以下に添付図面を参照して、本発明に係るドアロック装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1〜図13は、本発明の実施の形態であるドアロック装置を概念的に示したものである。ここで例示するドアロック装置1は、図14−1に示すように、四輪自動車の車両本体Bにおいて後席右側に配置された前方ヒンジのドアDに設けられるもので、本体ケース1A及びラッチケース1Bを備えている。本体ケース1Aは、ドアDの車両後方側に位置する部分においてドアDのインサイドパネルIPに沿って配設されるものである。ラッチケース1Bは、本体ケース1Aにおいて車両後方側に位置する部分から室外側に向けて延在し、ドアDの車両後方側に位置する部分に沿って配設されるものである。ラッチケース1Bの内部には、車両本体Bに設けたストライカSを噛合保持するラッチ機構10が収容してある。ラッチ機構10は、図15に示すように、ラッチ11とラチェット12とを備えて構成したものである。
ラッチ11は、ラッチケース1Bに形成したストライカ進入溝1Cよりも上方となる位置に、車両本体Bの前後方向に沿って略水平に延在したラッチ軸13を介してラッチケース1Bに回転可能に配設したものである。このラッチ11には、噛合溝11a、フック部11b及び係止部11cが設けてある。噛合溝11aは、ラッチ11の外周面からラッチ軸13に向けて形成したもので、ストライカSを収容することのできる幅に形成してある。フック部11bは、噛合溝11aを下方に向けて開口させた場合に噛合溝11aよりも室内側に位置する部分である。このフック部11bは、図15の実線で示すように、ラッチ11を最大限反時計回りに回転させた場合にラッチケース1Bのストライカ進入溝1Cを横切る位置で停止する一方、図15中の二点鎖線で示すように、ラッチ11を最大限時計回りに回転させた場合にストライカ進入溝1Cを開放する位置で停止するように構成してある。係止部11cは、噛合溝11aを下方に向けて開口させた場合に噛合溝11aよりも室外側に位置する部分である。この係止部11cは、図15中の二点鎖線で示すように、ラッチ11を最大限時計回りに回転させた場合にストライカ進入溝1Cを横切り、かつこのストライカ進入溝1Cの奥方(室外側)に向けて漸次上方に傾斜する状態で停止するように構成してある。尚、図には明示していないが、ラッチ11とラッチケース1Bとの間には、図15においてラッチ11を常時時計回りに回転させるラッチスプリングが設けてある。
ラチェット12は、ラッチケース1Bのストライカ進入溝1Cよりも下方、かつラッチ軸13よりも室内側となる位置に、車両本体Bの前後方向に沿って略水平に延在したラチェット軸14を介してラッチケース1Bに回転可能に配設したものである。このラチェット12は、係合部12a及び作用部12bを有している。係合部12aは、ラチェット軸14から室外側に向けて径外方向に延在する部分であり、ラチェット軸14を中心として回転することによりその突出端面を介して上述したラッチ11のフック部11b及び係止部11cに着脱可能に係合することが可能である。作用部12bは、ラチェット軸14から室内側に向けて径外方向に延在する部分である。このラチェット12には、車両前方側となる位置にラチェット12とともに一体的となってラチェット軸14の軸心回りに回転するラチェットレバー15が設けてある。ラチェットレバー15は、ラチェット軸14からラチェット12の作用部12bと同一方向に向けて延在した当接部15aを有するものである。尚、図には明示していないが、ラチェット12とラッチケース1Bとの間には、図15においてラチェット12を常時反時計回りに向けて付勢するラチェットスプリングが設けてある。
上記のように構成したラッチ機構10では、図14−1中の実線で示すように、ドアDが車両本体Bに対して開成状態にある場合、図15中の二点鎖線で示すように、ラッチ11がストライカ進入溝1Cを開放する位置に配置されることになる。この状態から図14−1の二点鎖線で示すように、ドアDを閉位置に移動させると、車両本体Bに設けたストライカSが、図15に示すように、ラッチケース1Bのストライカ進入溝1Cに進入し、やがてストライカSがラッチ11の係止部11cに当接することになる。この結果、ラッチ11がラッチスプリング(図示せず)の弾性力に抗して図15において反時計回りに回転する。この間、ラチェット12は、ラチェットスプリング(図示せず)の弾性力によって係合部12aの突出端面がラッチ11の外周面に摺接することになり、ラッチ11の外周面形状に応じて適宜ラチェット軸14の軸心回りに回転する。上述した状態からさらにドアDを閉方向に移動させると、ストライカ進入溝1Cに対するストライカSの進入量が漸次増大し、やがてラチェット12の係合部12aがラッチ11の噛合溝11aに至り、その後、図15中の実線で示すように、ラッチ11のフック部11bがラチェット12の係合部12aに当接することになるため、ラッチスプリング(図示せず)の弾性復元力によるラッチ11の時計回りの回転が阻止されることになる。この状態においては、ラッチ11のフック部11bがストライカ進入溝1Cを横切るように配置されるため、フック部11bによってストライカSがストライカ進入溝1Cの奥方(室外側)から離脱する方向へ移動する事態が阻止されるようになり、結局、ドアDが車両本体Bに対して閉じた状態に維持される(ラッチ状態)。
上述したラッチ状態からラチェットスプリング(図示せず)の弾性力に抗してラチェットレバー15の当接部15aを図15の上方に回転させると、ラッチ11のフック部11bとラチェット12の係合部12aとの当接係合状態が解除され、ラッチ11がラッチスプリング(図示せず)の弾性復元力により図15において時計回りに回転する。この結果、図15中の二点鎖線で示すように、ストライカ進入溝1Cが開放され、ストライカSがストライカ進入溝1Cから離脱する方向に移動可能となり、ドアDを車両本体Bに対して開成移動させることができるようになる(アンラッチ状態)。
一方、上記ドアロック装置1には、図1に示すように、本体ケース1Aの内部にアウトサイドハンドルレバー20、インサイドハンドルレバー30、ロック機構40、コンタクトレバー50、アクチュエータユニット60、チャイルドレバー70が配設してある。
アウトサイドハンドルレバー20は、図1及び図7に示すように、車両本体Bの前後方向に沿って略水平に延在したアウトサイドハンドルレバー軸21を介して回転可能に配設したもので、車両の室内側に位置する端部に動作端部22及び受圧部23を有している。アウトサイドハンドルレバー20の動作端部22は、ラチェットレバー15における当接部15aの下方域に配置してある。アウトサイドハンドルレバー20の受圧部23は、動作端部22よりもさらに下方となる部位において略水平に延在したもので、その下面が受圧面23aを構成している。図には明示していないが、このアウトサイドハンドルレバー20には、車両の室外側に位置する端部がアウトサイドドアハンドルOHが連係してある。アウトサイドドアハンドルOHは、図14−1に示すように、ドアDのアウトサイドパネルOPに設けた操作部材であり、車両の室外から開扉操作することが可能である。アウトサイドドアハンドルOHが開扉操作された場合、アウトサイドハンドルレバー20は、アウトサイドハンドルレバー軸21を中心として適宜回転し、動作端部22及び受圧部23がそれぞれ図1において上方に動作するように構成してある。尚、図には明示していないが、アウトサイドハンドルレバー20と本体ケース1Aとの間には、図1において動作端部22及び受圧部23を常時下方に向けて付勢するアウトサイドハンドルレバースプリングが介在させてある。
インサイドハンドルレバー30は、図1、図6、図8−1及び図8−2に示すように、アウトサイドハンドルレバー20よりも車両前方側となる部位に、車両本体Bの左右方向に沿って略水平に延在したインサイドハンドルレバー軸31を介して本体ケース1Aに回転可能に配設したもので、インハン連係部32、ダブルアクション用当接部33、チャイルドレバー連係部34を有している。
インハン連係部32は、インサイドハンドルレバー30が操作されていない常態位置にある場合、インサイドハンドルレバー軸31から上方に向けて径外方向に延在する部分であり、その先端部が本体ケース1Aの外部に露出している。このインハン連係部32には、本体ケース1Aの外部に露出した部分にインサイドドアハンドルIHが連係してある。インサイドドアハンドルIHは、図14−1及び図14−2に示すように、ドアDのインサイドパネルIPに設けた操作部材であり、車両の室内から開扉操作することが可能である。インサイドドアハンドルIHを開扉操作した場合、インハン連係部32は、インサイドハンドルレバー30が図1に示す常態位置から反時計回りに回転するように構成してある。
ダブルアクション用当接部33は、図1、図6、図8−1及び図8−2に示すように、インハン連係部32において本体ケース1Aの内部に位置する部分から車両後方に向けて延在した後、室外側に向けて屈曲した部分の上端部に構成してある。
チャイルドレバー連係部34は、インサイドハンドルレバー軸31から下方に向けて径外方向に延在する部分であり、チャイルドロック溝35を有している。チャイルドロック溝35は、インサイドハンドルレバー軸31を中心として円弧状を成すロック溝部35aと、ロック溝部35aにおいて最も車両後方側に位置する端部からインサイドハンドルレバー軸31の径外方向に向けて延在したアンロック溝部35bとから構成した一連の切欠である。
ロック機構40は、アウトサイドドアハンドルOH及びインサイドドアハンドルIH(以下、これらを総称する場合に「ドアハンドル」という)が開扉操作された場合にラッチ機構10のラッチ状態を解除可能なアンロック状態と、ドアハンドルが開扉操作された場合にもラッチ機構10のラッチ状態を維持するロック状態とに切り替わるもので、オープンリンクレバー41及びパニックレバー42を備えている。
オープンリンクレバー41は、図1及び図7に示すように、その基端部に形成した回転許容溝41aにアウトサイドハンドルレバー20の動作端部22を貫挿させることにより、動作端部22に対して回転可能に支持させたものである。回転許容溝41aは、アウトサイドハンドルレバー20に対するオープンリンクレバー41の回転範囲をほぼ30°程度に制限するものである。オープンリンクレバー41には、レバーリンク部41bが設けてある。レバーリンク部41bは、アウトサイドハンドルレバー20の動作端部22から径外方向に延在した部分であり、その延在端部にレバーリンク溝41cを有している。レバーリンク溝41cは、レバーリンク部41bの延在方向に沿って直線状に形成した溝である。このオープンリンクレバー41は、図1に示すように、最大限時計回りに回転させた場合にレバーリンク部41bがラッチ機構10のラチェットレバー15よりも車両前方側において上下方向に沿う態様で配置される。一方、図1中において最大限反時計回りに回転させた場合、オープンリンクレバー41は、図17に示すように、レバーリンク部41bが車両前方側に向けて傾斜した位置に配置される。
パニックレバー42は、オープンリンクレバー41と同一の軸心回りに回転可能となるようにオープンリンクレバー41の基端部に支持させたもので、ラッチ係合部42aを有している。ラッチ係合部42aは、パニックレバー42の回転軸心から径外方向に延在した部分である。このパニックレバー42とオープンリンクレバー41との間には、パニックスプリング43が介在させてある。パニックスプリング43は、ラッチ係合部42aとオープンリンクレバー41のレバーリンク部41bが常に同じ方向に沿って延在された状態を保持するように弾性力を付与するものである。具体的説明すると、パニックスプリング43は、図1に示すように、オープンリンクレバー41が最大限時計回りに回転してレバーリンク部41bが上下方向に沿って配置された場合にラッチ係合部42aを上方に向けて配置させ、その先端部がラッチ機構10のラチェットレバー15に近接した状態(以下、「アンロック状態」という)に保持するように機能する。オープンリンクレバー41が図1中において最大限反時計回りに回転し、図17に示すように、レバーリンク部41bが車両前方側に向けて傾斜した状態となった場合、パニックスプリング43は、その弾性力によってパニックレバー42のラッチ係合部42aを車両前方側に向けて傾斜させ、ラッチ係合部42aの先端部がラチェットレバー15からずれた状態(以下、「ロック状態」という)に保持する。いずれの状態においても、オープンリンクレバー41に対してパニックレバー42を図1中において反時計回りに回転させれば、図18に示すように、パニックスプリング43の弾性力に抗してラッチ係合部42aをレバーリンク部41bに近接させた状態に移動することが可能である。パニックレバー42に加えていた外力を除去すれば、パニックスプリング43の弾性復元力により、オープンリンクレバー41とパニックレバー42とが図1に示した状態に復帰する。
オープンリンクレバー41には、レバーリンク部41bのレバーリンク溝41cを介してロックレバー80が連係させてある。ロックレバー80は、図1、図2、図5、図9−1及び図9−2に示すように、インサイドハンドルレバー軸31よりも僅かに車両前方側で上方となる部位に、車両の左右方向に沿って略水平に延在したロックレバー軸81を介して本体ケース1Aに回転可能に配設したものである。このロックレバー80は、ラッチリンクレバー部82に設けたリンクピン83をレバーリンク部41bのレバーリンク溝41cにスライド可能に挿通させることにより、オープンリンクレバー41に連係している。
ロックレバー80は、図1中において反時計回りがアンロック動作となり、図1中において最大限反時計回りに回転した場合にアンロック位置となる。ロックレバー80がアンロック位置に配置された場合には、オープンリンクレバー41のレバーリンク部41bが上下方向に沿って配置された状態において、ラッチリンクレバー部82に設けたリンクピン83がレバーリンク溝41cの上端部に配置されることになる。
一方、ロックレバー80は、図1中において時計回りがロック動作となり、図1中において最大限時計回りに回転すると、図17に示すロック位置となる。ロックレバー80がロック位置に配置された場合には、リンクピン83を介してオープンリンクレバー41が車両前方側に向けて傾斜することになり、ロック機構40がロック状態に切り替えられることになる。
上記のように構成したロック機構40では、図1に示したアンロック状態にある場合、上述したように、パニックレバー42のラッチ係合部42aがラッチ機構10のラチェットレバー15に近接した状態にあるため、図16に示すように、アウトサイドハンドルレバー20の動作端部22が上方に移動すれば、ラッチ係合部42aがラチェットレバー15に当接してこれを上動させることになる。この結果、ラッチ機構10がラッチ状態にある場合にもこれが解除されるため、車両本体Bに対してドアDを開成移動させることができるようになる。
図1に示したアンロック状態から、ロックレバー80が最大限時計回りに回転して図17に示すロック位置となると、ラッチ係合部42aの先端部がラチェットレバー15に対向した位置からずれた状態になるため、アウトサイドハンドルレバー20の動作端部22が上方に移動してラッチ係合部42aが上動してもラチェットレバー15と当接することはない。この結果、ラッチ機構10がラッチ状態にある場合にはこれが維持されるため、車両本体Bに対してドアDが閉位置に保持されたままとなる。
図17に示すロック状態から、ロックレバー80を最大限反時計回りに回転して図1に示すアンロック位置に復帰させると、リンクピン83を介してオープンリンクレバー41が時計回りに回転し、上下方向に沿った位置となる。これにより、パニックレバー42のラッチ係合部42aがラッチ機構10のラチェットレバー15に近接した状態となり、アウトサイドハンドルレバー20の動作端部22を上方に移動させることで、車両本体Bに対してドアDを開成移動させることができるようになる。
上述したロックレバー80には、図1、図2、図5、図9−1及び図9−2に示すように、ロストモーションピン84、ピンスライド溝85、ロック側レバー当接部86、ロック側センサ当接部87が設けてある。ロストモーションピン84は、ラッチリンクレバー部82において室内側に位置する面から突設した凸状部材である。ピンスライド溝85は、ロックレバー軸81を中心として径方向に延在する切欠であり、ロックレバー80がアンロック位置に配置された場合にロックレバー軸81よりも上方、かつ車両後方側となる部位に傾斜する態様で形成してある。ロック側レバー当接部86は、ロックレバー軸81を中心とした扇形状に構成された部分であり、ピンスライド溝85に近接する部分において車両前方側となる部位に設けてある。ロック側センサ当接部87は、ロックレバー軸81から車両前方側に向けて延在した扇形状部分である。尚、ロックレバー80と本体ケース1Aとの間には、オーバーセンタースプリング88が介在させてある。このオーバーセンタースプリング88は、ロックレバー80がアンロック位置及びロック位置のいずれかに配置された状態を保持するものである。
コンタクトレバー50は、インサイドハンドルレバー軸31を介して本体ケース1Aに回転可能に配設したもので、インサイドハンドルレバー軸31から下方に向けて径外方向に延在した後、車両後方側に向けて湾曲している。このコンタクトレバー50には、コンタクトロック溝51が形成してある。コンタクトロック溝51は、インサイドハンドルレバー軸31から径外方向に向けて延在した切欠であり、コンタクトレバー50を適宜回転させることにより、インサイドハンドルレバー30に形成したチャイルドロック溝35のアンロック溝部35bに合致させることが可能である。図1に示すように、インサイドハンドルレバー30が常態位置にある状態においてコンタクトロック溝51がチャイルドロック溝35のアンロック溝部35bに合致した場合、コンタクトレバー50の延在端部がアウトサイドハンドルレバー20の受圧部23に近接した状態で対向するように構成してある。
アクチュエータユニット60は、ロックレバー80をアンロック位置とロック位置とに切り替えるためのもので、図1に示すように、電動モータ61、ウォームホイール62、セクタレバー63を備えている。
電動モータ61は、正転及び逆転可能な回転アクチュエータであり、本体ケース1Aの内部においてロックレバー軸81よりも車両前方側となる部位に収容してある。電動モータ61の出力軸61aは、下方に向けて僅かに車両後方側に傾斜させる姿勢で配置してある。電動モータ61の出力軸61aには、ウォーム64が固着してある。
ウォームホイール62は、インサイドハンドルレバー軸31よりも車両前方側となる部位に、車両の左右方向に沿って略水平に延在したホイール軸65を介して本体ケース1Aに回転可能に配設したものである。ウォームホイール62は、その車両前方側の周面において電動モータ61のウォーム64に歯合している。このウォームホイール62には、リターンスプリング66及びドライブギア67が設けてある。リターンスプリング66は、中立位置から外力を加えることによってウォームホイール62を回転させた場合に弾性的に変形し、外力を除去した場合にウォームホイール62を中立位置に復帰させるものである。ドライブギア67は、ウォームホイール62の一端面に一体に設けた小径の平歯車であり、ウォームホイール62と同一の軸心となるように構成してある。
セクタレバー63は、上述したロックレバー軸81においてロックレバー80よりも室内側となる部位に回転可能に配設したもので、図1、図2、図10−1及び図10−2に示すように、セクタギア部63a、セクタ側レバー当接部63b、一対のロストモーションギア63c,63dを有している。セクタギア部63aは、ロックレバー軸81を中心とした扇形状部分の外周面に平歯車63a′を構成したもので、ウォームホイール62のドライブギア67に歯合している。尚、以下においては便宜上、図1に示すように、セクタレバー63が中立位置に配置された場合、中立位置に復帰したウォームホイール62のドライブギア67に対してセクタギア部63aの周方向に沿った中点部分が歯合するもとする。
セクタ側レバー当接部63bは、ロックレバー80のロック側レバー当接部86と同様に、ロックレバー軸81を中心とした扇形状に構成された部分である。このセクタ側レバー当接部63bは、図1に示すように、セクタレバー63が中立位置に配置された場合、アンロック位置にあるロックレバー80のロック側レバー当接部86と周方向に並設されるように構成してある。
一対のロストモーションギア63c,63dは、図1、図2、図10−1及び図10−2に示すように、それぞれロックレバー軸81を中心として径外方向に突設した部分であり、互いの間にロックレバー80のロストモーションピン84が介在するように構成してある。より詳細には、セクタレバー63が中立位置に配置された状態においてロックレバー80がアンロック位置に配置された場合には、図1に示すように、一方のロストモーションギア(以下、「ロックギア63c」という)がロストモーションピン84に当接する。セクタレバー63が中立位置に配置された状態においてロックレバー80がロック位置に配置された場合には、図17に示すように、他方のロストモーションギア(以下、「アンロックギア63d」という)がロストモーションピン84に当接するように構成してある。
チャイルドレバー70は、図1に示すように、オープンリンクレバー41の基端部とインサイドハンドルレバー軸31との間となる部位に、車両の左右方向に沿って略水平に延在したチャイルドレバー軸71を介して本体ケース1Aに回転可能に配設したものである。このチャイルドレバー70には、操作レバー部72及びチャイルドピン連係部73が設けてある。
操作レバー部72は、チャイルドレバー軸71から車両後方側に向けて延在した部分であり、その延在端部において室内側に位置する部位に操作突起74を有している。図には明示していないが、この操作突起74は、本体ケース1Aに形成した開口及びドアDのインサイドパネルIPに形成した開口を介してドアDの外部に露出しており、ドアDの外部から操作することが可能である。具体的には、図14−1及び図14−2に示すように、ドアDのインサイドパネルIPにおいて室内側に位置する面あって、しかもドアDを閉位置に配置した場合には車両本体Bとの間において塞がれる位置に操作突起74を設けるようにしている。
チャイルドピン連係部73は、操作レバー部72が車両後方側に向けて略水平に配置された場合に、チャイルドレバー軸71よりも下方となる部位に車両前方に向けて漸次下方に傾斜する態様で延在する部分であり、ピン連係溝75を有している。ピン連係溝75は、操作レバー部72が車両後方に向けて略水平に配置された場合に、車両前方に向けて漸次下方に傾斜する態様で形成した切欠であり、チャイルドピン90をスライド可能に支持している。このチャイルドピン90には、チャイルド選択ピン91が設けてある。チャイルド選択ピン91は、インサイドハンドルレバー30のチャイルドロック溝35及びコンタクトレバー50のコンタクトロック溝51に貫通されたピン状部材であり、これらチャイルドロック溝35及びコンタクトロック溝51をスライドすることが可能である。
これらチャイルドレバー70、インサイドハンドルレバー30のチャイルドロック溝35、コンタクトレバー50のコンタクトロック溝51、チャイルド選択ピン91は、本実施の形態のドアロック装置1においてチャイルドロック機構100を構成するものである。
このチャイルドロック機構100では、図1に示すように、チャイルドレバー70の操作レバー部72を車両後方側に向けて略水平に配置した場合に伝達状態となり、ピン連係溝75のチャイルド選択ピン91がその車両前方側の端部に位置し、かつインサイドハンドルレバー30に形成したチャイルドロック溝35のアンロック溝部35bにおいてその下端部に位置するとともに、コンタクトレバー50のコンタクトロック溝51においてその下端部に位置する。この伝達状態においては、インサイドハンドルレバー30がチャイルド選択ピン91を介してコンタクトレバー50と接続された状態となり、インサイドハンドルレバー30が回転した場合にコンタクトレバー50が連動するようになる。つまり、チャイルドロック機構100が伝達状態にある場合、インサイドハンドルレバー30を図1において反時計回りに回転させると、その回転がチャイルド選択ピン91を介してコンタクトレバー50に伝達され、その延在端部がアウトサイドハンドルレバー20の受圧部23を押圧することにより、ロック機構40のオープンリンクレバー41及びパニックレバー42が動作端部22とともに上動することになる。インサイドハンドルレバー30及びコンタクトレバー50が回転する場合、チャイルド選択ピン91は、チャイルドレバー70のピン連係溝75に沿って移動するため、チャイルドピン90が移動することはなく、伝達状態に維持される。
一方、チャイルドレバー70を時計回りに回転させると、チャイルド選択ピン91が上方に移動し、図20に示すように、インサイドハンドルレバー30のチャイルドロック溝35においてロック溝部35aに位置する。この状態においては、インサイドハンドルレバー30が回転した場合にもその回転がチャイルド選択ピン91に伝達されることはなく、従ってコンタクトレバー50が連動することもない。つまり、チャイルドレバー70を時計回りに回転させると、インサイドハンドルレバー30からコンタクトレバー50を介したロック機構40への動力伝達が遮断され、チャイルドロック機構100が非伝達状態となる。
非伝達状態からチャイルドレバー70を反時計回りに回転させれば、図1に示すように、再びチャイルド選択ピン91がインサイドハンドルレバー30に形成したチャイルドロック溝35のアンロック溝部35bにおいてその下端部に位置するとともに、コンタクトレバー50のコンタクトロック溝51においてその下端部に位置し、チャイルドロック機構100が伝達状態に復帰する。
さらに、上記ドアロック装置1には、本体ケース1Aの内部にダブルロックピンレバー110、ノブレバー120及びダブルロックレバー130が配設してある。
ダブルロックピンレバー110は、上述したロックレバー軸81の軸方向においてロックレバー80とセクタレバー63との間に位置する部位に回転可能に配設したものである。このダブルロックピンレバー110は、図1、図11−1及び図11−2に示すように、その中央部にスライド挿通孔111を有し、このスライド挿通孔111にロックレバー軸81を貫通させることにより、ロックレバー軸81に対してスライド挿通孔111の延在方向にスライドすることも可能である。ダブルロックピンレバー110には、ロックピン形成部112及びダブルロック側センサ当接部113が設けてある。ロックピン形成部112は、スライド挿通孔111の延在方向に沿う態様でロックレバー軸81の径外方向に延在する部分であり、その延在端部にダブルロックピン114を備えている。ダブルロックピン114は、車両の左右方向に沿って略水平となる態様でロックピン形成部112に形成した柱状部材であり、ロックピン形成部112において室内側に対向する面及び室外側に位置する面の双方から突出している。ダブルロックピン114においてロックピン形成部112から室内側に向けて突出した部分は、ロックレバー80に形成したピンスライド溝85に挿通している。このダブルロックピン114は、ロックレバー80に形成したピンスライド溝85の内部をスライドすることができるようにその外径寸法が設定してある。ダブルロック側センサ当接部113は、ロックレバー軸81から車両前方側に向けて延在した扇形状部分である。
ノブレバー120は、上述したロックレバー軸81の軸方向においてセクタレバー63よりも室内側となる部位に回転可能に配設したもので、図1、図2、図12−1及び図12−2に示すように、ピン係合溝121、ノブレバー連係部122、インハン当接部123を有している。
ピン係合溝121は、ロックレバー軸81を中心として径方向に延在し、かつ外周端部が開口した切欠であり、ロックレバー80に形成したピンスライド溝85と同じ幅を有するように形成してある。ピン係合溝121において時計回り方向に位置する内壁(以下、「ピン係止内壁121a」という)は、ピン係合溝121において反時計回り方向に位置する内壁(以下、「常態当接内壁121b」という)よりもロックレバー軸81からの距離が、上述したダブルロックピン114の外径以上小さくなるように構成してある。また、常態当接内壁121bは、ロックレバー80に形成したピンスライド溝85の内壁よりもロックレバー軸81からの距離がダブルロックピン114の外径以上小さくなるように構成してある。
ノブレバー連係部122は、図1に示すように、アンロック位置に配置されたロックレバー80のピンスライド溝85に対してピン係合溝121を合致させた場合(以下、この状態を「ノブレバー120のアンロック位置」という)、ロックレバー軸81から上方に向けてわずかに車両前方側に傾斜延在する部分である。このノブレバー連係部122には、最も外周側に位置する端部にロック操作部材NLが連係してある。ロック操作部材NLは、図14−2に示すように、車両の室内に出没可能に配設したものである。このロック操作部材NLは、ノブレバー120が反時計回りに回転した場合に室内に突出する一方、ドアDの内部に押圧して没入させると、ノブレバー120を時計回りに回転させることが可能である。
インハン当接部123は、図1、図2、図12−1及び図12−2に示すように、ノブレバー120がアンロック位置に配置された場合、ロックレバー軸81から車両後方側に向けて上方に傾斜延在する部分である。このインハン当接部123は、図21に示すように、ロック位置に配置されたロックレバー80のピンスライド溝85に対してピン係合溝121を合致させた場合(以下、この状態を「ノブレバー120のロック位置」という)、常態位置に配置されたインサイドハンドルレバー30のダブルアクション用当接部33に近接した状態で対向配置されるように構成してある。この状態からインサイドハンドルレバー30が反時計回りに回転すると、ダブルアクション用当接部33がインハン当接部123に当接し、ノブレバー120が反時計回りに回転することになる。
このノブレバー120とダブルロックピン114との間には、当接スプリング140が介在させてある。当接スプリング140は、その弾性力によりダブルロックピン114を介してロックレバー80がノブレバー120に対して相対的にアンロック方向に回転するように付勢するものである。図1に示すように、当接スプリング140においてダブルロックピン114に当接した部分には、位置規定突起141が設けてある。位置規定突起141は、ダブルロックピン114がピンスライド溝85の内周側端部及びノブレバー120のピン係合溝121に配置された場合(以下、「ダブルロックピン114の係合位置」という)、ダブルロックピン114の外周面に当接し、ダブルロックピン114の外周側への移動を規制するように機能するものである。ダブルロックピン114にピンスライド溝85の外周側に向かう外力を付与すると、当接スプリング140が弾性的に撓むことによってダブルロックピン114の移動を許容する。ダブルロックピン114が位置規定突起141を乗り越えて外周側に移動し、ノブレバー120のピン係合溝121から離脱してピンスライド溝85の外周側端部に配置された場合(以下、「ダブルロックピン114の離脱位置」という)、位置規定突起141が弾性的に復帰し、今度はダブルロックピン114がピンスライド溝85の内周側へ移動するのを規制するように機能する。ダブルロックピン114にピンスライド溝85の内周側に向かう外力を付与すると、当接スプリング140が弾性的に撓むことによってダブルロックピン114の移動が許容され、再びダブルロックピン114が係合位置に配置された状態となる。
ダブルロックレバー130は、図1、図13−1及び図13−2に示すように、ノブレバー120軸より上方で、かつダブルロックピン114に近接した部位に、車両の左右方向に沿って略水平に延在したダブルロックレバー軸131を介して本体ケース1Aに回転可能に配設したものである。このダブルロックレバー130には、アンセットレバー部132、セットレバー部133、位置規制部134が設けてある。
アンセットレバー部132及びセットレバー部133は、ダブルロックレバー軸131を中心として径外方向に延在した二股部分であり、ダブルロックレバー130が回転した場合にそれぞれダブルロックピン114においてロックピン形成部112から室外側に向けて突出した部分に当接することが可能である。アンセットレバー部132は、図1に示すように、ダブルロックピン114が係合位置に配置されている状態においてピンスライド溝85の外周側からダブルロックピン114の周面に当接することが可能である。このとき、セットレバー部133は、ピンスライド溝85の延在方向に沿った状態で車両の前方側に配置されている。この状態からダブルロックレバー130が反時計回りに回転すると、図19に示すように、アンセットレバー部132がダブルロックピン114から離隔する一方、セットレバー部133がピンスライド溝85の内周側からダブルロックピン114の周面に当接してこれを外周側に移動させるように機能し、ダブルロックピン114が離脱位置に配置される。
位置規制部134は、セットレバー部133の基端部側から室内側に突設した部分であり、ロックレバー80に設けたロック側レバー当接部86の外周面及びセクタレバー63に設けたセクタ側レバー当接部63bの外周面に当接することが可能である。位置規制部134がこれらロック側レバー当接部86やセクタ側レバー当接部63bに当接している場合には、ダブルロックレバー130の反時計回りの回転が規制される。
図1からも明らかなように、ダブルロックレバー130と本体ケース1Aに設けたボス部1Dとの間には、ダブルロックスプリング135が介在させてある。ダブルロックスプリング135は、本体ケース1Aに対してダブルロックレバー130を図1中の反時計回りに回転させるものである。図1に示すように、位置規制部134の揺動域上にロック側レバー当接部86もしくはセクタ側レバー当接部63bが配置されている場合には、ダブルロックスプリング135の押圧力により位置規制部134がロック側レバー当接部86の外周面もしくはセクタ側レバー当接部63bの外周面に圧接され、その回転が規制された状態となる。この状態においては、セットレバー部133がダブルロックピン114に当接することはない。一方、図21に示すように、ロックレバー80がロック位置となり、セクタレバー63が中立位置に配置された場合には、位置規制部134の揺動域上からロック側レバー当接部86及びセクタ側レバー当接部63bが退避されることになる。これにより、ダブルロックレバー130が反時計回りに回転し、位置規制部134がロック側レバー当接部86とセクタ側レバー当接部63bとの間に配置されるとともに、セットレバー部133が係合位置に配置されたダブルロックピン114の外周面に当接した状態となる。
これらダブルロックピンレバー110、ノブレバー120及びダブルロックレバー130は、本実施の形態のドアロック装置1においてダブルロック機構150を構成するものである。
このダブルロック機構150では、ダブルロックピンレバー110のダブルロックピン114が係合位置に配置された状態が図1に示すアンセット状態となる。このアンセット状態においては、係合位置に配置されたダブルロックピン114を介してロックレバー80とノブレバー120とが互いに係合した状態となる。
従って、このアンセット状態において、例えば車両の室内に配設したロック操作部材NLをドアDの内部に押圧すれば、ノブレバー120が時計回りに回転するとともに、ロックレバー80が時計回りに回転することになり、アンロック状態にあるロック機構40を図17に示すロック状態に切り替えることが可能となる。
また、図1に示すアンセット状態において電動モータ61を駆動し、セクタレバー63を時計回りに回転させると、図22の(a)〜(d)に順に示すように、セクタレバー63のロックギア63cがロストモーションピン84に当接することによりロックレバー80が時計回りに回転する。これにより、図17に示すように、ロックレバー80のリンクピン83を介して連係されたオープンリンクレバー41が反時計回りに回転してロック機構40がロック状態に切り替えられる。尚、ロック機構40がロック状態に切り替えられた後に電動モータ61を停止させれば、図22の(e)に示すように、リターンスプリング66の弾性復元力により、ウォームホイール62及びセクタレバー63が中立位置に復帰する。
逆に、図17に示すロック状態において電動モータ61を先とは逆に駆動し、セクタレバー63を反時計回りに回転させると、図23の(a)〜(d)に順に示すように、セクタレバー63のアンロックギア63dがロストモーションピン84に当接することによりロックレバー80が反時計回りに回転する。これにより、図1に示すように、ロックレバー80のリンクピン83を介して連係されたオープンリンクレバー41が時計回りに回転してロック機構40がアンロック状態に切り替えられる。尚、ロック機構40がアンロック状態に切り替えられた後に電動モータ61を停止させれば、図23の(e)に示すように、リターンスプリング66の弾性復元力により、ウォームホイール62及びセクタレバー63が中立位置に復帰する。
また、図17に示すロック状態においてインサイドドアハンドルIHを開扉操作すれば、図18に示すように、インサイドハンドルレバー30が図において反時計回りに回転し、そのダブルアクション用当接部33がインハン当接部123に当接する。これにより、ノブレバー120が反時計回りに回転するため、ロックレバー80も反時計回りに回転することになる。従って、ロック状態にあるロック機構40がアンロック状態に切り替えられるため、再度インサイドドアハンドルIHを開扉操作すれば、図16に示すように、ラッチ機構10を解除して車両本体Bに対してドアDを開成移動させることができるようになる(ダブルアクション機構)。尚、ダブルロック機構150がアンセット状態にある場合には、チャイルドロック機構100が非伝達状態であっても、インサイドドアハンドルIHを開扉操作すれば、図20に示すように、インサイドハンドルレバー30が反時計回りに回転してダブルアクション用当接部33がインハン当接部123に当接するため、ノブレバー120及びロックレバー80が反時計回りに回転し、ロック状態にあるロック機構40がアンロック状態に切り替えられることになる。但し、再度インサイドドアハンドルIHを開扉操作しても、チャイルドロック機構100が非伝達状態にある場合には、インサイドハンドルレバー30からコンタクトレバー50を介したロック機構40への動力伝達が遮断されるため、ラッチ機構10が解除されることはない。
一方、図17に示すロック状態において電動モータ61を駆動し、中立位置に配置された状態からセクタレバー63をさらに時計回りに回転させると、図24の(a)〜(c)に順に示すように、アンロックギア63dがロストモーションピン84から離隔するため、ロックレバー80が回転することはない。しかしながら、セクタ側レバー当接部63bがダブルロックレバー130の位置規制部134に当接することになり、ダブルロックレバー130が図24において反時計回りに回転する。これにより、図19及び図24の(c)に示すように、ダブルロックレバー130のセットレバー部133が係合位置に配置されていたダブルロックピン114に当接してこれを離脱位置に移動させる。尚、図24の(c)に示す状態の後に電動モータ61を停止させれば、図24の(d)に示すように、リターンスプリング66の弾性復元力により、ウォームホイール62及びセクタレバー63が中立位置に復帰する。
ここで、ダブルロックピン114が離脱位置に移動した状態においては、ノブレバー120のピン係合溝121と係合しないため、図24の(e)に示すように、インサイドドアハンドルIHを開扉操作してノブレバー120を反時計回りに回転させても、ノブレバー120の回転がロックレバー80に伝達されることはなく、ロック機構40がロック状態に維持されることになり、ドアDを開成移動させることができない(ダブルロック機構150のセット状態)。
上述したようにダブルロック機構150をアンセット状態からセット状態に切り替える場合には、ロックレバー80がロック位置に配置された状態からダブルロックピン114を外周側の離脱位置に移動させるだけであり、例えばロックレバー80に連係されたノブレバー120等の他の部材が移動することはない。従って、コントロールレバー等の調整部材を要することなくアンセット状態からセット状態への円滑な動作を確保して適用する車両の防盗性を著しく向上させることが可能となる。
図19に示すダブルロック機構150のセット状態から電動モータ61を駆動し、セクタレバー63を反時計回りに回転させると、図25の(a)〜(c)に順に示すように、アンロックギア63dがロックレバー80のロストモーションピン84に当接することによりロックレバー80が図25において反時計回りに回転する。ロックレバー80が反時計回りに回転すると、図1に示すように、リンクピン83を介して連係されたオープンリンクレバー41が時計回りに回転して上下方向に沿った位置となり、ロック機構40がアンロック状態となる。
またこの間、ロック側レバー当接部86がダブルロックレバー130の位置規制部134に当接することにより、ダブルロックレバー130が図25において時計回りに回転することになる。これにより、ダブルロックレバー130のアンセットレバー部132がダブルロックピン114に当接してこれを係合位置に移動させるとともに、ダブルロックピン114がノブレバー120の常態当接内壁121bに当接することによってこれをピンスライド溝85の内周側に移動させる。ダブルロックピン114が常態当接内壁121bに当接した以降、ピン係合溝121に係合するまでの間はロックレバー80の回転がノブレバー120に伝達されることになり、ノブレバー120が反時計回りに回転して図1に示した状態に復帰する。尚、図25の(d)に示すように、電動モータ61の駆動を停止することにより、ウォームホイール62及びセクタレバー63が中立位置に復帰する(ダブルロック機構150のアンセット状態)。
同様に、ダブルロック機構150をセット状態からアンセット状態に切り替える場合には、ダブルロックピン114を内周側の係合位置に移動させるだけであり、例えばロックレバー80に連係されたノブレバー120等の他の部材が移動することはない。従って、コントロールレバー等の調整部材を要することなくアンセット状態からセット状態への円滑な動作を確保して適用する車両の防盗性を著しく向上させることが可能となる。
しかも、ダブルロック機構150をセット状態とアンセット状態とに切り替えるアクチュエータとしては、ロック機構40をロック状態とアンロック状態とに切り替える電動モータ61を兼用するようにしている。従って、ドアロック装置1を大幅に小型化することが可能となる。
図26は、上述したドアロック装置1における電動モータ61の駆動制御系を示すブロック図である。図26に示すロック制御部200は、ロック/アンロックスイッチ201及びダブルロックセット/アンセットスイッチ202からの操作信号と、本体ケース1Aの内部に設けたロック検出センサ203及びダブルロック検出センサ204からの検出信号とに基づいて、電動モータ61の駆動を制御するものである。
ロック/アンロックスイッチ201は、例えば車両の室内に設けられた切り替えスイッチであり、ダブルロックセット/アンセットスイッチ202は、例えばリモコンキーに設けられた切り替えスイッチである。
ロック検出センサ203は、図1に示すように、ロック機構40のロック状態とアンロック状態とで位置が変更されるロックレバー80のロック側センサ当接部87を検出するものである。より具体的に説明すると、ロック機構40が図1に示すアンロック状態にある場合、ロック検出センサ203は、ロック側センサ当接部87によって接触子が押圧されることになり、ON信号をロック制御部200に出力する。これに対してロック機構40がロック状態となると、ロックレバー80が時計回りに回転するため、ロック側センサ当接部87が接触子から離隔することになり、OFF信号をロック制御部200に出力する。
ダブルロック検出センサ204は、ダブルロック機構150のセット状態とアンセット状態とで位置が変更されるダブルロックピンレバー110のダブルロック側センサ当接部113を検出するものである。より具体的に説明すると、ダブルロック機構150が図1に示すアンセット状態にある場合、ダブルロック検出センサ204は、ダブルロック側センサ当接部113によって接触子が押圧されることになり、ON信号をロック制御部200に出力する。これに対してダブルロック機構150がセット状態となると、ダブルロックピンレバー110がロックレバー軸81に対してスライドし、さらに図1において時計回りに回転するため、ダブルロック側センサ当接部113が接触子から離隔することになり、OFF信号をロック制御部200に出力する。
上述したロック制御部200では、例えばロック/アンロックスイッチ201からロック指令が与えられると、セクタレバー63が図1において時計回りに回転する方向に電動モータ61を駆動する。電動モータ61を駆動した後においてロック制御部200は、ロック検出センサ203を監視し、ロック検出センサ203からOFF信号が出力された時点で、つまりロック機構40がロック状態となった時点で電動モータ61の駆動を停止する。
一方、ロック機構40がロック状態にある場合に、ロック/アンロックスイッチ201からアンロック指令が与えられると、セクタレバー63が図1において反時計回りに回転する方向に電動モータ61を駆動する。電動モータ61を駆動した後においてロック制御部200は、ロック検出センサ203を監視し、ロック検出センサ203からON信号が出力された時点で、つまりロック機構40がアンロック状態となった時点で電動モータ61の駆動を停止する。
これらの結果、ロック/アンロックスイッチ201からの指令により、ロック機構40をロック状態とアンロック状態とに切り替えることができるようになる。
ここで、ロック機構40がロック状態にある場合にセクタレバー63を時計回りに回転した場合には、操作者が意図していないにも関わらずダブルロック機構150がアンセット状態からセット状態に切り替わることになる。従って、ロック制御部200は、ロック検出センサ203からOFF信号が与えられている際にロック/アンロックスイッチ201からロック指令が与えられた場合、これをキャンセルし、ダブルロック機構150がアンセット状態からセット状態に切り替わる事態を防止するようにしている。
一方、図1に示す状態においてダブルロックセット/アンセットスイッチ202からセット指令が与えられた場合、ロック制御部200は、ロック検出センサ203を通じてロック機構40がロック状態であるか否かを検出し、アンロック状態であると判断した場合、上述したロック機構40のロック動作を実施してロック機構40をロック状態に切り替える。
次いでロック制御部200は、ロック機構40がロック状態であることを条件に、セクタレバー63が図1において時計回りに回転する方向に電動モータ61を駆動する。電動モータ61を駆動した後においてロック制御部200は、ダブルロック検出センサ204を監視し、ダブルロック検出センサ204からOFF信号が出力された時点で、つまりダブルロック機構150がセット状態となった時点で電動モータ61の駆動を停止する。
一方、ダブルロック機構150がセット状態にある場合に、ダブルロックセット/アンセットスイッチ202からアンセット指令が与えられた場合、ロック制御部200は、セクタレバー63が図1において反時計回りに回転する方向に電動モータ61を駆動する。電動モータ61を駆動した後においてロック制御部200は、ダブルロック検出センサ204を監視し、ダブルロック検出センサ204からON信号が出力された時点で、つまりダブルロック機構150がアンセット状態となった時点で電動モータ61の駆動を停止する。尚、上述したドアロック装置1の場合、ダブルロック機構150のアンセットと同時にロック機構40もアンロック状態となる。
これらの結果、ダブルロックセット/アンセットスイッチ202からの指令により、ダブルロック機構150をセット状態とアンセット状態とに切り替えることができるようになる。
尚、上述した実施の形態では、ダブルロックセット/アンセットスイッチ202からセット指令が与えられた場合に、まずロック機構40がロック状態であるか否かを検出するようにしているが、必ずしもこれに限らない。例えば、ダブルロックセット/アンセットスイッチ202からセット指令が与えられた場合には、ロック機構40の状態及びダブルロック機構150の状態に関わらず、常にセクタレバー63を2回だけ反時計回りに回転させるようにしても良い。つまり、セクタレバー63を図1において時計回りに回転させた後、ロック検出センサ203のOFF信号が出力された時点で、あるいは予め設定した時間の経過後に電動モータ61を停止させてセクタレバー63を一旦中立位置に復帰させる。その後にさらにセクタレバー63を図1において時計回りに回転させれば、ダブルロック機構150が確実にセット状態に切り替わる。この場合、セクタレバー63が一旦中立位置に復帰するとともに、セクタレバー63とロックレバー80との間に構成したロストモーションピン84と一対のロストモーションギア63c,63dとによるロストモーション機構によって動力を伝達するようにしているため、仮にロック機構40が既にロック状態にあってもセクタレバー63の2回の回転が問題を招来する恐れはない。
また、上述した実施の形態では、チャイルドロック機構100としてチャイルドレバー70を手動操作するものを例示したが、図27の変形例に示すように、チャイルド用電動モータ210の駆動によってチャイルドロック機構100′を伝達状態と非伝達状態とに切り替えるように構成しても良い。すなわち、図27の変形例においては、チャイルドレバー70′にチャイルド用ウォームホイール76′を一体に形成するとともに、出力軸211にウォーム212を固着したチャイルド用電動モータ210を用意し、チャイルド用電動モータ210のウォーム212をチャイルド用ウォームホイール76′に歯合させるようにしている。尚、図27の変形例において実施の形態と同様の構成に関しては、同一の符号を付している。
この変形例によれば、チャイルド用電動モータ210を適宜方向に駆動すれば、手動操作を要することなくチャイルドロック機構100′を伝達状態と非伝達状態とに切り替えることが可能となる。