JP4910401B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

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Description

本発明は、空調機、冷凍機、ブロワ、給湯機等に使用されるスクロール圧縮機に関するものである。
鏡板上に渦巻きラップを形成した固定スクロールと旋回スクロールをかみ合わせ複数の圧縮室を形成し、旋回スクロール背面に一定圧を印加することで固定スクロールラップ上面と旋回スクロール支持円板面とがスラスト摺動し、旋回スクロールに偏心部を有するクランクシャフトを連結させ、オルダムリングを用いて自転を防止し旋回運動をさせることで、中心に向かって容積を減少させながら圧縮を行っていくスクロール圧縮機において、各圧縮室には必ず微小な隙間が存在し、その隙間をオイルにて満たすことで他の圧縮室または吸入室、旋回スクロール背圧室との流体の流通を防止している。
しかし、昨今のインバーター制御化によって運転周波数や温度、圧力などの運転条件は様々に変化し、それに伴ってオイルによるシール性能が不十分な運転条件が発生する。シール性能が低下すると各圧縮室での流体の漏れが大きくなり体積効率の低下や再圧縮による圧縮効率の低下を引き起こす。
特に、低圧縮比の条件では旋回スクロールと固定スクロールとの間の押し付け力が低下し、旋回スクロールが固定スクロールから離れることで大幅な体積効率の低下が生じる。
その対策として、従来から旋回スクロール背圧室を吸入圧力よりもやや高い圧力とすることで旋回スクロールを固定スクロールに強く押し付け、冷媒漏れを抑制している。
しかし、旋回スクロールを強く押し付けるため、逆に高圧縮比、高速条件ではスラスト軸受での損失が増加し、入力上昇の原因となっている。
これらの問題に対する対策として特許文献1に開示されているように図9において固定スクロール101のスラスト軸受102にリング状の溝103を配設し、リング状の溝103の外周側角部よりも内側の溝内部と内周側角部よりも内側に位置する摺動面との間の範囲を旋回スクロールラップ支持円板104の外周角部が旋回運動するように配置される構成とすることによって、旋回スクロールラップ支持円板104の外周角部のエッジ当たりを緩和し、スラスト軸受102の摺動損失を低減している。
また、図10に示す特許文献2のように旋回スクロールのラップ支持円板201に傾斜面202を設け、固定スクロール203の摺動面203aとの間にくさび状隙間204を構成することにより、くさび状隙間204内部でオイル粘性によるオイル保持量が向上し、摺動面203aへのオイル供給を促進して摺動状態を改善している。
特許第3132339号公報 特開昭62−165589号公報
しかしながら、特許文献1に示すような従来の構成では、固定スクロールのスラスト軸受にリング状の溝を設けることによってスラスト軸受の摺動面積が減少し、スラスト面圧が上昇するために却って入力上昇する可能性がある。
また、スラスト軸受の面積が減少することでシール性が低下し、旋回スクロール背圧室と圧縮室または吸入室との間の冷媒漏れが増大するため、体積効率が低下する可能性が大きくなる。
さらに、特許文献2に示すような従来の構成では、くさび状隙間内部でオイルを保持させるという単純な構成であり、摺動面で動圧を発生させて油膜圧力を上昇させることで流体潤滑状態へ確実に移行させることは望めない。
これら従来の構成では、旋回スクロールラップ支持円板外周部での摺動損失はいくぶん減少させることが可能であるが、旋回スクロールラップ支持円板中心部付近の摺動損失低減には何ら貢献しない。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、旋回スクロールが固定スクロールに押し付けられて旋回摺動する摺動面における各エッジ部に微小なテーパを設け、旋回運動によって動圧を発生させることにより、摺動面での油膜圧力を上昇させて流体潤滑に近づけ、摺動損失を低減することが可能なスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明のスクロール圧縮機は、請求項1記載のとおり、旋回スクロールが固定スクロールに押し付けられて旋回摺動する摺動面における各エッジ部に微小なテーパを設けたものである。
従来の構成では旋回スクロールラップ支持円板外周部でのみ摺動損失が低減されていたものが、本構成によれば、旋回スクロールラップ支持円板の外周部、中心部を問わず、各エッジ部で動圧を発生させて油膜圧力を上昇させ、摺動部全体の摺動損失を低減することが可能である。
本発明のスクロール圧縮機は、旋回スクロールと固定スクロールの摺動面全体で摺動損失を低減させることにより高効率化が可能である。
第1の発明は、固定スクロールの一部をなす鏡板の一面に直立して形成された渦巻き状の固定スクロールラップに対して、旋回スクロールの一部をなすラップが支持円板上に直立するとともに、固定スクロールラップに類似した形状の旋回スクロールラップを互いに噛み合わせて、両スクロール間に渦巻き形の対称形の一対の圧縮空間を形成し、固定スクロールラップの中心部に吐出室に通じる吐出口を設け、固定スクロールラップの外側には吸入室を設け、自転阻止部材を介して旋回スクロールが固定スクロールに対し旋回運動を行うことによって、各圧縮空間が吸入側より吐出側に向けて連続移行する複数個の圧縮室に区画されて流体を圧縮すべく容積変化するスクロール圧縮機であって、旋回スクロールが固定スクロールに押し付けられて旋回摺動する摺動面における各エッジ部に微小なテーパを設けることにより、旋回スクロールが旋回運動をする際にテーパ部で動圧が発生し、油膜圧力上昇による流体潤滑が促進されて摺動面全体の摺動損失低減による高効率化が可能である。
さらにもう一つの効果として、旋回スクロールがすりこぎ運動をしながら旋回している場合には、固定スクロールの摺動面に対して旋回スクロールラップ支持円板外周部のエッジ当たりによる局所摺動を回避することができ、旋回スクロールまたは固定スクロールが軸方向に圧力変形することによる固定スクロールラップ上面エッジの局所摺動も回避することができる。
また、テーパ部では若干の隙間が存在するが、テーパの径方向幅に対して軸方向深さが非常に小さく設定されて漏れ隙間とはなりにくい構成であるとともに、油膜圧力が高く維持されることによってその隙間のオイルシールを行うため、固定スクロールラップの内外壁間および旋回スクロール背面の背圧室と圧縮室との間の冷媒漏れが増加することはない。
第2の発明は、特に、第1の発明のスクロール圧縮機において、テーパを旋回スクロールラップ支持円板の外周エッジ部に設けることにより、旋回スクロールラップ支持円板外周部においてくさび効果による動圧が発生し、油膜圧力の上昇によってラップ支持円板外周部での摺動面の摺動損失を低減することができる。
また、実機運転中には「固定スクロール表裏の圧力差による変形」、「固定スクロールと本体フレームとの締結力による固定スクロールの変形」および「本体フレームが密閉容器に溶接固定されるときに発生する溶接歪に起因する固定スクロールの変形」等が発生し、固定スクロール摺動面が中凹になる場合、旋回スクロールの旋回運動に伴って旋回スクロールラップ支持円板外周部エッジが強く摺動しやすい。
そこで、ラップ支持円板外周エッジ部にテーパが設けられていることでテーパ部が逃しとなり、線当たりによる強い摺動を回避して面当たりを促進し、面圧低下によって摺動損失を低減することも可能である。
テーパの加工を行う際には、ラップ支持円板外周部にリング状にテーパを設けるだけでよいため、旋回スクロールを回転させて外周部を切削または研削する旋削加工や外周部を押し潰してテーパを作る塑性加工等によって容易に加工でき、加工工数を縮小することでコストアップを抑制できる。
第3の発明は、特に、第2の発明のスクロール圧縮機において、テーパを旋回スクロールのラップ支持円板の外周エッジ部のうち、一部の範囲に設けることにより、旋回スクロールが旋回運動を行って圧縮を行う過程において、圧縮室側の合計圧力と背圧室側の合計圧力との差で定義される摺動面のスラスト力が最も大きくなるクランク角で動圧を発生して摺動損失を低減させるとともに、背圧室と圧縮室との間の漏れが発生しやすいクランク角ではシール長を確保することが可能である。
なお、摺動面内のテーパ形状、すなわちテーパの正面視点形状は、ラップ支持円板の中心点と異なる中心点を持つ円弧状テーパとすることで旋削加工や塑性加工等が容易で、加工工数を縮小させることができるし、直線の組み合わせとすることで平面研削加工が可能となり、より精度の高いテーパ断面形状を得ることができる。
第4の発明は、特に、第1の発明のスクロール圧縮機において、テーパを固定スクロールラップと吸入室とで形成されるラップ溝のエッジ部に設けることにより、旋回スクロールラップ支持円板外周部から中心部にわたって全体的にくさび効果による動圧が発生し、油膜圧力の上昇によって摺動面全体の摺動損失を低減することができる。
また、実機運転中には「固定スクロール表裏の圧力差による変形」、「固定スクロールと本体フレームとの締結力による固定スクロールの変形」および「本体フレームが密閉容器に溶接固定されるときに発生する溶接歪に起因する固定スクロールの変形」等が発生し、固定スクロール摺動面が中凸になる場合と、「旋回スクロール表裏の圧力差による変形」が発生して旋回スクロール摺動面が中凸になる場合に、旋回スクロールの旋回運動に伴って固定スクロールラップ上面エッジが強く摺動しやすい。
そこで、固定スクロールラップ溝エッジ部にテーパが設けられていることでテーパ部が逃しとなり、線当たりによる強い摺動を回避して面当たりを促進し、面圧低下によって摺動損失を低減することも可能である。
なお、固定スクロールの摺動面内にラップ溝とは異なる溝またはザグリ等の凹部がある場合、その凹部のエッジ部にテーパを設けることでも同様の摺動損失低減効果が得られる。
第5の発明は、特に、第4の発明のスクロール圧縮機において、テーパの幅を固定スクロールラップの厚みの1/10〜1/2に設定することにより、万が一圧縮室内へのオイル供給量が不足してテーパ部での動圧発生が不十分な場合でも、固定スクロールラップ上面を通る圧縮室間の冷媒漏れを最小限に抑えながら、通常のオイル供給量が十分な場合には動圧発生によって摺動損失を確実に低減させることができる。
一般的にテーパの幅が大きければ大きいほど摺動損失低減効果は大きくなり、小さければ小さいほどオイル供給量が不足した運転条件における固定スクロールラップ上面のシール性は確保されやすいため固定スクロールラップの厚みに対するテーパの幅を適正に設定する必要がある。
テーパの幅が固定スクロールラップ厚みの1/10未満の場合には、固定スクロールラップ上面の摺動面における摺動損失低減効果が非常に薄れるとともに、固定スクロールラップ上面のエッジ部の異常摺動や脱落を防止することを目的として一般的に行われているエッジ部面取りよりもテーパの幅が小さくなりやすく、構成が困難になる。
一方、固定スクロールラップの外壁側、内壁側の両側に同一幅のテーパを設けた場合、テーパの幅が固定スクロールラップ厚みの1/2よりも大きくなると平坦な摺動面が無くなるとともに、固定スクロールラップ上面に常に隙間が開いた状態となってシール性が大幅に低下する。
また、固定スクロールラップ上面の摺動面が線当たりとなるため面圧が増大し、却って摺動損失が大きくなる可能性もある。
第6の発明は、特に、第4または5の発明のスクロール圧縮機において、テーパが固定スクロールラップの巻き方向に対して異なる幅を持つことにより、摺動面のスラスト力が最も大きくなるクランク角で動圧が発生する位置のテーパ幅を大きくとって摺動損失を低減させるとともに、圧縮室間の漏れが発生しやすいクランク角ではシール長を確保するというように、必要な箇所に自由にテーパを設けることができ、全クランク角において最適な摺動面を実現することが可能である。
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明のスクロール圧縮機において、テーパ面と摺動面とのなす角度をθ1としたとき、tanθ1=1/5000〜1/50に設定している。
tanθ1が大きければ大きいほど加工が容易になって加工工数を低減でき、小さければ小さいほど動圧発生効果が大きくなって摺動損失をより低減できるため、tanθ1を適正な値に設定することで摺動損失低減による高効率化と加工工数低減によるコストアップ抑制を両立させることが可能である。
ただし、tanθ1が1/5000よりも小さくなると加工が非常に困難になると同時
にくさび効果による動圧発生も逆にほとんどなくなるため、何ら利点がない。
一方、tanθ1が1/50よりも大きくなると動圧発生効果が全くなくなり、本来の摺動損失低減という狙いを実現できなくなる。
なお、tanθ1は常に同一である必要はなく、旋回スクロールラップ支持円板の周方向または固定スクロールラップの巻き方向に対して変化させることで所要の効果を得ながら部品の歪みを考慮した最適テーパ形状を設定することが可能であるし、旋回スクロールラップ支持円板の径方向または固定スクロールラップの幅方向に対して変化させることでも同様の効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるスクロール圧縮機の縦断面図である。
図1において、鉄製の密閉容器1の内部全体は吐出管2に連通する高圧雰囲気となり、その中央部に電動機3、上部に圧縮機構が配置され、電動機3の回転子3aに固定されたクランク軸4の一端を支承する圧縮機構の本体フレーム5が密閉容器1に固定されており、その本体フレーム5に固定スクロール6が取り付けられている。
クランク軸4に設けられた主軸方向の油通路7は、その一端が給油ポンプ装置8に通じ、他端が最終的に旋回スクロール9の偏心軸受10に通じている。固定スクロール6と噛み合って圧縮室11を形成する旋回スクロール9は、渦巻き状の旋回スクロールラップ9aと偏心軸受10とを直立させたラップ支持円板9bとからなり、固定スクロール6と本体フレーム5との間に配置されている。
固定スクロール6は、鏡板6aと渦巻き状の固定スクロールラップ6bとからなり、固定スクロールラップ6bの中央部に吐出口12、外周部に吸入室13が配置されている。
クランク軸4の主軸から偏心してクランク軸4の上端部に配置された偏心軸14は、旋回スクロール9の偏心軸受10と係合摺動すべく構成されている。旋回スクロール9のラップ支持円板9bと本体フレーム5に設けられたスラスト軸受15との間は、油膜形成可能な微小隙間が設けられている。ラップ支持円板9bには偏心軸受10とほぼ同心の環状シール部材16が遊合状態で装着されており、その環状シール部材16はその内側の背面室17と外側の背圧室18とを仕切っている。
給油ポンプ装置8によって吸い上げられたオイルはクランク軸4の油通路7を通り旋回スクロール9の偏心軸受10と偏心軸14との間に形成された軸方向の内部空間19へ導かれ、一方は旋回スクロール9のラップ支持円板9bの背面に設けられた絞り部20を経由して固定スクロール6と本体フレーム5とによって囲まれて形成される背圧室18へと通じ、旋回スクロール9を固定スクロールラップ6bに押さえつける機能を持った背圧調整弁21、オイル供給通路21aを通って吸入室13へと導かれる。もう一方は偏心軸受10、背面室17、主軸受22を通り圧縮機構外部へ排出される。
吐出口12の出口側を開閉する逆止弁装置23が固定スクロール6の鏡板6aの平面上に取り付けられており、その逆止弁装置23は薄鋼板製のリード弁23aと弁押さえ23bとからなる。
クランク軸4の下端は密閉容器1内に溶接や焼き嵌めして固定された副軸受け24により軸受けされ、安定に回転することができる。副軸受け24はジャーナル軸受け構成となっており、給油ポンプ装置8によって吸い上げられたオイルの一部が副軸受け24へと供給される。
圧縮機構にて圧縮されたガスは圧縮機構外周部付近に設けられた下向きガス流路25を通り、図示された点線矢印のごとく回転子3a上部へと導かれる。ここで主軸受け22などを潤滑後排出されたオイルと合流し、回転子3a内部に設けられた回転子通路3bを介して回転子3a下部へと到達後、ガスとオイルの混合流が遠心力によって固定子3c下部コイルエンドに衝突し、気液分離される。気液分離後のガスは固定子3c外周に設けられた固定子通路3dを介して電動機3上部へと導かれ、圧縮機構に設けられた図示されていない上向きガス流路を通って圧縮機構上側空間へ到達後、吐出管2から密閉容器1外部へと吐出される。
図2は図1における旋回スクロール9の正面図で、ラップ支持円板9bの外周部に微小なテーパ9cを設けている。
図3は図1における固定スクロール6の正面図で、固定スクロールラップ6bと吸入室13とで形成されたラップ溝6cのエッジ部に微小なテーパ6dを設けている。また、背圧調整弁21に設けられたザグリ21bのエッジ部にも微小なテーパ21cが設けられている。
以上のように構成されたスクロール圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
図1において、吸入圧力よりもやや高めに設定された背圧室18内部の圧力と吐出圧力に維持された背面室17内部の圧力とによる軸方向上向きの力は、圧縮室11の圧力による軸方向下向きの力よりも常に大きくなるように設計され、旋回スクロール9が固定スクロール6から離反することによる体積効率および圧縮効率の低下を防止している。
そのため、旋回スクロールラップ支持円板9bは固定スクロール6に常に強く押し付けられた状態となっており、旋回スクロールラップ支持円板9bと固定スクロール6との摺動面26での摺動損失は圧縮機の性能に大きな影響を与えている。
この摺動面26における理想的な潤滑状態は、旋回スクロールラップ支持円板9bと固定スクロール6とが油膜を介して密着して旋回運動を行っている状態であり、摺動面26内部で十分な油膜圧力が維持されて流体潤滑されるため摺動損失を最低限に抑えることができると同時に、油膜のシール効果によって漏れ損失を最低限に抑えることもできる。
しかしながら、摺動面26における実際の潤滑状態は、旋回スクロール9と固定スクロール6の加工ばらつきや歪、圧力変形等による摺動面26の平面度および粗さの悪化、オイルに溶け込んだ冷媒ガスの減圧発泡による摺動面26内でのガスかみこみ、摺動面26内局所的温度上昇によるオイル粘度低下、等の要因によって流体潤滑状態を維持することが困難になっており、境界潤滑化によって摩擦係数が増大し、摺動損失を低く維持することができない。
これは、摺動面26の中でも特にエッジ部において顕著であり、実際の運転時には各エッジ部の摺動状態が特に厳しく、エッジ部での摺動損失増加が大きい。
その原因としては主に二つあり、一つにはエッジ部でのオイル流出が挙げられる。摺動面26のエッジ部では他端が開放されており、摺動面26に保持されたオイルが容易に背
圧室18または圧縮室11に流出するため、油膜圧力を高く維持できないためである。
二つ目の原因としては、旋回スクロール9または固定スクロール6の圧力変形によるエッジ部の局所摺動が挙げられる。圧力変形によって摺動面26の平面度が悪化した場合、各エッジ部で支持されることになり、線当たりすることでエッジ部の面圧が上昇し、油膜が形成されにくくなるためである。また、旋回スクロール9がすりこぎ運動した場合のエッジ部局所摺動によっても同様の現象が生じる。
そこで、図2および図3のように、摺動面26の各エッジ部に微小なテーパ6d、9c、21cを設けることでくさび効果によってエッジ部の油膜圧力を上昇させ、エッジ部でのオイル流出による油膜圧力減少を補って摺動損失を低減させている。
また、旋回スクロール9または固定スクロール6の圧力変形や旋回スクロール9のすりこぎ運動が生じた場合には微小なテーパ6d、9c、21cが逃げとなって局所摺動を回避し、摺動損失を低減させている。
微小なテーパ6d、9c、21cの断面は図4の模式図に示すような形状となっており、摺動面26に設けられている。図4においてテーパ6d、9c、21cの形状を把握しやすいようにテーパ6d、9c、21cの傾きを実寸よりも大きく表示している。
また、一般的にエッジ部には面取り27が設けられ、エッジ部の材料脱落を防止するとともに、エッジ部の相手側コーナーの逃げとしているが、テーパ6d、9c、21cは面取り27とは全く異なる形状であり、テーパ6d、9c、21cと面取り27はそれぞれ独立して設けられている。
テーパ6d、9c、21cの角度をθ1としたとき、径方向幅Wtと軸方向深さDtとの比で定義されるtanθ1は1/5000〜1/50に設定している。
tanθ1が大きければ大きいほど加工が容易になって加工工数を低減でき、小さければ小さいほど動圧発生効果が大きくなって摺動損失をより低減できるため、tanθ1を適正な値に設定することで摺動損失低減による高効率化と加工工数低減によるコストアップ抑制を両立させることが可能である。
ただし、tanθ1が1/5000よりも小さくなると加工が非常に困難になると同時にくさび効果による動圧発生も逆にほとんどなくなるため、何ら利点がない。
一方、tanθ1が1/50よりも大きくなると動圧発生効果が全くなくなり、本来の摺動損失低減という狙いを実現できなくなる。
以上のように、摺動面26の各エッジ部に微小なテーパ6d、9c、21cを設けることにより、エッジ部の油膜圧力の上昇効果および圧力変形時の逃げ効果で摺動面26の摺動損失を低減し、圧縮機の高効率化が可能である。
なお、本実施例では図4のとおりテーパ6d、9c、21c断面を一つの直線で構成しているが、複数の直線で構成してもよいし、円弧と組み合わせてもよい。
(実施の形態2)
図5および図6は、本発明の実施の形態2における旋回スクロール9と固定スクロール6の正面図である。
図5では旋回スクロール9のラップ支持円板9b外周部には三日月状のテーパ9cが設けられており、図6では固定スクロールラップ6bの上面エッジ部および背圧調整弁ザグリ21bのエッジ部にテーパ6d、21cが設けられている。
以上のように構成されたスクロール圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
旋回スクロールラップ支持円板9bには、吸入圧力よりもやや高めに設定された背圧室18内部の圧力と吐出圧力に維持された背面室17内部の圧力とによる固定スクロール6へ押さえ付ける力と、圧縮室11の圧力による固定スクロール6から引き離そうとする力が加わっており、その合力が全クランク角にて固定スクロール6へ押さえ付ける方向に働くように設計されている。
このとき、旋回スクロール9を固定スクロール6へ押さえ付ける力、すなわち摺動面26でのスラスト力は、例えば図7のようにクランク角によって変化するため、一回転中でも摺動損失が変動することになる。したがって、特にスラスト力の大きいクランク角付近での摺動損失低減が圧縮機の高効率化に対して効果的である。
実施の形態1のようにテーパ6d、9c、21cを摺動面26の全エッジ部に設けることで一回転中の全てのクランク角で摺動損失を低減させることが可能となるが、極端な運転条件の場合、オイルに溶け込んだ冷媒ガスの減圧発泡によってガスの比率が非常に大きくなったりオイル粘度が極端に低下するなどして、微小な深さのテーパ6d、9c、21cであってもシール性が損なわれる可能性がある。
したがって、非常に広範囲の運転条件で漏れによる大幅な性能低下を抑えながら、所要の運転条件で確実に摺動損失を低減させるにはテーパ6d、9c、21cの設置位置を最適化する必要がある。
これを具体的に説明すると以下のとおりである。
図7の例ではクランク角が約90°の付近で最もスラスト力が大きいことから、このクランク角でエッジ部の油膜圧力が上昇するようにテーパ6d、9c、21cを設定すべきである。
クランク角が90°の瞬間、旋回スクロールラップ支持円板9bは図8に示した矢印の向きに運動していることから、この運動方向でくさび効果による動圧発生が生じるように図5および図6に示すとおり三日月形状のテーパ6d、9c、21cを設ければよいことになる。
このように一部にテーパ6d、9c、21cを設けることで極端な運転条件時のシール性低下による漏れ損失増大のリスクを最小限に留めることが可能となる。
以上のように、摺動面26の各エッジ部の一部に微小なテーパ6d、9c、21cを設けることにより、広範囲の運転条件で冷媒ガスの漏れを抑えながら、所要の運転条件で摺動面26の摺動損失を効果的に低減し、圧縮機の高効率化が可能である。
なお、図7に示すスラスト力とクランク角の関係は運転条件およびラップのディメンジョンによって変わるため、テーパ6d、9c、21cの設定位置とラップのディメンジョンを適正に設計することによって、所要の運転条件での摺動損失低減と、特に冷媒ガスの漏れが発生しやすい位置でのシール性維持を同時に実現することができる。
以上のように、本発明にかかるスクロール圧縮機は、摺動面における各エッジ部に微小なテーパを設けることにより、旋回スクロールラップ支持円板の外周部、中心部を問わず、各エッジ部で動圧を発生させて油膜圧力を上昇させ、摺動部全体の摺動損失を低減することが可能であり、HFC系冷媒やHCFC系冷媒を用いたエアーコンディショナー用圧縮機のほかに、自然冷媒CO2を用いたエアーコンディショナーやヒートポンプ式給湯機などの用途にも適用できる。
本発明の実施の形態1における縦型スクロール圧縮機の縦断面図 本発明の実施の形態1における旋回スクロール正面図 本発明の実施の形態1における固定スクロール正面図 本発明の実施の形態1におけるエッジ部断面の模式図 本発明の実施の形態2における旋回スクロール正面図 本発明の実施の形態2における固定スクロール正面図 本発明の実施の形態2におけるクランク角とスラスト力の相関図 本発明の実施の形態2におけるラップ支持円板の運動方向説明図 従来の特許文献1における圧縮機構部拡大断面図 従来の特許文献2における圧縮機構部拡大断面図
符号の説明
6 固定スクロール
6a 鏡板
6b 固定スクロールラップ
6d テーパ
9 旋回スクロール
9a 旋回スクロールラップ
9b ラップ支持円板
9c テーパ
11 圧縮室
12 吐出口
13 吸入室
21 背圧調整弁
21c テーパ
26 摺動面

Claims (3)

  1. 固定スクロールの一部をなす鏡板の一面に直立して形成された渦巻き状の固定スクロールラップに対して、旋回スクロールの一部をなすラップが支持円板上に直立するとともに、前記固定スクロールラップに類似した形状の旋回スクロールラップを互いに噛み合わせて、両スクロール間に渦巻き形の対称形の一対の圧縮空間を形成し、前記固定スクロールラップの中心部に吐出室に通じる吐出口を設け、前記固定スクロールラップの外側には吸入室を設け、自転阻止部材を介して前記旋回スクロールが前記固定スクロールに対し旋回運動を行うことによって、前記各圧縮空間が吸入側より吐出側に向けて連続移行する複数個の圧縮室に区画されて流体を圧縮すべく容積変化するスクロール圧縮機であって、
    前記固定スクロールラップと前記吸入室とで形成されるラップ溝のエッジ部に、テーパが設けられており、
    前記テーパが前記固定スクロールラップの巻き方向に対して異なる幅を持ち、
    前記異なる幅のテーパは、摺動面のスラスト力が最も大きくなるクランク角で動圧が発生する位置に設けられるスクロール圧縮機。
  2. 前記テーパの幅が前記固定スクロールラップの厚みの1/10〜1/2である請求項1に記載のスクロール圧縮機。
  3. 前記テーパ面と前記摺動面とのなす角度をθ1としたとき、tanθ1=1/5000〜/50である請求項1または2に記載のスクロール圧縮機。
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