JP4961149B2 - ワンウェイ・クラッチ - Google Patents

Description

本発明は、概略的には、二つの構成要素が１つの方向に相対回転するときに両構成要素間を駆動連結し、反対の方向に相対回転するときにオーバーランするクラッチに関連し、具体的には、ロッカーに作用する遠心力の効果に少なくとも部分的に起因して、係合又は非係合するロッカーを持つ前記のクラッチに関連する。

クラッチの内側レースと外側レースとの間の一方向駆動連結を作り出すための従来のワンウェイ・クラッチ（one-way clutch）は、両レースを解放可能にそして駆動可能に結合するためのスプラグ又はローラーと、両レースに結合された機械的組立体の構成部品とを含む。そのようなクラッチは、自動車の伝動機構或いは動力伝達装置内で一般的に使用される。ワンウェイ・クラッチは、殆どの場合問題なく機能するが、クラッチによって大きなトルクが伝達されるような、或いは、クラッチが占めることのできる空間が非常に小さい特定の適用例においては、必要な条件を満たすため、従来のスプラグ型式或いはローラー型式以外のワンウェイ・クラッチが必要とされる。

従来のワンウェイ・クラッチ組立体は、一方の回転方向において、切欠きが付けられた或いは窪みを付けられた二つのレースを互いに駆動可能に締結し、他方の回転方向において、それらのレースが自由に回転することを許容する、少なくとも１つのスプラグ又はローラーを持つ。ロッカー型式のワンウェイ・クラッチ組立体及び、スプラグ型式のワンウェイ・クラッチ組立体は、同じ大きさのローラー型式のものに比べてトルク伝達能力を増大し得るが、それらは概して、ロッカー或いはスプラグがレースと当接することによって生じる接触或いは支圧応力（bearing stress）の大きさによって、トルク伝達能力が制限されている。

これら及びその他の問題を解決するため、特許文献１に記述されたワンウェイ・オーバーランニング・クラッチは、共通の軸線に対して時計回り及び反時計回りに回転するように取り付けられた駆動部材及び被駆動部材を含んでいる。駆動部材は、共通の軸線に対して垂直な、平らな駆動面を含み、平らな駆動面を時計回りの方向又は反時計回りの方向のいずれかに回転する動力源に接続する。被駆動部材は、駆動面に近接し且つ、それに対向した関係に位置づけられた平らな被駆動面を含む。駆動部材と被駆動部材は、それぞれの駆動面の一方にある一連のポケットと、他方の駆動面に保持された複数の協働する支材(strut)とによって、駆動部材が反時計回りに駆動されるときに被駆動部材を一緒に駆動するよう、互いに連結される。駆動部材が時計回りに駆動されるとき、駆動部材は被駆動部材を駆動せず、被駆動部材に対して自由に回転する。レース間にねじり荷重を伝達する支材の支柱安定性が、設計において重要な要素である。

特許文献２は、切欠きを持つ内側レースと、その切欠きと係合するためポケット内に配設されたロッカーとを備える、ラチェット式・ワンウェイ・クラッチ組立体を開示する。ロッカーをポケット内に配置すべく外側レース内のポケット内にて頂部或いは凹部と合わさる回動リッジ部をロッカーが持っている。それぞれのロッカーの質量中心が、ロッカーが内側レース内の切欠きを係合又は解放するように配置されている。各ロッカーに対し、切欠きとの係合を生じるように向けられた傾動力を提供するため、ばね部材が使われている。

従来のワンウェイ・クラッチは、クラッチによってトルクが伝達されるときに、比較的大きな周応力（hoop stress）が生じるので、従来のワンウェイ・クラッチのレースは、それに作用する周応力に耐えるため、軸受鋼によって形成されている。特許文献１及び２に記載されたクラッチは、作動中に比較的小さな周応力しか生じないので、強化金属で形成可能である。強化金属で形成されたクラッチは、大幅な加工を必要としない場合、通常の高級鋼のクラッチの形成及び製造コストに比べ、比較的低いコストで製造され得る可能性がある。

しかしながら、特許文献１及び２に記載のワンウェイ・クラッチは、強化金属で形成された構成部品に、かなり多くの加工を必要とする。更にこれらのクラッチには、特定の作動条件において、許容できないレベルの音を発生させる大きな内部バックラッシュを発生させる可能性がある。
米国特許５,０７０,９７８号明細書 米国特許５,９５４,１７４号明細書

したがって、作用する支圧応力が小さく且つ、強化金属から容易に形成し得る、低コストで信頼性の高い、ワンウェイ・クラッチが必要とされている。このクラッチは、コンパクトで、動作音が限りなく小さく、そして加工を殆ど必要としないものがよい。好ましくは、このクラッチは、駆動装置への組付けを容易にする機構を含むものがよい。

本発明は、内側レース、外側レース及び、１つの回転方向においてレースと駆動可能に結合し、反対の回転方向においてオーバーランする回動ロッカーを持つワンウェイ・クラッチを提供する。クラッチは、好ましくは強化金属で形成される。ロッカーは一方のレース内に、オーバーランニング状態におけるクラッチが、ロッカーを切欠きプレートから離れるように回動すべく付勢することによりロッカーを切欠きプレートから解放するのを補助する遠心力を利用できるように配設される。或いは、ロッカーをカムリングに向かって回動するよう付勢することによってロッカーが切欠きプレートに係合するのを補助する遠心力をクラッチが利用できるようにロッカーを配設することも出来る。

ロッカーを収容するロッカープレートの形状は、強化金属成分中の増粘剤及び脱増粘剤を除去するような、いかなる目的の加工処理も必要としない独特のものである。強化金属から形成されるこのクラッチの構成要素は、形成後の加工を必要としない。

所定の直径に対する切欠きの数が、従来のワンウェイ・クラッチよりも多いので、バックラッシュが実質的に減少する。また、その構造によって、それ自身の組立を容易にする。ロッカープレート予備組立体が、ロッカー及び各ロッカー用のリターンスプリングを収容する。ロッカープレート予備組立体はクラッチ内に組立てられる前において、ポケット内の各ロッカーの回動を制限し、それぞれのリターンスプリングがそれぞれのロッカーにポケットと当接する方向の力を付与することにより、ロッカーがポケットから横方向に出るのを防止する。この配置は、予備組立体が、そのクラッチ内への取り付けに先立って、ロッカー及びばね部材を既にキャリア内に取り付けた状態で、取り扱われ且つ、運搬されることを許容する。

本発明によるオーバーランニング・ワンウェイ・クラッチは、切欠きが形成されたカムプレート、軸周りに互いに角度方向に間隔を空けて配設されたポケットが形成されたロッカープレートを含み、上記各ポケットは、軸方向の一端において開口を有し、軸方向の他端において各ポケットを閉じる面を有する。ロッカーは、カムプレート上の切欠きとの係合に向かい、そして、その係合から離れる運動のために、それぞれのポケット内に置かれる。ロッカープレート上に支持された各ばね部材が、ロッカーを切欠きと係合する方向に付勢する。

弓形のスプライン面によって部分的に形成された独特の流体通路或いは流路が、ロッカーと切欠きの臨界面に潤滑油を運ぶために設けられる。各ポケットは、構造的連続性、剛性及び、クラッチが係合する時のロッカーと切欠きとの係合によって生じる力を支えるための強度を提供するため、軸方向の一端で閉じられる。スプラインの歯の頂部が、各ポケットの近くに置かれ、これらの係合負荷を支えるための付加的な構造強度及び剛性を提供すべく、ポケットに対して割出しされている。

ロッカー及びばね部材の擦過や磨耗を防止するため、ロッカープレートに一体として回転するために固定されたリテーナプレートが、ポケットの軸方向の開口端及び、ばね部材用の凹部の端を閉じる。ロッカープレート及びカムプレートは、互いに係合された案内面を持ち、この案内面は組立てに際してロッカープレート及びカムプレートの軸方向の相対移動を案内し、それらが相対的に回転するときに相互の軸受支えを提供する。

本発明の種々の目的及び有利点は、下記の好ましい実施形態の詳細な記述を添付の図面に照らして読むことにより、本技術分野の当業者に対して明らかになるであろう。

そこで図面を参照すると、図１には本発明によるワンウェイ・クラッチ組立体２０の第一の実施形態が示されている。クラッチ組立体２０が、内側レース即ちロッカープレート２２、外側レース即ちカムプレート２４、及び、複数のロッカー２６を含み、それぞれのロッカーは内側レース２２内に形成されたポケット２８内に、中心軸３０周りに互いに角度方向に間隔を空けて配設される。外側レース２４の内面部が、軸３０の周りに角度方向に互いに間隔を空けた複数のカム又は切欠き３２を備えて形成される。図１に示されるクラッチ内には、１２個のロッカー２６と１２個のポケット２８、そして３６個の切欠き３２がある。

内側レース２２が時計回りに外側レース２４よりも速く回転するとき、各ロッカー２６は、外側レースの径方向内側面と当接することによって、切欠き３２との係合から離れるようポケット２８内で反時計回りに回動する。これは、内側レース２２が、外側レース２４に対して軸３０周りに時計回りに自由に回転することを許容する。内側レース２２が外側レース２４に対して反時計回りに回転しようとするとき、内側レース２２及び外側レース２４は、ロッカー２６の切欠き３２との係合によって互いに係合され、即ち、駆動可能に結合される。

クラッチ２０が係合されたとき、係合された各ロッカー２６は、ポケットの内側面３４との当接及び係合された切欠き３２の径方向に向いた面３６との当接によって、内側レース２２と外側レース２４との間で力Ｆを伝達する。

各ポケット２８に配設された凹部４０は、各ロッカーをポケット内で切欠きと係合する方向に付勢するための、螺旋コイル式圧縮ばね４２又はアコーディオン式圧縮ばね４４のような、ばね部材を含む。図１０及び図１１は、オーバーランニング・クラッチ２０内での使用に適した圧縮ばねを示す。

図２乃至図５が、角度方向に間隔を空けて置かれた複数のポケット２８及びばね用凹部４０を備えて形成されたロッカープレート２２を持つクラッチを示しており、これらの図において、各ポケットは、カムプレート２４の径方向内側面に形成された切欠きに係合する状態と、非係合の状態とを切り換えるためにそれぞれのポケットの中で回動するロッカー２６を収容している。強化金属のブッシュ４６が、カムプレート２４内に置かれている。

図５に最も判りやすく示されているように、クラッチが組立てられるとき、ブッシュ４６の軸方向の面が、フランジ５０の軸方向内側面４８と当接する。面４８には、潤滑用流体、好ましくは変速機オイルを、ブッシュ４６の径方向内側面５１に向かって径方向外側に運ぶ溝５２が形成される。オイルは、径方向に伸びる溝５２に入り、そして、オイルを径方向外側に面５５まで向かわせる径方向の空間５３までブッシュ４６の径方向内側面５１上を軸方向左側（ロッカー側）へ移動する。そして、ロッカープレート２２を幅方向に横切るように軸方向左側へ移動する。また、ロッカー２６の表面を軸方向左側へ移動する。ブッシュ４６はロッカープレート２２及びカムプレート２４をそれらの正しい位置に案内し、それによってカムプレート２４の切欠き又はカム３２に沿った加工や、ロッカープレート２２の径方向外側面域に沿った加工を不要にする。潤滑オイルは、溝５２に沿ってブッシュ４６まで径方向に確実に導かれ、その後、ロッカープレート２２の面６８とブッシュ４６の内径の内側５１との間を、軸方向にロッカー２６まで確実に導かれる。潤滑オイルは、クラッチが軸３０周りに回転するときに発生する遠心油圧ヘッドによってこの油路に沿って流れる。

カムプレート２４の径方向外側面はスプライン５４を備えて形成され、カムプレート２４はこのスプライン５４によって、駆動装置に駆動可能に結合される。同様に、ロッカープレート２２の径方向内側面はスプライン５６を備えて形成され、ロッカープレート２２はこのスプライン５６によって駆動装置の構成部材に駆動可能に結合される。

ロッカープレート２２の軸方向の面５８は、リテーナリング６０と当接する。このリテーナリング６０は、各ポケット２８の軸方向一端を閉じ、カムプレート２４上に形成された凹部６４に係合し、スナップリング６２によって保持される。

図３及び図４はそれぞれ、組立て完了直前の位置に置かれたクラッチ２０の構成要素と、組立て完了位置に置かれたクラッチ２０の構成要素を示す。クラッチ２０は、カムプレート２４をスプライン７０によって車両駆動装置のドラム７２に駆動可能に結合された状態で組み立てられる。

ここで図６を参照すると、ロッカー２６の好ましい実施形態が、幾つかの面８０、８２、８４、８６及び、前出の回動中心９０を含み得る。面８０及び８２は共に、回動中心９０を中心とする円弧を持つ円筒面である。面８０及び８２はロッカー２６の回転或いは回動を案内し、その回動を一自由度に制限する。面８０及び８２の円弧は、ロッカー２６を中心９０から径方向内に拘束すべく、ロッカー２６の首部即ち支材部９２側が、カウンターウエイト部９４側よりも狭くなるように設定されなければならない。

面８０は案内面である。クラッチが作動してロッカー２６が切欠き３２に係合する間に力Ｆが加えられるとき、面８０上に反力が生じないことが好ましい。面８２は、クラッチ２０がロッカー２６を介して外側レースと内側レース２２との間にトルクを伝達するときに、力Ｆに対する反力が生じる面である。面８２の中心が回動中心９０に置かれているので、力Ｆに対する反力は面８２に沿って分配され、その中心が回動中心９０に置かれるので、ロッカー２６を回動中心周りに回動させるトルクは発生しない。

面８４はロッカー２６の時計回りの回動を制限し、そして、レース２２又は２４の組立体が、ポケット２８、ロッカー２６及び、ばね部材４２、４４を含む一助となる。各ポケット２８にロッカー２６を挿入し、そして各凹部４０にばね部材を置くことによって、レースの取り付け準備が行われる。ばね部材によって対応するロッカー２６に与えられる力は、ロッカー２６を、そこにおいて面８４がポケット２８の基部９６に当接する、図６に示す位置に回転させる。ばね力及び、基部９６上におけるその反力は、外部レースや別の組立体の助け無しに、ロッカー２６をポケット２８内に保持する。ロッカー２６を収容しているレースは、レース予備組立体をクラッチ組立体２０に取り付ける準備段階において、このように保持された状態でロッカー２６と一緒に容易に運搬され得る。

ロッカー２６の回動中心９０周りの回動回転を制限することにより、クラッチが作動する即ち係合されるとき、支材への逆回転の反力が面８４において発生する。クラッチ２０が作動するとき、ロッカー２６の面８６に与えられる力Ｆは、ロッカー２６上に、回動中心９０に関して時計回りのトルクを生じさせる。力Ｆによって生成される中心９０周りのトルクは、ロッカー面８４がポケット面９６と当接する位置で、力Ｐ１により受けられる。もし面８４が無かったならば、全ての反力トルクが、どこか他のところで受けられるであろう。例えば、もし力Ｆに対する全てのねじり反力がロッカー面８８に加えられるならば、高入射角の反力によって、レースの内壁をせん断変形させる傾向のある大きな周応力が、面８８と当接するレース上に発生するであろう。もし力Ｆに対するねじり反力が面８２に加えられるならば、それは内側レースの先端の最も弱い点に加えられるであろう。好ましくは、力Ｆに対するねじり反力が、ロッカー面８４においてポケット２８の基部９６に対して垂直になるように、そこにおいてポケット２８との当接により摩擦力が発生する面８２上に設定される。

面８６は、クラッチ２０が作動してロッカー２６が切欠き３２の径方向の面３６と係合するときに力Ｆが与えられる面である。面８６は、ロッカー２６が係合位置に回動されるときに機械的な干渉を作り出すことによって、この機能を発揮する。

クラッチ２０がオーバーランしているとき即ち、ロッカー２６が切欠き３２から解放されるとき、ロッカー２６の支材部９２と同じ高さに置かれる面８８は、干渉を確実に無くすべく、切欠き３２の径方向の表面３６の頂部９８と接触する。面８８は、クラッチ２０がオーバーランしている間の潤滑油膜の形成を促進する曲線を描く。面８８はまた、外側レースの回転速度に対するロッカー２６のポケット２８内への回転速度を最小化する移行位置を備えることにより、クラッチ２０がオーバーランしている間の頂部９８との衝撃を最小化する曲線を描く。これは、クラッチ２０がオーバーランするときのロッカー２６上の角加速度を最小化する。

ロッカー２６の質量中心１００は、ロッカー２６が外側レースに置かれても又は内側レースに置かれても、遠心力がロッカー２６を係合又は解放する傾向を持つように、回動中心９０に関して配置され得る。

図７に示すように、質量中心１００は、中心軸３０と回動中心９０とを結ぶ線に対して右側に配置され、ロッカー２６は内側レース２２上に配設されたポケット２８内に保持されている。クラッチ組立体２０が中心軸３０周りに回転するとき、ロッカー２６上の遠心力ＣＦは、中心軸３０及び質量中心１００を通る線１０２に沿って径方向外側に向かい、ロッカー２６を回動中心９０に関して反時計回りに回動させる。この反時計回りのロッカー２６の回動は、ばね部材４２、４４の力に対抗し、ロッカー面８６を内側レース２２上のポケット面３６との当接から離れるように回動させる傾向がある。この反時計回りのロッカー２６の回動は、ロッカー２６を非係合位置に移動させる傾向があり、内側レース２２がオーバーランし、クラッチ２０が解放することを可能とする。ばね部材４２を圧縮し、ロッカー２６を非係合位置に回動させる傾向のある回動中心９０周りのモーメントの大きさは、内側レース２２の回転速度と質量中心１００の回動中心９０からの距離とによって変化する。

或いは、ロッカー２６が内側レース２２上に配設されたポケット２８内に保持されるとき、質量中心１００が、中心軸３０と回動中心９０とを結ぶ線に対して左側に置かれる場合もある。この場合、クラッチ組立体２０が軸３０周りに回転するとき、ロッカー２６上の遠心力はロッカー２６を回動軸９０に関して時計回りに回動させる。この時計回りのロッカー２６の回動は、ばね部材の力の効果を増大させ、ロッカー２６の面８６を外側レース２４上の径方向の面３６と当接する方向に移動させる。即ち、ロッカー２６を係合位置に回動させ、クラッチ２０を係合させる。

図８は、本発明によるクラッチ組立体の第二実施形態を示す。クラッチ組立体１２０は、内側レース或いはロッカープレート１２２、外側レース或いはカムプレート１２４及び、複数のロッカー１２６を含み、各ロッカー１２６は、外側レース１２４内に中心軸１３０回りに互いに角度方向に間隔を空けて形成されたポケット１２８内に位置する。内側レース１２２の外側面は、軸３０に関して角度方向に互いに間隔を空けて配設された複数のカム或いは切欠き１３２を備えて形成される。図８に示されるクラッチ１２０は、９個のロッカー１２６と９個のポケット１２８及び、３６個の切欠き１３２を持つ。

外側レース１２４が時計回りに内側レース１２２よりも速く回転するとき、各ロッカー１２６は、内側レース１２２の径方向外側面と当接することによって、切欠き１３２との係合から離れるようポケット１２８内で時計回りに回動する。これは、外側レース１２４が、内側レース１２２に対して軸１３０周りに時計回りに自由に回転することを許容する。外側レース１２４が内側レース１２２に対して反時計回りに回転しようとするとき、内側レース１２２及び外側レース１２４は、ロッカー１２６の切欠き１３２との係合によって互いに係合、即ち、駆動可能に結合される。

クラッチ１２０が係合されるとき、係合される各ロッカー１２６は、ポケット１２８の内側面１３４との当接及び、係合された切欠き１３２の径方向に向いた面１３６との当接によって、内側レース１２２と外側レース１２４との間で力を伝達する。

各ポケット１２８に配設された凹部１４０は、各ロッカー１２６をポケット１２８内で切欠きと係合する方向に付勢するための、螺旋コイル式圧縮ばね４２又はアコーディオン式圧縮ばね４４のような、ばね部材を含む。図１０及び図１１は、オーバーランニング・クラッチ２０内での使用に適した圧縮ばねを示す。

図９に示されたクラッチ組立体１２０を見ると、各ロッカー１２６の質量中心１５０が、軸１３０と回動中心１５２とを結ぶ線の右側に位置している。外側レース１２４が軸１３０回りに回転するとき、ロッカー１２６にかかる遠心力は、軸１３０及び質量中心１５０を通る線１５４に沿って径方向外側に向かい、ロッカー１２６を回動中心１５２周りに半時計方向に回動させる。このロッカー１２６の反時計回りの回動は、ばね部材４２、４４の力と協働し、ロッカー１２６を面１３６との係合位置に付勢する傾向があり、クラッチ１２０を係合させる。

或いは、クラッチ組立体１２０において、各ロッカー１２６の質量中心１５０が、軸１３０と回動中心１５２を結ぶ線の左側に置かれる場合もある。この場合は、外側レース１２４が軸３０回りに回転するとき、ロッカー１２６への遠心力がロッカー１２６を回動軸１５２に関して時計回りに回動させる。ロッカー１２６の、この時計回りの回動は、ばね力の効果に対抗し、ロッカー１２６の回転面８６を、内側レース１２２上の径方向の面１３６との当接から離れるように回動させる傾向がある。この作用は、ロッカー１２６を非係合位置に移動させる傾向があり、クラッチ１２０がオーバーラン即ち解放するのを許容する。

ここで図１２を参照すると、クラッチ組立体の代替実施形態が、図１に示すクラッチ組立体と同様に、切欠き１６２を備えて形成されたカムプレート１６０、そのカムプレート１６０の軸方向端部に配設された径方向フランジ及び、カムプレートの反対側の軸方向端部に置かれた凹部１６６を持つ。

ロッカープレート１６８は、長手方向中心軸１７２の周りに等間隔に角度方向に間隔を空けて配設された複数のポケット１７０を備えて形成され、各ポケット１７０はロッカー１７４を収容する。各ポケット１７０は、面１７６によって軸方向の一方の端が閉じられ、反対側の端が開放されるように構築される。図１に示された実施形態と同様に、各ポケット１７０は、その径方向外側面に開口を有し、それぞれのロッカー１７４が、その開口を通じてポケット１７０に面した切欠きと係合又は非係合すべく動作する。ポケット１７０の軸方向端部１７７は、ポケット１７０及びばね用凹部を覆うリテーナプレート１７８によって覆われる。

カムプレート１６０は、軸方向に向いた円柱状の内壁面１８０を備えて形成され、ロッカープレート１６８は、図１２に示されている組立位置へのカムプレート１６０の軸方向の動きを案内する、軸方向に向いた円柱状の外壁面１８２を備えて形成される。取り付けに際し、面１８０、１８２は互いに係合し、カムプレート１６０とロッカープレート１６８の相対回転の軸受支えを提供する。ロッカープレート１６８とカムプレート１６０の組立後及び動作中において、ロッカープレート１６８をカムプレート１６０に対する軸方向の動きに対して固定すべく、リテーナリング１８４が凹部１６６内に位置する。

図１３乃至図１５に眼を移すと、リテーナプレート１７８は、実質的に平面の環状リング１９０であり、その軸方向内側面が、ポケット１７０の軸方向開口端１７７に近接して置かれる。角度方向に間隔を空けて配設された複数のタブ（tab）１９２が、リング１９０の面から、リテーナプレート１７８をロッカープレート１６８と一緒に回転させるべくリテーナプレート１７８が固定されるロッカープレート１６８に向かって、軸方向に伸びる。リテーナプレート１７８の内側面１９４が、軸１７２周りに角度方向に間隔を空けて交互に配置した頂部と谷部を持つスプラインに似た形状を備えて形成される。図１５が、リテーナプレート１７８の面１９０から伸びる、軸方向に向いた典型的なタブ１９２と、タブ１９２を所定の位置に曲げるのを容易にする逃がし凹部１９１とを示す。

図１６を参照すると、ポケット１７０の軸方向開口端１７７に対向するロッカープレート１６８の面１９６が、その径方向内側面において、ロッカープレート１６８を軸方向に横切って伸びる内側スプラインを備えて形成される。スプラインの外形は、軸１７２周りに角度方向に間隔を空けて交互に置かれ、歯面２０３によって結合される多頂部２０２と谷部２０４とを含む。外径２０６を持つ内側スプラインは、スプラインによって結合された構成要素の外側スプラインによって駆動可能に結合される。スプラインの谷部２０４は、それぞれ弓形の基部を持ち、この基部は外径２０６と谷部２０４の基部との間に流体路２０８を形成する。

図１８は、流路２０８が、面１９６から各ポケット１７０の軸方向開口端１７７に向かってロッカープレート１６８を軸方向に横切るように向かい、そして軸１７２に対して径方向外側に向かうことを示す。リテーナプレート１７８へ向かう流体路内に運ばれる潤滑油は、ロッカープレート面２１０とリテーナプレート１７８の軸方向内側面２１２との間をポケット１７０内に向かって流れ、そして、カムプレート１６０の切欠き１６２に抗して径方向外側に流れる。このようにして、ロッカー、ポケット及び、切欠きが連続的に潤滑される。

ここで図１７及び図１９を参照すると、面１９６と軸方向に反対側のロッカープレート１６８の面２１４が、連続した、近接するポケット１７０の間に角度方向に間隔を空けて配設された径方向溝２１６を備えて形成される。各溝２１６はスプラインの谷部２０４から、面２１０を径方向に横切るように延び、リテーナプレート１７８によって覆われる。溝２１６を出る潤滑油は、カムプレート１６０上の切欠き１６２の表面に抗して径方向外側へ送られる。

軸方向の面２１０にはまた、リテーナプレート１７８のタブ１９２を受ける大きさで、角度方向に間隔を空けて配設されたタブ用凹部２２０が形成される。タブ１９２が凹部２２０と係合するとき、リテーナプレート１７８はロッカープレート１６８の軸方向の面２１０に近接して置かれ、ロッカープレート１６８と一体的に回転するようにロッカープレート１６８に固定される。

クラッチが係合するとき、ロッカープレート１６８のポケット１７０内の少なくとも１つのロッカーが、カムプレート１６０上の切欠き１６２と係合するようになり、図１に示すように力Ｆがロッカーに与えられる。係合されたロッカーに加えられるこの外力は、そこにおいて加えられる力の合力Ｈがロッカープレート１６８に到達する、各ポケット１７０の角部に伝えられる。

本発明の別の観点によれば、ロッカープレート１６８の径方向内側面における内側スプラインが、軸１７２周りに角度方向に配設され、スプライン２２２の頂部２０２がベクトルＨで表される力の作用線の延長上に置かれるように、各ポケット１７０の角部２２２に対して割出しされる。力Ｈの作用線は、カム３６と係合するロッカー２６の面８６の中点から、そこにおいてカムによって加えられる係合力がポケットの壁に到達する、ポケットの反対側の角部に伸びる。図１７に示すように、スプラインの頂部２０２の好ましい位置は、力Ｈの作用線が、頂部の角度方向の先端の実質的に中間である、点２２４において頂部を通るような位置である。この頂部のポケットに対する配置が、付加的な構造強度及び係合負荷を運ぶための剛性を提供する。

スプラインの頂部がそのように配設され、その正しい位置によって作られる望ましい構造上に利点を提供すべく割出しされることを確かなものとするため、スプラインの頂部２０２は、最も近いポケット１７０及びその角部２２２から径方向下方に角度方向にオフセットして置かれ、各ポケットに最も近いスプライン谷部は、ポケットの径方向下方で角度方向に一列に並ぶように置かれる。

本発明の技術思想及び動作モードがその好ましい実施形態によって説明及び図示されてきたが、本発明がその技術思想又は範囲から逸脱すること無く、具体的に説明され図示された以外のものにおいても実施可能であることを理解すべきである。

本発明によるクラッチの側面図であり、内側レース内に置かれ、外側レース内の切欠きと係合するロッカーを示す。 軸方向に互いに間隔を空けて置かれた構成要素を示すクラッチ組立体の等角図である。 直径方向の面で切り取られた図２のクラッチ組立体の部分断面等角図であり、構成要素の空間的配置を示す。 直径方向の面で切り取られた図２のクラッチ組立体の部分断面等角図であり、構成要素の空間的配置を示す。 直径方向の面で切り取られた図２のクラッチ組立体の部分断面側面図であり、組み立てられた構成要素を示す。 内側レースの一部の側面図であり、ロッカー、ポケット及びリターンスプリングを示す。 内側レースの一部の側面図であり、ロッカー、ポケット、リターンスプリング及び、遠心力ベクトルを示す。 本発明の第二の実施形態に関するクラッチの側面図であり、外側レース内に置かれ内側レース内の切欠きと係合するロッカーを示す。 外側レースの一部の側面図であり、ロッカー、ポケット、リターンスプリング及び、遠心力ベクトルを示す。 アコーディオン式のリターンスプリングの側面図である。 螺旋式のリターンスプリングの側面図である。 本発明の代替実施形態に関するワンウェイ・クラッチ組立体の、直径方向の面で切り取った断面図である。 リテーナプレートの前面図である。 図１３のリテーナプレートの側面図である。 図１３の矢印１５の方向から見たリテーナプレートの部分図である。 図１２のロッカープレートを、軸方向に、ポケットの軸方向開口端とは反対側の端に向かって見た、端面図である。 図１２のロッカープレートを、軸方向に、ポケットの軸方向開口端に向かって見た、端面図である。 図１６の面１８-１８で切り取られたロッカープレートの断面図である。 図１７の面１９-１９で切り取られたロッカープレートの断面図である。

符号の説明

２０ クラッチ組立体
２２ 内側レース（ロッカープレート）
２４ 外側レース（カムプレート）
２６ ロッカー
２８ ポケット
３０ 中心軸
３２ 切欠き
４０ ばね用凹部
６０ リテーナリング
９０ 回動中心
１００ 質量中心
１６０ カムプレート
１６８ ロッカープレート
１７０ ポケット
１７４ ロッカー
１７７ 開口端
１７８ リテーナプレート

Claims (13)

1. 軸（１７２）周りに角度方向に互いに間隔を空けて配設され且つ、軸方向に開口端（１７７）と閉口端を有するポケット（１７０）、上記軸（１７２）周りに頂面（２０２）と谷面（２０４）を交互に備え、外側スプラインと駆動連結を生成するために軸方向に延びる内側スプライン及び、上記頂面（２０２）上に少なくとも部分的に配設された軸方向に向かう流路（２０８）を含むロッカープレート（１６８）と、
   上記軸（１７２）周りに角度方向に分布した、上記ポケット（１７０）に対向する複数の切欠き（１６２）を含むカムプレート（１６０）と、
   該カムプレート（１６０）上の切欠き（１６２）と係合する方向及び係合から離れる方向の動作のため、それぞれのポケット（１７０）の中に置かれた複数のロッカー（２６，１２６）と、
   上記ロッカープレート（１６８）に支持され、上記ロッカー（２６，１２６）を上記切欠き（１６２）と係合するように付勢するばね部材（４２，４４，１４２，１４４）と、
   上記ロッカープレート（１６８）と共に回転し且つ、上記流路（２０８）の軸方向端部を覆うため、上記ロッカープレート（１６８）に固定されるリテーナプレート（１７８）とを有する
   ことを特徴とするワンウェイ・クラッチ。
2. 上記ロッカープレート（１６８）が、上記軸（１７２）周りに角度方向に間隔を空けて配設された複数の溝を更に有し、
   各溝が、上記流路（２０８）と角度方向に一列に並び、上記流路（２０８）の端部から上記カムプレート（１６０）上の切欠き（１６２）に向かって径方向に伸びる
   ことを特徴とする請求項１に記載のワンウェイ・クラッチ。
3. 上記ロッカープレート（１６８）が、上記軸（１７２）周りに角度方向に間隔を空けて配設された複数の溝を更に有し、
   各溝が、上記流路（２０８）と角度方向に一列に並び、上記流路（２０８）の端部から上記カムプレート（１６０）上の切欠き（１６２）に向かって径方向に伸び、更に上記リテーナプレート（１７８）によって覆われる
   ことを特徴とする請求項１に記載のワンウェイ・クラッチ。
4. 上記ロッカープレート（１６８）上の上記流路（２０８）が、上記軸（１７２）に関して軸方向に向かい、その後、径方向に向かう
   ことを特徴とする請求項１乃至３のいずれか１つに記載のワンウェイ・クラッチ。
5. 上記内側スプラインの頂面（２０２）が、角度方向に間隔を空けて配設され且つ、上記頂面（２０２）上に中点を持つ先端部を含み、
   各ポケット（１７０）が、ポケット（１７０）に最も近い頂面（２０２）の上記中点の径方向外側で且つ角度方向にオフセットした位置に置かれる
   ことを特徴とする請求項１乃至４のいずれか１つに記載のワンウェイ・クラッチ。
6. 上記カムプレート（１６０）が、上記ポケット（１７０）の軸方向開口端（１７７）に近接して配設された径方向フランジを更に有し、
   該フランジが、上記ロッカープレート（１６８）に対向する面と、軸方向に対して上記径方向フランジと上記ロッカープレート（１６８）との間に配設されたリテーナプレート（１７８）とを含む
   ことを特徴とする請求項１乃至５のいずれか１つに記載のワンウェイ・クラッチ。
7. 軸（１７２）周りに互いに角度方向に間隔を空けて配設され且つ、軸方向に開口端（１７７）と閉口端を有するポケット（１７０）、円柱状案内外面（１８２）、上記軸（１７２）周りに頂面（２０２）と谷面（２０４）を交互に備え、外側スプラインと駆動連結を生成するために軸方向に延びる内側スプライン及び、上記頂面（２０２）上に少なくとも部分的に配設された軸方向に向かう流路（２０８）を含むロッカープレート（１６８）と、
   上記軸（１７２）周りに角度方向に分布し且つ上記ポケット（１７０）に対向する複数の切欠き（１６２）、及び、上記円柱状案内外面（１８２）と係合するための円柱状案内内面（１８０）を含み、該係合が上記ロッカープレート（１６８）と上記カムプレート（１６０）との軸方向の相対移動を案内するカムプレート（１６０）と、
   該カムプレート（１６０）上の切欠き（１６２）と係合する方向及び係合から離れる方向の動作のため、それぞれのポケット（１７０）の中に置かれた複数のロッカー（２６，１２６）と、
   上記ロッカープレート（１６８）に支持され、上記ロッカー（２６，１２６）を上記切欠き（１６２）と係合するように付勢するばね部材（４２，４４，１４２，１４４）とを有する
   ことを特徴とするワンウェイ・クラッチ。
8. 上記ロッカープレート（１６８）の上記円柱状案内外面（１８２）と上記カムプレート（１６０）の上記円柱状案内内面（１８０）との係合が、上記ロッカープレート（１６８）と上記カムプレート（１６０）との相対回転のための軸受支えを提供する
   ことを特徴とする請求項７に記載のワンウェイ・クラッチ。
9. 上記ロッカープレート（１６８）が、
   上記軸（１７２）周りに互いに角度方向に互いに間隔を空けて配設され、上記ばね部材（４２，４４，１４２，１４４）を収容し且つ、軸方向に開口端を持つ、ばね用凹部（４０，１４０）と、
   上記各ばね用凹部（４０，１４０）の軸方向開口端とは反対側の端において上記各ばね用凹部（４０，１４０）を閉じる面とを更に有する
   ことを特徴とする請求項７又は８に記載のワンウェイ・クラッチ。
10. 上記ロッカープレート（１６８）と共に回転し、上記ポケット（１７０）の軸方向開口端（１７７）を覆うための、上記ロッカープレート（１６８）に固定されたリテーナプレート（１７８）を更に有する
    ことを特徴とする請求項７乃至９のいずれか１つに記載のワンウェイ・クラッチ。
11. 上記ロッカープレート（１６８）と共に回転し、上記ポケット（１７０）の軸方向開口端（１７７）及び上記ばね用凹部（４０，１４０）を覆うための、上記ロッカープレート（１６８）に固定されたリテーナプレート（１７８）を更に有する
    ことを特徴とする請求項９に記載のワンウェイ・クラッチ。
12. 上記ロッカープレート（１６８）の軸方向の面内に軸方向周りに角度方向に間隔を空けて形成されたタブ用凹部（２２０）と、
    上記ロッカープレート（１６８）の上記軸方向の面に近接して置かれたリテーナプレート（１７８）とを更に有し、
    該リテーナプレート（１７８）が、上記軸（１７２）周りに角度方向に間隔を空けて配設され、上記リテーナプレート（１７８）を上記ロッカープレート（１６８）に回転可能に固定すべく上記タブ用凹部（２２０）内に伸びるタブ（１９２）を含み且つ、上記ポケット（１７０）の上記軸方向の開口端（１７７）を覆う
    ことを特徴とする請求項７乃至９のいずれか１つに記載のワンウェイ・クラッチ。
13. 上記ロッカープレート（１６８）の各ばね用凹部（４０，１４０）が、上記ロッカープレート（１６８）の軸方向の面内に、上記軸（１７２）周りに角度方向に間隔を空けて配設されたタブ用凹部（２２０）を更に有し、
    上記ロッカープレート（１６８）の上記軸方向の面に近接して置かれたリテーナプレート（１７８）を更に有し、
    該リテーナプレート（１７８）が、上記軸（１７２）周りに角度方向に間隔を空けて配設され、上記リテーナプレート（１７８）を上記ロッカープレート（１６８）に回転可能に固定すべく上記タブ用凹部（２２０）内に伸びるタブ（１９２）を含み且つ、上記ポケット（１７０）の上記軸方向の開口端（１７７）及び上記ばね用凹部（４０，１４０）を覆う
    ことを特徴とする請求項９に記載のワンウェイ・クラッチ。

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