JP4901593B2 - 地中食い込ませ型アンカー及びそのアンカー工法 - Google Patents

Description

本発明は、地上の構造物を土地に強固に固定させたり、弱い地盤を安定化させるために地中に埋設する地中食い込ませ型のアンカー及びそのアンカーを用いて施工されるアンカー工法に関する。

地上の構造物が土地から浮いたり移動したりしないように、その構造物を土地に強固に固定させようとする各種のアンカー工事が実施されている。
通常のアンカー工事においては、ドリルで地盤を深く穿削し、その掘削孔にアンカー材やロックボルトなどの鋼材を挿入してセメントミルク等のグラウト材を注入充填し、その鋼材の先端側を地盤に定着させる。
また地面にはコンクリート製などの受圧板を設置して、この受圧板とその鋼材の基端側と固定させることにより受圧板に固定される建造物などを土地に強固に固定させる工法（グラウンドアンカー工法と呼ばれる）が一般的に行われている。
この工法で施工した場合には、建造物を固定した受圧板が地盤などの地中の変化で移動されようとすると、地中で固まったグラウト材の引抜き抵抗力で鋼材が地中から引き抜けない構造となる。

しかしながら、充填されて掘削孔の形状に沿って固化しただけのグラウト部分の形状では、地盤に対する引抜き抵抗力には限りがあり、土地が軟弱又は脆弱である土砂地等では、それ自体が崩れやすく、受圧板に地面から大きな力が加えられると、その押圧力に引抜き抵抗力が負けて地盤からアンカーが抜け、その結果、建造物が傾くなどの異常事態を起こしてしまうことがある。
このため、より長尺なアンカーを使用して、地中により深く差し込むことで地中からの引抜き抵抗力を高めようとすることも実施されてはいるが、そのためには地中に相当に深く差し込まなければならないので、工期の長期化や施工の困難化、さらには工事費の上昇などの問題が生じる。

一方、下記特許文献１に記載のように、より深くアンカーを設置しなくても充分にアンカー効果が得られるように、ヒンジ部材が掘削孔の内壁に向けて広げられる拡張型のアンカーが提案されている。
特開２０００−７３３７４号公報

しかし、上記特許文献１の拡張型のアンカーでは、広げられるヒンジ部材を備えた拡底支持根が、ヒンジを介して連結された一対のヒンジ部材が周方向に数個ほど設けられ、それらのヒンジ部材の上下端部が鉄筋又は鋼棒アンカーで押圧されるとヒンジ部が外側に向かって折り曲がるが、その際、各ヒンジ部材の各鉄筋の長さは全て同じなので、同心円状に広がったヒンジ部材は掘削孔の不規則な壁面に最初の一つが突き当たると鉄筋又は鋼棒アンカーが押し引きできなくなってそれ以外のヒンジ部材は掘削孔の壁面まで到達できなくなるので全開状態になる前で止まって中途半端に広がった状態となってしまう。
そうなると、その後削孔にグラウト材を充填しても、掘削孔の壁面を押すようにヒンジ部材が殆ど拡張されてはいないので、期待したほど大きな引抜き抵抗力を得ることができなくなってしまう。
さらに、一つのアンカーに対して拡底支持根は一つなので、たまたま拡底支持根の当たる部分が脆弱な地盤であった場合には、充分な引抜き抵抗力を得ることができなくなってしまうという難点があった。

そこで本発明は、上記実情に鑑み、不規則な壁面の掘削孔に対して拡張される多数の金属部材が掘削孔の壁面に食い込むように膨出でき、且つたとえ膨出部分が当たったところに脆弱な地盤があったとしても、他の固い地盤の部分で充分に引抜き抵抗力を得ることができる地中食い込ませ型のアンカー及びそのアンカーを用いた工法を提供しようとすることを目的とする。

上記目的を達成するために、本発明の地中食い込ませ型アンカーは請求項１記載の発明にあっては、地中の掘削孔に差し込まれた金属製長尺筒体から注入されたグラウト材で掘削孔内の空間を充填し、固化したグラウト材と掘削孔の壁面との間の引抜き抵抗力によって前記長尺筒体の上部の受圧板に固定された地上構造物を支保するアンカーである。
前記アンカー本体は、前記長尺筒体の中間部位の一箇所又は複数箇所を一定の長さに分離して該分離箇所に、周面にグラウト材流出口を備えるとともに該長尺筒体の対向した分断端部に対して一方端部が固着され他方端部が前記長尺筒体に出没可能に形成した内筒体と、前記分離箇所を覆うように架設して外側へ僅か膨らみ状態に形成した多数の細長金属部材とを介在させて全体を一本に連結する。
前記長尺筒体の筒内には、分離された前記長尺筒体の上端側部分を除いた部分に、その分離部分毎に下端を接続し、上端を前記長尺筒体の上端開口部から引き出した一本又は複数本の引張りワイヤを備える。
そして、前記引張りワイヤの牽引で前記細長金属部材を膨出変形させた後、前記細長金属部材の周囲にグラウト材を充填して形成された膨出部によって強力な引抜き抵抗力が得られるようにしたことを特徴とする。

請求項２記載の発明にあっては、前記内筒体の外周面の中間部位にストッパーを突設するとともに、該ストッパーと固着されている端部との間の内筒体の周面にグラウト材流出口を開設したことを特徴とする。

請求項３記載の発明にあっては、前記長尺筒体の内壁にグラウト材流出口を備えた隔壁板を固設して該隔壁板に引張りワイヤの下端を接続したことを特徴とする。

請求項４記載の発明にあっては、前記請求項１から３のうちいずれかに記載の地中食い込ませ型アンカーを用いたアンカー工法である。
このアンカー工法は、予め地中に穿削した掘削孔に、請求項１から３のうちいずれかに記載の地中食い込ませ型アンカーの長尺筒体を挿入する地中挿入工程と、地上にワイヤ挿通口とグラウト材注入口を備えた受圧板を設置して、前記受圧板の引張りワイヤ挿通口に引張りワイヤを挿通させ、前記長尺筒体の上端部に該受圧板を固定する受圧板設置工程と、
前記各引張りワイヤのうち、前記長尺筒体の上側に固着した引張りワイヤから下へと順に引き寄せて、細長金属部材を掘削孔の壁面を押すように膨出変形させる細長金属部材膨出工程と、前記受圧板のグラウト材注入口から前記長尺筒体内へグラウト材を注入し、内筒体のグラウト材流出口から掘削孔内にグラウト材を充満させるグラウト材注入工程と、から成る。
そして、前記細長金属部材の周囲にグラウト材を充填して形成された膨出部によって強力な引抜き抵抗力が得られるようにしたことを特徴とする。

本発明の地中食い込ませ型アンカーは上記構成であり、引張りワイヤが、分離された前記長尺筒体の各部毎に接続されており、地中の掘削孔に挿入された前記長尺筒体の上端部から引き出した各引張りワイヤを強く牽引すると、長尺筒体の分離箇所に出没可能に形成した内筒体が長尺筒体に没入して分離間隔が狭められ、この際、その分離箇所を覆うように長尺筒体の分離箇所の対向端部に対して架設された細長金属部材が両端側から圧迫されて逃げ場を失い、外側に向けて膨出変形を起こす。
すると、細長金属部材が前記掘削孔の内周壁面に当たって、細長金属部材の膨出力により、軟弱地盤にあたると、細長金属部材が外側に突出するように変形しつつ掘削孔の内壁面を押し広げ、硬い地盤に当たると、部分的にその内壁面に沿って塑性変形を起こし、その掘削孔に沿って強く密着状態となる。
そして、グラウト材注入口から圧入されたグラウト材は前記内筒体のグラウト材流出口から掘削孔内に流入して充満し、この膨出部を埋めた状態で固化する。
即ち、細長金属部材を内部に含みんでグラウト材と一体となった強固な膨出部が形成され、この部分がアンカーとなって強力な引抜き抵抗力が得られるようになる。
この結果、長尺筒体に固定された受圧板と一体の地上構造物を地盤に対して強固に支保することが可能となる。

また前記長尺筒体の分離箇所を複数設けた形態では、それぞれ異なった深さの地盤に対して膨出部を形成することが可能となるので、たとえ数箇所の膨出部分が当たったところに脆弱な地盤があったとしても、他の固い地盤に当たった部分で充分強力な引抜き抵抗力を得ることが可能となる。
そして、本発明の地中食い込ませ型アンカーの全体で、地上構造物を地面に強固に支保することが可能となる。

本発明の実施の形態につき以下図面に基づいて説明する。
本発明は、地盤に構造物を支保するための地中食い込ませ型アンカーと、このアンカーを使用したアンカー工法に関した発明であるが、地中食い込ませ型アンカーについて先に説明する。

本発明の地中食い込ませ型アンカーは、図２に示すように、土地の法面から地中の地盤内に掘削孔１４を掘削して、この掘削孔１４に挿入させて使用するものであり、その掘削孔１４は、図１に示すように、法面に格子状のコンクリート枠１を打設し、その交点にプレキャストコンクリート枠２を施設してその中央に穿削する。
この場合、例えばコンクリート枠２に１２０ｍｍの穿削用孔３を設け、図１中の実線で示すように、その穿削用孔３から外径１００ｍｍの金属製長尺筒体４を掘削孔１４に挿入し、その上端部１６をコンクリート枠２に載置した受圧板１９に固定する。
この受圧板１９には引張りワイヤを挿通させるための引張りワイヤ挿通口５と前記金属製長尺筒体４の中を通して地中の掘削孔１４内にグラウト材を注入し充填するためのグラウト材注入口６を設ける。

アンカー本体は、図２に示すように、前記長尺筒体４の中間部位４ａ、４ｂ、４ｃを３部分に分離し、それらの分離箇所７を内筒体１２と細長金属部材１１とで接続してアンカー本体の全体が一本となるように直列に連結する。

前記長尺筒体４の分離箇所７は、前記長尺筒体４の全体の長さや、地盤の状況に応じた間隔で複数設けることができる。
即ち、前記分離箇所７を前記長尺筒体４の中間部位４ｂの一箇所だけ設けても、また図２及び図５に示すように、２数箇所にするなど、複数箇所に設けることができる。

さらに、詳しく前記分離箇所７の前記長尺筒体４の連結構造を説明すると、前記内筒体１２は両端部を前記長尺筒体４の対向端部にそれぞれ嵌合させ、図３及び図４に示すように、前記長尺筒体４の対向した分断端部に対して下端部１２ｃを固着するとともに上端部１２ａを前記長尺筒体４の上端部側部分４ａにスライド出没可能に形成する。

また、前記内筒体１２を中間部１２ｂの外周面にリング状のストッパー１３を周設し、前記長尺筒体４に固定された下端部４ｃと前記ストッパー１３との間の前記内筒体１２の周面にグラウト材流出口１５を開設する。
このストッパー１３は、前記内筒体１２が前記長尺筒体４に没入するとき、前記内筒体１２のグラウト材流出口１５が塞がれてしまうのを防ぎために設けるもで、このストッパー１３により、注入されたグラウト材がグラウト材流出口１５から掘削孔１４内に確実に流出させることが可能となる。

そして、図３及び図４に示すように、前記内筒体１２の周囲の前記分離箇所７全体を覆うように前記長尺筒体４の分離して対向する端部に多数の細長金属部材１１と架設し、それらに細長金属部材１１は外側へ僅か膨らみ状態に形成しておく。
前記内筒体１２の中央部の周囲に前記リング状のストッパー１３を高く突設させておけば、前記多数の細長金属部材１１はその中間部分１１ａが前記リング状のストッパー１３に接触し、そのストッパー１３の突出高さほど膨らんだように変形させておくことができる。

図３及び図４に示すように、前記細長金属部材１１を放射方向に予め屈曲しておくと、前記引張りワイヤ８を引いて前記長尺筒体４の分離間隔を縮めるよう前記長尺筒体４の対向両端部を圧迫したときに、前記引張りワイヤ８を引いて生じる長手方向の力のべクトルが放射状方向に屈曲させる力のべクトルに転換されるので、前記引張りワイヤ８を牽引する力が比較的小さい力でも細長金属部材１１の全本数を、図６及び図７に示すように、容易に放射状に外側に向けて膨出させることが可能になる。
この際の前記細長金属部材１１の膨出変形は、引張りワイヤ８を強く牽引し続けると、内筒体１２が前記長尺筒体４に没入するに従って、長尺筒体の上端部側部分４ａに前記ストッパー１３が突き当たるまで、図６及び図７に示すように、中央部全体を同心円状に更に大きく外に膨出させることが可能となる。
なお、前記細長金属部材１１の材質と太さは、強度が大きすぎると前記細長金属部材１１の中間部分１１ａの屈曲変形が困難となるので、銅や軟鉄などを使用すると良い。

また前記長尺筒体４の筒内に設ける引張りワイヤ８については、図２及び図５に示すように、分離された前記長尺筒体４の上端側部分４ａを除いた部分４ｂ、４ｃに、その分離部分毎に下端を接続し、上端を前記長尺筒体４の上端開口部から引き出した一本又は複数本必要数を備える。
前記各引張りワイヤ８は、直接前記長尺筒体４に固着することもできるが、グラウト材流出口１７ａを備えた隔壁板１７をその長尺筒体４の内壁に固設して、この隔壁板１７に対して前記各引張りワイヤ８の下端を固着しても良い。

そして、図２及び図５に示すように、前記各引張りワイヤの上端は受圧板１９に設けた引張りワイヤ挿通口５に下から上に通し、それらの引張りワイヤ８の上端部を前記受圧板１９の上から牽引できるようにする。
前記引張りワイヤ８の牽引については、図７に示すように、前記長尺筒体４の固定された前記受圧板１９上に、前記引張りワイヤを引き上げるためのナット１０を設けるとともにこのナット１０が羅着する雄ネジ部（図省略）をワイヤに形成し、この引張りワイヤ引き上げナット１０を回転させることにより引張りワイヤ８を前記細長金属部材１１な変形が可能となる力で強く牽引させる。
また、この外にも、ナットを使用するラチェット方式や、ワイヤ牽引用の機械や器具を用いることによって、前記引張りワイヤ８を前記細長金属部材１１が変形するとうに強く牽引させることが可能である。

次に、上記地中食い込ませ型アンカーを使用したアンカー工法について説明する。
この工法は、図２に示すように地中に穿削した掘削孔１４に地中食い込ませ型アンカーの長尺筒体４を挿入する地中挿入工程と、地上にワイヤ挿通口５とグラウト材注入口６を備えた受圧板１９を設置して、前記長尺筒体４の上端部に受圧板１９を固定する受圧板設置工程と、図５に示すように、前記各引張りワイヤ８を牽引して細長金属部材１１を膨出変形させる細長金属部材膨出工程と、前記長尺筒体４内へグラウト材を注入して掘削孔１４内にグラウト材を充満させるグラウト材注入工程の各工程順に作業が行われる。

各工程をさらに詳しくすると、まず前記地中挿入工程で、図２に示すように、予め地中に穿削した掘削孔１４の中に、上記地中食い込ませ型アンカーの長尺筒体４を地中に深く挿入する。
次に、前記受圧板設置工程で、地上面にワイヤ挿通口５とグラウト材注入口６を備えた受圧板１９を設置し、長尺筒体４中から引き出された引張りワイヤ８を該受圧板１９の引張りワイヤ挿通口５の下面側から上面側に挿通させる。そして、該受圧板１９を長尺筒体４の上端部に固定する。
前記引張りワイヤ８の下端部は、図３および図４に示すように、前記長尺筒体４の内壁に固着されるか、又は、前記長尺筒体４の内壁に隔壁板１７を固着して、この隔壁板１７に対して引張りワイヤが連結され、また前記内筒体１２は前記長尺筒体４にスライド没入可能となっている。

そして、前記細長金属部材膨出工程で、前記各引張りワイヤ８のうち、前記長尺筒体４の短いものから長いものへと順番に牽引して引き寄せる。この際、各引張りワイヤ８は、図５に示すように、細長金属部材１１を掘削孔１４の壁面を押すように充分に膨出変形させてから次の引張りワイヤ８を牽引して、細長金属部材１１の全部を膨出変形させる。
前記引張りワイヤ８の牽引については、前記長尺筒体４の固定された前記受圧板１９上に、前記引張りワイヤを引き上げるためのナット１０を設けるとともにこのナット１０が羅着する雄ネジ部をワイヤに形成し、この引張りワイヤ引き上げナット１０を回転させることにより引張りワイヤ８を引き上げることができるが、この外にも、ナットを使用するラチェット方式や、ワイヤ牽引用の機械や器具を用いることも可能である。

上記の如く前記引張りワイヤを牽引すると、図５に示すように、その引き寄せ長さに応じて、前記引張りワイヤ８の下端部に連結された前記長尺筒体４が、前記内筒体１２が前記長尺筒体４にスライド没入することによって上方に引き寄せられ、この際多数の細長金属部材１１が上下両側から押圧されて、それぞれが放射状に膨出変形を起こす。

そして、図７に示すように、引張りワイヤ固定部９にて緊結されている引張りワイヤ８を矢印Ａ方向に引き上げるに従って、引張りワイヤ固定部９と一体化している引張りワイヤ隔壁板１７およびその引張りワイヤ隔壁板１７と一体化している内筒体１２及び長尺筒体の中間部側部分４ｂが矢印Ｂで示すように上方に移動しながら内筒体１２の上部が長尺筒体４の上端部側部分４ａの中に没入して行き、ストッパー１３と接触状況にあった多数の細長金属部材１１が次第にストッパー１３から離れ、矢印Ｃ方向に放射状に膨出して行く。
そして、前記多数の細長金属部材１１が掘削孔１４に対して、この膨出変形する押圧力により掘削孔１４の内壁を押し広げつつ、細長金属部材１１がその内壁に食い込むように密着する。
これだけでも、細長金属部材１１の掘削孔１４の内壁に対する抵抗でアンカーとして働きが生じる。

なお、この際長い引張りワイヤ８のほうを先に引いて深い方を先に膨出変形させてしまうと、この部分の細長金属部材１１は掘削孔１４に固定されてしまい、引張りワイヤ８を引いても前記長尺筒体４を引き寄せることができなくなるので全部の細長金属部材１１を膨出変形させることができなくなる。したがって前記各引張りワイヤ８は必ず短いものから長いものへと順番に引き寄せまければならない。

次に、前記グラウト材注入工程で、前記受圧板１９のグラウト材注入口６から前記長尺筒体４内へグラウト材を圧入すると、長尺筒体内を通って前記内筒体１２のグラウト材流出口１５から太い白線で示すように流れて、掘削孔１４内にグラウト材が充満されるように放出される。そして、その後そのまま放置すればグラウト材が固化し、地盤や岩盤が強化され長尺筒体４も固定されることはもちろん、前記細長金属部材１１を内部に含みグラウト材と一体となった強固な膨出部が膨出グラウト材団塊のアンカーとなって、この部分の強力な引抜き抵抗力によって前記長尺筒体４は強力な引抜き力に遭遇しても全く引き抜けなくなる。

この膨出部分は中間の深さに位置する複数の間隔を置いて形成され、全てが地中に食い込んだ状態となるので、全体とすると極めて大きな引抜き抵抗力が得られ、地上の構造物を確実に支保することが可能となる。

なお、地中への挿入部分の前記長尺筒体４の長さ及び膨出部分の数は、地盤、岩盤の状況に応じて決定することができる。

本発明は、地上の建造物を地盤に対して安定させるだけではなく、トンネル内の湾曲面などの強化や地表の安定化を図るために行われる各種土木工事においける軟弱土砂層や軟質岩盤層などのある軟弱地盤の補強に利用することが可能である。

地中に本発明のアンカーを埋設してコンクリート枠を設けた状態を示す平面図である。 本発明の地中食い込ませ型アンカーを地中へ挿入した状態を示す縦断側面図である。 長尺筒体の分離箇所における一部を切欠した要部を示す斜視図である。 図３の断面図である。 地中の細長金属部材を膨出変形させた状態を示す縦断側面図である。 細長金属部材を膨出変形させた状態の長尺筒体の分離箇所における一部を切欠した要部を示す斜視図である。 掘削孔内で細長金属部材を膨出変形させた状態を示す要部の縦断側面図である。

符号の説明

Ａ 引張りワイヤの牽引方向を示す矢印
Ｂ 長尺筒体の牽引方向を示す矢印
Ｃ 細長金属部材の膨出方向を示す矢印
１ コンクリート枠
２ プレキャストコンクリート枠
３ コンクリート枠の穿削用孔
４ 金属製長尺筒体
４ａ 長尺筒体の上端部側部分
４ｂ 長尺筒体の中間部側部分
４ｃ 長尺筒体の下端部側部分
５ 受圧板の引張りワイヤ挿通口
６ 受圧板のグラウト材注入口
７ 長尺筒体の分離箇所
８ 引張りワイヤ
９ 引張りワイヤの固定部
１０ 引張りワイヤ引き上げナット
１１ 細長金属部材
１１ａ 細長金属部材の中間部分
１１ｂ 細長金属部材の上端側部分
１１ｃ 細長金属部材の下端側部分
１２ 内筒体
１２ａ 内筒体の上端部
１２ｂ 内筒体の中間部
１２ｃ 内筒体の下端部
１３ ストッパー
１４ 掘削孔
１５ グラウト材流出口
１６ アンカーの上端部
１７ 隔壁板
１７ａ 隔壁板のグラウト材流出口
１８ アンカーの先端部
１９ 受圧板

Claims (4)

1. 地中の掘削孔に差し込まれた金属製長尺筒体から注入されたグラウト材で掘削孔内の空間を充填し、固化したグラウト材と掘削孔の壁面との間の引抜き抵抗力によって前記長尺筒体の上部の受圧板に固定された地上構造物を支保するアンカーであって、
   前記アンカー本体は、前記長尺筒体の中間部位の一箇所又は複数箇所を一定の長さに分離して該分離箇所に、周面にグラウト材流出口を備えるとともに該長尺筒体の対向した分断端部に対して一方端部が固着され他方端部が前記長尺筒体に出没可能に形成した内筒体と、前記分離箇所を覆うように架設して外側へ僅か膨らみ状態に形成した多数の細長金属部材とを介在させて全体を一本に連結し、
   前記長尺筒体の筒内には、分離された前記長尺筒体の上端側部分を除いた部分に、その分離部分毎に下端を接続し、上端を前記長尺筒体の上端開口部から引き出した一本又は複数本の引張りワイヤを備え、
   前記引張りワイヤの牽引で前記細長金属部材を膨出変形させた後、前記細長金属部材の周囲にグラウト材を充填して形成された膨出部によって強力な引抜き抵抗力が得られるようにしたことを特徴とする地中食い込ませ型アンカー。
2. 内筒体の外周面の中間部位にストッパーを突設するとともに、該ストッパーと固着されている端部との間の内筒体の周面にグラウト材流出口を開設したことを特徴とする請求項１に記載の地中食い込ませ型アンカー。
3. 長尺筒体の内壁にグラウト材流出口を備えた隔壁板を固設して該隔壁板に引張りワイヤの下端を接続したことを特徴とする請求項１又は２に記載の地中食い込ませ型アンカー。
4. 請求項１から３のうちいずれかに記載の地中食い込ませ型アンカーを用いたアンカー工法であって、
   予め地中に穿削した掘削孔に、請求項１から３のうちいずれかに記載の地中食い込ませ型アンカーの長尺筒体を挿入する地中挿入工程と、
   地上にワイヤ挿通口とグラウト材注入口を備えた受圧板を設置して、前記受圧板の引張りワイヤ挿通口に引張りワイヤを挿通させ、前記長尺筒体の上端部に該受圧板を固定する受圧板設置工程と、
   前記各引張りワイヤのうち、前記長尺筒体の上側に固着した引張りワイヤから下へと順に引き寄せて、細長金属部材を掘削孔の壁面を押すように膨出変形させる細長金属部材膨出工程と、
   前記受圧板のグラウト材注入口から前記長尺筒体内へグラウト材を注入し、内筒体のグラウト材流出口から掘削孔内にグラウト材を充満させるグラウト材注入工程と、
   から成り、前記細長金属部材の周囲にグラウト材を充填して形成された膨出部によって強力な引抜き抵抗力が得られるようにしたことを特徴とする地中食い込ませ型アンカー工法。

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