本発明の実施形態を図1から図5までの図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態となる車両用制動力制御装置に必要な装置構成を示した一配置図であり、図2は、以上の装置構成をブロック別にまとめて表現したブロック図である。
障害物検出部110は、カメラ111A、111Bおよび画像処理部112で構成される。カメラ111A、111Bはそれぞれ車室内前方の例えばルーフ(図示省略)左右に取り付けられて自車両前方の道路状況を撮影し、障害物を検出する。ここで、カメラ111A、111Bの2台で構成することによりいわゆるステレオ画像処理が可能となり、障害物の方向だけでなく自車両から障害物までの距離も検出可能な構成としている。
自車両走行状態検出部120である車速センサ121は、自車両のホイール(図示省略)に取り付けられたロータリーエンコーダであり、ホイールの回転に比例して発生するパルス信号を検出することで走行時における自車両の車速(走行速度)を検出する。なお、図1では左右前輪に車速センサ121を設定しているが、どちらか一方の車輪に設定しても良い。
制動力制御部130は、A/D変換回路、D/A変換回路、中央演算処理装置、メモリ等(いずれも図示省略)から構成される集積回路であり、メモリに格納されたプログラムに従って、障害物検出部110および自車両走行状態検出部120で検出した信号の処理と障害物回避のための制動力の値(制動力指令値)を算出し、その値を制動力発生部140に出力する。
ここで、制動力制御部130は、制動力制御実施判定部131、予測走行軌跡算出部132、障害物回避判定部133、制動力指令値算出部134とで構成される。
制動力制御実施判定部131は、自車両と障害物との位置関係から障害物回避のための制動力制御の必要性を判定し、制動力制御が必要と判定された場合には、制動力制御実施判定部131、予測走行軌跡算出部132、障害物回避判定部133、制動力指令値算出部134を起動する。
制動力指令値算出部134は、運転者によるステアリング操作を前提として、障害物を回避するために必要な制動力を発生するための制動力指令値を算出する。制動力指令値の算出にあたっては、予測走行軌跡算出部132と障害物回避判定部133の処理を利用しており、ある制動力をかけた場合の自車両の予測走行軌跡を予測走行軌跡算出部132によって算出し、得られた予測走行軌跡と障害物の位置とに基づき、想定した制動力で障害物を回避できるかどうかを障害物回避判定部133で判定する。障害物を回避できる制動力が見つかった場合には、その制動力が得られる制動力指令値を制動力発生部140に出力する。また、障害物を回避し得る制動力が複数存在している場合には、障害物を回避するとともに自車両の走行速度を最大限低下させることのできる制動力が選ばれて、その制動力が得られる制動力指令値を制動力発生部140に出力する。これらの処理の詳細については後述する。
制動力発生部140は、車両に制動力を発生させる機能を担っており、ブレーキ油圧を制御するためのバルブ等から構成されるブレーキ制御部141と、ブレーキ本体142とで構成される。ブレーキ制御部141は、制動力制御部130から出力される制動力指令値による制動力と自車両に発生する制動力が一致するようにブレーキ本体142を駆動する。
以下、制動力制御部130における障害物回避動作の処理フローについて、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。本処理フローは、事前に設定した処理周期毎に行われる。ここで、説明に具体性を持たせるために、本実施形態では図4に示す場面を想定して処理フローの説明を行う。図4では、自車両が直線道路を走行している時に、自車両前方に障害物を発見した場面を想定している。
ステップS10では、まず障害物検出部110による障害物の検出情報と車速センサ121による車速情報を制動力制御部130が取得し、その情報を制動力制御部130のメモリ(図示省略)に格納する。
ここで、カメラ111A、111Bにより撮像された画像には障害物の位置情報が含まれているが、撮像された画像そのままでは有用な情報として扱えない。障害物の回避に有用な制動力指令値の算出に障害物の位置情報を活用するためには、自車両および障害物の位置を記述するために座標系を設定し、障害物の位置情報を座標に対応づけて統一的に扱えるようにする必要がある。本実施形態では、図4に示すように、自車両の走路の進行方向に沿ってX軸を、X軸と垂直方向にY軸を設定する。座標原点は任意に選ぶことが可能であるが、例えば自車両の現在位置を常に原点にとることができる。このような座標系を設定することにより、自車両および障害物の位置を座標で表現することができるようになる。以降の説明では、自車両の位置(重心点)を(X, Y)=(x, y)、障害物の位置(重心点)を(X, Y)= (xP, yP)と表記する。
カメラ111A、111Bで撮像されたステレオ画像を画像処理部112により画像処理することによって、自車両と障害物までの距離を検出することができるので、座標原点を適当に決めることによって、上記で定義した座標にはすべて具体的な値を割り当てることができる。ステップS10ではあらかじめ決められた座標系の設定規則に基づいて座標系を設定し、具体的な座標を求める処理までが行われる。この後に、フローはステップS20へ移行する。
ステップS20では、ステップS10において、障害物検出部110により障害物が検出されたか否かが判定される。障害物検出部110により障害物が検出されていない場合には、制動力制御は必要ないのでフローはステップS80に移行する。一方、障害物検出部110により障害物が検出された場合は、フローはステップS30に移行する。
ステップS30では、制動力制御を実施中であるか否かの判定が行なわれる。制動力制御を実施中である場合は、ステップS40、ステップS50は不要となり、フローはステップS60へ移行する。一方、制動力制御を実施中でない場合は、フローはステップS40へ移行する。
ステップS40では、制動力制御実施判定部131により、制動力制御を実施するか否かの判定が行なわれる。例えば、以下の二つの不等式が両方とも成立した場合に、制動力制御を実施する、という判定を行う。
ここで、νは自車両の走行速度である。また、TTCminは判定の閾値となる時間を示すパラメータで正の値をとり、例えば3〜4秒程度の値を設定しておく。また、TTCinfは本実施形態の制御を開始する下限となる時間を示すパラメータで、TTCinf以下の条件では本実施形態とは別の制御方法を用いる。この制御方法については、様々なものが考えられるが、本発明の範囲に含まれるものではないため、ここでは説明は省略する。WVは車両幅であり、WPは障害物の幅(回避余裕として確保する距離を含む)である。すなわち、(数式1)は、車両の進行方向において、障害物と自車両との距離がν×TTCmin以下であるか否かの判定条件であり、(数式2)は車両の車幅方向において、自車両が障害物に到達するか否かの判定条件である。この後に、フローはステップS50へ移行する。
ステップS50では、ステップS40の判定結果に基づいて処理を分岐する。(数式1)、(数式2)の少なくとも一方が成立しなかった場合には、自車両が障害物の位置に到達する可能性は低いため、制動力制御は実施されずただちに処理が終了する。一方、(数式1)、(数式2)の両方が成立した場合には、自車両が障害物の位置に到達する可能性があるため、制動力制御が実施されることになり、フローはステップS60に移行する。
ステップS60では、障害物の回避に必要な制動力指令値の算出が行われる。ステップS60の処理のフローチャートを図5に示す。ここでは、制動力指令値の候補を設定した上で自車両の予測走行軌跡の算出を行い、障害物を回避できる制動力指令値が算出されるまで制動力指令値の候補を更新していく、という処理の例を示している。
ステップS61では、最初に試す制動力指令値の候補を設定する。ここでは制動力指令値をブレーキ制御部141の油圧の圧力値pとして設定するものとすると、制動力指令値の候補の初期値として、例えばブレーキ制御部141で発生し得る最大の圧力値pmaxが設定される。この後に、フローはステップS62へ移行する。
ステップS62では、運転者が障害物回避時に操作すると予想されるステアリング操作およびそのステアリング操作を行ったときの前輪の操舵角の値δが設定される。ここでは、運転者が手を持ち替えることなくステアリングホイール6を回転させることができる最大の角度まで操作するものと仮定する。ステアリングホイール6と前輪操舵機構(図示省略)は機械的に連結されているので、ステアリングホイール6の操作角度が決まればその時の前輪の操舵角の値も決まることになる。なお、操舵の方向については、障害物が自車の左手に現れれば右方向に、右手に現れれば左方向に設定する。障害物が自車の正面に現れた場合には、他の道路条件等も考慮して操舵方向を決める必要があるが、ここでは一律に右方向に操舵するものと決めておくことにする。この後に、フローはステップS63へ移行する。
ステップS63では、予測走行軌跡算出部により、制動力発生部140に制動力指令値の候補pの圧力が加えられた場合の自車両の予測走行軌跡の算出を行う。自車両の予測走行軌跡の算出を行うために車両運動を記述する車両モデルを導入し、車両モデルに基づいて自車両の予測走行軌跡を算出する。
車両モデルとしては、例えば以下のようなモデルが提案されている。(例えば、参考文献:U. Kiencke and L. Nielsen, “Automotive control systems,” Springer Verlag, (2000)など)
ここで、βは車両の滑り角、γはヨーレート、δは前輪の操舵角、Fi(i=1,2,3,4)は各輪に発生する制動力、fは車両の挙動を記述する非線形関数である(βとγの定義については図6参照)。Tは行列、ベクトルの転置をあらわす。
ここで、時間を表す変数をt、現在時刻をt=0として、状態ベクトルxの現在値x(0)=(ν0 β0 γ0)が得られれば、(数式3)を積分することで任意の入力uに対するxの時系列を予測することができる。車両が直進走行とみなせる状態であれば、β0=0、γ0=0と近似できる。また、ν0は車速センサ121の出力を利用して得ることができる。
入力uのうち、制動力Fi(i=1,2,3,4)はブレーキ圧pの関数とみなすことができる。関数の具体的な形状については、事前に走行試験等を行うことによってその関係をマップ化しておくことが可能なので、作成したマップを参照することでブレーキ圧pから制動力Fiの値を決定することができる。
前輪の操舵角δについては、ステップ62で設定した操舵角(以下δ0と表記する)が設定される。
以上のように設定した入力uに従って車両モデル(数式3)を積分すると、状態ベクトルの時系列x(t)が算出され、さらにx(t)を次式の微分方程式に従って積分することによって、XY座標系における予測走行軌跡が算出される。
ここで、θはヨー角である。
ステップS64では、障害物回避判定部133により、ステップS63で算出された予測走行軌跡に沿って走行した場合に、自車両が障害物の位置に到達するか否かの障害物回避判定が行われる。ここでは、障害物は静止しているものとして処理しているので、車両がX=xPを通過する時刻t=tPにおける車両と障害物のY座標を比較することで、自車両が障害物の位置に到達するか否かを簡単に判定することができる。すなわち、自車両が障害物の位置に到達しないための条件は、
となるので、(数式9)が成立すれば現在設定しているブレーキ圧pで障害物回避が可能と判定する。一方、(数式9)が成立しない場合は、障害物回避は不可能と判定する。この後に、フローはステップS65へ移行する。
ステップS65では、ステップS64の判定結果に従って処理を分岐し、自車両が障害物の位置に到達しない予測走行軌跡が得られた場合には、フローはステップS66へ移行する。一方、車両が障害物の位置に到達する車両走行軌跡が得られた場合には、フローはステップS67へ移行する。
ステップS66では、その時設定されているブレーキ圧pを制動力指令値として確定して処理を終了する。
ステップS67pでは、新たなブレーキ圧pを設定してステップS63へ戻る。この場合、最初にブレーキ圧pを最大値に設定して処理を始めているので、前回計算に使用したブレーキ圧pよりも低い値にブレーキ圧pを設定し直すことになる。
以上でステップ60の処理が終了する。
ステップS70では、ステップS60で算出された制動力指令値を制動力発生部140に出力する。この後に、フローはステップS80へ移行する。
ステップ80では、それ以前の制御サイクルにおいて制動力指令値が設定されていたかどうかに関わらず、制動力指令値をクリアする。制動力指令値がクリアされることにより、制動力制御はそれ以前に制動力制御が実行されているかどうかに関わらず停止される。
以上で説明した制動力制御装置を、図4の場面に適用した場合に得られる結果の例を図7に示す。図7左側の図は本発明を適用した場合の自車両の走行軌跡を示したものである。障害物の発見によって自動的に自車両に制動力がかかり、自車両が減速を開始する。このとき、制動力の値は運転者が右方向にステアリングホイール6を手を持ち替えない範囲で最大に回せば障害物を回避できる値に設定されている。従って、運転者が操舵を開始すると自車両は減速を続けながら右方向に旋回を始め、必要以上に姿勢(進行方向)を変えることなく障害物を回避する走行軌跡を描く。一方、同じ場面で従来技術を適用した場合には、同じように自車両に制動力が作用するが、運転者が操舵を開始すると自車両の回頭性を上げるように制動力を低減するため、自車両は右方向に大きく進行を変えながら回避する車両軌跡を描く。後者の走行軌跡は、必要以上に大きく自車両の姿勢が変化するため、周囲に他の障害物が存在する場合(特に障害物が右方向に存在する場合)には次の回避運動を開始するのが困難になる可能性が考えられる。一方、本発明を適用した場合には、目前の障害物の回避に必要な分だけしか進行方向を変化させないために、別の障害物にも対応しやすい姿勢を保つことができる。このように、本発明では、車両の姿勢変化が極力小さい状態で障害物を回避し、障害物回避後に他の障害物の回避が行いやすい車両姿勢を維持することができる。
本発明の第一の実施例を図8から図13の図面に基づいて説明する。
図8は本発明の第一の実施例に必要な装置構成を示した一配置図である。前述した実施形態の配置図である図1と比較すると、自車両の加速度を検出するための加速度センサ122、自車両の横移動の運動状態を検出するためのヨーレートセンサ123、運転者のステアリング操作による前輪舵角θを測定する操舵角センサ124が追加されている。この加速度センサ122、ヨーレートセンサ123、操舵角センサ124に、車速センサ121およびカメラ111A、111B、画像処理部112を加えたものが本実施例における自車両走行状態検出部120である。
加速度センサ122は、圧電素子等を用いて構成される公知のデバイスを利用して自車両に発生する加速度を検出する。
ヨーレートセンサ123は、水晶振動子や半導体を用いて構成される公知のデバイスを利用して自車両に発生するヨーレートを検出する。
操舵角センサ124は、ラック-ピニオン方式の前輪操舵機構(図示省略)におけるラックストローク量を検出することで前輪の操舵角を検出する。
図9は、以上の装置構成を機能別にまとめて表現したブロック図である。基本的な構成は図2と同等であるが、追加したセンサを含む自車両走行状態検出部120が異なっている。
制動力制御部130における処理も、図3、図5に示すフローチャートと同等の流れで進められる。ただし、前述した処理とは異なる処理を行うステップがあるため、以下、処理内容の異なるステップのみについてその内容を説明する。
ステップS10におけるセンサ信号の取得と処理の部分では、新たに追加された加速度センサ122、ヨーレートセンサ123、操舵角センサ124に対応する処理が追加される。その結果、本実施例では自車両の前輪舵角δの値が測定される他、自車両の運動状態として走行速度νだけでなく、ヨーレートγ、すべり角β、ヨー角θに関する情報を得る。これらの状態のうち、ヨーレートγは、ヨーレートセンサ123の検出値をそのまま使用することができる。ヨー角θは、道路形状と自車両の向いている方向とのなす角であり、カメラ111A、111Bで撮像した画像を画像処理部112で画像処理することにより算出することができる。あるいは、適当な初期値を定めて、ヨーレートセンサ123の出力値を積分することで算出してもよい。すべり角βは、車両縦方向の走行速度をνx、横方向の走行速度をνyとすれば、
で求めることができる。νxをνで近似し、νyを車両横加速度を測定するように設置された加速度センサ122の出力を積分することによって求めれば、(数式10)からすべり角βの近似値を得ることができる。これ以外にも、車輪速、ヨーレート、横加速度等の信号からオブザーバによってより精度良くすべり角を推定する公知技術も知られているので、そのような手法を用いてすべり角を得る方法も考えられる。
本実施例では、上記のようにして得られたヨーレートγ、すべり角β、ヨー角θ、前輪舵角δの各値を(数式3)〜(数式8)に適用することで、より詳細な予測走行軌跡を算出することができる。
ステップS40における制動力制御実施判定では、自車両の走行速度、障害物と自車両との距離に加えて、運転者が行っているステアリング操作量も判定条件として参照する。
まず、横方向の距離の条件である(数式2)の条件を判定する。(数式2)の条件が成立している場合には、次に自車両の走行速度νと、自車両と障害物との縦方向の距離xp - xに基づいて、図10に示す制動力制御実施条件の成立をチェックする。図10は自車両の走行速度を横軸に、自車両と障害物との距離を縦軸にとった平面上に、制動操作のみで障害物を回避できる(障害物の位置に到達する前に停止できる)条件を表す制動回避限界線と、操舵操作のみで障害物を回避できる条件を表す操舵回避限界線の2本の線を描いた図である。これらの線よりも上に位置する条件であれば、対応する操作によって障害物を回避することが可能であることを示している。本発明は、運転者の過剰な操舵操作を制動力制御によって適正化することを目的とした発明であるので、図10に示す2本の線で条件を区切った場合、操舵操作のみによる回避は可能であるが、制動操作のみによる回避は不可能であるという領域で最も高い効果を得ることができる。そこで、自車と障害物との関係が2本の線に囲まれた図10の斜線部分の領域に属している場合に制動力制御を実施するものとする。なお、斜線部分以外の領域については本発明とは異なる障害物回避のための制御を実施するように装置を構成することが可能であるが、本発明の範囲外であるため説明は行わない。
図10の斜線部分は操舵操作による障害物の回避が可能である領域になっているが、実際に障害物の回避に最低限必要な操舵角の情報もマップ化した形で制動力制御部130に記憶させておくことができる。マップから読み出された必要操舵角をδmin(ν,xp-x)と表記し、制動力制御開始条件として、さらに以下の条件を課す。
ここで、δMは適当な正の値をとるパラメータである。(数式11)の条件は、運転者による操舵角が必要操舵角よりもδM以上大きかった場合に制動力制御を実施する、という条件になっている。以上より、自車両が障害物の位置に到達する可能性が存在し、操舵操作による障害物の回避が可能であり、かつ運転者による回避操作の操舵角が所定値以上であるという三つの条件がすべて成立した場合に、制動力制御を実施するという条件設定ができる。
図11に、本実施例における処理のフローチャートを示す。
ステップS6Aでは、予測走行軌跡を算出するため、ヨーレートγ、ヨー角θ、すべり角β、前輪舵角δの値が設定される。
ステップS62では、操舵角の初期値が設定される。前述した実施形態ではステップS62で設定する操舵角の値を運転者が手を持ち替えることなくステアリングホイール6を回転させることができる最大の角度に固定していたが、本実施例では操舵角の値として実際に操舵角センサで検出した操舵角をそのまま使用するものとする。
それ以外の処理については、前述した実施形態と同等である。
以上で説明した第1の実施例を図12の場面に適用した場合の動作例を図13に示す。図13は自車両前方を走行している他車両がさらに前方の道路を横断する障害物(歩行者)を発見して急停止した場面を示している。この場合、自車両にとって最初に回避すべき障害物は自車両前方の他車両になる。本実施例を適用した場合、運転者が他車両の停止に気づいて操舵を開始し、(数式11)を満たす大きな操舵角が得られた時点で制動力制御が実施される。制動力制御が実施された時点ですでに他車両の回避には十分な操舵角が得られているので、必要以上に車両姿勢が変化しないように自車両の回頭を抑制しながら制動力制御によって速度を低下させる。このような制御により、他車両を回避した後も車両姿勢が道路の進行方向に対して大きくずれないため、他車両の前方に位置する次の障害物の発見が早くなり、余裕を持って対応することができるようになる。一方、本実施例で示した装置を作動させることなく同じ操作を行った場合の動作例を図14に示す。図14では、運転者の操舵によって他車両の回避には成功しているものの、他車両の回避に伴って車両姿勢が道路の進行方向に対して大きく傾いており、道路の進行方向の状況が運転者の視野中心から外れてしまう。その結果、他車両回避後に逆方向に操舵して車両姿勢を戻していく過程で初めて他車両の陰に位置した障害物(歩行者)を発見することになる場合には、この障害物(歩行者)の回避に関しては対応が遅れてしまう可能性がある。
このように、本発明では、車両の姿勢変化が極力小さい状態で障害物を回避し、障害物回避後に他の障害物の回避が行いやすい制動力制御を行うことができる。
本発明の第二の実施例を図15から図19の図面に基づいて説明する。
第二の実施例の装置構成は、第一の実施例の構成図である図9と同じである。ただし、第一の実施例では障害物の検出だけに使用していたカメラ111A、111Bを、第二の実施例では自車両が走行する道路の道路境界(道路の左右端)の検出にも使用する。これは障害物として歩行者や他車両だけでなく道路境界も考慮することに対応したものである。
道路境界を考慮して制御を行う場面の例として、ここでは図15の場面に基づいて装置の動作の説明を行う。
図15では、自車両が直線道路を走行している時に、自車両前方の道路の左側から障害物(歩行者)が道路の横断を開始した場面を想定している。走行中の道路はその両側を壁で仕切られていて、道路外への逸脱が物理的に不可能な状況になっている。ここで、図15に示すように、道路の左端と右端の座標をそれぞれY=yL、Y=yRと表記する。また、歩行者は移動速度νpでX軸と垂直に右方向に移動している。
制御力制御部130における処理の流れは第一の実施例の場合とほぼ同等であるが、ステップS60の制動力指令値の算出処理の部分だけが異なっているので、この部分の処理について図16に示すフローチャートに沿って説明する。
図16に示すフローチャートも前述した実施形態のフローチャートである図5とほぼ同等であり、異なるステップについてのみ説明する。
ステップS6Aでは、予測走行軌跡を算出するため、ヨーレートγ、ヨー角θ、すべり角β、前輪舵角δの値が設定される。
ステップS6Bでは障害物の移動軌跡の算出を行う。ここでは、簡単のため障害物は一定速度で移動するものとすると、時刻tにおける障害物の座標の予測値xp(t)_est、yp(t)_estを、
と算出することができる。
ステップS6Cは障害物回避判定部の処理であるが、この部分が第一の実施例と大きく異なる部分である。本実施例では、算出した予測走行軌跡を用いて障害物回避の判定を行うにあたり、判定を自車両が障害物の位置に到達するか否かという二段階で行うのではなく、自車両の障害物への接近度を考慮した連続値を用いた評価を行うことにより、二つ以上の障害物が存在している場合に、すべての障害物の回避困難性をできるだけ小さくするような制御指令値を探索する点に特徴がある。そこで、障害物の回避困難性を評価する基準として次式の評価関数を定義する。
ただし、x(τ)、y(τ)はブレーキ圧としてpを作用させた場合の車両走行軌跡の時刻t=τにおける座標を表している。関数Lは自車両および障害物の位置に基づいてある時刻における回避困難性を評価する評価関数である。Tは評価期間の長さであり、ここでは単純に自車両が等速で走行した場合に予想される障害物の位置への到達時間に対し適当な固定長T0の時間を加えた評価期間を考えることにして、
と設定しておく。
ここでは障害物となり得る対象として歩行者と道路境界とがあるので、それぞれに対する回避困難性を評価する関数を以下のように定義する。
歩行者に対する回避困難性を評価する関数としては、自車と歩行者との距離が近くなれば近くなるほど値が大きくなる関数によって表現する。具体的には、例えば次式の関数を利用することができる。
ここで、σx、σyは関数の形状を決めるパラメータであり、ここではそれぞれ検出した障害物のX軸方向の幅、Y軸方向の幅に応じた値が設定される。奥行き方向であるX軸方向の情報が得られない場合には、σx =σyと設定しておく。障害物の位置xp、ypには、ステップS6Bで算出した障害物の座標の予測値が用いられる。
道路境界に対する回避困難性を評価する関数としては、自車と道路境界との距離が近くなれば近くなるほど値が大きくなる関数によって表現する。具体的には、例えば次式の関数を利用することができる。
ここで、Δは道路境界への接近の余裕幅を指定するパラメータであり、Δの値が大きいほど道路境界への接近余裕を大きくとる評価値が算出される。
以上の二つの関数を用いて、全体の回避困難性を評価する評価式Lを、
で定義する。ここで、WP、WRは係数である。
評価式Lは、障害物と道路境界との回避困難性を表すことになる。評価式LをXY座標上にプロットした図を図17に示す。中央の山が障害物に対する回避困難性を表し、両側の山が道路境界に対する回避困難性を表している。
以上のように、ステップS6Cでは、設定されたブレーキ圧pに対する予測走行軌跡に対して上記の評価関数の演算を行い、評価値J(p)を算出する。
図14のような場面では、評価式Lの評価値J(p)は図18のような形状になることが予想される。すなわち、制動操作なしで操舵操作だけを行う場合には、道路境界に対する回避困難性が高くなって評価値J(p)が増大する。一方、制動力が最大になる制動操作を行う場合には、タイヤ摩擦力の大半が制動力に発揮されるためにタイヤに横力が発生しなくなり、車両が直進して歩行者に対する回避困難性が高くなって評価値J(p)が増大する。これらの2つの状態の中間に、歩行者と道路境界の双方に対して適度な距離を保つことができるブレーキ圧pが存在すると考えられる。
ステップS6Dでは、そのような最適なブレーキ圧pの値を探索するために、新たに算出された評価値J(p)と直前の演算処理で算出された評価値J(p)とが比較される。図16に示すように、ブレーキ圧pの探索をpmaxから開始して、計算が進むにつれてブレーキ圧pを小さくする方向に探索を進める場合には、前の評価値J(p)よりも値が小さくなっている場合には、さらに探索を進めることによってより良いブレーキ圧pが得られる可能性があり、フローはステップS67へ移行する。一方、前の評価値J(p)よりも評価値が大きくなった場合には、それ以上探索を進めても前の演算処理におけるブレーキ圧pでの評価値J(p)よりも小さい評価を得られるブレーキ圧pが見つかる可能性は低いと予想され、フローはステップS66へ移行する。
ステップS66では、直前の演算処理におけるブレーキ圧pを制動力指令値として確定し、処理を終了する。
ステップS67では、今回の処理におけるブレーキ圧pよりも所定の値だけ小さくしたブレーキ圧pを新たなブレーキ圧pとして設定し、フローはステップS63へ戻る。
なお、ループ演算の1回目は比較対象となる評価値J(p)が存在しないので、無条件にステップS67へ進むことにする。
以上の処理に基づいて装置を作動させた場合の動作例を図19に示す。評価式Lの評価値J(p)が最小となる付近のブレーキ圧pを制動力指令値として用いることで、歩行者および道路境界双方を回避することができる。
以上説明した本発明の実施の形態の制動力制御装置によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
請求項1の発明は、自車両前方に位置する障害物の自車両に対する位置を検出する障害物検出部と、前記自車両の走行状態を検出する自車両走行状態検出部と、前記自車両に制動力を発生する制動力発生部と、前記障害物検出部により検出された前記障害物の前記自車両に対する前記位置と前記自車両走行状態検出部により検出された前記自車両の前記走行状態とに基づいて前記制動力発生部の制御が必要か否かの判定を行う制動力制御実施判定部と、前記自車両走行状態検出部により検出された前記自車両の前記走行状態と前記制動力発生部により発生する前記制動力とに基づいて前記自車両の予測走行軌跡を算出する予測走行軌跡算出部と、前記障害物検出部により検出された前記障害物の前記自車両に対する前記位置と前記予測走行軌跡算出部により算出された前記自車両の前記予測走行軌跡とに基づいて前記自車両が前記障害物を回避できるか否かの判定を行う障害物回避判定部と、前記障害物回避判定部の前記判定に基づいて前記制動力発生部に前記制動力を発生するための制動力指令値を算出する制動力指令値算出部とを備え、前記制動力制御実施判定部が前記制動力発生部の制御が必要であるとの判定を行った場合に、前記制動力指令値算出部で算出した前記制動力指令値を前記制動力発生部に出力して前記制動力発生部の制御を行う制動力制御部とを備えることを特徴としている。
この装置によれば、車両の姿勢変化が極力小さい状態で障害物を回避することで、障害物回避後に他の障害物の回避が行いやすい車両姿勢を維持することができる。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の制動力制御装置において、前記自車両走行状態検出部は、前記自車両の走行速度を検出することを特徴としている。
この装置によれば、自車両の走行速度を検出することで、制動力制御の必要性を簡単に判定することができる。
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の制動力制御装置において、前記制動力制御実施判定部は、前記自車両の進行する道路の進行方向と該道路の路幅方向とにおいて、前記自車両と前記障害物との間の距離がそれぞれ所定値以下である場合に、前記制動力発生部の制御が必要であるとの判定を行うことを特徴としている。
この装置によれば、自車両と障害物との位置関係を用いることで、制動力制御の必要性を簡単に判定することができる。
また、請求項4の発明は、請求項2または3に記載の制動力制御装置において、前記予測走行軌跡算出部は、前記自車両走行状態検出部により検出された前記自車両の前記走行速度とあらかじめ設定した前記自車両の操舵角とに基づいて前記予測走行軌跡を算出することを特徴としている。
この装置によれば、自車両の走行速度と所定の操舵角とを用いることで、制動力制御を実施するにあたって必要となる自車両の予測走行軌跡を簡単に算出することができる。
また、請求項5の発明は、請求項1に記載の制動力制御装置において、前記自車両走行状態検出部は、前記自車両の走行速度および操舵角を検出することを特徴としている。
この装置によれば、自車両の走行速度及び操舵角を検出することで、制動力制御の必要性を簡単に判定することができる。
また、請求項6の発明は、請求項5に記載の制動力制御装置において、前記制動力制御実施判定部は、前記自車両の進行する道路の進行方向と該道路の路幅方向とにおいて、前記自車両と前記障害物との間の距離がそれぞれ所定値以下であるとともに前記操舵角が所定値以上である場合に、前記制動力発生部の制御が必要であるとの判定を行うことを特徴としている。
この装置によれば、自車両と障害物との位置関係および自車両の操舵角を用いることで、制動力制御の必要性を簡単に判定することができる。また運転者による操舵が行われた際に制動力制御が行われるため、運転者に対して違和感の少ない制動力制御を行うことができる。
また、請求項7の発明は、請求項6に記載の制動力制御装置において、前記操舵角の所定値は、前記制動力発生部が前記制動力を発生しない場合に該操舵角により前記自車両が前記障害物を回避できる値以上の値が設定されることを特徴としている。
この装置によれば、操舵操作のみにより障害物の回避が可能である場合に制動力制御が行われるため、操舵操作で障害物の回避ができない場合に不要な制動力制御を行い、制動力を低下させてしまうことがない。
また、請求項8の発明は、請求項5〜7のいずれか1項に記載の制動力制御装置において、前記予測走行軌跡算出部は、前記自車両走行状態検出部により検出された前記自車両の前記走行速度と前記操舵角とに基づいて前記予測走行軌跡を算出することを特徴としている。
この装置によれば、自車両の走行速度と操舵角を用いることで、制動力制御を実施するにあたって必要となる自車両の予測走行軌跡を簡単に算出することができる。
また、請求項9の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の制動力制御装置において、前記障害物検出部は、前記自車両が走行する前記自車両前方の道路の左右の道路端を検出し、前記障害物が、該道路端を含むことを特徴としている。
この装置によれば、自車両が走行する走路の左右端を障害物として扱うことで、自車両が走行する走路の左右端への到達も回避することが可能となる。
また、請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の制動力制御装置において、前記障害物回避判定部は、前記障害物検出部により検出された前記障害物の前記自車両に対する前記位置と前記予測走行軌跡算出部により算出された前記自車両の前記予測走行軌跡とに基づいて前記自車両と前記障害物との位置関係を評価する評価関数を用いて、前記自車両が前記障害物を回避できるか否かの判定を行うことを特徴としている。
この装置によれば、障害物との位置関係を評価する評価関数を用いることで、複数の障害物を回避するのに適した制動力制御を行うことができる。
また、請求項11の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の制動力制御装置において、前記障害物検出部は、前記障害物の移動速度を検出し、前記障害物回避判定部は、前記障害物検出部により検出された前記障害物の前記自車両に対する前記位置と、前記障害物の前記移動速度と、前記予測走行軌跡算出部により算出された前記自車両の予測走行軌跡とに基づいて前記自車両と前記障害物との位置関係を評価する評価関数を用いて、前記自車両が前記障害物を回避できるか否かの判定を行うことを特徴としている。
この装置によれば、障害物との位置関係を評価する評価関数を用いることで、移動する障害物を含む複数の障害物を回避するのに適した制動力制御を行うことができる。
また、以上説明した本発明の実施の形態の制動力制御方法によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
請求項12の発明は、自車両前方に位置する障害物の自車両に対する位置を検出するステップと、前記自車両の走行状態を検出するステップと、前記自車両に制動力を発生するステップと、前記障害物の前記自車両に対する前記位置と前記自車両の前記走行状態とに基づいて前記制動力の制御が必要か否かの判定を行うステップと、前記自車両の前記走行状態と前記制動力とに基づいて前記自車両の予測走行軌跡を算出するステップと、前記障害物の前記自車両に対する前記位置と前記自車両の前記予測走行軌跡とに基づいて前記自車両が前記障害物を回避できるか否かの判定を行うステップと、前記自車両が前記障害物を回避できるか否かの判定に基づいて前記制動力を制御するための制動力指令値を算出するステップと、前記制動力の制御が必要であるとの判定を行った場合に、前記制動力指令値を出力して前記制動力の制御を行うステップとを備えることを特徴としている。
この方法によれば、車両の姿勢変化が極力小さい状態で障害物を回避することで、障害物回避後に他の障害物の回避が行いやすい車両姿勢を維持することができる。
また、請求項13の発明は、請求項12に記載の制動力制御方法において、前記自車両の前記走行状態として、前記自車両の走行速度を検出することを特徴としている。
この方法によれば、自車両の走行速度を検出することで、制動力制御の必要性を簡単に判定することができる。
また、請求項14の発明は、請求項13に記載の制動力制御方法において、前記自車両の進行する道路の進行方向と該道路の路幅方向とにおいて、前記自車両と前記障害物との間の距離がそれぞれ所定値以下である場合に、前記制動力の制御が必要であるとの判定を行うことを特徴としている。
この方法によれば、自車両と障害物との位置関係を用いることで、制動力制御の必要性を簡単に判定することができる。
また、請求項15の発明は、請求項13または14に記載の制動力制御方法において、前記自車両の前記走行速度とあらかじめ設定した前記自車両の操舵角とに基づいて前記予測走行軌跡を算出することを特徴としている。
この方法によれば、自車両の走行速度と所定の操舵角とを用いることで、制動力制御を実施するにあたって必要となる自車両の予測走行軌跡を簡単に算出することができる。
また、請求項16の発明は、請求項12に記載の制動力制御方法において、前記自車両の前記走行状態として、前記自車両の走行速度および操舵角を検出することを特徴としている。
この方法によれば、自車両の走行速度及び操舵角を検出することで、制動力制御の必要性を簡単に判定することができる。
また、請求項17の発明は、請求項16に記載の制動力制御方法において、前記自車両の進行する道路の進行方向と該道路の路幅方向とにおいて、前記自車両と前記障害物との間の距離がそれぞれ所定値以下であるとともに前記操舵角が所定値以上である場合に、前記制動力の制御が必要であるとの判定を行うことを特徴としている。
この方法によれば、自車両と障害物との位置関係および自車両の操舵角を用いることで、制動力制御の必要性を簡単に判定することができる。また運転者による操舵が行われた際に制動力制御が行われるため、運転者に対して違和感の少ない制動力制御を行うことができる。
また、請求項18の発明は、請求項17に記載の制動力制御方法において、前記操舵角の所定値は、前記制動力を発生しない場合に該操舵角により前記自車両が前記障害物を回避できる値以上の値が設定されることを特徴としている。
この方法によれば、操舵操作のみにより障害物の回避が可能である場合に制動力制御が行われるため、操舵操作で障害物の回避ができない場合に不要な制動力制御を行い、制動力を低下させてしまうことがない。
また、請求項19の発明は、請求項16〜18のいずれか1項に記載の制動力制御方法において、前記自車両の前記走行速度と前記操舵角とに基づいて前記予測走行軌跡を算出することを特徴としている。
この方法によれば、自車両の走行速度と操舵角を用いることで、制動力制御を実施するにあたって必要となる自車両の予測走行軌跡を簡単に算出することができる。
また、請求項20の発明は、請求項12〜19のいずれか1項に記載の制動力制御方法において、前記自車両が走行する前記自車両前方の道路の左右の道路端を検出し、前記障害物が、該道路端を含むことを特徴としている。
この方法によれば、自車両が走行する走路の左右端を障害物として扱うことで自車両が走行する走路の左右端への到達も回避することが可能となる。
また、請求項21の発明は、請求項12〜20のいずれか1項に記載の制動力制御方法において、前記障害物の前記自車両に対する前記位置と前記自車両の前記予測走行軌跡とに基づいて前記自車両と前記障害物との位置関係を評価する評価関数を用いて、前記自車両が前記障害物を回避できるか否かの判定を行うことを特徴としている。
この方法によれば、障害物との位置関係を評価する評価関数を用いることで、複数の障害物を回避するのに適した制動力制御を行うことができる。
また、請求項22の発明は、請求項12〜20のいずれか1項に記載の制動力制御方法において、前記障害物の移動速度を検出し、前記障害物の前記自車両に対する前記位置と、前記障害物の前記移動速度と、前記自車両の予測走行軌跡とに基づいて前記自車両と前記障害物との位置関係を評価する評価関数を用いて、前記自車両が前記障害物を回避できるか否かの判定を行うことを特徴としている。
この方法によれば、障害物との位置関係を評価する評価関数を用いることで、移動する障害物を含む複数の障害物を回避するのに適した制動力制御を行うことができる。
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、実施例は本発明の例示にしか過ぎず、本発明は実施例の構成にのみ限定されるものではない。したがって本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれることはもちろんである。
例えば、カメラ111A、111B、車速センサ121、加速度センサ122、ヨーレートセンサ123、操舵角センサ124、制動力制御部130の取り付け位置は、図1、図8に示す位置に限定されるものではない。
また制動力制御部130の構成は図2、図9に限定されるものではなく、例えばいわゆるCPUを用いて同等の機能を備えるものとしても良い。
また、第一の実施例、第二の実施例では、自車両走行状態検出部120は障害物検出部のカメラ111A、111B、画像処理部112を含む構成としていたが、自車両走行状態検出部120が別途カメラおよび画像処理部を備えるものとしても良い。
さらに、画像処理部112は、制動力制御部130に含まれるものとすることもできる。