JP4935969B2 - 酵母カプロン酸高生産株 - Google Patents

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Description

本発明は、カプロン酸を高生産する酵母変異株、このような変異株の製造方法、及び酵母のカプロン酸の生産量の調節方法に関する。
カプロン酸エチルは吟醸香の代表的な香気成分であり、吟醸酒の品質において重要な成分の一つである。カプロン酸エチルは前駆体であるカプロン酸がエステル化されて生じ、その生成量はカプロン酸の供給量に左右される。さらに、清酒中のカプロン酸は酵母の脂肪酸合成酵素(FAS)により生合成されるが、カプロン酸として蓄積されずに代謝されてしまう。従って、カプロン酸からのカプロン酸エチルの生産量は一般にごく僅かである。
従って、カプロン酸生産性をより高め、あるいは逆に抑えることは、清酒のような嗜好品の品質の追及において重要な課題である。また、清酒に限らず酵母によって製造される食品の全てにおいても商品の差別化に活用しうる。
ここで、特許文献1は、カプロン酸を高生産する変異酵母の育種法としてセルレニン耐性変異法を教えている。同文献には、各種酵母を変異処理し、セルレニン含有培地で生育する菌株を選択すれば、カプロン酸及び/又はカプロン酸エチルを多く生成するようになった変異株が得られることが記載されている。実施例では、清酒酵母からカプロン酸生産能が向上した株を得ている。
また、非特許文献1によれば、酵母のセルレニン耐性株では、脂肪酸合成酵素のαサブユニットをコードするFAS2遺伝子の一塩基置換により、FAS2に含まれる配列番号2に示される部分アミノ酸配列において、アミノ酸番号4のグリシンがセリンに置換されている。
また非特許文献2によれば、試験管内変異導入(in vitro mutagenesis)で、上記グリシンをシステインに人為的に置換したセルレニン耐性酵母では、このグリシンがセリンに置換されたセルレニン耐性変異株よりカプロン酸生産量が高いことを教えている。
特公平7−46982号 Inokoshi et al, Mol. Gen Genet., 244,90-96 (1994) Aritomi et al, Biosci. Biotechnol. Biochem., 68, 206-214 (2004)
本発明は、カプロン酸生産量が向上した酵母変異株、このような変異株の製造方法、及び酵母のカプロン酸生産量の調節方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、以下の知見を得た。
(i) 酵母の脂肪酸合成酵素のFAS1の配列番号1に示す部分アミノ酸配列においてアミノ酸番号7のXaaがグルタミン酸である場合は、アスパラギン酸である場合より、その酵母のカプロン酸生産量が高い。
(ii) FAS1遺伝子の配列番号3に示す部分塩基配列において塩基番号21のnがA又はであることにより、FAS1タンパク質が配列番号1に示す部分アミノ酸配列においてアミノ酸番号7のXaaがグルタミン酸であるものとなる。
(iii) 清酒酵母、及び焼酎酵母のFAS1は配列番号1に示す部分アミノ酸配列においてアミノ酸番号7のXaaがアスパラギン酸であるが、実験室酵母、ワイン酵母、ウィスキー酵母、パン酵母、上面ビール酵母、ラガービール酵母、蒸留酒酵母、及び酵母基準株は、Xaaがグルタミン酸になった対応する部分アミノ酸配列を有する。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の酵母カプロン酸高生産株などを提供する。
項1. 配列番号1に示すアミノ酸配列のアミノ酸番号7のXaaがグルタミン酸である部分アミノ酸配列を有するFAS1を備える脂肪酸合成酵素を生産する酵母を変異処理し、変異処理酵母の中からセルレニン耐性を獲得した菌株を選択することにより得られる酵母カプロン酸高生産株。
項2. 実験室酵母、ワイン酵母、ウィスキー酵母、パン酵母、上面ビール酵母、ラガービール酵母、蒸留酒酵母、及び酵母基準株からなる群より選ばれる酵母を変異処理し、変異処理酵母の中からセルレニン耐性を獲得した菌株を選択することにより得られる酵母カプロン酸高生産株。
項3. 実験室酵母itr001株(FERM P−20638)。
項4. 実験室酵母S288CR株(FERM P−20639)。
項5. 配列番号1に示すアミノ酸配列においてアミノ酸番号7のXaaがグルタミン酸である部分アミノ酸配列を有するFAS1と、配列番号2に示すアミノ酸配列においてアミノ酸番号4のXaaがセリン、又はシステインである部分アミノ酸配列を有するFAS2とを備える脂肪酸合成酵素を生産する酵母カプロン酸高生産株。
項6. 配列番号1に示すアミノ酸配列においてアミノ酸番号7のXaaがグルタミン酸である部分アミノ酸配列を有するFAS1を備える脂肪酸合成酵素を生産する酵母を変異処理する工程と、変異処理酵母の中からセルレニン耐性を獲得した菌株を選択する工程とを含む酵母カプロン酸高生産株の製造方法。
項7. 実験室酵母、ワイン酵母、ウィスキー酵母、パン酵母、上面ビール酵母、ラガービール酵母、蒸留酒酵母、及び酵母基準株からなる群より選ばれる酵母を変異処理する工程と、変異処理酵母の中からセルレニン耐性を獲得した菌株を選択する工程とを含む酵母カプロン酸高生産株の製造方法。
項8. 清酒酵母、又は焼酎酵母の脂肪酸合成酵素FAS1中に含まれる配列番号1に示す部分アミノ酸配列のアミノ酸番号7のXaaをアスパラギン酸からグルタミン酸に置換する工程と、変異処理する工程と、変異処理酵母の中からセルレニン耐性を獲得した菌株を選択する工程とを含む酵母カプロン酸高生産株の製造方法。
項9. 酵母の脂肪酸合成酵素FAS1遺伝子中に含まれる配列番号3に示す部分塩基配列の塩基番号21のnを置換する工程を含む、酵母のカプロン酸生産量を調節する方法。
項10. 酵母を用いて酒類、又はパンを製造する方法であって、酵母として、項1、2、若しくは5に記載の酵母カプロン酸高生産株、又は項3、若しくは4の株を使用する方法。
項11. 酵母として、項1、2、若しくは5に記載の酵母カプロン酸高生産株、又は項3、若しくは4の株を使用して製造された酒類、又はパン。
従来、酵母の脂肪酸合成酵素のFAS2の変異により、カプロン酸の生産量が増大すると考えられてきたが、本発明により、FAS1の変異によっても、カプロン酸生産量が増大することが見出された。
即ち、殆どの酵母において、FAS1は、配列番号1に示す部分アミノ酸配列においてアミノ酸番号7がアスパラギン酸又はグルタミン酸であるが、カプロン酸の生産量は、このアミノ酸がグルタミン酸である酵母菌株ではアスパラギン酸である酵母菌株の約1.4倍である。また、実験室酵母、ワイン酵母、ウィスキー酵母、パン酵母、上面ビール酵母、ラガービール酵母、蒸留酒酵母、及び酵母基準株は、上記のアミノ酸(Xaa)がグルタミン酸である。
従って、実験室酵母、ワイン酵母、ウィスキー酵母、パン酵母、上面ビール酵母、ラガービール酵母、蒸留酒酵母、及び酵母基準株のような上記アミノ酸がグルタミン酸であるような酵母菌株を変異させてセルレニン耐性を獲得したFAS2変異株を選択すれば、FAS1及びFAS2の双方の構造に起因してカプロン酸生産量が非常に高い酵母変異株が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)酵母カプロン酸高生産株、及びその製造方法
本発明の酵母カプロン酸高生産株は、アミノ酸配列(Asn Thr Asp Asp Tyr Phe Xaa Glu Leu Arg;配列番号1)においてアミノ酸番号7のXaaがグルタミン酸である部分アミノ酸配列を有するFAS1を備える脂肪酸合成酵素を生産する酵母を変異処理する工程と、変異処理酵母の中からセルレニン耐性を獲得した菌株を選択する工程とを含む方法により得られる。
配列番号1のアミノ酸番号7のアミノ酸(以下、「目的アミノ酸」という)は、酵母標準菌株である実験室酵母S288C株のFAS1では第171番目に位置するアミノ酸である。実験室酵母S288C株のFAS1のアミノ酸配列を配列番号10に示す。FAS1の対応する部分アミノ酸配列中のこのアミノ酸がグルタミン酸である酵母としては、例えば、実験室酵母、ワイン酵母、ウィスキー酵母、パン酵母、上面ビール酵母、ラガービール酵母(Saccharomyses carlsbergensis)、蒸留酒酵母、及び酵母基準株などが挙げられる。
清酒酵母、焼酎酵母などでは、本来上記の目的アミノ酸がアスパラギン酸であるが、清酒酵母、焼酎酵母においてこの目的アミノ酸がグルタミン酸に置換された変異株を用いることもできる。FAS1遺伝子において、上記目的アミノ酸をコードするのは、その部分塩基配列であるAAC ACC GAC GAC TAC TTT GAn GAA TTG CGT(配列番号3)において塩基番号19〜21のGAnからなるコドンである。配列番号3の塩基配列において塩基番号21のn(以下、「目的塩基」という)は、実験室酵母S288C株のFAS1遺伝子配列では513番目に位置する。実験室酵母S288C株のFAS1遺伝子の塩基配列を配列番号11に示す。清酒酵母や焼酎酵母では、上記の目的塩基がCであるが、この塩基がA又はGである場合に、上記の目的アミノ酸がグルタミン酸になる。従って、例えば、清酒酵母や焼酎酵母のFAS1遺伝子の目的塩基をCからA又はGに置換する部位特異的変異により、目的アミノ酸がグルタミン酸であるFAS1を生産する変異株が得られる。
変異処理方法は、特に限定されず、公知の方法を使用できる。例えば、エチルメタンスルホン酸、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、亜硝酸、アクリジン系色素などでの化学処理;紫外線照射;放射線照射などの方法が挙げられる。
次いで、変異処理した酵母の中から、セルレニンに対する耐性を獲得した株を選択する。セルレニンは脂肪酸合成酵素を阻害する物質であり、また特許文献1によれば、セルレニン耐性株にはカプロン酸を含む中級脂肪酸の生産量が親株に比べて向上した株が多く存在する。従って、FAS1の171番目のアミノ酸がグルタミン酸であることに起因してカプロン酸生産量が多い菌株の変異処理菌株の中から、FAS2に変異を有してセルレニンに対する耐性を獲得した株を選択すれば、カプロン酸生産量が非常に高い酵母変異株が得られる。
また、FAS1の変異とFAS2の変異との順序を入れ替えてもよい。即ち、清酒酵母、又は焼酎酵母を変異処理して得られるセルレニン耐性株の中から、カプロン酸生産量が高くなった株を選択し、次いで、FAS1遺伝子の513番目の塩基の部位特異的変異などによりFAS1の171番目のアミノ酸をグルタミン酸に置換することもできる。これによっても、カプロン酸生産量が非常に高い菌株が得られる。
セルレニン耐性株は、10〜50μM程度のセルレニンを添加した、例えばYPD寒天培地(YPD培地に寒天2%を加えたもの)に、変異処理した株を塗布して、15〜37℃程度で、2〜10日間程度培養することにより選抜できる。この中から、カプロン酸の生産量が高い菌株を選択すればよい。
また、目的アミノ酸がグルタミン酸であるFAS1と、配列番号2のアミノ酸配列においてアミノ酸番号4のXaaがセリン又はシステインである部分アミノ酸配列を有する変異したFAS2とを備える脂肪酸合成酵素を生産する酵母も、カプロン酸生産量が非常に多い。このようなFAS2変異は、変異処理及びセルレニン耐性株の選抜による他、FAS2遺伝子の部位特異的変異によっても引き起こすことができる。
(II)カプロン酸生産量の調節方法
本発明の酵母のカプロン酸生産量を調節する方法は、酵母の脂肪酸合成酵素遺伝子FAS1の目的塩基を置換する工程を含む方法である。前述したように、目的塩基とは、FAS1遺伝子の部分塩基配列であって、配列番号3に示す塩基配列において塩基番号21の塩基nをいう。酵母の脂肪酸合成酵素FAS1遺伝子の513番目の塩基が、C又はTである場合にこれをA又はGに置換すれば、カプロン酸生産量を増大させることができる。一方、FAS1遺伝子の目的塩基がA又はTである場合にこれをCに置換すれば、カプロン酸生産量を低減させることができる。
酵母のカプロン酸生産量は、カプロン酸エチルの生産量を左右することから、清酒製造などに使用する酵母のカプロン酸生産量を調節することにより、吟醸香などの香りを制御することができる。
(III)酒類又はパン、及びその製造方法
本発明の酒類、又はパンの製造方法は、酵母として、上記説明した本発明のカプロン酸高生産株を用いる方法である。本発明の酵母株は、カプロン酸の生産量が高いことから、カプロン酸エチルの生産量が高い。この方法により得られる酒類やパンはカプロン酸エチルによる香気が非常に高いものとなる。酒類は特に限定されず、清酒、焼酎、ビール、ウィスキー、ワインなどが挙げられる。
実施例
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
FAS1遺伝子の置換によるセルレニン耐性変異酵母のカプロン酸生産性の改変
<セルレニン耐性株のFAS1遺伝子の破壊>
清酒酵母の日本醸造協会7号の変異処理及びセルレニン耐性選択により得たカプロン酸高生産変異株7−C−8(FERM−P−8452;特公平7−46982)のFAS1を、kanMXマーカーの両端にFAS1相同配列を有する遺伝子破壊用カセットで形質転換して、FAS1破壊株を得た。
具体的には、7−C−8株から調整したゲノムDNAを鋳型に、下記のフォワードプライマーFAS1F(ACTATGCGGTCTCGTCCTCTACGAATAT ;配列番号4)、及びリバースプライマー(ACACTTACGCATTTTTATTTCTCTTC ;配列番号5)を用いてPCRを行った。得られたPCR産物をTaKaRa BKLキットで平滑化し5’末端をリン酸化した後、制限酵素PvuIIで切断しCIP処理したpAG25ベクターにライゲーションした。作製したプラスミドはC−8FAS1−pAG25と名づけた。
プラスミドC−8FAS1−pAG25を制限酵素PvuIIで切断してFAS1のコーディングリージョンの大部分を切り出し、選択マーカーkanMXと置き換えた。選択マーカーkanMXは、プラスミドpFA6a-kanMX4(Wach A et.al.,Yeast 10,1793−1808(1994))を鋳型に、フォワードプライマーkanF(ATCGATGAATTCGAGCTCG;配列番号6)、リバースプライマーkanR(ACGTACGCTGCAGGTCGAC;配列番号7)をプライマーとしてPCRを行い調整した。この選択マーカーkanMXをTaKaRa BKLキットで平滑化し5'末端をリン酸化した後、C−8FAS1−pAG25を制限酵素PvuIIで切断しゲル電気泳動で精製した約6.7kbpの断片とライゲーションした。得られたプラスミドを鋳型に、FAS1F、FAS1RをプライマーとしてPCRを行って得られるPCR増幅断片を遺伝子破壊カセットとして酵母FAS1遺伝子の破壊に用いた。
<変異FAS1の導入>
FAS1を破壊した7−C−8株に、(i)部位特異的変異によってFAS1の171番目のアミノ酸をグルタミン酸に置換したFAS1クローン;(ii)本来的にFAS1のアミノ酸がグルタミン酸である実験室酵母S288C株及びD458−5A株の各FAS1アレル;及び(iii)FAS1(コントロール)を、それぞれ導入した。
具体的には、(i)STRATAGENE社のQuikChange II Site−Directed Mutagenesis Kitを用いてプラスミドC−8FAS1−pAG25のFAS1の513番目の塩基をCからAに変換した。方法はキットのプロトコルに準じた。変異導入のために、フォワードプライマーD171E−1F(ACACCGACGACTACTTTGAAGAATTGCGTGATCTATATC;配列番号8)、及びリバースプライマーD171E−1R(GATATAGATCACGCAATTCTTCAAAGTAGTCGTCGGTGT;配列番号9)を用いた。
また、(ii)実験室酵母S288C株、及びD458−5A株の各FAS1は、以下のようにして得た。S288C株、及びD458−5A株からそれぞれ調整したゲノムDNAを鋳型に、上記フォワードプライマーFAS1F、及びリバースプライマーFAS1Rを用いてPCRを行った。得られたPCR産物をTaKaRa BKLキットで平滑化し5’末端をリン酸化した後、制限酵素PvuIIで切断しCIP処理したpAG25ベクターにライゲーションした。作製したプラスミドはS288CFAS1−pAG25、及びD458FAS1−pAG25と名づけた。
(iii)については、プラスミドC−8FAS1−pAG25をそのまま用いた。
<形質転換方法>
上記の(i)、(ii)、及び(iii)のプラスミドを用いて、7−C−8株のFAS1破壊株の形質転換を行った。形質転換は、Gietz et.al.Yeast 11,355−360(1995)らの酢酸リチウム法に準じた。すなわち、YPD培地(2%グルコース、2%ポリペプトン、1%酵母エキス)で一晩振盪培養した酵母を、新鮮なYPD培地2〜5×10cell/mlになるように接種し、2〜3時間30℃で振盪培養し集菌した。この酵母菌体を10mlの滅菌水で2回、10mlのTE/LiAc溶液(100mM−酢酸リチウムpH7.5、10mM トリス塩酸緩衝液、1mM EDTA pH7.5)で1回洗浄し2×10cell/mlになるようTE/LiAc溶液に懸濁し30℃で15分間インキュベーションした。懸濁液50μlを滅菌したエッペンドルフチューブにとり、一本鎖キャリアDNA5μl(50μg)、DNA5μl(10μg)、PEG/TE/LiAc溶液(40%(w/v)PEG3350、100mM-酢酸リチウムpH7.5、10mMトリス塩酸緩衝液、1mM EDTA pH7.5)300μlを加えボルテックスでよく攪拌後、30℃で30分間インキュベーション、さらに42℃で20分間のヒートショック処理後、15秒間遠心し集菌した酵母菌体をYPD培地に懸濁して2時間30℃で振盪培養、培養液を遠心し集菌した酵母菌体を選択培地に塗布した。FAS1遺伝子破壊株の選択培地はYPD+FA+G418寒天培地(2%グルコース、2%ポリペプトン、1%酵母エキス、2mMミリスチン酸ナトリウム、0.5%Tween40、1000ppmG418 (ジェネティシン)、2%寒天)、FAS1形質転換体の選択培地としてはYPD+NAT寒天培地(2%グルコース、2%ポリペプトン、1%酵母エキス、200ppm clonNAT(nourseothricin)、2%寒天)を使用した。
以上説明した7−C−8株のFAS1の置換の様子を図1に示す。
<カプロン酸生産量の測定方法>
5mlのYPD培地で、30℃、2日間振盪培養した各形質転換酵母菌体を集菌し、α米7.8g、乾燥麹1.9g、水23.2ml、50%醸造乳酸15μlと混合し15℃一定で20日間醗酵した。得られた発酵もろみの遠心上清0.8mlをバイアルにとり、100ppmの4−メチル−2−ペンタノール(内部標準液)を10μl加え密栓し、バイアルのヘッドスペースにSPME(固相マイクロ抽出)ファイバーを挿入し、30℃で20分間ファイバーを振盪させながら抽出処理を行った後、SPMEファイバーをガスクロマトグラフィーに注入し分析した。
結果を図2に示す。図2のC−8FAS1は(iii)C−8株のFAS1を有するコントロールを示し、D171Eは(i)7−C−8株のFAS1の171番目のアミノ酸をグルタミン酸に置換したFAS1変異体を示し、S288CFAS1及びD458FAS1は、それぞれ(ii)FAS1の171番目が本来的にグルタミン酸である実験室酵母のFAS1を有する変異体を示す。図2から、FAS1の171番目のアミノ酸がグルタミン酸である場合のカプロン酸生産量は、アスパラギン酸である場合のカプロン酸生産量の1.3〜1.4倍であることが分かる。
酵母のFAS1の多型
清酒酵母、焼酎酵母、ワイン酵母、上面ビール酵母(エール酵母)、蒸留酒酵母、ウィスキー酵母、パン酵母、実験室酵母、ラガービール酵母(Saccharomyces carlsbergensis)、及び酵母基準株について、FAS1のアミノ酸配列、及びFAS1遺伝子の塩基配列を解析した。
結果を以下の表1に示す。
Figure 0004935969
清酒酵母及び焼酎酵母は、分離年代も分離場所も異なるにもかかわらず、FAS1遺伝子の513番目の塩基が1株の例外を除きCであり、FAS1の171番目のアミノ酸が1株の例外を除き、アスパラギン酸であった。清酒酵母と焼酎酵母の共通の祖先に生じた変異が多型として定着したものと推測される。なお、清酒酵母協会2号だけは例外であったが、協会2号は、現在主に使用されている清酒酵母のグループとは異なることがゲノム多型解析から示されている(Azumi et.al.Yeast 18,1145−1154(2001))。一方、その他の酵母では、FAS1遺伝子の513番目の塩基がAであり、FAS1の171番目のアミノ酸がグルタミン酸であった。
カプロン酸高生産株の単離
実験室酵母D458−5A株、及びS288C株の変異処理によりカプロン酸高生産株を得た。具体的には、0.2Mリン酸緩衝液(pH8.0)9.2ml、40%グルコース溶液0.5ml、EMS(エチルメタンスルホネート)0.3mlに約1×10cell/mlとなるように酵母を加え30℃で60分間ゆっくり振盪させた。処理後の酵母菌体を集菌し、水で数回洗浄後、25μMセルレニンを含むYPD寒天培地に酵母懸濁液をまいた。プレートを30℃で3日〜7日間インキュベーションし、生育してきたコロニーをセルレニン耐性変異株とした。
各株のカプロン酸生産量を実施例1と同様にして測定し、カプロン酸生産量が最も多い菌株を選択し、D458−5Aの変異株をitr001株と命名し、S288C株の変異株をS288CR株と命名した。itr001株は産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−20638として寄託済みであり、S288CR株も同センターにFERM P−20639として寄託済みである。
清酒製造
7−C−8株、itr001株、及びS288CR株及びそれぞれの親株(G1103株、D458−5A株、S288C株)を用いて清酒を製造した。7−C−8株は、特許文献1に記載されているように、清酒酵母協会701号から分離した一倍体酵母G1103株のEMS変異処理により分離したセルレニン耐性株である。清酒醸造は次のようにして行った。5mlのYPD培地で、30℃、2日間振盪培養した酵母菌体を集菌し、α米7.8g、乾燥麹1.9g、水23.2ml、50%醸造乳酸15μlと混合し15℃一定で20日間醗酵した。
得られた醗酵もろみの遠心上清0.8mlをバイアルにとり、100ppmの4−メチル−2−ペンタノール(内部標準液)を10μl加え密栓し、バイアルのヘッドスペースにSPME(固相マイクロ抽出)ファイバーを挿入し、30℃で20分間ファイバーを振盪させながら抽出処理を行った後、SPMEファイバーをガスクロマトグラフィーに注入し分析した。
結果を図3に示す。セルレニン耐性が付与された7−C−8株、itr001株、及びS288CR株ではそれぞれの親株の2.5倍から3倍以上のカプロン酸生産量となっていた。また、セルレニン耐性株の中でも、FAS1の171番目のアミノ酸がグルタミン酸である実験室酵母のFAS2変異で得られたitr001株、及びS288CR株では、FAS1の171番目のアミノ酸がアスパラギン酸である清酒酵母のFAS2変異で得られた7−C−8株に比べて、カプロン酸生産量が約1.4倍であった。
実施例1で行った7−C−8株のFAS1の置換を説明する図である。 実施例1で行った7−C−8株のFAS1の置換によるカプロン酸生産量の変化を示すグラフである。 変異処理に供する酵母のFAS1の171番目のアミノ酸がグルタミン酸であることにより、変異処理で得られたセルレニン耐性株のカプロン酸生産量が多くなることを示すグラフである。

Claims (5)

  1. 実験室酵母itr001株(FERM P−20638)。
  2. 実験室酵母S288CR株(FERM P−20639)。
  3. 清酒酵母、又は焼酎酵母の脂肪酸合成酵素FAS1中に含まれる配列番号1に示す部分アミノ酸配列のアミノ酸番号7のXaaをアスパラギン酸からグルタミン酸に置換する工程と、変異処理する工程と、変異処理酵母の中からセルレニン耐性を獲得した菌株を選択する工程とを含む酵母カプロン酸高生産株の製造方法。
  4. 酵母の脂肪酸合成酵素FAS1遺伝子中に含まれる配列番号3に示す部分塩基配列の塩基番号21のnをA又はGに置換する工程、変異処理する工程と、変異処理酵母の中からセルレニン耐性を獲得した菌株を選択する工程とを含む、酵母のカプロン酸生産量を調節する方法。
  5. 酵母を用いて酒類、又はパンを製造する方法であって、酵母として、請求項1又は2の株を使用する方法。
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