以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、膝保護用エアバッグ装置Mに使用されるエアバッグ50を例に採り説明する。実施形態の膝保護用エアバッグ装置Mは、図1に示すように、運転席に着座した運転者(乗員)Dの膝K(KL,KR)を保護するもので、ステアリングコラム3を覆うように配置されるコラムカバー16内の下部16a側に収納されるステアリングコラム付けタイプのものである。膝保護用エアバッグ装置Mは、図2,3に示すように、折り畳んだエアバッグ50と、エアバッグ50に膨張用ガスを供給するインフレーター34と、を、コラムカバー16内の下部16a側に設けられた収納部位P(図2,3参照)内に収納させて、構成されている。
なお、本明細書では、前後、上下、及び、左右の方向は、特に断らない限り、ステアリングコラム3の軸方向を基準とされるもので、ステアリングコラム3の軸方向に沿った方向を前後方向とし、ステアリングコラム3の軸方向と直交する上下の方向を上下方向とし、ステアリングコラム3の軸方向と直交する左右の方向を左右方向としている。
コラムカバー16は、図1,2に示すように、ステアリングコラム3を覆うような略四角筒形状の合成樹脂製として、図示しない部位でステアリングコラム3のコラムチューブ5に取り付けられ、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)7の収納用開口10から後方側へ突出するとともに、ステアリングコラム3の軸方向O(図2参照)に沿うように前端側を下方に位置させ後端側を上方に位置させるように傾斜させて、着座した運転者Dの前方に配設されている。なお、ステアリングコラム3は、図2,4に示すように、メインシャフト4とその周囲に配置されるコラムチューブ5とを備えて構成され、メインシャフト4には、ステアリングホイール1が接続されている。また、インパネ7は、上部側のアッパパネル8と下部側のロアパネル9とから構成されている。
また、コラムカバー16には、図1,5,6に示すように、外周面18の下面18a側から左側面18bと右側面18cとにわたるエリアに、エアバッグ50の突出時における突出用開口22を形成するように、エアバッグ50に押されて開く扉部24が、配設されている。扉部24は、インパネ7の後面(下面)12より後方側に配置されるもので(図2,4参照)、コラムカバー16の下面18a側に配置される下ドア部25と、コラムカバー16の左側面18b側に配置される左ドア部26と、コラムカバー16の右側面18c側に配置される右ドア部27と、から、構成され、周囲には、膨張するエアバッグ50に押されて破断可能な破断予定部23が、形成されている。破断予定部23は、コラムカバー16の肉厚を薄くするように、コラムカバー16を構成する周壁部17の内周面側に、連続する線状の凹溝を設けて構成されている(図5参照)。そして、扉部24は、下ドア部25の後縁側に配置されたインテグラルヒンジからなるヒンジ部24aを開き時の回転中心として前縁24b側を後方側に回転させて開くこととなる。このとき、左ドア部26と右ドア部27とは、図3,5に示すように、開き前の下縁側をそれぞれ下ドア部25の左右両縁に連結させた状態で、下ドア部25とともに後方側に開き、さらに反転して、コラムカバー16の左側面18bと右側面18cとに接触するように、配置されることとなる(図6参照)。
また、実施形態の場合、図1,5,6に示すように、コラムカバー16には、扉部24の前方側に、エアバッグ50の突出用開口22の面積を大きくできるように、扉部24とともにエアバッグ50に押し広げられる補助ドア部28が、設けられている。補助ドア部28は、それぞれ、周囲に破断予定部23を配置させて、コラムカバー16の下面18a側に配置される補助下ドア部29と、コラムカバー16の左側面18b側に配置される補助左ドア部30と、コラムカバー16の右側面18c側に配置される補助右ドア部31と、から、構成されている。補助下ドア部29、補助左ドア部30、及び、補助右ドア部31は、それぞれ、前縁側にインテグラルヒンジからなるヒンジ部29a,30a,31aを配置させて、後縁29b,30b,31bを前方側に回転させて開くように、配設されている(図5,6参照)。
また、図2,3,5に示すように、コラムカバー16の内部における補助ドア部28の前縁側と扉部24の後縁側とには、それぞれ、左右両縁側を周壁部17における左側壁17bと右側壁17cとに連結させるようにして、周壁部17の下壁17aから上方に延びる側壁19,20が、形成されている。これらの側壁19,20は、ケース43とともに、折り畳まれたエアバッグ50を収納する収納部位Pを構成するものである。さらに、側壁19,20は、折り畳まれたエアバッグ50とインフレーター34とを収納するケース43を取り付ける取付壁の役目を果たすもので、ケース43の各係止片45a,47aを挿入させて、周縁を係止片45a,47aに係止させる複数の係止孔19a,20aを備えている(図2,3参照)。
なお、実施形態の場合、折り畳まれたエアバッグ50を収納する収納部位Pは、前後両側を、ケース43における側壁45,47に囲まれ、左右両側を、扉部24の左ドア部26、右ドア部27、補助左ドア部30、及び、補助右ドア部31に囲まれ、上方側を、ケース43の天井壁44に囲まれ、下方側を、下ドア部25と補助下ドア部29とに囲まれるようにして、設定されている(図2,3参照)。
インフレーター34は、図2〜4に示すように、膨張用ガスを吐出させるガス吐出口36aを有した本体35と、本体35と連結されてガス吐出口36aから吐出された膨張用ガスの流出方向を規制するディフューザー37と、を備えて構成されている。本体35は、複数のガス吐出口36aを外周面に設けた円柱状の頭部36を先端に有した略円柱状とされるもので、実施形態の場合、軸方向を、ステアリングコラム3の軸方向Oに沿わせるように、略前後方向に沿って配置されて、後端側に、頭部36を配設させた構成とされている。ディフューザー37は、ガス吐出口36aから吐出された膨張用ガスGを、コラムカバー16における左右両側、すなわち、左ドア部26側と右ドア部27側とに向けて流すためのものであり、実施形態の場合、板金製として、軸方向を左右方向に沿わせるとともに両端側を開口させた略四角筒形状とされている。ディフューザー37の前壁37aにおける左右方向の中央付近には、本体35の頭部36側を挿入させるための円形に開口した組付孔38が形成されている。また、ディフューザー37の天井壁37bには、上方へ突出する二本のボルト39が、左右方向に沿って並設されている。実施形態の場合、ディフューザー37は、エアバッグ50のバッグ本体51内におけるテザー57F,57B間の部位に、収納されるもので、エアバッグ50とインフレーター34とは、エアバッグ50の後述する取付孔55から突出させた各ボルト39を、ケース43の後述する天井壁44から突出させて、コラムチューブ5に設けられたブラケット5aにナット40止めすることにより、ケース43に取り付けられている(図2参照)。なお、実施形態では、このボルト39をブラケット5aにナット40止めすることにより、膝保護用エアバッグ装置Mが、コラムチューブ5に連結されて、車両のボディ側に連結される構成である。
ケース43は、図2,4に示すように、断面略逆U字形状とした板金製として、天井壁44と、天井壁44の前後の縁から下方に延びる側壁45,47と、を備えて構成されている。各側壁45,47には、コラムカバー16の側壁19,20に設けた各係止孔19a,20aに挿入されて、側壁19,20と連結される複数の断面略J字形状の係止片45a,47aが、形成されている(図2,4参照)。天井壁44には、インフレーター34の各ボルト39を貫通させる貫通孔44aが、形成されている。また、ケース43における前方側の側壁45は、図4に示すように、左右方向の中央付近で分離されており、この側壁45の分離された部位に、インフレーター34の本体35をケース43に固定する取付座46が、形成されている。取付座46は、側壁45,47間に頭部36側を挿入させた本体35を収納するように、軸方向を、ステアリングコラム3の軸方向O、すなわち、前後方向に略沿って配置させた略半割円筒状としている。具体的には、取付座46は、本体35の下半分を覆うような略半割円筒状とされている。また、取付座46の前端側には、本体35を取付座46に固定するクランプ部46aが、配設されている。このクランプ部46aは、縮径させることにより本体35の外周面に圧接させるように塑性変形させて、本体35を取付座46に固定する構成である。
エアバッグ50は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能な袋状のバッグ本体51と、バッグ本体51内に配置されるテザー57F,57Bと、から構成されるもので、膨張完了形状を略板状として、構成されている。
バッグ本体51(エアバッグ50)は、膨張完了時に、コラムカバー16の扉部24が開いて形成される突出用開口22から突出して、コラムカバー16の下面18aに沿うように、略前後方向に沿って配設されるもので、図7,8に示すように、乗員としての運転者Dの左右の膝K(KL,KR)を保護可能に、左右方向側を長くした横長の略長方形板状として、構成されている。実施形態の場合、詳細には、バッグ本体51は、膨張完了形状を、後縁51b側を幅広として前縁51a側にかけて左右方向の幅寸法を狭めるような左右対称形の略台形状とされるもので、膨張完了時に、コラムカバー16の下面18a側と、コラムカバー16の下側から左右両側にかけてのインパネ7の後面12側と、を覆って、運転者Dの左右の膝K(KL,KR)の車両前方側に配置されるように、構成されている。また、バッグ本体51は、図7〜9に示すように、相互に対向するように配置されて、膨張完了時に運転者D側となる下面側に配置される乗員側壁部52と、膨張完了時にコラムカバー16側となる上面側に配置されるコラム側壁部53と、を備える構成とされている。実施形態の場合、乗員側壁部52とコラム側壁部53とは、外形形状を略同一として、外周縁相互を結合させて、バッグ本体51を構成している。
コラム側壁部53における前後左右の中央付近には、図7に示すように、インフレーター34における本体35の後端側(頭部36側)を挿入させるための円形に開口した挿入孔54が、形成されている。この挿入孔54は、エアバッグ50の内部にインフレーター34のディフューザー37を収納させた際に、ディフューザー37の前壁37aに形成される組付孔38に対応する位置に、形成されている。また、コラム側壁部53における挿入孔54の左右両側には、ディフューザー37のボルト39を突出させるための取付孔55が、形成されている。実施形態の場合、挿入孔54及び取付孔55は、コラム側壁部53におけるテザー57F,57B間の領域(縫合部位61F,61B間の領域)に、形成されている(図7,9参照)。
テザー57は、バッグ本体51内において、乗員側壁部52とコラム側壁部53とを連結するように配置されるもので、実施形態の場合、バッグ本体51を、短手方向側(前後方向側)で、略3分割した位置となる2箇所において、それぞれ、バッグ本体51の長手方向側(左右方向側)に略沿って、配設されている(図7〜9参照)。各テザー57(57F,57B)は、それぞれ、帯状とされて、相互に離隔して配置される両端、詳細には、短手方向側の両縁(上縁57a及び下縁57b)を、縫合糸を用いて、それぞれ、乗員側壁部52とコラム側壁部53とに縫着させている。実施形態の場合、各テザー57F,57Bは、長手方向側の両縁(左縁57c及び右縁57d)と、バッグ本体51における左右方向の縁部と、の間に、隙間を設けるようにして、短手方向側の両縁(上縁57a及び下縁57b)を、縫合糸を用いて、それぞれ、幅方向(テザー57F,57Bの幅方向であって図例では長手方向である左右方向)に沿って、乗員側壁部52とコラム側壁部53とに縫着させている。また、実施形態の場合、後側に配置されるテザー57Bは、前側に配置されるテザー57Fよりも左右方向の幅寸法を大きく設定されている。実施形態のエアバッグ50では、インフレーター34が、テザー57F,57Bの間に配置されており、インフレーター34から吐出された膨張用ガスGは、各テザー57F,57Bとバッグ本体51における左右両縁との間の隙間を経て、バッグ本体51の前縁51a側と後縁51b側とに向かって流れ、バッグ本体51(エアバッグ50)全体を膨張させることとなる(図7の二点鎖線参照)。
また、実施形態のエアバッグ50では、テザー57F,57B間にインフレーター34のディフューザー37を配置させるために、後方に配置されるテザー57Bが、下縁57b側に位置する乗員側壁部52との縫合部位60Bを、上縁57a側に位置するコラム側壁部53との縫合部位61Bよりも、前方側にずらして、構成されている(図9参照)。さらに、実施形態の場合、テザー57Bは、図7,9に示すように、上縁57aにおける左右方向の中央から前方に延びるように形成される補強部58を、備えている。この補強部58は、略長方形状とされるもので、コラム側壁部53における挿入孔54、及び、エアバッグ50を収納部位Pを構成するケース43に取り付ける取付部としての取付孔55、の周縁を、それぞれ、補強するためのものであり、挿入孔54及び取付孔55に対応した開口(図符号省略)を有している(図10参照)。実施形態の場合、補強部58の前縁58aは、テザー57Fの上縁57aをコラム側壁部53に縫着させる縫合部位61Bによって、コラム側壁部53に縫着されている。
また、実施形態の場合、各テザー57F,57Bは、幅寸法(長手方向に沿った長さ寸法)を、各テザー57F,57Bの幅寸法の略2倍に設定された帯状のテザー用基布69F,69Bから構成されている(図11,12参照)。
詳細には、前側のテザー57Fを構成するテザー用基布69Fは、図12に示すように、長手方向を左右方向に沿わせた帯状とされており、テザー57Fは、帯状のテザー用基布69Fの長手方向側の縁部69a,69bを相互に突き合わせるように、短手方向に沿った折目を付けて折り返して、構成されている。このテザー57Fにおいて、テザー用基布69Fの縁部69a,69bは、左右方向の中央付近に配置されることとなる。すなわち、テザー用基布69Fは、長手方向の幅寸法をテザー57Fと一致させて構成される本体70Fと、本体70Fの右縁から延びる右折り返し部72Fと、本体70Fの左縁から延びる左折り返し部74Fと、を有して、右折り返し部72F,左折り返し部74Fを、車両搭載時における本体70Fの前面側において、先端(縁部69a,69b)相互を、突き合わせるように配置させた構成とされている。換言すれば、右折り返し部72F,左折り返し部74Fは、左右方向の略全域にわたって、本体70Fに対して厚さ方向側(車両搭載時における前面側)で重ねられる構成とされるもので、テザー57Fは、略全域にわたって、本体70Fと、右折り返し部72F,左折り返し部74Fと、を、厚さ方向側で重ねた2枚重ね構造として、構成されている。
後側の前側のテザー57Bを構成するテザー用基布69Bは、図11に示すように、右側の縁部69b近傍と左右方向の中央付近とに、補強部58を構成する補強用部71,73を突設させて構成される長手方向を左右方向に沿わせた帯状とされており、テザー57Bは、補強用部71,73を相互に重ねつつ、このテザー用基布69Bの長手方向側の縁部69a,69bを相互に突き合わせるように、短手方向に沿った折目を付けて折り返して、構成されている。なお、図11では、テザー用基布69B及びテザー57Bを、車両搭載時の前側を下側として、上方側から見ていることから、実際の車両搭載時と左右が反転している。このテザー57Bにおいて、テザー用基布69Bの縁部69a,69bは、補強部58の左側となる左右の中央から左にずれた位置に配置されることとなる。すなわち、テザー用基布69Bは、長手方向の幅寸法をテザー57Bと一致させて構成されるとともに補強用部71を備える本体70B(テザー57Bにおける左右方向の中央を中心として左右対称形とされる)と、本体70Bの右縁から延びるとともに補強用部73を備える右折り返し部72B(テザー57Bにおける左右方向の中央を中心として左右非対称形とされる)と、本体70Bの左縁から延びる左折り返し部74B(テザー57Bにおける左右方向の中央を中心として左右非対称形とされる)と、を有して、右折り返し部72B,左折り返し部74Bを、車両搭載時における本体70Bの後面側において、先端相互を、突き合わせるように配置させた構成とされている。換言すれば、右折り返し部72B,左折り返し部74Bは、左右方向の略全域にわたって、本体70Bに対して厚さ方向側(車両搭載時における後面側)で重ねられる構成とされるもので、テザー57Bは、略全域にわたって、本体70Bと、右折り返し部72B,左折り返し部74Bと、を、厚さ方向側で重ねた2枚重ね構造として、構成されている。また、テザー57Bの補強部58も、本体70Bから延びる補強用部71と、右折り返し部72Bのみから延びる補強用部73と、を、厚さ方向側で重ねた2枚重ね構造として、構成されている。
なお、実施形態の場合、各テザー57F,57Bは、テザー用基布69F,69Bの縁部69a,69bをインフレーター34側に配置させないように、ディフューザー37の前方に配置されるテザー57Fでは本体70Fを後方に位置させ、ディフューザー37の後方に配置されるテザー57Bでは本体70Bを前方に位置させるように、バッグ本体51内に配置されている。すなわち、実施形態のエアバッグ50では、各テザー57F,57Bを構成するテザー用基布69F,69Bの長手方向側の端末(長手方向側の縁部69a,69b)に、インフレーター34から吐出される膨張用ガスGが当たらないことから、この縁部69a,69bが、膨張用ガスGによりダメージを受けることを防止でき、テザー57F,57Bの引張強度が低下することを的確に防止できる。
バッグ本体51は、所定形状の基布の周縁相互を縫着(結合)させて構成されるもので、実施形態の場合、図10に示すように、コラム側壁部53を構成するコラム側パネル布63と、乗員側壁部52の領域を短手方向(前後方向)側で3分割したうちの前側の領域を構成する乗員側前パネル布66と、乗員側壁部52の中央の領域を構成する乗員側中央パネル布67と、から、構成されている。コラム側パネル布63は、コラム側壁部53の全域を構成するコラム側部64と、乗員側壁部52の後側の領域を構成する後下側部65とを、直列的に連結させた形状とされている。乗員側前パネル布66と乗員側中央パネル布67とは、長手方向を左右方向に略沿わせた略帯状とされている。
そして、実施形態のエアバッグ50では、各テザー57F,57Bの下縁57bは、バッグ本体51における乗員側壁部52を構成する乗員側前パネル布66、乗員側中央パネル布67、及び、後下側部65の対応する縁部相互を縫着させる際に、共縫いされて、乗員側壁部52に縫着されている。詳細には、テザー57Fの下縁57bは、乗員側前パネル布66の後縁66aと乗員側中央パネル布67の前縁67aとの縫着時に、共縫いされている。すなわち、テザー57Fの下縁57bを乗員側壁部52に縫着させている縫合部位60Fは、長さ方向の略全域にわたって、乗員側壁部52(乗員側前パネル布66若しくは乗員側中央パネル布67)に対して、テザー用基布69Fにおける本体70Fと、右折り返し部72F,左折り返し部74Fと、乗員側前パネル布66若しくは乗員側前パネル布66と、を、厚さ方向側で重ねた3枚重ね構造の領域内に、配設されている。テザー57Bの下縁57bは、乗員側中央パネル布67の後縁67bと後下側部65の前縁65aとの縫着時に、共縫いされている。すなわち、テザー57Bの下縁57bを乗員側壁部52に縫着させている縫合部位60Bは、長さ方向の略全域にわたって、乗員側壁部52(乗員側中央パネル布67若しくは後下側部65)に対して、テザー用基布69Bにおける本体70Bと、右折り返し部72B,左折り返し部74Bと、乗員側中央パネル布67若しくは後下側部65と、を、厚さ方向側で重ねた3枚重ね構造の領域内に、配設されている。
また、実施形態のエアバッグ50では、各テザー57F,57Bの上縁57aは、コラム側パネル布63におけるコラム側部64に縫着されている。すなわち、テザー57Bの上縁57aをコラム側壁部53に縫着させている縫合部位61Bは、コラム側部64に対して、テザー用基布69Bにおける本体70Bと、右折り返し部72B,左折り返し部74Bと、を厚さ方向側で重ねた2枚重ねの領域内に、配設されている。また、テザー57Fの上縁57aは、左右方向の中央部位付近においては、テザー57Bから延びる補強部58の前縁58aとともに、コラム側壁部53に縫着されている。すなわち、テザー57Fの上縁57aをコラム側壁部53に縫着させている縫合部位61Fは、左右方向の両端付近では、コラム側部64に対して、テザー用基布69Fにおける本体70Fと、右折り返し部72F,左折り返し部74Fと、テザー用基布69Bにおける補強用部71,73と、を厚さ方向で重ねた4枚重ねの領域内に配設され、左右方向の両端付近では、コラム側部64に対して、テザー用基布69Fにおける本体70Fと、右折り返し部72F,左折り返し部74Fと、を厚さ方向で重ねた2枚重ねの領域内に配設されている。
なお、実施形態のエアバッグ50では、各テザー57F,57Bの下縁57bは、それぞれ、乗員側前パネル布66,乗員側中央パネル布67間、若しくは、乗員側中央パネル布67,後下側部65間に挟まれて配置されており、乗員側壁部52表面に若干露出するように、構成されている(図8,9参照)。また、実施形態のエアバッグ50では、バッグ本体51を構成するコラム側パネル布63、乗員側前パネル布66、乗員側中央パネル布67、及び、テザー57F,57Bを構成するテザー用基布69F,69Bは、可撓性を有したポリエステルやポリアミド糸等からなる織布から形成されている。
次に、実施形態のエアバッグ50の製造について説明をする。テザー用基布69Bとコラム側パネル布63とには、予め、挿入孔54と取付孔55とを形成しておく。また、テザー用基布69F,69Bを所定位置で折り返し、予め、テザー57F,57Bを形成しておく。まず、乗員側前パネル布66と乗員側中央パネル布67とを、テザー57Fの下縁57bを間に挟んだ状態で、後縁66a,前縁67a相互を一致させるように重ね、後縁66a,前縁67a相互をテザー57Fの下縁57bとともに縫着させて、縫合部位60Fを形成する。次いで、乗員側中央パネル布67とコラム側パネル布63の後下側部65とを、テザー57Bの下縁57bを間に挟んだ状態で、後縁67b,前縁65a相互を一致させるように重ね、後縁67b,前縁65a相互をテザー57Bの下縁57bとともに縫着させて、縫合部位60Bを形成するとともに、乗員側壁部52を形成する。その後、テザー57Bの上縁57aを、コラム側パネル布63におけるコラム側部64に縫着させて、縫合部位61Bを形成する。そして、テザー57Fを、上縁57aと、テザー57Bから延びる補強部58の前縁58aと、を一致させるように、コラム側部64に重ね、補強部58の前縁58aとともに上縁60aをコラム側部64に縫着させて、縫合部位61Fを形成する。そして、乗員側壁部52とコラム側壁部53とを外周縁を一致させるように重ねた状態で、外周縁相互を縫着させれば、エアバッグ50を製造することができる。
そして、エアバッグ50の製造後、エアバッグ50を折り畳む。具体的には、取付孔55からボルト39を突出させるようにして内部にディフューザー37を収納させた状態で、乗員側壁部52とコラム側壁部53とを平らに展開した状態から、前後左右の幅寸法を縮めるように折り畳んで、エアバッグ50を折り畳む。その後、折り崩れしないように、折り畳まれたエアバッグ50の周囲を、折り崩れ防止用の図示しないラッピング材によりくるんでおく。このとき、ボルト39は、ラッピング材から突出させておく。次いで、ディフューザー37のボルト39を、天井壁44から突出させつつ、折り畳んだエアバッグ50を、ケース43における側壁45,47間の部位に収納させる。そして、取付座46の上面側にインフレーター34の本体35を配置させて、頭部36側を、エアバッグ50の挿入孔54に挿入させて、クランプ部46aを縮径させるように塑性変形させ、ディフューザー37に本体35を組みつけてインフレーター34を形成する。このとき、インフレーター34をエアバッグ50に連結させるとともに、ケース43に固定することができて、エアバッグ組付体を組み立てることができる。
そして、このように組み立てたエアバッグ組付体を、各ボルト39をナット40止めして、ステアリングコラム3のコラムチューブ5に設けられたブラケット5aに取付固定し、エアバッグ作動回路から延びる図示しないリード線をインフレーター34の本体35に結線して、コラムカバー16をステアリングコラム3に取り付ければ、膝保護用エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
実施形態の膝保護用エアバッグ装置Mでは、車両への搭載後、図示しないリード線を経て、インフレーター34の本体35に作動信号が入力されれば、本体35に設けられたガス吐出口36aから膨張用ガスGが吐出されることとなる。そして、膨張用ガスGが、ディフューザー37の左右両端側の開口37c,37dを介してエアバッグ50内に流入することとなる。その後、膨張するエアバッグ50が、コラムカバー16に形成された扉部24と補助ドア部28とを押し開いて形成された突出用開口22から、下方へ突出し、図1,2の二点鎖線及び図13に示すごとく、膨張を完了させることとなる。
そして、実施形態の膝保護用エアバッグ装置Mに使用されるエアバッグ50では、テザー57F(57B)において、バッグ本体51の乗員側壁部52,コラム側壁部53との縫合部位60F,61F(60B,61B)が配置される部位が、長さ方向の略全域にわたって、テザー用基布69F(69B)の本体70F(70B)に対して、右折り返し部72F(72B),左折り返し部74F(74B)を、厚さ方向側で重ねた構成とされている。換言すれば、テザー57F(57B)は、バッグ本体51の乗員側壁部52,コラム側壁部53を含めて少なくとも3枚重なった部分で、バッグ本体51の乗員側壁部52,コラム側壁部53に縫着されている。
具体的には、実施形態のエアバッグ50では、テザー57Fの上縁57aをコラム側壁部53に縫着させる縫合部位61Fは、左右方向の中央付近においては、テザー57Bから延びる補強部58を共縫いさせている。そのため、縫合部位61Fは、左右方向の中央付近ではコラム側壁部53を含めて5枚重ねの領域に配置され、補強部58の配置されない左右方向の両縁側の領域ではコラム側壁部53を含めて3枚重ねの領域に配置されている。テザー57Bの上縁57aをコラム側壁部53に縫着させる縫合部位61Bは、コラム側壁部53を含めて3枚重ねの領域に配置されている。また、テザー57F,57Bの下縁57bを、乗員側壁部52に縫着させる縫合部位60F,60Bは、それぞれ、乗員側壁部52を構成する乗員側前パネル布66,乗員側中央パネル布67,後下側部65と、共縫いされて形成されていることから、長さ方向の略全域にわたって、4枚重ねの領域に配置されている。そのため、実施形態のエアバッグ50では、テザー57F,57Bを、乗員側壁部52,コラム側壁部53に縫着させている縫合部位60F,60B,61F,61Bの縫合強度を大きくすることができて、テザー57F,57Bの引張強度を大きくすることができることから、出力の大きなインフレーターを使用する場合にも、テザー57F,57Bと乗員側壁部52,コラム側壁部53との縫合部位60F,60B,61F,61Bに応力集中が生じても、テザー57F,57Bへの負荷を低減(分散)させることができる。また、実施形態のエアバッグ50では、各テザー57F,57Bが、長手方向側の両縁(左縁57c,右縁57d)側に、テザー用基布69F,69Bを折り返して形成される右折り返し部72F,72B若しくは左折り返し部74F,74Bを有した構成とされている。すなわち、実施形態のエアバッグ50では、テザー用基布69F,69Bの端末(長手方向側の縁部69a,69b)が、テザー57F,57Bにおける長手方向側の両縁側(左縁57c,右縁57d側)に配置されないことから、エアバッグ50の膨張時に、テザー用基布69F,69Bが端末(縁部69a,69b)側からほつれることを防止でき、バッグ本体51の膨張完了形状を安定させることができる。
したがって、実施形態のエアバッグ50では、テザー57F,57Bの引張強度を向上させて、バッグ本体51の膨張完了形状を安定させることができる。
また、実施形態のエアバッグ50では、テザー57F,57Bを、略全域にわたって、本体70F,70Bと折り返し部(右折り返し部72F,72B若しくは左折り返し部74F,74B)とを厚さ方向側で重ねた2枚重ね構成していることから、テザー57F,57Bの引張強度を一層向上させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、テザーとして、縫合部位に沿った方向側の両縁近傍部位に形成される折り返し部を、縫合部位が配置される部位付近にのみ延ばすように配置させるように構成し、テザーにおける縫合部位間の部位であって、縫合部位から離れた中間部位に折り返し部を配設させない構成としたものを使用してもよい。
さらに、実施形態のエアバッグ50では、テザー57Bを、エアバッグ50を収納部位Pを構成するケース43に取り付ける取付部(取付孔55)の周縁を補強可能な補強部58を備える構成としており、この補強部58を、本体70Bから延びる補強用部71と、右折り返し部73Bのみから延びる補強用部74と、を厚さ方向側で重ねた2枚重ね構成としている。そのため、実施形態のエアバッグ50では、取付孔55の周縁に、別体の補強布を配置させなくともよい。また、この補強部58は、それぞれ、分割されることなく補強エリアの全域を占める一枚状の、本体70Bから補強用部71と、右折り返し部73Bのみから延びる補強用部74と、して、それらの補強用部71,74を厚さ方向側で重ねた2枚重ね構成とされていることから、取付部(取付孔55)周縁においても、充分な引張強度を確保することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、テザーに補強部を配設させなくともよく、別途補強布を配置させる構成としてもよい。
なお、実施形態では、各テザー57F,57Bは、各テザー用基布69F,69Bにおいて、それぞれ、縁部69a,69b相互を突き合わせるようにして構成されていることから、縁部69a,69b間に若干隙間を生じるように形成される場合も考慮される。しかしながら、テザー57F,57Bは、縁部69a,69b間(右折り返し部72F,72Bと左折り返し部74F,74B間)に若干隙間が形成されることとなっても、略全域にわたって本体70F,70Bと折り返し部(右折り返し部72F,72B若しくは左折り返し部74F,74B)とが厚さ方向側で重ねられた2枚重ねとされていれば、引張強度を確保することができる。勿論、テザーを、縁部を相互に重ねるようにして構成してもよく、この場合、縫合作業に支障を生じなければ、重なる領域が大きくともよい。
また、実施形態の膝保護用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ50におけるテザー57F,57B間にインフレーター34を配置させる構成としていることから、インフレーター34からテザー57F,57Bまでの距離が近く、インフレーター34から吐出された膨張用ガスが、エアバッグ50の膨張初期において、テザー57F,57Bとバッグ本体51の左右両縁との間の隙間を流れることとなるが、テザー57F,57Bは、引張強度を向上させて、強固に、乗員側壁部52とコラム側壁部53とに縫着されていることから、膨張用ガスによるダメージを受け難く、バッグ本体51を迅速に安定して膨張させることができる。
なお、実施形態では、ステアリングコラム付けの膝保護用エアバッグ装置に使用されて、テザー間にインフレーターを配置させる構成のエアバッグを例に採り説明しているが、本発明を適用可能なエアバッグはこれに限られるものではなく、ステアリングコラムの下方や助手席前方におけるグラブボックスの下方に配置される膝保護用エアバッグ装置のエアバッグや、側突用エアバッグ装置のエアバッグ等に、本発明を適用してもよい。