節されることで、ある一定サイズ以上の大きさを持つ粒子が流入しない前記分岐流路を備え、
(3)分岐口を備える主流路の壁面における流路幅が、分岐口を備える主流路の壁面と、分岐口を備える主流路の壁面に対向する主流路の壁面との間の距離よりも長いことを特徴とする、前記粒子分離装置。 - 前記分岐流路が少なくとも2以上存在し、かつ前記分岐流路の各末端が合流流路に各々合流し、前記合流流路は1以上の流体回収口をもつことを特徴とする、請求項1に記載の粒子分離装置。
- 前記合流流路の2組の対向する壁面のうち何れか一方または両方が、流体の流れに対して下流方向に沿って拡大していくことを特徴とする、請求項2に記載の粒子分離装置。
- 前記分岐流路のz軸方向の長さが、前記主流路のz軸方向の長さとほぼ同一であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子分離装置。
- 前記分岐流路が複数のピラー形状により構成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子分離装置。
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---|---|---|---|
JP2020135794A JP2022032224A (ja) | 2020-08-11 | 2020-08-11 | 粒子分離装置及び分離方法 |
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