JP4916672B2 - ダイカスト装置および減圧鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ダイカスト装置(ダイカストマシン)およびダイカスト装置のための減圧鋳造方法に関する。
特に本発明は、酸素置換ダイカスト法を適用するダイカスト装置と、そのダイカスト装置における減圧鋳造方法に関する。
ダイカスト製品、たとえば、アルミニウムダイカスト製品の品質のばらつきによる信頼性低下の原因の一つとして、ダイカスト製品へのガスなどの含有がある。すなわち、高速、高圧条件下で射出、射出スリーブ内に充填(注湯)された金属溶湯(溶融金属)、たとえば、アルミニウム溶湯は射出スリーブと金型のキャビティ内で乱流となり、空気や水蒸気等のガスを巻き込み金型のキャビティ内に充填され、これらのガスが気泡となってダイカスト製品内に巣を発生させ、ダイカスト製品の品質を低下させる。
上記のような問題を克服するため、外気に対してシールされた金型のキャビティ内を真空状態まで減圧する真空ダイカスト法によるダイカストマシンを用いて鋳造することによって、キャビティ内のダイカスト製品へのガスの含有を抑制し、ダイカスト製品へのガスの含有によるダイカスト製品の品質のばらつきを低減する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
このような真空ダイカスト法を用いたダイカストマシンにおいては、金型のキャビティ内を短時間でより低い圧力まで減圧する必要がある。以下、その理由を述べる。
キャビティ内の減圧は、たとえば、予め低い圧力まで減圧した減圧タンクをシールされたキャビティと接続することにより行うが、減圧タンクとキャビティ内の圧力差が大きい範囲では急速に減圧されるが、当該圧力差が小さくなるにつれてキャビティから排気されるガスの流速は低下するため所望の圧力に到達するには非常に時間がかかる。ダイカストマシンでは、スリーブに溶融金属(金属溶湯)を供給した状態でキャビティ内を減圧をする必要があるので、減圧に要する時間が長くなると、キャビティに充填する前にスリーブに供給した溶融金属がスリーブ内で冷却して固まる可能性がある。
また、真空ダイカスト法で金型のキャビティ内を、たとえば、1.01325 ×105Paの大気圧から、たとえば、5.33289 ×103 Pa程度の非常に低い圧力まで減圧できたとしても、キャビティ内にはわずかな空気や水蒸気等のガスが残存する。このような残存ガスを含むダイカスト製品は、T6処理等の熱処理ではダイカスト製品に欠陥が発生しないとしても、溶接時の高温条件下では小さな気泡となり、ダイカスト製品における溶接部の欠陥の原因となる。
キャビティ内の残存ガスによるダイカスト製品の欠陥の発生を防止するために、金型のキャビティ内のガスを酸素ガスに置換し、溶融金属と酸素ガスとを反応させ(酸化させ)、鋳造されたダイカスト製品に気泡が発生するのを防ぐ、いわゆる、酸素置換ダイカスト法が知られている(たとえば、特許文献2および3参照)。
たとえば溶融金属がアルミニウムの場合には、アルミニウムが酸素ガスと反応すると、二酸化アルミニウム(アルミナ)Al2 O3 の微粒子が生成される。
米国特許2,785,448号 特開平10−113757号公報 特開平9−1306号公報
酸素置換ダイカスト法では、置換された酸素ガスの量が多いと溶融金属の酸化物がダイカスト製品中に多く生成され、ダイカスト製品の品質を低下させるという問題がある。たとえば、二酸化アルミニウム(Al2 O3 )が多く含まれるアルミニウム・ダイカスト製品では、展性等のダイカスト製品の特性または品質が低下する。また、置換された酸素ガスの量が多いと、溶融金属と反応しない酸素ガスが残り、ダイカスト製品に酸素による気泡を発生させる。
他方、金型等をシールした状態で減圧したとしても、シール部分から漏れて侵入する金型内キャビティおよび/またはスリーブの外部の空気(外気)を完全になくすことは困難であり、金型に形成されるキャビティ内のガスを酸素ガスに完全に置換することは容易ではない。キャビティ内に酸素ガス以外のガスが残存してもダイカスト製品に気泡を発生させる。
本発明の目的は、鋳造品の内部欠陥の原因となる水分や窒素ガス等のガスが金型のキャビティおよびキャビティへのガス侵入路に残存せず、キャビティおよびキャビティへのガス侵入路内を酸素ガスに確実に置換でき、かつ、キャビティ内を所定の圧力まで減圧するのに要する時間を短縮できる、ダイカスト装置(ダイカストマシン)および減圧鋳造方法を提供することにある。
本発明によれば、内部固定金型と、当該内部固定金型を包囲する外部固定金型と、前記内部固定金型と前記外部固定金型との間に隙間として形成される固定金型流路とを有する固定金型と、前記内部固定金型とともに金属溶湯が収容されるキャビティを形成する内部移動金型と、当該内部移動金型を包囲する外部移動金型と、前記内部移動金型と前記外部移動金型との間に隙間として形成される移動金型流路とを有する移動金型と、第1減圧タンクと、当該第1減圧タンクに接続された第1開閉バルブとを有する、第1減圧手段と、酸素ガス供給装置と、当該酸素ガス供給装置に接続された第2開閉バルブとを有する、酸素供給手段と、第2減圧タンクと、当該第2減圧タンクに接続された第3開閉バルブと、当該第3開閉バルブと前記固定金型流路および前記固定金型流路との間に配設された排気用配管とを有する、第2減圧手段と、前記移動金型に設けられ、前記第1減圧手段または前記酸素ガス供給手段と前記キャビティとを連通状態または非連通状態にする、第1開閉弁手段と、前記キャビティに連通する開口と、当該開口と対向する側に前記金属溶湯を注湯する供給口を有する、内筒形の射出スリーブと、該射出スリーブの内筒内を移動自在に嵌挿されたプランジャチップと、当該プランジャチップに接続され当該プランジャチップを移動させるプランジャロッドとを有し、前記供給口から前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記開口を経由して前記キャビティに向けて射出する射出プランジャ手段と、前記プランジャロッドの位置を検出する位置センサと、前記射出プランジャ手段を駆動する射出シリンダ手段と、制御手段と、を具備し、
前記制御手段は、
前記射出スリーブの供給口の近傍に配設された温度センサからの検出信号または作業者の指示により、前記射出スリーブ内に金属溶湯の注湯の開始を検出したとき、前記第2開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段を開動作させて前記キャビティおよび前記射出スリーブ内に酸素ガスを充満させて充填し、前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯の表面を酸化させつつ、前記充填された酸素ガスを前記供給口から放出させて前記キャビティ内および前記射出スリーブ内の酸素ガスとともに酸素ガス以外のガスを排気させる、第1の処理を行い、
記射出スリーブ内への前記金属溶湯の注湯が終了したとき、前記射出シリンダ手段を駆動して前記射出プランジャ手段の前記プランジャロッドの先端を前記開口に向けて第1の速度で移動させて、前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記キャビティへ射出することを開始する、第2の処理を行い、
前記第2の処理により前記プランジャロッドの第1の速度での移動開始後所定時間経過したことを検出したとき、前記第2開閉バルブを閉状態にして前記酸素ガスの充填を終了させ、前記第1開閉弁手段を閉状態にする、第3の処理を行い、
前記位置センサの検出値から求めた前記プランジャロッドの移動量に基づいて、前記第2の処理による前記プランジャチップが前記射出スリーブの供給口を越えて前記供給口を閉鎖状態にするまで前記プランジャチップを前記第1の速度で移動させる、第4の処理を行い、
前記第4の処理により前記供給口閉鎖状態になった後、前記第1減圧手段内の前記第1開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段を開状態にして前記第1減圧タンクにより前記キャビティ内および前記射出スリーブ内を減圧することを開始する、第5の処理を行い、 前記第5の処理により前記第1開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段開状態になった後、前記第2減圧手段の前記第3開閉バルブを開状態にして、前記排気用配管に接続された前記固定金型流路および前記固定金型流路を前記第2減圧タンクにより減圧することを開始する、第6の処理を行い、
前記第6の処理により前記第1減圧タンクにより前記キャビティ内および前記射出スリーブ内を減圧することを所定時間継続させ、その後、前記第1開閉弁手段を閉状態にする第7の処理を行い、
前記射出シリンダ手段を駆動して前記射出プランジャ手段の前記プランジャロッドの先端を前記開口に向けて前記第1の速度より高い第2の速度で移動させて前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記キャビティへ高速に注入させる、第8の処理を行い、
前記第8の処理による前記第2の速度での前記プランジャロッドの移動開始後所定時間経過後、前記第1の開閉バルブおよび前記第3の開閉バルブを閉動作させて前記第1の減圧タンクおよび前記第2の減圧タンクによる前記減圧動作を終了する、第9の処理を行う
ダイカスト装置が提供される。
好ましくは、前記内部移動金型には前記キャビティを臨む第1の貫通孔が形成されており、前記移動金型に設けられた前記第1開閉弁手段は、前記貫通孔と前記キャビティとの間を連通または非連通にする弁体と、当該弁体を移動させる駆動手段とを有し、前記内部移動金型および前記外部移動金型には、前記第1の貫通孔と、前記第1開閉バルブと前記第2開閉バルブとに接続された配管に接続された第2の貫通孔が形成されている
また本発明によれば、内部固定金型と、当該内部固定金型を包囲する外部固定金型と、前記内部固定金型と前記外部固定金型との間に隙間として形成される固定金型流路とを有する固定金型と、前記内部固定金型とともに金属溶湯が収容されるキャビティを形成する内部移動金型と、当該内部移動金型を包囲する外部移動金型と、前記内部移動金型と前記外部移動金型との間に隙間として形成される移動金型流路とを有する移動金型と、第1減圧タンクと、当該第1減圧タンクに接続された第1開閉バルブとを有する、第1減圧手段と、酸素ガス供給装置と、当該酸素ガス供給装置に接続された第2開閉バルブとを有する、酸素供給手段と、第2減圧タンクと、当該第2減圧タンクに接続された第3開閉バルブと、当該第3開閉バルブと前記固定金型流路および前記固定金型流路との間に配設された排気用配管とを有する、第2減圧手段と、前記移動金型に設けられ、前記第1減圧手段または前記酸素ガス供給手段と前記キャビティとを連通状態または非連通状態にする、第1開閉弁手段と、前記キャビティに連通する開口と、当該開口と対向する側に前記金属溶湯を注湯する供給口を有する、内筒形の射出スリーブと、該射出スリーブの内筒内を移動自在に嵌挿されたプランジャチップと、当該プランジャチップに接続され当該プランジャチップを移動させるプランジャロッドとを有し、前記供給口から前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記開口を経由して前記キャビティに向けて射出する射出プランジャ手段と、前記プランジャロッドの位置を検出する位置センサと、前記射出プランジャ手段を駆動する射出シリンダ手段と、を具備するダイカスト装置の制御方法であって、
前記射出スリーブの供給口の近傍に配設された温度センサからの検出信号または作業者の指示により、前記射出スリーブ内に金属溶湯の注湯の開始を検出したとき、前記第2開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段を開動作させて前記キャビティおよび前記射出スリーブ内に酸素ガスを充満させて充填し、前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯の表面を酸化させつつ、前記充填された酸素ガスを前記供給口から放出させて前記キャビティ内および前記射出スリーブ内の酸素ガスとともに酸素ガス以外のガスを排気させる、第1の処理を行い、
記射出スリーブ内への前記金属溶湯の注湯が終了したとき、前記射出シリンダ手段を駆動して前記射出プランジャ手段の前記プランジャロッドの先端を前記開口に向けて第1の速度で移動させて、前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記キャビティへ射出することを開始する、第2の処理を行い、
前記第2の処理により前記プランジャロッドの第1の速度での移動開始後所定時間経過したことを検出したとき、前記第2開閉バルブを閉状態にして前記酸素ガスの充填を終了させ、前記第1開閉弁手段を閉状態にする、第3の処理を行い、
前記位置センサの検出値から求めた前記プランジャロッドの移動量に基づいて、前記第2の処理による前記プランジャチップが前記射出スリーブの供給口を越えて前記供給口を閉鎖状態にするまで前記プランジャチップを前記第1の速度で移動させる、第4の処理を行い、
前記第4の処理により前記供給口閉鎖状態になった後、前記第1減圧手段内の前記第1開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段を開状態にして前記第1減圧タンクにより前記キャビティ内および前記射出スリーブ内を減圧することを開始する、第5の処理を行い、
前記第5の処理により前記第1開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段開状態になった後、前記第2減圧手段の前記第3開閉バルブを開状態にして、前記排気用配管に接続された前記固定金型流路および前記固定金型流路を前記第2減圧タンクにより減圧することを開始する、第6の処理を行い、
前記第6の処理により前記第1減圧タンクにより前記キャビティ内および前記射出スリーブ内を減圧することを所定時間継続させ、その後、前記第1開閉弁手段を閉状態にする第7の処理を行い、
前記射出シリンダ手段を駆動して前記射出プランジャ手段の前記プランジャロッドの先端を前記開口に向けて前記第1の速度より高い第2の速度で移動させて前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記キャビティへ高速に注入させる、第8の処理を行い、
前記第8の処理による前記第2の速度での前記プランジャロッドの移動開始後所定時間経過後、前記第1の開閉バルブおよび前記第3の開閉バルブを閉動作させて前記第1の減圧タンクおよび前記第2の減圧タンクによる前記減圧動作を終了する、第9の処理を行う
ダイカスト装置の制御方法が提供される。
本発明によれば、第1減圧手段による減圧動作による金型内のキャビティ内の減圧排気に加えて第2減圧手段による減圧動作により、キャビティ内、射出スリーブ内などにおけるダイカスト製造に弊害となるスリーブおよび/またはキャビティの外部からの外気などのガスが排除される。その結果、高い品質のダイカスト製品が製造できる。
また本発明によれば、減圧酸素置換ダイカスト法による適切な酸素供給により、高い品質のダイカスト製品が製造できる。
さらに本発明によれば、一連の動作が連続して短時間で遂行できるので、射出スリーブに注湯された金属溶湯に大きな温度低下が起きず、高い品質のダイカスト製品が製造できる。
本発明によれば、ダイカスト製品を製造するためのサイクル延長に対して効果を発する。
本発明においては、金型内のキャビティを含むダイカスト装置のダイカスト処理に用いる閉空間内を酸素ガスで満たしたのち、第2減圧手段により第1金型、たとえば、固定金型の固定金型流路、第2金型、たとえば、移動金型の移動金型流路およびプランジャチップの溝とスリーブの内周面との間に形成される流路から第2減圧による排気を行うため、キャビティを含む閉空間内の隅々まで酸素ガスで確実に置換でき、また、ガス侵入路内も酸素ガスで確実に置換できる。
さらに本発明においては、キャビティを含むダイカスト装置のダイカスト処理に用いる閉空間内を確実に酸素ガスで置換した後も、第2減圧手段で上記閉空間内の排気を継続することにより、キャビティ内、スリーブ内などに外気等のダイカスト製造に害となる気体(ガス)が侵入しない。
さらに、本発明においては、第2減圧手段と第1減圧手段とが並行して動作するので、減圧に要する時間を短縮できるとともに、酸素置換法により充填されてキャビティ内に残存する酸素ガスを非常に少なくすることができる。
本発明のダイカスト装置(ダイカストマシン)および減圧鋳造方法の好ましい実施の形態について添付図面を参照して述べる。
ダイカスト装置の構成
本発明の1実施の形態のダイカスト装置の構成について述べる。
図1は本発明の一実施形態に係るダイカスト装置の金型周辺の構造を示す断面図である。
本実施の形態のダイカスト装置1は、固定金型2、固定金型2に対して移動する移動金型3、射出装置10、コントローラ30、主減圧タンクTA、補助減圧タンクTB、シャットオフバルブ(逆止弁)60、酸素ガス供給装置80を有する。
コントローラ30は、下記に詳述するダイカスト装置1の各種制御を行う部分であり、演算処理手段、たとえば、コンピュータを用いて実現されている。
射出装置10は、油圧シリンダ11と、ピストンロッド12と、カップリング13と、射出プランジャ17と、射出スリーブ16とを有する。
油圧シリンダ11は、所定圧力の油(作動油)によって駆動され、図1の図示の状態において、ピストンロッド12を左右に移動させる。
射出プランジャ17は、プランジャロッド14とプランジャチップ15とを有する。
カップリング13は、油圧シリンダ11に接続されたピストンロッド12とプランジャロッド14とを接続している。
射出スリーブ16は円筒状の耐熱・耐圧部材からなり、射出スリーブ16にはプランジャチップ15が移動する射出スリーブ16の内筒内に金属溶湯(溶解金属)を注湯するための供給口16hが設けられている。射出スリーブ16の供給口16hの反対側は、固定金型2に固定され、固定金型2と移動金型3とによって規定されるキャビティCと連通している。
プランジャロッド14の先端にはプランジャチップ15が接続されており、プランジャチップ15は射出スリーブ16の内筒内に移動自在に嵌挿されている。
プランジャチップ15の外周面と射出スリーブ16の内周面との間は外部の外気に対して気密状態にシールされる。プランジャチップ15が供給口16hよりキャビティC側の前方に移動することにより、射出スリーブ16は外部に対して閉塞される。
図2は図1に図解したダイカスト装置1のうち、固定金型2、移動金型3およびこれらの周辺の部分の拡大図である。
図1および図2に図解した固定金型2および移動金型3は型締状態にある。固定金型2は、たとえば、図示しない型締装置(mold fastening machine) の固定ダイプレート(dieplate) に固定されており、移動金型3は図示しない型締装置の移動ダイプレートに固定されている。たとえば、トグル機構等により移動ダイプレートが固定ダイプレートに向けて所定の力で押圧されることにより、固定金型2と移動金型3とが型締される。
固定金型2と移動金型3とが組み合わされると、溶融金属を充填させてダイカスト製品を製造するキャビティCを規定する。
固定金型2は、移動金型3の内部移動金型3aと組み合わされてキャビティCを規定する内部固定金型2aと、内部固定金型2aを包囲している外部固定金型2bとを有し、内部固定金型2aと外部固定金型2bとの接合面の隅の隙間(クリアランス)には固定金型流路2cが規定されている。固定金型2は外周に沿って移動金型3と接する、断面が環状の分割面2fを有する。さらに、内部固定金型2aの外部固定金型2bと接する面と対向する側に、キャビティCを規定するキャビティ面2dと、シャットオフバルブ60の弁体62の移動を許容する弁移動空間Spを規定する弁移動空間面2eとを有する。
固定金型2は方向Aから見ると、断面は、たとえば、ほぼ円形をしており、固定金型流路2cは破線で図解したように、内部固定金型2aと外部固定金型2bとの隅部が環状になっている。
固定金型2には、キャビティCに連通する射出スリーブ16が固定されている。固定金型2と射出スリーブ16との間はこれらの外部に対して密封されている。
移動金型3は、固定金型2の内部固定金型2aと組み合わされてキャビティCを規定する内部移動金型3aと、内部移動金型2aを包囲している外部移動金型3bとを有し、内部移動金型2aと外部移動金型3bとの接合面の隅の隙間には移動金型流路3cが規定されている。移動金型3は外周に沿って固定金型2と接し、かつ、固定金型2のキャビティ面2dと対向する、断面が環状の分割面3fを有する。
移動金型3は方向Aから見ると、断面は、たとえば、ほぼ円形をしており、移動金型流路3cは破線で図解したように、内部移動金型3aと外部移動金型3bとの隅部に位置し、環状になっている。
固定金型2の内部固定金型2aのキャビティ面2dと移動金型3の分割面3fとの間には鋳造品を鋳造するためのキャビティCが形成(規定)されている。
固定金型2の外周の環状の分割面2fと、この分割面2fと対向している移動金型3の分割面3fの外周環状部分との間には、すなわち、外部固定金型2bと外部移動金型3bとの分割面の接合面には、これらの分割面2fと分割面3fとの間を外気がキャビティC内に侵入しないように気密状態にシールするシール部材SLが設けられている。
シール部材SLは、たとえば、シリコンゴムで形成された、方向Aから見て環状のOリングである。
移動金型3にはシャットオフバルブ60が設けられている。
シャットオフバルブ60は、コントローラ30からの制御信号30SCによって動作が制御される電磁アクチュエータ61と、固定金型2の内部固定金型2aの弁移動空間面2eに臨む弁体62と、弁軸63と、弁座部材64とを有する。
弁座部材64は、弁軸63を嵌挿させる第1貫通孔64aと、弁軸63を遊嵌状態で移動可能にする第2貫通孔64bとを有する円筒状部材であり、移動金型3の内部移動金型3aおよび外部移動金型3bに埋め込まれている。弁座部材64と移動金型3の外部移動金型3bとの間には軸方向と直交する方向に第2シール部材SL2、たとえば、シリコンゴム製のOリングが設けられている。
弁座部材64は、弁座面64fが移動金型3の分割面3fに一致する位置に配置されている。
移動金型3および弁座部材64には、弁座部材64の第2貫通孔64bに連通する排気路52が形成されている。排気路52に排気管51が接続されており、排気管51には主減圧タンクTAがコントローラ30からの制御信号30SAに応じて制御される第1開閉バルブMVを介して接続されている。
弁軸63は、弁座部材64の第1貫通孔64aに嵌挿されており、コントローラ30からの制御信号30SCに応じて動作する電磁アクチュエータ61によって図2に示す直動方向Lに移動される。
固定金型2の内部固定金型2aの弁移動空間面2eと移動金型3の外部移動金型3bの分割面3fとの間には、弁軸63の先端部に設けられた弁体62が移動できる弁移動空間Spが形成されている。
弁移動空間SpはキャビティCと連通している。キャビティCは、弁体62が弁座部材64から離れたとき、弁移動空間Sp、弁座部材64の第2貫通孔64bおよび排気路52を通じて排気管51と連通する。
弁軸63の先端部に設けられた弁体62は、弁移動空間Sp内において内部固定金型2aの弁移動空間面2eから弁座部材64側に移動されることにより、弁座部材64の弁座面64fに当接して第2貫通孔64bを閉鎖する。これにより、キャビティCと、排気路52および排気管51とを結ぶ排気経路が閉じられる。逆に、弁座部材64の弁座面64fに当接している弁体62が固定金型2の内部固定金型2aの弁移動空間面2e側に移動されることにより、キャビティCと排気管51とを結ぶ排気経路が開放される。
上述した弁体62の移動(開閉動作)を行う電磁アクチュエータ61は、コントローラ30から制御指令30SCを受けて駆動される。
複数の押出ピン65が、内部移動金型3aおよび外部移動金型3bを貫通して、移動金型3に対して移動可能に設けられている。
ダイカスト装置1の動作の最終工程において、押出ピン65をキャビティCに向けて押し出すことにより、キャビティCで鋳造されたダイカスト製品を取り出すことができる。押出ピン65は、移動金型3に形成された貫通孔に嵌挿されており、押出ピン65と移動金型3との間はこれらの外部から外気がキャビティC内に侵入しないように気密状態にシールされている。
図1、図2に図解したように、プランジャロッド14の移動位置および移動速度を検出するため、換言すれば、プランジャチップ15の移動位置および移動速度を検出するため、位置検出センサ35が設けられている。そのため、たとえば、プランジャロッド14の外周には、軸方向に沿って一定ピッチで磁極が形成されている。位置検出センサ35は、たとえば、移動するプランジャロッド14の磁極の変化を検出し、この磁極の変化をパルス信号に変換して出力する。位置検出センサ35は、検出信号35sをコントローラ30へ出力する。
コントローラ30は位置検出センサ35の検出信号35に基づいて、射出プランジャ17(または射出スリーブ16内のプランジャチップ15)の位置および位置の時間的な変化(時間微分)から移動速度を算出する。
コントローラ30は、位置検出センサ35の読みから、後述する第1速度、たとえば、低速での射出位置、第2速度、たとえば、高速での射出位置の識別、または、低速射出開始タイミングか、高速射出タイミングかを識別することができる。
主減圧タンクTAは、排気管51に第1開閉バルブMVを介して接続されている。主減圧タンクTAは、排気管51、排気路52、第2貫通孔64b、弁移動空間Spを通じて、移動金型3と固定金型2との間に形成されるキャビティCを含む閉空間内を減圧し排気する。
第1開閉バルブMVはコントローラ30からの制御指令30SAによって開閉する。
主減圧タンクTAには真空ポンプ50Aが接続されており、主減圧タンクTA内は真空ポンプ50Aによって所定の圧力まで減圧される。たとえば、コントローラ30によって真空ポンプ50Aが起動されると、真空ポンプ50Aは主減圧タンクTA内が所定の真空状態が維持されるように、たとえば、自動的にオン・オフ動作する。主減圧タンクTA内は下記に述べるダイカスト装置1の動作の前に真空ポンプ50Aによって所定の圧力(ほぼ真空状態)まで減圧されているものとする。
酸素ガス供給装置80は、排気管51と主減圧タンクTAとの間の接続経路53に第2開閉バルブGVを介して接続されている。
第2開閉バルブGVは、コントローラ30からの制御指令30SDによって開閉する。第1開閉バルブMVを閉じた状態で第2開閉バルブGVを開くと、酸素ガス供給装置80から酸素ガスO2 が排気管51、排気路52、第2貫通孔64b、弁移動空間Spを通じてキャビティC内に供給される。
弁移動空間Sp、キャビティC、射出スリーブ16内の空間は互いに連通しており、これらは閉空間を構成している。
固定金型2の外部固定金型2bの分割面2fと移動金型3の外部移動金型3b分割面3fとの接合面がシール部材SLによって外部の外気に対して密封され、プランジャチップ15が供給口16hを越えて射出スリーブ16の内部を左側に移動してスリーブ16の供給口16hを閉塞し、かつ、シャットオフバルブ60を閉じた状態では、弁移動空間Sp、キャビティC、射出スリーブ16の内部で構成される閉空間は外部から密閉される。
しかしながら、分割面2f,3fの間、弁座部材64と移動金型3の間、押出ピン65と移動金型3との間、プランジャチップ15とスリーブ16との間などを外気に対して完全にシールすることは難しく、これらのシールを通過した外気は、弁移動空間Sp、キャビティC、射出スリーブ16の内部とで構成される閉空間に侵入し、この閉空間内を高真空にする際の妨げとなる可能性がある。
さらに、固定金型2において内部固定金型2aと外部固定金型2bとの隙間(クリアランス)、および、移動金型3において内部移動金型3aと外部移動金型3bとの隙間、分割面2f,3fの間、弁座部材64と移動金型3の間、押出ピン65と移動金型3との間から外気が侵入する可能性がある。すなわち、これらの部分は、弁移動空間Sp、キャビティCおよび射出スリーブ16の内部空間で構成される閉空間へ外気が侵入する侵入路となる。プランジャチップ15とスリーブ16との間も同様に外気の侵入路となる。
さらにこれらの侵入路には空気や水蒸気等の減圧鋳造に不要なガスが残存しやすい。
このため、本実施形態では、固定金型2において、内部固定金型2aと外部固定金型2bの間にはわずかな隙間で形成される固定金型流路2cを形成し、固定金型流路2cには第1補助排気管90を接続し、排気可能にしている。
同様に、移動金型3において、内部移動金型3aと外部移動金型3bの間にもわずかな隙間で形成される移動金型流路3cを形成し、移動金型流路3cにも第2補助排気管91を接続し、排気可能にしている。
補助排気管90および91は、第3開閉バルブSVを介して補助減圧タンクTBに接続されている。
第3開閉バルブSVはコントローラ30の制御信号30SBに応じて開閉される。
射出スリーブ16の内周面に嵌合するプランジャチップ15のキャビティC側の外周面のほぼ半分まで溝15hが形成されている。この溝15hは、プランジャチップ15の半分の外周面から内部の穴に連通し、その穴がさらにプランジャロッド14内に形成された管路と連通しており、この管路は補助減圧タンクTBに第3開閉バルブSVを介して接続されている。
溝15hは、プランジャチップ15の外周がスリーブ16の内周に嵌合することにより、射出スリーブ16の内部空間、キャビティCおよび弁移動空間Sp内に侵入したガスの補助排気流路となる。
補助減圧タンクTBは、固定金型2の内部固定金型2aと外部固定金型2bとの間の固定金型流路2c、および、移動金型3の内部移動金型3aと外部移動金型3bとの間の移動金型流路3c、および、プランジャチップ15とプランジャロッド14とに形成された溝15hとスリーブ16の内周面との間に形成される流路を通じて、射出スリーブ16の内部空間、キャビティCおよび弁移動空間Spで構成される閉空間内のガスを減圧して排気する。
第3開閉バルブSVはコントローラ50からの制御指令30SBによって開閉する。
補助減圧タンクTBには真空ポンプ50Bが接続されており、補助減圧タンクTB内は真空ポンプ50Bによって所定の圧力まで減圧される。たとえば、コントローラ30によって真空ポンプ50Bが動作すると、真空ポンプ50Bは補助減圧タンクTB内を所定の減圧状態、たとえば、好ましくは、ほぼ真空状態を維持するため、たとえば、自動的にオン・オフ動作する。このように、ダイカスト装置1の動作前に、真空ポンプ50Bによって補助減圧タンクTBは所定の圧力(ほぼ真空状態)まで減圧されているものとする。
好ましくは、第1オープンバルブOV1が排気管51と第1開閉バルブMVとの間の接続経路53に設けられ、第2オープンバルブOV2が第1、第2補助排気管90、91と第3開閉バルブSVとの間の管路に設けられている。これらオープンバルブOV1、OV2は型内を大気圧状態にするための開閉弁であり、通常動作のときは閉じられている。金属溶湯のキャビティCへの充填終了後、これらの第1オープンバルブOV1、第2オープンバルブOV2を開放状態にすると、型内が大気圧状態になるので、気圧差が少なくなり型を開くことが容易になる。
なお、第1オープンバルブOV1の上記効果を一層高めるためには、第1オープンバルブOV1の開放とともにシャットオフバルブ60も開放することが望ましい。
第1オープンバルブOV1、第2オープンバルブOV2およびシャットオフバルブ60の上記制御動作は、好ましくは、コントローラ30で行うことができる。
以下、上述した構成要素と本発明の用語との対応関係を記す。
固定金型2は本発明の第1金型に対応し、移動金型3は本発明の第2金型に対応する。 酸素ガス供給装置80および第2開閉バルブGVが本発明の酸素ガス供給手段に対応する。
主減圧タンクTAは本発明の第1減圧タンクに該当し、主減圧タンクTAと第1開閉バルブMVとが本発明の第1減圧手段に対応する。
移動金型3に装着されているシャットオフバルブ60が本発明の第1開閉弁手段に対応する。
供給口16hを有する射出スリーブ16が本発明の射出スリーブに対応する。
プランジャロッド14とプランジャチップ15から構成される射出プランジャ17が本発明の射出プランジャ手段に対応する。
油圧シリンダ11、ピストンロッド12が本発明の射出シリンダ手段に対応する。
補助減圧タンクTBは本発明の第2減圧タンクに該当し、第3開閉バルブSV、排気管90、排気管91、溝15hおよびプランジャロッド14内の管路などが本発明の第2減圧手段に対応する。
コントローラ30が本発明の制御手段に対応する。
ダイカスト装置の動作方法、減圧鋳造方法
図3〜図12を参照して、ダイカスト装置1の動作方法と減圧鋳造方法について述べる。
図3はダイカスト装置1の動作形態を時系列に図解したフローチャートである。
図4〜図12は図3に図解した各工程におけるダイカスト装置1の主要部分の動作状態を図解した図である。
下記に述べるダイカスト装置1における動作が本発明の実施の形態の減圧鋳造方法の一部に該当する。
本実施の形態において、ダイカスト装置1の下記の自動制御可能な主要な制御動作はコントローラ30が行う。
図3は、ダイカスト装置1の全体動作、シャットオフバルブ60の動作状態、酸素ガス供給系の動作状態を示す酸素ガス供給装置80および第2開閉バルブGVの動作状態、主減圧系の動作状態を示す主減圧タンクTAおよび第1開閉バルブMVの動作状態、補助減圧系の動作状態を示す補助減圧タンクTBおよび第3開閉バルブSVの動作状態を、時系列に図解している。
なお、図3における時点t0〜時点t16は、図解の便宜のために等間隔で図解しているが、実際は等間隔とは限らない。同様に、時間間隔T1 〜T4 の長さも図解の縮尺には限定されない。
時点t0、初期状態、図2
図2にダイカスト装置1の時点t0の初期状態を示す。
時点t0の初期状態において、コントローラ30は停止している。このダイカスト装置1の初期状態において、第1開閉バルブMV、第2開閉バルブGV、第3開閉バルブSVはそれぞれ「閉」状態にある。第1オープンバルブOV1、第2オープンバルブOV2も閉状態にある。第1、第2真空ポンプ50A、50Bも停止している。
この初期状態においては、酸素ガス供給装置80からキャビティCへの酸素の供給はなく、主減圧タンクTAによるキャビティC内の減圧動作はなく、補助減圧タンクTBによるキャビティC内の減圧動作もない。この初期状態において、射出スリーブ16の内部空間および射出スリーブ16に連通するキャビティC外気(大気)に晒されている。
シャットオフバルブ60も消勢(de-energise)されている。すなわち、シャットオフバルブ60の弁体62は弁座部材64に着座しており、シャットオフバルブ60は閉じている。
プランジャチップ15は射出スリーブ16の供給口16hの右側に位置し、供給口16hは開口している。
時点t1:型締動作(図3、S1−1)、図2
時点t1において、図2に示すように固定金型2と移動金型3の型締を、たとえば、図示しない型締装置を用いて行う。これにより、固定金型2と移動金型3との間に金属溶湯MLが充填されるキャビティCが規定される。
スリーブ16の供給口16hは開口しているから、供給口16hから金属溶湯MLが注湯可能な状態になっている。
時点t2:主減圧系および補助減圧系の準備
時点t2において、コントローラ30は第1真空ポンプ50Aを動作させる。
それにより、第1真空ポンプ50Aは主減圧系の主減圧タンクTA内を真空状態に近い状態(ほぼ真空状態)にする。もちろん、好ましくは、真空状態がよい。
以後、第1真空ポンプ50Aは、コントローラ30によってその動作が停止されるまで、主減圧タンクTA内を所定の真空状態に維持するように、好ましくは、自動的にオン・オフ動作する。同様に、時点t2においてコントローラ30は第2真空ポンプ50Bを動作させる。それにより、第2真空ポンプ50Bは補助減圧系の補助減圧タンクTB内を真空状態に近い状態にする。以後、第2真空ポンプ50Bは、コントローラ30によってその動作か停止されるまで、補助減圧タンクTB内を所定の真空状態に維持するように、好ましくは、自動的にオン・オフ動作する。
第1真空ポンプ50Aの動作は時点t3における注湯の開始前まで継続して行う。同様に、第2真空ポンプ50Bの動作も時点t3における注湯の開始前まで継続して行う。これにより、主減圧タンクTAは時点t2〜時点t3の期間十分真空状態に近い状態にされる。同様に、補助減圧タンクTBは時点t2〜時点t3の期間十分真空状態に近い状態にされる。
この時点t2において、第1開閉バルブMV、第2開閉バルブGVともに閉状態であり、キャビティCの減圧動作はまだ行われない。
このように、コントローラ30は、減圧動作の準備に必要な期間のみ、第1真空ポンプ50Aおよび第2真空ポンプ50Bを動作させている。
第1真空ポンプ50Aおよび第2真空ポンプ50Bの起動および停止は、上述したコントローラ30によって行う他、ダイカスト装置1の作業者が手動で行うこともできる。本実施の形態においては、コントローラ30によって第1真空ポンプ50Aおよび第2真空ポンプ50Bを駆動する場合を述べる。
時点t3:注湯開始(S1−2)、図4
時点t3において、射出スリーブ16の供給口16hから金属溶湯MLの射出スリーブ16内への注湯を開始する。
時点t4:酸素供給開始(S2−1)、図4
時点t4において、コントローラ30は、供給口16hから射出スリーブ16の内部へ金属溶湯MLの注湯作業の開始を検知したとき、閉状態のシャットオフバルブ60を開状態に付勢する(energise) 制御信号30SCを電磁アクチュエータ61に出力する。さらにコントローラ30は閉状態の第2開閉バルブGVを開状態に付勢する制御信号30SDを出力する。
これにより、図4に図解したように、シャットオフバルブ60の弁体62が弁座部材64の着座状態から弁移動空間Sp内に向かって移動し、シャットオフバルブ60が開状態になる。その結果、第2貫通孔64bと弁移動空間Spとが連通状態になる。よって、酸素ガス供給装置80から第2開閉バルブGVと排気路52を経由して第2貫通孔64bを通り、弁移動空間Sp、キャビティC、射出スリーブ16の内部空間に酸素ガスが充填される。
キャビティCおよび射出スリーブ16内への酸素ガスの充填により射出スリーブ16内に注湯された金属溶湯MLの表面が酸化されて、酸素置換ダイカスト法が開始する。すなわち、酸素ガス供給装置80からキャビティCに供給された酸素ガスO2 は、キャビティCを通じて射出スリーブ16の内部空間を通り、供給口16hから射出スリーブ16の外部に放出される。
この状態において、弁移動空間Sp、キャビティC、射出スリーブ16の内部空間で構成される閉空間は酸素ガスO2 によって満たされるとともに、供給口16hから放出される酸素ガスにより、弁移動空間Sp、キャビティCおよび射出スリーブ16内に侵入している(残留している)外気ガスなどのダイカスト処理に害をなすガスが射出スリーブ16の外部に排出される。このように、酸素ガスはキャビティC内などに残留してダイカスト製品の品質などに害を及ぼすガスのパージをも行う。
射出スリーブ16内への金属溶湯MLの注湯の開始は、たとえば、図示しない射出スリーブ16の供給口16h近傍に配設された温度センサの検出信号をコントローラ30に入力し、コントローラ30が温度センサの検出信号の急激な変化を検出して検知することができる。あるいは、コントローラ30は、ダイカスト装置1の作業者からの指示により金属溶湯MLの注入を検知できる。
なお、酸素ガス供給装置80からの酸素ガスO2 のキャビティCおよび射出スリーブ16内への供給開始は、金属溶湯MLの射出スリーブ16の内部空間への注湯の開始前または、注湯中、または、注湯開始直後のいずれでもよい。
時点t5:注湯終了(S1−3)、図4
時点t5において、1個のダイカスト製品を製造するために必要な量の金属溶湯MLが射出スリーブ16内に注湯されたとき注湯作業は終了する。
注湯開始から注湯終了までの時間T1は、射出スリーブ16内に注湯する金属溶湯MLの量によって規定され、一定ではない。
この注湯の終了により、射出スリーブ16の供給口16h部分近辺の射出スリーブ16の内部は金属溶湯MLでほぼ塞がれる。しかしながら、この状態においても、第2開閉バルブGVは開状態であり、依然として酸素ガス供給装置80からの酸素の充填処理が継続して行われている。
時点t6、低速射出開始(S1−4)、図5
時点t6において、注湯作業が終了したことを検知したとき、コントローラ30は油圧シリンダ11を駆動してピストンロッド12を低速で駆動させる。その結果、図5に図解したように、図2に示したピストンロッド12にカップリング13を介して接続されているプランジャロッド14の先端に接続されているプランジャチップ15が射出スリーブ16内を低速で移動していく。
プランジャロッド14またはプランジャチップ15の移動した位置および移動速度は位置検出センサ35の検出信号S35に基づいてコントローラ30が算出して、上記油圧シリンダ11の駆動に使用する。移動速度はコントローラ30が位置を時間微分して求める。
プランジャチップ15の低速移動により、射出スリーブ16内に導入された金属溶湯MLは圧力を受け、射出スリーブ16内の長手方向だけでなく、断面方向にも拡大していく。
このとき、第3開閉バルブSVは開状態であり、酸素ガス供給装置80からキャビティCへの酸素ガスの充填は継続している。
時点t7、酸素供給停止(S2−2)、図6
コントローラ30は、時点t7において、時点t6におけるプランジャロッド14(またはプランジャチップ15)の低速射出を開始した後所定時間経過後(時点t6〜時点t7の期間)、金属溶湯MLが射出スリーブ16内に充満した状態になったとき、第2開閉バルブGVを消勢して閉状態にする制御信号30SDを出力し、第2開閉バルブGVを閉状態にして酸素ガス供給装置80からキャビティCへの酸素ガスの充填を停止させる。これにより、酸素ガス供給装置80によるキャビティCおよび射出スリーブ16内への酸素ガスの充填処理が終了する。
さらにコントローラ30はシャットオフバルブ60を消勢して、シャットオフバルブ60を閉状態、すなわち、弁体62が弁座部材64に当接して、弁体62と弁座部材64との間隙を閉鎖する状態にする。
時点t4から時点t7までの一定時間(期間)T2 は、射出スリーブ16に注湯された金属溶湯MLの酸化防止のため、および、金属溶湯MLの温度低下を防止するため、できるだけ短時間が望ましい。
酸素置換ダイカスト法としては、供給口16hから金属溶湯MLを注湯開始してから、プランジャロッド14(またはプランジャチップ15)をキャビティC側に向かって射出前進させる間の短時間だけ、酸素ガスを置換させることでよい。
時点t8:主減圧系および補助減圧系の準備動作の停止、図6
コントローラ30により第2開閉バルブGVを閉状態にして酸素ガス供給装置80によるキャビティCおよび射出スリーブ16内への酸素ガスの充填停止の後、時点t8において、コントローラ30は、第1真空ポンプ50Aを停止して主減圧タンクTA内の減圧動作を停止する。同様に、コントローラ30は、第2真空ポンプ50Bの動作を停止して補助減圧タンクTB内の減圧動作を停止する。
以上の減圧準備動作により主減圧タンクTAおよび補助減圧タンクTBは十分低い圧力状態、好ましくは、ほぼ真空状態まで減圧されているものとする。
なお、第1真空ポンプ50Aおよび第2真空ポンプ50Bの停止は、主減圧タンクTA内および補助減圧タンクTB内の圧力状態がそれぞれ十分低圧、好ましくは、ほぼ真空状態に到達すれば、このタイミング以前の任意の時点において、それぞれ、独立に停止動作を行ってもよい。
時点t9:供給口16hの閉鎖(S1−5)、図7
コントローラ30は、時点t9において、位置検出センサ35の検出信号S35を監視しながら、油圧シリンダ11を駆動して、プランジャチップ15が射出スリーブ16の供給口16hを越えて供給口16hを閉鎖状態にするまでプランジャチップ15(プランジャロッド14)を低速射出させる。その結果、図7に図解したように、供給口16hの近傍の射出スリーブ16内はプランジャチップ15の圧力を受けた金属溶湯MLが射出スリーブ16の内壁方向にも拡大して射出スリーブ16を塞ぐようになる。したがって、弁移動空間Sp、キャビティCおよび金属溶湯MLが充填されていない射出スリーブ16内が金属溶湯MLおよびプランジャチップ15によって射出スリーブ16の外部に対してシール状態になる。その結果、供給口16hから外気の侵入は無くなる。
時点t10:主減圧系の減圧開始、図8
供給口16hを閉鎖後、コントローラ30は、時点t10において、第1開閉バルブMVを開状態にする制御信号30SAを第1開閉バルブMVに出力する。実際は、コントローラ30は、時点t9において供給口16hの閉鎖動作を行った時点t9の後、実際に供給口16h付近の射出スリーブ16内が金属溶湯MLで閉鎖状態になる所定時間T4経過後に第1開閉バルブMVを開状態にする。
またコントローラ30はシャットオフバルブ60を開状態にする。それにより、弁体62は弁座部材64から離間する。
上記動作により、排気管51、排気路52、第2貫通孔64b、弁体62と弁座部材64との空隙を介して、真空状態またはほぼ真空状態の主減圧タンクTAが射出スリーブ16の金属溶湯MLが充填されていない内部空間、この内部空間に続くキャビティC、弁移動空間Spおよび排気路52などの閉空間で規定される主減圧系内を減圧していく。この減圧動作により、閉空間内に充填された酸素ガスも外部に排出されていく。
この減圧動作を本明細書において第1減圧動作と呼び、時点t13の高速射出の後、さらに、時点t14の充填終了の後の時点t15まで継続する。
時点t11:補助減圧系の動作開始、図9
時点t9における供給口16hを閉鎖後、コントローラ30は時点t11において第3開閉バルブSVを開状態にする制御信号30SBを第3開閉バルブSVに出力する。
実際は、コントローラ30は、時点t9において供給口16hの閉鎖動作を行った後、実際に供給口16h付近の射出スリーブ16内が金属溶湯MLで閉鎖状態になる所定時間T3経過後に第3開閉バルブSVを開状態にする。
その結果、排気管90を介して固定金型流路2c内、排気管91を介して移動金型流路3c内、プランジャチップ15の溝15hおよびプランジャロッド14の内部管を介して射出スリーブ16内が真空状態またはほぼ真空状態の補助減圧タンクTBによって減圧されて排気されていく。
すなわち、酸素ガス供給装置80からのキャビティCおよび射出スリーブ16内への酸素ガスの供給(充填)により排気管90を介した固定金型流路2c、排気管91を介した移動金型流路3cおよび溝15hに残存する酸素ガスはもとより、上記酸素ガスパージによっても排気管90、固定金型流路2c、排気管91、移動金型流路3cおよび溝15hなどに残留した、あるいは、その後にそれらの場所に侵入した外気などダイカストに害を及ぼす微小なガスが補助減圧タンクTBにより外部に排出されていく。
補助減圧タンクTBによるガスの排出動作により、固定金型流路2c、移動金型流路3cなどには外気がなくなり、かつ、これらの部分には外気ガスが侵入しない。
この減圧動作を本明細書において第2減圧動作と呼び、時点t16のダイカスト製品の取出動作の前の時点t15まで継続する。
上記例では、主減圧タンクTAによる第1減圧動作の終了のタイミングと補助減圧タンクTBによる第2減圧動作の終了のタイミングは、同じ時点t15である。
上述した例示において、主減圧系(第1減圧系)の減圧動作(第1減圧動作)を先に行い、補助減圧系(第2減圧系)の減圧動作(第1減圧動作)を後にする場合を述べたが(所定時間T4>T3)、供給口16hの閉塞後であれば、所定時間T3=T4とすることもできる。
あるいは、コントローラ30は、第1開閉バルブMVの開動作による主減圧系の減圧開始、および、第3開閉バルブSVの開動作による補助減圧系の減圧開始を同時に行うこともできる。
上記とは逆に、補助減圧系の減圧開始を先に行い、主減圧系の減圧開始を後に行うこともできる(所定時間T3>T4)。
時点t12:主減圧系の部分動作停止、図10
時点t10において主減圧系を動作開始した所定時間T5経過後、かつ、時点t13における高速射出の前の時点t12において、コントローラ30は、シャットオフバルブ60を閉状態にする制御信号30SCを電磁アクチュエータ61に出力し、シャットオフバルブ60を閉状態、すなわち、弁座部材64に弁体62が着座する状態にする。
その結果、図10に図解したように、シャットオフバルブ60が閉状態となり、弁移動空間Spと排気路52との間の連通はなくなる。ただし、第1開閉バルブMVは開状態であるから、主減圧タンクTAによる排気路52、第2貫通孔64bの減圧動作は継続して行われる。
時点t13における高速射出の前に、シャットオフバルブ60を閉状態にするのは、高速射出により高速かつ高圧でキャビティCに導入される金属溶湯MLが弁移動空間Sp、第2貫通孔64bなどに引き込まれることを防止するためである。他方、補助減圧系が動作していても上述した心配はないので補助減圧系の動作は継続させる。
時点t10〜時点t12、または、時点t11〜時点t12の期間は、主減圧系と補助減圧系とが並行して動作する。
主減圧系の動作により、キャビティC内の酸素ガスおよび外気(存在するとすれば)は弁移動空間Sp、第2貫通孔64b、排気路52を経由して外部に排出される一方、主減圧系の初期動作により酸素ガス供給装置80からキャビティCなどの内部に充填された酸素ガスを、キャビティC内、射出スリーブ16内などの閉空間の隅々まで充満させて酸素置換ダイカスト法の効果を高める。また補助減圧系の動作により、排気管90、排気管91などを介して固定金型流路2c、移動金型流路3c、および、溝15hなどから外気が排出される。
このように、主減圧系と補助減圧系との並行動作により、ダイカスト装置1内におけるダイカスト処理に害を及ぼすガスは、ダイカスト装置の至る所において継続して排除されるか、または、外部から侵入できない。
時点t13:高速射出(S1−6)、図11
時点t13において、コントローラ30は、油圧シリンダ11を駆動してピストンロッド12を、図解の状態において、高速で左側に移動させる。その結果、プランジャロッド14に接続されているプランジャチップ15が射出スリーブ16内を高速でキャビティCに向かって移動する。
その結果、射出スリーブ16に注湯された金属溶湯MLが、射出スリーブ16内からキャビティC内に急速に充填されていく。金属溶湯MLの高速注入により、キャビティCの高速キャビティC内の圧力は、時点t13以降急激に高くなる。
プランジャチップ15は所定距離、射出スリーブ16内を移動させられた状態で維持される。それにより、キャビティC内の圧力が高い状態で維持される。
キャビティCに充填された金属溶湯MLはキャビティC内に充満し、所望のダイカスト製品となっていく。
時点t14:充填完了(S1−7)、図11
キャビティCに金属溶湯MLが高速射出で充填された後、所定時間が経過した時点t14において、充填完了となる。
時点t15:主減圧系の完全停止、補助減圧系の動作終了、図12
充填終了後、コントローラ30は、時点t15において、第1開閉バルブMVを閉状態にする制御信号30SAを第1開閉バルブMVに出力する。その結果、図12に図解したように、第1開閉バルブMVは閉状態になり、主減圧タンクTAからの減圧動作は終了する。
またコントローラ30は、第3開閉バルブSVを閉状態にする制御信号30SBを第3開閉バルブSVに出力する。その結果、図12に図解したように、第1開閉バルブMVおよび第3開閉バルブSVが閉状態となり、補助減圧タンクTBによる、排気管90を経由した固定金型流路2c、排気管91を経由した移動金型流路3c、プランジャチップ15の溝15hおよびプランジャロッド14を経由した射出スリーブ16内の減圧動作を終了する。
初期状態から上述した時点t15まで、第1オープンバルブOV1および第2オープンバルブOV2は閉じられている。
好ましくは、時点t15の所定時間経過後、キャビティC内のダイカスト製品が冷却して取り外し可能になったら、すなわち、時点t15における金属溶湯のキャビティCへの充填終了後、かつ、時点t16の前で、ダイカスト処理が終了後、たとえば、コントローラ30は第1オープンバルブOV1と第2オープンバルブOV2とを開放状態にする。その結果、型内が大気圧状態になるので、気圧差が少なくなり、時点t16における型開き動作が容易になる。
第1オープンバルブOV1の上記効果を一層高めるためには、第1オープンバルブOV1の開放とともに、コントローラ30がシャットオフバルブ60も開放することが望ましい。
時点t16、ダイカスト製品の取出(S1−8)
時点t15の所定時間経過後、キャビティC内のダイカスト製品が冷却して取り外し可能になったら、固定金型2と移動金型3との型締め状態を解除し、押出ピン65を押してキャビティC内のダイカスト製品を取り出す。
以上述べたように本発明の実施の形態によれば、主減圧系による減圧動作によるキャビティC内の排気に加えて補助減圧系による減圧動作により、キャビティC内、射出スリーブ16内、弁移動空間Spなどにおけるダイカストに害を及ぼすガスが排除され、高い品質のダイカスト製品が製造できる。
また本実施の形態によれば、減圧酸素置換ダイカスト法による適切な酸素供給により、高い品質のダイカスト製品が製造できる。
さらに本実施の形態は、一連の動作が連続して短時間で遂行できるので、射出スリーブ16に注湯された金属溶湯MLに大きな温度低下が起きず、高い品質のダイカスト製品が製造できる。
本実施の形態によれば、サイクル延長に対して効果を発する。
本実施形態によれば、キャビティCを含む閉空間内を酸素ガスで満たしたのち、補助減圧タンクTBにより固定金型2の固定金型流路2c、移動金型3の移動金型流路3cおよびプランジャチップ15の溝15hとスリーブ16の内周面との間に形成される流路から減圧による排気を行うため、キャビティCを含む閉空間内の隅々まで酸素ガスで確実に置換でき、また、ガス侵入路内も酸素ガスで確実に置換できる。
さらにキャビティCを含む閉空間内を確実に酸素ガスで置換したのちも、補助減圧タンクTBによる上記閉空間内の排気を継続することにより、キャビティC内に空気等の不要なガスが侵入しない。
さらに、補助減圧タンクTBと主減圧タンクTAの双方によりキャビティC内、スリーブ内、隙間(クリアランス)などの減圧を行うので、減圧に要する時間を短縮できるとともに、キャビティC内に残存する酸素ガスを非常に少なくすることができる。
本発明のダイカスト装置および減圧鋳造方法の実施に際しては、上述した例示的な実施の形態に限定されず、種々の変形態様をとることができる。
上述した実施形態では、本発明の主減圧手段および補助減圧手段を主減圧タンクTAおよび補助減圧タンクTBで構成した場合について説明したが、タンクを用いずに、真空ポンプ等により直接減圧する構成とすることも可能である。
補助減圧タンクTBを動作させてキャビティCの減圧処理を行う部分は上述した、固定金型流路2c、移動金型流路3c、プランジャチップ15の溝15hなどに限定されず、その他の外気がキャビティCなどに侵入する可能性ある部分に適用することができる。そのような他の部分としては、たとえば、移動金型3と移動金型3に装着されるシャットオフバルブ60との間の隙間、たとえば、弁座部材64と外部移動金型3bとの隙間などがある。
本発明の実施の形態のダイカスト装置における動作の例示として、金属溶湯MLが低速射出され、その後、高速射出される場合を述べたが、本発明の実施の形態のダイカスト装置においては、金属溶湯MLの射出方法、あるいは、プランジャチップ15の移動速度は上述した2段階の移動速度に限らず、たとえば、1つの移動速度のみ、あるいは、3段階切換による移動速度など、適宜の移動速度で金属溶湯をキャビティ内に射出させることができる。
本発明の実施の形態のダイカスト装置におけるコントローラ30による上述した制御動作、たとえば、シャットオフバルブ60の開閉動作切換、第1〜第3開閉バルブMV,GV,SVの開閉切換制御などは、それからが行うべきダイカスト装置全体の状態、たとえば、プランジャチップ15の移動位置および移動速度などを、事前に決定された条件に従って行うことができる。そのような決定した条件は、たとえば、コントローラ30内のメモリに事前に登録しておく。したがって、コントローラ30は、上述した例示のごとく、プランジャチップ15または金属溶湯MLの低速射出、高速射出などの動作状態を認識することなく、位置検出センサ35の読み、および/または、位置検出センサ35の検出値とその変化を参照して、上述したと同様の制御動作を行うことができる。
なお、本発明の第1開閉弁手段に対応するシャットオフバルブ60は、移動金型3に装着されるだけでなく、固定金型2に装着してもよい。好ましくは、シャットオフバルブ60は、移動金型3と固定金型2に装着することができる。それにより、キャビティの減圧時間が短縮できる。
さらに、同様の用途に用いる、主減圧タンクTAと補助減圧タンクTBとを共通の1つのタンクにしてもよい。そうすることにより、ダイカスト装置の設備が簡単になり、ダイカスト装置の設備の価格が低廉できる。
また、油圧シリンダ11に代えて、他の液圧媒体の駆動手段、たとえば、水圧を媒体する駆動手段を用いてピストンロッド12を左右に移動させることもできる。
また上述した例示に限らず、電動アクチュエータでピストンロッド12を移動させることもできる。
図1は本発明の実施形態に係るダイカスト装置の構成を示す図である。 図2は図1に図解したダイカスト装置のうち、固定金型および移動金型を中心とした部分拡大図であり、時点t0〜時点t3までのダイカスト装置の動作を示す図である。 図3は図1に図解したダイカスト装置の動作を時系列に示す工程図(フローチャート)である。 図4は図3に図解した各工程におけるダイカスト装置の主要部分の動作状態を図解した図である。 図5は図3に図解した各工程におけるダイカスト装置の主要部分の動作状態を図解した図である。 図6は図3に図解した各工程におけるダイカスト装置の主要部分の動作状態を図解した図である。 図7は図3に図解した各工程におけるダイカスト装置の主要部分の動作状態を図解した図である。 図8は図3に図解した各工程におけるダイカスト装置の主要部分の動作状態を図解した図である。 図9は図3に図解した各工程におけるダイカスト装置の主要部分の動作状態を図解した図である。 図10は図3に図解した各工程におけるダイカスト装置の主要部分の動作状態を図解した図である。 図11は図3に図解した各工程におけるダイカスト装置の主要部分の動作状態を図解した図である。 図12は図3に図解した各工程におけるダイカスト装置の主要部分の動作状態を図解した図である。
符号の説明
1…ダイカスト装置
2…固定金型
2a…内部固定金型、2b…外部固定金型、2c…固定金型流路
2d…キャビティ面、2e…弁移動空間面、2f…分割面
3…移動金型
3a…内部移動金型、3b…外部移動金型、3c…移動金型流路
3f…分割面
Sp…弁移動空間
C…キャビティ
10…射出装置
11…油圧シリンダ、12…ピストンロッド、13…カップリング
14…プランジャロッド、15…プランジャチップ、15h…溝
16…射出スリーブ、16h…供給口
17…射出プランジャ
30…コントローラ
51…排気管、52…排気路、50A,50B…真空ポンプ
60…シャットオフバルブ
61…電磁アクチュエータ、62…弁体、63…弁軸、
64…弁座部材
64a…第1貫通孔、64b…第2貫通孔、64f…弁座面
65…押出ピン
80…酸素ガス供給装置、90、91…排気管
TA、TB…第1、第2減圧タンク、
MV、GV、SV…第1〜3開閉バルブ
OV1、OV2…第1、第2オープンバルブ

Claims (3)

  1. 内部固定金型と、当該内部固定金型を包囲する外部固定金型と、前記内部固定金型と前記外部固定金型との間に隙間として形成される固定金型流路とを有する固定金型と、
    前記内部固定金型とともに金属溶湯が収容されるキャビティを形成する内部移動金型と、当該内部移動金型を包囲する外部移動金型と、前記内部移動金型と前記外部移動金型との間に隙間として形成される移動金型流路とを有する移動金型と、
    第1減圧タンクと、当該第1減圧タンクに接続された第1開閉バルブとを有する、第1減圧手段と、
    酸素ガス供給装置と、当該酸素ガス供給装置に接続された第2開閉バルブとを有する、酸素供給手段と、
    第2減圧タンクと、当該第2減圧タンクに接続された第3開閉バルブと、当該第3開閉バルブと前記固定金型流路および前記固定金型流路との間に配設された排気用配管とを有する、第2減圧手段と、
    前記移動金型に設けられ、前記第1減圧手段または前記酸素ガス供給手段と前記キャビティとを連通状態または非連通状態にする、第1開閉弁手段と、
    前記キャビティに連通する開口と、当該開口と対向する側に前記金属溶湯を注湯する供給口を有する、内筒形の射出スリーブと、
    該射出スリーブの内筒内を移動自在に嵌挿されたプランジャチップと、当該プランジャチップに接続され当該プランジャチップを移動させるプランジャロッドとを有し、前記供給口から前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記開口を経由して前記キャビティに向けて射出する射出プランジャ手段と、
    前記プランジャロッドの位置を検出する位置センサと、
    前記射出プランジャ手段を駆動する射出シリンダ手段と、
    制御手段と、
    を具備し、
    前記制御手段は、
    前記射出スリーブの供給口の近傍に配設された温度センサからの検出信号または作業者の指示により、前記射出スリーブ内に金属溶湯の注湯の開始を検出したとき、前記第2開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段を開動作させて前記キャビティおよび前記射出スリーブ内に酸素ガスを充満させて充填し、前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯の表面を酸化させつつ、前記充填された酸素ガスを前記供給口から放出させて前記キャビティ内および前記射出スリーブ内の酸素ガスとともに酸素ガス以外のガスを排気させる、第1の処理を行い、
    記射出スリーブ内への前記金属溶湯の注湯が終了したとき、前記射出シリンダ手段を駆動して前記射出プランジャ手段の前記プランジャロッドの先端を前記開口に向けて第1の速度で移動させて、前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記キャビティへ射出することを開始する、第2の処理を行い、
    前記第2の処理により前記プランジャロッドの第1の速度での移動開始後所定時間経過したことを検出したとき、前記第2開閉バルブを閉状態にして前記酸素ガスの充填を終了させ、前記第1開閉弁手段を閉状態にする、第3の処理を行い、
    前記位置センサの検出値から求めた前記プランジャロッドの移動量に基づいて、前記第2の処理による前記プランジャチップが前記射出スリーブの供給口を越えて前記供給口を閉鎖状態にするまで前記プランジャチップを前記第1の速度で移動させる、第4の処理を行い、
    前記第4の処理により前記供給口閉鎖状態になった後、前記第1減圧手段内の前記第1開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段を開状態にして前記第1減圧タンクにより前記キャビティ内および前記射出スリーブ内を減圧することを開始する、第5の処理を行い、
    前記第5の処理により前記第1開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段開状態になった後、前記第2減圧手段の前記第3開閉バルブを開状態にして、前記排気用配管に接続された前記固定金型流路および前記固定金型流路を前記第2減圧タンクにより減圧することを開始する、第6の処理を行い、
    前記第6の処理により前記第1減圧タンクにより前記キャビティ内および前記射出スリーブ内を減圧することを所定時間継続させ、その後、前記第1開閉弁手段を閉状態にする第7の処理を行い、
    前記射出シリンダ手段を駆動して前記射出プランジャ手段の前記プランジャロッドの先端を前記開口に向けて前記第1の速度より高い第2の速度で移動させて前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記キャビティへ高速に注入させる、第8の処理を行い、
    前記第8の処理による前記第2の速度での前記プランジャロッドの移動開始後所定時間経過後、前記第1の開閉バルブおよび前記第3の開閉バルブを閉動作させて前記第1の減圧タンクおよび前記第2の減圧タンクによる前記減圧動作を終了する、第9の処理を行う
    ダイカスト装置。
  2. 前記内部移動金型には前記キャビティを臨む第1の貫通孔が形成されており、
    前記移動金型に設けられた前記第1開閉弁手段は、
    前記貫通孔と前記キャビティとの間を連通または非連通にする弁体と、
    当該弁体を移動させる駆動手段と、
    を有し、
    前記内部移動金型および前記外部移動金型には、前記第1の貫通孔と、前記第1開閉バルブと前記第2開閉バルブとに接続された配管に接続された第2の貫通孔が形成されている、
    請求項1記載のダイカスト装置。
  3. 内部固定金型と、当該内部固定金型を包囲する外部固定金型と、前記内部固定金型と前記外部固定金型との間に隙間として形成される固定金型流路とを有する固定金型と、前記内部固定金型とともに金属溶湯が収容されるキャビティを形成する内部移動金型と、当該内部移動金型を包囲する外部移動金型と、前記内部移動金型と前記外部移動金型との間に隙間として形成される移動金型流路とを有する移動金型と、第1減圧タンクと、当該第1減圧タンクに接続された第1開閉バルブとを有する、第1減圧手段と、酸素ガス供給装置と、当該酸素ガス供給装置に接続された第2開閉バルブとを有する、酸素供給手段と、第2減圧タンクと、当該第2減圧タンクに接続された第3開閉バルブと、当該第3開閉バルブと前記固定金型流路および前記固定金型流路との間に配設された排気用配管とを有する、第2減圧手段と、前記移動金型に設けられ、前記第1減圧手段または前記酸素ガス供給手段と前記キャビティとを連通状態または非連通状態にする、第1開閉弁手段と、前記キャビティに連通する開口と、当該開口と対向する側に前記金属溶湯を注湯する供給口を有する、内筒形の射出スリーブと、該射出スリーブの内筒内を移動自在に嵌挿されたプランジャチップと、当該プランジャチップに接続され当該プランジャチップを移動させるプランジャロッドとを有し、前記供給口から前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記開口を経由して前記キャビティに向けて射出する射出プランジャ手段と、前記プランジャロッドの位置を検出する位置センサと、前記射出プランジャ手段を駆動する射出シリンダ手段と、を具備するダイカスト装置の制御方法であって、
    前記射出スリーブの供給口の近傍に配設された温度センサからの検出信号または作業者の指示により、前記射出スリーブ内に金属溶湯の注湯の開始を検出したとき、前記第2開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段を開動作させて前記キャビティおよび前記射出スリーブ内に酸素ガスを充満させて充填し、前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯の表面を酸化させつつ、前記充填された酸素ガスを前記供給口から放出させて前記キャビティ内および前記射出スリーブ内の酸素ガスとともに酸素ガス以外のガスを排気させる、第1の処理を行い、
    記射出スリーブ内への前記金属溶湯の注湯が終了したとき、前記射出シリンダ手段を駆動して前記射出プランジャ手段の前記プランジャロッドの先端を前記開口に向けて第1の速度で移動させて、前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記キャビティへ射出することを開始する、第2の処理を行い、
    前記第2の処理により前記プランジャロッドの第1の速度での移動開始後所定時間経過したことを検出したとき、前記第2開閉バルブを閉状態にして前記酸素ガスの充填を終了させ、前記第1開閉弁手段を閉状態にする、第3の処理を行い、
    前記位置センサの検出値から求めた前記プランジャロッドの移動量に基づいて、前記第2の処理による前記プランジャチップが前記射出スリーブの供給口を越えて前記供給口を閉鎖状態にするまで前記プランジャチップを前記第1の速度で移動させる、第4の処理を行い、
    前記第4の処理により前記供給口閉鎖状態になった後、前記第1減圧手段内の前記第1開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段を開状態にして前記第1減圧タンクにより前記キャビティ内および前記射出スリーブ内を減圧することを開始する、第5の処理を行い、
    前記第5の処理により前記第1開閉バルブおよび前記第1開閉弁手段開状態になった後、前記第2減圧手段の前記第3開閉バルブを開状態にして、前記排気用配管に接続された前記固定金型流路および前記固定金型流路を前記第2減圧タンクにより減圧することを開始する、第6の処理を行い、
    前記第6の処理により前記第1減圧タンクにより前記キャビティ内および前記射出スリーブ内を減圧することを所定時間継続させ、その後、前記第1開閉弁手段を閉状態にする第7の処理を行い、
    前記射出シリンダ手段を駆動して前記射出プランジャ手段の前記プランジャロッドの先端を前記開口に向けて前記第1の速度より高い第2の速度で移動させて前記射出スリーブ内に注湯された金属溶湯を前記キャビティへ高速に注入させる、第8の処理を行い、
    前記第8の処理による前記第2の速度での前記プランジャロッドの移動開始後所定時間経過後、前記第1の開閉バルブおよび前記第3の開閉バルブを閉動作させて前記第1の減圧タンクおよび前記第2の減圧タンクによる前記減圧動作を終了する、第9の処理を行う
    ダイカスト装置の制御方法。
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