JP4923172B2 - ポリ乳酸繊維構造材の改質処理方法 - Google Patents

ポリ乳酸繊維構造材の改質処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリ乳酸繊維構造材の耐熱性を向上させる改質処理方法に関する。
昨今、石油系高分子材料は様々な工夫及び改良がなされ、世の中の多様なニーズに対応できるようになってきた。しかし、化石燃料は有限でいずれ枯渇することは必至で、太陽の恵みを受けて再生する植物(バイオマス)を原料とする代替高分子材料の開発が急務となっている。その一つに、トウモロコシやサトウキビなどを原料とするポリ乳酸材料が注目されている。ポリ乳酸はバイオマスプラスチックのなかでも比較的融点が高く、高透明性、高剛性で加工性に優れるなど、成形材料として好適な特性を示している。そのため、繊維をはじめフィルム・シートおよび成形用樹脂として、衣類、植樹ポット・防草シート、食品包装・容器・食器、文房具、および携帯電話・コンピューターなどの情報通信機器をはじめ各エレクトロニクス機器の筺体など幅広く展開されている。
しかし、ポリ乳酸が溶解する温度(融点)は、他のバイオマスプラスチックに比較して高いとはいえたかだか170℃〜180℃であり、また熱変形を生じる温度(荷重たわみ温度)は60℃と低い。このため、耐熱性を要する電子レンジ対応食品容器(トレー)やアイロン掛けを必要とする衣類への展開はもとより、文房具などの高温に曝されることがない製品についても、搬送時に変形する恐れなど、日常品への展開が妨げられている。
そのため、ポリ乳酸の耐熱性を高める試みが、これまで多数行われてきた。具体的には、ポリ乳酸の結晶化を促進する薬剤を添加する(特許文献1参照)、ポリ乳酸分子間に網目状のネットワークを構成して架橋させ分子の動きを束縛する(特許文献2及び3参照)、他のプラスチック材料と複合する、といった方法で耐熱性を向上させることが提案されている。
特開2006−212897号公報 特開2005−336325号公報 特開2006−276235号公報
上述した従来のポリ乳酸の耐熱性を向上させる方法では、融点や荷重たわみ温度をそれぞれ200℃および130℃まで改善することができるが、いずれも繊維に紡糸する前段階やプレートに成形する前段階においてポリ乳酸に薬剤を練りこむ前加工法である。
しかしながら、こうした前段階においてポリ乳酸の耐熱性を向上させる加工処理を行うと、そうした加工処理を行ったポリ乳酸材料に合せた処理工程や生産工程を見直さなければならない場合があり、またポリ乳酸材料で製造された製品に必要に応じて耐熱性を持たせたい場合などに臨機応変に対応できないといった課題がある。
そこで、本発明は、ポリ乳酸繊維で構成されるポリ乳酸繊維構造材を後加工により耐熱性を向上させることが可能なポリ乳酸繊維構造材の改質処理方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係るポリ乳酸繊維構造材の改質処理方法は、架橋剤が分散された分散液にポリ乳酸繊維構造材を浸漬しながら加温する含浸処理工程と、含浸処理工程で架橋剤が含浸されたポリ乳酸繊維構造材に対して高エネルギー線を照射する架橋形成工程とを備えることを特徴とする。さらに、前記含浸処理工程では、架橋剤としてビニル基を分子内に2以上有するビニル系モノマーを用いることを特徴とする。さらに、前記含浸処理工程では、ポリ乳酸繊維構造材を2℃〜80℃で浸漬後、0.1℃/分〜10℃/分の昇温速度で90℃〜120℃まで昇温して1分〜120分の間一定温度で加温することを特徴とする。さらに、前記架橋形成工程では、20kGy〜400kGyの線量で電子線を照射することを特徴とする。
本発明は、上記のような構成を備えることで、含浸処理工程でポリ乳酸繊維構造材に架橋剤を含浸させ、架橋形成工程でポリ乳酸繊維構造材に対して高エネルギー線を照射して耐熱性を向上させたポリ乳酸繊維構造材を得ることができ、後加工によりポリ乳酸繊維構造材に対して耐熱性を向上させる改質処理を行うことができる。なお、本明細書では、ポリ乳酸繊維構造材とは、ポリ乳酸繊維で構成された構造材を意味し、構造材には、糸、織物、編物、不織布及びこれらを用いて製造される衣類等の繊維製品が含まれる。
本発明では、高融点及び高耐熱性の観点からL−乳酸及び/ 又はD−乳酸を主たる繰り返し単位とするポリエステルであるポリ乳酸を用いる。ポリ乳酸の製造方法には、L−乳酸及び/ 又はD−乳酸を原料として一旦環状二量体であるラクチドを生成し、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、L−乳酸及び/ 又はD−乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られている。本発明で用いるポリ乳酸はいずれの製法によって得られたものであってもよい。
ポリ乳酸の平均分子量は、通常少なくとも5万、好ましくは少なくとも10万、好ましくは10〜30万である。平均分子量が5万よりも低い場合には繊維の強度物性が低下するため好ましくない。30万を越える場合には溶融粘度が高くなりすぎ、溶融紡糸が困難になる場合がある。
また、本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸の他にエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類などが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5 − テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。これらの共重合成分は、単独ないし2 種以上を用いることができる。
さらに、内部可塑剤、外部可塑剤を含有させたり、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料等を必要に応じて添加することができる。
以上のようなポリ乳酸を公知の製法により紡糸したポリ乳酸繊維を用いて、従来公知の方法により、ポリ乳酸繊維構造材として、糸、織物、編物、不織布を作製し、さらにこれらを用いて衣類等の繊維製品を作製する。これらの構造材以外にも高エネルギー線を照射して架橋形成可能な構造を備えるものであれば改質処理することができる。
こうして作製されたポリ乳酸繊維構造材に含浸させる架橋剤としては、多官能アクリル系モノマー、多官能アリル系モノマー、及びこれらの混合モノマー等が挙げられ、中でも多官能アリル系モノマーが好ましい。
具体例を挙げると、例えば、多官能アクリル系モノマーとしては、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート及びこれらの混合物が一般的である。多官能アリル系モノマーとしては、例えば、トリアリルシアネート、トリアリルイソシアネート、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスフォネート及びこれらの混合物が挙げられる。
特に、トリアリルイソシアネート(TAIC)、トリアリルシアネート(TAC)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、ジビニルベンゼン(DVB)等のビニル基を分子内に2以上有するビニル系モノマーが好ましく用いられる。こうしたビニル系モノマーは、低いモノマー濃度でかつ低い線量で、高いゲル分率の橋かけ材料を得ることができる点で優れている。
架橋剤を分散させる分散液としては、処理前のポリ乳酸繊維構造材に対して架橋剤1〜30%の割合で溶解させ、加えた架橋剤量に対して0.1〜10倍の乳化分散剤を溶解させて調製したものを用いる。架橋剤が1%未満では含浸した場合の架橋度が不足し、30%を超えるとポリ乳酸繊維構造材の劣化が進み脆弱化する。また、乳化分散剤が0.1倍未満では分散作用が発揮されず、10倍を超えると含浸率が低下するようになる。
乳化分散剤としては、ナフタリンスルホン酸・ホルマリン縮合物ソーダ等のタモール系分散剤、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のHLBが20から7の範囲の界面活性剤が挙げられる。分散液全体の重量は、浸漬するポリ乳酸繊維構造材の5〜200倍の重量に設定するとよい。分散液の重量が5倍を下回ると含浸ムラが生じやすくなり、200倍を超えると含浸率が低下するようになる。
分散液にポリ乳酸繊維構造材を浸漬して含浸処理する場合には、分散液の液温を予め 2℃〜80℃に設定しておき、ポリ乳酸繊維構造材を投入する。投入後0.1℃/分〜10℃/分の速度で分散液の液温を昇温させていき、90℃〜120℃に設定する。昇温後はその到達温度で1分〜120分加温する。こうした加温処理を行うことで十分な量の架橋剤をムラなく含浸処理することができる。初期の液温が2℃より低いか80℃よりも高いと含浸ムラが生じやすくなる。また、昇温速度が0.1℃/分より遅いと処理時間がかかり生産効率が悪く10℃/分より速くなると含浸ムラが生じやすくなる。また、加温時間が1分より短いと含浸ムラが生じやすくなり120分より長いと生産効率の面で問題がある。
次に、十分乾燥させたポリ乳酸繊維構造材に対して、窒素等の不活性ガス雰囲気中または空気中で高エネルギー線を照射し、含浸された架橋剤の架橋反応が行われるようになる。照射する高エネルギー線としては、電磁波(γ線、X線)、電子線(EB)、粒子線(α線、中性子線)等が挙げられる。特に、電子線(EB)を用いることが好ましく、その場合加速電圧は100〜5,000KVの範囲が好ましい。電子線の照射では、ポリ乳酸繊維構造材の厚さに応じて加速電圧及び照射線量の強さを調整する必要があり、強度が強すぎるとポリ乳酸繊維の強度が低下するため、架橋形成による耐熱性の向上及び照射による強度低下のバランスをとる必要がある。そのため、照射線量は、20kGy〜400kGyの範囲が好ましい。照射線量が20kGyより低くなると架橋しにくくなり400kGyより大きくなるとポリ乳酸繊維構造材の劣化が進み脆弱化する。
<ポリ乳酸繊維構造材>
ポリ乳酸繊維構造材として、ポリ乳酸織物(東レ株式会社製、56T/56Tエコディアタフタ)を用いた。
<含浸処理工程>
ポリ乳酸構造材を所定の大きさに切断して試料を作成し、重量を測定した(W1)。架橋剤(TAIC;関東化学株式会社製又は日本化成株式会社製)及び乳化分散剤(タモール系分散剤(花王株式会社製)又は界面活性剤(RS−929;高松油脂株式会社製))を計量し、混練り後 水に溶解させ、その水溶液全量を生地重量の25倍の重量とした(浴比1:25)。調製した分散液を作成した試料と共に染色ポットに入れ、これを染色試験機(辻井染機工業株式会社製)に投入した。染色ポットは、50℃に加温して投入した。その後、110℃まで50分で昇温し、110℃にて30分保持して加温した。含浸処理後、試料を取り出し、再度秤量した(W2)。架橋剤のポリ乳酸試料への含浸率は、次式より算出した。
含浸率(%)=100*(W2−W1)/W1
<架橋形成工程>
含浸処理された試料を十分に乾燥させて電子線照射を行った。電子線照射は、電子線照射装置(株式会社NHVコーポレーション製)を用いて窒素雰囲気中で行った。
<評価試験>
以上のように改質処理されたポリ乳酸繊維構造材の架橋度を調べるために、ゲル化率及び体積膨潤度を測定した。測定方法としては、改質処理されたポリ乳酸繊維構造材(2cm×20cm)を秤量し(WG1)、これをクロロホルム溶液40mlに浸漬し室温で24時間攪拌する。続いて、溶液をガラス濾紙で濾過し、濾紙上に残ったゲルを取り出し秤量する(WG2)。その後室温で27時間乾燥させ、さらに60℃で3時間乾燥し、再度秤量する(WG3)。ポリ乳酸繊維構造材のゲル化率及び体積膨潤度は、次式により求められる。
ゲル化率(%)=100×(WG3−WG1)/WG1
体積膨潤度=0.838(WG2−WG1)/WG1
また、改質処理されたポリ乳酸繊維構造材の耐熱性を調べるために、以下の4つの評価試験を行った。
(1)アイロン試験
ポリ乳酸繊維構造材を2cm×2cmに切断して試料を作成し、作成された試料に対して所定温度に加熱されたアイロンを1分間圧接した。アイロンの加熱面の温度は、低(90℃〜120℃)、中(150℃〜170℃)、高(180℃〜200℃)の3段階に設定した。加熱圧接後、試料の外観の変化および寸法変化率の評価を行なった。
(2)乾熱試験
ポリ乳酸繊維構造材を6cm×6cmに切断して試料を作成し、所定温度に設定した恒温器に3分間放置した。温度は、120℃、140℃及び150℃に設定して行った。乾熱処理後、試料の4辺の長さを測り、熱による寸法変化率を次式により算出した。
寸法変化率(%)=(B2/A2−1)*100
ここで、Aは熱処理前の4辺の平均値であり、Bは熱処理後の4辺の平均値である。
(3)引張り試験
引張り試験機(株式会社島津製作所製AGS−J)を用いて行った。測定は、ポリ乳酸繊維構造材を5cm×40cmに切断して試料を作成し、試料のつかみ間隔を20cmとして試験速度を30cm/分に設定した。測定結果として、破断時の強さ(N)及び伸び率(%)を得た。
(4)破裂強度試験
ポリ乳酸繊維構造材を6cm×6cmに切断して試料を作成し、所定温度に設定した恒温器に3分間放置した。温度は、120℃、140℃及び150℃に設定して行った。乾熱処理後、JIS L−1018 A法(ミューレン法)に基づいて破壊強度(kPa)を測定した。
<実施例1>
ポリ乳酸織物を用いて、架橋剤(TAIC)の濃度を5%o.w.f.、15%o.w.f.、30%o.w.f.に設定して上述の含浸処理を行った。乳化分散剤(タモール系分散剤)は架橋剤量の3倍の量を用いた。含浸率は、1.8%(5%o.w.f.)、6.69%(15%o.w.f.)、11.19%(30%o.w.f.)となり、十分な量の架橋剤が含浸されたことが確認された。
<実施例2>
ポリ乳酸織物を用いて、架橋剤(TAIC)の濃度を15%o.w.f.に設定し、上述の含浸処理を行った。乳化分散剤(タモール系分散剤)は架橋剤量の3倍の量を用いた。そして、昇温による有効性を確認するため、染色ポットを110℃に加温してそのまま80分保持し含浸処理を行った。昇温して加温した場合には、含浸率が7.22%であったが、昇温しない場合には、含浸率が6.57%となり、昇温して加温した場合の方がより多くの架橋剤を含浸できることが確認できた。
<実施例3>
ポリ乳酸織物を用いて、架橋剤(TAIC)の濃度を15%o.w.f.に設定し、上述の含浸処理を行った。乳化分散剤(タモール系分散剤)は架橋剤量の3倍の量を用いた。こうして含浸処理されたポリ乳酸織物(含浸率6.5%)に対して電子線照射を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0004923172
表1をみると、電子線の線量が100kGy以上でゲル化されていることが示されており、架橋形成には100kGy以上の線量が必要であることがわかる。
<実施例4>
ポリ乳酸織物を用いて、架橋剤(TAIC)の濃度を15%o.w.f.に設定し、上述の含浸処理を行った。乳化分散剤(タモール系分散剤)は架橋剤量の3倍の量を用いた。こうして含浸処理されたポリ乳酸織物(含浸率7.22%)に対して電子線照射を行って架橋形成処理を行い、処理されたポリ乳酸織物についてアイロン試験を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0004923172
表2をみると、100kGy以上の線量を照射した場合には融解しないものの、200kGyの線量を照射した場合に150℃程度で縮小するようになった。これに対して、100kGyの線量を照射した場合には170℃程度まで変化が見られなかった。こうした結果は、200kGyの線量を照射することでポリ乳酸織物の劣化が進んだものと考えられる。したがって、100kGyの線量を照射することで架橋形成による耐熱性の向上と電子線照射による劣化のバランスが良好に行われているものと考えられる。
<実施例5>
ポリ乳酸織物を用いて、架橋剤(TAIC)の濃度を5%o.w.f.に設定し、上述の含浸処理を行った。乳化分散剤(RS−929)は架橋剤と同量を用いた。こうして含浸処理されたポリ乳酸織物(含浸率1.8%)に対して電子線照射を行って架橋形成処理を行い、処理されたポリ乳酸織物について乾熱試験を行った。その結果を表3に示す。
Figure 0004923172
表3をみると、線量が100kGyに設定した場合に温度変化に対して寸法変化率が小さいことがわかる。線量が200kGyでは、高温になると寸法変化率が大きくなるのは、電子線照射により劣化が進んだものと考えられる。
<実施例6>
ポリ乳酸織物を用いて、架橋剤(TAIC)の濃度を15%o.w.f.に設定し、上述の含浸処理を行った。乳化分散剤(RS−929)は架橋剤と同量を用いた。こうして含浸処理されたポリ乳酸織物(含浸率6.5%)に対して電子線照射を行って架橋形成処理を行い、処理されたポリ乳酸織物について乾熱試験を行った。その結果を表4に示す。
Figure 0004923172
表4をみると、表3と同様に線量が100kGyに設定した場合に温度変化に対して寸法変化率が小さいことがわかる。架橋剤の濃度が大きくなったことによる影響は見られなかった。
<実施例7>
ポリ乳酸織物を用いて、架橋剤(TAIC)の濃度を15%o.w..fに設定し、上述の含浸処理を行った。乳化分散剤(タモール系分散剤)は架橋剤量の3倍の量を用いた。こうして含浸処理されたポリ乳酸織物(含浸率7.22%)に対して電子線照射を行って架橋形成処理を行い、処理されたポリ乳酸織物について引張試験を行った。その結果を表5に示す。
Figure 0004923172
表5をみると、電子線照射により劣化が進み強度が低下したことがわかる。また、照射する線量が大きくなるほど強度が低下しており、劣化の度合いが大きいことがわかる。
<実施例8>
ポリ乳酸織物を用いて、架橋剤(TAIC)の濃度を5%o.w.f.に設定し、上述の含浸処理を行った。乳化分散剤(RS−929)は架橋剤と同量を用いた。こうして含浸処理されたポリ乳酸織物(含浸率1.8%)に対して電子線照射を行って架橋形成処理を行い、処理されたポリ乳酸織物について破裂試験を行った。その結果を表6に示す。
Figure 0004923172
<実施例9>
ポリ乳酸織物を用いて、架橋剤(TAIC)の濃度を15%o.w.f.に設定し、上述の含浸処理を行った。乳化分散剤(RS−929)は架橋剤と同量を用いた。こうして含浸処理されたポリ乳酸織物(含浸率6.5%)に対して電子線照射を行って架橋形成処理を行い、処理されたポリ乳酸織物について乾熱試験を行った。その結果を表7に示す。
Figure 0004923172
表6及び表7をみると、改質処理されたポリ乳酸織物は、架橋剤含浸又は電子線照射により破裂強度が低下する傾向がみられた。また、乾熱処理温度と破裂強度の相関を考察すると、電子線照射のみの場合、線量が大きくなる程、温度上昇による強度低下が大きくなった。架橋剤含浸のみにおいても、含浸量の増加と共に温度上昇による強度低下が見られた。「TAIC含浸+電子線照射」においては、この温度上昇による破裂強度低下が抑制されていた。特筆すべきは、「TAIC+200kGy照射」においてTAICの濃度を上げた場合、著しい強度の向上がみられた。これらのことからも明らかな架橋の形成が伺える。
「電子線照射のみ」と「TAIC含浸+電子線照射」を比較した場合、20kGyにおいて、「電子線照射のみ」と「TAIC+20kGy」の破裂強度は、同様の値を示したが、50kGyでは、TAICを含浸したものの方が破裂強度の値が大きくなった。100kGyにおいてもその傾向は確認でき、200kGyでは、さらにその傾向が顕著になっていた。この結果より、50kGy照射から架橋の形成が生じ始め、100kGy以上において明らかに架橋が形成されたと推測する。
また、「TAIC含浸+電子線照射」を見ると、(1)20kGy→50kGyでは、破裂強度が低下する傾向がみられ、(2)50kGy→100kGyでは破裂強度の値が大きくなり、(3)100kGy→200kGyでは、破裂強度が低下する傾向がみられた。(1)の段階においては、架橋形成よりも電子線照射の劣化の影響を大きく受けたと推測される。(2)の段階においては、架橋の形成が促進され、電子線照射の劣化によるダメージを補っていると推測される。(3)の段階においては、架橋の形成よりも電子線照射の劣化による損傷が優勢になったと推測される。こうした結果からも100kGyの照射が最適だということがわかる。以上の結果を踏まえると、100kGyでの照射が最も好ましいといえる。

Claims (4)

  1. 架橋剤が分散された分散液にポリ乳酸繊維構造材を浸漬しながら加温する含浸処理工程と、含浸処理工程で架橋剤が含浸されたポリ乳酸繊維構造材に対して高エネルギー線を照射する架橋形成工程とを備えることを特徴とするポリ乳酸繊維構造材の改質処理方法。
  2. 前記含浸処理工程では、架橋剤としてビニル基を分子内に2以上有するビニル系モノマーを用いることを特徴とする請求項1に記載の改質処理方法。
  3. 前記含浸処理工程では、ポリ乳酸繊維構造材を2℃〜80℃で浸漬後、0.1℃/分〜10℃/分の昇温速度で90℃〜120℃まで昇温して1分〜120分の間一定温度で加温することを特徴とする請求項1又は2に記載の改質処理方法。
  4. 前記架橋形成工程では、20kGy〜400kGyの線量で電子線を照射することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の改質処理方法。
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