以下、本発明の一実施形態を図1〜図14に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るデバイス製造処理システムの概略構成が示されている。図1に示されるように、デバイス製造処理システム1000は、半導体ウエハを処理し、そのウエハ上にマイクロデバイスを製造するためにデバイス製造工場内に構築されている。図1に示されるように、このデバイス製造処理システム1000は、露光装置100と、その露光装置100に隣接して配置されたトラック200と、管理コントローラ160と、解析装置500と、ホストシステム600と、デバイス製造処理装置群900とを備えている。
露光装置100は、デバイスパターンを、フォトレジストが塗布されたウエハに転写する装置である。図2には、露光装置100の概略構成が示されている。露光装置100は、コヒーレントな2つの露光光IL1、IL2を射出する照明系10と、その露光光IL1により照明されるレチクルR1をレチクルホルダRHを介して真空吸着保持し、その露光光IL2により照明されるレチクルR2を別のレチクルホルダRHを介して真空吸着保持するレチクルステージRSTと、露光光IL1、IL2により照明されたレチクルR1、R2にそれぞれ形成されたデバイスパターンの一部をウエハWの被露光面上に投影する両側テレセントリックな投影光学系PLと、露光対象となるウエハWを保持するウエハステージWSTと、これらを統括制御する主制御装置20とを備えている。
レチクルR1、R2上には、それぞれ回路パターン等を含むデバイスパターンが形成されている。レチクルR1、R2のデバイスパターンの合成パターンがウエハWの被露光面上に転写形成されるようになる。これらのデバイスパターンとしては、様々な組合せとすることができる。例えば、レチクルR1のデバイスパターンを、周期的なデバイスパターンとし、レチクルR2のデバイスパターンを、周期性の低いデバイスパターンとしたりすることができる。また、レチクルR1のデバイスパターンを、基本的なデバイスパターンとし、レチクルR2のデバイスパターンを、OPC(光近接効果補正)の補助パターンとすることができる。このようにデバイスパターンを分割すれば、隣接するパターンの間隔を広くすることができるので、光近接効果が低減される。
照明系10から出射されるコヒーレントな露光光IL1は、レチクルステージRSTに保持されたレチクルR1のパターン形成面の一部に照射され、同じく照明系10から出射されるコヒーレントな露光光IL2は、レチクルステージRSTに保持されたレチクルR2のパターン形成面の一部に照射される。これらの照射領域をそれぞれ照明領域IAR1、IAR2とする。
照明領域IAR1、IAR2をそれぞれ経由した露光光IL1、IL2は、投影光学系PLを介して、ウエハステージWSTに保持されたウエハWの被露光面(ウエハ面)の一部の領域に入射する。したがって、この領域に、照明領域IAR1、IAR2内のデバイスパターンの投影像が重なるように形成される。この投影像が形成される領域を露光領域IAとする。ウエハWの被露光面には、フォトレジストが塗布されているため、露光領域IAに対応する部分には、2つの投影像の合成パターンが転写されるようになる。
ここで、投影光学系PLの光軸に沿った座標軸をZ軸とするXYZ座標系を考える。ウエハホルダWHを介してウエハWを保持するウエハステージWSTは、XY平面を移動可能であるとともに、ウエハWの被露光面を、Z軸方向にシフトさせ、θx(X軸回りの回転)方向、θy(Y軸回りの回転)方向に回転させることが可能である。また、レチクルR1、R2を保持するレチクルステージRSTは、Y軸方向に長いストロークで移動可能であるとともに、X軸方向にも微動可能で、かつ、θz方向に回転可能である。ウエハステージWSTのX,Y,θx、θy、θzの位置情報は、干渉計などによって常時測定されており、主制御装置20に送られている。
また、レチクルステージRSTは、ウエハWを保持するウエハステージWSTに同期してXY面内を移動することが可能である。さらに、レチクルステージRSTは、実際には、1つのメインステージと、レチクルホルダRHを介してレチクルR1を保持するサブステージと、もう1つのレチクルホルダRHを介してレチクルR2を保持するサブステージとを備えている。2つのサブステージは、メインステージ上に置かれ、そのメインステージに対してその相対位置及び相対姿勢を調整することが可能に構成されている。この調整により、レチクルR1、R2のθz方向の回転を補正したり、照明領域IAR1、IAR2内のパターン形成面のZ位置を一定に保ったりすることが可能となる。メインステージ及び2つのサブステージのX、Y、Z、θx、θy、θzの位置情報は、干渉計などによって常時測定されており、主制御装置20に送られている。以下では、メインステージ及び2つのサブステージの位置情報を、まとめてレチクルステージRSTの位置情報と呼ぶこととする。
このレチクルステージRSTとウエハステージWSTとの投影光学系PLの投影倍率に応じた速度での同期走査により、レチクルR1、R2上のデバイスパターンが、照明領域IAR1、IAR2を通過するのに同期して、ウエハWの被露光面が、露光領域IAを通過するようになる。これにより、レチクルR1、R2上の全デバイスパターンが、ウエハWの被露光面上の一部の領域(ショット領域)に転写されるようになる。露光装置100では、露光光IL1、IL2に対し、上述したレチクルステージRSTの相対同期走査と、ウエハWを保持するウエハステージWSTのステッピングを繰り返すことにより、レチクルR1、R2上のデバイスパターンがウエハW上の複数のショット領域に転写される。すなわち、露光装置100は、いわゆる多重露光(二重露光)を行う走査露光(ステップ・アンド・スキャン)方式の露光装置である。
主制御装置20は、図3に示されるように、露光光IL1の強度(露光量)を制御する露光量制御系EC1と、露光光IL2の強度(露光量)を制御する露光量制御系EC2と、レチクルステージRSTの位置制御、ウエハステージWSTの位置制御、両ステージRST、WSTの同期制御や、投影光学系PLの焦点深度内にウエハWの被露光面を一致させるオートフォーカス/レベリング制御(以下、単に、フォーカス制御という)などを行うステージ制御系SCと、投影光学系PLの結像状態を制御するレンズ制御系LCとを備えている。
図3に示されるように、露光量制御系EC1は、露光光IL1の強度を検出可能な露光量センサ(不図示)の検出値に基づいて、フィードバック制御を行い、露光光IL1の強度の指令値を照明系10に出力している。また、露光量制御系EC2は、露光光IL2の強度を検出可能な露光量センサ(不図示)の検出値に基づいて、フィードバック制御を行い、露光光IL2の強度の指令値を照明系10に出力している。照明系10は、上記指令値に従った強度で、露光光IL1、IL2を照射する。
ステージ制御系SCは、レチクルステージRSTの位置情報に基づいて、フィードバック制御を行い、レチクルステージRSTの駆動指令を出力する。また、ステージ制御系SCは、ウエハステージWSTの位置情報に基づいて、フィードバック制御を行い、ウエハステージWSTの駆動指令を出力する。ステージ制御系SCは、前述したように、両ステージRST,WSTの位置情報に基づいて、両ステージRST、WSTの同期制御と、フォーカス/レベリング制御とが可能である。すなわち、ステージ制御系SCは、両ステージRST、WSTの同期制御を行う制御系を同期制御系と、ステージ位置(ウエハWの被露光面)のZ位置やX軸回り、Y軸回りの回転量を制御するフォーカス制御系とを備えている。
同期制御系は、走査露光中、XYZ座標系の下で、両ステージRST、WSTが同期走査されるように、両ステージWST、RSTの位置情報に基づいて、フィードバック制御を行い、両ステージWST,RSTの駆動指令を出力する。
露光装置100には、ウエハWの被露光面のフォーカス/レベリングずれを複数検出点にて検出する不図示の多点AF(オートフォーカス)センサが設けられている。図3に示されるように、ステージ制御系SCは、この多点AFセンサの複数の検出点のうち、例えば9個の検出点(9チャンネル)でウエハWの被露光面の面位置を検出し、露光領域IAに対応するウエハWの被露光面を、投影光学系PLの像面に一致させるようなフィードバック制御を行うことにより、ウエハステージWSTのZ軸方向、θx、θy方向の駆動指令を出力する。
さらに、図3では示されていないが、露光装置100には、照明領域IAR1を少なくとも含む領域のレチクルR1のパターン形成面の面位置と、照明領域IAR2を少なくとも含む領域のレチクルR2のパターン形成面の面位置とを検出する不図示の多点AFセンサが設けられている。ステージ制御系SCのフォーカス制御系は、この多点AFセンサからの情報に基づいて、レチクルR1を保持するサブステージを駆動して照明領域IAR1内のレチクルR1のパターン形成面の面位置を制御し、レチクルR2を保持するサブステージを駆動して照明領域IAR2内のレチクルR2のパターン形成面の面位置を制御することも可能である。
投影光学系PLは、複数枚の屈折光学素子(レンズ素子)を含む光学系PL1、PL2、PL3と、複数のミラーを備えた両側テレセントリックな光学系である。照明領域IAR1を介した露光光IL1は、光学系PL1によってミラーに導かれ、複数のミラーで反射した後、光学系PL3に入射して、ウエハWの被露光面に導かれる。一方、照明領域IAR2を介した露光光IL2は、光学系PL2に入射してミラーに導かれ、複数のミラー(ハーフミラー含む)で反射した後、光学系PL3に入射して、ウエハWの被露光面に導かれる。この結果、露光領域IAには、所定の倍率で、照明領域IAR1、IAR2内のパターンの部分倒立像が、重なって投影される。
光学系PL1〜PL3は、内部の6自由度駆動可能な可動レンズ素子を駆動するなどして、それぞれの結像特性を調整することができるように構成されている。レンズ制御系LCは、投影光学系PLの光学系PL1の結像特性、光学系PL2の結像特性、光学系PL3の結像特性を個別に調整することが可能である。レンズ制御系LCは、走査露光中においても、大気圧、露光装置100のチャンバ内の温度、露光量、投影光学系PLのレンズの温度など、光学系PL1〜PL3の状態をモニタし、そのモニタ結果(測定値)に基づいて投影光学系PLの倍率変動量と、フォーカス変動量を算出し、その変動量に基づいて、光学系PL1、PL2、PL3それぞれの駆動指令を出力する。これにより、投影光学系PLにおけるベストフォーカス位置などが、目標値に維持される。
露光装置100の動作は、装置パラメータの値を変更することにより、ある程度調整可能となっている。上記各種制御系のフィードバック制御におけるゲインなどの制御系パラメータや、照明系10におけるコヒーレンスファクタなどの照明条件などはその一例である。照明条件は、露光光IL1、露光光IL2について個別に設定可能であり、露光するパターンに要求される解像度などによって決定される。
[制御系パラメータ]
制御系パラメータは、その設定値を変更する際に、プロセスを一旦停止して装置調整が必要となる調整系パラメータと、装置調整を必要としない非調整系パラメータとに大別される。
調整系パラメータの代表例について幾つか説明する。まず、露光量制御系関連では、露光量を検出する露光量センサ(不図示)の調整パラメータや、ウエハWの被露光面上の照明光の強度を計測する照度計測センサ(不図示)の調整パラメータなどがある。また、同期制御系関連では、ステージWST、RSTの位置測定用の干渉計からのレーザービームを反射するためにウエハWやレチクルRを保持するステージWST、RST上に設けられた移動鏡曲がり補正用の補正関数の係数値などのパラメータや、フィードバック制御の位置ループゲイン、速度ループゲイン、積分時定数などがある。また、フォーカス制御系関連では、露光時のウエハ面と投影光学系PLによる最良結像面とを一致させる際のフォーカス制御のオフセット調整値であるフォーカスオフセット、露光時のウエハ面と投影光学系PLの最良結像面とを一致させるためのレベリング調整パラメータ、多点AFセンサの個々の検出点のセンサである位置検出素子(PSD)のリニアリティ、センサ間オフセット、各センサの検出再現性、チャンネル間オフセット、ウエハ上へのAFビーム照射位置(すなわち検出点)、その他AF面補正などに関連するパラメータなどがある。これら調整系パラメータの値は、いずれも装置のキャリブレーションや試運転によって調整する必要があるものである。
次に、非調整系パラメータの代表例について幾つか説明する。まず、露光量制御系関連では、例えば、照明系10におけるNDフィルタの選択に関するパラメータや、露光量目標値がある。また、同期制御系関連では、例えば、走査(スキャン)速度などがある。また、フォーカス制御系関連では、例えば、9チャンネル分のフォーカスセンサの選択状態、後述するフォーカス段差補正マップ関連のパラメータ、フォーカスオフセットの微調整量、ウエハ外縁のエッジショットにおけるスキャン方向などがある。これらのパラメータの設定値は、いずれも装置のキャリブレーションを行わずに値を変更することが可能なパラメータであり、露光レシピによって指定されているものが多い。なお、NDフィルタについては、あるウエハWに対し露光開始時に露光量目標値を適当に(例えば最小に)設定した状態で1回だけ行われる平均パワーチェックの結果により選択される。また、このNDフィルタの選択によっては、スキャン速度もある程度微調整される。
なお、露光量関連のパラメータは、露光光IL1、IL2についてそれぞれ別個に設定することが可能である。
ウエハW上に転写形成されるデバイスパターンの線幅や転写位置は、露光量、同期精度、フォーカス、レンズの各制御誤差により設計値からずれる。そこで、露光装置100では、露光量制御系EC1、EC2から得られる露光量誤差に関連する制御量の時系列データ(露光量トレースデータ)、ステージ制御系SCの同期制御系から得られる同期精度誤差に関連する制御量の時系列データ(同期精度トレースデータ)、ステージ制御系SCのフォーカス制御系から得られるフォーカス誤差に関連する制御量の時系列データ(フォーカストレースデータ)、レンズ制御系LCから得られるレンズ制御誤差に関連する制御量の時系列データ(レンズトレースデータ)をロギングし、それらのデータをパターン線幅等の解析評価等に利用している。
投影光学系PLには、波面収差が存在する。この波面収差により、投影光学系PLを通過する平行光束の波面は理想的な波面からずれるようになる。この波面のずれは、物面上の1点から生じた光の像面上の結像位置の位置ずれなどを引き起こす。投影光学系PLを構成する光学系PL1、PL2、PL3は、レンズ制御系LCの制御の下、それぞれが備える可動レンズ素子を駆動して、波面収差を調整することができるように構成されている。
投影光学系PLの波面収差は、ザイデル収差やツェルニケ多項式で表現することができる。中でも、ツェルニケ多項式は、高次成分の波面収差の表現に好適である。ツェルニケ多項式は、次式で示されるように、投影光学系PLの瞳座標(ρ,θ)に関する実多項式である。
ツェルニケ多項式は、直交系であるから、各項の係数Z
iを独立に決定することができる。iを適当な値で切ることはある種のフィルタリングを行うことに対応する。なお、一例として第1項〜第37項までのf
i(f
i(ρ,θ):動径ρ、角度θを独立変数とする動径多項式)を係数Z
iとともに例示すると、次の表1のようになる。但し、表1中の第37項は、実際のツェルニケ多項式では、第49項に相当するが、本明細書では、i=37の項(第37項)として取り扱うものとする。すなわち、本発明において、ツェルニケ多項式の項の数は、特に限定されるものではない。
ツェルニケ多項式のそれぞれの項は光学収差に対応する。しかも低次の項(iの小さい項)は、ザイデル収差にほぼ対応する。例えば、ツェルニケ係数Z
7、Z
8(Z
7、Z
8は直交関係)は、3次のコマ収差に対応し、Z
14、Z
15は、5次のコマ収差に対応する。これらのコマ収差は、動径多項式が奇関数であるいわゆる奇関数収差とも呼ばれている。ウエハW上に形成される像面では、パターンの横ずれ、焦点深度の低減、パターン非対称性の原因となる。また、ツェルニケ係数Z
4は、デフォーカスに対応し、Z
9は、4次の球面収差に対応する。これらの収差は、動径多項式が偶関数であるいわゆる偶関数収差とも呼ばれている。
このツェルニケ多項式は、像面上の任意の位置での収差量を位置座標とは独立して扱うことができるため、投影光学系PLの収差の評価に適しているといえる。主制御装置20を構成するレンズ制御系LCの制御の下、光学系PL1、PL2、PL3のレンズ素子を駆動すれば、投影光学系PLの波面収差、すなわちツェルニケ係数の第1項から第37項までの収差の大きさが変化する。第1項から第37項までの収差の大きさが変わると、それぞれの項の収差に感度のある、結像性能が変化する。この波面収差は、露光領域IA(像面)内の各地点で異なるため、露光領域IA内の結像性能の変化状態も、地点ごとに異なるようになる。光学系PL1〜PL3の光学素子は、露光領域IA内における結像特性が、できるだけ均一となるように、すなわち露光領域IA内で波面収差ができるだけ均一となるように、調整される必要がある。
照明系10は、主制御装置20の露光量制御系EC1、EC2の制御の下で、露光光IL1、IL2の波長をも微調整可能である。また、露光装置100には、不図示の照度ムラセンサも設けられている。
主制御装置20は、上述したように、露光装置100の各種構成要素を制御するコンピュータシステムである。主制御装置20は、デバイス製造処理システム1000内に構築された通信ネットワークに接続され、その通信ネットワークを介して外部とのデータ送受信が可能となっている。
[トラック]
トラック200は、露光装置100を囲むチャンバ(不図示)に接するように配置されている。トラック200は、内部に備える搬送ラインにより、主として露光装置100に対するウエハの搬入・搬出を行っている。
[コータ・デベロッパ]
トラック200内には、レジスト塗布及び現像を行うコータ・デベロッパ(C/D)110が設けられている。C/D110は、ウエハW上に対しフォトレジストの塗布及び現像を行う。C/D110は、これらの処理状態を観測し、その観測データをログデータとして記録することができるようになっている。観測可能な処理状態としては、例えば、レジスト塗布膜厚均一性、現像モジュール処理、PEB(Post-Exposure-Bake)の温度均一性(ホットプレート温度均一性)、ウエハ加熱履歴管理(PEB処理後のオーバベークの回避、クーリングプレート)の各状態がある。C/D110も、その装置パラメータの設定により、その処理状態を、ある程度調整することができるようになっている。このような装置パラメータには、例えば、ウエハW上のレジストの塗布むらに関連するパラメータや、設定温度、ウエハWの回転速度、レジストの滴下量や滴下間隔などがある。
C/D110は、露光装置100や、ウエハ測定検査器120とは、独立して動作可能である。C/D110は、トラック200の搬送ラインに沿って配置されている。したがって、この搬送ラインによって、露光装置100とC/D110との間でウエハWの搬送が可能となる。また、C/D110は、デバイス製造処理システム1000内の通信ネットワークと接続されており、外部とのデータ送受信が可能となっている。C/D110は、例えば、そのプロセスに関する情報(上記トレースデータなどの情報)を出力可能である。
[ウエハ測定検査器]
トラック200内には、露光装置100でのウエハWの露光前後(すなわち、事前、事後)において、そのウエハWに対する様々な測定検査を行うことが可能な複合的なウエハ測定検査器120が設けられている。ウエハ測定検査器120は、露光装置100やC/D110とは、独立して動作可能である。ウエハ測定検査器120は、露光装置100やC/D110の制御装置とは、独立して動作可能な制御装置を備えている。ウエハ測定検査器120は、露光前に測定を行う事前測定検査処理と、露光後に測定を行う事後測定検査処理とを行う。なお、ウエハ測定検査器120が事前測定検査処理と事後測定検査処理との一方のみを行うようにしてもよい。また、事前測定検査処理と事後測定検査処理とで別々の測定検査器を設けるようにしてもよい。
事前測定検査処理では、ウエハWが露光装置100に搬送される前に、ウエハWの被露光面の面形状の測定、ウエハW上の異物の検査、ウエハW上のレジスト膜検査を行う。ウエハ測定検査器120は、事前測定検査の結果を、システム内の通信ネットワークを介して外部にデータ出力することができるようになっている。
一方、事後測定検査処理では、露光装置100で転写されC/D110で現像された露光後(事後)のウエハW上のレジストパターン等の線幅や重ね合わせ誤差、投影光学系PLの波面収差、照明ムラの測定を行い、ウエハ膜検査、ウエハ欠陥・異物検査などを行う。ここで、ウエハ膜検査とは、ウエハW上に形成された膜の膜厚、膜厚ムラ、膜不良、異物、スクラッチなどの検査を含む。
また、ウエハ測定検査器120では、後述するような投影光学系PLの収差測定のためにテストウエハ上に転写形成された収差測定用マークの相対位置ずれ量なども測定することができるように構成されている。
また、ウエハ測定検査器120についても、その測定状態(例えば、測定のためのウエハWの位置あわせ時の残差成分などの位置合わせ等の測定誤差などに影響するようなデータ)をログデータとして記録することができるようになっている。このログデータについても、通信ネットワークを介して外部に出力可能である。また、ウエハ測定検査器120も、その装置パラメータの設定を変更することにより、その測定条件を、ある程度調整することができるようになっている。このような装置パラメータには、例えば、測定の前提となるウエハWの位置合わせ関連のパラメータや、センサのフォーカス状態に関するパラメータ、測定対象となるウエハの選定や、測定ショットの選択に関するパラメータなどがある。
ウエハ測定検査器120は、トラック200の搬送ラインに沿って配置されている。したがって、この搬送ラインによって、露光装置100と、C/D110と、ウエハ測定検査器120との間でウエハWの搬送が可能となる。すなわち、露光装置100と、トラック200と、ウエハ測定検査器120とは、相互にインライン接続されている。ここで、インライン接続とは、装置間及び各装置内の処理ユニット間を、ロボットアームやスライダ等のウエハWを自動搬送するための搬送装置を介して接続することを意味する。このインライン接続により、露光装置100とC/D110とウエハ測定検査器120との間でのウエハWの受け渡し時間を格段に短くすることができる。
インライン接続された露光装置100とC/D110とウエハ測定検査器120とは、これを一体として、1つの基板処理装置(100、110、120)とみなすこともできる。基板処理装置(100、110、120)は、ウエハWに対する、フォトレジスト等の感光剤を塗布する塗布工程と、感光剤が塗布されたウエハW上にレチクルR1、R2のパターンの像を投影露光する露光工程と、露光工程が終了したウエハWを現像する現像工程等を行う。これらの工程の詳細については後述する。
デバイス製造処理システム1000では、露光装置100と、C/D110と、ウエハ測定検査器120、すなわち基板処理装置(100、110、120)が、複数台設けられている。各基板処理装置(100、110、120)、デバイス製造処理装置群900は、温度及び湿度が管理されたクリーンルーム内に設置されている。また、各装置の間は、所定の通信ネットワーク(例えばLAN:Local Area Network)を介して、データ通信を行うことができるように接続されている。この通信ネットワークは、顧客の工場、事業所あるいは会社に対して設けられたいわゆるイントラネットと呼ばれる通信ネットワークである。
基板処理装置(100、110、120)においては、ウエハWは複数枚(例えば20枚)を1単位(ロットという)として処理される。デバイス製造処理システム1000においては、ウエハWは1ロットを基本単位として処理され製品化されている。したがって、デバイス製造処理システム1000におけるウエハプロセスをロット処理ともいう。
なお、このデバイス製造処理システム1000では、ウエハ測定検査器120は、トラック200内に置かれ、露光装置100やC/D110とインライン接続されているが、これらを、トラック200外に配置し、露光装置100やC/D110とはオフラインに構成してもよい。
上述した、ウエハ測定検査器120の情報処理装置を実現するハードウエアとしては、例えばパーソナルコンピュータを採用することができる。この場合、この情報処理装置のCPU(不図示)で実行されるプログラムの実行により実現される。解析プログラムは、CD−ROMなどのメディア(情報記録媒体)により供給され、パーソナルコンピュータ(PC)にインストールされた状態で実行される。
[解析装置]
解析装置500は、露光装置100、トラック200とは独立して動作する装置である。解析装置500は、デバイス製造処理システム1000内の通信ネットワークと接続されており、外部とデータ送受信が可能となっている。解析装置500は、この通信ネットワークを介して各種装置から各種データ(例えばその装置の処理内容)を収集し、ウエハに対するプロセスに関するデータの解析を行う。このような解析装置500を実現するハードウエアとしては、例えばパーソナルコンピュータを採用することができる。この場合、解析処理は、解析装置500のCPU(不図示)で実行される解析プログラムの実行により実現される。この解析プログラムは、CD−ROMなどのメディア(情報記録媒体)により供給され、PCにインストールされた状態で実行される。
解析装置500は、投影光学系PLの波面収差を最適化することが可能である。解析装置500の不図示の記憶装置には、ウエハ測定検査器120において測定された投影光学系PLの波面収差に関するデータが格納される。このデータには、ウエハ測定検査器120から収集した投影光学系PLの波面収差に関する測定データのほか、露光装置100から収集した、投影光学系PLの光学系PL1〜PL3の可動レンズ素子の現在の駆動位置に関する情報や、それらの可動レンズ素子の駆動範囲(レンズ素子駆動範囲)が含まれている。
解析装置500は、波面収差に関する測定データに基づいて、投影光学系PLの波面収差、すなわちツェルニケ項の第1項〜第37項の大きさを算出する。解析装置500は、このツェルニケ項の大きさ(すなわち波面収差データ)と、レンズ素子駆動範囲と、レンズ素子の駆動量に対する波面収差変化表と、波面収差に対する結像性能変化表と、結像性能誤差許容値とを入力し、それらを用いて、ウエハ測定検査器120の測定結果から算出された波面収差データに基づいて、可動レンズ素子等の駆動位置や露光波長の調整値、ウエハステージWSTの姿勢の調整値と、残留誤差と、駆動後の予測結像性能とを出力する。可動レンズ素子の駆動位置は、露光装置100に送られる。露光装置100の主制御装置20のレンズ制御系は、可動レンズ素子を、送られてきた駆動位置に駆動し、投影光学系PLの波面収差等を調整したり、ウエハステージWSTの姿勢制御のオフセット値を変更したり、露光光IL1、IL2の波長を微調整し、結像性能をその目標値に近づける。
[波面収差変化表]
波面収差変化表は、レチクルR上のパターンの投影像の形成状態に影響を与える調整パラメータの単位調整量の変化を、投影光学系PLの視野内(すなわち露光領域IA内)の複数の計測点それぞれに対応する結像性能、例えば上述したツェルニケ多項式の第1項〜第37項の係数の変動量との関係を示すデータを所定の規則に従って並べたデータ群から成る変化表である。波面収差変化表の要素は、投影光学系PLと実質的に等価なモデルを用いて、シミュレーションを行い、このシミュレーション結果として取得することができる。調整パラメータは、上述した通り、投影光学系PL内の5つの可動レンズの6自由度の駆動量、露光用照明光の波長、ウエハW面(すなわちウエハステージWST)のZ、θx、θyの駆動量である。
[結像性能感度表]
結像性能感度表は、それぞれ異なる露光条件、すなわち光学条件(露光波長、最大N.A.、使用N.A、照明N.A、照明系開口絞りの開口形状、照明σなど)、評価項目(マスクの種類、線幅、評価量、パターンの情報など)と、これらの光学条件と評価項目との組合せにより定まる複数の露光条件下でそれぞれ求めた、投影光学系PLの結像性能、例えば諸収差(あるいはその指標値)のツェルニケ多項式の各項、例えば第1項〜第37項の1λ当りの変化量から成る計算表、すなわちツェルニケ感度表を含むデータベースである。ツェルニケ感度表は、Zernike Sensitivityとも呼ばれる。そこで、複数の露光条件下におけるツェルニケ感度表から成るファイルは、「ZSファイル」とも呼ばれている。
本実施形態では、ツェルニケ感度算出の対象となる結像性能として、各Zernike係数に対して線形な結像性能である次の12種類の線形収差、すなわち、X軸方向、Y軸方向のディストーション、4種類のコマ収差の指標値である線幅異常値、4種類の像面湾曲、2種類の球面収差と、各Zernike係数に対する非線形な結像性能である線幅との13種類の結像性能が含まれている。ここで、各Zernike係数に対する非線形な結像性能としての線幅には、投影光学系PLによって像面上に形成されるラインパターンの像の線幅の他、縦方向に延びるラインパターンと、横方向に延びるラインパターンとの線幅差、孤立線と密集線との線幅差などがあるが、以下では、ラインパターンの像の線幅を代表的に採りあげて説明を行うものとする。
解析装置500は、算出した波面収差データと結像性能変化表とに基づいて、現在の各結像性能を計算し、次に、光学系PL1〜PL3の可動レンズ素子、露光光IL1、IL2の波長、ウエハWの被露光面の面位置を、仮に動かしたときの結像性能の変化を求める。そして、最も結像性能が良好となるであろうと予想される状態での可動レンズ素子の位置、露光用照明光の波長、ウエハ面位置とそのときの結像性能予測情報(レンズ素子等駆動量(調整パラメータ)、残留誤差、結像性能)を最適化結果として出力する。ここで、その結像性能は、露光装置100から取得されたレンズ素子駆動範囲と、結像性能誤差許容値とを考慮して算出される。
言い換えると、ここでは、結像性能に対する要求から、上記各種データベース情報に基づいて決定された波面収差に対する閾値を、実測された波面収差量が超えた場合に、求められる結像性能に実際の結像性能が近づくように、調整パラメータが算出される。
なお、本実施形態では、レンズ素子の駆動量に対する波面収差変化表と、波面収差に対する結像性能変化表とは、解析装置500が有しているものとしたが、これらの情報を露光装置100が有しており、解析装置500は、投影光学系PLの調整パラメータを算出する必要が生じた場合に、露光装置100から取得するようにしてもよい。
さらに、解析装置500は、露光量、同期精度、フォーカス、レンズの各制御誤差、照明条件σ、投影光学系PLのNA、パターン設計線幅、像高と、パターンの推定線幅との関係を示すテーブル(CDテーブル)を有している。このCDテーブルを参照すれば、パターン線幅を推定することができる。CDテーブルの推定線幅値は、事前に行われた露光装置100におけるテスト露光の露光結果から、実際に求められた値を採用することができる。また、
[デバイス製造処理装置群]
デバイス製造処理装置群900としては、CVD(Chemical Vapor Depositon:化学気相成長法)装置910と、エッチング装置920と、化学的機械的研磨を行いウエハを平坦化する処理を行うCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)装置930と、酸化・イオン注入装置940とが設けられている。CVD装置910は、ウエハ上に薄膜を生成する装置であり、エッチング装置920は、現像されたウエハに対しエッチングを行う装置である。また、CMP装置930は、化学機械研磨によってウエハの表面を平坦化する研磨装置であり、酸化・イオン注入装置940は、ウエハの表面に酸化膜を形成し、又はウエハ上の所定位置に不純物を注入するための装置である。また、CVD装置910、エッチング装置920、CMP装置930及び酸化・イオン注入装置940も、露光装置100などと同様に複数台設けられており、相互間でウエハを搬送可能とするための搬送経路が設けられている。デバイス製造処理装置群900には、この他にも、プロービング処理、リペア処理、ダイシング処理、パッケージング処理、ボンディング処理などを行う装置も含まれている。
[管理コントローラ]
管理コントローラ160は、露光装置100により実施される露光工程を集中的に管理するとともに、トラック200内のC/D110及びウエハ測定検査器120の管理及びそれらの連携動作の制御を行う。このようなコントローラとしては、例えば、パーソナルコンピュータを採用することができる。管理コントローラ160は、デバイス製造処理システム1000内の通信ネットワークを通じて、処理、動作の進捗状況を示す情報や、処理結果、測定・検査結果を示す情報を各装置から受信し、デバイス製造処理システム1000の製造ライン全体の状況を把握し、露光工程等が適切に行われるように、各装置の管理及び制御を行う。
[ホストシステム]
ホストシステム(以下、「ホスト」と呼ぶ)600は、デバイス製造処理システム1000全体を統括管理し、露光装置100、トラック200、ウエハ測定検査器120、デバイス製造処理装置群900を統括制御するメインホストコンピュータである。このホスト600についても、例えばパーソナルコンピュータなどを採用することができる。ホスト600と、他の装置との間は、有線又は無線の通信ネットワークを通じて接続されており、相互にデータ通信を行うことができるようになっている。このデータ通信により、ホスト600は、このシステムの統括制御を実現している。
[デバイス製造工程]
次に、デバイス製造処理システム1000における一連のプロセスの流れについて説明する。図4には、このプロセスのフローチャートが示され、図5には、この一連のデバイス製造プロセスにおける繰り返し工程に係る部分における、通信ネットワークを介して送受信されるデータの流れが示されている。このデバイス製造処理システム1000の一連のプロセスは、ホスト600及び管理コントローラ160によってスケジューリングされ管理されている。上述したようにウエハWはロット単位で処理されるが、図4、図5はともに、1枚のウエハWに対する一連の処理として示されている。実際には、ロット単位で、ウエハ毎に、図4、図5に示される処理が例えばパイプライン的に繰り返されることになる。
図4、図5に示されるように、まず、CVD装置910においてウエハW上に膜を生成し(ステップ201)、そのウエハWをC/D110に搬送し、C/D110においてそのウエハW上にレジストを塗布する(ステップ202)。次に、ウエハWを、ウエハ測定検査器120に搬送し、ウエハ測定検査器120において、ウエハWの被露光面の面形状の測定、ウエハW上の異物の検査などの事前測定検査処理を行う(ステップ203)。この測定ショットの数及び配置は、任意のものとすることができるが、例えば、図4に示されるように、ウエハ外周部の8ショットとすることができる。ウエハ測定検査器120の測定結果(すなわち測定ショットのショットフラットネス)は、露光装置100及び解析装置500に送られる。この測定結果は、露光装置100における走査露光時のフォーカス制御に用いられる。
続いて、ウエハWを露光装置100に搬送し、露光装置100にてレチクルR上の回路パターンをウエハW上に転写する(ステップ205)。このとき、露光装置100では、各ショット領域を露光する間の上記露光量、同期精度、フォーカストレースデータ、照明むらのデータをモニタリングし、内部のメモリにログデータとして記憶しておく。これにより、露光光IL1、IL2の露光量、ウエハステージWSTとレチクルステージRSTとの同期誤差、ウエハWの被露光面の最良結像面からのずれ、レチクルR1、R2のパターン形成面のZ軸方向の位置ずれ量のトレースデータが取得される。
なお、このステップ205の露光処理では、図14に示されるように、照明領域IAR1内のレチクルR1のパターン形成面と、照明領域IAR2内のレチクルR2のパターン形成面との面位置の違いや、投影光学系PLの収差などによって、露光領域IA内における最良結像面との間にずれが生じ、ウエハWの被露光面を両方の最良結像面に一致させることができない場合には、サブステージの駆動によるレチクルR1、R2のZ位置の制御や、投影光学系PLのフォーカス制御などが行われ、2つの最良結像面ができるだけ一致するように制御される。
次に、ウエハWをC/Dに搬送して、C/D110にて現像を行う(ステップ207)。その後、このレジスト像の線幅の、ウエハ測定検査器120での測定や、ウエハW上に転写された欠陥検査などの事後測定検査処理を行う(ステップ209)。測定検査器120の測定結果(線幅データ)は、解析装置500に送られる。解析装置500は、露光装置100又は測定検査器120からの情報に基づいて投影光学系PLの収差等の解析を行う(ステップ211)。図4に示されるように、解析装置500は、解析の経過、必要に応じて、ウエハ測定検査器120や露光装置100に対し、各種データの転送要求を発したり、解析結果に応じて各装置に解析情報を発する。なお、この解析装置500における解析処理及びその解析処理におけるデータの流れの詳細については後述する。また、解析装置500が各種データを取得後、露光装置100は、内部に記憶するトレースデータ等を速やかに削除するようにしてもよい。
一方、ウエハWは、ウエハ測定検査器120からエッチング装置920に搬送され、エッチング装置920においてエッチングを行い、不純物拡散、配線処理、CVD装置910にて成膜、CMP装置930にて平坦化、酸化・イオン注入装置940でのイオン注入などを必要に応じて行う(ステップ213)。そして、全工程が完了し、ウエハW上にすべてのパターンが形成されたか否かを、ホスト600において判断する(ステップ215)。この判断が否定されればステップ201に戻り、肯定されればステップ217に進む。このように、成膜・レジスト塗布〜エッチング等という一連のプロセスが工程数分繰り返し実行されることにより、ウエハW上に回路パターンが積層されていき、半導体デバイスが形成される。
繰り返し工程完了後、プロービング処理(ステップ217)、リペア処理(ステップ219)が、デバイス製造処理装置群900において実行される。このステップ217において、メモリ不良検出時は、ステップ219において、例えば、冗長回路へ置換する処理が行われる。解析装置500は、検出した線幅の異常が発生した箇所などの情報を、プロービング処理、リペア処理を行う装置に送るようにすることもできる。不図示の検査装置では、ウエハW上の線幅異常が発生した箇所については、チップ単位で、プロービング処理、リペア処理の処理対象から除外することができる。その後、ダイシング処理(ステップ221)、パッケージング処理、ボンディング処理(ステップ223)が実行され、最終的に製品チップが完成する。なお、ステップ209の事後測定検査処理は、ステップ213のエッチング後に行うようにしてもよい。この場合には、ウエハW上のエッチング像に対し線幅測定が行われるようになる。
[解析処理]
次に、解析装置500の解析処理について詳細に説明する。図6には、解析装置500における解析処理のフローチャートが示されている。図6に示されるように、まず、解析装置500は、初期設定処理を行う(ステップ301)。この初期設定処理には、例えば、上述した解析装置500の解析処理に用いられる各種データベースの作成処理などが含まれる。これらの作成処理は、上述した通りに行われるが、露光装置100において設定される可能性がある露光条件(設計上のパターン線幅、投影光学系PLのNA、露光光IL1、露光光IL2それぞれの照明σ、照明種類(変形照明など))ごとに行われる。このステップ301が行われた後、ステップ303において、ホスト600から処理開始命令がくるまで待つ。
処理開始命令がくると、解析装置500は、測定検査器120から測定ショットの各サンプル点における線幅データを、受信して記憶装置(不図示)に格納し(ステップ305)、線幅実測値データに基づいて、ウエハW上のパターン線幅が異常であるか否かを判定する(ステップ307)。ここでは、測定ショットにおける線幅の実測値と設計値との差に関する統計値を算出し、算出された統計値を閾値と比較することにより、線幅異常を検出する。このような統計値としては、線幅の平均値を採用してもよいし、線幅のばらつきを示す指標値(例えば標準偏差、標準偏差の3倍のいわゆる3σ、線幅変動の最大値、レンジなど)を採用することができる。また、平均値とばらつきを示す指標値との和(例えば線幅の平均値+3σ)を採用することができる。
この閾値を用いた判定は、実測線幅と設計上の線幅との差の統計値を、予め定められた閾値と比較することによって行われる。ここで、線幅が正常であると判断された場合には、解析装置500は、解析情報(図5参照)として、正常であった旨の判定結果を、デバイス製造処理システム1000内の各種装置に送り、ステップ303に戻って次の処理開始指令がくるのを待つ。また、線幅が異常であると判定された場合には、ステップ308に進む。ステップ308では、線幅が異常であると判定されたレチクルを特定する。ここでは、線幅が異常が検出されたパターンの転写元のレチクルがレチクルR1であるのか、レチクルR2であるのかを特定する。両方のレチクルに対応するパターン異常が検出されたものとする。
ステップ309では、解析装置500は、フォーカストレースデータ(ウエハWの被露光面と最良結像面とのずれ、レチクルR1、R2のパターン形成面の面位置の目標値からのずれ)、同期精度トレースデータ、露光光IL1、IL2の露光量トレースデータ、及びウエハWの面形状データ、光学系PL1〜PL3におけるレンズ制御誤差のデータ、制御系パラメータの設定値などのログデータ等を露光装置100から収集し、それらのデータに基づいて、フォーカスの制御誤差の統計値であるZMEAN、ZMSD、同期精度誤差(移動標準偏差)、露光量誤差(移動平均)を算出し、CDテーブル群を参照し、同期精度誤差及び露光量誤差、ZMEAN、ZMSDとに対応する線幅の推定値を算出する。解析装置500は、算出した線幅の推定値を、記憶装置(不図示)に格納する。
次のステップ311では、線幅の推定値と実測値の傾向が一致するか否かを判定し、それらの整合性をチェックする。ここで、ステップ311の比較結果が、実測値と推定値とがほぼ一致しているというものであった場合には、解析装置500のステップ311における判断が肯定され、線幅異常の原因が露光装置100であるものと判断して、ステップ313に進むようになる。
ステップ313では、解析装置500は、上記ステップ309で算出した露光量/同期精度/フォーカス/レンズ誤差の各制御誤差が規格内であるかを判定する。ここで、露光量、フォーカス、レンズ誤差の各制御誤差は、露光光IL1と露光光IL2とで個別に判定する。フォーカスの制御誤差については、ウエハWの被露光面のデフォーカスに対し、レチクルR1のパターン形成面の位置ずれを加味して、露光光IL1に対応するフォーカスの制御誤差を判定し、ウエハWの被露光面のデフォーカスに対し、レチクルR2のパターン形成面の位置ずれを加味して、露光光IL2に対応するフォーカスの制御誤差を判定する。また、レンズ誤差の制御誤差は、露光光IL1を基板上に導く光学系PL1、PL3、露光光IL2と基板上に導く光学系PL2、PL3とで個別に判定する。
ステップ313において、フォーカスに関する統計値が規格をはずれている場合には、線幅異常の要因としてフォーカス制御又はショットフラットネスが含まれていると判定する。また、同期誤差に関する統計値が規格外である場合には、線幅異常の要因として同期誤差が含まれていると判定する。また、露光量に関する統計値が規格外である場合には、線幅異常の要因として露光量誤差が含まれていると判定する。これらのうち少なくとも1つの統計値が規格(露光装置のスペック)外である場合には、判断は肯定され、ステップ315に進む。ステップ315では、解析装置500において、線幅異常の要因として特定された制御誤差に関連する調整系パラメータ及び制御系パラメータを選定し、選定されたパラメータの最適化を行う。最適化されたパラメータは、露光装置100に送られる。
解析装置500におけるパラメータの最適化では、CDテーブル群を参照し、いろいろな露光量/同期精度/フォーカス/レンズの各制御誤差の組合せで、シミュレーションを実行することにより、各制御誤差を0に近づけるように制御系パラメータを調整すればよい。各制御系パラメータが、露光量/同期精度/フォーカス/レンズの各制御誤差との関係は予め既知であるので、各制御誤差を0に近づけるための制御系パラメータの設定値を割り出すことができる。
一方、ステップ313で、各制御誤差の統計値がすべて規格内である場合には、判断が否定され、ステップ303に戻る。なお、ここで、後述するステップ321、323における投影光学系PLの調整、すなわちレンズ最適化を行うようにしてもよい。
一方、ステップ311において、比較結果が、一致しないと判定された場合には、線幅異常の原因は、露光処理の制御誤差以外(成膜・レジスト処理、事前測定処理、現像処理、事後測定処理など)にあるとみなすことができる。判断は否定され、ステップ317に進む。ステップ317では、解析装置500は、C/D110、ウエハ測定検査器120などの異常であるか否かを、C/D110からのログデータ、ウエハ測定検査器120からのログデータなどに基づいて判断する。例えば、線幅異常と相関性があると考えられるC/D110における塗布ムラがあった場合、測定検査器120における測定状態が悪かったような場合には、この判断が肯定される。この判断が肯定されれば、ステップ319に進み、線幅異常の原因となって処理装置の調整を行う。
一方、ログデータを参照して、C/D110やウエハ測定検査器120にも問題がなく、ステップ317で判断が否定された場合には、ステップ321に進む。ステップ321では、投影光学系PLを構成する光学系PL1〜PL3のうち、各露光光IL1、IL2をそれぞれ光学系PL3に導く個別の光学系PL1、PL2の最適化(レンズ最適化)を行う。
図7には、このステップ321における処理の一例が示されている。この処理は、解析装置500からのホスト600へのテスト露光処理要求により開始される。図4、図5に示される一連のロット処理を管理するホスト600は、この要求を受けて、ロット処理を完全に停止させることなく、ロット処理を一旦停止し、その処理に割り込むような形で、基板処理装置(100、110、120)に、収差測定処理の開始指令を発する。すなわち、図7に示される処理は、図4、図5のロット処理に対する割り込み処理であるとみなすこともできる。この割り込みのタイミングは、任意のタイミングとすることができるが、次のウエハに対する処理が開始される際に、割り込むようにすればよい。また、この場合、ホスト600は、ロット処理の現在の状態を復元できるように、その復元に必要な情報を一時退避しておく必要がある。
図7に示されるように、ステップ401では、レチクル交換動作により、テストパターンが形成されたテストレチクルを、レチクルステージRST上にロードする。ここでは、
図6のステップ308において、異常が発生したレチクルと、テストレチクルとの交換が行われるが、ここでは、レチクルR1、R2ともにテストレチクルに交換されるものとする。
[テストパターン]
図8には、テストレチクルRT1の一例が示されている。このテストレチクルRT1は、レチクルR1と交換される。このテストパターンでは、照明領域IAR1内に対応する位置に透光部PAが設けられている。この透光部には、33点の測定点の配列が設けられており、その測定点には収差測定用マークMP1がそれぞれ配置されている。この収差測定用マークMP1については後述する。なお、レチクルR2と交換させるテストレチクルRT2も、テストレチクルRT1と同様の構成となっている。テストレチクルRT1とテストレチクルRT2との各測定点は一致する。
図7に戻り、C/D110では、テストパターンが転写される測定用のテストウエハ上にレジストを塗布する(ステップ403)。テストウエハは、ウエハ測定検査器120に搬送され、そこで、ショットフラットネスが測定される(ステップ405)。そして、テストウエハは、露光装置100に搬送され、そこで、テスト露光が行われる(ステップ407)。ここでの露光は、投影光学系PLの収差測定のために行われるものであるため、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとを静止させて行うようにしてもよい。ここでのウエハW上のテストパターンの転写位置は、事前測定のショットフラットネスの測定結果で、最もフラットな場所が選択されるのが望ましい。
収差測定マークMP1としては、図9に示されるように、2つのボックスインボックスマークM1、M2が一定間隔で並んで配置されたものを採用することができる。この配置方向は、XY平面内であれば、特に制限はない。
一方、レチクルR2と交換されるテストパターンが形成されたテストレチクルRT2上の33点の測定点にも、収差測定用マークMP2がそれぞれ配置されている。収差測定マークMP2としては、図10に示されるように、2つのボックスインボックスマークM1、M2が一定間隔で並んで配置されたものを採用することができる。
図9、図10を総合するとわかるように、テストレチクルRT1の各測定点の収差測定マークMP1と、テストレチクルRT2の各測定点の収差測定マークMP2とは、ボックスインボックスマークM1、M2の間隔が同じで、それらの配置が左右逆となっている。したがって、2つのテストレチクルRT1、RT2とで二重露光を行うと、テストウエハ上には、2つのボックスインボックスマークM1、M2が互いに重ね合わせられるように転写形成されるようになる。
図11には、ウエハW上における2つのボックスインボックスマークM1、M2の二重転写の結果の一例が示されている。図11に示されるように、この2つのボックスインボックスマークM1、M2の重ね合わせ転写により、テストウエハ上には、外の太いボックスマーク(以下、外側マークという)と、内側の細い数本のボックスマーク(以下、内側マークという)とが転写形成されることになる。投影光学系PLに、前述したようなコマ収差に代表される奇関数収差(ツェルニケ多項式の動径関数が奇関数である収差)が存在していると、図11に示される転写パターンにおいては、外側マークと内側マークとの相対位置に位置ずれが生じるようになる。本実施形態では、後述するように、ウエハ測定検査器120において、この位置ずれ量を測定し、最終的には、解析装置500において、投影光学系PLの奇関数収差の成分が算出されることになる。
テストレチクルRT1、RT2の各測定点には、他にも、偶関数収差(ツェルニケ多項式の動径関数が偶関数である収差)測定用の2つのマークが設けられている。この2つのマークは、その形状及び配置を見ると、図9、図10に示される収差測定マークMP1、MP2と同じであるが、マークM2の断面が異なっている。図12には、このマークM2の断面(図9、図10のA−A’の断面の一部)が示されている。図12の断面に示されるように、この回折格子は、遮光部、透過部、位相掘り込み部が繰り返し並んだ構造となっている。透過部と位相掘り込み部との幅の比は、格子の配列方向に対して、1対1となっており、遮光部とそれらとの比は、n(nは実数):1:1となっている。掘り込み位相角θを360°/(n+2)+θ=180°を満たすようにすると、+1次回折光と−1次回折光のいずれか一方は消失する。このような回折格子をPSGとも呼ぶ。特に、線幅比2:1:1と掘り込み位相角90°のPSGは、転写されたレジストパターンの特性やマスク設計・構造の面から最も適している。テストレチクル上に配置したPSGは、0次光と一方の1次光とによる2光束干渉を実現し、結果的に、結像面に、主光線から傾いた定在波を形成する。したがって、PSGの像の転写位置は、ウエハWの被露光面の高さに応じて横ずれする特徴がある。この傾いた定在波は、照明光学系の誤差や収差の有無によらず、必ず直線状になることから、フォーカスずれと横ずれの関係は比例関係となる。
なお、回折格子状のマークの段差方向(すなわち段差によって隔てられた凸部と凹部との並び順によって定まる方向)は、図13に示されるような方向(例えば矢印の向きが凹部)に規定されている。このような場合に、投影光学系PLに偶関数収差が存在していると、外側マークの転写位置に対し、内側マークの転写位置が横ずれが発生するようになる。後述するように、ウエハ測定検査器120において、この位置ずれ量を測定し、最終的に、投影光学系PLの奇関数収差の成分を測定することになる。
なお、この回折格子状のマークのピッチや、ラインパターン、又は露光装置100における露光条件は、実際のプロセスで用いられるレチクルのパターンピッチや、線幅、露光条件に則したものとするのが、結像性能の感度の観点からすれば望ましいといえる。
図7に戻り、テスト露光が行われたテストウエハは、C/D110に送られ、現像される(ステップ409)。そして、テストウエハは、ウエハ測定検査器120に搬送され、ウエハ測定検査器120において、上記外側マークと、内側マークとの相対位置ずれ量が測定される(ステップ411)。この測定結果は、解析装置500に送られ、不図示の記憶装置に投影光学系PLの波面収差に関する測定データとして格納される。また、解析装置500は、露光装置100に対し、各種データの転送要求を行う。このデータとしては、投影光学系PLの光学系PL1〜PL3における可動レンズ素子の現在の位置や、可動レンズ素子の駆動範囲などのデータがある。解析装置500は、この測定結果に基づいて、ツェルニケ多項式第1項から第37項までのうち、奇関数収差の連立方程式を作成し、その連立方程式から各項の係数の大きさを求める。すなわち、観測されるマークの相対位置ずれ量には、低次の奇関数収差と高次の奇関数収差の影響、低次の偶関数収差と高次の偶関数収差の影響が含まれるため、それらをツェルニケ多項式の各項の値に分離する必要があるのである。なお、上記連立方程式の数を増やすためには、ピッチが異なる複数の収差測定用マークを測定点に用意するか、複数の異なる露光条件の下で、テスト露光を行って、測定データ数を増やす必要がある。これにより、ツェルニケ多項式第1項から第37項までの係数、すなわち波面収差データが求まる。
そして、ステップ413では、解析装置500は、この波面収差データと、露光装置100から取得した各種データ、現在の光学系PL1〜PL3のレンズ素子の位置や、レンズ素子駆動範囲と、レンズ素子の駆動量に対する波面収差変化表と、波面収差に対する結像性能変化表と、結像性能誤差許容値とが入力され、それらを用いて、ウエハ測定検査器120の測定結果から算出された波面収差データに基づいて、光学系PL3を除く、光学系PL1、光学系PL2の可動レンズ素子の駆動量や露光波長の調整値、ウエハステージWSTの姿勢の調整値と、残留誤差と、駆動後の結像性能とを不図示の記憶装置に設定する。なお、これらの算出方法については、国際公開第2003/065428号パンフレットに開示されているので、ここでは詳細な説明を省略する。
ここで、露光光IL1に関する結像性能誤差許容値は、レチクルR1のデバイスパターンに要求される結像性能に応じて決定され、露光光IL2に関する結像性能誤差許容値は、レチクルR2のデバイスパターンに要求される結像性能に応じて決定される。これにより、光学系PL1の調整量は、レチクルR1のデバイスパターンに要求される解像度に応じたものとなり、光学系PL2の調整量は、レチクルR2のデバイスパターンに要求される解像度に応じたものとなる。すなわち、このステップ321では、レチクルR1のデバイスパターンに要求される解像性能を満たすレベルまで光学系PL1を調整するとともに、レチクルR2のデバイスパターンに要求される解像性能を満たすレベルまで光学系PL2を調整し、光学系PL1及びPL3の残留収差と、光学系PL2及びPL3の残留収差とがほぼ同じとなるようにするのが望ましい。
算出された投影光学系PLの光学系PL1、PL2の可動レンズ素子の調整量等のデータは、露光装置100に送られることになる。露光装置100の主制御装置20は、算出された調整パラメータを設定する。これにより、投影光学系PLの光学系PL1、PL2の可動レンズ素子等が駆動される。
図6に戻り、次のステップ323では、投影光学系PLを構成する光学系PL1〜PL3のうち、共通の光学系PL3の調整を行う。この処理は、図7のステップ413の処理内容が異なる他は、ステップ321の処理とほぼ同じ処理内容となる。
この時点では、光学系PL1、PL2が調整されており、投影光学系PLの収差量は、その調整の残差成分を残すのみとなっている。この残差成分は微小なため、露光光IL1に対しても、露光光IL2に対してもほぼ同じ大きさの成分となる。ステップ323では、この残差成分を、共通の光学系PL3の調整により低減する。そこで、ステップ413では、解析装置500は、この波面収差データと、露光装置100から取得した各種データ、現在の光学系PL1〜PL3のレンズ素子の位置や、レンズ素子駆動範囲と、レンズ素子の駆動量に対する波面収差変化表と、波面収差に対する結像性能変化表と、結像性能誤差許容値とを入力し、それらを用いて、測定検査器120の測定結果から算出された波面収差データに基づいて、光学系PL3の可動レンズ素子の駆動量や露光波長の調整値、ウエハステージWSTの姿勢の調整値と、残留誤差と、駆動後の結像性能とを不図示の記憶装置に設定する。
算出された投影光学系PLの光学系PL3の可動レンズ素子の調整量等のデータは、露光装置100に送られることになる。露光装置100の主制御装置20は、算出された調整パラメータを設定する。これにより、投影光学系PLの光学系PL3の可動レンズ素子等が駆動される。
なお、投影光学系PLの波面収差を測定するテストレチクルRT1、RT2は、上述したようなものには限られない。また、投影光学系PLの光学系PL1〜PL3の波面収差の測定方法としては、様々な方法を採用することができ、本発明は、その方法には限定されない。
なお、ステップ323終了後、再び、ステップ321又は323を再度行い、投影光学系PLの収差をさらに0に追い込むようにしてもよい。また、ステップ323の共通の光学系PL3の調整を、ステップ321の光学系PL1、PL2の調整よりも先に行うようにしてもよい。また、ステップ321で、投影光学系PLの収差が、要求される結像性能を満たしたと判断した場合には、ステップ323を必ずしも行う必要はない。
ステップ315、319、323実行後、解析装置500は、ステップ303に戻り、再び、処理開始指令が来るまで待つ。ホスト600は、中断していた、ロット処理を再開する。
なお、上述した解析装置500における解析処理は、他の装置での処理に対して独立であり、デバイス製造のスループットには、ほとんど影響を与えない。また、ステップ321、323におけるレンズ最適化処理も、通常のロット処理に対する割り込み処理として行われ、その割り込み処理も、レンズ調整におけるテスト露光も、レチクルを交換するだけで、一連のプロセスウエハの工程と同様に行なうことができるので、ロット処理を完全に停止させる必要がない。したがって、この処理によれば、投影光学系PLを迅速に調整することが可能である。
なお、CDテーブルでのパターン線幅の推定条件として、露光装置100以外のC/D110におけるレジスト処理、現像処理、エッチング処理などのプロセス条件を加えるようにしてもよい。
なお、本実施形態では、投影光学系PLの収差を測定する際に、レチクルR1、R2を両方ともテストレチクルRT1、RT2と交換したが、ステップ308で特定されたレチクルのみをテストレチクルと交換して、収差測定を行うようにしてもよい。この場合には、図7のステップ407では、テストレチクルへの交換が行われた方の露光光のみを照射してテスト露光を行う。この場合には、テストレチクル上のテストパターンをテストウエハに1回転写した後、上記2つのマークM1、M2(図9、図10参照)の間隔だけウエハステージWSTをずらして、さらに1回転写を行う。すると、テストウエハ上には、2つのマークM1、M2が重ね合わせられるように転写形成され、本実施形態と同様に、収差測定が可能となる。
また、本実施形態では、ウエハ毎に予め選択された計測ショットのみについて線幅の測定を行ったが、異常の発生頻度に応じて、線幅測定の頻度を増減させるようにしてもよい。例えば、線幅異常が確認される計測ショットの数が増加した場合には、ウエハW内の計測ショットの数を増やすことができ、線幅異常が確認される計測ショットの数が減少した場合には、計測ショット数を減らしていくことも可能である。また、線幅異常の測定は、全てのウエハで行わなくてもよく、数枚置きであってもよい。例えば、線幅の異常が、所定枚数連続して発生しなければ、線幅測定をウエハ3枚置きとし、その後も連続して線幅の異常が発生しなければ、線幅測定回数をウエハ10枚置きとし、最終的にはロット先頭のウエハWのみ線幅を測定するようにすればよい。もっとも、線幅の異常が新たに発生した場合には、その線幅の測定頻度を増やすようにする必要があるのは勿論である。また、過去のプロセスの運用履歴に基づいて、パターン異常の発生確率の高いウエハ(例えば、ロット先頭のウエハで、パターン異常が発生しやすい場合には、ロット先頭のウエハなど)については、必ず、線幅異常検出を行うようにしてもよい。
また、本実施形態では、ロット処理中に、パターンの線幅異常を検出した場合に、投影光学系PLの収差を測定し、投影光学系PLを調整したが、投影光学系PLの収差は、経時変化、大気圧変動、露光光IL1、IL2の照射熱などによって変動し、照明条件やレチクル上のパターンが変更された時に変動するため、パターン線幅の異常の発生の有無にかかわらず、それらの収差の変動要因を考慮したタイミング(例えば、1ヶ月ごと)で、図7に示される収差測定を行うようにしてもよい。また、露光装置100の運用前の装置立ち上げ時における投影光学系の収差調整の際に、図7の処理を行うようにしてもよい。
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、露光光IL1と露光光IL2とを導く光学系PL3を備え、両露光光IL1、IL2により多重露光が可能な露光装置100の光学特性情報の測定検査結果を得る。この測定検査結果は、露光装置100の光学特性を調整するための有用な情報である。
また、本実施形態に係る露光装置100は、露光光IL1と露光光IL2とでウエハWを多重露光する露光装置である。このような露光装置100は、一度に2つのパターンを多重に露光することができるので、スループットに有利である。なお、この多重露光は、ウエハW上の全てのショット領域に対して行われる必要はなく、少なくとも一部に対して行われるようにしても、二重露光を非同時に行うよりも露光時間は短縮されるので、スループットに有利である。
また、本実施形態では、露光装置100で露光されたウエハWを測定検査した結果に基づいて、露光装置100の光学特性情報を生成する。このようにすれば、実際の露光結果に基づいて、露光装置100の正確な光学特性情報を取得することができる。
また、本実施形態によれば、露光装置100で露光されたウエハWを測定検査した結果に基づいて、投影光学系PL以外に起因する成分を差し引いて露光装置100の光学特性情報を生成する。このようにすれば、ウエハWに対する実際の露光結果から、投影光学系PL以外のものに起因する成分が取り除かれた正確な光学特性情報を取得することができる。
また、本実施形態に係る露光装置100は、ウエハWを保持してそのウエハWの位置を制御するウエハステージWST等を備えている。したがって、通常の露光結果には、ウエハWステージの制御に起因する成分も含まれるようになる。本実施形態では、図7のステップ407において、ウエハステージWSTとレチクルステージRSTとを静止させた状態でテスト露光を行うので、その成分が露光結果に入らない状態で、投影光学系PLの正確な光学特性情報を取得することができる。
また、本実施形態に係る露光装置100は、レチクルR1の位置を制御するレチクルステージRST(レチクルR1を保持するサブステージ)と、レチクルR2の位置を制御するレチクルステージRST(レチクルR2を保持するサブステージ)とを備えている。そして、光学系PL3は、第1パターンを介した露光光IL1と第2パターンを介した露光光IL2とをウエハW上へ導いている。したがって、通常の露光結果には、2つのサブステージの制御に起因する成分も含まれるようになる。本実施形態では、上述したように、図7のステップ407において、サブステージも静止させた状態でテスト露光を行うので、その成分が露光結果に入らない状態で、投影光学系PLの正確な光学特性情報を取得することができる。
また、本実施形態に係る露光装置100は、露光光IL1の露光量を制御する露光量制御装置EC1と、露光光IL2の露光量を制御する露光量制御装置EC2とを備えている。したがって、通常の露光結果には、露光量制御装置EC1又は露光量制御装置EC2の制御に起因する成分も含まれるようになる。本実施形態では、上述したように、図7のステップ407において、サブステージも静止させた状態で、その成分が露光結果に入らない状態でテスト露光を行うので、その成分が平均化され露光結果に入らない状態で、投影光学系PLの正確な光学特性情報を取得することができる。
なお、本実施形態では、露光光IL1の照射に関する第1光学特性情報(すなわち光学系PL1、PL3の光学特性情報)と、露光光IL2の照射に関する第2光学特性情報(すなわち光学系PL2、PL3の光学特性情報)とを別に求める。
本実施形態によれば、露光光IL1と露光光IL2とでほぼ同時にテストウエハを露光し、露光されたテストウエハを測定検査した結果に基づいて、露光光IL1の照射に関する第1光学特性情報を求めるとともに、露光光IL2の照射に関する第2光学特性情報を第1光学特性情報とは別に求める。
すなわち、本実施形態によれば、第1、第2光学特性情報は、ボックスインボックスマークM1を介した露光光でテストウエハ上に形成されるマークにボックスインボックスマークM2を介した露光光を照射してテストウエハ上に形成される測定検査用マークを用いて測定検査される。
そして、ボックスインボックスマークM1とボックスインボックスマークM2との両方を備えたテストレチクルRT1を介して露光光IL1をテストウエハ上に照射するとほぼ同時に、ボックスインボックスM1とボックスインボックスマークM2との両方を備えたテストレチクルRT2を介して露光光IL2をテストウエハ上に照射する。
そして、ボックスインボックスマークM1を介して露光光IL1でテストウエハ上に形成される外側マークにボックスインボックスマークM2を介して露光光IL2を照射してテストウエハ上に形成された内側マークを用いて、光学系PL2に関する光学特性情報を求めるとともに、ボックスインボックスマークM1を介して露光光IL2でテストウエハ上に形成される外側マークにボックスインボックスマークM2を介して露光光IL1を照射して形成された内側マークを用いて、光学系PL1に関する光学特性情報を求める。
このようにすれば、光学系PL1の光学特性情報と、光学系PL2の光学特性情報とを一度に求めることが可能となり、スループットに有利となるとともに、実際のプロセスウエハの露光に測した状態で投影光学系PLの収差測定が可能となるので、実際の結像特性に合致した投影光学系PLの収差調整が可能となる。
しかしながら、レチクルR1をテストレチクルRT1と交換し、露光光IL2を照射せず、露光光IL1のみでテストウエハを露光し、露光光IL1で露光したテストウエハを測定検査した結果に基づいて、露光光IL1の照射に関する光学系PL1、PL3の光学特性を求めるとともに、レチクルR2とテストレチクルRT2と交換し、露光光IL1を照射せず、露光光IL2のみでテストウエハを露光し、露光光IL2で露光したテストウエハを測定検査した結果に基づいて、露光光IL2の照射に関する光学系PL2、PL3の光学特性を求めるようにしてもよい。
また、本実施形態によれば、露光装置100とは別に設けられたウエハ測定検査器120で露光装置100の光学特性を測定検査する。このようにすれば、露光処理と測定検査処理とを並行して行うことができるので、スループットに有利である。
また、本実施形態によれば、露光装置100とは別に設けられたウエハ測定検査器120で測定検査し、ウエハ測定検査器120で測定検査した結果を通信部を介して露光装置100へ伝達する。このように、露光装置と測定検査器120との間の連携動作により、露光装置の光学特性を、効率良く、かつ、適切に調整することが可能となる。
また、ウエハ測定検査器120は、本実施形態に係る測定検査方法を用いて露光装置100の光学特性情報を測定検査することを特徴とする測定検査装置である。このウエハ測定検査器120を用いることにより、露光光IL1と露光光IL2とにより多重露光が可能な露光装置100の投影光学系PLの光学特性情報の測定検査結果を得て、その結果に基づいて投影光学系PLを調整することができる。
本実施形態に係る露光装置100は、露光光IL1を導く光学系PL1と、露光光IL2を導く光学系PL2と、光学系PL1で導かれた露光光IL1をウエハW上へ導くとともに、光学系PL2で導かれた露光光IL2をウエハW上へ導く光学系PL3とを備える露光装置であり、露光光IL1と露光光IL2とでウエハWを露光する露光装置である。そして、露光装置100は、ウエハ測定検査器120の測定検査処理の測定検査結果から検出された光学特性情報に基づいて、露光光IL1の照射に関する第1光学特性(光学系PL1、PL3の総合的な光学特性)と、露光光IL2の照射に関する第2光学特性(光学系PL2、PL3の総合的な光学特性)との少なくとも一方を制御しつつ露光を行う。
本実施形態に係る露光装置によれば、測定検査処理によって検出された光学特性情報に基づいて露光光IL1の照射に関する第1光学特性と、露光光IL2の照射に関する第2光学特性との少なくとも一方を制御しつつ露光を行うので、高精度かつ高スループットな多重露光が可能となる。
本実施形態は、さらに観点を変えると、露光装置100を用いてデバイスを製造するデバイス製造処理装置であるとみなすことができる。かかる場合には、露光装置100を用いた、高精度かつ高スループットな多重露光が可能となり、デバイス生産の歩留まりを向上させることができる。
なお、本実施形態では、解析装置500と、ウエハ測定検査器120とを個別に備えるようにしたが、両者は一体であってもよい。すなわち、ウエハ測定検査器120が、解析装置500の機能を有していもよい。
また、本実施形態では、露光光IL1と、露光光IL2とのウエハWの被露光面上の照射領域を露光領域IAとし、重なるようにしたが、露光光IL1、露光光IL2の照射領域は別々であっても構わない。
なお、本実施形態では、透過型のレチクルを用いたが、反射型のレチクルであっても構わない。また、本実施形態では、同時に2枚のレチクルを使用したが、2つのパターンが形成された1枚のレチクルを用いるようにしてもよい。
また、本実施形態に係る露光装置100は、パターンの同時二重露光により、デバイスパターンをウエハW上に転写したが、パターンを同時に3重露光、4重露光、が可能な露光装置にも本発明を適用することができるのは勿論である。
また、本実施形態に係る露光装置100は、複数のパターンを同時に露光するいわゆる多重露光を行う露光装置を用いたが、レチクルR1、R2を随時交換して多重露光を行う露光装置にも本発明を採用することができるのは勿論である。
また、上記実施形態では、真空吸着方式のレチクルホルダRHを使用したが、本発明は、静電吸着方式又はその他の方式のレチクルホルダにも適用することができる。
さらに、特開平11−135400号公報や特開2000−164504号公報に開示されるように、ウエハWを保持するウエハステージと基準マークが形成された基準部材や各種の光電センサを搭載した測定ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。
なお、上記実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置について説明したが、本発明は、これらの投影露光装置の他、ステップ・アンド・リピート方式やプロキシミティ方式の露光装置など他の露光装置にも適用できることはいうまでもない。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明を好適に適用することができる。これに代表されるように、各種装置についても、その種類には限定されない。
また、例えば国際公開WO98/24115号、WO98/40791号に開示されるような、ウエハステージを2基備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。また、例えば国際公開WO99/49504号に開示される液浸法を用いる露光装置にも本発明を適用することができるのは勿論である。この場合、本発明は、特開平6−124873号公報、特開平10−303114号公報、米国特許第5,825,043号明細書などに開示されているような露光対象の基板の被露光面全体が液体中に浸かっている状態で露光を行う液浸露光装置にも適用可能である。
また、本発明は、半導体製造工程に限らず、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造工程にも適用可能である。また、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する工程、薄膜磁気ヘッドの製造工程、及び撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、有機EL、DNAチップなどの製造工程の他、すべてのデバイス製造工程に本発明を適用することができるのは勿論である。
また、上記実施形態では、解析装置500を、例えばPCとした。すなわち解析装置500における解析処理は、解析プログラムが、PCで実行されることにより実現されている。この解析プログラムは、上述したようにメディアを介してPCにインストール可能となっていてもよいし、インターネットなどを通じてPCにダウンロード可能となっていてもよい。また、解析装置500がハードウエアで構成されていても構わないのは勿論である。さらに、解析装置500の機能が、ウエハ測定検査器120、露光装置110、C/D110、またはホスト600などに含まれていてもよいのは勿論である。
10…照明系、20…主制御装置、100…露光装置、110…C/D、160…管理コントローラ、200…トラック、500…解析装置、600…ホストシステム、900…デバイス製造処理装置群、1000…デバイス製造処理システム、EC1,EC2…露光量制御系、IA…露光領域、IAR1、IAR2…照明領域、IL1、IL2…露光光、LC…レンズ制御系、MP1…収差測定マーク、PL…投影光学系、PL1、PL2、PL3…光学系、R1、R2…レチクル、RH…レチクルホルダ、RST…レチクルステージ、RT1、RT2…テストレチクル、SA…遮光帯、SC…ステージ制御系、W…ウエハ、WST…ウエハステージ。