JP4947998B2 - 光学特性計測装置及び光学特性計測方法 - Google Patents

光学特性計測装置及び光学特性計測方法 Download PDF

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Description

本発明は、光学特性計測装置及び光学特性計測方法に関する。
物質の複屈折を検出する簡便な手法として、直交もしくは平行に設置した2枚の偏光子の間に試料を挟み、その明暗から複屈折を観察する偏光顕微鏡が知られている(特許文献1,2参照)。
また、偏光顕微鏡と同様に2枚の偏光子、又は、これに1/4波長板を加えた計測系で樹脂製品の応力状態を観察する光弾性計測がある(特許文献3参照)
さらに、複屈折を定量的かつ精度よく計測するために、回転検光子法、ヘテロダイン干渉法などの偏光計測が行われている(特許文献4,5参照)。
特開2005−3994号公報 特開2001−356276号公報 特開平7−77490号公報 特開平10−267831号公報 特表2002−504673号公報
しかし、上記の技術は、それぞれ、次に挙げる課題を有している。
偏光顕微鏡から得られる画像は複屈折量を明暗でのみ表しているため、定量的な複屈折情報(複屈折位相差及び主軸方位)が得られないという課題がある。
また、光弾性による計測では複屈折位相差が180度以上ある試料を主な測定対象としている。そのため、微小な異方性をもつ試料の複屈折位相差及び主軸方位を計測することが困難であるという課題がある。
回転検光子法、ヘテロダイン干渉法などの偏光計測によると、微小な複屈折を高精度に計測することが可能である。しかし、この方法は、処理負荷が大きいため、試料内の複屈折分布を得ようとすると、計測ポイントが増え、計測に時間がかかるという課題があった。
また、複屈折計測では位相変調にバビネ・ソレイユ補償器を用いることが一般的であったが、バビネ・ソレイユ補償器では、マイクロメータで楔形の水晶を動かして厚みを変えて位相変調を行うため、作業に時間がかかり、自動化が困難であった。また、特に生体試料を計測する場合には、連続的なサンプリングを行うことが好ましい。
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、計測可能な測定対象の制限が少なく、測定対象の複屈折分布を定量的に検出することが可能で、特に、生体試料などの、広がりを有し、逐次的に状態変化が起こる試料を、面の状態で解析することに適した光学特性計測装置、及び、光学特性計測方法を提供することにある。
(1)本発明に係る光学特性計測装置は、
測定対象の光学特性を計測する計測装置であって、
所定の波長の光を出射する光源と、少なくとも5個の光学素子と、前記少なくとも5個の光学素子及び前記測定対象によって前記光を変調させることによって得られる測定光を受光する受光部と、を含む光学系と、
前記測定光の光強度情報を取得する光強度情報取得部と、
前記測定光の光強度の理論式と、前記測定光の光強度情報とに基づいて、前記測定対象の複屈折位相差、及び、主軸方位の少なくとも一方を算出する演算処理を行う演算処理部と、
を含み、
前記少なくとも5個の光学素子は、第1及び第2の偏光子、第1及び第2の1/2波長板、並びに、1/4波長板を含み、
前記光学系は、前記光源から出射された光を、前記第1の偏光子、前記第1の1/2波長板、前記1/4波長板、並びに、前記第2の1/2波長板を介して前記測定対象に入射させ、前記測定対象によって変調された前記光を、前記第2の偏光子を介して前記受光部に入射させるように、かつ、
少なくとも、前記第1及び第2の1/2波長板が回転可能に構成されてなり、
前記光強度情報取得部では、
前記第1及び第2の1/2波長板の主軸方位の少なくとも一方が異なる第1〜第K(Kは2以上の整数)の主軸方位条件を満たす前記光学系で得られる第1〜第Kの前記測定光の光強度情報を取得し、
前記演算処理部では、
前記測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を変数として含む、前記少なくとも5個の光学素子の主軸方位を反映した第1〜第Kの前記光強度の理論式と、前記第1〜第Kの測定光の光強度情報とに基づいて、前記測定対象の複屈折位相差、及び、主軸方位の少なくとも一方を算出する演算処理を行う。
本発明によると、測定光の光強度の理論式は、測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を変数として含む。また、測定光の光強度の理論式は、光学素子の主軸方位を反映したものとなる。このことから、光強度情報取得部で取得される1つの光強度情報と、そのときの光学素子の主軸方位情報とを利用すれば、測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を含む関係式を1つ導出することができる。
また、光学素子の主軸方位が変われば、取得される光強度及び光強度の理論式に含まれる係数が変化するため、異なる関係式を導出することができる。
光学素子を適切に設定して複数の関係式を導出すれば、これらを連立させて解くことによって、測定対象の複屈折位相差及び主軸方位を算出することができる。
本発明では、光強度情報取得部で、第1〜第K(Kは2以上の整数)の光強度情報、すなわち、K個の光強度情報を取得する。ここで、第1〜第Kの光強度情報は、それぞれ、第1〜第Kの主軸方位条件に設定された光学系で得られる測定光の強度情報である。そして、第1〜第Kの主軸方位条件とは、相互に、光学素子(第1及び第2の1/2波長板)の少なくとも1つの主軸方位が異なる。
例えば、はじめに第1の設定がなされた光学系を利用して、第1の光強度情報を取得する。次に、第2の設定がなされた光学系を利用して、第2の光強度情報を取得する。これをK回繰り返すことによって、測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を変数として含む関係式を、K個導出してもよい。
そして、本発明によると、光学系を、回転型の光学素子のみを利用して構成することができるため、光学系の設定・変更を短時間で正確に行うことができる。すなわち、本発明によると、光学特性の精度の高い計測を、効率よく行うことが可能な光学特性計測装置を提供することができる。
(2)本発明に係る光学特性計測装置は、
測定対象の光学特性を計測する計測装置であって、
光学系に含まれる少なくとも5個の光学素子及び前記測定対象によって変調された測定光の光強度情報を取得する光強度情報取得部と、
前記測定光の光強度の理論式と、前記測定光の光強度情報とに基づいて、前記測定対象の複屈折位相差、及び、主軸方位の少なくとも一方を算出する演算処理を行う演算処理部と、
を含み、
前記少なくとも5個の光学素子は、第1及び第2の偏光子、第1及び第2の1/2波長板、並びに、1/4波長板を含み、かつ、少なくとも前記第1及び第2の1/2波長板が回転可能に構成されてなり、
前記測定光は、光源から出射された所与の波長の光を、前記第1の偏光子、前記第1の1/2波長板、前記1/4波長板、並びに、前記第2の1/2波長板を介して前記測定対象に入射させ、前記測定対象によって変調された前記光を、前記第2の偏光子を介して受光部に入射させることで得られる光であり、
前記光強度情報取得部では、
前記第1及び第2の1/2波長板の主軸方位の少なくとも一方が異なる第1〜第K(Kは2以上の整数)の主軸方位条件を満たす前記光学系で得られる第1〜第Kの前記測定光の光強度情報を取得し、
前記演算処理部では、
前記測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を変数として含む、前記少なくとも5個の光学素子の主軸方位を反映した第1〜第Kの前記光強度の理論式と、前記第1〜第Kの測定光の光強度情報とに基づいて、前記測定対象の複屈折位相差、及び、主軸方位の少なくとも一方を算出する演算処理を行う。
本発明によると、測定光の光強度の理論式は、測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を変数として含む。また、測定光の光強度の理論式は、光学素子の主軸方位を反映したものとなる。このことから、光強度情報取得部で取得される1つの光強度情報と、そのときの光学素子の主軸方位情報とを利用すれば、測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を含む関係式を1つ導出することができる。
また、光学素子の主軸方位が異なる光学系を利用すれば、取得される光強度及び光強度の理論式に含まれる係数が変化するため、異なる関係式を導出することができる。
光学素子を適切に設定して複数の関係式を導出すれば、これらを連立させて解くことによって、測定対象の複屈折位相差及び主軸方位を算出することができる。
そして、本発明によると、光学系を、回転型の光学素子のみを利用して構成することができるため、光学系の設定・変更を短時間で正確に行うことができる。すなわち、本発明によると、光学特性の精度の高い計測を、効率よく行うことが可能な光学特性計測装置を提供することができる。
(3)この光学特性計測装置において、
前記第1の偏光子、前記第1及び第2の1/2波長板、並びに、前記1/4波長板は位相変調部を構成し、
前記第1〜第Kの測定光は、前記位相変調部の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方が異なる前記光学系で得られる測定光であってもよい。
すなわち、位相変調部の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方が異なる光学系を利用することで、解析に適した複数の関係式を導出することができる。
(4)この光学特性計測装置において、
前記第1〜第Kの測定光は、それぞれ、前記位相変調部が、複屈折位相差の値がL(Lは2以上の整数)個の設定値のいずれかで、かつ、前記主軸方位の値がM(Mは2以上の整数)個の設定値のいずれかであるL×M通りの前記光学系のいずれかで得られる測定光であってもよい。
このときK=L×Mとなる。
(5)この光学特性計測装置において、
前記L及びMは、互いに素であってもよい。
(6)この光学特性計測装置において、
前記測定光の光強度をIとし、前記位相変調部の複屈折位相差及び主軸方位を、それぞれδ,θとすると、
前記演算処理部では、
に基づいて前記演算処理を行ってもよい。
これによると、精度の高い演算処理(データの解析処理)を効率よく行うことができる。すなわち、精度の高い計測を効率よく行うことが可能になる。
(7)この光学特性計測装置において、
前記第2の1/2波長板及び前記検光子の主軸方位を、それぞれ、θ,θとすると、
前記光強度情報取得部では、
θ=2θ+45°
を満たす前記光学系で得られる前記測定光の光強度情報を取得してもよい。
ただし、θとθとの関係はこれに限られるものではない。例えば、θ=2θ+(45°×H)(ただしHは奇数)とした場合でも、計測が可能である。
(8)この光学特性計測装置において、
前記光強度情報取得部では、
前記第1及び第2の1/2波長板が所与の回転比で連続的に回転する前記光学系で得られる前記測定光の光強度情報を取得してもよい。
これによると、光学素子が連続的に回転する光学系で得られる光強度情報を利用して、光学特性計測を行うことができる。そのため、回転と静止を繰り返す光学素子を利用する場合に較べて、計測を高速化することができる。
(9)この光学特性計測装置において、
前記光強度情報取得部では、
前記第1及び第2の1/2波長板がM:Lの回転比で回転する前記光学系で得られる前記測定光の光強度情報を取得してもよい。
(10)この計測装置において、
前記第1及び第2の1/2波長板を回転駆動させる第1及び第2のアクチュエータと、
前記第1及び第2の1/2波長板の主軸方位を検出する第1及び第2の検出部と、
前記第1及び第2のアクチュエータの動作を制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、
をさらに含み、
前記制御信号生成部は、前記第1及び第2の検出部からの検出信号に基づいて、前記制御信号を生成してもよい。
(11)本発明に係る光学特性計測方法は、
測定対象の光学特性を計測する計測方法であって、
光学系に含まれる少なくとも5個の光学素子及び前記測定対象によって変調された測定光の光強度情報を取得する光強度情報取得手順と、
前記測定光の光強度の理論式と、前記測定光の光強度情報とに基づいて、前記測定対象の複屈折位相差、及び、主軸方位の少なくとも一方を算出する演算処理を行う演算処理手順と、
を含み、
前記少なくとも5個の光学素子は、第1及び第2の偏光子、第1及び第2の1/2波長板、並びに、1/4波長板を含み、かつ、少なくとも前記第1及び第2の1/2波長板が回転可能に構成されてなり、
前記測定光は、光源から出射された所与の波長の光を、前記第1の偏光子、前記第1の1/2波長板、前記1/4波長板、並びに、前記第2の1/2波長板を介して前記測定対象に入射させ、前記測定対象によって変調された前記光を、前記第2の偏光子を介して受光部に入射させることで得られる光であり、
前記光強度情報取得手順では、
前記第1及び第2の1/2波長板の主軸方位の少なくとも一方が異なる第1〜第K(Kは2以上の整数)の主軸方位条件を満たす前記光学系で得られる第1〜第Kの前記測定光の光強度情報を取得し、
前記演算処理手順では、
前記測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を変数として含む、前記少なくとも5個の光学素子の主軸方位を反映した第1〜第Kの前記光強度の理論式と、前記第1〜第Kの測定光の光強度情報とに基づいて、前記測定対象の複屈折位相差、及び、主軸方位の少なくとも一方を算出する演算処理を行う。
本発明によると、測定光の光強度の理論式は、測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を変数として含む。また、測定光の光強度の理論式は、光学素子の主軸方位を反映したものとなる。このことから、光強度情報取得部で取得される1つの光強度情報と、そのときの光学素子の主軸方位情報とを利用すれば、測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を含む関係式を1つ導出することができる。
また、光学素子の主軸方位が異なる光学系を利用すれば、取得される光強度及び光強度の理論式に含まれる係数が変化するため、異なる関係式を導出することができる。
光学素子を適切に設定して複数の関係式を導出すれば、これらを連立させて解くことによって、測定対象の複屈折位相差及び主軸方位を算出することができる。
本発明では、はじめに第1の設定がなされた光学系を利用して、第1の光強度情報を取得する。次に、第2の設定がなされた光学系を利用して、第2の光強度情報を取得する。これをK回繰り返すことによって、測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を変数として含む関係式を、K個導出してもよい。
そして、本発明によると、光学系を、回転型の光学素子のみを利用して構成することができるため、光学系の設定・変更を短時間で正確に行うことができる。すなわち、本発明によると、光学特性の精度の高い計測を、効率よく行うことが可能な光学特性計測方法を提供することができる。
(12)この光学特性計測方法において、
前記第1の偏光子、前記第1及び第2の1/2波長板、並びに、前記1/4波長板は位相変調部を構成し、
前記第1〜第Kの測定光は、前記位相変調部の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方が異なる前記光学系で得られる測定光であってもよい。
すなわち、位相変調部の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方が異なる光学系を利用することで、解析に適した複数の関係式を導出することができる。
(13)この光学特性計測方法において、
前記第1〜第Kの測定光は、それぞれ、前記位相変調部が、複屈折位相差の値がL(Lは2以上の整数)個の設定値のいずれかで、かつ、前記主軸方位の値がM(Mは2以上の整数)個の設定値のいずれかであるL×M通りの前記光学系のいずれかで得られる測定光であってもよい。
このときK=L×Mとなる。
(14)この光学特性計測方法において、
前記L及びMは、互いに素であってもよい。
(15)この光学特性計測方法において、
前記測定光の光強度をIとし、前記位相変調部の複屈折位相差及び主軸方位を、それぞれδ,θとすると、
前記演算処理手順では、
に基づいて前記演算処理を行ってもよい。
(16)この光学特性計測方法において、
前記第2の1/2波長板及び前記検光子の主軸方位を、それぞれ、θ,θとすると、
前記光強度情報取得手順では、
θ=2θ+45°
を満たす前記光学系で得られる前記測定光の光強度情報を取得してもよい。
ただし、θとθとの関係はこれに限られるものではない。例えば、θ=2θ+(45°×H)(ただしHは奇数)とした場合でも、計測が可能である。
(17)この光学特性計測方法において、
前記光強度情報取得手順では、
前記第1及び第2の1/2波長板が所与の回転比で連続的に回転する前記光学系で得られる前記測定光の光強度情報を取得してもよい。
これによると、光学素子が連続的に回転する光学系で得られる光強度情報を利用して、光学特性計測を行うことができる。そのため、回転と静止を繰り返す光学素子を利用する場合に較べて、計測を高速化することができる。
(18)この光学特性計測方法において、
前記光強度情報取得手順では、
前記第1及び第2の1/2波長板がM:Lの回転比で回転する前記光学系で得られる前記測定光の光強度情報を取得してもよい。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
本発明の実施の形態に係る計測装置(光学特性計測装置)は、測定対象の光学特性を計測するものである。
以下、本発明を適用した実施の形態に係る計測装置(光学特性計測装置)として、測定対象である試料100の複屈折位相差及び主軸方位を計測することが可能な計測装置1について説明する。
(1)装置構成
図1及び図2は、計測装置1の装置構成を説明するための図である。なお、図1は光学系10(計測装置1)の模式図であり、図2は計測装置1のブロック図である。
本実施の形態に係る計測装置1は、測定対象である試料100の光学特性を計測する装置である。計測装置1は、光学系10と、光強度情報取得部40と、演算処理部60とを含む。光強度情報取得部40では、光学系10に含まれる光学素子及び試料100によって変調された測定光の光強度情報を取得する。演算処理部60では、測定光の光強度の理論式と、測定光の光強度情報とに基づいて、試料100の光学特性(複屈折位相差及び主軸方位)を算出する演算処理を行う。なお、試料100は、光を透過させる物質であってもよく、光を反射させる物質であってもよい。
以下、計測装置1の装置構成について説明する。
1−1:光学系10
光学系10は、光源12と受光部14とを含む。光学系10は、また、光源12と受光部14とを結ぶ光路L上に設けられた、偏光子22、第1の1/2波長板24、1/4波長板26、第2の1/2波長板28、並びに、検光子30を含む。これらの光学素子は、光源12から出射された光を、偏光子22、第1の1/2波長板24、1/4波長板26、及び、第2の1/2波長板28を介して試料100に入射させ、試料100によって変調された光を、検光子30を介して受光部14に入射させるように配列されている。以下、それぞれについて説明する。
光源12は、所与の波長(波数)の光を出射する。すなわち、光源12は、単色光を出射する発光装置であるといえる。光源12として、レーザーやSLDなどを利用してもよい。なお、光源12は、出射する光の波長(波数)を変更することが可能な構成をなしていてもよい。
偏光子22は、検光子30と対になり、光源12から出射された光を直線偏光とする入射側の偏光子である。
第1及び第2の1/2波長板24,28は、直線偏光の振動方向を変える光学素子である。また、1/4波長板26は、直線偏光を円偏光(楕円偏光)に変える光学素子である。なお、第1及び第2の波長板24,28、及び、1/4波長板26は、光源12から出射される光の波長に対応したものを選択する。
光学系10では、第1及び第2の1/2波長板24,28は、回転可能に構成されてなる。第1及び第2の1/2波長板24,28は、回転することによって、その主軸方位を変えることができる。そして、光学系10(位相変調部20)では、偏光子22から出射された直線偏光は、第1及び第2の1/2波長板24,28の回転角によって、任意に位相変調を行う。
なお、光学系10では、偏光子22、第1の1/2波長板24、1/4波長板26、及び、第2の1/2波長板28は、位相変調部20を構成する。位相変調部20は、入射光を変調する。すなわち、位相変調部20は、入射光の偏光状態を変える機能を有する。位相変調部20の複屈折位相差及び主軸方位は、第1及び第2の1/2波長板24,28の回転角により設定することができる。すなわち、位相変調部20の複屈折位相差及び主軸方位は変更可能で、その値は、第1及び第2の1/2波長板24,28により設定することができる。
なお、光学系10では、偏光子22及び1/4波長板26も、回転可能に構成されていてもよい。また、光学系10では、偏光子22及び1/4波長板26は、主軸方位の角度差が45°の奇数倍になるように設置されてもよい。
検光子30は、試料100によって変調された光を直線偏光とする出射側の偏光子である。検光子30は、偏光子22と対をなしている。すなわち、偏光子22を第1の偏光子と、検光子30を第2の偏光子と、それぞれ称してもよい。光学系10では、検光子30は、回転可能に構成されている。検光子30は、回転することによって、その主軸方位を変えることができる。
受光部14は、測定光を受光する。光強度情報取得部40では、受光部14に入射する測定光の光強度情報を取得する。受光部14は、複数の受光素子15を含んでいてもよい。複数の受光素子15は、図3に示すように、平面的に(二次元的に)配列されていてもよい。このとき、複数の受光素子15は、受光面を構成していてもよい。そして、光強度情報取得部40では、受光素子15毎に、入射した測定光の光強度情報を取得してもよい。受光部14として、例えば、CCDを利用してもよい。
光学系10は、図示しないビームエキスパンダーを含んでいてもよい。ビームエキスパンダーは、ビーム径を大きくするための光学素子(装置)である。ビームエキスパンダーは、光源12と試料100との間に配置される。すなわち、ビームエキスパンダーは、光路Lにおける試料100よりも上流側に配置される。これにより、試料100の広範囲に光を照射することができる。そして、ビームエキスパンダーと対応して、受光素子15が二次元的に配列された受光部14を利用することで、試料100の広範囲にわたり、光学特性を計測することが可能になる。すなわち、広がりを有する試料100に対して、効率よく光特性計測を行うことができる。言い換えると、試料100を、広がりを有する「面」として解析することが可能になる。ただし、本発明には、ビームエキスパンダーを有しない光学系を利用してもよい。
光学系10は、図示しない反射板(ミラー)を有する構成としてもよい。反射板を利用することで、光学系10を、試料100を水平に配置することが可能な構成にすることができる。すなわち、反射板を利用することで、光学系10を顕微鏡型の構成としてもよい。
光学系10は、また、図1及び図2に示すように、試料100を透過した透過光が、検光子30に入射するように構成されていてもよい。ただし、光学系10は、試料100からの反射光が検光子30に入射するように構成されていてもよい(図示せず)。
1−2:光強度情報取得部40
光強度情報取得部40は、測定光の光強度情報を取得する。すなわち、光強度情報取得部40は、位相変調部20及び試料100、並びに、検光子30によって変調され、受光部14で受光された光(測定光)の光強度情報を取得する。なお、受光部14(分光器及び受光素子)は、光強度情報取得部40の一部を構成していてもよい。
計測装置1では、光強度情報取得部40は、第1及び第2の1/2波長板24,28の主軸方位の少なくとも一方が異なる第1〜第K(Kは2以上の整数)の主軸方位条件に設定された光学系10で得られる、第1〜第Kの測定光(複数の測定光)の光強度情報を取得する。
詳しくは、光強度情報取得部40では、第1〜第K(Kは2以上の整数)の光強度情報、すなわち、K個の光強度情報を取得する。ここで、第1〜第Kの光強度情報は、それぞれ、第1〜第Kの主軸方位条件に設定された光学系10で得られる測定光の強度情報である。そして、第1〜第Kの主軸方位条件とは、相互に、光学素子(第1及び第2の1/2波長板24,28)の少なくとも一方の主軸方位が異なる。
そして、光強度情報取得部40で取得された複数の光強度情報は、制御装置80の記憶装置50に格納されてもよい。記憶装置50では、複数の光強度情報を、光学系10の設定条件(偏光子22、第1及び第2の1/2波長板24,28、1/4波長板26、並びに、検光子30の主軸方位)と対応させて格納してもよい。例えば、記憶装置50では、第1〜第Kの主軸方位条件(主軸方位情報)と、第1〜第Kの光強度情報とを、対応させて格納してもよい。
1−3:演算処理部60
演算処理部60は、測定光の光強度の理論式と、測定光の光強度情報とに基づいて、測定対象(試料100)の複屈折位相差及び主軸方位を算出する演算処理を行う。後で詳述するが、測定光の光強度の理論式は、試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φを変数として含んでいる。そのため、測定光の光強度の理論式と、測定光の光強度情報とを利用すれば、試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φを算出することが可能になる。
1−4:駆動・検出部
計測装置1は、第1及び第2の駆動・検出部72,74をさらに含む。ここで、第1の駆動・検出部72は、第1の1/2波長板24を回転させる駆動部であり、かつ、第1の1/2波長板24の主軸方位を検出する検出器である。また、第2の駆動・検出部74は、第2の1/2波長板28を回転させる駆動部であり、かつ、第2の1/2波長板28の主軸方位を検出する検出部である。
特に、計測装置1では、第1及び第2の駆動・検出部72,74は、それぞれ、第1及び第2の1/2波長板24,28を所定の回転比で連続的に回転させるように構成されていてもよい。
計測装置1は、さらに、第3の駆動・検出部76を含んでいてもよい。第3の駆動・検出部76は、検光子30を回転させる駆動部であり、かつ、検光子30の主軸方位を検出する検出器である。
そして、計測装置1は、第1〜第3の駆動・検出部72,74,76の動作を制御する制御信号生成部70をさらに含んでいてもよい。例えば、制御信号生成部70は、検出部からの検出信号に基づいて制御信号を生成し、駆動部の動作を制御するように構成されていてもよい。
1−5:制御装置80
計測装置1は、制御装置80を含んでいてもよい。制御装置80は、計測装置1の動作を統括制御する機能を有していてもよい。すなわち、制御装置80は、第1〜第3の駆動・検出部72,74,76を制御して光学素子(第1及び第2の1/2波長板24,28、検光子30)の主軸方位を設定し、光源12の発光動作を制御し、そして、光強度情報取得部40及び演算処理部60の動作を制御してもよい。
制御装置80は、記憶装置50及び演算処理部60を含んでいてもよい。なお、記憶装置50は、種々のデータを一時記憶する機能を有する。記憶装置50は、例えば、測定光の光強度情報を、第1及び第2の1/2波長板24,28の主軸方位情報(位相変調部20の複屈折位相差及び主軸方位情報)と対応付けて記憶してもよい。
制御装置80は、また、制御信号生成部70を含んでいてもよい。そして、制御装置80は、同期制御部をさらに含んでいてもよい。同期制御部は、第1及び第2の1/2波長板24,28、検光子30を連続的に回転させて光強度情報を取得する場合に、これらの光学素子の回転を同期させるための制御を行う。同期制御部は、第1及び第2の1/2波長板24,28、検光子30の主軸方位情報に基づいて同期制御信号を生成し、駆動部の動作を制御するように構成されていてもよい。
なお、計測装置1は、特に制御装置80(演算処理部60)において、コンピュータを利用した処理が可能である。ここで、コンピュータとは、プロセッサ(処理部:CPU等)、メモリ(記憶部)、入力装置、及び、出力装置を基本的な構成要素とする物理的装置(システム)を言う。
図4には、計測装置1を構成する、演算処理システムの機能ブロックの一例を示す。
処理部110は、情報記憶媒体130に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。即ち情報記憶媒体130には、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)が記憶される。
処理部110の機能は、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。
記憶部120は、処理部などのワーク領域となるもので、その機能はRAMなどにより実現できる。
情報記憶媒体130(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。
情報記憶媒体130に格納されたプログラムに基づいて、第1及び第2の1/2波長板24,28の回転比が設定され、光源12の発光動作が制御されてもよい。
表示部140は、本計測装置で得られた情報を、画像として表示する機能を有していてもよい。表示部140は、既に公知となっているいずれかのハードウェアを適用してもよい。
(2)光学特性計測原理
次に、本実施の形態に係る光強度特性計測装置が採用する、光学特性計測原理を説明する。
2−1:測定光の光強度の理論式
位相変調部20に入射する入射光のストークスパラメータをSとし、入射光を位相変調部20で変調させることによって得られる変調光のストークスパラメータをSとすると、当該Sは次式で表すことができる。
なお、P0°は、主軸方位を0°に設定した偏光子22のミュラー行列である。また、Hθ1は、第1の1/2波長板24のミュラー行列であり、θはその主軸方位である。また、Q45°は、主軸方位を45°に設定した1/4波長板26のミュラー行列である。そして、Hθ2は、第2の1/2波長板28のミュラー行列であり、θはその主軸方位である。なお、偏光子22及び1/4波長板26は、主軸方位の角度差が45°の奇数倍になるように設置してもよい。
位相変調部20で任意の偏光状態を与えられた光(変調光)は、未知の複屈折位相差Δと主軸方位φを持つ試料100でさらに変調され(試料100を透過又は試料100で反射し)、検光子30を透過し、測定光として受光部14で受光される。図1に示す光学系10のミュラーマトリクスは、次式であらわせる。
ここで、S´は、測定光のストークスパラメータである。入射光の強度をIとすると、式(2)は、
と表すことができる。
なお、XΔ,φは試料100のミュラー行列であり、Δ,φは、それぞれ、試料100の複屈折位相差及び主軸方位である。そして、Aθ3は、検光子30のミュラー行列であり、θはその主軸方位である。
これを光強度Iについて整理すると、
と表すことができる。
ここで、θ=2θ+45°とすると、式(A)は、
となる。
さらに、Δ≪1とすると、式(A1)は、
と変形することができる。
ここで、三角関数の合成公式を用いると、式(A2)は、
となる。
ここで、Δ≪1としたため、式(A3)は、
と変形することができる。
2−2:試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φの算出原理
式(A)〜式(B)を見ると、測定光の光強度Iは、Δ,φ、及び、θ,θ(θ)の関数で表せることがわかる。
ところで、光強度Iは、光強度情報取得部40によってその値を知ることができる。また、θ,θ,θの各値は、検出部(駆動・検出部72,74,76)を利用して、あるいは、予めプログラムされた情報によって、既知の値とすることができる。すなわち、式(A)〜式(B)は、それぞれ、Δ,φを未知数として含む関数であると捉えることができる。
そして、光学系10を構成する光学素子(第1及び第2の1/2波長板24,28、及び、検光子30)の主軸方位が変わると、θ,θ,θの値が変化し、光強度Iの値も変化する。すなわち、光強度は、θ,θ,θの各値を反映しているといえる。そのため、式(A)に、複数の光強度情報と、対応する光学素子の主軸方位情報とを代入することで、Δ,φの関係を表す複数の関係式を導出することができる。
そして、Δ,φの関係を表す複数の関係式を連立させて、Δ,φについて解けば、試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φを算出することができる。なお、これらの関係式を利用して、複屈折位相差Δ及び主軸方位φのいずれか1つのみを算出してもよい。
なお、光学系10や試料に条件を設定することで、式(A)〜式(B)に示すように、光強度の理論式を変形(単純化)することができる。これにより、Δ,φの関係式を単純することが可能になるため、演算処理手順を簡素化することができ、演算処理速度を速めることができる。また、例えば式(B)を利用して計測を行うと、θを利用せずに計測を行うことができる。そのため、計測に必要なパラメータを減らすことができるので、演算処理速度を速めることができる。
(3)光特性計測手順
次に、本実施の形態に係る光特性計測装置による、光特性計測手順について説明する。
図5及び図6には、本実施の形態に係る光特性計測装置の動作フローチャートを示す。
3−1:光強度情報取得手順
図5は、光強度情報取得手順のフローチャートである。
光強度情報取得手順では、まず、光学系10を構成する光学素子の主軸方位を設定する(ステップS10)。
この状態で、光源12から光を出射し、光学素子及び試料100によって変調された測定光を、受光部14で受光する。そして、光強度情報取得部40で、受光部14が受光した測定光の光強度情報を取得する(ステップS12)。
なお、ステップS12の前のいずれかに、光学系10の光路L上に、試料100を設けるステップを行ってもよい。当該ステップは、光学素子の主軸方位を設定するステップの前後のいずれに行ってもよい。
計測装置1では、これらのステップで、第1〜第KのK個の測定光の光強度情報を取得する。ここで、第1〜第Kの測定光の光強度情報とは、第1及び第2の1/2波長板24,28の主軸方位のいずれか1つが異なる光学系10で得られる測定光の強度情報である。すなわち、光強度情報取得手順では、上記のステップS10及びステップS12を、光学素子(少なくとも第1及び第2の1/2波長板24,28)の主軸方位設定を変更して複数回行う。
詳しくは、計測装置1では、はじめに、光学系10(光学素子の主軸方位)を第1の条件に設定して、第1の光強度情報を取得する。そして、記憶装置50に、第1の条件(主軸方位情報)と第1の光強度情報とを対応付けして格納する。続いて、光学系10を第2の条件に設定(変更)して、第2の光強度情報を取得し、記憶装置50で、第2の条件と第2の光強度情報とを対応付けして格納する。以下、この動作を繰り返し、K個の主軸方位情報と、K個の光強度情報を取得し、それぞれを対応させて、記憶装置50に格納する。
計測装置1では、光学素子(第1及び第2の1/2波長板24,28、及び、検光子30)が連続的に回転する光学系10を利用して、K個の光強度情報を取得してもよい。
なお、光学系10の光学素子の主軸方位は、アクチュエータにより設定(変更)することができる。また、光学系の光学素子の主軸方位情報は、検出部で検出してもよく、予めプログラムされた情報に従ってもよい。
3−2:演算処理手順
図6は、演算処理手順のフローチャートである。演算処理手順では、光強度情報取得手順で取得された測定光の光強度情報と、測定光の理論式とに基づいて、試料100の光学特性を算出する。
演算処理手順では、はじめに、測定光の理論式(例えば式(A))に、光強度情報と、光学素子の主軸方位情報とを代入し、試料100の光学特性(複屈折位相差Δ及び主軸方位φ)と、測定光の光強度との関係を表す関係式を導出する(ステップS20)。
なお、1つの光強度情報と、対応する1つの主軸方位情報とから、試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φの関係を表す関係式を1つ導出することができる。すなわち、K個の光強度情報と、対応するK個の主軸方位情報とを利用すれば、試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φの関係を表す複数の関係式を導出することができる。
そして、複数の関係式を解くことによって、試料100の光学特性(複屈折位相差Δ、及び、主軸方位φ)を算出する(ステップS22)。
(4)試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φを算出する演算の具体例
以下、本実施の形態に係る計測装置に適用可能な、試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φを算出する演算の一例を示す。
4−1:本具体例で利用する光強度の理論式
上述したように、受光部14で受光された測定光の光強度の理論式は、Δ≪1、θ=2θ+45°の条件で、式(B)と表すことができる。
そして、位相変調部20の複屈折位相差及び主軸方位を、それぞれ、δ,θとすると、式(B)は、これと等価な式である。
に変換することができる。
本具体例では、式(C)あるいは、これと等価な式(B)を利用して、光強度情報I及び位相変調部20の主軸方位θ及び複屈折位相差δ(第1及び第2の1/2波長板24,28の主軸方位情報θ,θ)に基づいて、試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φを算出する。なお、本具体例では、θ=2θ+45°の条件を満たす光学系10で得られる測定光の光強度情報に基づいて、試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φを算出する。
4−2:式(B)の物理的な意味の考察と、式(C)への変換
光学系10の物理的な意味を考察するため、図7に示す、バビネ・ソレイユ補償器BSCを用いた複屈折計測の光学系11と対比する。
光学系11では、光源12から出射された光強度Iの光は45°に設置された偏光子Pを通り、45°の直線偏光となる。その後、90°に設置された1/4波長板Qで右円偏光となった光は、バビネ・ソレイユ補償器BSCによって任意の位相差δと楕円主軸方位θを与えられる。そして、試料を透過し、θ+45°に設置された検光子Aを透過後、受光部14で受光され、光強度が検出される。これらの関係をミュラーマトリクスを用いて計算すると、次式で表せる。
式(4)においてΔ≪1とすると、検光子Aから出射された光の光強度I(光学系11で得られる測定光の光強度)は、
となる。
ところで、光学系11において、偏光子P、1/4波長板Q、及び、バビネ・ソレイユ補償器BSCをあわせて位相変調器21ととらえると、位相変調器21は、複屈折位相差がδで主軸方位がθの位相変調器とみなすことができる。
そのため、光学系10の位相変調部20の複屈折位相差をδとし、主軸方位をθとすると、光学系10は、光学系11の位相変調器21を位相変調部20に置き換えた等価な光学系ととらえることができ、式(B)及び式(5)も等価な式ととらえることができる。
そして、式(B)と式(5)とを対比すると、位相変調部20の複屈折位相差δ及び主軸方位θと、第1及び第2の1/2波長板24,28の回転角θ,θとの間には、次式の関係が成立する。
このことから、光学系10において、位相変調部20の複屈折位相差δと主軸方位θは、二枚の1/2波長板(第1及び第2の1/2波長板24,28)の回転角θ,θによって独立に変調することができることがわかる。
なお、このことは、後述する測定結果を示す図11(A)及び図11(B)からも確認することができる。
4−3:式(C)に基づいた具体的な演算処理
以下、式(C)に基づく、具体的な演算処理について説明する。なお、ここでは、試料100の偏光特性(複屈折)による位相変化を検出する手法として位相シフト法を用いる。位相シフト法とは、位相変調部20によって与えられる複屈折位相差δiをi回変化させることで位相成分(Φ)を求める方法である。ただし、以下の演算手法は、計測装置1に適用可能な演算処理の一例であって、本発明は、これに限られるものではない。
上述した式(C)は、
と置き換えることができる。
なお、実測される光強度には、振幅及びバイアス成分が含まれることがあるため、ここでは、これを考慮した式を導入した。
また、式(C)から式(6)への変換に際して、位相Φθを、
とした。
なお、式(6)より、位相Φθは、
と表すことができる。
式(6)での位相変調部20における位相差δiをN回変化させたものとし、誤差を含む実測値I´iと式(6)の理論値Iiとを近似し、a,a,aを決めることにより、位相Φθを求める。ここでは、最小自乗法により
とおき、
を満たすa,a,aを、次式に基づき求める。
式(11)は、行列を用いると、次式のように表せる。
式(12)の逆行列を求めれば、a,aは、次式のように得られる。
そして、式(8)及び式(13)から、位相差Φθは、
となる。
次に示す表1には、複屈折位相差δ(=4θ)及び、主軸方位θ(=2θ)の具体的な設定値の一例と、これを実現するための第1及び第2の1/2波長板24,28の主軸方位θ,θの設定値の一例を示す。
なお、表1では、複屈折位相差δ(=4θ)は5個の設定値(0°,72°,144°,216°,288°:L=5)のいずれかをとり、主軸方位θ(=2θ)は4個の設定値(0°,45°,90°,135°:M=4)のいずれかをとる。そして、それぞれの複屈折位相差δ及び主軸方位θを組み合わせたL×M通りの条件に設定された光学系10を利用して、L×M個(=K個)の測定光の光強度情報を取得する。
ここで、位相変調部20の主軸方位θを固定し、複屈折位相差δを、0°,72°,144°,216°,288°としたときの光学系10で得られる光強度を、それぞれ、I,I,I,I,Iとすると、I〜Iの各値は実測値として知ることができる。
式(6)のIにI〜Iの各値を代入し、δに、0°,72°,144°,216°,288°の各値を代入すれば、Φθ及びα,βの関係を表す関係式を複数導出することができる。そして、複数の関係式を解くことによって、Φθを算出することができる。
以上の手順を、位相変調部20の主軸方位θを0°,45°,90°,135°の各値に設定して行うことで、Φ,Φ45,Φ90,Φ135の各値を算出することができる。
次に、Φ,Φ45,Φ90,Φ135の各値を利用して、試料100の複屈折位相差Δと、主軸方位φとを算出する手順について説明する。ここでは、位相Φθが位相変調部20の方位θ(=2θ)に対して変化することを利用し、Φθ中に含まれる複屈折位相差Δ及び主軸方位φを求める。
より、さらに、
とおく。
式(16)のθに0°,45°,90°,135°を代入(θに0°,22.5°,45°,67.5°を代入)すると、式(16)から、
を導出することができる。
なお、Φ´ ,Φ´ 45,Φ´ 90,Φ´ 135の各値は、Φ,Φ45,Φ90,Φ135の各値、及び、式(15)式(16)から算出可能である。
式(17)を連立させると、
となり、試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φを算出することができる。
なお、ここまで、位相シフト法の1つである4ステップ位相シフト法(Mステップ位相シフト法)に基づく演算手法について説明したが、これとは別に、局所サンプリング法に基づいて演算処理を行ってもよい。
例えば、上述のδの設定値に対して36°の初期位相(θに対して9°の初期位相)を与えると、δ=36°,108°,180°,252°,324°となり、複屈折位相差δが、180°を中心に等間隔に設定される。そのため、Σsinδが0になり、式(14)は、より簡便な次式に変換することができる。
例えば、180°を中心としたサンプリングでは、δ=36°,108°,180°,252°,324°と変化させ、図8のようにサンプリングを行うことができる。
ここで、図中に示す光強度の正弦波はサンプルのもつ複屈折によって位相変化が生じており、θ=0°のときのサンプリング点を○、θ=45°のときのサンプリング点を●、θ=90°のときのサンプリング点を□、θ=135°のときのサンプリング点を■で表す。
そして、検出されたそれぞれの光強度I’iを式(18)に代入することによって、Φ0,Φ45,Φ90,Φ135を算出することができる。
なお、Φθ(Φ,Φ45,Φ90,Φ135)を算出した後は、同様の手順によって、試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φを得ることができる。
4−4:式(C)に基づいて演算処理を行うために必要なデータの条件
上述した式(C)に基づいて(位相シフト法を利用して)正確な演算処理を行うためには、適当な条件を満たす光強度情報(データ)を取得する必要がある。すなわち、位相シフト法によると、1つの位相Φθ1を算出するためには、位相変調部20の主軸方位がθ(一定)で、かつ、位相変調部20の複屈折位相差がδ〜δの各値に設定された光学系10で得られる複数の測定光(L個の測定光)の光強度情報が必要である。また、位相Φθ2を算出するためには、位相変調部20の主軸方位がθで、かつ、位相変調部20の複屈折位相差がδ〜δの各値に設定された光学系10で得られる複数の測定光(L個の測定光)の光強度情報が必要である。このことから、すべての位相Φ〜Φを算出するためには、位相変調部20が、主軸方位がθ〜θの各値で、かつ、位相変調部20の複屈折位相差がδ〜δの各値に設定された光学系10で得られるL×M個の測定光の光強度情報が必要であることがわかる。
まとめると、位相変調部20の複屈折位相差δの値がL個設定され、位相変調部20の主軸方位θの値がM個設定されている場合に、すべてのΦθを算出するためには(位相シフト法を利用して試料100の複屈折位相差Δ及び主軸方位φを算出するためには)、L×M個の測定光の光強度情報が必要である。そして、L×M個の測定光とは、それぞれ、位相変調部20が、複屈折位相差δがL個の設定値のいずれかであり、かつ、主軸方位θがM個の設定値のいずれかである光学系10で得られる光である。
この条件を満たす測定光の光強度情報を取得するためには、例えば、位相変調部20の主軸方位を第1の値に固定した状態で複屈折位相差を第1の値〜第Lの値まで順次変えて光強度情報を取得し、次いで、位相変調部20の主軸方位を第2の値に固定した状態で複屈折位相差を第1の値〜第Lの値まで順次変えて光強度情報を取得する。この動作を、位相変調部20の主軸方位が第Mの値に至るまで繰り返すことで、位相シフト法による演算に必要な光強度情報をすべて取得することができる。
なお、光学系10によると、位相変調部20の複屈折位相差δ及び主軸方位θは、それぞれ、第1及び第2の1/2波長板24,28の主軸方位(回転角)を変えることで変更することができる。そのため、計測装置1によると、バビネ・ソレイユ補償器を利用する場合に比べ、位相変調部20の複屈折位相差δ及び主軸方位θの設定を容易に行うことができるため、信頼性の高い計測を、効率よく高速に行うことが可能になる。
4−5:計測をさらに高速に行うためのアルゴリズム
上述したように、計測装置1によると、従来の計測装置に比べて高速に計測を行うことができるが、上記の手順によると、位相変調部20の複屈折位相差δ又は主軸方位θの設定値を一定時間固定して計測を行う。すなわち、第1及び第2の1/2波長板24,28の少なくとも一方は、回転と静止を繰り返すことになる。これに対して、第1及び第2の1/2波長板24,28を連続的に回転させながら計測を行うことができれば、上記の手順に比べて、計測速度をさらに大幅に高めることができる。
ところで、第1及び第2の1/2波長板24,28を、同じ回転比(各速度)で連続的に回転させると、例えば表2に示すように、複屈折位相差δと主軸方位θとの組み合わせが重複するため、必要なデータをすべて取得することができない。
また、第1及び第2の1/2波長板24,28を、4:6の回転比で連続的に回転させると、例えば表3のように、2方位でのみ位相差の組み合わせが異なることになるため、必要なデータをすべて取得することができない。
これに対して、第1及び第2の1/2波長板24,28を、4:5の回転比で連続的に回転させると、表1に示すように、重複する組み合わせが出現しないことから、必要なデータをすべて取得することができる。
あるいは、第1及び第2の1/2波長板24,28を、8:3の回転比で連続的に回転させた場合にも、表4に示すように、重複する組み合わせが出現しないことから、必要なデータをすべて取得することができる。
これらを一般化すると、複屈折位相差φの設定値の個数であるLと、主軸方位θの設定値の個数であるMとが互いに素の整数である場合に、連続的に回転する第1及び第2の1/2波長板24,28によって必要なデータをすべて取得することが可能になる。
そして、複屈折位相差φを360°周期とし、主軸方位θを180°周期と考え、複屈折位相差φ及び主軸方位θを、それぞれ等間隔に設定すると、位相変調部20が第1及び第2の1/2波長板24,28をM:Lの回転比で連続的に回転させれば、複屈折位相差φがL個の値のいずれかをとり、主軸方位θがM個の値のいずれかをとる、L×M個の測定光の光強度情報を取得することができる。
すなわち、第1及び第2の1/2波長板24,28を、互いに素の整数比で回転させることによって、第1及び第2の1/2波長板24,28が連続的に回転する光学系10によって、位相シフト法による解析に適したデータ(複数の光強度情報)をすべて取得することができる。
なお、位相シフト法による解析を行う場合、先に説明した通り、第2の1/2波長板28と検光子30との主軸方位が、θ=2θ+45°の関係を満たす光学系10を利用する。そのため、第1及び第2の1/2波長板24,28を連続的に回転させて光強度情報を取得する場合には、検光子30も、上記の関係式を満たすように回転させて(すなわち、検光子30を、第2の1/2波長板28の2倍の回転比で回転させて)光強度情報取得手順を行う。
4−5:第1及び第2の1/2波長板24,28及び検光子30の同期制御
上述のように、第1及び第2の1/2波長板24,28が連続的に回転する光学系10によって光強度情報を取得する場合には、第1及び第2の1/2波長板24,28、並びに検光子30を、同期させる必要がある。
すなわち、第1及び第2の1/2波長板24,28の主軸方位が一致したときに検光子30の主軸方位が45°となるように、第1及び第2の1/2波長板24,28及び検光子30を同期させると、解析に適した光強度情報を取得することが可能になる。
これらの同期制御を行う方法は特に限られるものではない。例えば、第2の1/2波長板28の主軸方位を基準にして同期制御を行ってもよい。すなわち、第1及び第2の1/2波長板24,28及び検光子30を所定の回転比で回転させ、第1及び第2の駆動・検出部72,74を利用して、第2の1/2波長板28の主軸方位θが0°となったとき(偏光子22の主軸方位と一致したとき)の、第1の1/2波長板24の主軸方位θを検出する。そして、第1の駆動・検出部72(アクチュエータ)に検出された差分に対応する電圧を与えることで、第1の1/2波長板24の主軸方位θをずらし、第1の1/2波長板24を、第2の1/2波長板28に同期させる。同様に、第2及び第3の駆動・検出部74,76を利用して、第2の1/2波長板28の主軸方位θが0°となったときの、検光子30の主軸方位θを検出する。そして、第3の駆動・検出部76(アクチュエータ)に、検出された差分に対応する電圧を与えることで、検光子30の主軸方位θをずらし、検光子30を、第2の1/2波長板28に同期させる。
図9には、これらの同期制御を含む、計測装置1を利用した計測手順を説明するためのフローチャート図を示す。
はじめに、サンプリング点数及び初期位相を決定する(ステップS30)。なお、サンプリング点数を決定すると、モータ(アクチュエータ)の回転比を決定することができる。
そして、モータを、決定された回転比で動作させる(ステップS32)。すなわち、回転比に応じた電圧をモータに印加することによって、モータを動作させる。
そして、モータを同期させる(ステップS34)。これにより、第1及び第2の1/2波長板24,28、並びに、検光子30の主軸方位を同期させる(ステップS34)。
モータを同期させるステップの終了後、光路Lに試料100を配置し(ステップS35)、試料100の変更特性要素を計測する。
すなわち、光路L上に試料100を設置し(ステップS35)、光強度情報を取得する(ステップS36)。
そして、計測に必要なすべてのデータ(光強度情報及び主軸方位情報)を取得したか判断する(ステップS38)。すべてのデータが揃っていない場合(ステップS38におけるNoの場合)には、光強度情報取得手順を繰り返す。そして、すべてのデータが揃った場合(ステップS38におけるYesの場合)には、偏光特性要素を算出するための演算処理を行う(ステップS40)。
そして、計測を続けるか否かについて判断する(ステップS42)。計測を続ける場合には、光強度情報取得手順(ステップS36)から、同様の手順を繰り返す。なお、モータを同期させるまでのステップ(ステップS30〜ステップS34)は、一度設定すれば足るので、これを繰り返す必要はない。
(5)データの補正
先に説明したように、本実施の形態では、式(B)を導出する際にΔ≪1との近似を利用した。そのため、Δ≪1を満たさない試料を計測する場合には、正しい計測結果を得られない事態が生じうる。
しかし、複屈折位相差Δ及び主軸方位φを求める際に用いたΦ´のアークタンジェントを取ってデータの補正を行うことで、Δ≪1を超える試料に対しても、正確な計測を行うことができる。
図10は、データの補正を行わなかった場合と、データの補正を行った場合との測定値を示す図である。図10の○が示すように、データの補正を行わない場合、複屈折位相差Δが60°を超える範囲(Δが1radを超える範囲)で、測定値と設定値との差が大きくなる。しかし、アークタンジェントを取ってデータの補正を行うと、図10の●が示すように、複屈折位相差Δの範囲に拘らず、設定値に等しい測定値を得ることができる。そのため、データの補正を行うことで、計測可能な試料の条件を緩和することができ、かつ、計測結果の信頼性を高めることができる。
なお、生体試料は、通常、複屈折位相差が30°以下である。すなわち、生体試料の場合には、データの較正作業を行わなくても、精度の高い測定結果を得ることができる(図10参照)。そのため、本発明に係る光学特性計測装置を生体試料の計測に適用する場合には、較正作業が不要になるため、さらに短時間での演算処理が可能になる。
(6)キャリブレーション
次に、実際の装置で計測を行う場合に適用可能な装置キャリブレーションについて説明する。
実際に装置で計測を行う場合、光学素子による偏光状態の変化や光軸調整時の誤差が生じる。そのため、上述の解析を行うだけでは、実験光学系の持つ複屈折から生じる誤差は補償されていない。そこで、装置の持つ複屈折を取り除き、試料100の複屈折のみを検出するためにキャリブレーションを行う。複屈折Rは大きさ(複屈折位相差Δ)と向き(主軸方位φ)を持つベクトル量であることから、試料の複屈折の方位と装置の複屈折の方位とが一致していない場合、次式に示すように、ベクトルによる減算を行う必要がある。ここで、添え字のsはサンプルの値、mは計測値、nは装置のみの値とする。
このような方位を考慮した計算を行うためには、単純に複屈折位相差と主軸方位の結果を減算するのではなく、方位の情報も含んだ位相変化の段階で補正を行う必要がある。
まず、試料を何も入れない状態で位相差を与え、光強度の変化を検出すれば、検出された光強度より位相変化Φθを得ることができる。例えば、方位θを0, π/4, π/2, 3π/4と変化させることにより位相変化Φn0, Φn1, Φn2, Φn3を得る。これをヌルの状態での位相とする。ヌルの位相には装置のもつ複屈折の大きさと向きの情報が含まれている。次に、試料100を置き、同様に位相Φm0, Φm1, Φm2, Φm3を求める。この位相には装置と試料両方の複屈折情報が含まれている。そして、これらの位相から試料100のみによる位相変化Φs0, Φs1, Φs2, Φs3を求める。具体的には、次式に示すように、各方位で位相の減算を行うことによって、試料100のみによる位相変化を算出することができる。
位相ごとの減算によるキャリブレーションを行うことにより、光学系の持つ複屈折と試料の持つ複屈折とを量(スカラー)として扱うのではなく、方位も考慮したベクトルとしてとらえることができる。そのため、試料の複屈折が微小な場合でも、高精度な計測が可能になる。
(7)計測結果
図11(A)〜図12(B)に、本実施の形態に係る光学特性計測装置の計測結果を示す。
図11(A)及び図11(B)は、回転型位相変調器(位相変調部20)によって変調される複屈折位相差δと楕円主軸方位θが、回転角に対して線形に変形する様子を示している。なお、図11では、横軸は各素子(第1及び第2の1/2波長板24,28)の回転角とし、縦軸には複屈折位相差δと楕円主軸方位θの計測結果を示す。図11(A)を見ると、第1の1/2波長板24の回転角θに対して主軸方位θが線形に変化していることがわかる。また、図11(B)を見ると、第2の1/2波長板28の回転角に対して複屈折位相差δが線形に変化していることがわかる。
図12(A)及び図12(B)は、回転型位相変調器(位相変調部20)を用い、高速複屈折アルゴリズムによる解析を行った計測結果を示す。ここでは、バビネ・ソレイユ補償器をサンプルとして用いて、計測装置の精度検定を行った。図12(A)は、校正複屈折位相差に対する複屈折位相差の計測値を示している。図12(B)は、構成方位に対する主軸方位の計測値を示している。いずれも線形に変化しており、線形からのばらつきから、計測精度は、複屈折位相差で1.88°、主軸方位で0.47°であった。
そして、図13(A)〜図14(B)には、本計測装置1を用いて得られた解析結果を示す。詳しくは、図13(A)及び図13(B)は、計測装置1を利用して鶏の深胸筋の断面を測定することで得られる、複屈折位相差及び主軸方位を示す。また、図14(A)及び図14(B)は、それぞれ、計測装置1を利用してプラスチックディスクの断面を測定することで得られる、複屈折位相差及び主軸方位を示す。計測装置1によると、図13(A)〜図14(B)に示すように、測定対象を、面単位で解析した結果を、視覚的なデータとして得ることができる。
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
例えば、光学系10を構成する光学素子は、手動で、その主軸方位を変更可能に構成されていてもよい。この場合には、検出部によってその主軸方位情報を取得し、各種演算処理を行ってもよい。
本発明は、複屈折分布から、高分子の配向状態や残留応力を視覚化できるため、ガラスや樹脂等、透明体(レンズやガラス基板等の光学素子、プラスチックを用いた成形品)の製品検査に用いることができる。
また、顕微鏡型のシステムとすることで、生体組織の分子配向状態や内部応力を観察することができる。配向した分子から成る特定の部位を、染色や酵素処理などを行わずに検出することができるため、様々な組織片を扱う医療分析及び美容分野において利用することができる。
さらに、計測を高速化させることにより、製品加工時の応力状態や、運動する生体試料の内部応力状態の動的モニタリングが可能になる。
特に、本発明によると、光学素子(第1及び第2の1/2波長板24,28、検光子30)が連続的に回転する光学系を利用して、光学特性要素の計測を行うことができる。そのため、光強度情報取得手順にかかる時間を短縮することができる。このことから、本発明によると、生体試料などの逐次的に状態を変化させる試料の様子をリアルタイムに計測することが可能な計測装置を提供することができる。
光学特性計測装置の概略図である。 光学特性計測装置のブロック図である。 光学特性計測装置について説明するための図である。 光学特性計測装置について説明するための図である。 光強度情報取得手順を示すフローチャート図である。 演算処理手順を示すフローチャート図である。 従来の光学系の一例を示す図である。 光強度の一例を示す図である。 光学特性計測手順を示すフローチャート図である。 データの補正について説明するための図である。 精度検定試験の結果を示す図である。 精度検定試験の結果を示す図である。 光学特性計測装置による計測結果を示す図である。 光学特性計測装置による計測結果を示す図である。
符号の説明
1…計測装置、 10…光学系、 11…光学系、 12…光源、 14…受光部、 15…受光素子、 20…位相変調部、 21…位相変調器、 22…偏光子、 24…第1の1/2波長板、 26…1/4波長板、 28…第2の1/2波長板、 30…検光子、 40…光強度情報取得部、 50…記憶装置、 60…演算処理部、 70…制御信号生成部、 72…第1の駆動・検出部、 74…第2の駆動・検出部、 76…第3の駆動・検出部、 80…制御装置、 100…試料、 110…処理部、 120…記憶部、 130…情報記憶媒体、 140…表示部

Claims (6)

  1. 測定対象の光学特性を計測する光学特性計測装置において、
    光学系に含まれる少なくとも5個の光学素子及び前記測定対象によって変調された測定光の光強度情報を取得する光強度情報取得部と、
    前記測定光の光強度の理論式と、前記測定光の光強度情報とに基づいて、前記測定対象の複屈折位相差、及び、主軸方位の少なくとも一方を算出する演算処理を行う演算処理部と、
    を含み、
    前記少なくとも5個の光学素子は、第1及び第2の偏光子、第1及び第2の1/2波長板、並びに、1/4波長板を含み、かつ、少なくとも前記第1及び第2の1/2波長板が回転可能に構成されてなり、
    前記測定光は、光源から出射された所与の波長の光を、前記第1の偏光子、前記第1の1/2波長板、前記1/4波長板、並びに、前記第2の1/2波長板を介して前記測定対象に入射させ、前記測定対象によって変調された前記光を、前記第2の偏光子を介して受光部に入射させることで得られる光であり、
    前記光強度情報取得部では、
    前記第1及び第2の1/2波長板の主軸方位の少なくとも一方が異なる第1〜第K(Kは2以上の整数)の主軸方位条件を満たす前記光学系で得られる第1〜第Kの前記測定光の光強度情報を取得し、
    前記演算処理部では、
    前記測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を変数として含む、前記少なくとも5個の光学素子の主軸方位を反映した第1〜第Kの前記光強度の理論式と、前記第1〜第Kの測定光の光強度情報とに基づいて、前記測定対象の複屈折位相差、及び、主軸方位の少なくとも一方を算出する演算処理を行う光学特性計測装置。
  2. 請求項記載の光学特性計測装置において、
    前記第1の偏光子、前記第1及び第2の1/2波長板、並びに、前記1/4波長板は位相変調部を構成し、
    前記第1〜第Kの測定光は、前記位相変調部の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方が異なる前記光学系で得られる測定光である光学特性計測装置。
  3. 請求項記載の光学特性計測装置において、
    前記第1〜第Kの測定光は、それぞれ、前記位相変調部が、複屈折位相差の値がL(Lは2以上の整数)個の設定値のいずれかで、かつ、前記主軸方位の値がM(Mは2以上の整数)個の設定値のいずれかであるL×M通りの前記光学系のいずれかで得られる測定光である光学特性計測装置。
  4. 請求項1から請求項のいずれかに記載の光学特性計測装置において、
    前記光強度情報取得部では、
    前記第1及び第2の1/2波長板が所与の回転比で連続的に回転する前記光学系で得られる前記測定光の光強度情報を取得する光学特性計測装置。
  5. 請求項1から請求項のいずれかに記載の光学特性計測装置において、
    前記第1及び第2の1/2波長板を回転駆動させる第1及び第2のアクチュエータと、
    前記第1及び第2の1/2波長板の主軸方位を検出する第1及び第2の検出部と、
    前記第1及び第2のアクチュエータの動作を制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、
    をさらに含み、
    前記制御信号生成部は、前記第1及び第2の検出部からの検出信号に基づいて、前記制御信号を生成する光学特性計測装置。
  6. 測定対象の光学特性を計測する光学特性計測方法において、
    光学系に含まれる少なくとも5個の光学素子及び前記測定対象によって変調された測定光の光強度情報を取得する光強度情報取得手順と、
    前記測定光の光強度の理論式と、前記測定光の光強度情報とに基づいて、前記測定対象の複屈折位相差、及び、主軸方位の少なくとも一方を算出する演算処理を行う演算処理手順と、
    を含み、
    前記少なくとも5個の光学素子は、第1及び第2の偏光子、第1及び第2の1/2波長板、並びに、1/4波長板を含み、かつ、少なくとも前記第1及び第2の1/2波長板が回転可能に構成されてなり、
    前記測定光は、光源から出射された所与の波長の光を、前記第1の偏光子、前記第1の1/2波長板、前記1/4波長板、並びに、前記第2の1/2波長板を介して前記測定対象に入射させ、前記測定対象によって変調された前記光を、前記第2の偏光子を介して受光部に入射させることで得られる光であり、
    前記光強度情報取得手順では、
    前記第1及び第2の1/2波長板の主軸方位の少なくとも一方が異なる第1〜第K(Kは2以上の整数)の主軸方位条件を満たす前記光学系で得られる第1〜第Kの前記測定光の光強度情報を取得し、
    前記演算処理手順では、
    前記測定対象の複屈折位相差及び主軸方位の少なくとも一方を変数として含む、前記少なくとも5個の光学素子の主軸方位を反映した第1〜第Kの前記光強度の理論式と、前記第1〜第Kの測定光の光強度情報とに基づいて、前記測定対象の複屈折位相差、及び、主軸方位の少なくとも一方を算出する演算処理を行う光学特性計測方法。
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