JP4962010B2 - 磁気抵抗効果素子の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、巨大磁気抵抗効果を発現する磁気抵抗効果素子の形成方法に関する。
ハードディスクなどの磁気記録媒体の情報を再生するにあたっては、磁気抵抗(MR:Magneto-resistive)効果を示すMR素子を備えた薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。近年では、磁気記録媒体の高記録密度化が進んでいることから、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto-resistive)効果を示す巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)利用した薄膜磁気ヘッドが一般的である。このようなGMR素子としては、例えば、スピンバルブ(SV:spin valve)型のGMR素子がある。
このSV型のGMR素子は、非磁性の中間層を介して、磁化方向が一定方向に固着された磁性層(磁化固着層)と、磁化方向が外部からの信号磁界に応じて変化する磁性層(磁化自由層)とが積層された構造を有している。再生動作時において読出電流が積層面内方向に流れるように構成されたものは、特に、CIP(Current in Plane)−GMR素子と呼ばれる。さらに、これを備えた薄膜磁気ヘッドはCIP−GMRヘッドと呼ばれる。この場合、2つの磁性層(磁化固着層および磁化自由層)における磁化方向の相対角度に応じて読出電流を流した際に電気抵抗(すなわち電圧)が変化するようになっている。
最近では、さらなる記録密度の向上に対応するため、再生動作の際に、読出電流が積層面と直交する方向に流れるように構成されたCPP(Current Perpendicular to the Plane)−GMR素子を備えたCPP−GMRヘッドの開発が進められている。このようなCPP−GMRヘッドは、一般的に、GMR素子と、このGMR素子を、絶縁膜を介してトラック幅方向に対応する方向に挟んで対向するように配置された一対の磁区制御層と、これらGMR素子および一対の磁区制御層を積層方向に沿って挟むように形成された上部および下部電極とを有している。上部および下部電極は、上部および下部シールド層を兼ねている。このような構成のCPP−GMRヘッドには、再生トラック幅方向の寸法を小さくした場合にCIP−GMRヘッドと比べて高出力が得られるという利点がある。すなわち、CIP−GMRヘッドでは面内方向に読出電流を流すので、再生トラック幅方向の寸法が狭小化するのに伴い読出電流が通過する感磁部分が微小となり、電圧変化量が小さくなってしまう。これに対し、CPP−GMRヘッドであれば積層方向に読出電流を流すので、再生トラック幅方向の狭小化による電圧変化量に対する影響は少ないのである。このため、CPP−GMRヘッドは、1インチあたりのトラック数(TPI;Tracks Per Inch)で表されるトラック密度の低減という観点においてCIP−GMRヘッドに比べて有利である。その上、CIP−GMRヘッドと比較した場合、CPP−GMR素子と上部シールド膜および下部シールド膜とのそれぞれの間に絶縁層を設ける必要がないので、その厚み分だけBPI(Bit Per Inch)で表される線記録密度を低減することができる。
このような背景から、CPP−GMRヘッドはさらなる記録密度の向上に対応するための改良が進められており、例えば電流狭窄(CCP;Current-confined-path)構造を有するCPP−GMR素子を備えたものが提案されている(特許文献1および2参照)。このCCP構造のCPP−GMR素子とは、銅などの非磁性導電体からなる基材にアルミニウム酸化物などの絶縁体が分散配置されてなるCCP層が、磁化固着層と磁化自由層との間に設けられたものである。こうした構造により、積層方向にセンス電流が流れる際、その通過可能な面内方向の領域がCCP層において狭窄される(電流狭窄効果が得られる)ので、より高い感度を得ることができる。
特開2002−208744号公報 特開2006−54257号公報
ところで、上記のCCP構造のCPP−GMR素子を形成するにあたっては、銅などの導電層を形成したのち、自然酸化法やプラズマ酸化法などによって酸化処理を施すことによりその一部に酸化物領域を形成する工程が一般的には必要である。しかしながら、導電層の酸化処理を行うことで、その下地層(例えば磁化固着層)の一部をも酸化してしまうことが多く、そうした場合には抵抗変化率の劣化を招く結果となっていた。したがって、下地層に悪影響を与えることなくCCP構造を形成することのできる方法が望まれる。
また、CCP構造のCPP−GMR素子は、例えば高温環境下に晒された場合、隣接する磁化固着層からCCP層へ金属元素が移動することにより、基材としての銅の純度が低下し、所定の電流狭窄効果が得られない可能性が考えられる。したがって、高温環境下においても良好な感度の得られるCCP構造を有するCPP−GMR素子が望まれる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、より高い抵抗変化率を安定して得ることができ、さらなる高記録密度化に対応可能な磁気抵抗効果素子を簡便に形成することのできる磁気抵抗効果素子の形成方法を提供することにある。
本発明の磁気抵抗効果素子の形成方法は、一定方向に固着された磁化を有する磁化固着層と、銅からなる基材を有する介在層と、外部磁界に応じて磁化の向きが変化する磁化自由層とを順に備えた磁気抵抗効果素子を形成する方法であって、コバルト,鉄およびニッケルのうちの少なくとも1種を含む材料を用いて磁化固着層を形成する工程と、磁化固着層の上に、基材および磁化固着層よりも酸化しにくいイリジウム,白金,ロジウムおよび金のうちの少なくとも1種とマンガンとを含む複数の金属層を面内方向に分散して形成したのち、金属層を覆うように、基材からなる第1の基材層と、アルミニウム,硅素,クロム,チタンおよびハフニウムのうちの少なくとも1種とマンガンとを含有する酸化物を含む酸化物層と、酸化物層の上に基材からなる第2の基材層とを順に形成することにより介在層を作製する工程とを含むようにしたものである。
本発明の磁気抵抗効果素子の形成方法では、磁化固着層の上に、基材および磁化固着層よりも酸化しにくい金属を含む金属層と、基材層と、基材よりも酸化しやすい金属を含む酸化物層とを順に備えた介在層が作製されるので、積層方向にセンス電流を流した場合に、その通過量を制限する電流狭窄効果が得られるうえ、例えば高温環境下に晒された場合であっても、隣接する磁化固着層を構成する金属元素が介在層の内部へ浸入するのを金属層が抑制することなる。
本発明の磁気抵抗効果素子の形成方法では、基材および磁化固着層よりも酸化しにくい金属と共にマンガン(Mn)を含むように金属層を形成することが望ましい。また、基材層の上に基材および磁化固着層よりも酸化しやすい金属を含む易酸化金属層を形成したのち、金属膜を酸化処理することにより酸化物層を形成するとよい。その場合、例えばプラズマ酸化法または自然酸化法を利用することが望ましい。介在層の基材としては銅を用い、基材および磁化固着層よりも酸化しにくい金属としてはイリジウム,白金,ロジウム,金などを用い、基材および磁化固着層よりも酸化しやすい金属としてはアルミニウム,硅素,クロム,チタンおよびハフニウムなどを用いるとよい。
本発明の磁気抵抗効果素子の形成方法によれば、磁化固着層の上に、基材および磁化固着層よりも酸化しにくい金属とマンガンとを含む金属層を形成したのち、その金属層を覆うように、第1の基材層と、基材および磁化固着層よりも酸化しやすい金属とマンガンとを含む酸化物層と、第2の基材層とを順に形成することにより介在層を作製するようにしたので、隣接する磁化固着層を構成する金属元素の拡散などによる基材の純度の劣化が生じにくく、かつ、より高い抵抗変化率を発現する磁気抵抗効果素子を得ることができる。すなわち、より高い感度を経時的に安定して得ることができ、さらなる高記録密度化に好適な磁気抵抗効果素子を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
最初に、図1ないし図5を参照して、本発明の一実施の形態に係る磁気抵抗効果素子ならびにそれを備えた薄膜磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ、ヘッドアームアセンブリおよび磁気ディスク装置の構成について以下に説明する。
図1は、本実施の形態に係る磁気ディスク装置の内部構成を表す斜視図である。この磁
気ディスク装置は、図1に示したように、例えば筐体100の内部に、情報が記録される
こととなる磁気記録媒体としての磁気記録媒体200と、この磁気記録媒体200への情
報の記録およびその情報の再生を行うためのヘッドアームアセンブリ(HAA;Head Arm Assembly)300とを備えるようにしたものである。HAA300は、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA;Head Gimbals Assembly)2と、このHGA2の基部を支持するアーム3と、このアーム3を回動させる動力源としての駆動部4とを備えている。HGA2は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド1(後出)が一側面に設けられた磁気ヘッドスライダ(以下、単に「スライダ」という。)2Aと、このスライダ2Aが一端に取り付けられたサスペンション2Bとを有するものである。このサスペンション2Bの他端(スライダ2Aとは反対側の端部)は、アーム3によって支持されている。アーム3は、筐体100に固定された固定軸5を中心軸としてベアリング6を介して回動可能なように構成されている。駆動部4は、例えばボイスコイルモータなどからなる。なお、通常、磁気ディスク装置は、図1に示したように複数の磁気記録媒体200を備えており、各磁気記録媒体200の記録面(表面および裏面)のそれぞれ対応してスライダ2Aが配設されるようになっている。各スライダ2Aは、各磁気記録媒体200の記録面と平行な面内において、再生トラックを横切る方向(X方向)に移動することができる。一方、磁気記録媒体200は、筐体100に固定されたスピンドルモータ7を中心とし、X方向に対してほぼ直交する方向に回転するようになっている。磁気記録媒体200の回転およびスライダ2Aの移動により磁気記録媒体200に情報が記録され、または記録された情報が読み出されるようになっている。
図2は、図1に示したスライダ2Aの構成を表すものである。このスライダ2Aは、例えば、アルティック(Al23・TiC)よりなるブロック状の基体8を有している。この基体8は、例えば、ほぼ六面体状に形成されており、そのうちの一面が磁気記録媒体200の記録面に近接して対向するように配置されている。磁気記録媒体200の記録面と対向する面が記録媒体対向面(エアベアリング面ともいう。)9であり、磁気記録媒体200が回転すると、記録面と記録媒体対向面9との間に生じる空気流に起因する揚力により、スライダ2Aが記録面との対向方向(Y方向)に沿って記録面から浮上し、記録媒体対向面9と磁気記録媒体200との間に一定の隙間ができるようになっている。基体8の記録媒体対向面9に対する一側面には、薄膜磁気ヘッド1が設けられている。
図3は、薄膜磁気ヘッド1の構成を分解して表す斜視図である。図4は、図3に示したIV−IV線に沿った矢視方向の構造を表す断面図である。図3および図4に示したように、薄膜磁気ヘッド1は、磁気記録媒体200に記録された磁気情報を再生する再生ヘッド部1Aと、磁気記録媒体200の記録トラックに磁気情報を記録する記録ヘッド部1Bとが一体に構成されたものである。
図3および図4に示したように、再生ヘッド部1Aは、積層方向にセンス電流が流れるように構成されたCPP(Current Perpendicular to the Plane)−GMR(Giant Magnetoresistive)構造をなす磁気抵抗効果素子(以下、MR素子という。)10を有している。具体的には、記録媒体対向面9に露出した面において、例えば基体8の上に、下部電極11と、MR膜20および一対の磁区制御膜12と、絶縁膜13と、上部電極14とが順に積層された構造となっている。なお、図3および図4では図示しないが、後述するように、一対の磁区制御膜12とMR膜20との間および一対の磁区制御膜12と下部電極11との間には一対の絶縁膜15が設けられている。また、絶縁膜13は、XY平面において、記録媒体対向面9を除くMR膜20の周囲を取り囲むように設けられており、詳細には、MR膜20をX方向に挟んで対向する第1の部分13A(図3参照)と、MR膜20を挟んで記録媒体対向面9とは反対側の領域を占める第2の部分13B(図4参照)との2つの部分から構成されている。下部電極11および上部電極14は、例えば、厚みがそれぞれ1μm〜3μmであり、ニッケル鉄合金(NiFe)などの磁性金属材料によりそれぞれ構成されている。これら下部電極11および上部電極14は、MR膜20を積層方向(Z方向)に挟んで対向し、MR膜20に不要な磁界の影響が及ばないように機能する。さらに、下部電極11はパッド11Pと接続され、上部電極14はパッド14Pと接続されており、MR膜20に対して積層方向(Z方向)に電流を流す電流経路としての機能も有している。MR膜20は、磁性材料を含む金属膜が多数積層されたスピンバルブ(SV)構造を有し、磁気記録媒体200に記録された磁気情報を読み出す機能を有するものである。一対の磁区制御膜12は、磁気記録媒体200の再生トラック幅方向に対応する方向(X方向)に沿ってMR膜20を挟んで対向するように配置されている。このような構成をなす再生ヘッド部1Aでは、磁気記録媒体200からの信号磁界に応じてMR膜20の電気抵抗が変化することを利用して、記録情報を読み出すようになっている。このMR膜20の詳細な構成については後述する。絶縁膜13および絶縁層16は、例えば厚みがそれぞれ10nm〜100nmであり、酸化アルミニウム(Al2 3 )または窒化アルミニウム(AlN)などの絶縁材料によりそれぞれ構成されている。絶縁膜13は、主に、下部電極11と上部電極14とを電気的に絶縁するためのものであり、絶縁層16は、再生ヘッド部1Aと記録ヘッド部1Bとを電気的に絶縁するものである。
続いて、記録ヘッド部1Bの構成について説明する。図3および図4に示したように、記録ヘッド部1Bは、再生ヘッド部1Aの絶縁層16の上に形成されており、下部磁極41と、記録ギャップ層42、ポールチップ43、コイル44、絶縁層45、連結部46および上部磁極47を有している。
下部磁極41は、例えば、NiFeなどの磁性材料よりなり、絶縁層16の上に形成されている。記録ギャップ層42は、Al2 3などの絶縁材料よりなり、下部磁極41の上に形成されている。この記録ギャップ層42は、XY平面におけるコイル44の中心部に対応する位置に、磁路形成のための開口部42Aを有している。記録ギャップ層42の上には、記録媒体対向面9の側から順に、ポールチップ43、絶縁層45および連結部46が同一平面内に形成されている。絶縁層45にはコイル44が埋設されている。コイル44は、記録ギャップ層42上に開口部42Aを中心とするように形成されており、例えば銅(Cu)または金(Au)により構成されたものである。なお、コイル44の両端末はそれぞれ電極44S,44Eに接続されている。上部磁極47は、例えば、NiFeなどの磁性材料よりなり、記録ギャップ層42、ポールチップ43,絶縁層45および連結部46の上に形成されている(図4参照)。この上部磁極47は、開口部42Aを介して下部磁極41と接触しており、磁気的に連結している。なお、図示しないが、Al2 3などからなるオーバーコート層が記録ヘッド部1Bの上面全体を覆うように形成されている。
このような構成を有する記録ヘッド部1Bは、コイル44に流れる電流により、主に下部磁極41と上部磁極47とによって構成される磁路内部に磁束を生じ、記録ギャップ層42の近傍に生ずる信号磁界によって磁気記録媒体200を磁化し、情報を記録するようになっている。
次に、図5を参照して、本実施の形態の薄膜磁気ヘッド1におけるMR素子10の詳細な構成について以下に説明する。図5は、MR素子10の、図4におけるV矢視方向から眺めた構造を表す断面図である。
図5に示したように、MR素子10は、下部磁極11の側から順に、下地層21と、反強磁性層22と、磁化固着層23と、介在層24と、磁化自由層25と、保護層26とが積層されたMR膜20を有している。下地層(バッファ層ともいう。)21は、例えば、1nm以上3nm以下の厚みを有するタンタル(Ta)層と、1nm以上3nm以下の厚みを有するルテニウム(Ru)層とが積層された構造を有し、反強磁性層22と磁化固着層23(より正確には、後述する第2の磁化固着膜233)との交換結合が良好に行われるように機能するものである。反強磁性層22は、例えば、白金マンガン合金(PtMn)またはイリジウムマンガン合金(IrMn)等の反強磁性を示す材料により、例えば4nm以上20nm以下の厚みで構成される。反強磁性層22は、磁化固着層23の磁化方向を固定する、いわゆるピンニング層として機能するものである。
磁化固着層23は、いわゆるシンセティック構造と呼ばれる3層構造をなしており、反強磁性層22と遠い側から(すなわち、磁化自由層25に近い側から)順に第1の磁化固着膜231と、非磁性膜232と、第2の磁化固着膜233とを有している。第1の磁化固着膜231は一定方向に固着された磁化J231を示し、例えば2nm以上4nm以下の厚みをなしている。非磁性膜232は、銅、ルテニウム、ロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir)などの非磁性金属材料からなり、例えば0.8nmの厚みを有している。さらに、第2の磁化固着膜233は、磁化J231とは反対方向に固着された磁化J233を示し、例えば2nm以上4nm以下の厚みを有するものである。第1および第2の磁化固着膜231,233は、非磁性膜232を介して反強磁性的な交換結合を構成しており、それらの磁化J231,J233の方向が反強磁性層22によって固着されている。
第1の磁化固着膜231は、例えば鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni)などを含む強磁性材料を基盤材料として構成されるものであり、単層構造および多層構造のいずれであってもよい。例えば、CoFeからなる単一層としてもよいし、CoFeと銅とを交互に繰り返し積層した構造としてもよい。後述するように、磁性体と非磁性体との界面においても磁気抵抗効果が期待できるので、上記のように「CoFe/Cu」等の多層構造をなすことにより磁気抵抗効果による抵抗変化量の向上が期待される。第1の磁化固着膜231はホイスラー合金を含むようにしてもよい。ここでいうホイスラー合金とは、組成式がX2 YZ(但し、X,Yは遷移金属元素であり、Zは半導体または非磁性金属である。)で表されるL21 構造やB2 構造を有するものや、組成式がX2 YZで表されるC12 構造を有するものを意味する。例えば、Xとしては鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛(Zn)などが用いられ、Yとしてはマンガン(Mn)やクロム(Cr)などが用いられ、Zとしてはアルミニウム,硅素,ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),インジウム(In),スズ(Sn),タリウム(Tl),鉛(Pb),アンチモン(Sb)などが用いられる。
第2の磁化固着膜233は、例えば鉄,コバルトおよびニッケルのうちの少なくとも1つを含む強磁性材料を基盤材料として構成されている。さらに、第2の磁化固着膜233は、添加物質として、例えばタンタル(Ta),クロムおよびバナジウム(V)などを含んでいてもよい。
第2の磁化固着膜233についても、第1の磁化固着層231と同様に、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。例えば、コバルト鉄タンタル合金(CoFeTa)、コバルト鉄ニッケルクロム合金(CoFeNiCr)、コバルト鉄クロム合金(CoFeCr)もしくはコバルト鉄バナジウム合金(CoFeV)といった成分からなる単一層としてもよいし、または、CoFe、Ta、NiCr、FeCrもしくはFeVといった異なった成分からなる単一層が、いくつか積層された構造(例えば、「CoFe/Ta」,「CoFe/FeCr」,「CoFe/FeV」など)としてもよい。
介在層24は、高い電気伝導率を有する(電気抵抗の小さな)非磁性金属材料を基材とするものであり、例えば、2nm以上4nm以下、好ましくは3.0nmの厚みを有している。介在層24は、主に、磁化自由層25と磁化固着層23(第1の磁化固着膜231)との磁気結合を切り離すと共に、読出動作の際、積層方向(Z方向)に流れるセンス電流を狭窄するように機能するものである。センス電流は、例えば、下部電極11から第1の磁化固着膜231を経由したのち、この介在層24を通過して磁化自由層25に達するものである。
図6は、図5に示したMR膜20における介在層24の断面構成を拡大して示したものである。図6に示したように、介在層24は、磁化固着層23の上面において少なくとも面内方向に分散して設けられた複数の金属層241と、この金属層241を覆う第1の基材層242Aと、この第1の基材層242Aの上面において少なくとも面内方向に分散して設けられた複数の酸化物層243と、この酸化物層243を覆う第2の基材層242Bとを有している。ここで、第1および第2の基材層242A,242Bは、いずれも、例えば銅などの基材によって構成されている。金属層241は、上記の基材および磁化固着層23の構成材料よりも酸化しにくい金属(すなわち、標準電極電位が基材よりも大きな金属)、具体的にはイリジウム(Ir),白金(Pt),ロジウム(Rh)および金(Au)などによって構成されている。酸化物層243は、非導電性であり、かつ基材および磁化固着層23の構成材料よりも酸化しやすい金属(すなわち、標準電極電位が基材よりも小さな金属)、具体的にはアルミニウム(Al),硅素(Si),クロム(Cr),チタン(Ti)およびハフニウム(Hf)などの酸化物によって構成されている。酸化物層243にはマンガンが含まれていてもよい。
磁化自由層25は、外部磁界に応じて変化する磁化方向を示すものであり、第1の磁化固着膜231を挟んで第2の磁化固着膜233とは反対側に形成されている。磁化自由層25は、例えば、ニッケル鉄合金(NiFe)からなる第1の強磁性膜251と、コバルト鉄合金(CoFe)からなる第2の強磁性膜252との2層構造をなしている。第1の強磁性膜251の厚みは、例えば2nm〜6nmであることが望ましく、第2の強磁性膜252の厚みは、例えば0.5nm〜2.5nmであることが望ましい。磁化自由層25では、第1および第2の強磁性膜251,252の磁化が、外部磁界(本実施の形態では磁気記録媒体200からの信号磁界)の向きや大きさに応じて変化することとなる。なお、磁化自由層25は、CoFeやNiFeなどの強磁性材料からなる単一層であってもよい。また、磁化自由層25は、ホイスラー合金を含むようにしてもよい。
保護層26は、例えば、5nm以上15nm以下の厚みを有すると共に、銅やタンタル、ルテニウムなどにより構成されるものであり、製造過程において、成膜後のMR素子10を保護するように機能する。
磁区制御膜12は、下部電極11の上に絶縁膜15を介して形成された下地層121と、この上に形成された磁区制御層122とによって構成されたものである。磁区制御膜12は、X方向(再生トラック幅に対応する方向)においてMR膜20を挟むように対向配置され、磁化自由層25に縦バイアス磁界を印加するものである。より詳細には、下地層121は、例えば、クロムチタン合金(CrTi)やタンタルからなり、製造過程において、磁区制御層122の成長性を向上させるように機能する。磁区制御層122は、例えば、コバルト白金合金(CoPt)などからなり、磁化自由層25の単磁区化を促進し、バルクハウゼンノイズの発生を抑制するように機能する。ここで、一対の磁区制御膜12とMR膜20との間および一対の磁区制御膜12と下部磁極11との間には一対の絶縁膜15が設けられている。一対の絶縁膜15は、例えば、Al2 3 またはAlNなの電気絶縁性を有する材料によって構成され、MR膜20の両端面S20から下部磁極11の上面S11にかけて連続的に覆うように形成されている。このため、一対の磁区制御膜12と、MR膜20および下部磁極11とは電気的に絶縁される。
図5に示したように、下部および上部電極11,14は、上記のような構成を有するMR膜20を積層面と直交する方向(Z方向)に挟むように対向配置されており、磁気記録媒体200の磁気情報を読み出す際には、MR膜20に対してZ方向にセンス電流を流すための電流経路として機能する。
次に、このように構成されたMR素子10および薄膜磁気ヘッド1の再生動作について、図3ないし図5を参照して説明する。
この薄膜磁気ヘッド1では、再生ヘッド部1Aにより磁気記録媒体200に記録された情報を読み出す。記録情報を読み出す際には、記録媒体対向面9が磁気記録媒体200の記録面と対向しており、この状態で、磁気記録媒体200からの信号磁界がMR素子10に到達する。この際、MR膜20には予め、下部電極11および上部電極14を介して積層方向(Z方向)にセンス電流が流されている。すなわち、MR膜20の内部を、下地層21、反強磁性層22、磁化固着層23、介在層24、磁化自由層25および保護層26の順に、あるいは、その逆の順にセンス電流が流されている。MR膜20においては、信号磁界によって磁化方向が変化する磁化自由層25と、反強磁性層22によって磁化方向がほぼ一定方向に固定され、信号磁界の影響を受けない磁化固着層23との間で、相対的な磁化の向きが変化する。その結果、伝導電子のスピン依存散乱の変化が起こり、MR膜20の電気抵抗に変化が生じる。この電気抵抗の変化は出力電圧の変化をもたらし、この電流変化を検知することにより、磁気記録媒体200の記録情報を読み出すようになっている。また、一対の絶縁膜15を設けることにより、下部シールド11と上部シールド14との間を流れるセンス電流が、一対の磁区制御膜12に洩れにくくなる。すなわち、センス電流がX方向に広がることなく確実にMR膜20の幅に限定されて通過することとなるので、磁化自由層25の磁化方向変化によるセンス電流の抵抗変化を、より高感度に検出することができる。
さらに、介在層24が導電性の第1および第2の基材層242A,242Bに埋設された酸化物層243を有しており、この酸化物層243がいわゆる電流狭窄(CCP)層としての機能を発揮し、積層方向(Z方向)に流れるセンス電流の通過量を制限する電流狭窄効果をもたらすので、抵抗変化率が向上することとなる。一方で、介在層24と第1の磁化固着膜231との界面において基材および磁化固着層23の構成材料よりも酸化しにくい金属からなる金属層241を設けるようにしたので、例えば高温環境下に晒された場合であっても、磁化固着層23を構成する金属元素が介在層24の内部へ浸入するのをその金属層241が抑制することなる。このような作用により、異種金属の拡散による基材の純度の劣化を抑制しつつ、抵抗変化率を向上させることができる。その結果、MR素子10を有する薄膜磁気ヘッド1を備えた磁気ディスク装置は、より高い感度を経時的に安定して発現することができる。よって、さらなる高記録密度化に好適なものといえる。
続いて、図7から図13を参照して、薄膜磁気ヘッド1の製造方法について説明する。ここでは、主にMR素子10を形成する部分について詳細に説明する。
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法は、基体8上に下部電極11を形成する工程と、この下部電極11の上に、下部電極11の側から反強磁性層22と磁化固着層23と介在層24と磁化自由層25とが順に配設された構造を含む多層膜20Zを形成する工程と、この多層膜20Zの上に、素子幅を規定する部分に対応する領域を保護するように選択的にフォトレジストパターン61を形成する工程と、このフォトレジストパターン61をマスクとして利用し、多層膜20Zを選択的にエッチングすることによりMR素子10を形成する工程と、絶縁膜と強磁性膜とを選択的に形成したのち、フォトレジストパターン61を除去することにより絶縁膜15を介した一対の磁区制御膜12を形成する工程と、この一対の磁区制御膜12の上に絶縁膜13を形成する工程と、フォトレジストパターン61を除去したのち、全面に亘って上部電極14を形成する工程とを含むものである。以下、各工程について詳細に説明する。
まず、図7に示したように、基体8の一側面上に形成された下部電極11上に全面に亘って多層膜20Zを形成する。具体的には、スパッタリング等を用いて、下地層21、反強磁性層22、磁化固着層23、介在層24、磁化自由層25および保護層26とを順に積層する。この多層膜20Zは、のちにMR膜20となるものである。なお、図7,図10〜図13においては、MR膜20ならびにその形成過程における多層膜20Zの内部構造については図示を省略するが、いずれも上記した図5に示したMR膜20と対応する内部構造を有している。
ここで、図8および図9を参照して、介在層24の形成工程について詳細に説明する。
まず、図8に示したように、磁化固着層23(第1の磁化固着膜231)の上に、銅および磁化固着層23の構成材料よりも酸化しにくい金属であるイリジウム,白金,ロジウムおよび金のうちの少なくとも1種と、マンガンとを含む合金からなる合金層241Zを、例えば0.1nm以上1.0nm以下の厚みとなるように形成する。なお、図8などでは、合金層241Zが面内方向において不連続に形成されているが、可能であれば連続した層とすることが望ましい。但し、実際のところ、このような厚みでは一般的には不連続となる。合金層241Zを形成したのち、これを覆うように銅などからなる第1の基材層242Aと、銅および磁化固着層23の構成材料よりも酸化しやすい金属であるアルミニウム,硅素,クロム,チタンおよびハフニウムなどからなる易酸化金属層243Zとを順に形成する。第1の基材層242Aについては、例えば1.0nm〜1.5nm程度の厚みとなるように形成する。一方、易酸化金属層243Zについては、例えば0.1nm〜0.4nm程度の厚みとなるように形成することで、不連続な層となるようにする。
こののち、プラズマ酸化法や自然酸化法を利用して、易酸化金属層243Zを酸化処理することにより酸化物層243(図9)を形成する。このとき、易酸化金属層243Zばかりでなく、その下層である第1の基材層242Aや合金層241Zも酸素ガスや酸素プラズマの影響を受けることとなる。しかしながら、合金層241Zに含まれるマンガンが易酸化金属層243Zに移動し、元々の易酸化金属層243Zを構成する金属(アルミニウム,硅素,クロム,チタンおよびハフニウムなど)と共に酸化物を形成するので、第1の基材層242Aそのものが酸化するのを防ぐことができる。酸化物層243を形成したのち、全体を覆うように第2の基材層242Bを形成することで、図6に示した構成を有する介在層24が完成する。なお、合金層241Z、第1の基材層242A、易酸化金属層243Zおよび第2の基材層242Bについては、全てスパッタリング法により形成することが望ましい。
続いて、図10に示したように、多層膜20Zの上に、素子幅を規定する部分に対応する幅Wをなすように選択的にフォトレジストパターン61を形成する。この場合、所定の溶剤を使用してフォトレジストパターン61の端部を一部除去し、アンダーカットを形成するようにしてもよい。
次いで、多層膜20Zを、例えば、イオンミリングやRIE等のドライエッチングによりフォトレジストパターン61をマスクとして利用して選択的に除去する。この場合、下部電極11に達するまでドライエッチングを行う。これにより、図11に示したように、幅Twを有するMR膜20が形成される。この幅Twは、MR膜20の平均的な素子幅である。MR膜20を形成したのち、図12に示したように、これをX方向に挟んで両側に隣接するように、一対の絶縁膜15および一対の磁区制御膜12を形成する。具体的には、例えば、スパッタリング等により、全面に亘って、絶縁膜15と下地層121と磁区制御層122を順に形成する。さらに、この磁区制御膜12の上に、スパッタリングにより絶縁膜13を形成する。次いで、フォトレジストパターン61をリフトオフすることにより、MR膜20と、これを挟んで対向する一対の絶縁膜15と、下地層121および磁区制御層122からなる一対の磁区制御膜12とが現れる。
フォトレジストパターン61を除去したのち、図13に示したように、全面に亘って上部電極14を形成する。これにより、MR素子10が一応完成する。こののち、図3および図4に示したように、全面に亘って絶縁層16を形成することにより、再生ヘッド部1Aが一応完成する。続いて、再生ヘッド部1Aの上に、下部磁極41と記録ギャップ層42とを順に形成し、記録ギャップ層42の上に選択的にコイル44を形成する。こののち、記録ギャップ層42の一部をエッチングすることにより開口部42Aを形成する。次いで、コイル44を覆うように絶縁層45を形成し、さらに、ポールチップ43および連結部分46を順次形成する。最後に全体を覆うように上部磁極47を形成することにより記録ヘッド部1Bが一応完成する。こののち、例えば、スライダ2Aを機械加工して記録媒体対向面2Fを形成するなど、所定の工程を経ることにより、薄膜磁気ヘッド1が完成する。
このように、本実施の形態では、第1の磁化固着膜231の上に、基材(例えば銅)および磁化固着層23の構成材料よりも酸化しにくい金属とマンガンとを含む合金層241Zと、第1の基材層242Aと、易酸化金属層243Zとを順に形成したのち、酸化処理を施すようにしたので、第1の基材層242Aの酸化を防止しつつ酸化物層243を形成することができる。一方、第1の磁化固着膜231の表面には金属層241が残留するので、磁化固着層23を構成する金属元素が不純物として第1および第2の基材層242A,242Bの内部へ浸入するのを抑制することができる。これらの結果、第1および第2の基材層242A,242Bを構成する基材の純度が低下せず、良好な電流狭窄効果を発揮するCCP構造が得られる。よって、良好な感度を安定して発揮することのできるMR素子を実現することができる。
特に、マンガンを含むホイスラー合金を用いて第1の磁化固着膜231を形成した場合には、金属層241の存在が、磁気抵抗効果率の低下の抑制に効果的である。金属としてのマンガンが介在層24に浸入すると、センス電流に含まれるスピン電子のスピン情報を打ち消してしまう負の作用を発現するからである。なお、マンガンは、酸化物を構成する場合にはそのような負の作用を示すことはないと考えられる。
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
以下に述べる本発明の実施例は、上記実施の形態において説明した製造方法に基づき、図5および図6に示した断面構造を有するMR膜20を備えたMR素子10のサンプルを作製し、これらのサンプルについて特性調査をおこなったものである。以下、表1〜表5を参照して各実施例について説明する。各実施例では、MR膜20の形成面積を0.04μm2 (0.2μm×0.2μm)とした。
(実施例1−1〜1−7)
ここでは、MR膜20が以下に示す表1の構成となるように作製した。但し、表2(後出)に示したように、作製段階においてIrMnを用いて0.03nm〜1.00nmの厚みを有する合金層を作製し、最終的にイリジウム(Ir)からなる金属層を得るようにした。なお、酸化物層を形成する際には、アルミニウムを用いて易酸化金属層を形成し、プラズマ酸化法により、アルゴン(Ar)ガスおよび酸素ガス(O)を利用してプラズマを形成し、30ワット(W)以下の投入電力において60秒間に亘って易酸化金属層に対する酸化処理をおこなった。また、合金層の厚みを変化させることで、酸化物層におけるアルミニウムとマンガンとの含有率を表2に示すように変化させた。ここでいう、含有率とは、アルミニウムおよびマンガンの総重量に対するアルミニウムの重量[Al/(Al+Mn)]、またはアルミニウムおよびマンガンの総重量に対するマンガンの重量[Mn/(Al+Mn)]をそれぞれ意味する。このようにして得た各実施例について、抵抗変化率(%)および面積抵抗(Ω・μm2 )を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0004962010
Figure 0004962010
なお、実施例1−1〜1−7に対する比較例1−1として、介在層における金属層を設けなかったことを除き他は同様の構成を有するMR素子を作製し、同様の調査を行ったので併せて表2に示した。
表2に示したように、実施例1−1〜1−7では、比較例1−1とほぼ同等の面積抵抗を維持しつつ、比較例1−1よりも高い抵抗変化率を得ることができた。特にIrMnからなる合金層を0.1nmから8.0nm以下の厚みで作製し、酸化物層におけるマンガンの含有率を19.4%から63.1%とすることで、抵抗変化率の向上にあたってより効果的であることがわかった。このような結果は、酸化処理の際、合金層を構成するIrMnからマンガンが易酸化金属層へ移動し、アルミニウムと共にAlMnOx を形成することで、第1の基材層を構成する銅の酸化を防止するという効果が表れたものと推測される。同時に、第1の磁化固着膜231の表面に残留した金属層としてのイリジウムが、第1の磁化固着膜231の酸化を抑制する効果も影響していると考えられる。なお、実施例1−7では、合金層の厚みが大きいため、合金層に含まれるマンガンが十分に酸化されずに金属層に残留していることで抵抗変化率の若干の低下を招いているものと考えられる。
(実施例2−1〜2−6)
ここでは、合金層としてPtMnを用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして表1の構成を有するMR膜20を備えたMR素子1を作製した。本実施例においても、実施例1−1〜1−7と同様の評価をおこなった。その結果は表2に示した通りである。本実施例においても、比較例1−1とほぼ同等の面積抵抗を維持しつつ、比較例1−1よりも高い抵抗変化率を得ることができた。特にPtMnからなる合金層を0.3nmから1.0nm以下の厚みで作製し、酸化物層におけるマンガンの含有率を34.3%から60.7%とすることで、抵抗変化率の向上にあたってより効果的であることがわかった。
(実施例3−1,4−1)
ここでは、合金層としてRhMnまたはAuMnを用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして表1の構成を有するMR膜20を備えたMR素子1を作製した。実施例3−1,4−1においても、実施例1−1〜1−7と同様の評価をおこなった。その結果は表2に示した通りである。本実施例においても、比較例1−1とほぼ同等の面積抵抗を維持しつつ、比較例1−1よりも高い抵抗変化率を得ることができた。
(実施例5−1,5−2)
ここでは、MR膜20が以下に示す表3の構成となるように作製した。具体的には、第1の磁化固着膜231の構成を、表3に示したようにホイスラー合金を含む3層構造としたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にしてMR膜20を備えたMR素子1を作製した。ホイスラー合金としては、Co2 MnGe(実施例5−1)およびCo2 MnSi(実施例5−2)を採用した。さらに、実施例5−1および5−2に対する比較例5−1として、第1の磁化固着膜231を4nmの厚みのFeCoからなる単一層とすると共に、介在層における金属層を設けなかったことを除き他は実施例5−1および5−2と同様の構成を有するMR素子を作製した。さらに、実施例5−1に対する比較例5−2として、介在層における金属層を設けなかったことを除き他は実施例5−1と同様の構成を有するMR素子を作製した。これらの実施例5−1および5−2、ならびに比較例5−1および5−2についても、実施例1−1〜1−7と同様の評価をおこなった。その結果を表4に示す。
Figure 0004962010
Figure 0004962010
表4に示したように、実施例5−1および5−2は、比較例5−1と比較した場合には、ほぼ同等の面積抵抗を維持しつつ、より高い抵抗変化率を発現し、比較例5−2と比較した場合には、面積抵抗を低減しつつ、より高い抵抗変化率を発現することがわかった。したがって、第1の磁化固着膜231を、ホイスラー合金を含む3層構造とした場合においても、実施例1−1〜1−7と同様に、酸化処理の際、合金層を構成するIrMnからマンガンが易酸化金属層へ移動し、アルミニウムと共にAlMnOx を形成することで第1の基材層を構成する銅の酸化を防止するという効果が得られ、かつ、第1の磁化固着膜231の表面に残留した金属層としてのイリジウムが、第1の磁化固着膜231の酸化を抑制する効果も得られると考えられる。
(実施例6−1〜6−6)
ここでは、実施例1−1〜1−7と同様の構成(表1)を有するMR膜20を備えたMR素子1を作製した。但し、酸化処理を行う時間を表5に示したように30秒から300秒の範囲で変化させた。本実施例においても、実施例1−1〜1−7と同様の評価をおこなったので、その結果を表5に示す。さらに、本実施例に対する比較例6−1〜6−6として、合金層を設けなかったことを除き他は同様にしてMR素子を作製し、同様の調査を行ったので併せて表5に示した。さらに、IrMnからなる合金層を作製したのち、酸化処理を行わずに作製したMR素子について同様の調査をおこなったものを比較例6−7として併せて表5に示す。
Figure 0004962010
表5に示したように、実施例6−1〜6−6と比較例6−1〜6−6とをそれぞれ比較すると、各実施例では、酸化処理時間が60秒までは各比較例とほぼ同等の面積抵抗を示し、それ以上の酸化処理時間とすると各比較例よりも小さな面積抵抗を示した。さらに各実施例では、各比較例よりも高い抵抗変化率を得ることができた。これは、合金層を設けなかった各比較例では、酸化処理の際、第1の磁化固着膜などが酸素プラズマの影響を受けてしまったことにより、抵抗変化率が低下し、面積抵抗が上昇したためと思われる。また、比較例6−7では、IrMnからなる合金層を設けるようにしたものの、酸化処理を行わなかったため、マンガンが金属の状態のまま金属層に残留してしまい、抵抗変化率の低下を招く結果となったと思われる。
(実施例7−1〜7−4)
ここでは、作製段階において、IrMnなどの合金層の代わりに単体金属であるイリジウム(実施例7−1)、白金(実施例7−2)、ロジウム(実施例7−3)または金(実施例7−4)をそれぞれ用いて金属層241を磁化固着層23の上に形成するようにしたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして以下の表6の構成を有するMR膜20を備えたMR素子1を作製した。金属層241の厚みは、いずれも0.5nmとした。これらの実施例7−1〜7−4についても実施例1−1〜1−7と同様の評価をおこなった。その結果を比較例1−1と併せて表7に示す。
Figure 0004962010
Figure 0004962010
表7に示したように、実施例7−1〜7−4では、比較例1−1とほぼ同等の面積抵抗を維持しつつ、比較例1−1よりも高い抵抗変化率を得ることができた。これにより、第1の磁化固着膜231の表面に設けられた金属層としてのイリジウム、白金、ロジウムおよび金が、第1の磁化固着膜231の酸化を抑制する効果を発揮することが確認できた。
以上、実施の形態およびいくつかの実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、これらの実施の形態および実施例に限定されず、種々変形可能である。例えば、本実施の形態および実施例では、ボトム型のシンセティックスピンバルブ構造をなすMR素子を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、トップ型であってもよい。また、本実施の形態および実施例では、シンセティック磁化固着層を1つ備えたシングルスピンバルブ型のMR素子を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、シンセティック磁化固着層を2つ備えたデュアルスピンバルブ型のMR素子とすることも可能である。この場合、磁化自由層の上下に介在層を設けることとなるが、それらの介在層を本発明の構成とすることにより、または本発明の製造方法によってそれらの介在層を作製することにより、上述した本発明の効果を得ることができる。
また、上記実施の形態では、磁区制御膜12の上に絶縁膜13Aを設けるようにしたが、絶縁膜13Aを省略するようにしてもよい。
本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを備えたアクチュエータアームの構成を表す斜視図である。 図1に示したアクチュエータアームにおけるスライダの構成を表す斜視図である。 本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成を表す分解斜視図である。 図3に示した薄膜磁気ヘッドのIV−IV線に沿った矢視方向の構造を表す断面図である。 図4に示した薄膜磁気ヘッドのV矢視方向から眺めた要部構成を表す断面図である。 図5に示したMR素子の要部を拡大して示す拡大断面図である。 図1に示した薄膜磁気ヘッドを製造する方法における一工程を表す要部断面図である。 図7に示した薄膜磁気ヘッドを製造する方法における一工程の詳細を説明するための要部拡大断面図である。 図8に続く一工程を表す要部断面図である。 図7に続く一工程を表す要部断面図である。 図10に続く一工程を表す要部断面図である。 図11に続く一工程を表す要部断面図である。 図12に続く一工程を表す要部断面図である。
符号の説明
1…薄膜磁気ヘッド、2…ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)、2A…スライダ、2B…サスペンション、3…アーム、4…駆動部、5…固定軸、6…ベアリング、7…スピンドルモータ、8…基体、9…記録媒体対向面、10…磁気抵抗効果(MR)素子、11…下部電極、12…磁区制御膜、13,15…絶縁膜、14…上部電極、16…絶縁層、20…MR膜、21…下地層、22…反強磁性層、23…磁化固着層、231…第1の磁化固着膜、232…非磁性膜、233…第2の磁化固着膜、24…介在層、241…金属層、241Z…合金層、242A…第1の基材層、242B…第2の基材層、243…酸化物層、243Z…易酸化金属層、25…磁化自由層、26…保護層、41…下部磁極、42…記録ギャップ層、43…ポールチップ、44…コイル、45…絶縁層、46…連結部、47…上部磁極、100…筐体、200…磁気記録媒体、300…ヘッドアームアセンブリ(HAA)。

Claims (4)

  1. 一定方向に固着された磁化を有する磁化固着層と、銅(Cu)からなる基材を有する介在層と、外部磁界に応じて磁化の向きが変化する磁化自由層とを順に備えた磁気抵抗効果素子を形成する方法であって、
    コバルト(Co),鉄(Fe)およびニッケル(Ni)のうちの少なくとも1種を含む材料を用いて前記磁化固着層を形成する工程と、
    前記磁化固着層の上に、前記基材および磁化固着層よりも酸化しにくいイリジウム(Ir),白金(Pt),ロジウム(Rh)および金(Au)のうちの少なくとも1種とマンガン(Mn)とを含む複数の金属層を面内方向に分散して形成したのち、前記金属層を覆うように、前記基材からなる第1の基材層と、アルミニウム(Al),硅素(Si),クロム(Cr),チタン(Ti)およびハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1種とマンガンとを含有する酸化物を含む酸化物層と、前記基材からなる第2の基材層とを順に形成することにより前記介在層を作製する工程と
    を含むことを特徴とする磁気抵抗効果素子の形成方法。
  2. 前記第1の基材層の上にアルミニウム(Al),硅素(Si),クロム(Cr),チタン(Ti)およびハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1種を含む易酸化金属層を形成したのち、前記易酸化金属層を酸化処理することにより前記酸化物層を形成する
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子の形成方法。
  3. プラズマ酸化法または自然酸化法を利用して前記易酸化金属層を酸化処理することにより前記酸化物層を形成する
    ことを特徴とする請求項2記載の磁気抵抗効果素子の形成方法。
  4. 前記磁化固着層を、マンガンを含むように形成する
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項記載の磁気抵抗効果素子の形成方法。
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