JP4929773B2 - 圧延材の製造方法、及びロールチョッククランプ装置 - Google Patents
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さらに、可逆式圧延機の場合、正転圧延してから逆転圧延するまでの時間など、次の圧延までの時間が非常に短く、その間にサイドガイドの調整、ワークロール開度の締め込み、ワークロールの幅方向移動(ロールシフト)や圧延方向への回転(ロールクロス)、ロールのたわみ矯正(ロールベンダー)という様々な操作を行うため、ロールチョッククランプ装置も、圧延終了から圧延開始までに行われるロールチョッククランプ装置以外の上記装置と干渉なくクランプを開始する必要があり、操作開始のタイミングが限られる。従来は、可逆式圧延機の正逆圧延におけるチョッククランプ操作開始のタイミングを決定する良好な手段が明らかではなかった。
ここで、特許文献1〜3は、特に可逆式圧延を対象とするものでなく、スラブの粗圧延や厚板圧延におけるロールチョッククランプ装置を備えた可逆式圧延機による圧延方法は示されていない。
そこで本発明は、適切な拘束力でクランプ可能なロールチョッククランプ装置、及びそのようなロールチョッククランプ装置を備えた可逆式圧延機による圧延材の製造方法を提供することを目的とする。
また、圧延中に常時ロールチョックをクランプした場合の拘束力を考察し、板厚制御装置への影響が少ない拘束力があることを知見した。また、厚鋼板の噛み込みの前後は水平方向の衝撃荷重が大きくなることから、拘束力を下げることで板厚制御装置への影響を防げることを知見した。これは特許文献2にあるような、噛み込み時を高圧にするという従来とは逆の考え方である。
このような知見に基づき、本発明のうち請求項1に記載した発明は、ワークロールのロールチョックを圧延方向に沿った方向に拘束するロールチョッククランプ装置を備えた可逆式圧延機において、
圧延材がワークロールに噛み込む前に上記ロールチョックへ第1の拘束力を掛けて当該ロールチョックを拘束し、上記圧延材がワークロールに噛み込む際の衝突荷重が所定以上の大きさと推定すると、圧延材がワークロールに噛み込む前に上記第1の拘束力よりも小さな第2の拘束力に設定変更することを特徴とする圧延材の製造方法を提供するものである。
上記拘束力コントローラは、上記拘束力として、ロールチョックをガタが無くなる方向に移動させて拘束するための第1の拘束力、上記第1の拘束力より小さい第2の拘束力、及び圧延中にロールチョックを拘束しておくための第3の拘束力を有し、圧延材がワークロールに噛み込む前に第1の拘束力に設定し、その第1の拘束力に設定した後であって圧延材が噛み込む前に第2の拘束力に設定し、圧延材の噛み込みが完了したら第3の拘束力に設定し、上記第2の拘束力は、圧延材がワークロールに噛み込む際に発生すると思われる推定した衝突荷重に基づき設定され、所定衝突荷重未満と判定した場合には、第2の拘束力を第1の拘束力と同じ値とし、所定衝突荷重以上と判定した場合には第2の拘束力を第1の拘束力よりも小さな値に設定することを特徴とするものである。
拘束力コントローラは、圧延正方向に圧延する場合には、第3の拘束力を第1の拘束力よりも小さく設定し、圧延正方向とは逆方向に圧延する場合には、第3の拘束力を第1の拘束力と等しく設定することを特徴とするものである。
ワークロール回転の速度検出手段と加速度検出手段を備え、
拘束力コントローラは、ワークロールが圧延正方向回転且つ減速回転又は圧延逆方向回転且つ加速回転と判定すると、第3の拘束力を第1の拘束力1と等しい値とし、ワークロールが圧延正方向回転且つ加速回転又は圧延逆方向回転且つ減速回転では、第3の拘束力を第2の拘束力に等しいか第1の拘束力よりも小さな値とすることを特徴とするものである。
上記第1の拘束力の負荷の作動開始は、押圧装置の作動前若しくは同時期であることを特徴とするものである。
図1は、本実施形態に係るロールチョッククランプ装置を備えた可逆式圧延機(以下、単に圧延機と呼ぶ。)の一例を示す模式図である。
(構成)
まず構成について説明すると、パスラインを挟んで上下に対をなすワークロール3が配置される。符号2はバックアップロール2を示し、そのバックアップロール2に対し、上記ワークロール3は下流側にオフセット量dだけオフセットして配置されている。符号4はワークロール3のロールチョックである。符号5は、ハウジングに反力をとるシフトブロックで、下流側で上記ロールチョック4と隙間aを開けて配置されている。
符号6は、クランプ装置本体である。クランプ装置本体6は、たとえば油圧シリンダ装置で構成されて、上記ロールチョック4に対し、ハウジングに反力をとって上流側から下流側に向けて拘束力を負荷する。このクランプ装置本体6は、拘束力コントローラ20からの指令に応じた拘束力を発生する。
ワークロール3が水平方向に移動すると、ロールギャップが変動して、圧下量が変動し、板厚精度が低下するため、ロールチョック4とシフトブロック5との隙間aが変動しないように、ロールチョッククランプ装置6でロールチョック4を下流側のシフトブロック5に適度な拘束力で押し付けることが必要となる。
拘束力コントローラ20には、圧延荷重その他の情報に基づき設定された、ロールチョック4をシフトブロック5に押し付けて拘束するために必要な力である第1の拘束力F1、その第1の拘束力F1より小さな第2の拘束力F2、及び圧延中にロールチョック4を拘束しておくための第3の拘束力F3が設定される。本実施形態では、第1の拘束力F1と第3の拘束力F3が同じ値として説明する。もちろん、目的が異なるので、第1の拘束力F1と第3の拘束力F3とは同じ値である必要はない。
ここで、設定時間1及び2は、ベンダー装置11の開始が圧延開始前の3秒に設定されている場合に、例えば、設定時間1を2秒、設定時間2を1秒など、応答遅れを考慮して設定すればよい。
本実施形態では、厚鋼板の圧延を圧延機1で行い、ロールチョック4を厚鋼板の噛み込み前からロールチョッククランプ装置6で拘束し、その拘束力は圧延荷重などによって切り替える。
ここで、ロールチョック4を水平方向にクランプするため、垂直方向に作用する板厚制御装置への影響が懸念されるが、圧延条件に合わせた適切な拘束力でクランプすることで、板厚制御装置への影響が少ないことがわかった。特に厚鋼板の噛み込み時は、水平方向の荷重が大きくなるため、拘束力を下げることが必要である。
圧延開始前に作動するベンダー装置11の作動開始信号に連動させて作動を開始し拘束する。ベンダー装置11はワークロール3のロールチョック4の垂直方向に加重するため、ロールチョッククランプ装置の水平方向と干渉するが、本実施の場合は、ベンダー装置11の作動遅れを利用して、クランプ装置の方を先に機能させることが可能である。場合によっては、ベンダー装置11に先行する信号と連動させ、クランプ装置と干渉させないようにしてもよい。ベンダー装置11のように、ワークロール3に加重する装置の信号等であれば、他の操作と連動させてもよい。ワークロール3に加重する段階であるため、ロールチョッククランプ装置も作動させることが可能であるというインターロックとしての作動開始信号を勘案したものである。
なお、可逆式圧延機1は、正逆の圧延を繰り返す関係で、圧延各種の設定変更に使用される時間が短い傾向にある。このため、クランプ装置本体6の作動開始を、ベンダー装置11と同期をとって行う方が好ましいが、余裕がある場合には、ベンダー装置11の作動開始前にクランプ装置本体6を作動させても良い。
ここで、拘束力コントローラ20において、推定される圧延荷重を入力し、推定される圧延荷重が所定値未満の場合には、第2の拘束力F2に切り替えることやらないようにしても良い(図4参照)。
ここで、拘束されているロールチョック4の戻りが少ない場合と推定した場合には、第2の拘束力F2を第3の拘束力F3に、つまり拘束力の切替をしないようにしても良い(図5参照)。例えばロールチョッククランプ装置への圧延水平方向荷重が大きい圧延条件の場合などに適用する。
このように、圧延信号のタイミングと設定時間設定で効果的に切り替え制御することができ、安定したロールチョッククランプ動作が実現できる。
次に、第2実施形態について説明する。上記第1実施形態と同様な部材などについては同一の符号を付して説明する。
基本構成は、上記第1実施形態と同様であるが、拘束力コントローラ20で制御する拘束力の切替などについて、正転圧延と逆転圧延で異なる組み合わせとするものである。
拘束力コントローラ20で、決定する拘束力の切り替えタイミングの設定時間も、正転圧延の場合は設定時間1a、2aとし、逆転圧延の場合は設定時間1b、2bとして、異なる設定時間とした。
本実施形態においても、圧延する厚鋼板を圧延機11に噛み込む前に、正転圧延と逆転圧延とも、第1の拘束力F1によって、ロールチョック4をシフトブロック5に当接するまで移動させて下流側へ拘束させる。
正転圧延の場合は、設定時間1a経過後(例えば2秒)から第2の拘束力F2に切替え、圧延中の拘束力も第2の拘束力F2のままにして切替を行わない。これは、正転圧延の場合には、圧延によってロールチョック4に加わる水平分力が、下流側つまりロールチョッククランプ装置による拘束方向と同じ方向となる傾向にあるため、圧延中の拘束力を高く切り替える必要がないとの判断によるものである。つまり、圧延中は常に第2の拘束力F2のままの第1の拘束力F1よりも低い力としても、正転時の荷重バランスから、ロールチョック4を下流側へ拘束することが可能な圧延条件と判断したものである。
このように、正転圧延時と逆転圧延時とでワークロール3の回転方向及び板の通板方向に応じて、ロールチョッククランプ装置による拘束力を変更することで、より適切な拘束力に設定可能となる。
次に、第3実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第2実施形態と同様な構成などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、上記各実施形態と同様であるが、拘束力コントローラ20での拘束力の切替が若干異なる。
また、本実施形態は、ワークロール3の回転加速度を検出手段を備える。加速度検出手段としては、加速度の連続値を出力する測定器である必要はなく、加速度の正負判定出力が可能であればよい。つまり、本実施形態においては、ワークロール3が加速中か減速中かが判定できればよいため、産業上も非常に実現しやすい。また、通常の圧延機1は、ワークロール3の回転速度計を備えているため、ワークロール3の回転の加速度検出手段としては、回転速度計の微分検出器や、回転速度計の変化量を正負判定するソフトウェアによるものでも可能である。
すなわち、正転圧延中において、ワークロール3が減速を開始したと判定した場合には、第2の拘束力F2を、第2の拘束力F2よりも大きな第3の拘束力F3に変更する。又、逆転圧延中において、ワークロール3が減速を開始したと判定した場合には、第3の拘束力F3を、第3の拘束力F3よりも小さな第2の拘束力F2に変更する。
その他の処理は、上記第2実施形態と同様である。
本第3実施形態は、次に述べるようなことを考慮して、正転圧延中における減速中の拘束力を高めに切り替えると共に、逆転圧延中における減速中の拘束力を低めに切り替えることで、より適切な拘束力で拘束を行うことが可能とするものである。図8にそのときのタイムチャートを示す。
すなわち、上記ロールチョッククランプ装置が無い可逆式圧延機1にて、正転圧延中及び逆転圧延中における、ロール回転と圧延荷重とロールチョック4の変位について調査したところ、図9及び図10に示すような傾向にあった。なお、ロールチョック4の変位は、圧延機1のハウジング下流側に埋設した距離センサにより、ハウジングとチョックとの相対変位を測定したものである。
なお、圧延条件によっては、常に第2の拘束力F2でロールチョック4をクランプすれば十分な場合が考えられる(図11参照)。この場合は、拘束力の設定を第2の拘束力F2としておけば、ベンダー作動開始によるチョッククランプ装置作動開始から一定の第2の拘束力F2とすることも可能である。
また、圧延条件によって使い分けることが可能であり、ロールチョック4の変動を拘束することと、板厚制御装置(AGC装置)への干渉度合いやクランプ装置の衝撃荷重、磨耗を抑えることとのバランスで、組み合わせて使用することが好ましい。
また、上記における各信号は、それに相当する他のタイミングを参照しても同等の結果が得られる。例えば、実際のベンダー作動開始信号や圧延開始信号でなくとも、それぞれベンダー荷重や圧延荷重のモニタ計測値がある値以上になるタイミングを参照すればよい。
2 バックアップロール
3 ワークロール
4 ロールチョック
5 シフトブロック
6 クランプ装置本体
11 ベンダー装置
20 拘束力コントローラ
F1 第1の拘束力
F2 第2の拘束力
F3 第3の拘束力
a 隙間
d オフセット量
Claims (6)
- ワークロールのロールチョックを圧延方向に沿った方向に拘束するロールチョッククランプ装置を備えた可逆式圧延機において、
圧延材がワークロールに噛み込む前に上記ロールチョックへ第1の拘束力を掛けて当該ロールチョックを拘束し、上記圧延材がワークロールに噛み込む際の衝突荷重が所定以上の大きさと推定すると、圧延材がワークロールに噛み込む前に上記第1の拘束力よりも小さな第2の拘束力に設定変更することを特徴とする圧延材の製造方法。 - 可逆式圧延機に設けられて、ワークロールのロールチョックに圧延方向に沿った方向の拘束力を掛けてロールチョックを拘束するためのクランプ装置本体と、クランプ装置本体による上記拘束力を制御する拘束力コントローラとを備えたロールチョッククランプ装置であって、
上記拘束力コントローラは、
上記拘束力として、ロールチョックをガタが無くなる方向に移動させて拘束するための第1の拘束力、上記第1の拘束力より小さい第2の拘束力、及び圧延中にロールチョックを拘束しておくための第3の拘束力を有し、圧延材がワークロールに噛み込む前に第1の拘束力に設定し、その第1の拘束力に設定した後であって圧延材が噛み込む前に第2の拘束力に設定し、圧延材の噛み込みが完了したら第3の拘束力に設定し、
上記第2の拘束力は、圧延材がワークロールに噛み込む際に発生すると思われる推定した衝突荷重に基づき設定され、所定衝突荷重未満と判定した場合には、第2の拘束力を第1の拘束力と同じ値とし、所定衝突荷重以上と判定した場合には第2の拘束力を第1の拘束力よりも小さな値に設定することを特徴とするロールチョッククランプ装置。 - 圧延中に、クランプ装置本体による拘束力を掛ける方向と逆方向にワークロールが変位しにくいと判定した場合には、第3の拘束力の大きさを第2の拘束力と等しい値とすることを特徴とする請求項2に記載したロールチョッククランプ装置。
- 上記可逆式圧延機は、ワークロールの軸心がバックアップロールの軸心よりも圧延正方向にオフセットしていると共に、クランプ装置本体は、上記ロールチョックを圧延正方向に押圧して拘束し、
拘束力コントローラは、圧延正方向に圧延する場合には、第3の拘束力を第1の拘束力よりも小さく設定し、圧延正方向とは逆方向に圧延する場合には、第3の拘束力を第1の拘束力と等しく設定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載したロールチョッククランプ装置。 - 上記可逆式圧延機は、ワークロールの軸心がバックアップロールの軸心よりも圧延正方向にオフセットしていると共に、クランプ装置本体は、上記ロールチョックを圧延正方向に拘束し、
ワークロール回転の速度検出手段と加速度検出手段を備え、
拘束力コントローラは、ワークロールが圧延正方向回転且つ減速回転又は圧延逆方向回転且つ加速回転と判定すると、第3の拘束力を第1の拘束力1と等しい値とし、ワークロールが圧延正方向回転且つ加速回転又は圧延逆方向回転且つ減速回転では、第3の拘束力を第2の拘束力に等しいか第1の拘束力よりも小さな値とすることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載したロールチョッククランプ装置。 - 上記可逆式圧延機は、圧延ロールを圧下方向に沿った方向に押圧する押圧装置を備え、
上記第1の拘束力の負荷の作動開始は、押圧装置の作動前若しくは同時期であることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載したロールチョッククランプ装置。
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