上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳述する。
図1は本発明にかかる床材の基本構成を図解的に示す層構成図、図2は本発明にかかる床材用化粧シートの第1実施形態を図解的に示す層構成図、図3は本発明にかかる床材用化粧シートの第2実施形態を図解的に示す層構成図であり、図中の1は床材、2は床材用化粧シート、3,3’は接着剤層、4は被着材、5,5’,5”はプライマー層、6は凹凸模様、7はワイピングインキ、8は絵柄印刷層、8’はベタ柄印刷層、20は表面保護層、21は合成樹脂製透明シート、21’は合成樹脂製着色シートをそれぞれ示す。
図1は本発明にかかる床材の基本構成を図解的に示す層構成図であって、床材1は被着材4上に、最表面に繊維状フィラーを含有した表面保護層20を備えた床材用化粧シート2を前記表面保護層20が最表面層となるように接着剤層3を介して積層したものである。なお、図1において図示しないが、床材用化粧シート2には一般的に前記表面保護層20側から見ることができる印刷層(図2、3参照)が設けられているものである。
前記床材用化粧シート2については後述するとして、先に前記接着剤層3と前記被着材4について説明する。まず、前記被着材4としては、特に限定するものではなく、たとえば、木質、金属、セラミック、プラスチックス、ガラス等を挙げることができ、この中でも特に木質が好ましく、たとえば、杉、檜、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)等を挙げることができる。
また、前記接着剤層3としては、ポリオール成分とイソシアネート成分からなる2液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて周知のドライラミネーション法で形成すればよい。前記ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等を挙げることができ、イソシアネート成分としては、TDI、MDI、HDI、PIDI、XDI等のジイソシアネートおよびこれらを出発原料とする変性体を挙げることができるし、また、塗布量や作業性および作業環境を考慮すると、コスト高とはなるものの湿気硬化型ホットメルト接着剤を適用してもよいものである。
前記接着剤層3の塗布量としては、固形分として概ね35〜65g/m2、好ましくは45〜55g/m2である。接着剤の塗布面は、前記被着材4の面であっても、前記床材用化粧シート2の面であってもよいものである。
次に、表面保護層20を有する床材用化粧シート2について説明する。図2は本発明にかかる床材用化粧シートの第1実施形態を図解的に示す層構成図であって、床材用化粧シート2は合成樹脂製基材シートとしての合成樹脂製透明シート21の一方の面にエンボス加工を施して凹凸模様6を設け、その上からワイピング処理を施して前記凹凸模様6の凹部内にワイピングインキ7を充填した後に、表出面全面にプライマー層5を設け、該プライマー層上に硬化型樹脂からなる表面保護層20を形成すると共に前記透明基材シート21の他方の面にプライマー層5’を介して絵柄印刷層8、ベタ柄印刷層8’を順に印刷形成したものである。この床材用化粧シート2は前記ベタ柄印刷層8’と前記被着材4とが前記接着剤層3(図1参照)を介して積層されて床材1となる。また、図示はしないが、合成樹脂製透明シート21の一方面にプライマー層5を介して硬化型樹脂からなる表面保護層20を形成した後にエンボス加工を施して凹凸模様6を設ける場合もある。
図3は本発明にかかる床材用化粧シートの第2実施形態を図解的に示す層構成図であって、床材用化粧シート2は合成樹脂製基材シートとしての合成樹脂製着色シート21’の少なくとも一方の面にプライマー層5”を設け、該プライマー層5”上にベタ柄印刷層8’、絵柄印刷層8を順に印刷形成し、更に前記絵柄印刷層8側の面全面に前記接着剤層3で説明した、ポリオール成分とイソシアネート成分からなる2液硬化型ポリウレタン系接着剤で形成した接着剤層3’を介して合成樹脂製透明シート21が積層され、該合成樹脂製透明シート21の表面にエンボス加工を施して凹凸模様6を設け、その後に、図2に示したと同様に、凹凸模様6の上からワイピング処理を施して前記凹凸模様6の凹部内にワイピングインキ7を充填し、さらに表面にプライマー層5を設け、該プライマー層5上に硬化型樹脂からなる表面保護層20を形成したものである。この床材用化粧シート2は前記合成樹脂製シート21’と前記被着材4とが前記接着剤層3(図1参照)を介して積層されて床材1となる。また、図示はしないが、合成樹脂製透明シート21の一方面にプライマー層5を介して硬化型樹脂からなる表面保護層20を形成した後にエンボス加工を施して凹凸模様6を設ける場合もある。なお、図2、3に示した床材用化粧シート2は、エンボス加工とワイピング処理とを施した実施態様を示したが、これらは必要に応じて必要なものを設ければよいものであり、また、図2、3に示した床材用化粧シート2は、前記絵柄印刷層8と前記ベタ柄印刷層8’の両印刷層を設けた構成を示したが、いずれか一方であってもよいものであり、また、前記合成樹脂製透明シート21は絵柄印刷層8、ベタ柄印刷層8’が前記合成樹脂製透明シート21を通して見ることができればよいのであって、透明であっても半透明であっても、また、着色された透明、半透明であってもよいものであり、また、前記合成樹脂製着色シート21’は透明あるいは半透明の着色であって、隠蔽のある着色であってもよいし、また、未着色であってもよいものである。
次に、前記床材用化粧シート2を構成する諸材料について説明する。まず、前記合成樹脂製基材シートとしての前記合成樹脂製透明シート21および前記合成樹脂製着色シート21’としては、加工適性に優れ、燃焼時に有害なガスを発生しないことなどから、飽和ポリエステル樹脂や低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、エチレンαオレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、あるいは、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂を挙げることができるが、比較的安価であることを考慮すると前記オレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。前記合成樹脂製透明シート21および前記合成樹脂製着色シート21’は未延伸の状態、あるいは、一軸ないし二軸方向に延伸した状態のいずれであってもよいものであり、厚さとしては概ね60〜300μm程度である。また、これらのシートは必要に応じて必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の周知の易接着処理を施してもよいものである。
また、前記絵柄印刷層8および前記ベタ柄印刷層8’としては、グラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷法でインキを用いて形成することができる。前記絵柄印刷層8としては、たとえば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄であり、前記ベタ柄印刷層8’としては隠蔽性を有する着色インキでベタ印刷したものである。
また、前記絵柄印刷層8および前記ベタ柄印刷層8’を形成するインキとしては、ビヒクルとして塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールとからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂等を1種ないし2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができ、環境問題を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合した非塩素系のビヒクルが適当であり、より好ましくはポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合したものである。また、前記ワイピングインキ7についても、上記したインキを用いればよいものである。
次に、前記表面保護層20について説明する。この表面保護層20は床材用化粧シート2に要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐汚染性、耐水性、耐候性等の表面物性を付与するために設けられるものであり、この表面保護層20を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂ないし電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当であるが、より好ましくは表面硬度が硬く、生産性に優れるなどから電離放射線硬化型樹脂である。
熱硬化型樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。上記樹脂には必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、または、重合促進剤を添加して用いる。たとえば、硬化剤としては、イソシアネートまたは有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤は不飽和ポリエステル樹脂に添加される。上記熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、たとえば、上記した熱硬化型樹脂を溶液化し、ロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布法で前記合成樹脂製透明シート21の所定の面に塗布し、乾燥すると共に硬化させることにより形成することができる。
また、電離放射線硬化型樹脂としては、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、またはエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマーまたはポリマーからなる。これら単量体、プレポリマーまたはポリマーは、単体で用いるか、あるいは、複数種混合して用いる。なお、本明細書で(メタ)アクリレートとは、アクリレートないしメタアクリレートの意味で用いる。また、電離放射線とは、電磁波ないし荷電粒子線のうち分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常は紫外線ないし電子線である。
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量が10000を超えると硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性が不足する。上記のアクリレートとメタアクリレートとは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速いため、高速度、短時間で能率よく硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーが挙げられる。
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等が挙げられる。
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
カチオン重合性官能基を有する単量体は、上記カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることができる。
上記した電離放射線硬化型樹脂を、紫外線を照射することにより硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独ないし混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独ないし混合物として用いることができる。なお、これら光重合開始剤の添加量は、一般に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。前記表面保護層21の形成方法としては、前記した電離放射線硬化型樹脂を溶液化し、グラビアコート法やロールコート法等の周知の塗布方法で前記合成樹脂製透明シート21の所定の面に塗布することにより形成することができる。
次に、前記表面保護層20には、防滑性に優れた層とすると共に表面平滑性にも優れた層とするために、繊維状フィラーを添加するものである。この繊維状フィラーとしては、アスペクト比〔(繊維径:μm)/(繊維長:μm)〕が1/5以下であって、比重が2.5g/cm3以下、好ましくは0.1g/cm3以上2.5g/cm3以下であって、かつ、平均短軸長(単位:μm)の長さが表面保護層20の厚さ(単位:μm)より小さいという特性を満たすものである。アスペクト比を上記のように設定する理由としては、アスペクト比が1/5は、繊維状フィラーの特性を出せる限界であり、また、塗工適性を考慮すると1/20以上が適当である。また、比重が0.1g/cm3未満および2.5g/cm3を超える場合は表面保護層を形成する樹脂の比重(1.0〜2.0g/cm3)と著しく異なるために好ましい分散状態が得られないためであり、具体的には比重が0.1g/cm3未満の場合は、繊維状フィラーが塗工液において表層付近に密集して意匠感を損なう可能性があるという問題、比重が2.5g/cm3を超える場合は、繊維状フィラーが塗工液において沈降することで防滑性が発現し難くなるという問題が生じる。また、繊維状フィラーの短軸長(単位:μm)の長さを表面保護層(単位:μm)の厚さと同じかないしは小さくするのは、表面保護層20からの繊維状フィラーの突出を防止して表面平滑性に優れた表面保護層20とするためである。よって、表面保護層20の塗布量としては、少なくとも固形分として5g/m2以上であるが、表面保護層20に添加する繊維状フィラーの短軸長(単位:μm)の長さと同じか若しくは厚く(単位:μm)設定することが肝要である。なお、繊維状フィラーの含有量としては、表面保護層20を形成する硬化型樹脂の樹脂分100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは10〜20重量部である。
繊維状フィラーとしては、たとえば、綿、絹、羊毛あるいは麻等の天然繊維、レーヨンあるいはキュプラ等の再生繊維、アセテートあるいはプロミックス等の半合成繊維、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アラミド、ポリオレフィン、炭素あるいは塩化ビニル等の合成繊維、ガラス等の無機繊維またはSUS、銅あるいは黄銅等の金属繊維等を挙げることができ、これらの繊維状フィラーは任意に選定して1種ないし2種以上を組み合わせて使用してもよいものである。
また、前記表面保護層20には、要求される物性に応じて、たとえば、ベンゾトリアゾール系,ベンゾフェノン系,トリアジン系等の周知の有機系紫外線吸収剤や平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン,酸化セリウム,酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤、あるいは、ヒンダードアミン系等の周知の光安定剤、あるいは、帯電防止剤、レベリング剤等の周知の添加剤を添加することができる。
次に、前記プライマー層5、5’、5”について説明する。前記プライマー層5は前記合成樹脂製透明シート21と前記表面保護層20との接着強度を向上させる目的で設けるものであり、前記プライマー層5’は前記合成樹脂製透明シート21と前記絵柄印刷層8ならびに前記ベタ柄印刷層8’との接着強度を向上させる目的で設けるものであり、前記プライマー層5”は前記合成樹脂製着色シート21’と前記ベタ柄印刷層8’との接着強度を向上させる目的で設けるものである。以下、前記プライマー層5、5’、5”を総称してプライマー層と呼称する。このプライマー層としては、(i)アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体と、(ii)イソシアネートとからなる樹脂で形成されたものである。すなわち、(i)のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体は、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分(成分A)、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール成分(成分B)、ジイソシアネート成分(成分C)を配合して反応させてプレポリマーとなし、該プレポリマーにさらにジアミンなどの鎖延長剤(成分D)を添加して鎖延長することで得られるものである。この反応によりポリエステルウレタンが形成されると共にアクリル重合体成分が分子中に導入され、末端に水酸基を有するアクリル−ポリエステルウレタン共重合体が形成される。このアクリル−ポリエステルウレタン共重合体の末端の水酸基を(ii)のイソシアネートと反応させて硬化させたものが前記プライマー層である。
前記成分Aは、末端に水酸基を有する直鎖状のアクリル酸エステル重合体が用いられる。具体的には、末端に水酸基を有する直鎖状のポリメチルメタクリレート(PMMA)が耐候性(特に光劣化に対する特性)に優れ、ウレタンと共重合させて相溶化するのが容易である点から好ましい。前記成分Aは、共重合体においてアクリル樹脂成分となるものであり、分子量5000〜7000(重量平均分子量)のものが耐候性、接着性が特に良好であるために好ましく用いられる。また、前記成分Aは、両末端に水酸基を有するもののみを用いてもよいが、片末端に共役二重結合が残っているものを上記の両末端に水酸基を有するものと混合して用いてもよいものである。共役二重結合が残っているアクリル重合体を混合することにより、前記プライマー層と接する層、たとえば、前記表面保護層20の電離放射線硬化型樹脂とアクリル重合体の共役二重結合が反応するために電離放射線硬化型樹脂との間の接着性を向上させることができる。
前記成分Bは、ジイソシアネートと反応してポリエステルウレタンを形成し、共重合体においてウレタン樹脂成分を構成するものである。前記成分Bは、両末端に水酸基を有するポリエステルジオールが用いられる。このポリエステルジオールとしては、芳香族ないしスピロ環骨格を有するジオール化合物とラクトン化合物ないしその誘導体、またはエポキシ化合物との付加反応生成物、二塩基酸とジオールとの縮合生成物、および、環状エステル化合物から誘導されるポリエステル化合物等を挙げることができる。上記ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンテンジオール等の短鎖ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族短鎖ジオール等を挙げることができる。また、上記二塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を挙げることができる。ポリエステルポリオールとして好ましいのは、酸成分としてアジピン酸ないしアジピン酸とテレフタル酸の混合物、特にアジピン酸が好ましく、ジオール成分として3−メチルペンタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いたアジペート系ポリエステルである。
前記プライマー層において、前記成分Bと前記成分Cとが反応して形成されるウレタン樹脂成分は、前記プライマー層に柔軟性を与え、前記合成樹脂製透明シート21あるいは前記合成樹脂製着色シート21’との接着性に寄与する。また、アクリル重合体からなるアクリル樹脂成分は、前記プライマー層において耐候性および耐ブロッキング性に寄与する。ウレタン樹脂において、前記成分Bの分子量は前記プライマー層に柔軟性を十分に発揮可能なウレタン樹脂が得られる範囲であればよく、アジピン酸ないしアジピン酸とテレフタル酸の混合物と、3−メチルペンタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるポリエステルジオールの場合、500〜5000(重量平均分子量)が好ましい。
前記成分Cは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する脂肪族ないし脂環族のジイソシアネート化合物が用いられる。このジイソシアネートとしては、たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4’−シクロヘキシルジイソシアネート等を挙げることができる。ジイソシアネート成分としては、イソホロンジイソシアネートが物性およびコストが優れる点で好ましい。上記の成分A〜Cを反応させる場合のアクリル重合体、ポリエステルポリオールおよび後述する鎖延長剤の合計の水酸基(アミノ基の場合もある)と、イソシアネート基の当量比はイソシアネート基が過剰となるようにする。
上記の三成分A、B、Cを60〜120℃で2〜10時間程度反応させると、ジイソシアネートのイソシアネート基がポリエステルポリオール末端の水酸基と反応してポリエステルウレタン樹脂成分が形成されると共にアクリル重合体末端の水酸基にジイソシアネートが付加した化合物も混在し、過剰のイソシアネート基および水酸基が残存した状態のプレポリマーが形成される。このプレポリマーに鎖延長剤として、たとえば、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミンを加えてイソシアネート基を前記鎖延長剤と反応させ、鎖延長することでアクリル重合体成分がポリエステルウレタンの分子中に導入され、末端に水酸基を有する(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体を得ることができる。
(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体に、(ii)のイソシアネートを加えると共に、塗布法、乾燥後の塗布量を考慮して必要な粘度に調節した塗布液となし、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布することにより前記プライマー層を形成することができる。プライマー層の乾燥後の塗布量としては、1〜20g/m2であり、好ましくは1〜5g/m2である。また、このプライマー層は、必要に応じてシリカ粉末などの充填剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を添加した層としてもよいものである。また、(ii)のイソシアネートとしては、(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体の水酸基と反応して架橋硬化させることが可能なものであればよく、たとえば、2価以上の脂肪族ないし芳香族イソシアネートが使用でき、特に熱変色防止、耐候性の点から脂肪族イソシアネートが望ましい。具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートの単量体、または、これらの2量体、3量体などの多量体、あるいは、これらのイソシアネートをポリオールに付加した誘導体(アダクト体)のようなポリイソシアネートなどを挙げることができる。なお、図2、図3の床材用化粧シート2においては、プライマー層(図2、3上、符号5、5’、5”で示した層)を設けた構成のものを示したが、これは、床材としての高レベルの要求に応える仕様であり、床材としての要求レベルが低い場合にはこれらプライマー層(図2、3上、符号5、5’、5”で示した層)は必ず設けなければならないものでもない。
また、前記凹凸模様6は加熱プレスやヘアライン加工などにより形成することができ、その模様としては、たとえば、導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝、鏡面等である。
なお、今までは、表層に表面保護層20を設けた床材用化粧シート2ということで説明してきたが、本発明の床材はこれに限ることはなく、たとえば、図2、3における前記プライマー層5および/ないし前記表面保護層20を形成する前の床材用化粧シート2を被着材4と積層した後に、前記プライマー層5および/ないし前記表面保護層20を設けるように構成してもよいものである。
また、図示はしないが、本発明の床材用化粧シート2は、図2に示した前記ベタ柄印刷層8’の面ないし図3に示した合成樹脂製着色シート21’の面に、前記接着剤層3で説明した、ポリオール成分とイソシアネート成分からなる2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介してバッカー材を積層した構成とした床材用化粧シートとしてもよいものである。なお、前記バッカー材としては、昨今の環境問題を考慮してハロゲン元素を分子構造中に含まない樹脂が適当であり、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS等の樹脂からなるシート、あるいは、結晶性ポリエチレンテレフタレートシート(いわゆるC−PET)や非晶性ポリエチレンテレフタレートシート(いわゆるA−PET)、あるいは、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレートシート〔いわゆる、イーストマンケミカルカンパニー製PET−G(商品名)〕などを例示することができ、厚さとしては概ね200〜500μmが適当である。これらのシートは単層であってもよいし、複層であってもよいし、また、用いる樹脂は単独であってもよいし、混合物であってもよいが、ポリエステル系シートが好ましい。また、前記バッカー材は必要な面に、必要に応じてコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理等の易接着処理を施すことができる。
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。