以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲に含まれるものが含まれる。
以下においては、電動機を動力発生源とする車両、例えば、いわゆる電気自動車やFCV(Fuel Cell Vehicle:燃料電池車両)に本発明を適用した場合を説明するが、本発明の適用対象は、駆動輪の駆動力を制御できる動力発生源を備えていればよい。このような車両であれば、本発明は、電動機と内燃機関とを組み合わせて動力発生源とする、いわゆるハイブリッド車両や、動力発生源に内燃機関を用いる車両に対しても適用できる。なお、本発明では、動力発生源のトルクを調整することによって駆動輪のスリップを抑制するため、車両が備える動力発生源は、例えば電動機のように、出力中のトルクを簡易に知ることができるとともに、出力するトルクを迅速に変更できるものであることが好ましい。
また、以下において、スリップ抑制制御は、車両が備える駆動輪に許容できないスリップが発生した場合、これを許容範囲内のスリップに抑制する制御をいう。例えば、駆動輪と路面との間における路面反力がスリップ率の変化に対して最大値を持つ場合、駆動輪のスリップ率が、最大の路面反力におけるスリップ率を超えると、駆動輪のスリップが許容できない。この場合、スリップ抑制制御は、車両が備える駆動輪のスリップ率が最大の路面反力におけるスリップ率を超えた場合、前記駆動輪のスリップ率を最大の路面反力におけるスリップ率に抑制する制御となる。
(実施形態1)
この実施形態は、車両の駆動輪の駆動トルク、前記駆動輪の速度、前記車両の速度に基づいて、前記駆動輪のスリップ状態の尺度となるスリップパラメータと、前記駆動輪と路面との摩擦の尺度となる摩擦パラメータとの関係の履歴を作成し、前記履歴から得られる前記摩擦パラメータの最大値及び前記スリップパラメータと、前記履歴から求められる現時点における前記摩擦パラメータとに基づいて、前記駆動輪の駆動トルクを決定する点に特徴がある。ここで、摩擦パラメータとは、路面反力、駆動輪と路面との間の摩擦係数その他の、駆動輪と路面との摩擦の大きさを示す尺度となるパラメータである。また、スリップパラメータとは、スリップ率、スリップ量その他の、駆動輪と路面とのスリップの状態(スリップの大きさ)を示す尺度となるパラメータである。
図1は、実施形態1に係る走行装置を備える車両の構成を示す概略図である。以下の説明において、車両1が前進する方向(図1中の矢印X方向)を前とし、車両1が後進する方向、すなわち前進する方向とは反対の方向を後とする。また、左右の区別は、車両1の前進する方向を基準とする。すなわち、「左」とは、車両1の前進する方向に向かって左側をいい、「右」とは、車両1の前進する方向に向かって右側をいう。
実施形態1に係る車両1は、電動機のみを動力発生源とする走行装置100を備える。走行装置100は、動力発生源である左前側電動機10flと、右前側電動機10frと、左後側電動機10rlと、右後側電動機10rrとを備える。この実施形態において、左前側電動機10flは左側前輪2flを駆動し、右前側電動機10frは右側前輪2frを駆動し、左後側電動機10rlは左側後輪2rlを駆動し、右後側電動機10rrは右側後輪2rrを駆動する。
上述したように、この走行装置100において、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl及び右側後輪2rrは、それぞれ異なる電動機で駆動される。このように、車両1は、すべての車輪が駆動輪となる。すなわち、車両1の駆動輪は、すなわち左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl及び右側後輪2rrである。左側前輪2fl、右側前輪2frは車両1の駆動輪であるとともに、ハンドル4によって操舵されて車両1の進行方向を変更する操舵輪としても機能する。
また、この走行装置100においては、上述したように、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl及び右側後輪2rrは、それぞれ異なる電動機によって直接駆動される。そして、左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrは、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl及び右側後輪2rrのホイール内に配置される、いわゆるインホイール形式の構成となっている。
なお、電動機と車輪との間に減速機構を設け、左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrの回転数を減速して、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl及び右側後輪2rrに伝達してもよい。一般に、電動機は小型化するとトルクが低下するが、減速機構を設けることによって電動機のトルクを増加させることができる。その結果、左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrを小型化することができる。
左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrは、ECU(Electronic Control Unit)50によって制御されて、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl、右側後輪2rrの駆動力が調整される。この実施形態においては、アクセル開度センサ41によって検出されるアクセル5の開度により走行装置100の総駆動力F_all、及び左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl、右側後輪2rr各輪の駆動力が制御される。
また、この実施形態に係るスリップ抑制制御において、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl、右側後輪2rrの駆動力は、ECU50に組み込まれるスリップ抑制制御装置30によって変更される。すなわち、この実施形態に係るスリップ抑制制御においては、スリップ抑制制御装置30が、車両1が備える各駆動輪の駆動力を変更する駆動力変更手段としての機能を発揮する。また、この実施形態においては、上述した構成により、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl、右側後輪2rrそれぞれの駆動力を独立して制御することができる。これにより、この実施形態に係るスリップ抑制制御を実行する際には、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl、右側後輪2rrそれぞれのスリップを個別に制御できる。
左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrは、左前側レゾルバ40fl、右前側レゾルバ40fr、左後側レゾルバ40rl、右後側レゾルバ40rrによって回転角度や回転速度が検出される。左前側レゾルバ40fl、右前側レゾルバ40fr、左後側レゾルバ40rl及び右後側レゾルバ40rrの出力は、ECU50に取り込まれて、左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrの制御に用いられる。
左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrは、インバータ6に接続されている。インバータ6には、例えばニッケル−水素電池や鉛蓄電池、あるいは燃料電池(FC:Fuel Cell)等の車載電源7が接続されており、必要に応じてインバータ6を介して左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrへ供給される。これらの出力は、ECU50からの指令によってインバータ6を制御することで制御される。なお、この実施形態においては、1台のインバータで1台の電動機を制御する。左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrを制御するため、インバータ6は、それぞれの電動機に対応した4台のインバータで構成される。
左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrが走行装置100の動力発生源として用いられる場合、車載電源7の電力がインバータ6を介して供給される。また、例えば車両1の減速時には、左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl、右後側電動機10rrが発電機として機能して回生発電を行い、これによって車両1の運動エネルギを電気エネルギに変換して回収し、車載電源7に蓄える。これは、ブレーキ信号やアクセルオフ等の信号に基づいて、ECU50がインバータ6を制御することにより実現される。なお、この実施形態に係るスリップ抑制制御を実行する際にも、必要に応じて左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl、右後側電動機10rrの回生発電を実行する。次に、駆動輪がスリップしたときの状態を説明する。
図2は、車両の駆動輪がスリップしたときにおける駆動トルク、路面反力、駆動輪速度、車両速度、スリップ率の時間変化を示す説明図である。図3は、駆動トルクや路面反力等を説明する概念図である。以下においては、説明の便宜上、必要に応じて、左側前輪2fl、右側前輪2fr、左側後輪2rl、右側後輪2rrを区別せず駆動輪2という。
車両1の走行中、例えば、駆動輪2のトルク(駆動トルク)Tが増加すると(図2の上段)、駆動輪2と路面GLとの間でスリップし始める(図2の中段における(1)で示す部分)。駆動輪2がスリップし始めると、駆動輪速度(駆動輪2の周速度)Vwと車両速度(車両1の走行速度)Vとの差が大きくなり、その結果としてスリップ率slipが増加する。また、路面反力(路面GLが駆動輪2を押す力)Ftrcも増加する。ここで、駆動輪速度Vwは、駆動輪2の回転角速度をωとし、駆動輪2の半径(回転軸Zrから外周までの距離)をrとすると、Vw=r×ωとなる(図3参照)。
ここで、路面反力Ftrcは式(1)で、スリップ率slipは式(2)で求めることができる。
Ftrc=(T×RD−Iv×a)/r・・(1)
slip=(Vw−V/Vw)・・(2)
なお、Ivは駆動輪2のイナーシャも含んだ駆動系のイナーシャ、RDは減速比、aは駆動輪2の加速度(駆動輪加速度)である。駆動系のイナーシャは、例えば、この実施形態における車両においては、電動機のローターから駆動輪2までの間に存在する動力伝達に関わる構造物すべてのイナーシャである。
駆動輪2がスリップしている途中においては、路面反力が最大となる箇所がある(図2の中段における(2)で示す部分)。この時間をt1とする。このときの路面反力を最大路面反力Ftrc_max、スリップ率を最大路面反力スリップ率slip_maxとする。
最大路面反力Ftrc_maxを超えると(t=t1以降)、駆動輪速度Vwは短時間で急激に上昇し、これにともなってスリップ率slipも急激に上昇する。そして、スリップ率slipのピークを超えると、駆動トルクTを制御することにより、駆動輪2のスリップが徐々にグリップ状態へ回復し始める(図2の中段における(3)で示す部分)。図2の中段における(4)で示す部分は、駆動輪2のスリップがグリップ状態へ回復している途中であり、スリップ率slipはグリップ走行時におけるスリップ率へ近づいていく。
一般に、駆動輪2と路面GLとの間において、最大路面反力スリップ率slip_max、すなわち最大路面反力Ftrc_maxが発生している状態で、駆動輪2が駆動されることが好ましい。したがって、駆動輪2にスリップが発生した場合には、スリップ率をできるだけ早く最大路面反力スリップ率slip_maxに戻すことが好ましい。
ここで、駆動トルクTが増加することによって、あるいは駆動トルクTは一定であるが駆動輪2が高μ路面から低μ路面へ移行することによって駆動輪2のスリップが発生し、スリップ率が最大路面反力スリップ率slip_maxを超えた場合には、駆動輪2の回転数は加速度をもって増加する。その結果、スリップ率slipはより高いスリップ率へ急激に移行しようとする。このため、この実施形態に係るスリップ制御は、駆動輪2のスリップが発生した場合には、駆動輪2の持つ加速度を打ち消してから、スリップ率を最大路面反力スリップ率slip_maxへ戻す。
図4は、路面反力とスリップ率との関係を示す概念図である。なお、図4は、実施形態1のスリップ抑制制御に用いる路面反力−スリップ率の履歴マップ(F−s履歴マップ)でもある。図5は、駆動輪にスリップが発生したときにおける駆動輪速度の回復を示す概念図である。
この実施形態では、駆動輪2のスリップが発生した場合には、駆動輪2の持つ加速度を打ち消すことで、駆動輪2のスリップが現在よりも進行しないように、スリップ率をある一定の値(slip_p)に、すなわち路面反力をある一定の値(Ftrc_p)に留め、スリップ率slipの増加を抑制する。駆動輪2の持つ加速度を打ち消すため、この実施形態では、現在の駆動トルクT_pから第1のスリップ抑制トルクT1を減算する。
第1のスリップ抑制トルクT1は、スリップ率の増加を抑えて、一定のスリップ率に保つためのトルクであり、式(3)で表される。
T1=a×Iv=(Ftrc_max−Ftrc_p)×r/RD・・(3)
ここで、rは駆動輪2の半径である。式(3)のFtrc_maxは、図4のF−s履歴マップ60から求め、Ftrc_pは、現在の車両速度V及び現在の駆動輪速度Vwから求めたスリップ率slip_pをF−s履歴マップ60に与えて求める。
現在の駆動トルクT_pから第1のスリップ抑制トルクT1を減算した駆動トルクを駆動輪2へ与えると、駆動輪2はあるスリップ率(この実施形態ではslip_p)でスリップした状態となる。すなわち、駆動輪2のスリップ率はslip_pで停止して、増加も減少もしない状態になる。そこで、この実施形態では、第1のスリップ抑制トルクT1に加え、さらに第2のスリップ抑制トルクを現在の駆動トルクT_pから減算して、駆動輪2をスリップ状態からグリップ状態へ回復させる。そして、駆動輪2がグリップ状態へ回復したときには、駆動輪2のスリップ率が最大路面反力スリップ率slip_maxとなるようにする。これによって、駆動輪2のグリップ力を最大限有効に活用して車両1を走行させることができる。ここで、第2のスリップ抑制トルクT2は、式(4)で表される。
T2=(Vw−V/(1−slip_max))×1000/3600/Δt/π/r×π×RD×Iv・・(4)
ここで、最大路面反力スリップ率slip_maxは、図4のF−s履歴マップ60から求める。式(4)から、第2のスリップ抑制トルクT2は、駆動輪2のスリップを、設定時間Δtでグリップ状態へ回復させるために要するトルクである。また、設定時間Δtは、駆動輪2のスリップ率が、現在の駆動トルクT_pにおけるスリップ率slip_pから最大路面反力スリップ率slip_maxになるまでの時間である。なお、式(4)中におけるVw、Vは、現時点における値であって、スリップ抑制制御中にVw、Vが変化した場合には、変化した値を用いる。
ここで、slip_maxは、駆動輪2のスリップ率が最大路面反力スリップ率となるように、すなわち、最大路面反力Ftrc_maxで駆動輪2が駆動されるようにするための値である。式(4)において、slip_maxの代わりに異なる値を用いれば、その値のスリップ率で駆動輪2が駆動される。例えば、slip_maxの代わりに、0以上slip_max未満の値を設定すれば、最大スリップ率よりも小さいスリップ率で駆動輪2を駆動することができる。これによって、例えば、車両1の運転条件(例えば、省燃費モード)によって最大スリップ率で運転させる必要がない場合や、路面の条件(例えば極めてスリップしやすい路面)によって最大スリップ率で運転させるとスリップ抑制制御がハンチングを起こすおそれがある場合等には、適切なスリップ率を設定することができる。
式(3)から求めた第1のスリップ抑制トルクT1、及び式(4)から求めた第2のスリップ抑制トルクT2を、駆動輪2にスリップが発生している状態における現在の駆動トルクT_pから減算したトルクを、駆動輪2のスリップを抑制するための目標駆動トルクT_oとする。すなわち、T_o=T_p−(T1+T2)となる。ここで、T1+T2を目標スリップ抑制トルクT_trcとすると、T_o=T_p−T_trcとなる。
この実施形態では、第2のスリップ抑制トルクT2を式(4)のように設定して、設定時間Δtでグリップ状態へ回復させるようにする。これによって、駆動輪2がグリップ状態へ回復するときにおける駆動輪速度Vwのハンチング(図5の一点鎖線)を抑えることができる。そして、図5の実線に示すように、駆動輪2をグリップ状態へ迅速に回復させることができる。次に、この実施形態に係るスリップ抑制制御装置30を説明する。
図6は、実施形態1に係るスリップ抑制制御装置の構成例を示す説明図である。図6に示すように、スリップ抑制制御装置30は、ECU50に組み込まれて構成されている。ECU50は、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)50pと、記憶部50mと、入力ポート55及び出力ポート56と、入力インターフェース57及び出力インターフェース58とから構成される。
なお、ECU50とは別個に、この実施形態に係るスリップ抑制制御装置30を用意し、これをECU50に接続してもよい。そして、この実施形態に係るスリップ抑制制御を実現するにあたっては、ECU50が備える走行装置100等に対する制御機能を、前記スリップ抑制制御装置30が利用できるように構成してもよい。
スリップ抑制制御装置30は、履歴作成部31と、運転条件判定部32と、駆動トルク演算部33とを含んで構成される。これらが、この実施形態に係るスリップ抑制制御を実行する部分となる。この実施形態において、スリップ抑制制御装置30は、ECU50を構成するCPU50pの一部として構成される。
スリップ抑制制御装置30の履歴作成部31と、運転条件判定部32と、駆動トルク演算部33とは、バス541、バス542、及び入力ポート55及び出力ポート56を介して接続される。これにより、スリップ抑制制御装置30を構成する履歴作成部31と、運転条件判定部32と、駆動トルク演算部33とは、相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を出したりできるように構成される。
また、CPU50pが備えるスリップ抑制制御装置30と、記憶部50mとは、バス543を介して接続される。これによって、スリップ抑制制御装置30は、ECU50が有する走行装置100の運転制御データを取得し、これを利用することができる。また、スリップ抑制制御装置30は、この実施形態に係るスリップ抑制制御を、ECU50が予め備えている運転制御ルーチンに割り込ませたりすることができる。
入力ポート55には、入力インターフェース57が接続されている。入力インターフェース57には、左前側レゾルバ40fl、右前側レゾルバ40fr、左後側レゾルバ40rl、右後側レゾルバ40rr、アクセル開度センサ41、操舵角センサ42、車両速度センサ43、前後方向加速度センサ44、横方向加速度センサ45その他の、走行装置100の運転制御に必要な情報を取得するセンサ類が接続されている。
これらのセンサ類から出力される信号は、入力インターフェース57内のA/Dコンバータ57aやディジタル入力バッファ57dにより、CPU50pが利用できる信号に変換されて入力ポート55へ送られる。これにより、CPU50pは、走行装置100の運転制御や、この実施形態に係るスリップ抑制制御に必要な情報を取得することができる。
出力ポート56には、出力インターフェース58が接続されている。出力インターフェース58には、スリップ抑制制御に必要な制御対象が接続されている。この実施形態では、左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrを制御するためのインバータ6が、この実施形態に係るスリップ抑制制御に必要な制御対象である。出力インターフェース58は、制御回路581、582等を備えており、CPU50pで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、前記センサ類からの出力信号に基づき、ECU50のCPU50pは、左前側電動機10fl、右前側電動機10fr、左後側電動機10rl及び右後側電動機10rrの駆動力を制御することができる。
記憶部50mには、この実施形態に係るスリップ抑制制御の処理手順を含むコンピュータプログラムや制御マップ、あるいはこの実施形態に係るスリップ抑制制御に用いるデータマップ等が格納されている。ここで、記憶部50mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
上記コンピュータプログラムは、CPU50pへ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、この実施形態に係るスリップ抑制制御の処理手順を実現できるものであってもよい。また、このスリップ抑制制御装置30は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、履歴作成部31、運転条件判定部32及び駆動トルク演算部33の機能を実現するものであってもよい。次に、この実施形態に係るスリップ抑制制御を説明する。次の説明では、適宜図1〜図6を参照されたい。
図7は、実施形態1に係るスリップ抑制制御において、路面反力とスリップ率との履歴を作成する手順を示すフローチャートである。図8は、実施形態1に係るスリップ抑制制御において、駆動輪に発生したスリップをグリップ状態へ回復させるための手順を示すフローチャートである。この実施形態におけるスリップ抑制制御では、グリップ状態とスリップ状態との間で、駆動輪2の路面反力Ftrcとスリップ率slipとの関係の履歴を取得し、F−s履歴マップ60(図4参照)として記憶しておく。そして、F−s履歴マップ60を用いて、駆動輪2のスリップをグリップ状態へ回復させる際における制御パラメータを設定する。
この実施形態に係るスリップ抑制制御では、まず路面反力Ftrcとスリップ率slipとの関係の履歴を取得し、F−s履歴マップ60(図4参照)として記憶する。このため、スリップ抑制制御装置30の履歴作成部31は、路面反力Ftrc及びスリップ率slipを算出する(ステップS101)。路面反力Ftrcは式(1)から、スリップ率slipは式(2)から求めることができる。
ここで、路面反力Ftrcを求める際に用いる駆動トルクTは、各電動機に対するトルク指令値(電流値)から求めることができる。また、駆動輪加速度aは、各駆動輪に取り付けられるレゾルバから検出される各駆動輪の駆動輪速度Vwの変化に基づいて求めることができる。また、スリップ率slipを求める際に用いる駆動輪速度Vwは、各駆動輪に取り付けられるレゾルバから、車両速度Vは車両速度センサ43から求めることができる。
次に履歴作成部31は、ステップS101で求めた路面反力Ftrcとスリップ率slipとの関係を、履歴記憶手段であるECU50の記憶部50mに格納して記憶させる(ステップS102)。履歴作成部31は、グリップ状態とスリップ状態との間で複数の路面反力Ftrcとスリップ率slipとの関係を取得し、記憶部50mへ格納することで、図4に示すF−s履歴マップ60を得る。F−s履歴マップ60は、記憶部50mに格納される。
F−s履歴マップ60が得られたら、履歴作成部31は、F−s履歴マップ60から最大路面反力Ftrc_max及び最大路面反力スリップ率slip_maxを決定する(ステップS103)。これは、F−s履歴マップ60における路面反力Ftrcのピーク値を最大路面反力Ftrc_maxとし、そのときのスリップ率を最大路面反力スリップ率slip_maxとすることで決定できる。次に説明するスリップ抑制制御、すなわち駆動輪2に発生したスリップをグリップ状態へ回復させる際の制御においては、上記手順によって得られたF−s履歴マップ60を用いて、制御パラメータを設定する。
スリップ抑制制御を実行するにあたり、スリップ抑制制御装置30の運転条件判定部32は、車両1の走行中において、少なくとも一つの駆動輪2にスリップが発生したか否かを判定する(ステップS201)。例えば、車両速度センサ43から取得される車両速度Vと、駆動輪速度Vwとの偏差が所定の閾値を超えた場合に、その駆動輪にはスリップが発生していると判定することができる。また、スリップ率が所定の閾値を超えた場合に、その駆動輪にはスリップが発生していると判定してもよい。
いずれの駆動輪2にもスリップが発生していない場合(ステップS201:No)、STARTに戻り、運転条件判定部32は車両1の運転状態を監視する。少なくとも一つの駆動輪2にスリップが発生した場合(ステップS201:Yes)、スリップ抑制制御装置30の駆動トルク演算部33は、上述した第1のスリップ抑制トルクT1及び第2のスリップ抑制トルクT2を決定する(ステップS202)。第1のスリップ抑制トルクT1は式(3)から、第2のスリップ抑制トルクT2は式(4)から決定することができる。なお、T2を決定する際に用いる設定時間Δtは、予め一定値として設定しておく。
ここで、第1のスリップ抑制トルクT1を決定する際に用いる路面反力Ftrc_pは、スリップ抑制制御でT1、T2を決定する時のスリップ率slip_pを、F−s履歴マップ60に与えて得られた路面反力である。また、第2のスリップ抑制トルクT2を決定する際に用いるスリップ率slip_pは、スリップ抑制制御でT1、T2を決定する時のスリップ率である。
T1、T2を決定したら(ステップS202)、駆動トルク演算部33は、目標スリップ抑制トルクT_trc(=T1+T2)を決定する(ステップS203)。そして、駆動トルク演算部33は、決定した目標スリップ抑制トルクT_trcと、現在の駆動トルク(すなわち駆動輪2にスリップが発生している状態における駆動トルク)Tpとを用いて、スリップの発生している駆動輪を駆動するための目標駆動トルクT_o(=T_p―Ttrc)を算出する(ステップS204)。
そして、駆動トルク演算部33は、ステップS204で算出した目標駆動トルクT_oをインバータ6へ指令して(ステップS205)、スリップが発生している駆動輪を、前記目標駆動トルクT_oで駆動する。これによって、スリップが発生している駆動輪2は速やかにグリップ状態へ回復するとともに、駆動輪2のスリップ率は最大路面反力スリップ率slip_maxとなる。その結果、スリップが回復した駆動輪2は、グリップ力を最大限有効に活用して車両1を走行させることができる。
以上、この実施形態では、駆動輪のスリップ状態の尺度となるスリップパラメータと、前記駆動輪と路面との摩擦の尺度となる摩擦パラメータとの関係の履歴を作成し、前記履歴から得られる前記摩擦パラメータの最大値及び前記スリップパラメータと、前記履歴から求められる現時点における前記摩擦パラメータとに基づいて、前記駆動輪の駆動トルクを決定する。これによって、駆動輪のスリップ状態を、履歴から求められる現時点における摩擦パラメータによって考慮して、駆動輪と路面との摩擦を履歴上に存在する、所望の状態へ回復させることができる。その結果、駆動輪に発生したスリップを、駆動輪のスリップ状態に応じて迅速に回復させるとともに、適切な駆動力で駆動輪を駆動できる。なお、この実施形態の構成は、以下の実施形態においても適宜適用することができる。また、この実施形態及びその変形例で開示した構成を備えるものは、この実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。
(実施形態2)
実施形態2は、実施形態1と略同様の構成であるが、スリップパラメータに応じて設定時間Δtを変更し、車両の走行状態に応じて設定時間Δtを一定とするか、スリップパラメータに応じて変更するかを選択する点が異なる。他の構成は実施形態1と同様である。なお、実施形態2に係るスリップ抑制制御は、実施形態1に係るスリップ抑制制御装置30(図6参照)で実現できる。次の説明においては、適宜図1〜図6を参照されたい。
図9は、設定時間とスリップ量との関係を示す説明図である。図10は、実施形態2に係るスリップ抑制制御において、駆動輪に発生したスリップをグリップ状態へ回復させるための手順を示すフローチャートである。図11は、摩擦係数とスリップ量との関係を示す説明図である。図12は、駆動輪にスリップが発生したときにおける駆動輪速度の回復を示す概念図である。
図9に示すように、実施形態1では、駆動輪2のスリップ量S(あるいはスリップ率slip)、すなわちスリップパラメータの大きさに関わらず、設定時間Δt(駆動輪2のスリップ率が、現在の駆動トルクT_pにおけるスリップ率slip_pから最大路面反力スリップ率slip_maxになるまでの時間)を一定(Δt=Δt_b)としていた。この実施形態では、駆動輪2のスリップ量S、すなわちスリップパラメータの大きさに応じて設定時間Δtを変更する。例えば、図9に示すように、スリップ量Sが大きくなるにしたがって、設定時間Δtを短くする。この例では、スリップ量Sの増加とともに、設定時間ΔtをΔt_a(Δt_a>0)から0まで変化させる。
これによって、図12の実線で示すように、実施形態1に係るスリップ抑制制御(図12の点線)よりも早い時間で駆動輪2のグリップを回復できる。また、グリップを回復したときのショックも低減できる。さらに、駆動輪2のスリップ量Sが大きい場合には設定時間Δtを小さくするので、スリップ量Sが大きく車両1の挙動変化が大きい場合には、速やかに車両1の挙動を安定させることができる。
実施形態2に係るスリップ抑制制御では、次に説明するように、車両1の走行状態に応じて、設定時間Δtを一定とするか、設定時間Δtをスリップパラメータの大きさに応じて変更するかを選択する。実施形態2に係るスリップ抑制制御を実行するにあたり、運転条件判定部32は、摩擦係数μ(すなわち摩擦パラメータ)とスリップ量S(すなわちスリップパラメータ)との関係にピーク性があるか否かを判定する(ステップS301)。なお、後述するように、摩擦係数μとスリップ量Sとの関係の代わりに、摩擦パラメータである路面反力Ftrcと、スリップパラメータであるスリップ率slipとの関係を用いてもよい。
ここで、なお、μとSとの関係にピーク性がある場合とは、図11に示す曲線Aのように、Sに対してμの極大値を持つ場合をいう。例えば、通常の舗装路面を走行する場合は、μとSとの関係にピーク性がある。また、μとSとの関係にピーク性がない場合とは、図11に示す曲線Bのように、Sに対してμの極大値を持たない場合をいう。例えば、深雪中を走行するような場合は、μとSとの関係にピーク性がない。
摩擦係数μとスリップ量Sとの関係は、路面反力Ftrcとスリップ率slipとの関係に置き換えて考えることができる。したがって、摩擦係数μとスリップ量Sとにピーク性があるか否かは、路面反力Ftrcとスリップ率slipとにピーク性があるか否かで判断できる。路面反力Ftrcとスリップ率slipとにピーク性があるか否かは、路面反力Ftrcとスリップ率slipとの履歴から作成したF−s履歴マップ60(図4参照)から判定することができる。例えば、現在のF−s履歴マップ60の路面反力Ftrcがスリップ率slipに対して極大値を持てば、摩擦係数μとスリップ量Sとの関係にピーク性があると判定できる。また、現在のF−s履歴マップ60の路面反力Ftrcがスリップ率slipに対して極大値を持たなければ、摩擦係数μとスリップ量Sとの関係にピーク性がないと判定できる。
摩擦係数μとスリップ量Sとの関係にピーク性がある場合(ステップS301:Yes)、駆動トルク演算部33は、第2のスリップ抑制トルクT2を算出する際に用いる設定時間Δtを、スリップ量Sに応じて変化させる(ステップS305)。すなわち、図9に示す設定時間マップ61におけるC1のように、スリップ量Sの増加とともに設定時間Δtが小さくなるようにする。スリップ量Sは、駆動輪速度Vwと車両速度Vとの差(Vw−V)で求めることができる。また、上述したように、スリップ量Sの代わりにスリップ率slipを用いてもよい。駆動トルク演算部33は、第2のスリップ抑制トルクT2を算出する際に、そのときのスリップ量Sあるいはスリップ率slipを算出して設定時間マップ61に与え、対応する設定時間Δtを取得する。なお、設定時間マップ61は、例えば、記憶部50mに格納しておく。
摩擦係数μとスリップ量Sとの関係にピーク性がない場合(ステップS301:No)、車両の走行状態(この実施形態では、車両1の傾斜状態)に応じて設定時間Δtを一定とするか、スリップ量Sに応じて変更するかを選択する。運転条件判定部32は、操舵角センサ42や横方向加速度センサ45からの情報に基づき、車両1が旋回中であるか否かを判定する(ステップS302)。車両1が旋回中である場合(ステップS302:Yes)、車両1はロールによって傾斜する。この場合、駆動トルク演算部33は、第2のスリップ抑制トルクT2を算出する際に用いる設定時間Δtを、スリップ量Sに応じて変化させる(ステップS305)。
車両1が旋回中でない場合(ステップS302:No)、運転条件判定部32は、車両1の走行している路面にカントがついているか否かを判定する(ステップS303)。車両1の走行している路面にカントがついている場合(ステップS303:Yes)、駆動トルク演算部33は、第2のスリップ抑制トルクT2を算出する際に用いる設定時間Δtを、スリップ量Sに応じて変化させる(ステップS305)。
車両1の走行している路面にカントがついていない場合(ステップS303:No)、運転条件判定部32は、車両1の走行している路面が坂路であるか否かを判定する(ステップS304)。車両1の走行している路面が坂路である場合(ステップS304:Yes)、駆動トルク演算部33は、第2のスリップ抑制トルクT2を算出する際に用いる設定時間Δtを、スリップ量Sに応じて変化させる(ステップS305)。車両1の走行している路面が坂路でない場合(ステップS304:No)、第2のスリップ抑制トルクT2を算出する際に用いる設定時間Δtを、スリップ量Sによらず一定値(この例ではΔt=Δt_b)とする(ステップS306)。
以上、実施形態2では、スリップパラメータに応じて設定時間を変更する。これによって、スリップ状態にある駆動輪を、さらに迅速にグリップ状態へ回復させることができ、また駆動輪がグリップを回復したときのショックも低減できる。また、路面の状況や駆動輪の摩耗状態に応じたスリップ抑制制御を実現できる。なお、駆動輪のスリップ状態に応じて、設定時間は0としてもよい。これによって、駆動輪のスリップ量が極めて大きい場合には、速やかに駆動輪のグリップを回復できるので、車両の挙動が不安定になることを効果的に抑制できる。
また、車両の走行状態に応じて設定時間を一定とするか、スリップパラメータに応じて変更するかを選択するので、スリップの抑制を優先する必要がある場合には、設定時間をスリップパラメータに応じて変更することにより、早期に駆動輪のスリップをグリップ状態へ回復させることができる。なお、この実施形態の構成は、以下の実施形態においても適宜適用することができる。また、この実施形態及びその変形例で開示した構成を備えるものは、この実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。
(実施形態3)
実施形態3は、実施形態1と略同様であるが、駆動輪がスリップ状態からグリップ状態へ設定時間Δtで回復するために必要な駆動輪の加速度と、現時点における駆動輪の実際の加速度とに基づいて、路面反力を補正する点が異なる。他の構成は実施形態1と同様である。
図13は、実施形態3に係るスリップ抑制制御における路面反力の補正を説明する概念図である。現時点における路面反力Ftrcとスリップ率slipとの関係をF−s_1とする。駆動輪2がスリップからグリップ状態へ設定時間Δtで回復するとした場合に必要な駆動輪の加速度A_gは、式(5)で表される。なお、A_gは推定値である。
A_g=−slip/(1−slip)×V×1000/3600/Δt/π/r×π×RD・・(5)
駆動輪の実際の加速度をA_rとすると、路面反力の補正値(補正路面反力)ΔFtrcは、式(6)で表される。
ΔFtrc=|A_r−A_g|×(It+Iv)×RD/r・・(6)
A_g>A_rである場合は、F−s_1から求められる路面反力が、実際の路面反力よりも低い場合である。この場合、駆動トルク演算部33は、最大路面反力スリップ率slip_maxよりもスリップ率が大きい領域では、F−s_1に式(6)から求めた補正路面反力ΔFtrcを加算して得られた値に基づいて求めたF−s_2を用いて、第1のスリップ抑制トルクT1、第2のスリップ抑制トルクT2及び目標スリップ抑制トルクT_trcを決定する。ここで、F−s_2=F−s_1×(Ftrc_max1+ΔFtrc)/Ftrc_max1となる。このときの最大路面反力Ftrc_max2、すなわち、slip_maxにおけるF−s_2は、F−s_1=Ftrc_max1なので、Ftrc_max1×(Ftrc_max1+ΔFtrc)/Ftrc_max1となる。
A_g<A_rである場合は、F−s_1から求められる路面反力が、実際の路面反力よりも高い場合である。この場合、駆動トルク演算部33は、最大路面反力スリップ率slip_maxよりもスリップ率が大きい領域では、F−s_1から、式(6)を用いて求めた補正路面反力ΔFtrcを減算して得られた値に基づいて求めたF−s_3を用いて、第1のスリップ抑制トルクT1、第2のスリップ抑制トルクT2及び目標スリップ抑制トルクT_trcを決定する。ここで、F−s_3=F−s_1×(Ftrc_max1+ΔFtrc)/Ftrc_max1となる。このときの最大路面反力Ftrc_max3すなわち、slip_maxにおけるF−s_3は、F−s_1=Ftrc_max1なので、Ftrc_max1×(Ftrc_max1−ΔFtrc)/Ftrc_max1となる。
通信による遅れや、駆動系に存在するドライブシャフト等の剛性の低いもの等に起因する誤差が、路面反力やスリップ率に発生するおそれがあるが、上記手順により路面反力を補正すれば、前記誤差を低減することができる。その結果、駆動輪2にスリップが発生した場合には、より迅速かつ確実にグリップ状態へ回復させることができる。また、グリップ状態へ回復する際のショックも低減できる。
以上、この実施形態では、駆動輪がスリップ状態からグリップ状態へ設定時間で回復するための駆動輪加速度と、現時点における実際の駆動輪加速度とに基づいて、路面反力(摩擦パラメータ)を補正する。これによって、スリップ抑制制御の精度が向上する。なお、この実施形態及びその変形例で開示した構成を備えるものは、この実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。