JP4968958B2 - 列車制御装置 - Google Patents

Description

この発明は、無絶縁軌道回路における列車検知機能と列車に対して速度制御情報を送信する機能を一体化した列車制御装置に関するものである。

列車の速度を自動的に制限速度以下に制御するため地上と列車の間で情報を授受する列車制御装置は、あらかじめ先行列車との間隔と曲線や分岐等の進路の条件等により定まる停止目標位置と現在の在線位置を示す符号化した列車制御信号波（ＡＴＣ信号波）を地上から列車に伝送し、車上装置は受信したＡＴＣ信号波から算出される停止目標位置までの照査速度パターンに基づき連続的に列車を減速する方法である。

この地上と列車との間で情報を伝送するために軌道回路を利用して列車検知を行うとともに列車の速度を自動的に制限速度以下に制御する従来の列車制御装置は、特許文献１に示すように、列車検知信号波（ＴＤ信号波）とＡＴＣ信号波を別々に軌道回路に送信している。ＴＤ信号波は各軌道回路の列車進出側の境界から常時送信し、送信したＴＤ信号波を軌道回路の列車進入側で受信しているときは、その軌道回路に列車なしと判断している。この列車なしの状態の軌道回路に列車が進入して列車進入側でＴＤ信号波を受信しなくなると、その軌道回路に列車が在線したと判断している。ＡＴＣ信号波は列車が在線している軌道回路にのみ列車進出側の境界から送信する踏込み送信が採用されている。

無絶縁軌道回路の境界においては、相隣接する軌道回路、例えば図５に示すように、軌道回路３Ｔの３Ｔ送信器５と軌道回路４Ｔの４Ｔ受信器７の送受信点が同一位置に設けられ、軌道回路３Ｔの３Ｔ送信器５からの３Ｔ用送信波が軌道回路４Ｔの４Ｔ受信器に回り込む。ＴＤ信号波は軌道回路の回り込みを前提に、複数波を用意して隣接する軌道回路３Ｔと軌道回路４Ｔとは周波数を異ならせ、軌道回路４Ｔの４Ｔ受信器７には軌道回路４Ｔ用のＴＤ信号波を受信する帯域フィルタ６を設けて軌道回路３Ｔの３Ｔ送信器５から送信するＴＤ信号波を分離するのが一般的である。

ＡＴＣ信号波は列車１が在線している軌道回路の列車進出側の境界から送信することから、図５に示すように、軌道回路３Ｔを走行している列車１が軌道回路３Ｔと軌道回路４Ｔの境界に達して列車１の先頭部分が軌道回路４Ｔに進入して列車１の後部が軌道回路３Ｔに在線している場合、軌道回路３Ｔと軌道回路４Ｔの両方にＡＴＣ信号が送信され、軌道回路３Ｔに送信している３Ｔ用ＡＴＣ信号波は軌道回路４Ｔの４Ｔ受信器７に回り込む。このため下記に示すような技術的問題がある。

無絶縁軌道回路においては相隣接する軌道回路の送受信点における送受信レベルは最大で６０ｄＢ（1,000倍）の違いとなる。同一送信点における送信側から受信側に対する回り込みを防止するためには、周波数を分離するとともに、６０ｄＢ以上の選別能力がある受信周波数用の帯域フィルタを設ける必要がある。列車が在線する軌道回路にＡＴＣ信号波を送信する踏込み送信においては、通常、ＡＴＣ信号波は１波であり、帯域フィルタを使用することはできない。この場合、ＡＴＣ信号波は送信する各軌道回路ＩＤ等により分離することになるが、最大６０ｄＢに達する受信器を各軌道回路に設ける必要があり、技術的に困難である。

周波数帯域が異なるＴＤ信号波とＡＴＣ信号波は、各軌道回路の特性により受信レベルが異なる。しかしながらＡＴＣ信号波は車上に対する情報伝送を行うため、ＴＤ信号波のように列車検知用と異なり受信レベルを決定できない。したがって送受信レベルともＡＴＣ信号波とＴＤ信号波で異なることが必須にもかかわらずに送信レベル調整機能や受信レベル調整機能の具体性はないという問題がある。

この発明は、このような技術的な課題を解消し、同一送受信点におけるＡＴＣ信号波の回り込みを解消するとともにＴＤ信号波の受信レベル調整をＡＴＣ信号波とは無関係に行うことができる列車制御装置を提供することを目的とするものである。

この発明の列車制御装置は、無絶縁の軌道回路に列車が在線していないときは、前記軌道回路の列車進出側の境界から列車検知用の信号波であるＴＤ信号波を送信し、送信しているＴＤ信号波を前記軌道回路の列車進入側の境界で受信し、前記軌道回路に列車が在線しているときは、列車が在線している軌道回路の列車進出側の境界から送信しているＴＤ信号をＡＴＣ信号に切り換えて送信し、列車が在線している軌道回路から進路の構成された内方区間の軌道回路に進入して列車が進入した軌道回路に送信しているＴＤ信号波をＡＴＣ信号波に切り換えると同時に、その後方区間の軌道回路に送信しているＡＴＣ信号波をＴＤ信号波に切り換える列車制御装置であって、前記軌道回路に信号波を送受信する機器の電源投入時に、各軌道回路に自動的にＴＤ信号波を送信し、夜間の保守用車の無閉そく運転や昼間における非常時の逆行運転時に、列車が後方の軌道回路に進入し、進入した軌道回路の列車進出側の境界に接続された送信器から軌道回路に送信しているＴＤ信号波が、ＡＴＣ信号波に切り換わった場合、ＡＴＣ信号波切り換え一定時間後に、各軌道回路に自動的にＴＤ信号波を送信して、列車が逆行運転して非在線となった軌道回路に送信しているＡＴＣ信号波をＴＤ信号波に切り換えることを特徴とする。

この発明は、列車が在線している軌道回路から進路の構成された内方区間の軌道回路に進入して列車が進入した軌道回路に送信しているＴＤ信号波をＡＴＣ信号波に切り換えると同時に、その後方区間の軌道回路に列車の後方が在線しているため送信しているＡＴＣ信号波をＴＤ信号波に切り換えるから、軌道回路境界を挟んでＡＴＣ信号波の送受信を行うことを防いで、同一送受信点におけるＡＴＣ信号波の回り込み防止対策を確実に行うことができる。

また、同一送受信点におけるＡＴＣ信号波の回り込みを確実に防止できるから、軌道回路の列車進出側の境界における送信出力レベル調整はＡＴＣ信号波を優先させ、軌道回路の列車進入側の境界における受信入力レベルはＡＴＣ信号波と無関係にＴＤ信号として最適な調整を行うことができる。

さらに、軌道回路に信号波を送受信する機器の電源投入時に、各軌道回路に自動的にＴＤ信号波を送信したり、夜間の保守用車の無閉そく運転や昼間における非常時の逆行運転等によりＡＴＣ信号波に切り換った場合、ＡＴＣ信号波への切り換え一定時間後に各軌道回路にＴＤ信号波を送信することにより、列車非在線検知状態に確実に設定することができ、列車の非在線と在線を正常に検出することができる。

この発明の列車制御装置の構成を示すブロック図である。 送信器と受信器の構成を示すブロック図である。 車上装置の構成を示すブロック図である。 軌道回路に送信するＴＤ信号波とＡＴＣ信号波の切り換えを示す信号波生成・送信手順図である。 従来例によるＡＴＣ信号波の回り込みを示す模式図である。

図１は、この発明の列車制御装置の構成を示すブロック図である。列車制御装置は、列車１の位置を検知して列車１の速度を自動的に制限速度以下に制御するものであり、地上装置２と列車１に搭載した車上装置３を有する。

地上装置２は、各軌道回路１Ｔ〜５Ｔの境界１８ａ〜１８ｄに整合変成器４ａ〜４ｄを介して接続された１Ｔ送信器５ａ〜４Ｔ送信器５ｄと、軌道回路１Ｔ〜５Ｔの境界１８ａ〜１８ｄに整合変成器４ａ〜４ｄと帯域フィルタ６ａ〜６ｄを介して接続された２Ｔ受信器７ａ〜５Ｔ受信器７ｄ及び条件連絡回路８を有する。１Ｔ送信器５ａ〜４Ｔ送信器５ｄは、図２のブロック図に示すように、信号波発生部９と送信部１０を有する。信号波発生部９はＴＤ信号波を生成するとともに、条件連絡回路８を介して送られる先行列車の位置情報等の進路の条件を入力して列車１の速度を制御するためのＡＴＣ信号波を軌道回路１Ｔ〜４Ｔ毎に生成する。送信部１０は信号波発生部９で生成したＴＤ信号波とＡＴＣ信号波のいずれかを整合変成器４ａ〜４ｄを介して軌道回路１Ｔ〜４Ｔの列車進出側の境界１８ａ〜１８ｄから送信する。２Ｔ受信器７ａ〜５Ｔ受信器７ｄは受信部１１と列車検知部１２を有する。受信器１１は軌道回路２Ｔ〜５Ｔに送信されているＴＤ信号波を軌道回路２Ｔ〜５Ｔの列車進入側１８ａ〜１８ｄの境界で受信する。列車検知部１２は受信部１１で該当する軌道回路に送信されているＴＤ信号波の受信の有無により該当する軌道回路に列車１が在線するか否を検知する。

車上装置３は、図３のブロック図に示すように、受信器１３と演算処理部１４と速度照査部１５及び速度制御部１６を有する。受信器１３は車上子１７を介して軌道回路１Ｔ〜５Ｔに送信されているＡＴＣ信号波を受信する。演算処理部１４は受信器１３で受信したＡＴＣ信号波に含まれる制限速度情報を参照して列車１の速度パターンを作成する。速度照査部１５は演算処理部１４で作成した速度パターンと列車１の速度とを照合して照査する。速度制御部１６は速度照査部１５の照査結果によりブレーキ装置等を制御して列車１の速度が制限速度以下になるように制御する。

この列車制御装置で送信器５からＴＤ信号波とＡＴＣ信号波を生成して送信するときの動作を、図４の信号波生成・送信手順図を参照して説明する。

例えば、図４（ａ）に示すように、軌道回路２Ｔと軌道回路４Ｔに列車１が在線せず、軌道回路３Ｔに列車１が在線しているとき、軌道回路２Ｔの列車進出側の境界１８ｂに接続された２Ｔ送信器５ｂと軌道回路４Ｔの列車進出側の境界１８ｄに接続された４Ｔ送信器５ｄの信号波発生部９は所定の周波数のＴＤ信号波を生成して送信部１０に送る。送信部１０は送られたＴＤ信号波を軌道回路２Ｔと軌道回路４Ｔに送信する。この軌道回路２Ｔと軌道回路４Ｔに送信されたＴＤ信号波は軌道回路２Ｔの列車進入側の境界１８ａに接続された２Ｔ受信器７ａと軌道回路４Ｔの列車進入側の境界１８ｃに接続された４Ｔ受信器７ｃの受信部１１で受信して列車検知部１２に送られ、列車検知部１２で軌道回路２Ｔと軌道回路４Ｔに列車１が存在しないことを明らかにする。

一方、列車１が在線している軌道回路３Ｔの列車進出側の境界１８ｃに接続された３Ｔ送信器５ｃの信号波発生部９は、軌道回路３Ｔの列車進入側の境界１８ｂに接続された受信器７ｂで検出した列車検知情報によりＡＴＣ信号波を生成して送信部１０に送る。送信部１０は送られたＡＴＣ信号波を軌道回路３Ｔに送信して軌道回路３Ｔに在線している列車１に送る。

この状態で、図４（ｂ）に示すように、列車１が軌道回路３Ｔを進行して列車１の先頭部が軌道回路３Ｔの列車進出側の境界１８ｃから軌道回路４Ｔに進入し、軌道回路４Ｔに送られているＴＤ信号波が列車１の車軸で短絡されて、軌道回路４Ｔの列車進入側の境界１８ｃに接続された４Ｔ受信器７ｃの受信部１１でＴＤ信号波の受信が無くなり、列車検知部１２で軌道回路４Ｔに列車１が進入したことを検知すると、その列車検知情報は条件連絡回路８を介して軌道回路４Ｔの列車進出側の境界１８ｄに接続された４Ｔ送信器５ｄと軌道回路３Ｔの列車進出側の境界１８ｃに接続された３Ｔ送信器５ｃに送られる。４Ｔ送信器５ｄの信号波発生部９は軌道回路４Ｔに列車１が進入したことを示す列車検知情報が送られると、ＴＤ信号波の生成からＡＴＣ信号波の生成に切り換え、生成したＡＴＣ信号波を送信部１０から軌道回路４Ｔに送信する。一方、軌道回路３Ｔの列車進出側の境界１８ｃに接続された３Ｔ送信器５ｃの信号波生成部９は軌道回路４Ｔに列車１が進入したことを示す列車検知情報が送られると、生成しているＡＴＣ信号波を直ちにＴＤ信号波に切り換えて送信部１０から軌道回路３Ｔに送信する。したがって軌道回路３Ｔと軌道回路４Ｔの境界１８ｃに接続された４Ｔ受信器７ｃや軌道回路４Ｔには軌道回路３Ｔに送信されているＴＤ信号波が回り込むだけですみ、ＡＴＣ信号波が回り込むことを防ぐ。

このようにＡＴＣ信号波の回り込みを防いで、列車１が所定の方向に移動することを前提としてＴＤ信号波とＡＴＣ信号波の切り換えを行う場合、送信器５等の機器故障等により列車移動を伴わない軌道回路の不正落下が生じた場合、機器交換等により故障が回復して機器電源投入後、１Ｔ送信器５ａ〜４Ｔ送信器５ｄはそれぞれ軌道回路１Ｔ〜４Ｔに自動的にＴＤ信号波を送信して軌道回路１Ｔ〜４Ｔを列車非在線検知状態に戻す。そして送信したＴＤ信号波により列車１が在線する区間を検出する。

また、例えば夜間の保守用車の無閉そく運転や、昼間における非常時の逆行運転等によりＡＴＣ信号波に切り換った場合においては、ＡＴＣ信号波切り換え一定時分後に、軌道回路１Ｔ〜４Ｔに自動的にＴＤ信号波を送信して軌道回路１Ｔ〜４Ｔを列車非在線検知状態に戻し、送信したＴＤ信号波により列車１の在線を正しく検出する。

１；列車、２；地上装置、３；車上装置、４；整合変成器、５；送信器、
６；帯域フィルタ、７；受信器、８；条件連絡回路、９；信号波発生部、
１０；送信部、１１；受信部、１２；列車検知部、１３；受信器、
１４；演算処理部、１５；速度照査部、１６；速度制御部、１７；車上子。

特許第２９５５２３０号公報

Claims (1)

1. 無絶縁の軌道回路に列車が在線していないときは、前記軌道回路の列車進出側の境界から列車検知用の信号波であるＴＤ信号波を送信し、送信しているＴＤ信号波を前記軌道回路の列車進入側の境界で受信し、前記軌道回路に列車が在線しているときは、列車が在線している軌道回路の列車進出側の境界から送信しているＴＤ信号をＡＴＣ信号に切り換えて送信し、列車が在線している軌道回路から進路の構成された内方区間の軌道回路に進入して列車が進入した軌道回路に送信しているＴＤ信号波をＡＴＣ信号波に切り換えると同時に、その後方区間の軌道回路に送信しているＡＴＣ信号波をＴＤ信号波に切り換える列車制御装置であって、
   前記軌道回路に信号波を送受信する機器の電源投入時に、各軌道回路に自動的にＴＤ信号波を送信し、夜間の保守用車の無閉そく運転や昼間における非常時の逆行運転時に、列車が後方の軌道回路に進入し、進入した軌道回路の列車進出側の境界に接続された送信器から軌道回路に送信しているＴＤ信号波が、ＡＴＣ信号波に切り換わった場合、ＡＴＣ信号波切り換え一定時間後に、各軌道回路に自動的にＴＤ信号波を送信して、列車が逆行運転して非在線となった軌道回路に送信しているＡＴＣ信号波をＴＤ信号波に切り換えることを特徴とする列車制御装置。

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