以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る無線LANシステム10の構成の一例を示す。無線LANシステム10は、複数の優先度の高い無線LAN端末20および優先度の高い無線LAN端末以外の無線LAN端末40および複数のアクセスポイント30を備える。通信エリア61は、帰属可能な強度の電波がアクセスポイント30−1から送信されている範囲を示す。通信エリア62は、帰属可能な強度の電波がアクセスポイント30−2から送信されている範囲を示す。図1において、点線の両矢印は、無線LAN端末20または無線LAN端末40が帰属中であることを示しており、実線の両矢印は、無線LAN端末20または無線LAN端末40が通信中であることを示している。
それぞれのアクセスポイント30は、有線ネットワーク11に接続されており、IEEE802.11aやIEEE802.11b等の無線LANの規格に基づいて、それぞれの無線LAN端末20と無線通信を行うと共に、有線ネットワーク11を介して有線ネットワーク11に接続されている他の通信機器12と、例えばイーサネット(登録商標)等の通信規格に基づいて有線通信を行う。なお、図1では、複数のアクセスポイント30を結ぶネットワークとして有線ネットワーク11を適用しているが、これは、無線LAN端末20または無線LAN端末40との通信と異なる方式の無線ネットワークであってもよい。
それぞれの無線LAN端末20または無線LAN端末40は、例えば最も受信信号品質の良いアクセスポイント30に帰属する。受信信号品質とは、例えば受信電界強度、SNR(Signal to Noise Ratio)、BER(Bit Error Rate)等である。そして、無線LAN端末20または無線LAN端末40は、帰属したアクセスポイント30と無線LANに基づく無線通信を行い、当該アクセスポイント30を介して、当該アクセスポイント30に帰属している他の無線LAN端末20または無線LAN端末40や、他のアクセスポイント30に帰属している他の無線LAN端末20または無線LAN端末40、有線ネットワーク11に接続されている通信機器12等と通信を行う。本実施形態において、それぞれの無線LAN端末20は、通信品質を高く保つ必要がある端末であり、例えば音声データを主に扱う音声通信端末である。さらに、無線LAN端末40は、通品品質が高くなくてもよいデータを扱うデータ通信端末である。
ところで、1つのアクセスポイント30を介して通信する無線LAN端末20または無線LAN端末40の台数が多くなると、それぞれの無線LAN端末20または無線LAN端末40に割り当てられる通信帯域が少なくなる場合があり、リアルタイム性が必要な音声や動画像の伝送に支障をきたす場合がある。これを回避するために、本実施形態におけるアクセスポイント30は、無線LAN端末20と連携して、それぞれの無線LAN端末20の通信帯域を保証する方式とする。通信帯域を保証する方式としては、例えば、HCCA(Hybrid coordination function Controlled Channel Access)がある。このとき、無線LAN端末40は無線LAN端末20が確保している通信帯域以外の通信帯域を使用する。
ここで、通信品質が高いとは、ある一定以上の通信帯域を保証した通信ができる状態とし、通信品質が高くないとは、通信帯域を保証することができない状態とする。また、通信負荷とは、単位時間当たりに送受信可能なデータ量に対する、実際に送受信したデータ量である。
また、それぞれのアクセスポイント30は、図1に示した無線LAN端末20−1のように、無線LAN端末20を新たに帰属させる場合には、現在の通信負荷にかかわらず、認証等の他の要因を考慮して無線LAN端末20の帰属を許可する。この場合、アクセスポイント30は、帰属可能な無線LAN端末20の台数の最大値を予め格納し、当該最大値未満であれば、認証等の他の要因を考慮して無線LAN端末20の帰属を許可し、当該最大値以上であれば、新たな無線LAN端末20の帰属を許可しないようにしてもよい。
図1において、1つのアクセスポイント30の配下で、無線LAN端末20が通信品質を高く保った状態を維持して通信できるようにするために必要な通信帯域が、無線LAN端末20の台数で最大2台分の通信帯域と仮定し、そのうち、無線LAN端末40の通信用には、無線LAN端末20の1台分の通信帯域が割り当てられていると仮定する。このとき、アクセスポイント30に帰属している無線LAN端末40が複数の場合、無線LAN端末20の1台分の通信帯域を、アクセスポイント30に帰属している複数の無線LAN端末40で分け合うことになる。
ここで、図1に示すように、無線LAN端末20−3がアクセスポイント30−1を介して通信中の場合に、新たに、無線LAN端末20−2が通信を開始する場合、無線LAN端末20−2は、帰属中のアクセスポイント30−1を介して、通信相手に通信開始要求を送信する。アクセスポイント30−1は、この通信開始要求を監視により検出したとき、アクセスポイント30−1の通信負荷を計測または算出する。
しかし、図1に示す例では、無線LAN端末20が1台と、無線LAN端末40が1台とが、アクセスポイント30−1を介してすでに通信を行なっていて、アクセスポイント30−1の通信負荷の状態は、新たな無線LAN端末20の通信ができる状態ではない。そこで、アクセスポイント30−1は、無線LAN端末40−1を帰属させることができる他のアクセスポイント30の情報を要求するAP情報要求を、有線ネットワーク11を介してマルチキャストで送信する。
アクセスポイント30−2は、定期的なスキャン等によりあらかじめ近傍に存在する無線LAN端末20または無線LAN端末40の検索を行っており、無線LAN端末40−1がアクセスポイント30−2に帰属できることを検出済とする。アクセスポイント30−2は、アクセスポイント30−1から受信したAP情報要求に対して、有線ネットワーク11を介してAP情報応答を送信することで応答する。
アクセスポイント30−1は、複数のアクセスポイント30からAP情報応答を受信する。アクセスポイント30−1は、その複数のアクセスポイント30の中から、識別情報(ID)の変更をするためのアクセスポイント30の識別情報の決定と、その複数のアクセスポイント30の識別情報のどれにも一致しないアクセスポイントの識別情報の生成を行う。ここでは、AP情報応答を送信したのはアクセスポイント30−2のみとし、アクセスポイント30−1の識別情報をA、アクセスポイント30−2の識別情報をB、アクセスポイント30−1の識別情報とアクセスポイント30−2の識別情報とのどれにも一致しないアクセスポイントの識別情報をCと仮定する。
アクセスポイント30−1は、アクセスポイント30−2から受け取ったAP情報応答からアクセスポイント30−2の識別情報であるBを取得し、アクセスポイント30−1の識別情報であるAともアクセスポイント30−2の識別情報であるBとも一致しないアクセスポイントの識別情報としてCを生成する。
アクセスポイント30−1は、配下の無線LAN端末20−2と無線LAN端末20−3に、アクセスポイントの識別情報としてCを含むAP情報変更指示を送信し、アクセスポイント30−2に、アクセスポイントの識別情報としてAを含むAP情報変更指示を送信する。アクセスポイント30−2は、AP情報変更指示を受け取ったとき、アクセスポイント30−2の配下の無線LAN端末20−4と無線LAN端末20−5に、アクセスポイントの識別情報としてAを含むAP情報変更指示を送信する。このアクセスポイントの識別情報のAは、アクセスポイント30−2がアクセスポイント30−1から受け取ったAP情報変更指示の情報から取得する。
AP情報変更指示を受信した無線LAN端末20とアクセスポイント30は、AP情報変更指示で指示している識別情報の変更タイミングの情報に基づいて、タイミングを合わせて、アクセスポイントの識別情報として保持している情報を、指示された識別情報に変更する。具体的には、アクセスポイント30−1は自身のアクセスポイントの識別情報をCに変更し、無線LAN端末20−2と無線LAN端末20−3は、帰属しているアクセスポイントとして保持している識別情報をCに変更し、アクセスポイント30−2は自身のアクセスポイントの識別情報をAに変更し、アクセスポイント30−2の配下の無線LAN端末20−4と無線LAN端末20−5は、帰属しているアクセスポイントとして保持している識別情報をAに変更する。
このとき無線LAN端末40−1は、帰属しているアクセスポイントの識別情報の情報がAのままなので、無線LAN端末40−1が行う通信はアクセスポイント30−2を介して行われることになる。このようにしてアクセスポイントの情報を変更した結果、アクセスポイント30−1に帰属している無線LAN端末は、無線LAN端末20−2と無線LAN端末20−3の2台となり、アクセスポイント30−2に帰属している無線LAN端末は無線LAN端末20−4と無線LAN端末20−5と無線LAN端末40−1と無線LAN端末40−3となる。この時点でアクセスポイント30−1を介して通信を行っている無線LAN端末は無線LAN端末20−3のみとなり、アクセスポイント30−1で無線LAN端末20−2が必要とする通信帯域を確保でき、無線LAN端末20−2の通信を開始できる状態となる。
このように、優先度の高い無線LAN端末20は、帰属中のアクセスポイント30の通信負荷に余裕が無い場合に、優先度の高い無線LAN端末20が帰属しているアクセスポイント30から他のアクセスポイント30に、優先度の高い無線LAN端末以外の無線LAN端末40が移動することにより、無線LAN端末20が帰属しているアクセスポイント30を変更することなく、通信を開始できる。
また、無線LAN端末20−2または無線LAN端末20−3の通信が終了し、帰属のみの状態になったとき、アクセスポイント30−1は、無線LAN端末20の通信を監視することにより、無線LAN端末20の通信が終了したことを検出し、アクセスポイント30−1は、アクセスポイントの識別情報としてAを含むAP情報変更指示を、アクセスポイント30−1の配下の無線LAN端末20−2と無線LAN端末20−3に送信し、アクセスポイントの識別情報としてBを含むAP情報変更指示を、アクセスポイント30−2に送信する。アクセスポイント30−2は、AP情報変更指示を受け取ったとき、アクセスポイントの識別情報としてBを含むAP情報変更指示を、アクセスポイント30−2の配下の無線LAN端末20−4と無線LAN端末20−5に送信する。このアクセスポイントの識別情報のBは、アクセスポイント30−2がアクセスポイント30−1から受け取ったAP情報変更指示の情報から取得する。AP情報変更指示を受信した無線LAN端末20とアクセスポイント30は、AP情報変更指示で指示している識別情報の変更タイミングの情報に基づいて、タイミングを合わせて、アクセスポイントの識別情報として保持している情報を、取得した識別情報に変更する。具体的には、アクセスポイント30−1は自身のアクセスポイントの識別情報をAに変更し、無線LAN端末20−2と無線LAN端末20−3は、帰属しているアクセスポイントとして保持している識別情報をAに変更し、アクセスポイント30−2は自身のアクセスポイントの識別情報をBに変更し、アクセスポイント30−2の配下の無線LAN端末20−4と無線LAN端末20−5は、帰属しているアクセスポイントとして保持している識別情報をBに変更する。このようにして、アクセスポイントの識別情報が元々保持していた識別情報とは違う識別情報に変更されている場合で、無線LAN端末20の通信が終了したら、アクセスポイントの識別情報の情報を元に戻す処理を行う。
以下、上記処理を実現するための無線LAN端末20およびアクセスポイント30のそれぞれの機能について、詳細に説明する。
図2は、無線LAN端末20の詳細な機能構成の一例を示す。無線LAN端末20は、AP情報変更部200、および無線通信部201を備える。
無線通信部201は、アクセスポイント30との間で帰属処理を行い、アクセスポイント30と無線LANに基づく無線通信を行う。無線LAN端末20は、例えば最も受信品質の良いアクセスポイント30との間で帰属処理を実行する。
AP情報変更部200は、アクセスポイント30からAP情報変更指示を受信した場合に、あらかじめ決められたタイミング調整を行ったあと、アクセスポイントと通信するための情報を変更する。あらかじめ決められたタイミング調整は、例えば、時刻がある決められた時刻になるまで待つなどを行う。アクセスポイントと通信するための情報の変更は、例えば、帰属しているアクセスポイントの識別情報として記憶しているメモリを、アクセスポイント30から受信したAP情報変更指示で示されている識別情報に変更する。無線通信部201は、AP情報変更部200によって変更された情報を使用してアクセスポイント30と無線通信を行う。
図4は、アクセスポイント30の詳細な機能構成の一例を示す。アクセスポイント30は、AP情報変更部300、有線通信部301、端末検出部302、無線通信部303、通信帯域確保判定部304、通信負荷検出部305、および通信要求検出部306を備える。
無線通信部303は、無線LAN端末20または無線LAN端末40と無線LANに基づく無線通信を行い、無線LAN端末20または無線LAN端末40から受け取った通信データを有線通信部301へ送ると共に、有線通信部301から受け取った通信データを無線通信によって無線LAN端末20または無線LAN端末40へ送る。また、無線通信部303は、AP情報変更部300によって変更された情報を使用して無線LAN端末20または無線LAN端末40と無線通信を行う。
無線通信部303は、無線LAN端末20または無線LAN端末40との間で帰属処理を実行する。無線通信部303は、帰属した無線LAN端末が、無線LAN端末20なのか無線LAN端末40なのかを判別する。判別する方法は、例えば、無線通信部303が、当該アクセスポイント30に帰属している無線LAN端末がHCCA(Hybrid coordination function Controlled Channel Access)に対応していることを検出した場合、その無線LAN端末を無線LAN端末20とみなし、当該アクセスポイント30に帰属している無線LAN端末がHCCA(Hybrid coordination function Controlled Channel Access)に対応していないことを検出した場合、その無線LAN端末を無線LAN端末40とみなす。また、アクセスポイント30に、無線LAN端末20の端末の識別情報をあらかじめ登録しておき、無線通信部303が、当該アクセスポイント30に帰属した無線LAN端末の識別情報が、あらかじめ登録しておいた識別情報と一致した場合、その無線LAN端末を無線LAN端末20とみなし、あらかじめ登録しておいた識別情報と一致しない場合、その無線LAN端末を無線LAN端末40とみなしてもよい。
有線通信部301は、例えばイーサーネット(登録商標)等に基づいて、有線ネットワーク11を介して他の通信機器12等と有線通信を行う。
通信要求検出部306は、無線通信部303で送受信が行われている無線LAN端末20の通信データを監視し、無線LAN端末20が通信開始要求を送信または受信したことの検出と、無線LAN端末20が通信中の状態を終了したことの検出を行う。通信の開始または終了の検出方法は、例えば、無線LAN端末20が実行する呼制御手順がSIP(Session Initiation Protocol)の場合、INVITEリクエストを検出することによって通信開始要求の検出とみなし、BYEなどの通信終了メッセージを検出することによって通信中の状態が終了したとみなす。通信要求検出部306は、無線LAN端末20が通信開始要求を送信または受信したことを検出した場合、通信帯域確保判定部304に指示して、無線LAN端末20が必要とする通信帯域が、当該アクセスポイント30の配下で確保できるかどうかを判定する処理を開始させる。通信要求検出部306は、無線LAN端末20が通信中の状態を終了したことを検出した場合、AP情報変更部300に指示して、アクセスポイントの識別情報などのAP情報を変更前の状態に戻す処理を開始させる。
通信負荷検出部305は、当該アクセスポイント30に帰属している無線LAN端末20または無線LAN端末40の、当該アクセスポイント30に発生する通信負荷を計測または算出する。本実施形態において、通信負荷検出部305は、無線通信部303からの情報に基づいて、当該アクセスポイント30に帰属中または通信中の、無線LAN端末20または無線LAN端末40が、通信に使用している通信帯域を管理している。例えば、通信負荷検出部305は、無線通信部303がHCCA(Hybrid coordination function Controlled Channel Access)の制御を行うことで保持している、無線LAN端末20または無線LAN端末40の通信帯域の情報を無線通信部303から取得する。
通信帯域確保判定部304は、予め定められた通信負荷の値を格納しており、通信負荷検出部305によって計測または算出された、当該アクセスポイント30の現在の通信負荷を参照して、現在の当該アクセスポイント30の通信負荷が、新たな無線LAN端末20が必要とする通信帯域を確保できない場合であり、かつ、当該アクセスポイント30に帰属している無線LAN端末40が使用している通信帯域が、無線LAN端末20が必要とする通信帯域以上ある場合、AP情報変更部300に指示してアクセスポイントの情報を取得する処理を開始させる。
AP情報変更部300は、通信帯域確保判定部304から、アクセスポイントの情報を取得する処理を開始することを指示された場合に、AP情報要求を、有線通信部301を介して送信する。AP情報要求は、例えば、図3のデータ50に示されるように、当該アクセスポイント30の情報と、当該アクセスポイント30に帰属している無線LAN端末40の識別情報が含まれる。
当該アクセスポイント30が送信したAP情報要求は、他のアクセスポイント30の有線通信部301を介して、他のアクセスポイント30のAP情報変更部300が受信する。AP情報変更部300は、AP情報要求を受信した場合に、AP情報要求に含まれる無線LAN端末40の識別情報を、端末検出部302がすでに検出している近傍に存在する無線LAN端末40の識別情報のリストから検索し、AP情報要求に含まれる無線LAN端末40の識別情報と一致する情報をすでに保持していたならば、AP情報応答を、有線通信部301を介して送信する。AP情報応答は、例えば、図3のデータ51に示されるように、AP情報応答を送信しているアクセスポイント30の情報と、当該無線LAN端末40の識別情報と、AP情報応答を送信しているアクセスポイント30が検出した当該無線LAN端末40の受信品質が含まれる。AP情報応答は、AP情報要求の応答として送信するだけでなく、任意のタイミングで送信してもよい。任意のタイミングは、例えば、近傍に存在する無線LAN端末40の識別情報のリストに変化が生じたときがある。任意のタイミングで事前にAP情報応答を送信しておくことによって、AP情報応答の受信待ちの状態を省略することができる。
AP情報要求を送信したアクセスポイント30のAP情報変更部300は、有線通信部301を介して、複数の他のアクセスポイント30が送信したAP情報応答を受信する。AP情報要求を送信したアクセスポイント30のAP情報変更部300は、AP情報応答を受信した場合に、識別情報の変更をするためのアクセスポイント30の識別情報の決定と、複数のアクセスポイント30から受信したAP情報応答に含まれる識別情報のどれにも一致しないアクセスポイントの識別情報の生成を行う。以後、説明のために、これらの識別情報を、当該アクセスポイント30の識別情報を識別情報A、識別情報の変更をするためのアクセスポイント30の識別情報を識別情報B、複数のアクセスポイント30から受信したAP情報応答に含まれる識別情報のどれにも一致しないアクセスポイントの識別情報を識別情報C、と、記号で表現する。識別情報Bを決定する方法の一例として、AP情報変更部300は、複数のアクセスポイント30から受信したAP情報応答に含まれる、無線LAN端末40の受信品質を比較し、もっとも受信品質のよい情報を持つAP情報応答を送信したアクセスポイント30を選択する。
続いて、AP情報要求を送信したアクセスポイント30のAP情報変更部300は、AP情報変更指示を、無線通信部303を介して、当該アクセスポイント30の配下の無線LAN端末20に送信する。AP情報変更指示は、例えば、図3のデータ52に示されるように、アクセスポイントの識別情報と、識別情報を変更するタイミングに関する情報が含まれるが、このときの、アクセスポイントの識別情報は、識別情報Cを指定する。さらに、AP情報要求を送信したアクセスポイント30のAP情報変更部300は、識別情報Bを持つアクセスポイント30宛に、AP情報変更指示を、有線通信部301を介して送信する。このときの、AP情報変更指示に含まれる、アクセスポイントの識別情報は、識別情報Aを指定する。
他のアクセスポイント30から送信されたAP情報変更指示は、有線通信部301を介して、AP情報変更部300が受信する。AP情報変更部300は、AP情報変更指示を受信した場合に、AP情報変更指示を、無線通信部303を介して、アクセスポイント30の配下の無線LAN端末20に送信する。このときの、AP情報変更指示に含まれる、アクセスポイントの識別情報は、受信したAP情報変更指示の識別情報を指定する。
AP情報要求を送信したほうのアクセスポイント30は、AP情報変更指示で示した、識別情報を変更するタイミングになったとき、自身の識別情報を識別情報Cに変更する。識別情報を変更するタイミングは、例えば、時刻がある決められた時刻になるまで待つなどを行う。AP情報変更指示を受信したアクセスポイント30は、受信したAP情報変更指示で示されている、識別情報を変更するタイミングになったとき、自身の識別情報を、AP情報変更指示で示されている識別情報に変更する。アクセスポイント30のAP情報変更部300は、識別情報を変更したとき、AP情報変更指示に含まれている識別情報以外の情報に基づいて、識別情報以外の情報を変更してもよい。また、アクセスポイント30のAP情報変更部300は、識別情報を変更したとき、アクセスポイント30以外の機器のルーティング情報を更新するために、新たに当該アクセスポイント30の配下になった無線LAN端末40の識別情報を送信元アドレスにしたブロードキャストパケットを、有線通信部301と無線通信部303を介して送信してもよい。
AP情報要求を送信したアクセスポイント30のAP情報変更部300は、識別情報Aと識別情報Bと識別情報Cを保持しておき、通信要求検出部306から、アクセスポイントの識別情報などのAP情報を変更前の状態に戻す処理を開始するよう指示された場合には、識別情報Aを含むAP情報変更指示を、無線通信部303を介して、当該アクセスポイント30の配下の無線LAN端末20に送信し、識別情報Bを含むAP情報変更指示を、有線通信部301を介して、本来、識別情報Bを持っていたアクセスポイント30に送信し、送信したAP情報変更指示で示されている、識別情報を変更するタイミングになったとき、自身の識別情報を識別情報Aに戻す。
端末検出部302は、無線通信部303を介して、近傍に存在する無線LAN端末40の識別情報と受信品質を検出し、検出された情報をリストとして保持する。近傍に存在する無線LAN端末40を検出する方法の一例として、端末検出部302は、あらかじめ決められたタイミングで、無線通信部303を介してチャネルスキャンを行い、近傍に存在する無線LAN端末40の識別情報と受信品質を検出する。近傍に存在する無線LAN端末40の識別情報のリストは、例えば、図3のデータ53に示されるように、無線LAN端末の識別情報と、当該アクセスポイントからの無線LAN端末の受信品質と、無線LAN端末が検出されたチャネルの情報が含まれる。
図5は、無線LAN端末20の動作の一例を示すフローチャートである。例えば、電源を投入される等の所定のタイミングで、無線LAN端末20は、本フローチャートに示す処理を開始する。
まず、AP情報変更部200は、無線通信部201を介して、AP情報変更指示を受信したかどうかを判定する(S100)。AP情報変更指示を受信していない場合(S100:No)、AP情報変更部200は、ステップ100を繰り返す。
AP情報変更指示を受信した場合(S100:Yes)、AP情報変更指示で指示されたタイミングになったかどうかを判定する(S101)。AP情報変更指示で指示されたタイミングになっていない場合(S101:No)、AP情報変更部200は、ステップ101を繰り返す。
AP情報変更指示で指示されたタイミングになった場合(S101:Yes)、AP情報変更部200は、アクセスポイントの識別情報として認識している情報を、AP情報変更指示で指示された識別情報に変更し、再びステップ100に示した処理を行う。
図6は、アクセスポイント30の動作の一例を示すフローチャートである。例えば、電源を投入される等の所定のタイミングで、アクセスポイント30は、本フローチャートに示される処理を実行する。
まず、通信要求検出部306は、無線LAN端末20の通信開始の要求を検出したかどうかを判定する(S200)。通信開始の要求を検出した場合(S200:Yes)、通信帯域確保判定部304は、通信帯域を確保できるか否かの判定を行う(S201)。通信帯域確保判定部304は、通信帯域を確保できるか否かの判定を行った結果、AP情報要求を行うべきかどうかを判定する(S202)。通信帯域確保判定部304は、新たな無線LAN端末20が必要とする通信帯域が確保できない場合であり、かつ、当該アクセスポイント30に帰属している無線LAN端末40が使用している通信帯域が、無線LAN端末20が使用する通信帯域未満である場合など、新たな無線LAN端末20が必要とする通信帯域が確保できず、AP情報要求を行う必要がないと判定されたならば(S202:No)、再びステップ200に示した処理を行う。
AP情報要求を行う必要があると判定されたならば(S202:Yes)、AP情報変更部300は、他のアクセスポイント30にAP情報要求を送信する(S203)。AP情報変更部300は、他のアクセスポイント30からAP情報応答を受信したかどうかを判定する(S204)。AP情報変更部300は、AP情報応答を受信していないとき(S204:No)、ある一定時間経過するまでステップ204に示す処理を繰り返す。
AP情報変更部300は、AP情報応答を受信したとき、または、ある一定時間経過したとき(S204:Yes)、受信したAP情報応答に有効な情報が得られているかどうか判定する(S205)。受信したAP情報応答に有効な情報がない場合、またはAP情報応答を受信せず、ある一定時間経過した場合(S205:No)、再びステップ200に示した処理を行う。
AP情報変更部300は、受信したAP情報応答に有効な情報があった場合(S205:Yes)、識別情報の変更をするためのアクセスポイント30の識別情報を決定する(S206)。これ以降、この識別情報を識別情報Bとする。また、AP情報変更部300は、複数のアクセスポイント30から受信したAP情報応答に含まれる識別情報のどれにも一致しないアクセスポイントの識別情報の生成を行う(S206)。これ以降、この識別情報を識別情報Cとする。また、これ以降、当該アクセスポイント30の識別情報を識別情報Aとする。そして、AP情報変更部300は、識別情報Aを含むAP情報変更指示を、識別情報の変更を実施する対象のアクセスポイント30に送信し(S207)、識別情報Cを含むAP情報変更指示を、当該アクセスポイント30の配下の無線LAN端末20に送信する(S208)。その後、AP情報変更部300は、送信したAP情報変更指示で指示したタイミングになったかどうかを判定する(S209)。指示したタイミングになっていない場合(S209:No)、ステップ209に示す処理を繰り返す。指示したタイミングになった場合(S209:Yes)、AP情報を識別情報Cの情報に変更し(S210)、再びステップ200に示した処理を行う。
ステップ200に示した処理で、通信要求を検出していない場合(S200:No)、通信要求検出部306は、通信の終了を検出したかどうかを判定する(S216)。通信の終了を検出した場合(S216:Yes)、識別情報Bを含むAP情報変更指示を、識別情報の変更を実施したもう一方のアクセスポイント30に送信し(S207)、識別情報Aを含むAP情報変更指示を、当該アクセスポイント30の配下の無線LAN端末20に送信する(S208)。その後、AP情報変更部300は、送信したAP情報変更指示で指示したタイミングになったかどうかを判定する(S209)。指示したタイミングになっていない場合(S209:No)、ステップ209に示す処理を繰り返す。指示したタイミングになった場合(S209:Yes)、AP情報を識別情報Aの情報に変更し(S210)、再びステップ200に示した処理を行う。
ステップ216に示した処理で、通信の終了を検出しない場合(S216:No)、AP情報変更部300は、他のアクセスポイント30からAP情報変更指示を受信したかどうかを判定する(S217)。AP情報変更指示を受信した場合(S217:Yes)、AP情報変更部300は、受信したAP情報変更指示を、当該アクセスポイント30の配下の無線LAN端末20に送信する(S208)。その後、AP情報変更部300は、受信したAP情報変更指示で指示されたタイミングになったかどうかを判定する(S209)。指示されたタイミングになっていない場合(S209:No)、ステップ209に示す処理を繰り返す。指示したタイミングになった場合(S209:Yes)、AP情報変更部300は、受信したAP情報変更指示で指示された識別情報の情報でAP情報を変更し(S210)、再びステップ200に示した処理を行う。
ステップ217に示した処理で、AP情報変更指示を受信しない場合(S217:No)、AP情報変更部300は、他のアクセスポイント30からAP情報要求を受信したかどうかを判定する(S211)。AP情報要求を受信した場合(S211:Yes)、受信したAP情報要求で示されている無線LAN端末40の識別情報を、端末検出部302が保持しているリストから検索する(S212)。検索した結果、情報があった場合(S213:Yes)、AP情報変更部300は、AP情報要求を送信したアクセスポイント30宛に、AP情報応答を送信し(S214)、再びステップ200に示した処理を行う。ステップ213に示す処理において、検索した結果、情報がなかった場合(S213:No)、再びステップ200に示した処理を行う。
ステップ211に示した処理で、AP情報要求を受信していない場合(S211:No)、端末検出部302は、チャネルスキャンのタイミングになったかどうかを判定する(S218)。チャネルスキャンのタイミングになった場合(S218:Yes)、端末検出部302は、チャネルスキャンを実施する(S219)。端末検出部302は、チャネルスキャンを実施した結果、無線LAN端末20または無線LAN端末40を検出した場合、検出した無線LAN端末の情報をリストに保持し(S220)、再びステップ200に示した処理を行う。
ステップ218に示した処理で、チャネルスキャンのタイミングになっていない場合(S218:No)、再びステップ200に示した処理を行う。
図7は、無線LANシステム10の動作の一例を示すシーケンス図である。図7に示すシーケンスは、複数のアクセスポイント30から帰属するのに十分な強度の電波を受信可能な位置にある無線LAN端末20−1が、現在の通信負荷に余裕が無いアクセスポイント30−1に帰属しており、通信を開始する場合に、アクセスポイント30−1に帰属している無線LAN端末40が他のアクセスポイント30−2へ帰属され、無線LAN端末20−1が通信を終了した場合に、アクセスポイント30−2に帰属していた無線LAN端末40が元のアクセスポイント30−1へ帰属される例を示している。
最初に、無線LAN端末40は、アクセスポイント30−1の配下で通信中とし(S301)、無線LAN端末20−1は、アクセスポイント30−1の配下で帰属中とし(S303)、無線LAN端末20−2は、アクセスポイント30−2の配下で通信中とする(S302)。また、これ以降の説明のために、アクセスポイント30−1の識別情報を識別情報Aとし、アクセスポイント30−2の識別情報を識別情報Bとし、識別情報Aと識別情報Bの両方とは異なる識別情報を識別情報Cとする。
アクセスポイント30−2の端末検出部302は、チャネルスキャンのタイミングになった場合に、チャネルスキャンを実施し、無線LAN端末40を検出したとする(S304)。アクセスポイント30−2の端末検出部302は、検出した無線LAN端末40の情報を保持する(S305)。
無線LAN端末20−1は、通信機器12と通信を行うために、アクセスポイント30−1を介して、通信開始要求を送信する(S306、S307)。アクセスポイント30−1の通信要求検出部306は、無線LAN端末20−1が送信した、通信開始要求を検出する(S308)。そして、アクセスポイント30−1の通信帯域確保判定部304は、アクセスポイント30−1の現在の通信負荷から無線LAN端末20が必要とする通信帯域を確保できるか否かを判定する(S309)。アクセスポイント30−1の通信帯域確保判定部304は、アクセスポイント30−1の現在の通信負荷に余裕が無く、かつ、アクセスポイント30−1の配下に、通信中の無線LAN端末40が存在することから、AP情報要求を送信することを判定する。
ステップ309の判定の結果を受けて、アクセスポイント30−1のAP情報変更部300は、無線LAN端末40の情報を含むAP情報要求を、他のアクセスポイント30に送信する(S310)。アクセスポイント30−2のAP情報変更部300は、アクセスポイント30−1からのAP情報要求を受信し、AP情報要求に含まれている無線LAN端末40の情報を、アクセスポイント30−2の端末検出部302が保持している無線LAN端末の情報から検索する。検索の結果、無線LAN端末40の情報を保持していることが検出されるので、アクセスポイント30−2のAP情報変更部300は、アクセスポイント30−1にAP情報応答を送信する(S311)。
アクセスポイント30−1のAP情報変更部300は、アクセスポイント30−2から受信したAP情報応答で示されるアクセスポイント30−2の識別情報から、識別情報Cを生成し(S312)、識別情報の情報として識別情報Cを含むAP情報変更指示を、アクセスポイント30−1の配下の無線LAN端末20−1に送信し(S313)、識別情報の情報として識別情報Aを含むAP情報変更指示を、アクセスポイント30−2に送信する(S314)。
アクセスポイント30−2のAP情報変更部300は、アクセスポイント30−1から受信したAP情報変更指示の情報を、アクセスポイント30−2の配下の無線LAN端末20−2に送信する(S315)。無線LAN端末20−1のAP情報変更部200と、アクセスポイント30−1のAP情報変更部300と、アクセスポイント30−2のAP情報変更部300と、無線LAN端末20−2のAP情報変更部200は、ステップ313、ステップ314、ステップ315で送受信したAP情報変更指示で指示されているタイミングになるまで待つ。AP情報変更指示で指示されているタイミングになった場合には、無線LAN端末20−1のAP情報変更部200は、帰属中のアクセスポイントとして保持している識別情報を識別情報Cに変更し(S316)、アクセスポイント30−1のAP情報変更部300は、自アクセスポイントの識別情報を識別情報Cに変更し(S317)、アクセスポイント30−2のAP情報変更部300は、自アクセスポイントの識別情報を識別情報Aに変更し(S318)、無線LAN端末20−2のAP情報変更部200は、帰属中のアクセスポイントとして保持している識別情報を識別情報Aに変更する(S319)。
このとき、アクセスポイント30−2の識別情報がAになったので、識別情報Aのアクセスポイント30に帰属していると認識している無線LAN端末40が送受信するデータは、アクセスポイント30−2を介して行われる(S320)。また、無線LAN端末20−1とアクセスポイント30−1は、認識する識別情報がともに識別情報Cになっているので、無線LAN端末20−1が送受信するデータは、アクセスポイント30−1を介して行われる(S321、S322)。
無線LAN端末20−1が通信を終了した場合には(S323、S324)、アクセスポイント30−1の通信要求検出部306が、無線LAN端末20−1の通信の終了を検出する(S325)。通信の終了を検出したアクセスポイント30−1のAP情報変更部300は、識別情報の情報として識別情報Aを含むAP情報変更指示を、アクセスポイント30−1の配下の無線LAN端末20−1に送信し(S326)、識別情報の情報として識別情報Bを含むAP情報変更指示を、アクセスポイント30−2に送信する(S327)。
アクセスポイント30−2のAP情報変更部300は、アクセスポイント30−1から受信したAP情報変更指示の情報を、アクセスポイント30−2の配下の無線LAN端末20−2に送信する(S328)。無線LAN端末20−1のAP情報変更部200と、アクセスポイント30−1のAP情報変更部300と、アクセスポイント30−2のAP情報変更部300と、無線LAN端末20−2のAP情報変更部200は、ステップ326、ステップ327、ステップ328で送受信したAP情報変更指示で指示されているタイミングになるまで待つ。AP情報変更指示で指示されているタイミングになった場合には、無線LAN端末20−1のAP情報変更部200は、帰属中のアクセスポイントとして保持している識別情報を識別情報Aに変更し(S329)、アクセスポイント30−1のAP情報変更部300は、自アクセスポイントの識別情報を識別情報Aに変更し(S330)、アクセスポイント30−2のAP情報変更部300は、自アクセスポイントの識別情報を識別情報Bに変更し(S331)、無線LAN端末20−2のAP情報変更部200は、帰属中のアクセスポイントとして保持している識別情報を識別情報Bに変更する(S332)。
このとき、アクセスポイント30−1の識別情報がAになったので、識別情報Aのアクセスポイント30に帰属していると認識している無線LAN端末40が送受信するデータは、アクセスポイント30−1を介して行われる(S333)。
以上、本発明の実施の形態について説明した。
上記説明から明らかなように、本発明の無線LANシステム10によれば、無線LAN端末20による通信品質を高く保つことができると共に、電話端末のように通信品質を高く保つことが必要な無線LAN端末20を、受信信号品質の良いアクセスポイント30に、より多く帰属させることができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
10・・・無線LANシステム、11・・・有線ネットワーク、12・・・通信機器、61、62・・・通信エリア、20・・・無線LAN端末、200・・・AP情報変更部、201・・・無線通信部、30・・・アクセスポイント、300・・・AP情報変更部、301・・・有線通信部、302・・・端末検出部、303・・・無線通信部、304・・・通信帯域確保判定部、305・・・通信負荷検出部、306・・・通信要求検出部、40・・・無線LAN端末、50、51、52、53・・・データ