JP4946617B2 - 軟窒化処理用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、加工後、軟窒化処理を施されて、工具や機械構造用部品、自動車部品等の耐摩耗性や耐疲労特性が要求される部品に用いられる鋼板に関し、特に、加工性に優れるとともに、軟窒化処理を施すことにより優れた耐摩耗性を付与することができる軟窒化処理用鋼板とその製造方法に関するものである。
表面硬化処理は、鋼の表面を硬化させるのと同時に、鋼の表面に残留応力を生じさせ、耐摩耗性や耐疲労特性を向上させる処理である。現在実用化されている代表的な表面硬化処理の方法としては、浸炭処理と窒化処理を挙げることができる。
このうち、窒化処理は、活性窒素の拡散により、鋼表面に高硬度の拡散層を得る処理であり、その窒化機構は、
<2NH → 2N+3H
の反応でNHガスの分解によって生じた活性窒素Nを鋼表面に拡散させて、高硬度の拡散層(窒化層)を得る技術である。この窒化処理では、A点以下で窒素を拡散・浸透させるため、処理温度が500〜550℃と低いのが特徴である。そのため、加熱による相変態が起こらないので、浸炭処理のように鋼に歪みが生じることはない。しかし、処理時間が50〜100時間と長く、処理後も表面に生成した脆い化合物層を除去する必要があるなどの問題点がある。
そこで、ガス軟窒化処理と呼ばれる方法が開発されている。このガス軟窒化処理は、主として浸炭性ガス(具体的には、急熱型変性ガスあるいは有機溶剤の熱分解ガスなどの浸炭性ガス)または窒素ガス雰囲気中にNHガスを30〜50vol%添加し、550〜600℃の温度で1〜5時間加熱保存することにより、窒素と炭素を同時に侵入拡散させ、表面に炭窒化物を形成させる方法である。また、浸炭性ガスの他に、N・NH・COガスの混合雰囲気を使用した方法も開発されている。これらの処理によって、表面近傍(表層)には、Feを主成分とするε(Fe2−3N)相およびFeCの混合相を含む化合物層が、また、その内部には拡散層としてν´(FeN)相が形成されて、表面の硬度を高める作用を発現する。なお、以降、上記ガス軟窒化処理を、「軟窒化処理」ともいう。
このような軟窒化処理を施して用いられる鋼としては、例えば、特許文献1には、冷間鍛造性および疲労特性に優れた軟窒化処理用鋼の製造方法が、特許文献2には、熱処理歪みの少ない軟窒化処理用鋼の製造方法が開示されている。
ところで、軟窒化処理は、予め鋼板を所定の形状に成形加工した後に施されことが多いため、斯かる用途に用いられる鋼板には、加工性、特にプレス成形性に優れることが求められる。この点、特許文献1や2の鋼板は、C含有量が0.10%以上と高く、他の添加元素の量も多いため、伸びなどの加工特性に劣るものである。
一方、特許文献3や特許文献4には、良好なプレス加工性を有する軟窒化処理用鋼板が開示されている。しかし、これらの軟窒化処理用鋼板は、鋼の炭素含有量を0.01%以下と極めて少なくした上で、さらにV等の高価な添加元素の多量添加を必要とするため、製造コストが増大する。そこで、安価でプレス加工性に優れる軟窒化処理用鋼板が提案されている。例えば、特許文献5には、TiやVを含有しない安価でプレス成形性のよい軟窒化処理用鋼が提案されている。
また、耐摩耗性および耐疲労強度などが強く要求される用途では、従来から知られている低炭素鋼や極低炭素鋼などの鋼板を適用した場合には、十分な表面硬さが得られないという問題がある。この問題に対しては、例えば、特許文献6には、低炭素系の鋼に、0.01〜1.0%のV,Ti,Nbの1種または2種以上を含有させた軟窒化処理用鋼板が提案されている。そして、これら元素の添加により、ガス軟窒化処理後における鋼板の表面硬度を高めることができるので、寸法精度、強度、耐久性に優れた一般構造用部品や自動車部品を低コストで製造できるとしている。
特許第2906996号公報 特許第2907011号公報 特許第3153108号公報 特開平09−025543号公報 特開2003−105489号公報 特開2003−277887号公報
しかしながら、特許文献5に記載された技術は、軟窒化処理後の表面硬さ、硬化深さ、密着曲げ性について検討しているものの、実部品における耐磨耗性については何ら考慮していない。また、特許文献6に記載の技術は、耐久性の向上を意図したものであるが、表面硬さ、硬化深さのみの評価をしており、耐磨耗性については十分に考慮していない。さらに、特許文献6のように、軟窒化処理後の硬度上昇に寄与する成分を多く含む鋼板では、プレス成形性の劣化が懸念されるだけでなく、ガス軟窒化後に表面硬度が上昇したとしても、軟窒化熱処理後の表層(化合物表層)には、ポーラスな層が形成されるため、所期した耐摩耗性が得られないという問題もある。したがって、上記特許文献5や6に記載された鋼板は、加工性と耐摩耗性を十分に両立できていないというのが実情である。
そこで、本発明の目的は、上記の従来技術では十分に考慮されていない耐摩耗性の改善を意図し、加工性と耐磨耗性を兼備した軟窒化処理用鋼板と、その製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、Vを極微量添加してやることにより、母材強度をいたずらに上げることなく、しかも、軟窒化処理によって、高い硬さを有しかつポーラス層の形成が少ない化合物層を形成することができる、したがって、加工性に優れるとともに、耐摩耗性にも優れる軟窒化処理用鋼板を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本願発明は、C:0.04〜0.08mass%、Si:0.1mass%以下、Mn:0.05〜0.6mass%、P:0.03mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.1mass%以下、Cr:0.6〜1.2mass%、V:0.002〜0.01mass%未満およびN:0.01mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる軟窒化処理用鋼板である。
また、本願発明は、C:0.04〜0.08mass%、Si:0.1mass%以下、Mn:0.05〜0.6mass%、P:0.03mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.1mass%以下、Cr:0.6〜1.2mass%、V:0.002〜0.01mass%未満およびN:0.01mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、加熱温度:1140〜1260℃、仕上圧延終了温度:Ar変態点〜Ar変態点+100℃、巻取温度:530〜650℃とする熱間圧延する軟窒化処理用鋼板の製造方法を提案する。
本発明によれば、プレス成形性等の加工性に優れ、かつガス軟窒化処理後の耐磨耗性にも優れる軟窒化処理用鋼板を安価に得ることができる。したがって、本発明の軟窒化処理用鋼板は、加工後、ガス軟窒化処理が施され、工具や自動車部品等の一般構造用部品に用いられる軟窒化処理用鋼板として好適である。
発明者らは、ガス軟窒化処理を施されて用いられる軟窒化処理用鋼板について、素材の状態における加工性と、成形加工後、軟窒化処理を施されたのちの耐摩耗性とを両立させる観点から、当該鋼板が具備すべき特性について鋭意検討を重ねた。その結果、成形性を確保するためには、素材強度を高くし過ぎないことが重要であり、一方、軟窒化処理後の耐摩耗性を確保するためには、軟窒化処理後の表面硬さを高めることが必要であり、したがって、成形性と耐磨耗性とを両立させるためには、軟窒化処理後の鋼板表面の硬さと鋼板自体(板厚中央部)の硬さの比を適正範囲に制御することが重要であることを知見した。
そこで、斯かる観点から、上記硬さ比を適正化するために鋼に添加する成分として、V,Ti,Nbについて検討した結果、Vを微量添加してやることが最も有効であること、すなわち、Vの微量添加は、素材強度をほとんど増加させることなく、窒化層表面の硬さのみを高めることができ、従って、加工性と耐摩耗性の両立に好ましい硬さ比が得られることを見出した。一方、Nbを添加した場合には、微細な炭窒化物が析出して素材自体の強化が上昇するため、加工性が劣化するだけでなく、軟窒化処理後の表面硬さと素材自体の硬さとの比を所望の範囲に制御することが難しくなる。さらに、TiやNbは、微量の添加でも、鋼板表層の化合物層(窒化層)中にポーラスな層を形成しやすく、耐摩耗性が劣化しやすいのに対して、Vは、添加によりポーラス層の形成が少なく、耐摩耗性の低下が小さいという、従来、全く注目されていなかった新規知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明を開発する契機となった実験について説明する。
C:0.05〜0.06mass%、Si:0.01〜0.03mass%、Mn:0.2〜0.3mass%、P:0.01〜0.02mass%、S:0.001〜0.003mass%、Al:0.03〜0.06mass%、N:0.002〜0.004mass%、Cr:0.8〜0.9mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成をベースとし、これに、VおよびTiを0〜0.05mass%の範囲で変化させて添加した各種鋼を溶製して鋼片とした。次いで、この鋼片を、1200℃に加熱後、仕上圧延終了温度を880℃、巻取温度を580℃とする熱間圧延を施して、板厚が2.0mmの熱延鋼板を得た。
このようにして得た各種熱延鋼板に、(RX:50%+NH:50%)混合ガス中で、580℃×2hrの軟窒化処理を施して表面硬化させ、次いで、その軟窒化処理後の鋼板について、下記の試験に供した。
<硬さ測定>
軟窒化処理後の鋼板から試験片を採取し、鋼板表面と厚さ方向断面の板厚中央部のビッカース硬さ(Hv)をそれぞれ10点ずつ測定し、それらの平均値から、鋼板表面と板厚中央部の硬さ比(表面硬さ/中央部硬さ)を求めた。なお、ビッカース硬さの測定荷重は、表面は50g、板厚中央部は100gとした。
<ポーラス層比率の測定>
上記、硬さ測定に用いた試験片について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1500倍で、試験片断面表層部の窒化層(化合物層)をそれぞれ10箇所ずつ観察し、各位置の窒化層中に占めるポーラス層の厚さ比率(%)を測定し、平均値を求めた。
上記測定の結果を、図1および図2に示した。図1は、V,Tiの含有量と、鋼板表面と板厚中央部の硬さ比(表面硬さ/中央部硬さ)との関係を示したものであり、この図から、Vの微量添加により硬さ比は大きく向上し、0.002mass%以上の微量添加でも硬さ比7.0以上が得られること、一方、0.02mass%以上の過剰添加は却って、硬さ比を低減することがわかる。また、Tiの添加は、母材の強度にはそれほど影響を及ぼさないが、表面および表面から0.5mm深さまでの硬さプロファイルに著しく悪影響を与え、特に、硬さの絶対値が大きく変動するため、製造安定性に極めて劣る傾向がある。
また、図2は、V,Tiの含有量と、板厚表層部(化合物層)中に占めるポーラス層の厚さ比率(ポーラス層の厚さ/化合物層の厚さ×100(%))との関係を示したものである。この図から、Vの微量添加によりポーラス層の比率が上昇し、Vの添加量が0.01mass%以上ではポーラス層の比率が10%超になること、一方、Tiの添加は、ポーラス層の形成をさらに助長し、0.002mass%の添加で既に10%を超えるポーラス層比率となっていることがわかる。
以上の結果から、軟窒化処理後の鋼板の耐摩耗性を向上する観点からは、鋼板表面と板厚中央部の硬さ比(表面硬さ/中央部硬さ)は高いほど好ましく、7.0以上が望ましいこと、一方、軟窒化処理後の鋼板表層の化合物層中におけるポーラス層の比率の存在は、耐摩耗性を劣化させるため好ましくなく、ポーラス層の比率は10%以下に抑えることが望ましい。そこで、本発明では、上記図1および図2の結果から、軟窒化処理用鋼板に対して、Vを0.002mass%以上0.01mass%未満の範囲で微量添加することとした。
次に、本発明に係る軟窒化処理用鋼板が有すべき成分組成について説明する。
C:0.04〜0.08mass%
Cは、鋼板の強度および加工性に大きな影響を及ぼす成分である。Cの含有量が0.04mass%未満の場合には、工具や機械構造用部品、自動車部品等に要求される所望の強度が得られない。一方、C含有量が0.08mass%を超えると、加工性が劣化し、所望の加工性を確保できなくなる。よって、本発明では、Cの含有量は0.04〜0.08mass%の範囲とする。好ましくは、0.045〜0.075mass%の範囲である。
Si:0.1mass%以下
Siは、脱酸剤として、また、鋼板の強度を高めるために添加される成分である。しかし、Siの含有量が0.1mass%を超えると、表面性状が悪化して、窒化層の形成が不均一となり、結果として、耐摩耗性に劣る部品しか得られなくなる。よって、Si含有量は0.1mass%以下とする。好ましくは、0.05mass%以下である。
Mn:0.05〜0.6mass%
Mnは、鋼の強度を高めるとともに、不純物として含まれるSによる熱間脆性を防止する効果を有する成分である。しかし、Mn含有量が0.05mass%未満の場合には、上記効果を得られず、また、所望の強度が得られない。一方、Mn含有量が0.6mass%を超えると、強度が過度に上昇し、加工性が低下する。よって、Mn含有量は0.05〜0.6mass%とする。好ましくは0.1〜0.5mass%の範囲である。
P:0.03mass%以下
Pは、不純物として含まれる成分であり、また、加工性を劣化させることなく強度を高める効果を有する成分でもある。しかし、Pは粒界に偏析し易い元素であるため、特に、Pの含有量が0.03mass%を超えると、粒界偏析に起因して2次加工脆性を引き起こし易くなる。よって、本発明では、Pの含有量は0.03mass%以下とする。
S:0.01mass%以下
Sは、不純物として含まれる成分であり、熱間脆性により表面性状を劣化させたり、加工性を低下させたりする成分である。特に、S含有量が0.01mass%を超えると、粗大な硫化物を生成し、熱間での延性が劣るようになる。よって、S含有量は0.01mass%以下とする。
Al:0.1mass%以下
Alは、脱酸剤として添加される成分である。しかし、Alは、安定な窒化物を生成しやすい元素であり、含有量が0.1mass%を超えると、介在物の増加が著しくなり、表面外観の劣化が懸念される。よって、Alの含有量は0.1mass%以下とする。好ましくは、0.03〜0.07mass%の範囲である。
N:0.01%以下
Nは、軟窒化熱処理前に0.01mass%を超えて含まれると、窒化処理の前にAlやVと窒化物を形成して、素材強度を高めて加工性を低下させるため、好ましくない。よって、本発明では、N含有量は0.01mass%以下とする。好ましくは0.0060mass%以下である。
Cr:0.6〜1.2mass%
Crは、軟窒化処理により窒化物を形成して表面硬度を高める効果を有する成分であり、本発明の鋼板においては、極めて重要な成分の1つである。Crの含有量が0.6mass%未満では、上記効果が十分ではなく、軟窒化処理後に所望の硬度プロファイルが得られない。一方、Crの含有量が1.2mass%を超えると、やはり軟窒化処理後に所望の硬度プロファイルが得られない。よって、Crの含有量は0.6〜1.2mass%の範囲とする。好ましくは、0.75〜1.0mass%の範囲である。
V:0.002mass%以上0.01mass%未満
Vは、本発明において極めて重要な成分あり、上述したように、軟窒化処理による母材強度の上昇を抑制しつつ、軟窒化処理後の表層の硬さを高くし、表層と母材の硬さ比を適正化することができるので、素材の加工性を確保した上で、軟窒化後に、所望の耐摩耗性を得ることが可能となる。このようなVの効果は、0.002mass%未満の添加では、十分に発現しない。一方、Vの含有量が0.01mass%以上となると、軟窒化処理後の鋼板表層(化合物層)中のポーラス層の比率が高くなりすぎ、耐摩耗性が劣化するようになる。よって、本発明では、Vは0.002mass%以上0.01mass%未満の範囲で添加する。好ましくは、0.002mass%超0.01mass%未満、より好ましくは、0.003mass%超0.01mass%未満の範囲である。
次に、本発明に係る軟窒化処理用鋼板の製造方法について説明する。
本発明では、鋼の製造は、通常公知の方法で行なうことができ、例えば、転炉、電気炉等で鋼を溶製後、必要に応じて、真空脱ガス処理等の2次精錬を施して上記成分組成を有する溶鋼とし、その後、造塊−分塊圧延法あるいは連続鋳造法で鋼スラブ(鋼片)とするのが好ましい。
加熱温度:1140〜1260℃
上記のようにして得た鋼スラブは、次いで、熱間圧延に供するが、この際の加熱炉におけるスラブ加熱温度は、1140〜1260℃の範囲とする必要がある。加熱温度が1140℃未満では、スラブ製造後の冷却段階で生成したV炭窒化物を完全に再溶解することが難しく、一方、加熱温度が1260℃を超えると、結晶粒が粗大化したり、表面性状を損ねたりするため、耐磨耗性を確保する上で好ましくないからである。好ましくは、加熱温度は1160〜1240℃の範囲である。
仕上圧延終了温度:Ar変態点〜Ar変態点+100℃
スラブ加熱後の熱間圧延は、仕上圧延終了温度を、Ar変態点〜(Ar変態点+100℃)とする必要がある。仕上圧延終了温度が、Ar変態点未満、即ち、(α+γ)域での圧延となると、加工性が低下するため好ましくない。一方、仕上圧延終了温度が(Ar変態点+100℃)を超えると、結晶粒の粗大化やパーライトの粗大化により所望の強度が得られなくなる。よって、仕上圧延終了温度は、Ar変態点〜(Ar変態点+100℃)の範囲とする。好ましくは、仕上圧延終了温度は、Ar変態点〜(Ar変態点+80℃)の範囲である。
巻取温度:530〜650℃
熱間圧延後の巻取温度は、530〜650℃の範囲とする。巻取温度が530℃未満では、熱間圧延組織が残留し、所望の加工性が得られない。一方、巻取温度が650℃を超えると、フェライト、パーライトがともに粗大化して所望の強度が得られなくなるからである。好ましい巻取温度は550〜630℃の範囲である。
上記のようにして得られた本発明の熱延鋼板は、熱間圧延まま、あるいは、必要に応じて調質圧延を施してから酸洗等で脱スケールしたのち、軟窒化処理用鋼板として用いることができる。さらに、本発明の鋼板は、上記熱延鋼板を、酸洗後、通常公知の条件で冷間圧延し、再結晶焼鈍し、あるいはさらに必要に応じて調質圧延することにより冷延鋼板とし、軟窒化処理用鋼板とすることもできる。
なお、上述したように、本発明の軟窒化処理用鋼板は、成形加工と軟窒化処理を施されたのち、工具や機械構造部品として用いられることが多い。したがって、本発明の鋼板には、加工性や軟窒化特性(特に、耐摩耗性)に優れること以外に、素材自体も高強度であること、好ましくは引張強さが、320〜450MPa、より好ましくは360〜410MPaの範囲にあることが望ましい。引張強さが320MPa未満では、部品等に求められる強度が得られず、一方、450MPaを超えると加工性が低下するようになるからである。
表1に示す鋼記号A〜Hの成分組成を有する鋼を溶製し、スラブとした後、該スラブを1170〜1230℃に加熱し、熱間粗圧延し、圧延終了温度を860〜900℃とする仕上圧延し、冷却し、巻取温度580〜620℃でコイルに巻取り、板厚2mmの熱延鋼板を製造した。この熱延鋼板から、圧延方向を引張方向とするJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z2241に準拠した引張試験を行い、引張強度(TS)と破断伸び(El)を測定した。
次いで、上記熱延鋼板から軟窒化試験用サンプルを採取し、このサンプルをNH:RX=50:50の雰囲気ガス中で、580℃×2hrのガス軟窒化処理を施し、該軟窒化処理材の板厚表面および板厚中央部のビッカース硬さを、それぞれ10箇所ずつ測定し(測定荷重:表面は50g、板厚中央部は100g)、それらの平均値を求めた。また、硬さ測定後のサンプル断面の表層(化合物層)を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率1500倍で観察し、各材料につき10視野ずつ写真撮影して、化合物層中のポーラス層の割合を測定し、平均値を求めた。なお、本実施例においては、引張試験における伸びElが40%以上を加工性良、また、軟窒化処理後鋼板の表層と板厚中央の硬さ比が7.0以上かつ表層部のポーラス層比率が10%以下を耐摩耗性良と評価した。なお、本発明の鋼板は、用途によっては部品自体の強度も要求されるため、素材の引張強さは、360MPa以上を目標とした。
上記測定の結果を、表2に示した。表2から、本発明の成分組成を有する鋼を用いて、本発明の条件を満たして製造した鋼板(記号:E,F)はいずれも、微量のV添加によって、素材鋼板の加工性に優れ、かつ、軟窒化処理後の耐摩耗性にも優れる特性を有していることがわかる。これに対して、本発明の成分組成を外れて製造された鋼板は、加工性、耐摩耗性のいずれかまたは両方が劣っていることがわかる。例えば、Vを含有しない鋼A,Bから得られた鋼板、およびVの含有量が少ない鋼Hから得られた鋼板は、加工性が良好であり、ポーラス層比率も10%以下と良好であるが、硬さ比が7.0未満であり、耐摩耗性に劣る。また、鋼C,Dから得られた鋼板は、Vを過剰に含有しているため、ポーラス層の比率が著しく高く、硬さ比も低く、耐摩耗性が低下している。特に、鋼Cから得られた鋼板は、V,Tiの複合添加により、母材も強化されているため、加工性、硬さ比の低下が著しい。また、Vのみを過剰に含む鋼Gから得られた鋼板は、硬さ比は良好な値を示すものの、化合物層中のポーラス層比率が高いため、本発明が所望する十分な耐摩耗性を有していない。
Figure 0004946617
Figure 0004946617
表1に示した本発明に適合する記号Eの成分組成を有する鋼スラブを、表3に示したように、熱間圧延条件を種々に変化させて圧延し、板厚が2mmの熱延鋼板とした。これらの熱延鋼板について、実施例1と同様の条件で、引張特性を測定した。また、上記熱延鋼板からサンプルを採取し、実施例1と同様の条件で軟窒化処理を施し、鋼板表面および板厚中央部のビッカース硬さを測定するとともに、鋼板表層の化合物層中のポーラス層比率を測定した。
それらの結果を熱間圧延条件と併記して表3に示した。なお、加工性および耐摩耗性の評価は、実施例1と同様、引張試験における伸びElが40%以上を加工性良、また、軟窒化処理後鋼板の表層と板厚中央の硬さ比が7.0以上かつ表層部のポーラス層比率が10%以下を耐摩耗性良と評価した。なお、素材の引張強さは、実施例1と同様の理由から、360MPa以上を目標とした。
Figure 0004946617
表3から、本発明の成分組成を有する鋼を用いて、本発明の条件を満たして製造した鋼板(No.1)は、伸びが大きく、表層と板厚中央の硬さ比も大きく、ポーラス層比率も少なく、加工性と耐摩耗性を両立した優れた特性を有していることがわかる。これに対して、本発明の製造条件を外れる鋼板は、加工性、耐摩耗性のいずれかまたは両方が劣っていることがわかる。例えば、加熱温度が本発明の上限値を外れたNo.2の鋼板は、表面性状の劣化やスケール性の表面欠陥を引き起こすのに加えて、フェライト粒が粗大化するため素材強度が低下している。一方、加熱温度が本発明の下限値を外れたNo.3の鋼板は、V炭化物が再固溶しないため、所望の硬さ比が得られないことに加えて、加工性も低下している。また、仕上圧延終了温度が上限値を外れたNo.4の鋼板は、粗大なフェライトとパーライトの組織となるため、やはり、素材強度が低下している。一方、仕上圧延終了温度が下限値を外れたNo.5の鋼板は、ポリゴナルフェライトが得られないため、加工性が低下している。また、巻取温度が上限値を外れたNo.6の鋼板は、粗大なフェライト+パーライト組織となるため、所望の強度が得られない。一方、巻取温度が下限値を外れたNo.7の鋼板は、熱延組織が針状のフェライトとなって伸びが低下し、所望の加工性が得られていない。
本発明の技術は、ガス軟窒化処理用鋼板に限定させるものではなく、例えば、窒化処理用鋼板としても好適に用いることができる。
V,Tiの含有量と、板厚の表層部と中央部の硬さ比(表層部硬さ/中央部硬さ)との関係を示すグラフである。 V,Tiの含有量と、板厚表層部(化合物層)中に占めるポーラス層の厚さ比率との関係を示すグラフである。

Claims (2)

  1. C:0.04〜0.08mass%、
    Si:0.1mass%以下、
    Mn:0.05〜0.6mass%、
    P:0.03mass%以下、
    S:0.01mass%以下、
    Al:0.1mass%以下、
    Cr:0.6〜1.2mass%、
    V:0.002〜0.01mass%未満および
    N:0.01mass%以下を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる軟窒化処理用鋼板。
  2. C:0.04〜0.08mass%、
    Si:0.1mass%以下、
    Mn:0.05〜0.6mass%、
    P:0.03mass%以下、
    S:0.01mass%以下、
    Al:0.1mass%以下、
    Cr:0.6〜1.2mass%、
    V:0.002〜0.01mass%未満および
    N:0.01mass%以下を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1140〜1260℃に加熱し、仕上圧延終了温度をAr変態点〜Ar変態点+100℃、巻取温度を530〜650℃とする熱間圧延する軟窒化処理用鋼板の製造方法。
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