JP4899104B2 - リフロー炉のフューム除去方法およびリフロー炉 - Google Patents

Description

本発明は、ソルダペーストを塗布したプリント基板と電子部品をはんだ付けしたときに炉内で発生するフラックスフュームを除去する方法およびフューム除去装置を設置したリフロー炉に関する。

一般にリフロー炉でのはんだ付けではソルダペーストを用いる。ソルダペーストを用いたはんだ付けは、先ずソルダペーストをプリント基板のはんだ付け部に印刷装置やディスペンサーで塗布し、該塗布部に電子部品を搭載する。そして電子部品が搭載されたプリント基板をリフロー炉で加熱することによりソルダペーストを溶融してプリント基板と電子部品のはんだ付けを行うものである。

プリント基板のはんだ付けを行うリフロー炉は、予備加熱ゾーン、本加熱ゾーン、冷却ゾーンから構成されており、ソルダペーストが塗布されたプリント基板は、予備加熱ゾーンのヒーターで予備加熱され、本加熱ゾーンのヒーターで本加熱され、冷却ゾーンの冷却機で冷却されることによりはんだ付けがなされる。

ソルダペーストとは、はんだ粉末とフラックスとを混練して粘調性のあるペースト状にしたものである。このソルダペーストに用いるフラックスは、松脂、活性剤、チキソ剤等の固形成分を高沸点の溶剤で溶解してある。従って、ソルダペーストが塗布されたプリント基板をリフロー炉で加熱すると、先ず予備加熱ゾーンのヒーターで１００〜１５０℃に加熱されてソルダペースト中の溶剤が揮散するとともに固形成分が溶融する。溶融した固形成分は、プリント基板に付着していた酸化物を還元除去し、はんだ付け部を清浄化する。次にプリント基板が本加熱ゾーンのヒーターで２００℃以上に加熱されて、はんだ粉末が溶融し、清浄化されたはんだ付け部に濡れ広がる。そして溶融したはんだが充分にはんだ付け部に濡れ広がった後、冷却ゾーンの冷却機で冷却されて溶融はんだが固化することによりはんだ付けが終了する。

ところでプリント基板に塗布されたソルダペーストは、予備加熱ゾーンでは溶剤が揮散してフュームとなり、また予備加熱ゾーンで溶融した固形成分は本加熱ゾーンで高温に曝されると、やはりフュームとなって炉内を浮遊する。これら溶剤や固形成分のフュームは、炉内で比較的温度の低い部分、例えばプリント基板を炉内に搬送するコンベア、熱風を循環させるファン、炉を構成するフレーム、炉の出入口に設置されたラビリンス等に接すると冷やされて結露し、さらに温度が下がると粘着性のある固形物となる。これらフュームが固形物となったもの（以下、フューム固形物という）がリフロー炉を構成する各構成部に大量に付着すると問題が生じる。つまりフューム固形物がコンベアに大量に付着すると、プリント基板がコンベアに粘着して搬出時にプリント基板がコンベアから離れずコンベアのスプロケットに巻き込まれてプリント基板を破損し、ファンに大量に付着するとファンの回転が遅くなって熱風の吹き出しが弱くなり、フレームに大量に付着すると堆積したフューム固形物が搬送中のプリント基板上に落下してプリント基板を汚し、ラビリンスに大量に付着するとフューム固形物がプリント基板に接触して電子部品を所定の位置から脱落させてしまうようになる。

これらフューム固形物の付着による問題に鑑み、従来より炉内のフュームを除去する方法や装置が多数提案されていた。（特許文献１〜８）従来のフューム除去のリフロー炉は、除去装置が炉から離れたところに設置されており、また炉内から炉外にパイプで排出されたフュームをなるべく低い温度にして結露させることによりフュームの除去を行うものであった。
特開平４−１３４７５号公報 特開平４−４６６６７号公報 特開平４−２５１６６１号公報 特開平７−７７３４６号公報 特開平７−２１２０２８号公報 特開平１０−３３５８０７号公報 実開昭５４−４１４１１号公報 実開昭６４−２０９６４号公報

従来のフューム除去のリフロー炉は、フューム除去装置に達するまでに冷やされていたため、フュームを炉から排出するパイプ中に大量に付着してしまい、パイプがフューム固形物で詰まってしまうことがあった。パイプがフューム固形物で詰まると、これを取り除くためには多大な手間がかかっていた。この手間とは、リフロー炉と除去装置をつなぐパイプを外すことであり、パイプ内の洗浄である。パイプを外すには、多数の取り付けネジを外し、重いパイプを下方に降ろさなければならない。またパイプ内の洗浄は、パイプ内に付着したフューム固形物を溶解する有機溶剤に漬けなければならない。しかしながらフューム固形物は有機溶剤に漬けただけでは完全に取り除くことができずパイプ内をブラシで擦るという手間のかかる作業が必要であった。

また従来のフューム除去リフロー炉では、フュームの除去が充分でなく、除去装置でフュームが除去された気体が炉内に戻ると炉内の低温部でフュームが結露して、前述のような問題を起こすことがあった。本発明は、排出パイプにフューム固形物が付着することがないばかりでなく、炉内で発生したフュームを完全に除去できる方法とフューム除去装置を設置したリフロー炉を提供することにある。

本発明者らは、炉の上部は温度が高いため、ここからフュームを炉外に取り出せばフュームを熱い状態のまま炉外に取り出すことができること、フュームを細くて長い通路を通過させると、該通路を通過中に冷やされて通路の壁面に結露すること、そしてフュームを広く分散させて板に当てると板全体で冷やされること、等に着目して本発明を完成させた。

本発明は、炉内に設置されたヒーターの近傍から液化温度以上となったフューム含有気体を吸い込み、該気体をフュームの液化温度以上に保ったまま多数の長穴が並設されたフィルターを通過させることによりフュームを冷却して長穴の壁面で結露させるとともに、気体を多数の長穴で広範囲に分散させ、分散した気体を多数の板材が上下部に互い違いに取り付けられた迷路状フィルターの板材に当ててフュームを冷やすことにより板材で結露させてフュームを除去し、その後フュームが除去された気体を炉内に戻すリフロー炉のフューム除去方法であって、多数の長穴が、これら長穴が並設されたフィルターから迷路状フィルターへ向かうフュームの流動方向へ向けて並設されるとともに、板材が、フュームの流動方向と交差する方向へ延びて取り付けられることを特徴とするリフロー炉のフューム除去方法である。

また別の発明は、炉の上部のマッフルに排出口が形成されているとともに、炉外の排出口近傍には除去装置が設置されており、排出口と除去装置の流入部とは排出パイプで接続されていて、該除去装置には多数の長穴を並設した長穴並設フィルターと該長穴並設フィルターの出口側に隣接して多数の板材が上下部に互い違いに取り付けられた迷路状フィルターが設置されており、しかも除去装置の流出部は炉のマッフルに形成された環流口に環流パイプで接続されているリフロー炉であって、前記多数の長穴は、前記長穴並設フィルターから前記迷路状フィルターへ向かうフュームの流動方向へ向けて並設されるとともに、前記板材は、該フュームの流動方向と交差する方向へ延びて取り付けられること、及び、前記長穴並設フィルターに導入される時のフュームは液化温度以上であることを特徴とするリフロー炉である。

本発明によれば、炉内のフュームをフュームが液化する温度以上で炉外に排出し、その温度を保ったまま除去装置に導入するようにしたため、炉の排出口と除去装置の流入口をつなぐパイプで結露せず、該パイプ内にフューム固形物が付着するようなことはない。従って、本発明ではパイプを外したり、内部をブラシで擦ったりする手間のかかる作業が皆無となる。また本発明では高温のフュームを多数の長穴に通過させるため、長い通路を通過中にフュームが冷やされて長穴の壁面に結露して付着する。さらに本発明では、多数の長穴で広範囲に分散されたフュームが迷路状フィルターの大きな板材に当たって冷やされるため、ここで残りのフュームが結露して完全に除去される。従って、本発明のリフロー炉は、除去装置を通過して炉内に戻された気体には、フュームがほとんど存在していないため、炉内の温度の低い構成部分にフューム固形物が付着せず、フューム固形物による問題が発生しない。

一般にフュームの結露する温度はソルダペーストに使用する松脂によって異なる。鉛フリーはんだのソルダペーストに使用する松脂は、フュームの結露する温度が約１５０℃以上であり、フュームはこの温度以上で除去装置に導入されなければパイプ中で結露してしまう。従来のリフロー炉では、炉から排出されたフューム含有気体が除去装置に達するまでに１５０℃よりも下がってしまい、排出パイプ内で結露してしまうものであった。本発明のリフロー炉は、炉内のフュームを炉外に排出する排出口が炉の上部のマッフルに形成されており、高温となったフュームは上方に漂うため、上方からの方が排出しやすく、高温を保ったまま除去装置に導入される。しかしながら、松脂の種類によってフュームの液化温度が高くなる場合があるが、このような場合には炉から出たフュームが炉の排出口と除去装置の流入口をつなぐパイプパイプに電熱ヒーターを巻き回してフュームの温度が下がらないようにする。

本発明リフロー炉の除去装置で使用する長穴並設フィルターとは、図２に示すように六角形の長穴が隙間なく並べられたハニカム構造、図３に示すように多数の段ボール重ねて穴が波状となったもの、或いは図４に示すように多数の円筒体を並べた構造のもの、等がある。本発明に使用して好適な長穴並設フィルターはハニカム構造のものである。長穴並設フィルターがハニカム構造であると、結露した液状物が染み込んで軟らかくなっても穴がつぶれにくいという効果がある。本発明に使用する長穴並設フィルターの材質は、如何なる材料でも良いが、紙製が適している。フィルターが紙製であるとフュームが結露したときに液化したものが染み込んでいくため詰まりにくくなる。そして紙製のフィルターは、フュームの染み込みが多くなって、これ以上染み込みができなくなったら廃棄して新しいフィルターと交換するだけ、という簡単な作業で済む。

本発明リフロー炉の除去装置における迷路状フィルターとは、上方から多数の板材が吊設され、下方から多数の板材が立設されていて、上下の板材が互い違いとなっているものである。迷路状フィルターにおいて、上方に立設した板を取り付ける床板を傾斜させておくと、フュームの液状化したものの回収が容易となる。つまり床板が傾斜していると、板材で結露したヒュームの液状物が板から垂れ下がって床に達したときに、床板の傾斜した下方に流れて一箇所に溜まる。そして該液状物が溜まった床板からドレインで外方に流出させる。

以下、図面に基づいて本発明のリフロー炉の説明をする。図１は本発明リフロー炉の正面断面図である。

リフロー炉１は、マッフル２で覆われており、内部にトンネル状の炉３が形成されている。炉３内にはプリント基板Ｐを乗せて矢印Ａ方向に走行するコンベア４が設置されている。また炉３内には、コンベア４を挟んで上下部に予備加熱用のヒーター５u、５ｄ、６u、６d、本加熱用のヒーター７u、７d、冷却機８u、８ｄが設置されている。炉３の上部に設置された予備加熱用のヒーター５uと６u間は間隙９となっており、該間隙にある上部のマッフル２には排出口１０が形成されている。

排出口１０には排出パイプ１１が接続されており、該排出パイプはフューム除去装置１２の流入口１３と接続されている。またフューム除去装置１２の流出口１４は環流パイプ１５と接続されており、該環流パイプは下方に下がっている。下方に下がった環流パイプ１５は途中にブロワー１６が設置されており、さらに横方に配管されている。そして横方に配管された環流パイプ１５は下方のマッフル２に形成された環流口１７に接続されている。また排出パイプ１１には電熱ヒーター１８が巻き回されている。電熱ヒーター１８は、鉛フリーはんだのようにソルダペーストのフラックスに液化温度の高い松脂を使用したときに排出パイプを加熱するものである。

フューム除去装置１２には、内部に長穴並設フィルター１９と迷路状フィルター２０が設置されている。長穴フィルター１９とは、多数の長穴が流動方向に並設されているものである。長穴フィルターはブロック状となっており、複数個を合わせて設置する。該長穴フィルターは長穴内にフュームの結露したものが染み込んでしまったり、フューム固形物が堆積したりした場合は、ブロックごと交換する。

フューム除去装置内１２には、長穴フィルター１９に隣接して迷路状フィルター２０が設置されている。迷路状フィルター２０とは、上部から多数の板材２１・・・が吊設されており、また下部の床板２２から多数の板材２３・・・が立設されていて、上部の板材２１と下部の板材２３は交互に置かれている。床板２２は一方に傾斜しており、傾斜した端部にはドレイン２４が設置されている。

次に上記構造を有するリフロー炉での稼働状態について説明する。ソルダペーストが塗布され、該塗布部に電子部品が搭載されたプリント基板Ｐをコンベア４に乗せて矢印Ａ方向に搬送する。先ず、プリント基板は炉３内にの上下部に設置された予備加熱用ヒーター５u、５d、６u、６dで１００〜１５０℃に加熱される。このときソルダペースト中の溶剤が揮散されてフュームとなり、またソルダペースト中の固形成分は溶融する。そしてプリント基板は、さらに本加熱用ヒーター７u、７dに移り、ここで２２０〜２５０℃に加熱される。ここではソルダペースト中のはんだ粉末が溶融して、はんだ付け部に濡れ広がると同時に溶融状態となっていた固形成分は高温に曝されるためフュームとなる。前述溶剤のフュームと固形成分のフュームは、炉３内の上方に漂っている。

このとき既に環流パイプ１５に設置されているブロワー１６は稼働しているため、除去装置１２内の気体はブロワー１６方向に吸引される。従って、除去装置１２内は負圧となり、除去装置１２の流入口１３に接続された排出パイプ１１内の気体が除去装置１２に引かれ、さらに排出パイプ１１に接続された炉２内のフューム含有気体が排出パイプ１１内に引かれる。つまり炉３内の上方に漂っていたフュームは排出口１０から排出パイプ１１を通って除去装置１２内に流入するようになる。除去装置１２内に流入したフューム含有気体は、長穴フィルター１９の長穴内を通過するが、この長い通路を通過中に冷やされて長穴の壁面で結露する。長穴フィルターが紙製であると、結露したフュームの液状物は長穴フィルターに染み込んでいく。このとき長穴フィルターは、多数の穴となっているため排出パイプ１１から除去装置１２に流入したフューム含有気体は広範囲に分散されて長穴フィルターから流出する。しかしながら長穴フィルター１９から流出した気体中には、まだフュームが存在しているため、これを迷路状フィルター２０で除去するものである。

長穴フィルター１９から流出したフューム含有気体は、分散して迷路状の板材２１・・・、２３・・・に衝突する。このとき板材に衝突したフューム含有気体は、板材で冷やされ板材状で結露する。このようにして多数の板材を通過するうちにフュームが除去される。フュームが除去された気体はブロワー１６で引かれて環流パイプ１５を通り、マッフル２に形成された環流口１７から炉２内に流入する。

長穴フィルターに大量のフュームの液状物が付着した場合は、長穴フィルターを交換する。迷路状フィルター２０の板材２１、２３に付着した液状物は板材を垂れ下がって床板２２に達する。このとき床板２２は傾斜しているため、床板２２上の液状物は、傾斜した床板２２に沿って傾斜下部に流れる。傾斜下部にはドレイン２４が設置されており、傾斜下部に液状物が溜まったならば、ドレインを開いて液状物を外部に流出させて回収する。

なお本発明の実施例では、炉のマッフルに形成した排出口は予備加熱用ヒーター間の一箇所に形成したもので説明したが、排出口を複数箇所、例えば予備加熱用ヒーター間の他、予備加熱用ヒーターと本加熱用ヒーター間、さらには本加熱用ヒーターと冷却機間、等に形成してもよい。

本発明リフロー炉の正面断面図 本発明リフロー炉に使用するハニカム状の長穴フィルター 本発明リフロー炉に使用する段ボールの長穴フィルター 本発明リフロー炉に使用する円筒状の長穴フィルター

符号の説明

１ リフロー炉
２ マッフル
３ 炉
４ コンベア
５u、５d、６u、６d 予備加熱用ヒーター
７u７d 本加熱用ヒーター
１１ 排出パイプ
１２ 除去装置
１５ 環流パイプ
１９ 長穴フィルター
２０ 迷路状フィルター

本発明は、ソルダペーストを用いたリフロー炉に適しているものであるが、ソルダペースト以外にも加熱時にフュームが発生するもの、例えば接着剤、導電ペースト等を用いるときにも利用可能である。

Claims (5)

1. 炉内に設置されたヒーターの近傍から液化温度以上となったフューム含有気体を吸い込み、該気体をフュームの液化温度以上に保ったまま多数の長穴が並設されたフィルターを通過させることによりフュームを冷却して長穴の壁面で結露させるとともに、気体を多数の長穴で広範囲に分散させ、分散した気体を多数の板材が上下部に互い違いに取り付けられた迷路状フィルターの板材に当ててフュームを冷やすことにより板材で結露させてフュームを除去し、その後フュームが除去された気体を炉内に戻すリフロー炉のフューム除去方法であって、前記多数の長穴は、該長穴が並設されたフィルターから前記迷路状フィルターへ向かうフュームの流動方向へ向けて並設されるとともに、前記板材は、該フュームの流動方向と交差する方向へ延びて取り付けられることを特徴とするリフロー炉のフューム除去方法。
2. 炉の上部のマッフルに排出口が形成されているとともに、炉外の排出口近傍には除去装置が設置されており、排出口と除去装置の流入部とは排出パイプで接続されていて、該除去装置には多数の長穴を並設した長穴並設フィルターと該長穴並設フィルターの出口側に隣接して多数の板材が上下部に互い違いに取り付けられた迷路状フィルターが設置されており、しかも除去装置の流出部は炉のマッフルに形成された環流口に環流パイプで接続されているリフロー炉であって、前記多数の長穴は、前記長穴並設フィルターから前記迷路状フィルターへ向かうフュームの流動方向へ向けて並設されるとともに、前記板材は、該フュームの流動方向と交差する方向へ延びて取り付けられること、及び、前記長穴並設フィルターに導入される時のフュームは液化温度以上であることを特徴とするリフロー炉。
3. 前記長穴並設フィルターは、ハニカム状、波状、円筒状のいずれかであることを特徴とする請求項２記載のリフロー炉。
4. 前記迷路状フィルターは、上方に立設した板を取り付ける床板が傾斜しており、傾斜した床板の下端近傍にはフュームが結露した液状物を外部に排出するドレインが設置されていることを特徴とする請求項２記載のリフロー炉。
5. 前記炉の排出口と除去装置の流入口を接続した排出パイプには、電熱ヒーターが巻き回されていることを特徴とする請求項２記載のリフロー炉。

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