JP4938164B2 - 消臭性構造体及び消臭剤 - Google Patents

消臭性構造体及び消臭剤 Download PDF

Info

Publication number
JP4938164B2
JP4938164B2 JP2000085194A JP2000085194A JP4938164B2 JP 4938164 B2 JP4938164 B2 JP 4938164B2 JP 2000085194 A JP2000085194 A JP 2000085194A JP 2000085194 A JP2000085194 A JP 2000085194A JP 4938164 B2 JP4938164 B2 JP 4938164B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
activated carbon
deodorant
deodorant structure
carbon fiber
polycarboxylic acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2000085194A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2001009019A (ja
Inventor
春夫 野崎
信一郎 舩橋
正紀 真田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kureha Corp filed Critical Kureha Corp
Priority to JP2000085194A priority Critical patent/JP4938164B2/ja
Publication of JP2001009019A publication Critical patent/JP2001009019A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4938164B2 publication Critical patent/JP4938164B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Disinfection, Sterilisation Or Deodorisation Of Air (AREA)
  • Exhaust Gas Treatment By Means Of Catalyst (AREA)
  • Solid-Sorbent Or Filter-Aiding Compositions (AREA)
  • Catalysts (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、消臭性構造体及び消臭剤に関し、詳しくは、悪臭を放つ物質を吸着且つ分解する消臭性構造体及び該消臭性構造体を用いた消臭剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
悪臭を消臭するための従来の消臭剤としては、活性炭の吸着能を利用したもの、酸化剤による悪臭成分の分解能を利用したもの、触媒による悪臭成分の分解活性を利用したもの、微生物菌体による悪臭成分の分解能を利用したもの等が挙げられる。このような消臭剤のひとつとして、特開昭56−63355号公報に記載された消臭剤がある。この消臭剤は、悪臭を放つ物質を吸着媒体としての活性炭、ベントナイト及び/又はゼオライト等によって吸着し、該物質を触媒としての金属フタロシアニンポリカルボン酸によって分解するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の消臭剤の消臭性能は必ずしも十分ではなく、良好な消臭効果を得るためには、活性炭等の吸着媒体と金属フタロシアニンポリカルボン酸の必要量が増大してしまうという問題があった。その結果、消臭剤の形状をコンパクトにできなかったり、消臭効果が少ない割に高価となってしまう傾向にあった。
【0004】
そこで、本発明は係る従来の問題点に鑑みて、吸着媒体及び触媒の量を低減しても十分な消臭効果を得ることが可能な消臭性構造体及び消臭剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、細孔を有する所定の吸着媒体に金属フタロシアニンポリカルボン酸を担持させることによって優れた消臭効果が得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明のシート状の消臭性構造体は、細孔を有する吸着媒体としての活性炭素繊維と、この活性炭素繊維に担持された下記式(1)で表される金属フタロシアニンポリカルボン酸とを含有して成り、吸着媒体として前記金属フタロシアニンポリカルボン酸を担持した活性炭を更に含有し、パルプと、パルプと吸着媒体とを接合することが可能な接着剤とを更に含有し、パルプと吸着媒体とが混合且つ接合されて成ることを特徴とする。
【0006】
【化2】
Figure 0004938164
[但し、式(1)中のMは金属原子である。また、式(1)中のRは、少なくとも4個がカルボキシル基であり、残りが水素原子である。]
【0007】
このように構成された消臭性構造体においては、まず、吸着媒体である活性炭素繊維に形成された細孔に悪臭を放つ物質(以下、悪臭物質と云う)が吸着されて脱臭される。次に、吸着された悪臭物質は、式(1)で表される金属フタロシアニンポリカルボン酸が人工酵素とも言われるように、その触媒作用によって効果的に分解されて消臭される。
【0008】
活性炭素繊維には、通常の粒状又は粉状の活性炭に比して小さい孔径の細孔が多く形成されており、その孔径は代表的な悪臭物質の分子径に略匹敵する傾向にある。また、従来の活性炭に比して、比表面積及び細孔容積が非常に大きいという特性を有している。よって、悪臭物質の吸着効率及び吸着容量が従来に比して格段に大きいので、各種悪臭物質の吸着除去性能が高められる。また、金属フタロシアニンポリカルボン酸が悪臭物質と接触する機会が増えるので、消臭性能が高められる。
【0009】
ここで、従来と同程度の含有割合で金属フタロシアニンポリカルボン酸を用いたところ、活性炭素繊維による効果から期待される以上の消臭性能の向上が認められた。これは、活性炭素繊維の比表面積及び細孔容積が非常に大きいため、金属フタロシアニンポリカルボン酸の偏在が緩和されて均一に分散するように担持され、悪臭物質と接触し得る有効な金属フタロシアニンポリカルボン酸が従来に比して増大することが一因と考えられる。ただし、作用機序はこれに限定されるものではない。
【0010】
よって、従来に比して、消臭性構造体に使用される吸着媒体(活性炭素繊維)及び触媒(金属フタロシアニンポリカルボン酸)両方の必要量を低減し得るので、消臭性構造体のコンパクト化を図りつつ、消臭性能を一層高めることが可能となる。また、活性炭素繊維は、従来の活性炭に比して吸着速度が非常に大きいので、悪臭物質が速やかに吸着除去されて即効性のある消臭が可能となる。
【0011】
また、活性炭素繊維を用いるので、消臭性構造体を布帛(織布及び不織布)としたり、パルプ等と混抄することができる。よって、消臭性構造体を、シート、ハニカム構造体、ジャバラ、波形板等の各種形状を有する部材に加工することが簡易となる。さらに、金属フタロシアニンポリカルボン酸は、悪臭物質の分解反応において触媒として機能するので、それ自身が消耗することがない。また、金属フタロシアニンポリカルボン酸は、酸やアルカリに対して安定であり、且つ耐候性、耐熱性及び耐湿性に優れるので、安定した消臭効果を得ることができる。むしろ、金属フタロシアニンポリカルボン酸が分子内にカルボキシル基を有しており水溶性なので、吸湿によって悪臭物質の分解効率が一層高められる。
【0012】
また、本発明の消臭性構造体は、式(1)におけるMがコバルトであると好適である。フタロシアニンポリカルボン酸と配位結合した金属がコバルトであると、他の金属が配位した金属フタロシアニンポリカルボン酸に比して、触媒能が高められる。その結果、悪臭物質の分解反応の速度が大きくなり、悪臭物質の分解効率が一層高められる。
【0013】
さらに、吸着媒体として活性炭を更に含有することが好ましい。このように構成した消臭性構造体を用いたところ、活性炭素繊維のみ含む場合及び活性炭のみ含む場合に比して、消臭性能の向上が確認された。これは、活性炭素繊維と活性炭との相乗効果によるものと考えられる。活性炭には、孔径の大きいほうから、所謂マクロポア、メゾポア、ミクロポア、サブミクロポアと呼ばれる孔径が異なる細孔が混在しており、活性炭素繊維に比して、平均孔径及び孔径分布幅が大きくなっている。よって、活性炭を併用することにより、活性炭素繊維の孔径よりも大きな分子径の悪臭物質に対する吸着性能が向上され、消臭性能が高められると推定される。ただし、作用機序はこれに限定されるものではない。
【0014】
またさらに、吸着媒体が平均孔径1〜4nm、好ましくは2〜3nmである細孔を有するとより好適である。このような大きさの孔径は、代表的な悪臭物質であるアンモニア、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、硫化水素、エタンチオール等の分子径と略同等かやや大きいので、それら悪臭物質を極めて効率よく吸着することが可能である。
【0015】
さらにまた、可燃性繊維と、この可燃性繊維と上記吸着媒体とを接合することが可能な接着剤とを更に含有し、可燃性繊維と吸着媒体とが混合且つ接合されて成ると一層好ましい。このように構成された消臭性構造体においては、例えばパルプのような可燃性繊維と吸着媒体との相乗効果によって以下のような作用が呈される。すなわち、吸着媒体である活性炭素繊維、更には活性炭が、可燃性繊維と一体化されて良好に保持されると共に、消臭性構造体の取扱性が高められる。また、可燃性繊維を用いることにより、消臭性構造体を可燃物として廃棄できる。さらに、吸着媒体が可燃性繊維と混合されて消臭性構造体中に適度に分散されるので、悪臭物質の吸着効率が更に一層高められる。
【0016】
加えて、消臭性構造体の一部又は全部が、例えば、所謂コルゲート板のような波形状に加工されて成ると一層好適である。このようにすると、消臭性構造体の容積あたりの有効表面積が増大されるので、消臭性能が更に高められると共に、消臭性構造体を小型とし得る。また、波形状とすることによって空間が画成され得るので、通気性が高められて消臭性能が更に一層高められ得る。その上、波形状は強度上優れた特性を有しており、例えば、保管時等に多段積みしても上記空間が変形したり圧潰する虞が少ない。
【0017】
また、本発明の消臭剤は、通気孔を有する筐体と、この筐体の内部に配設された本発明による消臭性構造体とを備えることを特徴とする。このように構成された消臭剤によれば、悪臭物質を含む気体が、通気孔を通して筐体内部の消臭性構造体に到達して吸着及び分解される。上述の如く、本発明の消臭性構造体の消臭性能は、従来に比して格段に高められているので、消臭剤が設置された環境に対して十分な消臭効果が得られる。
【0018】
また、消臭性構造体は、良好な消臭性能を維持しつつ小型化され得るので、筐体もコンパクトにすることができる。よって、消臭剤の設置スペースを縮小して省スペース化を図ることができる。さらに、筐体を可燃性部材、例えば紙製とすれば、消臭性構造体が可燃性であるので、消臭剤全体が可燃物となって廃棄が簡易になる。
【0019】
なお、本発明における「活性炭素繊維」とは、炭素を主成分とする多孔質の物質であり、気体、液体又は固体の吸着能を有し、繊維状を成すものであって粒状及び粉状の成分を含まない。また、「活性炭」とは、炭素を主成分とする多孔質の物質であり、気体、液体又は固体の吸着能を有し、繊維状以外の形状を成すものであって粒状及び粉状の成分を含む。さらに、本発明における「波形状」とは、シート(フィルムを含む)又は板に段差を設けた形状を指すものであり、波形板(波板又はコルゲート板とも云われる)形状、ハニカム形状、ジャバラ形状を含む。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の消臭性構造体に係る好適な一実施形態を示す斜視図である。図1に示す消臭性構造体1は、シート11に波形状を成すシート12が接合されて形成されている。シート11,12は、活性炭素繊維、及び、可燃性繊維としてのパルプの混合物に、接着剤としてアクリル系エマルジョンを添加して混抄したシートであり、これら構成部材が一体的に接合されている。活性炭素繊維は、石油ピッチ系の活性炭素繊維であり、平均孔径が好ましくは1〜4nm、特に好ましくは2〜3nmである細孔を有するものである。そして、シート11,12には、下記式(1)で表される金属フタロシアニンポリカルボン酸が略均一に添着されて担持されている。
【0022】
【化3】
Figure 0004938164
【0023】
シート11,12に式(1)で表される金属フタロシアニンポリカルボン酸を担持させる方法としては、例えば、上述した抄紙後のシート11,12を、金属フタロシアニンポリカルボン酸を含む溶液に浸漬(含浸)した後乾燥させる方法が好ましく用いられる。
【0024】
また、消臭性構造体1におけるこれら構成部材の好適な含有割合は、活性炭素繊維が好ましくは5〜50重量(質量)%、特に好ましくは20〜40重量%、パルプが好ましくは35〜93.9重量%、特に好ましくは45〜78.9重量%、アクリル系エマルジョンが好ましくは1〜10重量%、そして、金属フタロシアニンポリカルボン酸が好ましくは0.1〜5重量%とされている。
【0025】
また、消臭性構造体1は、吸着媒体として活性炭を更に含んでもよく、活性炭の好適な含有割合としては、好ましくは0〜45重量%、特に好ましくは5〜25重量%(但し、活性炭素繊維と活性炭の合計が50重量%を超えない。)である。この場合、活性炭は、例えば、活性炭素繊維及びパルプと共に混抄され、アクリル系エマルジョンによって接合されて一体化される。
【0026】
ここで、これら構成部材同士の含量比(重量比)に着目すると、パルプ含量に対する活性炭素繊維含量、又は、活性炭素繊維及び活性炭の合計含量の比は、好ましくは0.053〜1.43となっている。また、活性炭素繊維含量、又は、活性炭素繊維及び活性炭の合計含量に対する金属フタロシアニンポリカルボン酸含量の比は、好ましくは0.002〜1となっている。
【0027】
活性炭素繊維が5重量%未満の場合には、悪臭物質の吸着効果が十分に得られない傾向にある。これに対して活性炭素繊維(又は活性炭素繊維と活性炭との合計)が50重量%を超える場合、すなわち、パルプ含量に対する活性炭素繊維含量、又は活性炭素繊維及び活性炭の合計含量の比が1.43を超える場合には、それらの均一な混抄が困難になると共に、シート11,12の強度が不足して加工が困難となる傾向にある。
【0028】
また、金属フタロシアニンポリカルボン酸の含有割合が0.1重量%未満のときには、悪臭物質の分解が不十分となる傾向にある。その一方で、この含有割合が5重量%を超えると、すなわち、活性炭素繊維含量、又は活性炭素繊維及び活性炭の合計含量に対する金属フタロシアニンポリカルボン酸含量の比が1を超えると、悪臭物質の分解効果が飽和する傾向にある。金属フタロシアニンポリカルボン酸は、消臭性構造体1の構成材料のなかでは比較的高価なものなので、経済性の観点からも5重量%を超えないことが望ましい。
【0029】
さらに、アクリル系エマルジョンの含有割合が1重量%未満であると、接合力が不足する傾向にある。一方、この含有割合が10重量%を超えると、接合効果が飽和する傾向にある。なお、パルプの含有割合の上記好適範囲は、活性炭素繊維、活性炭、金属フタロシアニンポリカルボン酸及びアクリル系エマルジョンの好適な含有割合によって決定され得る。
【0030】
また、式(1)におけるM(金属)としては、例えば、コバルト、鉄、ニッケル、銅、マンガン、オスミウム、チタン、モリブデン、タングステン等が挙げられる。これらの金属が結合配位した金属フタロシアニンポリカルボン酸は、他の金属が結合配位したものに比して触媒活性が高い傾向にあり、これらの金属が関与する酸化還元反応の反応速度がより大きい。なかでもコバルト又は鉄が結合配位した金属フタロシアニンポリカルボン酸は、酸化能が比較的優れており、特にコバルトが結合配位したものは、鉄が結合配位したものに比して酸化能が10倍程度高く、悪臭物質の分解性能が非常に優れている。そこで、本実施形態では、金属フタロシアニンポリカルボン酸としてコバルトフタロシアニンポリカルボン酸を用いている。
【0031】
また、金属フタロシアニンポリカルボン酸におけるカルボキシル基の結合数は特に限定されるものではないが、下記式(2)で表される金属フタロシアニンテトラカルボン酸又は下記式(3)で表される金属フタロシアニンオクタカルボン酸を用いると好ましい。
【0032】
【化4】
Figure 0004938164
【0033】
このように構成された消臭性構造体1においては、まず、活性炭素繊維が吸着媒体として作用し、この活性炭素繊維に形成された細孔に悪臭物質が吸着されて脱臭される。そして、吸着された悪臭物質は、活性炭素繊維に添着された式(1)で表される金属フタロシアニンポリカルボン酸と接触し、その触媒作用によって効果的に分解される。これにより、優れた消臭効果を得ることができる。
【0034】
ここで、活性炭素繊維の孔径は、通常の粒状又は粉状の活性炭に比して小さく、代表的な悪臭物質の分子径に略匹敵する傾向にある。また、従来の活性炭に比して、比表面積及び細孔容積が非常に大きいという特性を有している。よって、悪臭物質の吸着効率及び吸着容量が従来に比して格段に大きいので、各種悪臭物質の吸着除去性能が高められる。また、金属フタロシアニンポリカルボン酸が悪臭物質と接触する機会が増大するので、消臭性能が高められる。したがって、消臭性構造体1を用いることにより、十分な消臭効果を得ることが可能となる。
【0035】
より具体的には、消臭性構造体1を構成する活性炭素繊維の平均孔径は、上述の如く、平均孔径1〜4nmとなっており、その孔径は代表的な悪臭物質(アンモニア、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等)の分子径と略同等又は稍大きい。平均孔径が1nm未満であると、これら悪臭物質分子が細孔に入り込み難い傾向にある。一方、平均孔径が4nmを超えると、細孔に入った悪臭物質分子の脱離が吸着と競合するようになると考えられる。
【0036】
よって、平均孔径が1〜4nmの活性炭素繊維を採用することにより、上記悪臭物質の吸着効率が一層高められるので、消臭性構造体1の消臭性能を向上することが可能となる。しかも、消臭性構造体1が、活性炭素繊維に比して平均孔径及び孔径分布幅が大きい活性炭をも含んでいると、活性炭素繊維の孔径よりも大きい分子径の悪臭物質が存在しても十分な消臭効果を得ることができる。さらに、活性炭素繊維が石油ピッチ系のものであり、吸脱着による再生損失が少なく且つ炭素の純度が高いという特性を有するので、悪臭の脱臭性能が更に高められる。
【0037】
またさらに、活性炭素繊維の比表面積及び細孔容積が非常に大きいため、式(1)で表される金属フタロシアニンポリカルボン酸が偏在し難く、均一に分散するように担持され、悪臭物質と接触し得る有効な金属フタロシアニンポリカルボン酸が従来に比して増大する傾向にある。よって、活性炭素繊維による吸着性能の向上から期待される以上に、消臭性能が高められる。その結果、従来に比して、吸着媒体(活性炭素繊維)及び触媒(金属フタロシアニンポリカルボン酸)両方の必要量を低減できる。したがって、消臭性構造体1をコンパクト化して省スペース化を図ることができると共に、より優れた消臭効果が得られる。さらにまた、活性炭素繊維は、従来の活性炭に比して吸着速度が非常に大きいという特性を有しており、悪臭物質が速やかに吸着除去されるので、即効性のある消臭が可能となる。
【0038】
また、消臭性構造体1は、活性炭素繊維とパルプとが混抄され、接着剤で接合されて一体化されたシート11,12から形成されているので、活性炭素繊維が良好に保持され、且つ、取扱性に優れている。この効果は、活性炭が含まれる場合でも同様である。さらに、消臭性構造体1は活性炭素繊維やパルプ等の繊維が主成分なので、シート11,12のようなシート状、ハニカム状、ジャバラ状等の各種形状への加工性に優れている。またさらに、消臭性構造体1は可燃性なので、廃棄が簡易であり、且つ、焼却による減容性が高められる。またさらに、活性炭素繊維がパルプと混合されて消臭性構造体1中に適度に且つ良好に分散されているので、悪臭物質の吸着効率が一層高められる。したがって、消臭性構造体1の消臭性能がより一層高められ、一層優れた消臭効果を得ることができる。
【0039】
また、シート12が波形状に加工されているので、消臭性構造体1の容積あたりの有効表面積が増大されると共に、波形状によって空間が画成されて通気性が高められる。これらにより、消臭性構造体1の消臭性能が一層高められる。よって、消臭性構造体1による消臭効果を更に一層向上することが可能となる。加えて、消臭性構造体1をより小型化でき、消臭性構造体1の設置スペースを一層縮小することが可能となる。さらに、波形状は優れた強度特性を有するので、保管時等に多段積みしたり又は外部からの衝撃に対しても変形や圧潰し難く、画成された空間が保持されて良好な消臭性能を維持できる。
【0040】
またさらに、金属フタロシアニンポリカルボン酸は、悪臭物質の分解反応において触媒として機能し、それ自身が消耗することがない。したがって、十分な消臭効果を長期間持続することが可能となる。加えて、金属フタロシアニンポリカルボン酸は、酸やアルカリに対して安定であり、且つ、耐候性及び耐熱性に優れると共に水に可溶であって耐湿性にも優れる。よって、安定した消臭効果が得られる。むしろ、吸湿することによって金属フタロシアニンポリカルボン酸による悪臭物質の分解効果が高められる。したがって、消臭性構造体1を湿気の多い場所に適用しても、十分な消臭効果が得られる。
【0041】
そして、フタロシアニンポリカルボン酸と配位結合している金属がコバルトなので、他の金属が配位した金属フタロシアニンポリカルボン酸に比して触媒能が高く、悪臭物質の分解効率が高められる。したがって、一段と優れた消臭効果を得ることができる。
【0042】
図2及び図3は、本発明の消臭剤に係る好適な一実施形態を示す斜視図である。消臭剤2は、本発明による消臭性構造体1が、通気孔22を有する紙製のケース21(筐体)の内部に配置されたものである。また、図3に示すように、消臭性構造体1は、ケース21の開閉可能な側壁からケース21の内部に挿入され、図2に示す如くケース21と一体化されている。また、ケース21の外面には、消臭剤2の交換時期を示すシール23を貼付できるようになっている。
【0043】
消臭剤2が、図2に示す状態で、消臭が望まれる環境に設置されると、その環境に存在する悪臭物質を含む空気等の気体が、主に通気孔22からケース21内へ侵入(流入)する。ケース21内へ入った気体は、消臭性構造体1の周囲に拡散し、気体中の悪臭物質が消臭性構造体1に到達して活性炭素繊維に迅速に吸着される。また、消臭性構造体1が活性炭をも含む場合には、悪臭物質は活性炭にも吸着される。吸着された悪臭物質は、金属フタロシアニンポリカルボン酸の触媒作用によって速やかに分解され、周囲の消臭が迅速に行われる。
【0044】
このように構成された消臭剤2によれば、消臭性構造体1の消臭性能が従来に比して格段に高められているので、消臭剤2が設置された環境に対して十分な消臭効果を得ることが可能となる。また、消臭性構造体1が良好な消臭性能を維持しつつ小型化され得るので、ケース21もコンパクトにすることができる。その結果、消臭剤2の設置スペースを縮小して省スペース化を図ることができる。よって、収納等のスペースを極力確保したい場所に適用すると非常に有用である。さらに、ケース21が紙製なので、消臭剤2全体が可燃物となる。したがって、消臭剤2の廃棄が簡易となり、且つ、焼却による減容性を向上できる。
【0045】
なお、上述の消臭性構造体1に用いられる活性炭素繊維として石油ピッチ系のものを採用したが、繊維とし得るものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、ポリアクリロニトリル系(PAN系)、フェノール系等のものが挙げられる。また、消臭性構造体1に用いられる活性炭としては、椰子殻を原料とするものが好ましく用いられるが、これに限定されるものではなく、石炭系でも木質系等であってもよく、骨炭又は獣炭を含んでいても構わない。さらに、活性炭の平均孔径は、通常、活性炭素繊維の平均孔径よりも大きいが、両者の平均孔径が同等であっても構わない。例えば、上述の実施形態において、消臭性構造体1に含まれる活性炭の平均孔径が活性炭素繊維と同様に1〜4nmであってもよい。
【0046】
さらに、消臭性構造体1を構成するシート11,12は、混抄によってシート化されているが、シート化する方法は、この方法に限定されるものではない。他の方法としては、例えば、抄紙せずに混練したものを延伸してシート化する方法、パルプと活性炭素繊維を公知の織布又は不織布の製造方法により個別にシート化したものを積層させて接合する方法、それらシートで活性炭を囲繞して包接する方法等が挙げられる。またさらに、シート11,12を金属フタロシアニンポリカルボン酸溶液に含浸し、乾燥して金属フタロシアニンポリカルボン酸を添着させているが、この方法に限定されるものではない。例えば、シート11,12にアクリル系エマルジョン等の接着剤を塗布し、その上に金属フタロシアニンポリカルボン酸を乾式で定着させてもよいし、混抄又は混練時に混入させても構わない。
【0047】
さらにまた、消臭性構造体1は、活性炭、パルプ及びアクリル系エマルジョンを含んでいるが、これらの一部又は全部を省略してもよい。構成部材が活性炭素繊維及び金属フタロシアニンポリカルボン酸のみの場合でも、例えば、活性炭素繊維を公知の織布又は不織布の製造方法によってシート化し、これに金属フタロシアニンポリカルボン酸を湿式又は乾式で担持させることが可能である。
【0048】
また、接着剤としてアクリル系エマルジョンを用いているが、接着剤の主成分としては、例えば、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルアセタール系、塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエチレン系、セルロース系、ユリア系、メラミン系、フェノール系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアロマティック系、レゾルシノール系等の化合物であってもよく、これら成分を単独或いは二種以上混合して用いることができる。そして、これら主成分に、必要に応じて溶剤、可塑剤、樹脂、充填剤、顔料、硬化剤、劣化防止剤、防腐剤、増粘剤、消泡剤、カップリング剤(増強剤)等を添加して接着剤とすることが好ましい。
【0049】
さらに、パルプの代わりに、他の可燃性繊維を用いても構わない。またさらに、消臭性構造体1又は消臭剤2は、例えば、抗菌剤、抗カビ剤、防菌剤、防カビ剤、制電剤、帯電防止剤、色素等の成分を含んでいてもよい。さらにまた、消臭剤2を構成するケース21を紙製としているが、紙以外の可燃性材料で形成してもよい。また、ケース21はこのような可燃性材料から成るものに限定されるものではなく、例えば、金属製又はプラスチック製(樹脂製)の筐体として強度を高めてもよい。この場合には、消臭性構造体1のみを取り替えて何回も使用することが可能である。金属材料及びプラスチック材料としては、再利用(リサイクル)可能なものであると好適であり、プラスチック材料が可燃物であれば、易廃棄性の観点から一層望ましい。
【0050】
そして、消臭性構造体1又は消臭剤2は、それらの高い消臭性能及び省スペース性能を生かして、冷蔵庫、食器棚、台所の流し、箪笥、クローゼット、下駄箱等に好ましく用いることができる。また、空調機器、冷暖房機器、乾燥機、加湿器、掃除機等のフィルター基材として有用である。さらに、靴の中敷きとして用いても好適である。この場合には、消臭性構造体の消臭性能が優れるが故に、消臭性構造体を薄層化することができる。よって、例えば、この薄い消臭性構造体をメッシュ状の通気性部材(通気孔を有する部材)等で覆うことにより、靴底にフィットして靴の履き心地を損なわない消臭剤が得られる。
【0051】
このとき、消臭性構造体又は消臭剤が抗菌・抗カビ剤をさらに含有すると、良好な消臭性能と相俟って、菌体の繁殖と、その菌体に起因する悪臭物質の発生が低減されるので、靴の内部が長期間清潔に維持されて衛生上非常に好ましい。また、生ゴミが発する悪臭(腐敗臭)の消臭に対しても極めて有効である。具体的には、消臭性構造体を粉状、粒状、線状、紙片等として生ゴミに混入したり、シート状として生ゴミと共にゴミ袋中に収容したり、シート状として生ゴミを覆ったりすることが挙げられる。このとき、前述したように消臭性構造体及び/又は消臭剤を可燃性のものとすれば、生ゴミと共に可燃物として簡易に廃棄できる。或いは、他の用法として、生ゴミの収納容器(ゴミ箱等)の側壁、内壁又は蓋裏に貼付したり、台所流しの生ゴミ収容器(コーナーボックス等)に配置してもよい。
【0052】
【実施例】
以下、本発明に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。
【0053】
〈実施例1〜3〉
石油ピッチ系活性炭素繊維、椰子殻活性炭及びパルプを下記表1に示した割合で混合し、アクリル系エマルジョン5重量%を用いて混抄して厚み約200μm、秤量約100g/m2のシートを得た。そして、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸(オリエント化学工業製、製品名CPC−4)をアルカリ溶液(pHが12〜13)に溶解し、その溶液を中和した後、この溶液に上記シートを含浸させた。含浸後、そのシートを乾燥し、若干緑色を帯びた青色のシート状の消臭性構造体を作製した。コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸の添着量(担持量)を重量法で定量したところ、消臭性構造体の全重量に対して、0.99重量%であった。
【0054】
【表1】
Figure 0004938164
【0055】
次いで、消臭性構造体の消臭性能を評価するため、消臭性構造体6gを容量10リットルの容器内に入れ、下記表2に記載の各悪臭物質を独立に投入して密閉した。そして、1時間経過後の各悪臭物質の残存量を測定し、それらの残存率を求めた。この残存率から下記式(4);
除去率(%)=100−残存率(%) …(4)
で表される関係を用いて各悪臭物質の除去率を算出した。得られた除去率の結果を表2に示す。なお、容器中の各悪臭物質の初期濃度は、アンモニアが120ppm、アセトアルデヒドが15ppm、メチルメルカプタンが20ppm、トリメチルアミンが15ppmであった。また、表中、( )内の数値は残存率を示す。
【0056】
【表2】
Figure 0004938164
【0057】
〈実施例4及び5〉
実施例2と同じ成分混合比のシートに、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸(オリエント化学工業製、製品名CPC−4)を0.10重量%(実施例4)、0.50重量%(実施例5)添着させたこと以外は、実施例1と同様にして消臭性構造体を作製し、それらの消臭性能を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0058】
参考例1〜3
吸着媒体として活性炭を用いずに活性炭素繊維のみとし、表1に示す成分比としたこと以外は、実施例1と同様にして消臭性構造体を作製し、それらの消臭性能を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0059】
〈比較例1〉
消臭性構造体の代わりに椰子殻活性炭45gのみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして消臭性能を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0060】
〈比較例2〉
活性炭素繊維及び活性炭を用いずにパルプのみで抄紙したシートを、鉄フタロシアニンポリカルボン酸溶液に含浸させた後乾燥させた。このシートに対し、実施例1と同様にして消臭性能を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0061】
〈比較評価1〉
表2に示すように、本発明の消臭性構造体を用いた場合(実施例1〜)、活性炭のみの場合(比較例1)、及び、鉄フタロシアニンポリカルボン酸とパルプのみの場合(比較例2)における1時間経過後のアセトアルデヒドの除去率は、それぞれ73〜88%、56%、及び37%であった。また、同メチルメルカプタンに対する除去率は、それぞれ87〜100%、40%、及び20%であった。さらに、同トリメチルアミンに対する除去率は、それぞれ96〜100%、29%、及び64%であった。
【0062】
これらの結果より、本発明の消臭性構造体は、悪臭物質(アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、トリメチルアミン)に対して十分な消臭効果を発揮することが確認された。また、その即効性の観点で非常に優れていることが明らかとなった。なお、同アンモニアに対する除去率は、それぞれ90〜96%、90%、及び100%であり、アンモニアに対する三者の消臭性能には遜色がなかった。
【0063】
〈実施例9〉
実施例1と同様に作製した消臭性構造体(面積100cm2)を容器内に入れ、この容器に初期濃度が5ppmとなるように、悪臭物質として硫化水素を投入して密閉した。30分経過後の硫化水素の残存濃度をガス検知管により測定し、硫化水素の除去率を求めた。これを1サイクルとし、このサイクルを20回繰り返した。なお、各サイクルの初期濃度は全て5ppmとした。1〜10及び20サイクルにおける除去率を下記表3に示す。
【0064】
【表3】
Figure 0004938164
【0065】
〈比較例3〉
石油ピッチ系活性炭素繊維、椰子殻活性炭及びパルプを表1に示す割合で混合し、アクリル系エマルジョン5重量%を用いて混抄して厚み約200μm、秤量約100g/m2のシートを得た。そして、消臭性構造体の代わりにこのシート(200cm2)を用いたこと以外は、実施例9と同様にして硫化水素の除去率を求めた。1〜10及び20サイクルにおける除去率を表3に併せて示す。
【0066】
〈比較評価2〉
表3に示すように、本発明の消臭性構造体を用いた場合(実施例9)には、10サイクル経過しても硫化水素は100%除去されており、20サイクル経過後においても除去率は90%と十分に高かった。一方、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸を含有しない場合(比較例3)には、3サイクル目にして早くも除去率が低下し始め、10サイクル経過後の除去率は17%と低く、そして20サイクル経過後には硫化水素を全く除去できない状態となった。
【0067】
これは、本発明の消臭性構造体では、吸着された硫化水素がコバルトフタロシアニンテトラカルボン酸によって短時間に十分に分解されるので、消臭効果が長時間持続することを示すものである。一方、コバルトフタロシアニンテトラカルボン酸が含まれないと、吸着された硫化水素が分解されずに保持されるだけなので、吸着能が速やかに低下し、消臭効果が長時間持続されないことを示すものでもある。よって、この比較結果より、本発明の消臭性構造体は、十分な消臭性能を長時間維持できることが確認された。
【0068】
参考例4
参考例1と同様に作製した消臭性構造体50cm2(成分比を下記表4に示す)を容量70mlのバイアル瓶に入れ、このバイアル瓶に悪臭物質としてエタンチオール100μlを投入して密閉した。それから10分経過後のエタンチオールの残存量を測定し、エタンチオールの残存率を求めた。この残存率を用い、上述した式(4)で表される関係からエタンチオールの除去率を算出した。また、同様にして、1時間経過後のエタンチオールの残存率を求め、除去率を算出した。得られた結果を活性炭素繊維及び活性炭の含有割合と共に下記表5に示す。なお、表中、( )内の数値は残存率を示す。
【0069】
【表4】
Figure 0004938164
【0070】
【表5】
Figure 0004938164
【0071】
〈実施例11〉
実施例1と同様に作製した消臭性構造体50cm2(成分比を表4に併せて示す)を用いた以外は、実施例10と同様にしてエタンチオールの残存率を求め、その除去率を算出した。結果を表5に併せて示す。
【0072】
参考例5
活性炭素繊維及びパルプの含有割合を変えたこと以外は、参考例1と同様にして消臭性構造体を作製した。成分比を表4に併せて示す。この消臭性構造体50cm2を用いた以外は、参考例4と同様にしてエタンチオールの残存率を求め、その除去率を算出した。結果を表5に併せて示す。
【0073】
〈比較例4〉
石油ピッチ系活性炭素繊維を用いずに、椰子殻活性炭及びパルプを表4に示す割合で混合し、アクリル系エマルジョン5重量%を用いて混抄して厚み約200μm、秤量約100g/m2のシートを得た。このシートを用いた以外は、実施例1と同様にして消臭性構造体を作製した。この消臭性構造体50cm2を用いた以外は、実施例10と同様にしてエタンチオールの残存率を求め、その除去率を算出した。結果を表5に併せて示す。
【0074】
〈比較評価3〉
表5に示すように、従来の活性炭のみを吸着媒体として用いた消臭性構造体(比較例4)では、10分経過後及び1時間経過後のエタンチオールの除去率は、それぞれ45%及び56%であった(残存率はそれぞれ55%及び44%)。これに対し、比較例4の活性炭と同じ割合(成分比)で活性炭素繊維のみを吸着媒体として用いた消臭性構造体(参考例4)では、同除去率がそれぞれ57%及び63%(残存率はそれぞれ43%及び37%)であった。また、活性炭素繊維が参考例4の半分量含まれている消臭性構造体(参考例5)では、同除去率がそれぞれ50%及び60%(残存率はそれぞれ43%及び37%)であり、比較例4よりも高い除去率を示した。これらの結果より、本発明による消臭性構造体の消臭性能は、従来に比して改善されることが確認された。
【0075】
また、吸着媒体全量の含有割合は比較例4と同じであり、且つ、吸着媒体として活性炭素繊維と活性炭とを混合して用いた本発明の消臭性構造体(実施例11)では、同除去率がそれぞれ65%及び76%(残存率はそれぞれ35%及び24%)であった。実施例11は活性炭素繊維と活性炭とを組み合わせて用いた消臭性構造体であるので、そのエタンチオールの除去率は、比較例4と参考例4との中間的な値、例えば、10分経過及び1時間経過後の除去率がそれぞれ約50%及び約60%になると予想される。ところが、上記の結果は、この予想値を有意に上回るものであった。これは活性炭素繊維と活性炭との相乗効果を示すものと考えられ、このことから、吸着媒体として両者を混合して用いる本発明の消臭性構造体の優位性が理解される。
【0076】
参考例6、実施例14及び参考例7
消臭性構造体の使用面積を5cm2としたこと、並びに、エタンチオール残存量の測定時間(経過時間)を、バイアル瓶の密閉から6、24、72、168及び240時間経過後としたこと以外は、参考例4、実施例11及び参考例5と同様にしてエタンチオールの残存率を求め、その除去率を算出した。このように、参考例4、実施例11及び参考例5と本参考例6、実施例14及び参考例7とで用いた消臭性構造体の成分比はそれぞれ同じである(表4参照)。得られたエタンチオールの除去率を下記表6に示す。
【0077】
【表6】
Figure 0004938164
【0078】
〈比較例5〉
消臭性構造体の使用面積を5cm2としたこと、並びに、エタンチオール残存量の測定時間を、バイアル瓶の密閉から6、24、72、168及び240時間経過後としたこと以外は、比較例4と同様にしてエタンチオールの残存率を求め、その除去率を算出した。このように、比較例4及び5で用いた消臭性構造体の成分比は同一である(表4参照)。得られたエタンチオールの除去率を表6に併せて示す。
【0079】
〈比較評価4〉
図4は、表6に示すデータをグラフ化したものであり、比較例5及び参考例6、実施例14及び参考例7における経過時間に対するエタンチオールの除去率の変化を示すグラフである。図中、L5、L13、L14及びL15は、それぞれ比較例5、参考例6実施例14及び参考例7のデータ値を結ぶ折れ線である。これらの図表より、まず、比較例5と参考例6とを比較したところ、6時間乃至24時間経過時点において、両者の間には差異が認められ難いものの、72時間以上経過すると参考例6のエタンチオール除去率は、比較例5に比して有意に高くなっていることが判明した。
【0080】
比較例5及び参考例6は、それぞれ活性炭及び活性炭素繊維を吸着媒体として用いており、その含有割合は同じである。よって、この結果より、活性炭素繊維を用いた消臭性構造体は、活性炭を用いた従来に比して、優れた消臭性能を発現でき、特に経過時間が長くなるとその効果が顕著となることが確認された。また、参考例6の72時間及び168時間経過時のエタンチオール除去率は、比較例5の168時間及び240時間経過時の値とそれぞれ略同等である。よって、消臭効果の即効性の観点からも、本発明による消臭性構造体は従来よりも優れていることが理解される。
【0081】
一方、吸着媒体としての含有割合は比較例5及び参考例6と同じであるが、活性炭素繊維と活性炭とを混合して用いた実施例14は、消臭の初期(6時間経過時)から一貫して、比較例5及び参考例6よりも高いエタンチオールの除去率を示した。特に、24時間経過時における実施例14の除去率は74%であり、比較例5及び参考例6の除去率(約50%強)より20%以上も高い値であった。
【0082】
ところで、実施例14における除去率は、比較例5及び参考例6の中間的な値を示すと通常は予想されるが、上記の結果は、この予想を覆すものであった。これは、〈比較評価3〉で述べたのと同様に、活性炭素繊維と活性炭との相乗効果を示すものであり、一般に容易に想到し得ない結果であると考えられる。このことから、吸着媒体として活性炭素繊維と活性炭とを混合して用いる本発明の消臭性構造体の優位性が更に理解される。
【0083】
他方、吸着媒体として参考例4の半分量の活性炭素繊維のみを用いた参考例7では、消臭の初期(6時間及び24時間経過時)におけるエタンチオールの除去率は、参考例4の1/2程度であった。この結果は、活性炭素繊維の含有量に比例した除去率を示すものである。ところが、経過時間が72時間以上となると、活性炭素含有量の比から推定される除去率よりもはるかに高い値、しかも吸着媒体の含有量としては参考例7の2倍である比較例5と同等の値を示すことが確認された。これより、活性炭素繊維を含む本発明の消臭性構造体は、極めて高い消臭性能を有することが理解される。
【0084】
〈実施例16〉
実施例1と同様に作製したシート状の消臭性構造体を、図1に示す消臭性構造体1の形状(コルゲート形状)に加工した。この消臭性構造体を、図3に示す形態の紙製のケースに挿入して消臭剤2と同等形状を有する消臭剤を作製した。この消臭剤を用いて実施例1と同様にして消臭性能を評価したところ、実施例1と同等の結果が得られた。これより、本発明による消臭剤は、従来に比して優れた消臭性能を発現することが確認された。
【0085】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の消臭性構造体及び消臭剤によれば、吸着媒体及び触媒の量を低減しても十分な消臭効果を得ることが可能になると共に、コンパクト化によって省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の消臭性構造体に係る一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の消臭剤に係る一実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の消臭剤に係る一実施形態を示す斜視図である。
【図4】比較例5及び実施例13、14及び15における経過時間に対するエタンチオールの除去率の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1…消臭性構造体、2…消臭剤、21…ケース(筐体)、22…通気孔。

Claims (5)

  1. 細孔を有する吸着媒体としての活性炭素繊維と、該活性炭素繊維に担持された下記式(1)で表される金属フタロシアニンポリカルボン酸と、を含有して成り、前記吸着媒体として前記金属フタロシアニンポリカルボン酸を担持した活性炭を更に含有し、パルプと、該パルプと前記吸着媒体とを接合することが可能な接着剤と、を更に含有し、該パルプと該吸着媒体とが混合且つ接合されて成ることを特徴とするシート状の消臭性構造体。
    Figure 0004938164
    [但し、式(1)中のMは金属原子である。また、式(1)中のRは、少なくとも4個がカルボキシル基であり、残りが水素原子である。]
  2. 上記式(1)におけるMがコバルトであることを特徴とする請求項1記載の消臭性構造体。
  3. 前記吸着媒体は、平均孔径が1〜4nmである細孔を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の消臭性構造体。
  4. 前記消臭性構造体の一部又は全部が波形状に加工されて成ることを特徴とする請求項1記載の消臭性構造体。
  5. 通気孔を有する筐体と、該筐体の内部に配設された請求項1〜4のいずれか一項に記載の消臭性構造体と、を備えることを特徴とする消臭剤。
JP2000085194A 1999-04-30 2000-03-24 消臭性構造体及び消臭剤 Expired - Lifetime JP4938164B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000085194A JP4938164B2 (ja) 1999-04-30 2000-03-24 消臭性構造体及び消臭剤

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11-124321 1999-04-30
JP1999124321 1999-04-30
JP12432199 1999-04-30
JP2000085194A JP4938164B2 (ja) 1999-04-30 2000-03-24 消臭性構造体及び消臭剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001009019A JP2001009019A (ja) 2001-01-16
JP4938164B2 true JP4938164B2 (ja) 2012-05-23

Family

ID=26461012

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000085194A Expired - Lifetime JP4938164B2 (ja) 1999-04-30 2000-03-24 消臭性構造体及び消臭剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4938164B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3720336B2 (ja) 2003-04-30 2005-11-24 住江織物株式会社 消臭材及びその製造方法
WO2005037334A1 (ja) * 2003-10-20 2005-04-28 Suminoe Textile Co.,Ltd. 消臭フィルター
JP2006280487A (ja) * 2005-03-31 2006-10-19 Suminoe Textile Co Ltd 消臭フィルター
JP4911706B2 (ja) * 2007-02-28 2012-04-04 住江織物株式会社 消臭フィルター
JP2009034641A (ja) * 2007-08-03 2009-02-19 Toyobo Co Ltd 脱臭浄化フィルタ
JP4898757B2 (ja) * 2007-10-05 2012-03-21 大阪瓦斯株式会社 吸遮音性能を有する浄化ユニット、及びこれを用いた浄化構造体
JP2011015727A (ja) * 2009-07-07 2011-01-27 Suminoe Textile Co Ltd 消臭装置
KR102290411B1 (ko) * 2014-11-13 2021-08-18 주식회사 지티사이언 패시브 정화형 시약 트레이 및 이를 포함하는 패시브 정화형 시약장
JP2021525641A (ja) * 2018-05-25 2021-09-27 インターナショナル・ペーパー・カンパニー 臭気抑制吸収性材料および吸収性物品ならびに関連する使用の方法および作製の方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62101255A (ja) * 1985-10-29 1987-05-11 株式会社 ア−スクリ−ン 消臭装置
JPS6420851A (en) * 1987-07-15 1989-01-24 Nippon Carbide Kogyo Kk Deodorizing material
JPS6483265A (en) * 1987-09-24 1989-03-29 Dainippon Ink & Chemicals Deodorant
JPH0668758U (ja) * 1993-03-16 1994-09-27 クラレケミカル株式会社 吸着性及び濾過性モジュール
JPH06304233A (ja) * 1993-04-21 1994-11-01 Nippondenso Co Ltd 脱臭剤
JP3856049B2 (ja) * 1996-03-11 2006-12-13 大阪瓦斯株式会社 空気清浄用フィルター材
JPH119671A (ja) * 1997-06-23 1999-01-19 Sharp Corp 複合消臭フィルタ及びそれを備える複合消臭フィルタ装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2001009019A (ja) 2001-01-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4997974B2 (ja) 消臭剤および消臭性製品
JPS62502519A (ja) 室内の空気から悪臭を除去する方法ならびにフイルタ・エレメントおよび空気ろ過器
JP4911706B2 (ja) 消臭フィルター
JP4938164B2 (ja) 消臭性構造体及び消臭剤
JP4889429B2 (ja) 消臭フィルター
JP2007260603A (ja) 空気清浄機用フィルターユニット
JPWO2004080497A1 (ja) 熱再生脱臭フィルター
JP2007275292A (ja) 消臭フィルタ及び消臭装置
JP2002119809A (ja) フィルタ、並びにそれを用いた空気清浄機及びエアーコンディショナー
CN1871035B (zh) 除臭过滤器
JP2007229092A (ja) タバコ消臭フィルター
JP2012120637A (ja) 消臭フィルター
JP3987420B2 (ja) 脱臭フィルタ及びその製造方法
JP2008148804A (ja) たばこ臭の除去性能に優れた消臭剤
WO1996013994A1 (en) Odor reducing insole with odor reactant particles
CN1108150A (zh) 空气净化剂和空气净化装置
JP5229784B2 (ja) タバコ消臭フィルター
CN1197626C (zh) 除臭结构体及除臭剂
JP3764872B2 (ja) 消臭材及びその製造方法
JP2017064048A (ja) 消臭剤及び該消臭剤を備えた消臭フィルター
JP2004267752A (ja) 脱臭器、脱臭器の再生方法、脱臭器の設計方法
JP2000271203A (ja) 脱臭フィルター
JP2006014769A (ja) 自動車用消臭パック
JPH07204259A (ja) 金属カルボン酸塩含有空気浄化剤
JP3180997B2 (ja) 悪臭ガス吸着剤

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070122

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090513

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090519

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090721

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100302

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100602

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100715

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20100721

A912 Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912

Effective date: 20101001

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20111215

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120127

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120223

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150302

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4938164

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term