JP4920341B2 - 排気ガス浄化用の触媒担体 - Google Patents
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Description
例えば自動車のディーゼルエンジン、その他のエンジンの排気ガス中には、粒子状物質PM,窒素酸化物NOX,その他の有害物質が含有されており、そのまま外気へ排出すると有害である。
そこで、エンジンの排気管には、その排気ガス中に含有された有害物質を除去する排気ガス浄化装置が、介装されている。
そして、この種の排気ガス浄化装置としては、ハニカム構造をなし触媒物質が付着された触媒担体が、多用されている。
図4の(2)図は、この種従来例の正断面図である。同図にも示したように、従来の排気ガスA浄化用の触媒担体1は、帯状をなす金属箔製の波板2と平板3とが多層にロール状に巻き付けられたハニカム構造体4が、外筒5内に挿入された構造よりなる。
そして、エンジンからの排気ガスAは、排気管6に介装された触媒担体1のハニカム構造体4の各セル空間7を通過する。そして、排気ガスA中に含有されていた有害物質が、ハニカム構造体4の各セル空間7を形成する波板2や平板3に付着された触媒物質と接触して、反応,除去される。もって、排気ガスAが浄化されて、外気へと排出されていた。
例えば、ハニカム構造体4の波板2と平板3間の接合や、ハニカム構造体4と外筒5間の接合に関し、ロウ付け接合,固相拡散接合,レーザー接合,高周波加熱接合、等々の各種方式が開発,工夫されていた。
又、これらによる接合箇所に関しても、全面接合や特定箇所接合等、各種方式が開発,工夫されていた。更に、ハニカム構造体4の波板2と平板3の巻き取りやセル空間7の形状等に関しても、各種の開発,工夫が行われていた。
このように、外筒5内に挿入されるハニカム構造体4について、その軸方向Xの動きを不動に規制する接合方式等に関し、様々な工夫,開発が行われていた。
このような触媒担体1の従来例としては、例えば、次の特許文献1中に示されたものが挙げられる。
《問題点について》
この種従来例の触媒担体1は、上述したように、高温や振動対策として、各種の開発,工夫が施されていたにもかかわらず、依然として、各種トラブルの発生が指摘されていた。すなわち、接合箇所における異常酸化,熱応力破壊,疲労破壊等が発生し、問題となっていた。
これらについて更に詳述すると、まず、排気ガスAの温度分布、触媒担体1に流入する際の排気ガスAの速度分布、触媒物質との反応による昇温、触媒担体1自身の固有振動数,排気系の固有振動数、等々の条件は、その総べてが、エンジン・排気系によって様々であり、前述したいずれかの方式を選択しただけでは、対応困難であった。
すなわち、高温の排気ガスAの温度ムラや速度ムラ、触媒物質による昇温等が原因となって、触媒担体1の接合箇所が異常酸化したり、接合された触媒担体1が、内部温度ムラにより熱応力破壊し易かった。又、エンジンの振動が触媒担体1や排気系の固有振動数と重なることにより、接合された触媒担体1が、早期に疲労破壊され易かった。
しかも、このような異常酸化,熱応力破壊,疲労破壊等は、単独もしくは組み合わさってトラブル化するため、その原因を特定して対応することは、極めて困難な状況にあった。実際的には、特定のエンジンに合わせた仕様の触媒担体1を、その都度、試作し試験して選択する必要があり、対応が容易でなかった。
本発明の排気ガス浄化用の触媒担体は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべく、開発されたものである。
そして本発明は、異常酸化,熱応力破壊,疲労破壊等のトラブル発生が回避される、排気ガス浄化用の触媒担体を提案することを、目的とする。
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
すなわち、請求項1の排気ガス浄化用の触媒担体は、帯状をなす金属箔製の波板と平板とが多層に巻き付けられてロール状をなすハニカム構造体が、外筒内に挿入されると共に、該波板と平板に触媒物質が付着せしめられている。
そして該外筒は、該ハニカム構造体と軸方向長さがほぼ同一の本体部と、該本体部から前後の軸方向に突出した両端部と、を備えている。該ハニカム構造体は、規制セクションにより、該外筒の本体部内に軸方向に不動に位置決め保持されている。
該規制セクションは、該外筒の本体部と両端部との境目に設けられたスリットを利用し、該両端部について該スリットに対応する部分が、径方向の内側に向け押し込み折曲加工されて、形成されていること、を特徴とする。
次に、請求項2については次のとおり。すなわち、請求項2の排気ガス浄化用の触媒担体は、請求項1において、金属製の該外筒の規制セクションは、径方向の内側に向け押し込み折曲加工された突端部が、相互間で、又は該外筒の両端部の該スリットが形成されなかった部分に対し、当接されると共に溶着されていること、を特徴とする。
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)エンジンからの排気ガスは、排気ガス浄化用の触媒担体に供給される。
(2)触媒担体は、ハニカム構造体が外筒に挿入された構造よりなり、ハニカム構造体は、波板と平板がロール状に多層に巻き付けられ、触媒物質が付着されている。
(3)そこで排気ガスは、ハニカム構造体を通過する際、含有されていた有害物質が触媒物質と接触,反応,除去され、もって浄化される。
(4)そして、この触媒担体のハニカム構造体は、規制セクションにより、外筒の本体部内に、軸方向に不動に位置決め保持されている。
すなわち外筒について、本体部と軸方向に突出した両端部との境目にスリットを設け、このスリットを利用して規制セクションが形成されており、規制セクションは、外筒の両端部のスリット対応部分を、径方向内側に向け押し込み折曲加工してなる。
(5)このようにハニカム構造体は、規制セクションの採用により、その波板と平板間や外筒との間について、軸方向の動きが不動に規制されている。特に、規制セクションの突端部を溶接した場合は、このような不動規則が一段と確実化する。また、径方向も外筒の本体部により、動きが不動に規制されている。なお、周方向の動きは、相互間の摩擦力により規制されている。
(6)そこでこの触媒担体では、ハニカム構造体内部や外筒間について、ロウ付けその他の接合方式は採用されていない。もって、接合箇所での異常酸化,熱応力破壊,疲労破壊等は、発生しない。
すなわち触媒担体は、高温の排気ガスに晒され、排気ガスは温度ムラや速度ムラを伴い、更に触媒物質での反応による昇温も加わるが、ロウ材が使用されていないので、接合箇所で異常酸化は発生しない。更に、接合箇所がないので、このような温度条件下でも熱応力破壊は発生せず、エンジン等からの振動も加わるが疲労破壊も回避される。
(7)さてそこで、本発明の触媒担体は、次の効果を発揮する。
そこで、各種の接合方式が採用されていた前述したこの種従来例の触媒担体のように、接合箇所における異常酸化,熱応力破壊,疲労破壊等は発生せず、トラブルが回避されるようになる。
更にこれらは、スリット加工と外筒の折曲加工と、更には規制セクション突端部の溶着とにより、コスト面にも優れて実現される。すなわち、前述したこの種従来例のロウ付け接合方式のように、ろう材の材料費用や真空炉等の設備費用を要せず、又、固相拡散接合方式のように、真空炉等の設備費用も要せず、更に、レーザー接合方式や高周波加熱接合方式のように、レーザーや高周波用の設備費用を要することもなく、実現される。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
以下、本発明の排気ガス浄化用の触媒担体を、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。図1,図2は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。
そして図1の(1)図は、第1例の正面図及び側面図、(2)図は、第2例の側面図、(3)図は、第3例の側面図である。(4),(5)図は、第3例の正面図2形態である。図2の(1)図は、第4例の正面図及び側面図、(2)図は、第5例の正面図及び側面図である。
図3は、排気ガス浄化用の触媒担体の説明に供し、斜視図であり、(1)図は、用いられる波板や平板を示し、(2)図は、巻き付けられる波板や平板を示し、(3)図は、触媒担体を示す。図4の(1)図は、その要部を拡大した側断面図である。
まず、図3や図4の(1)図を参照して、排気ガスA浄化用の触媒担体1について、一般的に説明する。
自動車のエンジンや、発電機,機関車,各種機械設備等の内燃機関のエンジンから排出される排気ガスA中には、粒子状物質PM,窒素酸化物NOX,その他の有害物質が含有されており、そのまま外気に排出されると人体や環境に有害である。
そこで、エンジンの排気管6(図4の(2)図を参照)には、排気ガスA中に含有された有害物質を除去する排気ガス浄化装置の一環として、排気ガスA浄化用の触媒担体1が用いられている。
そして、この触媒担体1は、帯状をなす金属箔製の波板2と平板3とが多層に巻き付けられてロール状をなすハニカム構造体4が、外筒5内に挿入されると共に、波板2と平板3に触媒物質Bが付着せしめられている。
そして、図3の(2)図に示したように、このような波板2と平板3とが、軸を中心に、順次交互に重ね合わせられつつ多層に巻き付けられている。
もって、図3の(3)図に示したように、このような波板2と平板3にて、ハニカム構造体4が構成されている。ハニカム構造体4は、全体が例えば略円柱状のロール状をなすと共に、波板2と平板3をセル壁とし、軸方向Xに沿い各々独立空間に区画形成された中空柱状のセル空間7の平面的集合体よりなり、その両端面が開口されている。
触媒担体1は、このようなハニカム構造体4が、ケースである外筒5内に挿入されている。
又、図4の(1)図に示したように、セル壁である波板2や平板3の外表面には、触媒物質Bが付着されている。すなわち、単位容積当たりの表面積が大であるという特徴を備えたハニカム構造体4のセル壁、つまり波板2と平板3の外表面を利用して、触媒物質Bが皮膜状に付着せしめられ、もって排気ガスAとの接触面積が広く確保されている。触媒物質Bとしては、例えば、酸化反応用の白金その他の貴金属や、還元反応用の物質が使用される。
触媒担体1は、概略このようになっている。
以下、図1,図2を参照して、本発明の排気ガスA浄化用の触媒担体8の特徴について、説明する。
この触媒担体8は、ハニカム構造体9と外筒10とからなる。外筒10は、ハニカム構造体9と軸方向Xの長さがほぼ同一の本体部11と、本体部11から前後の軸方向Xに延長されて突出した両端部12と、を備えている。ハニカム構造体9は、規制セクション13により、外筒10の本体部11内に、軸方向Xに不動に位置決め保持されている。
そして、この規制セクション13は、外筒10の本体部11と両端部12との境目に設けられたスリット14を利用して、形成される。すなわち、外筒10の両端部12について、スリット14に対応する部分が、径方向Yの内側に向け押し込み折曲加工されて、形成されている。
本発明の触媒担体8は、このようになっている。
このような触媒担体8について、更に詳述する。まずスリット14は、外筒10の本体部11と、前後の軸方向Xに突出した両端部12との境目(つまり、内部に挿入されたハニカム構造体9の前後端面位置付近)に、それぞれ形成される。その形成は、プレス,のこ盤,ウォータージェット,レーザー,その他の各種方式を用いて行われる。
そしてスリット14は、両端部12の片面毎に適宜本数が形成されるが、1本から3本程度が代表的である。図1の(1)図,(2)図,図2の(2)図の例では、2本形成され、図1の(3)図,(4)図,(5)図の例では、1本形成され、図2の(1)図の例では、3本形成されている。
又、スリット14の形成長さ、つまり筒状をなす外筒10の外周に沿った穿設長さ寸法は、各種可能である。例えば、両端部12の片面当り2本以上形成される場合において、図1の(2)図の例に示したように、各本毎の長さ寸法が異なるようにしてもよいが、その他の図示例のように、各本共通の長さ寸法としてもよい。
そこで、両端部12について、スリット14の数に対応した数の規制セクション13が、それぞれ形成される。すなわち規制セクション13は、外筒10の両端部12の両面についてそれぞれ、図1の(1)図,(2)図,図2の(2)図の例では、2個形成され、図1の(3)図,(4)図,(5)図の例では、1個形成され、図2の(1)図の例では、3個形成される。
又、スリット14の本数や位置、そして形成される規制セクション13の個数,位置,形状等は、外筒10の両端部12の両面について、同一である必要はない。例えば、図1の(5)図の例では、形成されるスリット14そして規制セクション13の位置が、両端部12の一方面と他方面とで、周廻りで180度ずらされている。
なお、外筒10の両端部12の内、スリット14に対応しない部分、つまり押し込まれず規制セクション13を形成しなかった部分は、そのままの状態つまり外筒10の周上に突出したままの状態となる。
なお、ハニカム構造体9の前後両端面は、フラット面つまり径方向Yに平行なフラット面に限定されるものではなく、例えば、図2の(2)図の例に示したように一方の端面、又は図示例によらず双方の端面を、中央凸形状に形成することも考えられる。この場合、外筒10の本体部11と両端部12の境目も、対応した湾曲状とされ、もってその境目にスリット14が湾曲形成され、規制セクション13も内側に湾曲を伴って形成される。
触媒担体8は、このようになっている。
本発明の排気ガスA浄化用の触媒担体8は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)エンジンからの排気ガスAは、有害物質を含有しており、排気ガスA浄化用の触媒担体8に供給される。
すなわち、この触媒担体8の外筒10は、ハニカム構造体9と軸方向X長さがほぼ同一の本体部11と、本体部11から前後の軸方向Xに突出した両端部12と、からなる。本体部11は、ハニカム構造体9の前後端面がフラット面をなす場合(図1および図2の(1)図の例参照)では、ハニカム構造体9と軸方向X長さが、同一となる。これに対し、ハニカム構造体9の前後端面が中央凸形状をなす場合(図2の(2)図の例参照)では、図の通りスリット14も曲線となり、ハニカム構造体9の方が、本体部11の軸方向X長さより常に長くなる。
そして規制セクション13は、このような外筒10の本体部11と両端部12との境目に設けられたスリット14を利用して、形成されている。すなわち、外筒10の両端部12について、スリット14に対応する部分(スリット14の外側部分)を、径方向Yの内側に向け押し込み折曲加工してなる(図1,図2を参照)。
つまり、このハニカム構造体9では、軸方向Xに関しては、外筒10の両端部12を利用した規制セクション13の採用により、動きが不動に規制されている。又、径方向Yに関しては、外筒10の本体部11により、動きが不動に規制され、周方向に関しては、相互間(波板2と平板3間や、ハニカム構造体9と外筒10の本体部11間)の摩擦力により、回転等の動きが規制されている。
もって、接合箇所における異常酸化,熱応力破壊,疲労破壊等は、この触媒担体8では発生しない。
すなわち触媒担体8は、高温の排気ガスAに晒されると共に、排気ガスAは温度ムラや速度ムラを伴い、更に触媒物質Bでの反応による昇温も加わるが、この触媒担体8では、ロウ材は使用されておらず、接合箇所で異常酸化は発生しない。更に、このような温度条件に加え、エンジン等からの振動も加わるが、このように接合箇所がないので、内部引張応力や内部圧縮応力は発生せず、熱応力破壊は回避される。叉、疲労破壊が早期に発生することもない。
なお本発明は、以上説明した例に限定されるものではなく、更に、次の例も可能である。図5は、その他の例の側面図であり、規制セクション13が(1)図,(2)図では2個、(3)図では3個、(4)図では1個形成されている。
そして、これらの例では、金属製の外筒10の規制セクション13は、径方向Yの内側に向け押し込み折曲加工された突端部15が、複数相互間で、又は外筒10の両端部12のスリット14が形成されなかった部分に対し、当接されると共に溶着されている。
そして、図5の(1)図,(2)図の例では、2個形成された規制セクション13の突端部15相互間が、当接されると共に溶接Zにより溶着されている。図5の(3)図の例では、3個形成された規制セクション13の突端部15相互間が、当接されると共に溶接Zにより溶着されている。
これに対し、図5の(4)図の例では、規制セクション13は1個形成されており、この1個の規制セクション13の突端部15が、外筒10の両端部12のスリット14が形成されなかった部分(つまり、スリット14に対応しない部分,規制セクション13を形成しなかった部分)に対して、溶接Zにより溶着されている。
すなわちハニカム構造体9は、軸方向Xの外側から、このように突端部15の溶着により連続化,綿密化,規制強化され,補強された規制セクション13にて、前後両端面がより確実に係止される。
もって、外筒10内に挿入されたハニカム構造体9は、前後の軸方向Xに、より確実に動きが規制され、排気ガスAの流れに基づき軸方向Xに変位することもない。このように、規制セクション13の溶着により、より確実な不動位置決め保持が実現される。
図5の例は、このようになっている。
2 波板
3 平板
4 ハニカム構造体(従来例)
5 外筒(従来例)
6 排気管
7 セル空間
8 触媒担体(本発明)
9 ハニカム構造体(本発明)
10 外筒(本発明)
11 本体部
12 両端部
13 規制セクション
14 スリット
15 突端部
A 排気ガス
B 触媒物質
X 軸方向
Y 径方向
Z 溶接
Claims (2)
- 帯状をなす金属箔製の波板と平板とが多層に巻き付けられてロール状をなすハニカム構造体が、外筒内に挿入されると共に、該波板と平板に触媒物質が付着せしめられた、排気ガス浄化用の触媒担体であって、
該外筒は、該ハニカム構造体と軸方向長さがほぼ同一の本体部と、該本体部から前後の軸方向に突出した両端部と、を備えており、
該ハニカム構造体は、規制セクションにより、該外筒の本体部内に軸方向に不動に位置決め保持されており、
該規制セクションは、該外筒の本体部と両端部との境目に設けられたスリットを利用し、該両端部について該スリットに対応する部分が、径方向の内側に向け押し込み折曲加工されて、形成されていること、を特徴とする排気ガス浄化用の触媒担体。 - 請求項1に記載した排気ガス浄化用の触媒担体において、金属製の該外筒の規制セクションは、径方向の内側に向け押し込み折曲加工された突端部が、相互間で、又は該外筒の両端部の該スリットが形成されなかった部分に対し、当接されると共に溶着されていること、を特徴とする排気ガス浄化用の触媒担体。
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