以下に、本発明のプラスチックラベルについて、さらに詳細に説明する。
本発明のプラスチックラベルは、プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面側に、溶剤型インキによる印刷層(「印刷層A」という)が形成され、さらに印刷層Aのプラスチックフィルムと反対側の表面に、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキによる印刷層(「印刷層B」という)が他の層を介さずに形成されている。なお、上記において、印刷層Aはプラスチックフィルムの表面に他の層を介さずに形成されていてもよいし、アンカー層などの他の層を介して設けられていてもよい。また、上記プラスチックフィルム、印刷層A、印刷層Bはそれぞれ多層構造を有していてもよい。さらに、本発明のプラスチックラベルは、上記の他にも、コーティング層(接着層等)や樹脂フィルム層などの他の層を有していてもよい。
[プラスチックフィルム]
本発明のプラスチックラベルは、プラスチックフィルム層を有する。プラスチックフィルムは、本発明のプラスチックラベルの基材層であり、印刷層の担体となり、ラベルの強度、剛性や収縮特性を担う役割を担う。
本発明のプラスチックラベルに用いられるプラスチックフィルムの種類は、要求物性、用途、コストなどに応じて、適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂を用いることができる。中でも好ましくは、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂であり、さらに好ましくは、ポリエステル系樹脂である。
上記ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とで構成される種々のポリエステルが挙げられる。ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トランス−3,3’−スチルベンジカルボン酸、トランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸、4,4’−ジベンジルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、及びこれらの置換体等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸、ドコサン二酸、1,12−ドデカンジオン酸、及びこれらの置換体等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの置換体等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2,4−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等の脂環式ジオール;2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等のビスフェノール系化合物のエチレンオキシド付加物、キシリレングリコール等の芳香族ジオールなどが挙げられる。これらのジオール成分は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
前記ポリエステル系樹脂は、上記以外にも、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸;安息香酸、ベンゾイル安息香酸等のモノカルボン酸;トリメリット酸等の多価カルボン酸;ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル等の1価アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールなどの構成単位を含んでいてもよい。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂は、特に限定されないが、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリエチレンテレフタレート(PET)、ジカルボン酸成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)や、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を共重合成分として用いた共重合ポリエステル(CHDM共重合PET)が好ましい。コスト、生産性等の観点で、特に好ましくはPETである。さらに、低温収縮性向上の観点で、ジエチレングリコールを共重合していてもよい。
上記ポリスチレン系樹脂は、構成モノマーとして、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体を1種又は2種以上含み、且つ製膜性を示す樹脂であれば特に限定されない。このようなポリスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体である一般ポリスチレン(GPPS)、スチレン系単量体の単独又は共重合体;ポリスチレンと合成ゴム(例えば、ポリブタジエンやポリイソプレン等)の混合物、合成ゴムにスチレンをグラフト重合させた高衝撃性ポリスチレン(HIPS);スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体などに代表される、スチレン系単量体とブタジエンやイソプレン等の共役ジエンの共重合体(特に、ブロック共重合体)であるスチレン−共役ジエン共重合体;スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体などの共重合体であるスチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体;スチレン−共役ジエン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体;スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体との共重合体の連続相中にゴム状弾性体を分散させ、該ゴム状弾性体に前記共重合体をグラフト重合させた透明・高衝撃性ポリスチレン(グラフトTIPS)等が挙げられる。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリメチルペンテン(PMP)等の単独重合体;エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体等のランダム共重合体;環状オレフィンとα−オレフィン(エチレン、プロピレン等)との共重合体又はそのグラフト変性物、環状オレフィンの開環重合体若しくはその水添物又はそれらのグラフト変性物等の非晶性環状オレフィン系重合体等が挙げられる。上記の中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒系LLDPE(mLLDPE)などのポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのプロピレン系ランダム共重合体が好ましい。また、これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は2種以上混合して使用できる。
本発明のプラスチックフィルムは、単層フィルムであってもよいし、要求物性、用途などに応じて、複数のフィルム層を積層した積層フィルムであってもよい。また、積層フィルムの場合、異なる樹脂からなるフィルム層を積層していてもよい。例えば、中心層と表層部(内層、外層)からなる3層積層フィルムで、中心層がポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂からなり、表層がポリエステル系樹脂からなるフィルム等であってもよい。また、要求物性、用途などに応じて、未延伸フィルム、1軸配向フィルム、2軸配向フィルムのいずれを用いてもよい。特に、プラスチックラベルがシュリンクラベルである場合には、1軸または2軸配向フィルムが用いられることが多く、中でも、フィルム幅方向(ラベル周方向となる方向)に強く配向しているフィルム(実質的に幅方向に1軸延伸されたフィルム)が一般的に用いられる。
上記プラスチックフィルムは、溶融製膜または溶液製膜などの慣用の方法によって作製することができる。また、市販のプラスチックフィルムを用いることも可能である。プラスチックフィルムの表面には、必要に応じて、コロナ放電処理やプライマー処理等の慣用の表面処理が施されていてもよい。
上記プラスチックフィルムの熱収縮率(90℃、10秒)は、特に限定されないが、例えばシュリンクラベル用途の場合であれば、シュリンク加工性等の観点から、長手方向、幅方向のうち一方向が−3〜15%、他の一方向が20〜80%が好ましい。
上記プラスチックフィルムの厚みは、用途によって異なり、特に限定されないが、10〜200μmが好ましく、例えば、シュリンクラベル用途の場合には、20〜80μmが好ましく、さらに好ましくは30〜60μmである。
本発明のプラスチックフィルムは、市販品を用いてもよく、例えば、東洋紡(株)製「スペースクリーン S7042」、三菱樹脂(株)製「LX−10S」(以上、ポリエステル系フィルム);グンゼ(株)製「GMLS」(ポリスチレン系フィルム);グンゼ(株)製「FL」(ポリオレフィン系フィルム)などが挙げられる。
[印刷層A]
本発明のプラスチックフィルムの表面には、溶剤型インキを塗工することにより、印刷層Aが形成されている。印刷層Aは、いわゆるカラー印刷層として好ましく用いられ、加飾のためのデザインや商品名、商品説明、バーコードなどを表示する役割を担う。なお、上記溶剤型インキには、水を溶媒として含むいわゆる水性インキも含むものとする。
本発明の印刷層Aを形成する溶剤型インキは、バインダー樹脂、有機溶剤を必須の構成成分とする。さらに、溶剤型インキには、着色剤を含有することが好ましい。
本発明の溶剤型インキにおけるバインダー樹脂は、非共有電子対を有する窒素原子を含まない樹脂である。このような樹脂としては、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。中でも、プラスチックフィルムへの密着性(接着性)の観点から好ましくは、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂であり、特に好ましくは、アクリル系樹脂/セルロース系樹脂の混合樹脂である。
上記バインダー樹脂であるアクリル系樹脂を構成する単量体成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C1-12アルキルエステル等];(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和化合物又はその無水物;2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル[好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-8アルキルエステル等]などが挙げられる。
また、上記のほか、必要に応じて、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エチレン、プロピレンなどのオレフィン類やジエン類などの重合性不飽和化合物を単量体成分として用いることもできる。
本発明で用いられるアクリル系樹脂としては、東亞合成(株)製「アルフォン」、三菱レイヨン(株)製「ダイヤナール」、ジョンソンポリマー製「ジョンクリル」などが市場で入手可能である。
上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は8000〜50000が好ましく、より好ましくは9000〜40000である。重量平均分子量が8000未満の場合には、接着性、インキ割れなどの塗膜物性が不十分となる。また、重量平均分子量が50000を超えると、粘度が上昇し、グラビア印刷時に適当とされる粘度に調整する際により多量の希釈溶剤が必要となり、そのため印刷性が低下する。なお、上記重量平均分子量はアクリル系樹脂全体での値を意味する。従って、アクリル系樹脂として単量体組成の異なる2種以上のポリマーをブレンドして使用する場合には、重量平均分子量が上記範囲外のポリマーを用いることもできるが、重量平均分子量が上記の範囲内のポリマー同士をブレンドするのが好ましい。
上記アクリル系樹脂の酸価は、特に限定されないが、0.1〜120mg−KOH/gの範囲が好ましい。酸価が0.1mg−KOH/g未満である場合には、ポリエステル系フィルムに対する塗膜の接着性が不十分になりやすく、120mg−KOH/gを超えると、塗膜の耐アルカリ性が低下しやすくなる。アクリル系樹脂の水酸基価は、特に限定されないが、0.1〜120mg−KOH/gの範囲が好ましい。水酸基価が0.1mg−KOH/g未満の場合には、セルロース系樹脂と混合する場合には相溶性が低下しやすく、120mg−KOH/gを超えると、塗膜の耐熱水性が低下しやすくなる。なお、上記の酸価及び水酸基価は、それぞれアクリル系樹脂全体での値を意味する。アクリル系樹脂として単量体組成の異なる2種以上のポリマーをブレンドして使用する場合には、該アクリル系樹脂の酸価(又は水酸基価)は各ポリマーの酸価(又は水酸基価)と各ポリマーの重量比より、計算で求めることができる。
上記アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、35〜80℃の範囲であるのが好ましい。ガラス転移温度が35℃未満では、印刷層の物性が低下し、シュリンクラベルの場合には、例えばシュリンク工程でインキ割れが発生しやすくなる。また、ガラス転移温度が80℃を超えると印刷適性が低下するとともに、この場合にもインキ割れが発生しやすくなる。
上記バインダー樹脂であるセルロース系樹脂としては、ニトロセルロース(硝化綿)樹脂や、セルロースアセテートブチレート(CAB)樹脂、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等のエステル化されたセルロース樹脂が好ましく例示される。
上記ニトロセルロース樹脂としては、窒素分10〜14%が好ましく、より好ましくは10.0〜12.5%である。ニトロセルロースの平均重合度は30〜100の範囲が好ましく、より好ましくは45〜95である。平均重合度が30未満ではニトロセルロースの添加効果が小さく、平均重合度が100を超えると、溶剤型インキの粘度が上昇し、グラビア印刷時に適当とされる粘度に調整する際により多量の希釈溶剤が必要となり、そのため印刷性が低下する傾向となる。
上記エステル化セルロース樹脂としては、樹脂中の水酸基の中で0.5〜80%がエステル化されていることが好ましく、より好ましくは2〜70%である。エステル化セルロース樹脂の重量平均分子量は12000〜75000の範囲が好ましく、より好ましくは12000〜65000である。重量平均分子量が12000未満ではエステル化セルロースの添加効果が小さく、75000を超えると、溶剤型インキの粘度が上昇し、グラビア印刷時に適当とされる粘度に調整する際により多量の希釈溶剤が必要となり、そのため印刷性が低下する傾向となる。
また、上記セルロース系樹脂は、アクリル系樹脂と混合することにより、プラスチックフィルムに対する印刷層Aの密着性(接着性)、塗膜の強靱性、硬さ、耐インキ割れ性が向上するため好ましい。その場合の、アクリル系樹脂とセルロース系樹脂との割合は、アクリル系樹脂/セルロース系樹脂(重量比)=50/50〜99.5/0.5の範囲が好ましく、より好ましくは60/40〜90/10である。この割合が50/50よりも低いと、プラスチックフィルムとしてポリスチレン系フィルムを用いた場合の密着性が不十分となり、99.5/0.5よりも高いと、ポリエステル系フィルムに対する密着性が不十分となる。
本発明においては、上記のような非共有電子対を有する窒素原子を含まないバインダー樹脂を用いることが必要である。非共有電子対を有する窒素原子を含む構造としては、例えば、ウレタン結合、アミノ基、アミド基などが挙げられ、該構造を含む樹脂(本発明でバインダー樹脂として用いることのできない樹脂)としては、代表的にはウレタン系樹脂が挙げられる。ウレタン系樹脂は、プラスチックフィルムへの密着性の観点から、グラビア印刷インキ用バインダー樹脂としては、一般的に用いられる樹脂である。しかし、これらの非共有電子対を有する窒素原子を含む樹脂をバインダー樹脂に用いた場合には、その上に塗工したカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキの硬化性が著しく低下し、工業上十分な生産性を得られなくなる。この硬化阻害機構の詳細は明らかではないが、活性エネルギー線照射により発生させたカチオン重合を開始させるプロトンと、窒素原子上の非共有電子対が配位結合することにより、重合反応(硬化反応)が阻害されることが一因であると推定される。
本発明の溶剤型インキにおける有機溶剤としては、グラビア印刷やフレキソ印刷等の印刷インキに通常用いられる溶剤等を用いることができ、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステルなどが例示される。これらの中でも、溶解性、安全性の観点から、酢酸エステル類、アルコール類が好ましい。有機溶媒は単独で又は2種以上を混合して使用できる。上記有機溶剤は、溶剤型インキをプラスチックフィルムに塗布した後、乾燥により除去することができる。
本発明の溶剤型インキには、カラーインキとするために、染料、顔料などの着色剤を添加することが好ましい。中でも、着色性の観点から、有機、無機の着色顔料が好ましく用いられる。溶剤型インキに用いられる顔料としては、例えば、酸化チタン(二酸化チタン)等の白顔料、銅フタロシアニンブルー等の藍(青色)顔料、縮合アゾ系顔料などの赤色顔料、アゾレーキ系顔料等の黄色顔料、カーボンブラック、アルミフレーク、雲母(マイカ)等が用途に合わせて選択、使用できる。また、顔料として、その他にも、光沢調製などの目的で、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アクリルビーズ等の体質顔料も使用できる。
上記顔料の平均粒径(凝集体を形成している場合には、凝集体の粒径、いわゆる2次粒径)は、例えば0.01〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μm、より好ましくは0.15〜0.5μmである。平均粒径が0.01μm未満では加飾性が不足する場合があり、1μmを超えるとグラビア印刷の際にいわゆる「版かぶり」(版の画線部以外の部分のインキ掻き取り不良による印刷不良)を生じる場合がある。顔料の含有量は、顔料の種類や目的の色の濃度等により任意に設計できるが、溶剤型インキの総重量に対して、0.1〜70重量%程度が好ましく、より好ましくは1〜50重量%である。
本発明の溶媒型インキは、上記バインダー樹脂(アクリル系樹脂、セルロース系樹脂など)、有機溶剤、着色剤等を混合することにより製造する。その他の添加剤を用いる場合には、同時に混合する。混合は、公知慣用の混合方法を使用することができ特に限定されないが、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ポニーミキサー、ディゾルバー、タンクミキサー、ホモミキサー、ホモディスパーなどのミキサーや、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ラインミルなどのミル、ニーダーなどが用いられる。混合の際の混合時間(滞留時間)は10〜120分が好ましい。得られたインキ組成物は、必要に応じて、濾過してから用いてもよい。
本発明の溶剤型インキの粘度(23±2℃)は、特に限定されないが、例えば、グラビア印刷により塗工される場合には、10〜2000mPa・sが好ましく、より好ましくは20〜1000mPa・sである。粘度が2000mPa・sを超える場合には、グラビア印刷性が低下し、「かすれ」などが生じて、加飾性が低下する場合がある。また、粘度が10mPa・s未満の場合には、顔料や添加剤が沈降しやすくなる等、貯蔵安定性が低下する場合がある。溶剤型インキの粘度は、バインダー樹脂の種類、添加量、増粘剤、減粘剤等によって制御することが可能である。なお、本明細書中、「粘度」とは、特に限定しない限り、E型粘度計(円錐平板形回転粘度計)を用い、23±2℃、円筒の回転数50回転の条件下、JIS Z 8803に準じて測定した値を意味している。
本発明の溶剤型インキのチキソ性は低い方が好ましく、チキソトロピックインデックス(TI値)は、20未満が好ましく、より好ましくは15未満、さらに好ましくは10未満である。TI値が20以上の場合には、グラビア、フレキソ印刷性が低下し、生産性が低下する場合がある。
本発明においては、印刷層Aを溶剤型インキとすることにより、顔料の分散性がよく、添加する顔料の種類、含有量の自由度も高く、インキの塗工性も良好である。このため、デザイン性に優れたカラー印刷が可能となる。また、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキと比較して安価であるため、印刷層の一部に溶剤型インキを用いることにより、製造コスト面でも有利となる。
[印刷層B]
本発明のプラスチックラベルは、前記印刷層Aの表面上に、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキを塗工することにより、印刷層Bが形成されている。印刷層Bは、カラー印刷表示のベース、つや出し、つや消し等の役割と共に印刷層Aを被覆することにより、耐溶剤性、耐スクラッチ性などの表面耐性を付与する等の役割を担う層であり、主に白色印刷層、クリア(透明)印刷層、マット印刷層などである。
本発明の印刷層Bを形成するカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキは、可視光、紫外線、電子線などの活性エネルギー線によってカチオン重合により硬化させることができるカチオン重合性及び活性エネルギー線硬化性のインキ組成物である。活性エネルギー線の中でも、特に紫外線硬化性、近紫外線硬化性であることが好ましい。好ましい吸収波長は200〜460nmである。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキは、熱硬化性の場合と異なり、シュリンクフィルムなどの熱により変形を起こしやすい基材にも好適に用いられる。また、ウレタンアクリレート系樹脂などのラジカル重合性インキと異なり、臭気が少ないため、飲料用途など幅広い分野で使用することができる。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキは、カチオン重合性及び活性エネルギー線硬化性を有しておればよく、エポキシ系、ビニルエーテル系、オキセタン系などの公知慣用のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型樹脂を含むインキ組成物を用いることができるが、中でも、硬化性(硬化速度)と硬化後の印刷層の強靱性、表面耐性の観点から、オキセタン化合物(以下、成分aという)、エポキシ化合物(以下、成分bという)を必須の構成成分とするオキセタン/エポキシ混合系のインキ組成物であることが好ましい。さらに、特にインキが白顔料を含む場合などには、シリコーン化合物(以後、成分cという)を含有することにより、硬化性、印刷層Aとの密着性が一層向上するため好ましい。なお、上記成分a、成分bには、オキセタニル基、エポキシ基を有するシリコーンは含まないものとする。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキが白色インキなどの着色インキである場合には、上記成分に加え、さらに顔料などの着色剤を含有することが好ましい。また、活性エネルギー線硬化性を発現させるために光カチオン重合開始剤(以下、光重合開始剤という)を含有することが好ましい。また、その他の機能付与の目的で、他の樹脂成分、増感剤、分散剤、酸化防止剤、香料、消臭剤、安定剤、滑剤、色別れ防止剤等を、本発明の効果を損なわない程度に、添加してもよい。
上記成分aは、分子内に少なくとも1つのオキセタニル基を有する化合物であり、モノマーまたはオリゴマーのいずれでもよい。例えば、特開平8−85775号公報や特開平8−134405号公報に記載されたオキセタン化合物を用いることができ、中でも、1分子中にオキセタニル基を1個または2個有する化合物が好ましい。1分子中にオキセタニル基を1個有する化合物としては、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタンなどが挙げられる。1分子中にオキセタニル基を2個有する化合物としては、1,4−ビス[[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル]ベンゼン、ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテルなどが挙げられる。さらにこれらの中でも、コーティング加工適性の観点や、コーティング層の硬化性の観点から、特に好ましくは、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテルである。
上記成分aは、トリメチロールプロパンとジメチルカーボネートなどから製造されるオキセタンアルコールとハロゲン化物(例えば、キシレンジクロライド)により既知の方法に従って製造することができる。なお、成分aとしては、既存のオキセタン化合物を用いてもよく、例えば、東亞合成(株)製「アロンオキセタン OXT−101、121、211、221、212」などが市販品として入手可能である。
上記成分bは、分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有する公知のエポキシ化合物を用いることができ、例えば、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物や芳香族エポキシ化合物を用いることができる。中でも、高反応速度の観点から、グリシジル基を有する化合物やエポキシシクロヘキサン環を有する化合物が好ましく、2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましい。例えば、脂肪族エポキシ化合物としては、プロピレングリコールグリシジルエーテルなどが挙げられる。また、脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートなどが挙げられる。芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールAのグリシジルエーテル縮合物、ノボラック樹脂やクレゾール樹脂のエピクロルヒドリン変性物などが挙げられる。
上記成分bは、エピクロルヒドリンおよびビスフェノールAからの合成など、一般的な方法によって合成されるものを用いることができ、例えば、ダイセル化学工業(株)製「セロキサイド 2021」、「セロキサイド 2080」、「エポリード GT400」やダウケミカル(株)製「UVR6110」などが市販品として入手可能である。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキ中における、成分aと成分bの配合比(重量比)は、2:8〜8:2(成分a/成分bが0.25〜4)が好ましく、グラビア、フレキソ印刷でコーティングする場合は、4:6〜8:2(成分a/成分bが2/3〜4)が好ましく、より好ましくは5:5〜8:2(成分a/成分bが1〜4)である。上記範囲よりも成分aの量が多くなると、インキの硬化反応の開始速度が遅くなって、硬化に時間がかかるため生産性が低下したり、通常の硬化工程では未硬化となる場合がある。また、上記範囲よりも成分bの量が多くなると、インキの粘度が大きくなってグラビア印刷やフレキソ印刷などのコーティング法で均一に塗布することが困難となったり、硬化反応の停止反応が起こりやすく、低分子量の硬化物となり、硬化後の印刷層がもろくなる場合がある。
上記成分aと成分bの合計の添加量は、塗工性、硬化性等の観点から、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキの全量に対して、30〜99重量%が好ましい。中でも、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキがクリアインキである場合には、60〜99重量%が好ましく、より好ましくは70〜90重量%である。また、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキが顔料を含む着色インキである場合には、30〜90重量%が好ましく、マットインキである場合には、40〜85重量%が好ましい。
上記成分cであるシリコーン化合物(シリコーンオイル)は、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであり、メチル基、フェニル基以外の置換基を有しないストレートシリコーン化合物(ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンなど)であってもよいし、側鎖または末端にメチル基、フェニル基以外の置換基を有する変性シリコーン化合物であってもよい。
上記成分cとしては、上記の中でも、硬化性の観点から、変性シリコーン化合物が好ましい。変性シリコーン化合物のベースとなるシリコーンは、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであればよく、例えば、全ての側鎖、末端がメチル基からなるジメチルシリコーン、側鎖の一部にフェニル基を含むメチルフェニルシリコーン、側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンなどが挙げられる。中でも、好ましくは、ジメチルシリコーンである。変性シリコーン化合物における置換基の結合位置は特に限定されず、主鎖の両末端(両末端型:下記構造式(1))または片末端(片末端型:下記構造式(2))に有していてもよいし、側鎖(側鎖型:下記構造式(3))に有していてもよく、例えば、下記の構造式で表される。さらに、側鎖および末端(両末端、片末端)に置換基を有していてもよい。
なお、式中のX1、X2は置換基(メチル基、フェニル基以外)である。また、式中のR1、R2、R3は水素原子または炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。さらに、式中のm、nは、1以上の整数である。
上記変性シリコーンにおける置換基としては、例えば、エポキシ基、フッ素原子、アミノ基、カルボキシル基、脂肪族ヒドロキシル基(アルコール性水酸基)、芳香族ヒドロキシル基(フェノール性水酸基)、(メタ)アクリロイル基含有の置換基、ポリエーテル鎖を含有する置換基などが挙げられる。これらの置換基を有する変性シリコーンとしては、例えば、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、(メタ)アクリル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、ジオール変性シリコーンなどが例示される。中でも、特に好ましくは、ポリエーテル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーンである。
また、成分cには、上記に挙げた置換基の他にも、アルキル基および/またはアラルキル基等の有機基が含まれていてもよい。
本発明の成分cがエポキシ変性シリコーンである場合には、置換基であるエポキシ基としては、酸素原子が環状脂肪族骨格を含まないもの(左図:脂肪族エポキシ基と称する)であってもよいし、エポキシ基の酸素原子が環状脂肪族骨格を含んで形成されたもの(右図:脂環式エポキシ基と称する)であってもよい。
なお、式中のR
4、R
5は水素原子または炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。上記エポキシ変性シリコーンにおけるエポキシ基の官能基当量は、硬化性の観点から、300〜5000が好ましく、より好ましくは、400〜4000である。
上記成分cがフッ素変性シリコーンである場合には、置換基としては、特に限定されないが、例えば[−R6CF3]等のフッ素化アルキル基が好ましく、具体的には−CH2CH2CF3、−C3H6CF3などが例示される。なお、R6は炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。上記フッ素変性シリコーンの粘度(23±2℃)は100000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは50000mPa・s以下である。粘度が100000mPa・sを超える場合には、インキの粘度が高くなり、塗工性が低下する場合がある。
上記成分cがアミノ変性シリコーンである場合には、置換基はアミノ基を含む置換基であり、特に限定されないが、[−R7NH2]、[−R8NH−R9NH2]、[−R10NHC6H11]などで表されるアミノアルキル基などが好ましく、具体的には、−C3H6NH2、−C3H6NHC6H11などが例示される。なお、R7、R8、R9、R10は炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。上記アミノ変性シリコーンの粘度(23±2℃)は100000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは50000mPa・s以下である。粘度が100000mPa・sを超える場合には、インキの粘度が高くなり、塗工性が低下する場合がある。また、アミノ変性シリコーンの官能基当量(単位:g/mol)は、500以上(例えば、500〜60000)であり、より好ましくは700〜60000である。官能基当量が500未満の場合には硬化阻害が生じて硬化反応が十分に進まない場合があり、60000を超えて過剰である場合には添加の効果(密着性や硬化速度向上)が得られない場合がある。
上記成分cが(メタ)アクリル変性シリコーンである場合には、置換基としては(メタ)アクリロイル基を含む置換基であり、特に限定されないが、[−R11OCOCH=CH2]、[−R12OCOC(CH3)=CH2]などが好ましく、具体的には−C3H6OCOC(CH3)=CH2、−C3H6OCOCH=CH2などが例示される。なお、R11、R12は炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。上記(メタ)アクリル変性シリコーンの官能基当量(単位:g/mol)は、20000以下(例えば、50〜20000)であり、より好ましくは100〜15000である。官能基当量が20000を超える場合には添加の効果が得られない場合がある。
上記成分cがポリエーテル変性シリコーンである場合には、置換基としてはエーテル結合を含む2以上の繰り返し単位を含む置換基であり、特に限定されないが、[−R13(C2H4O)aR14]、[−R15(C3H6O)bR16]、[−R17(C2H4O)c(C3H6O)dR18]で表されるエチレンオキシド、プロピレンオキシド単位を主成分とする有機基が好ましく例示される。なお、R13、R14、R15、R16、R17、R18は炭化水素基であり、a、bは6〜30、c、dは1〜20程度の整数である。上記ポリエーテル変性シリコーンの粘度(23±2℃)は100000mPa・s以下が好ましく、より好ましくは50000mPa・s以下である。粘度が100000mPa・sを超える場合には、インキの粘度が高くなり、塗工性が低下する場合がある。また、ポリエーテル変性シリコーンのHLB値(Hydrophile−Lipophile Balance)は、特に限定されないが、相溶性の観点から、0〜12が好ましく、より好ましくは0〜10である。HLB値が12を超えて親水性が高い場合には、相溶性が低下する場合がある。
上記成分cがカルビノール変性シリコーンである場合、置換基は[−R19OH]で表され、具体的には、例えば、−C3H6OC2H4OH、−C3H6OH等が例示される。ジオール変性シリコーンの場合には、置換基は、
で表されるアルコール性ジオールなどが好ましく、具体的には、
等が例示される。また、フェノール変性シリコーンの場合には、置換基は、例えば、[−R25−C6H4−OH]で表され、具体的には、−C2H4−C6H4−OH、−C3H6−C6H4−OH等が例示される。なお、上記のR19、R20、R21、R22、R23、R25は脂肪族炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。R24は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基である。これら脂肪族又は芳香族ヒドロキシル変性シリコーンの水酸基価(単位:mgKOH/g)は、5〜150が好ましく、より好ましくは10〜140である。官能基当量が5未満の場合には添加の効果(特に密着性)が十分でない場合があり、150を超える場合には硬化阻害が生じて硬化反応が十分に進まない場合がある。なお、上記水酸基価はJIS K 5601−2−1に準拠して測定することができるが、官能基当量[官能基当量(g/mol)=56000/水酸基価(mgKOH/g)]から算出してもよい(特に、フェノール変性シリコーンの場合など)。
上記成分cがカルボキシル変性シリコーンである場合は、置換基は、特に限定されないが、[−R26COOH]で表されるものが好ましく、具体的には、例えば、−C2H4COOH、−C3H6COOH等が例示される。なお、上記のR26は脂肪族炭化水素基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでいてもよい。上記カルボキシル変性シリコーンの官能基当量(単位:g/mol)は、6000以下(例えば、500〜6000)であり、より好ましくは100〜5000である。官能基当量が6000を超える場合には添加の効果が得られない場合がある。なお、上記官能基当量とは、カルボキシル基(COOH部分)の当量である。
上記成分cとしては、市販品を用いることも可能であり、例えば、エポキシ変性シリコーンとしては、信越シリコーン(株)製「KF−101、KF−102、KF−105、KF−1001、X−22−163A、X−22−163B、X−22−163C、X−22−169AS、X−22−169B、X−22−173DX、X−22−2000」等が挙げられる。フッ素変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「FL−5、FL−100−100cs、FL−100−450cs、FL−100−1000cs、FL−100−10000cs、X−22−821、X−22−822」や東レ・ダウコーニング(株)製「FS1265」等が挙げられる。アミノ変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「KF−8005、KF−859、KF−8008、X−22−3820W、KF−857、KF−8001、KF−861」等、(メタ)アクリル変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「X−22−2426、X−22−164A、X−22−164C、X−22−2404、X−24−8201」(以上、メタクリル変性)、信越化学工業(株)製「X−22−2445、X−22−1602」、デグサ(株)製「TEGO Rad 2400、2500、2600、2700」(以上、アクリル変性)等が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、KF−6004、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017、X−22−6191、X−22−4515、X−22−2516」や東レ・ダウコーニング(株)製「FZ−2110、FZ−2122、FZ−7006、FZ−2166、FZ−2164、FZ−2154、FZ−2191、FZ−7001、FZ−2120、FZ−2130、FZ−720、FZ−7002、FZ−2123、FZ−2104、FZ−77、FZ−2105、FZ−2118、FZ−7604、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2203、FZ−2207、FZ−2208、SH−8400、SH−8700、SH−3746、SH−3771、SF−8491」等が挙げられる。カルビノール変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「X−22−160AS、KF6001、KF6002、KF6003、X−22−4015、X−22−4039、X−22−170DX」等が挙げられる。ジオール変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「X−22−176DX、X−22−176D、X−22−176F」等が挙げられる。フェノール変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「X−22−1821、X−22−165B」、東レ・ダウコーニング(株)製「BY16−752、BY16−150S」等が挙げられる。カルボキシル変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製「X−22−162C、X−22−3701E、X−22−3710」、東レ・ダウコーニング(株)製「BY16−750、BY16−880」等が挙げられる。
上記成分cの添加量は、成分aと成分bの合計量(100重量部とする)に対して、0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜15重量部である。成分cの添加量が0.1重量部未満である場合には、成分c添加の効果が小さく、硬化速度や印刷層Aと印刷層Bの密着性、印刷層Bの強靱性が低下する場合がある。また、30重量部を超える場合には、成分aや成分bの含有量が低下して、硬化性が低下したり、インキが高粘度となって塗工性が低下し、印刷の際かすれ等が発生する場合がある。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキを、着色インキとして用いる場合には、顔料等の着色剤を添加することができる。添加する着色剤は、前述の溶剤型インキと同様のものを用いることができる。印刷層Bが白色印刷層である場合には、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキは酸化チタン(二酸化チタン)等の白顔料を含む白色印刷インキであることが好ましい。また、印刷層Bがマット層である場合には、顔料として、光沢調製の観点で、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アクリルビーズ等の体質顔料を含むことが好ましい。
上記顔料の含有量は、顔料の種類や目的の色の濃度等により任意に設計できるが、インキの総重量に対して、0.1〜70重量%程度が好ましく、より好ましくは1〜50重量%である。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキを白色印刷インキとして用いる場合の酸化チタンとしては、ルチル型(正方晶高温型)、アナターゼ型(正方晶低温型)、ブルッカイト型(斜方晶)のいずれを用いてもよいが、例えば、石原産業(株)製酸化チタン粒子「タイペーク」、テイカ(株)製酸化チタン「JRシリーズ」等が入手可能である。また、酸化チタン粒子の平均粒径(凝集体を形成している場合には、凝集体の粒径、いわゆる2次粒径)は、例えば0.01〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μm、より好ましくは0.2〜0.5μmである。平均粒径が0.01μm未満では白濃度が低下し隠蔽性が不足する。1μmを超えるとグラビア印刷の際にいわゆる「版かぶり」(版の画線部以外の部分のインキ掻き取り不良による印刷不良)を生じるため好ましくない。また、酸化チタンの含有量は、隠蔽性と粗大突起形成抑制の観点から、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキの総重量に対して、20〜60重量%が好ましく、より好ましくは30〜55重量%である。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキにおいて、成分aは、硬化反応の停止反応が進みにくいため、高分子量の強靱な印刷層を形成する特徴を有する反面、開始反応も進みにくいため硬化工程に時間がかかり生産性が低下したり、短い硬化時間では硬化が進まず印刷層の強靱性が不足する欠点がある。これに対して、成分bは、開始反応が速く、生産速度は速くなるものの、反応停止も起こりやすいため、硬化物は低分子量となり印刷層の強靱性が不足する。カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキとして、成分a、bを混合して用いることにより、硬化速度(生産性)と強靱性を両立することができるため好ましい。成分a、bに加えて成分c(特に変性シリコーンオイル)を添加する場合には、さらに硬化速度が飛躍的に向上する。このため、短時間の活性エネルギー線照射で印刷層の硬化が進むため、工程速度の高速化が可能となり生産性が向上するため好ましい。さらに、停止反応は抑制されるため、高分子量化が可能で高強靱性を達成できる。すなわち、生産性と強靱性をより一層高いレベルで両立させることが可能である。また、成分a、b、cの混合物を用いることによって、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキと他のインキ(溶剤型インキ)との密着性(重ね塗り適性)が飛躍的に向上する。
一般的に、インキ中にシリコーンオイルを添加する場合には、硬化阻害を起こし硬化速度は低下し、また、離型性が増して、密着性は低下する傾向にある。しかし、上記成分a〜cの3成分系においては、これらの傾向に反して、硬化速度、密着性が向上する。上記、硬化速度の向上、プラスチックフィルムへの密着性、インキ同士の重ね塗り適性が発現する詳細は不明であるが、成分a〜cの3成分の相互作用によるものと考えられ、例えば、成分cが活性エネルギー線照射により硬化する際に、成分a、bを囲い込む効果により反応性が高まることが考えられる。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキには、活性エネルギー線硬化性発現のために、光重合開始剤を添加することが好ましい。本発明の光重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤であり、例えば、ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、シラノール/アルミニウム錯体、スルホン酸エステル、イミドスルホネートなどが挙げられる。中でも、反応性の観点から、ジアリールヨードニウム塩やトリアリールスルホニウム塩が特に好ましい。光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキの総重量に対して、0.5〜7重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。
また、本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキには、生産効率を高める観点から、必要に応じて、増感剤を添加することが好ましい。上記酸化チタン顔料などを用いる場合には、特に有効である。その場合の増感剤は、用いる活性エネルギー線の種類などを勘案して、既存の増感剤から選択することができる。例えば、(1)脂肪族、芳香族アミン、ピペリジンなど窒素を環に含むアミンなどのアミン系増感剤、(2)アリル系、o−トリルチオ尿素などの尿素系増感剤、(3)ナトリウムジエチルジチオホスフェートなどのイオウ化合物系増感剤、(4)アントラセン系増感剤、(5)N,N−ジ置換−p−アミノベンゾニトリル系化合物などのニトリル系増感剤、(6)トリ−n−ブチルホスフィンなどのリン化合物系増感剤、(7)N−ニトロソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物などの窒素化合物系増感剤、(8)四塩化炭素などの塩素化合物系増感剤などの増感剤が挙げられる。上記でも、特に、アントラセン系増感剤は増感作用が強く好ましい。中でも、チオキサントンや9,10−ジブトキシアントラセンなどが好ましく使用される。また、増感剤の含有量としては、特に限定されないが、インキの総重量に対して、0.1〜5重量%が好ましく、特に好ましくは0.3〜3重量%である。
また、本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキには、必要に応じて、滑剤を含有してもよい。ここでいう滑剤とは、例えば、ポリエチレンワックス等のポリオレフィン系ワックス、脂肪酸アマイド、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス、カルナウバワックス等の各種ワックス類が例示される。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキ中の、反応に関与せず主に分散剤として使用される溶剤の含有量は、5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下であり、さらに、実質的に溶剤を含有しないことが最も好ましい。なお、ここでいう溶剤とは、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メチルアルコール、エチルアルコールなどの有機溶媒や水のことをいい、グラビア、フレキソ印刷インキ等では、塗布加工性やインキ中の各成分の相溶性や分散性を改良する目的で通常用いられているものであって、硬化後の組成物に取り込まれる反応性希釈剤はこれに含まれない。本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキは、無溶剤でも、優れた塗布性、成分同士の分散性を発揮できるため、有機溶剤の量を極めて少なくできるため、溶媒の除去が不要となり、環境負荷を少なくすることが可能である。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキは、樹脂成分(例えば、上述の成分a、成分b、さらに必要に応じて成分c)、光重合開始剤等を混合することにより製造する。さらに、顔料、増感剤等その他の添加剤を用いる場合には、同時に混合する。混合は、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ポニーミキサー、ディゾルバー、タンクミキサー、ホモミキサー、ホモディスパーなどのミキサーや、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ラインミルなどのミル、ニーダーなどが用いられる。混合の際の混合時間(滞留時間)は10〜120分が好ましい。得られたインキ組成物は、必要に応じて、濾過してから用いてもよい。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキの粘度(23±2℃、50回転、E型粘度計、JIS Z 8803)は、特に限定されないが、例えば、グラビア印刷により塗工される場合には、10〜2000mPa・sが好ましく、より好ましくは20〜1000mPa・sである。粘度が2000mPa・sを超える場合には、グラビア印刷性が低下し、「かすれ」などが生じて、加飾性が低下する場合がある。また、粘度が10mPa・s未満の場合には、顔料や添加剤が沈降しやすくなる等、貯蔵安定性が低下する場合がある。上記粘度はインキ成分、配合比、増粘剤、減粘剤等によって制御することが可能である。
本発明のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキのチキソ性は低い方が好ましく、チキソトロピックインデックス(TI値)は、20未満が好ましく、より好ましくは15未満、さらに好ましくは10未満である。TI値が20以上の場合には、グラビア、フレキソ印刷性が低下し、生産性が低下する場合がある。
本発明においては、耐溶剤性、耐スクラッチ性などの表面耐性に劣る印刷層Aの上にカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキから形成される印刷層Bを設けることにより、プラスチックラベルの表面耐性を向上させることができる。また、印刷層の一部に無溶剤型のカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキを用いることにより、プラスチックラベル製造時の有機溶剤の使用量が低減するため環境性に優れた製造工程とすることができる。
[プラスチックラベル]
本発明のプラスチックラベルは、上記プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面側に、上記印刷層Aが形成され、さらに他の層を介さずに上記印刷層Bが形成された層構成を有している。本発明のプラスチックラベルの具体的な態様としては、特に限定されないが、例えば、(1)透明プラスチックフィルム/カラー印刷層である印刷層A/白色印刷層である印刷層B;(2)白色プラスチックフィルム/カラー印刷層である印刷層A/クリア印刷層またはマット層である印刷層B;(3)透明プラスチックフィルム/カラー印刷層である印刷層A/白色印刷層である印刷層A/白色又はクリア印刷層である印刷層B;(4)クリア印刷層である印刷層B/カラー印刷層である印刷層A/透明または白色プラスチックフィルム/カラーまたは白色印刷層である印刷層A/白色またはクリア印刷層である印刷層B;(5)透明プラスチックフィルム/カラー印刷層である印刷層A/クリア印刷層である印刷層Bなどが挙げられる。上記の中でも、(1)又は(2)の層構成の場合には、印刷層Bがラベル最表面(ラベルを容器に装着する場合に容器に接する側の最表面または容器と反対側の最表面)である場合が効果的である。
上記、プラスチックフィルム、印刷層A、印刷層Bはそれぞれ多層構造を有していてもよく、多色刷りの場合には、例えば印刷層Aが多層構造であることが好ましい。また、印刷層A、印刷層Bは必ずしもラベルの全面に設けられていなくてもよいが、プラスチックフィルム上に印刷層Aのみが設けられた部分はない方が好ましく、印刷層Aを設ける場合には、印刷層A上には印刷層Bが設けられていることが望ましい。
また、本発明のプラスチックラベルには、上記の他にも、接着剤層、紫外線防止層、アンカーコート層、プライマーコート層、不織布、紙等の層を必要に応じて設けてもよい。
本発明のプラスチックラベルにおける印刷層Aの厚み(溶剤除去後の厚み、多層構造の場合には総厚み)は、用途や多色刷りの場合の色数などによっても異なり、特に限定されないが、0.1〜15μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜10μmである。印刷層の厚みが0.1μm未満である場合には、印刷層を均一に設けることが困難である場合があり、部分的な「かすれ」が起こったりして、装飾性が損なわれたり、デザイン通りの印刷が困難となる場合がある。また、印刷層厚みが15μmを超える場合には、溶剤型インキを多量に消費するため有機溶剤の使用量が増え環境面で好ましくなく、また均一に塗布することが困難となったり、印刷層がもろくなって、剥離しやすくなったりする。
本発明のプラスチックラベルにおける印刷層Bの厚み(多層構造の場合には総厚み)は、用途などによっても異なり、特に限定されないが、0.1〜15μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜10μmである。印刷層の厚みが0.1μm未満である場合には、印刷層を均一に設けることが困難である場合があり、部分的な「かすれ」が起こり装飾性が損なわれたり、表面耐性が低下する場合がある。また、印刷層厚みが15μmを超える場合には、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキを多量に消費するためコスト面で好ましくなく、また均一に塗布することが困難となったり、印刷層がもろくなって、剥離しやすくなったりする。中でも、本発明の印刷層Bが白色印刷層である場合には、厚みは、隠蔽性の観点から、3〜10μmが好ましく、クリア印刷層である場合には、透明性の観点から、0.2〜3μmが好ましい。なお、本発明の印刷層Bは、硬化前後で厚みは殆ど変化しない。
本発明のプラスチックラベルは、一般的に、カラー印刷層を溶剤型のカラーインキにより形成するため装飾性に優れる。また、上記溶剤型インキにより形成された印刷層Aが表出しておらず、印刷層が設けられた側の表面はカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキによる印刷層Bにより覆われているため、耐溶剤性、耐薬品性、耐油性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐スクラッチ性などの表面耐性に優れる。このため、耐溶剤性、耐水性などが要求される用途にも幅広く使用することが可能である。また、製造工程や流通段階で印刷層に傷が付きにくい。また、印刷層の強靱性が向上するため、耐もみ性に優れ、シュリンクフィルムとしては収縮加工時の収縮変形に対する追従性にも優れる。
本発明のプラスチックラベルは、具体的には、ストレッチラベル、シュリンクラベル、ストレッチシュリンクラベル、インモールドラベル、タックラベル、ロールラベル(巻き付け方式の糊付ラベル)、感熱接着ラベル等に用いることができる。中でも、シュリンクラベル用途に用いられる場合には、密着性、シュリンク加工に対する追従性の良さを反映して、収縮白化、収縮剥離、収縮クラック(インキ割れ)を防止する効果が得られるため好ましい。
本発明のプラスチックラベルは、一般的に、容器に装着し、ラベル付き容器として用いられる。このような容器には、例えば、PETボトルなどのソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳容器、調味料などの食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレーなどの化学製品の容器、カップ麺容器などが含まれる。また容器の材質としても、PETなどのプラスチック製、ガラス製、金属製などが含まれる。なお、本発明のプラスチックラベルは、容器以外の被着体に用いられてもよい。
[プラスチックラベルの製造方法]
本発明のプラスチックラベルの製造方法は、(1)上記プラスチックフィルムの少なくとも片面に、上記溶剤型インキを塗布、乾燥して印刷層Aを形成する工程;(2)該印刷層Aの表面に、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキを塗布、活性エネルギー線硬化して印刷層Bを形成する工程からなる。上記(1)、(2)の工程は、プラスチックフィルムの製造工程中に塗布、乾燥、硬化等を行われてもよいし(インラインコート)、フィルム製膜後に行われてもよい(オフラインコート)が、生産性や加工性の観点から、オフラインコートが好ましい。また、(1)、(2)の工程は、連続で行ってもよいし、それぞれ単独に行ってもよいが、生産性の観点から、連続の工程で行うことが好ましい。
(印刷層Aの形成)
プラスチックフィルム上に溶剤型インキを塗布する方法としては、コストや生産性、印刷の装飾性などの観点から、グラビア印刷、フレキソ印刷が好ましい。中でも、グラビア印刷方式が特に好ましい。次いで、塗布されたインキ層を乾燥(必要に応じて加熱乾燥)して溶剤を除去し、印刷層Aを形成する。上記乾燥工程は、自然乾燥でもよいが、インラインで加熱が可能な一般的な加熱装置(熱風ヒーター、赤外線オーブンなどのオーブン、赤外線ヒーターなど)を用いることができる。中でも、安全性の観点から、熱風ヒーターが特に好ましい。加熱乾燥の際の加熱温度は35〜65℃が好ましく、特にシュリンクフィルムの場合は、乾燥効率とフィルムの変形抑制の観点から、40〜60℃が好ましい。なお、多色刷りの場合など多層の印刷層Aを形成する場合には、上記、塗布・乾燥工程を繰り返し行えばよい。
(印刷層Bの形成)
印刷層A上にカチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキを塗布する方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷またはインクジェット印刷方式が好ましく、グラビア印刷方式が特に好ましい。次いで、塗布されたインキ層に活性エネルギー線を照射し、インキ層の硬化を行う。硬化は、生産性の観点からは、塗布工程と一連の工程で行うことが好ましい。硬化は、紫外線(UV)ランプ、紫外線LEDや紫外線レーザーなどを用いることが好ましい。照射する活性エネルギー線は、カチオン重合性活性エネルギー線硬化型インキの組成によっても異なり、特に限定されないが、硬化性の観点から、波長が200〜460nmの紫外線(近紫外線)が好ましく、また、照射強度は150mJ/cm2〜1000mJ/cm2、照射時間は0.1〜3秒が好ましい。必要に応じて、活性エネルギー線照射工程の前後に加熱工程を設けてもよい。
上記のように得られた長尺状のプラスチックラベルは、所定の幅にスリットして、ロール状に巻回し、複数個のロール状物とする。
以下に、本発明のプラスチックラベルがシュリンクラベルの場合の、プラスチックラベルの加工および容器への装着の例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[プラスチックラベルの加工]
上記ロール状物のひとつを繰り出しながら、長尺状のプラスチックラベルの幅方向が円周方向となるように円筒状に成形する。具体的には、長尺状プラスチックラベルを筒状に形成し、ラベルの一方の側縁部に、長手方向に帯状に約2〜4mm幅で、テトラヒドロフラン(THF)などの溶剤や接着剤(以下溶剤等)を内面に塗布し、筒状に丸めて、該溶剤等塗布部を、他方の側縁部から5〜10mmの位置に重ね合わせて外面に接着(センターシール)し、長尺筒状のプラスチックラベル連続体とし、長尺筒状プラスチックラベルを得る。なお、上記の溶剤などを塗工する部分及び接着する部分には、印刷層が設けられていないことが好ましい。
なお、ラベル切除用のミシン目を設ける場合は、所定の長さ及びピッチのミシン目を長手方向に形成する。ミシン目は慣用の方法(例えば、周囲に切断部と非切断部とが繰り返し形成された円板状の刃物を押し当てる方法やレーザーを用いる方法等)により施すことができる。ミシン目を施す工程段階は、印刷工程の後や、筒状加工工程の前後など、適宜選択ことができる。
[ラベル付き容器]
最後に、上記で得られた長尺筒状プラスチックラベルを切断後、所定の容器に装着し、加熱処理によって、ラベルを収縮、容器に追従密着させることによってラベル付き容器を作製する。上記長尺筒状プラスチックラベルを、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、必要な長さに切断した後、内容物を充填した容器に外嵌し、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルを通過させたり、赤外線等の輻射熱で加熱して熱収縮させ、容器に密着させて、ラベル付き容器を得る。上記加熱処理としては、例えば、80〜100℃のスチームで処理する(スチームおよび湯気が充満した加熱トンネルを通過させる)ことなどが例示される。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)硬化性(初期タック性)
実施例、比較例で、紫外線照射工程速度(コンベア速度)50m/分で硬化処理を行った直後に、印刷層表面を指で触り、指にインキがつくかどうかを目視にて観察した。指にインキが付かなかった場合は硬化性良好(○)、インキが付いた場合には硬化性不良(×)と判断した。
(2)接着性(テープ剥離試験)
碁盤目のクロスカットを入れない以外は、JIS K 5600に準じて、試験を行った。実施例、比較例で得られたプラスチックラベルの印刷層を設けた側の表面に、ニチバンテープ(幅18mm)を貼り付け、90度方向に剥離し、5mm×5mmの領域において、印刷層の残存した面積を観察し、下記の基準で接着性(密着性)を判断した。
90%以上 : 接着性良好(○)
80%以上、90%未満 : 接着性はやや不良であるが使用可能なレベル(△)
80%未満 : 接着性不良(×)
(3)耐もみ性
実施例、比較例で得られたプラスチックラベルから、長さ100mm×幅100mmのサンプル片を採取した。サンプル片の両端を両手でつかみ、10回手でもむ。印刷層側表面の印刷層の残存面積を目視で観察し、残存面積が90%以上であれば、耐もみ性良好(○)、90%未満であれば、耐もみ性不良(×)と判断した。
(4)耐スクラッチ性
実施例、比較例で得られたプラスチックラベルから、長さ100mm×幅100mmのサンプル片を採取した。サンプルを平滑なテーブルの上に置き、印刷層を設けた側の表面を、手の爪の甲の部分で、10往復(長手方向20mmの区間)こすった後に表面を観察し、下記の基準で判断した。
印刷層は全く剥離していない。 : 耐スクラッチ性良好(○)
印刷層に一部剥離がみられる。 : 耐スクラッチ性はやや不良であるが使用可能なレベル(△)
印刷層が著しく剥離している。 : 耐スクラッチ性不良(×)
(5)粘度、チキソ性
E型粘度計(東機産業(株)製「RE115L」)を用い、23±2℃、JIS Z 8803に準じて測定を行った。また、回転数1rpmにおける粘度を回転数100rpmにおける粘度で除した値をチキソインデックス(TI値)とした。
(6)フィルム層厚み、印刷層厚み
フィルム厚みは、触針式厚みゲージを用いて測定した。印刷層厚みは、印刷層を設けた部分(塗工面)と印刷層を設けていない部分(非塗工面)の段差を、3次元顕微鏡(キーエンス(株)製VK8510)を用いて測定した。
(7)プラスチックフィルム熱収縮率(90℃)
プラスチックフィルムから、測定方向(長手方向または幅方向)に長さ200mm(標線間隔150mm)、幅10mmの長方形のサンプル片を作成する。
サンプル片を90℃の温水中で、10秒熱処理(無荷重下)し、熱処理前後の標線間隔の差を読み取り、以下の計算式で熱収縮率を算出する。
熱収縮率(%) = (L0−L1)/L0×100
L0 : 熱処理前の標線間隔
L1 : 熱処理後の標線間隔