JP4898358B2 - 蒸留方法及び蒸留装置 - Google Patents
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Description
本発明の蒸留装置(100)は、図1に示すように、蒸留部(A)と冷却部(B)とを有し、前記蒸留部(A)は、仕込み液(3)の仕込み部(A1)と前記仕込み部(A1)と連通する凝縮液貯留部(A2)とを有し、かつ前記蒸留部(A)には、前記凝縮液貯留部(A2)で発生した凝縮液を前記仕込み部(A1)に逆流させない逆流防止機構として、蓋部(8)を有する。なお、仕込み部(A1)または凝縮液貯留部(A2)で発生した蒸気が冷却部(B)に移行部位である「わたり(16)」は、蒸留部(A)の一部であり、凝縮液貯留部(A2)の一部を構成するものとする。
本発明において、上記仕込み部(A1)と凝縮液貯留部(A2)とは、蒸留部(A)の内部を隔壁などで仕切って形成することができ、その際、仕込み液(3)から発生した蒸気が前記凝縮液貯留部(A2)へ導入できるように少なくとも一部に連通部(C)が設けられる。例えば、図1に示すように、蒸留部(A)の内部に筒状の仕切りを設けてその内側を仕込み部(A1)としその外周を凝縮液貯留部(A2)としてもよく、図2、図3に示すように、蒸留部(A)を上下二段に分割し、下部を仕込み部(A1)、上部を凝縮液貯留部(A2)としてもよい。
本発明では、連通部(C)を経て、仕込み部(A1)で発生した蒸気が凝縮液貯留部(A2)に導入される。この蒸気は、凝縮液貯留部(A2)を経て冷却部(B)に移行するが、その一部は、凝縮液貯留部(A2)の内壁に接触し、凝縮液となって凝縮液貯留部(A2)の壁面を降下する。凝縮液が、前記仕込み部(A1)の仕込み液(3)へ混入すると、仕込み液量の増加によって仕込み部(A1)での加熱時間が延長され、フルフラールが発生する場合がある。また、凝縮液貯留部(A2)内の蒸気が仕込み部(A1)に逆流した場合にも仕込み部(A1)の仕込み液(3)量が増加する。従って、本発明では、凝縮液や蒸気の前記仕込み部(A1)への逆流を防止するため、前記蒸留部(A)の前記連通部の上端部に凝縮液および/または蒸気の逆流防止機構を配設する。
このような逆流防止機構としては、図1に示すように、連通部の上端部に設けた蓋部(8)がある。仕込み部(A1)に設けた加熱装置(11)によって仕込み液(3)を加熱し蒸気を発生させると、蒸気圧によって該蓋部(8)を上方に持ち上げ、蒸気が仕込み部(A1)から凝縮液貯留部(A2)に移行する。一方、仕込み部(A1)での加熱を停止すれば蒸気圧の発生が停止し、蓋部(8)の重量によって蓋部が仕込み部(A1)上部と液密になり、凝縮液貯留部(A2)で発生した凝縮液や蒸気の逆流を防止することができる。なお、このような蓋部(8)は、仕込み部(A1)や凝縮液貯留部(A2)での蒸気圧、温度、蒸留物に対する耐性を有するものであれば、SUS、アルミニウムなどの金属のほか、ガラス、合成樹脂などで調製することができる。また、蒸留部(A)を構成する部材と同一または異なる部材によって調製してもよい。図1の蓋部(8)は、上面(8a)と側面(8b)とから構成されるものであり、従って、側面(8b)の短い浅型蓋部(8)であるが、逆流防止機構としては、例えば、上面(8a)のみで構成したものを連通部(C)の上部にヒンジなどで一部を固定して「弁」を構成したものでもよい。
他の逆流防止機構として、例えば図2に示す釣鐘型蓋部(7)を使用することもできる。図2に記載される蒸留装置(100)は、蒸気通路(6)を有するものであり、前記釣鐘型蓋部(7)は、蒸気通路(6)の上部に載置されている。この蓋部(7)は、図1の蓋部(8)よりもその側面(7b)が長く、凝縮液貯留部(A2)の底部に貯留する凝縮液中に側面(7b)端部が到達する。このため、仕込み部(A1)で発生した蒸気は、蒸気通路(6)に流入後、蒸気通路(6)と前記側面(7b)とによって構成される間隙を経て凝縮液貯留部(A2)の底部に貯留される凝縮液(5)中に導入される。このように、仕込み部(A1)からの蒸気を凝縮液貯留部(A2)の凝縮液に導入して凝縮液として確保すると、蒸気の逆流を容易に防止することができる。
他の逆流防止機構として、図13に示す蓋部(63)がある。低い蒸気通路(6)の上端に上面のみの蓋部(63)を設けたものであるが、凝縮液(5)中に没しても蓋部(63)が浮き上がらないような重さに調整され、または、その一部が蒸気通路(6)に固定されている。この蓋部(63)は、仕込み部(A1)で発生する蒸気を凝縮液貯留部(A2)に導入できるが、凝縮液の圧力によって仕込み部(A1)への逆流を防止できるため、「弁型蓋部」と称する。この弁型蓋部(63)は、凝縮液(5)の逆流を防止すると共に、仕込み部(A1)で発生した蒸気を凝縮液(5)中に導入し、バブリングさせる作用も有する。
他の逆流防止機構として、図12に示す逆流防止弁がある。本発明では、特に蒸気通路(6)の形状に制限はなく、例えば、連通部(C)を構成する蒸気通路(6)の頂部が凝縮液(5)に向かってU字型に変形する場合であってもよい。この場合、蒸気通路(6)の出口が凝縮液(5)に挿入され、かつ該出口に上記した弁型蓋部(60,63)などが図12に示すように配設されると、凝縮液および蒸気の逆流を防止することができる。
本発明の蒸留装置では、前記蒸留部(A)、特に仕込み部(A1)に、スチーム注入器(12)などの蒸気導入機構を設けることが好ましい。仕込み部(A1)に設けたスチーム注入器(12)などの蒸気導入機構によってスチームを導入すれば、凝縮液(5)を加熱し、蒸留することができる。仕込み部(A1)で発生する蒸気が複数の成分を含有する場合には、蒸気圧によって各成分の凝縮液(5)中への溶解度が相違するため、蒸気導入機構によって、蒸気を凝縮液に導入し、これによって凝縮液の組成を変化させることができるからである。このような蒸気導入機構としては、例えば前記したスチーム注入器(12)があり、本願発明における「仕込み部で発生した蒸気を前記凝縮液貯留部の凝縮液(5)に導入する蒸気導入機構」となる。
蒸留部(A)には、前記冷却部(B)に導入した凝縮液の一部を前記凝縮液貯留部(A2)に還流する還流装置が配設されることが好ましい。前記したように、凝縮液貯留部(A2)内の凝縮液量によって蒸留液の組成を調整することができるが、前記還流装置を配設することで、簡便に凝縮液量を調整することができるからである。
本発明の蒸留装置(100)の好ましい態様の一例を、図2を参照して説明する。なお、図2の蒸留装置は、仕込み部(A1)で発生した蒸気を釣鐘型蓋部を介して凝縮液貯留部(A2)の凝縮液にバブリングできるため、本願明細書ではこれを「バブリング型蒸留装置」と称する。
本発明の蒸留装置(100)の好ましい他の態様の一例を、図3を参照して説明する。なお、図3の蒸留装置は、仕込み部(A1)の蒸気が凝縮液貯留部(A2)の凝縮液にバブリングされずに冷却部(B)に移行するため、本願明細書では、これを「非バブリング型蒸留装置」と称する。
更に、本発明の他の態様の一例を、図4を参照して説明する。
本発明の第二は、上記蒸留装置を用いた蒸留方法であって、前記仕込み部の仕込み液を加熱して発生した蒸気を前記逆流防止機構を経て前記凝縮液貯留部に導入する工程と、前記凝縮液貯留部の蒸気を前記冷却部に導入し、前記冷却部を冷却して生じた凝縮液の一部または全部を前記凝縮液貯留部に還流し、かつ前記凝縮液の残部を留出液として得る工程と、前記凝縮液貯留部で発生および貯留する蒸気の凝縮液を加熱し、発生した蒸気を前記冷却部に導入して留出液を得る工程とを含む、蒸留方法である。本発明の蒸留方法は、連続式で行ってもよく、回分式で行うこともできる。凝縮液貯留部(A2)内で発生した蒸気の凝縮液を該貯留部において貯留することで、仕込み部(A1)への凝縮液の逆流を防止し、仕込み液量の増加を防止して加熱時間を短縮し、フルフラールの発生を防止することができる。
仕込み部(A1)からの蒸気を、凝縮液貯留部(A2)の凝縮液(5)にバブリングさせず、凝縮液貯留部(A2)の一部を構成するわたり(16)を経由して冷却部(B)にそのまま移行させるため、本願明細書では、この蒸留方法を「非バブリング型蒸留方法」と称する。
仕込み部(A1)からの蒸気を、凝縮液貯留部(A2)にバブリングしながら導入する蒸留方法を「バブリング型蒸留方法」と称する。
本発明の第三は、前記凝縮液貯留部に、精留機能を備えた棚段または充填物が配される蒸留装置を使用し、前記仕込み部の仕込み液を加熱し、加熱により発生した仕込み部の蒸気のアルコール濃度、または仕込み液のアルコール濃度が所定値以下となった場合に前記仕込み部の加熱を停止し、次いで、前記凝縮液貯留部の前記凝縮液を加熱し、発生した蒸気を前記冷却部に導入して留出液を得ることを特徴とする蒸留方法である。この方法は、前記したバブリング型蒸留方法に、更に棚段部が加味されたものである。
(1) 図2に示す蒸留装置を使用した。仕込み部(A1)は円筒状で、容量2,000mlのガラス製セパラブルフラスコ、凝縮液貯留部(A2)は円筒状で容量1,400mlのガラス製であり、内径15mm、外径35mm、高さ85mmの蒸気通路(6)が1つ設けられ、前記蒸気通路(6)の上部に、下端にガラス製フロート(9)が設けられた深さ100mm、半径50mmのアルミ製釣鐘型蓋部(7)が被覆されている。また、仕込み部(A1)の外部には、図示しない加熱ジャケットが設けられている。
アルコールはアルコメイト(理研計器AL−2型)で測定した。
検体5mlにフェノールフタレイン指示薬を1〜2滴加え、N/100水酸化ナトリウム溶液で滴定し、その滴定数に2を乗じた値を酸度とした。
新たに蒸留したアニリン9.0を氷酢酸5.7mlと混和し、混合液3mlにエチルアルコールを加えて100mlとし、アニリン酢酸溶液とした。また、新たに蒸留したフルフラール1gを100mlのエチルアルコールに溶かし、この1mlを50%(v/v)アルコール100mlに溶かした。この液は、フルフラールの含量0.1mg/mlであるから、適宜水で薄めて5ml中に0.01〜0.2mgのフルフラールを含むフルフラール標準溶液系列を作った。
フルフラール濃度は275nmにおける紫外部吸収と相関するため、試料をメンブラランフィルター(ミリポア0.45μm)でろ過した後、10mmセルを用いて分光光度計(日立U−2001型)により275nmにおける紫外部吸収測定した。
(i) アルコールの濃度
仕込み部(A1)の仕込み液及び分割採取した留出液のアルコール濃度を図6に示す。留出液のアルコール濃度は対照と比較し高めに推移し、仕込み部(A1)への加熱装置(11)からのスチーム吹込み停止後にアルコール濃度は急激に低下した。
図7に示すように、蒸留開始からスチーム停止時までは、バブリング型および対照とは、紫外部吸収(275nm)が略同じように推移した。しかし、バブリング型では、仕込み部(A1)で加熱装置(11)からのスチーム供給を停止した後、留出液8区分から留出液中の紫外部吸収(275nm)が急激に減少したが、対照では急激に増加した。
酸度の測定結果を図8に示す。バブリング型における留出液の酸度は最初から対照より低く推移し、仕込み部(A1)での加熱装置(11)からのスチームの吹き込みを停止した後、さらに酸度は低下した。
バブリング型および対照における混合試料のアルコール濃度、酸度、フルフラール、紫外部吸収(275nm)の測定結果を表1に示す。
(1) 図3に示す蒸留装置を使用した。仕込み部(A1)は円筒状で、容量2,000mlのガラス製セパラブルフラスコ、凝縮液貯留部(A2)は円筒状で容量1,400mlのガラス製であり、内径15mm、外径33mm、高さ85mmの蒸気通路(6)が1つ設けられ、前記蒸気通路(6)の上部に、ガラス製の浅い蓋部(8)が被覆されている。実施例1と同様に、仕込み部(A1)の外部には、図示しない加熱ジャケットが設けられている。
(i) アルコールの濃度
アルコールの濃度の推移を図9に示す。非バブリング型の蒸留初期(区分1〜4)のアルコール濃度は、対照とほぼ同様に推移したが、区分5〜7は対照よりアルコール濃度が低下した。また、加熱装置(11)からのスチーム吹き込みの停止後、凝縮液貯留部(A2)の凝縮液の蒸留を開始した直後のアルコール濃度は対照より12.5ポイント高くなった。
図10に示すように、非バブリング型では、加熱装置(11)からのスチーム吹き込みの停止後、留出液の紫外部吸収(275nm)は急激に減少した。
酸度の測定結果を図11に示した。非バブリング型では、加熱装置(11)からのスチーム吹き込みの停止後、対照と比較し酸度も急激に減少した。なお、図8と図11とを比較すると、バブリング型は非バブリング型と異なり最初から凝縮液を蒸留するため、非バブリング型よりも酸度が低くなっている。
非バブリング型および対照における混合試料のアルコール濃度、酸度、フルフラール、紫外部吸収(275nm)の測定結果を表2に示す。
A1・・・仕込み部、
A2・・・凝縮液貯留部、
A3・・・棚段部、
B・・・冷却部、
C・・・連通部、
3・・・仕込み液、
5・・・凝縮液、
6・・・蒸気通路、
7・・・蓋部(釣鐘型)、
8・・・蓋部(浅型)、
9・・・フロート、
10・・・冷却管、
11、13・・・加熱装置、
14・・・副加熱装置
12・・・スチーム注入器、
15・・・還流液出口、
16・・・わたり、
17・・・外気導入用管、
19、20、25・・・バルブ、
21・・・留出液タンク、
49、50、51・・・棚段、
52、53、54・・・ダウンカマ、
60、63・・・弁型蓋部、
61・・・バネ、
100・・・蒸留装置。
Claims (9)
- 蒸留部と、前記蒸留部で発生した蒸気を冷却するための冷却部とを有する蒸留装置であって、
前記蒸留部は、蒸留部の内部を隔壁で仕切って形成された仕込み液の仕込み部と、前記仕込み部以外の部分であって前記冷却部と連通する凝縮液貯留部とからなり、
前記仕込み部の上端には、前記仕込み液の加熱により発生する蒸気を凝縮液貯留部に導入する連通部が形成され、
前記凝縮液貯留部は、前記蒸気が導入されおよび凝縮されてなる凝縮液を貯留するものであり、
かつ前記連通部の上端部には、前記凝縮液貯留部内の蒸気および/または凝縮液を前記仕込み部に逆流させない逆流防止機構が配設されることを特徴とする、蒸留装置。 - 前記逆流防止機構は、逆流防止弁または、前記連通部の上端部に載置された釣鐘型蓋部である、請求項1記載の蒸留装置。
- 前記蒸留部には、前記仕込み部で発生した蒸気を前記凝縮液貯留部に導入する蒸気導入機構が設けられていることを特徴とする、請求項1または2記載の蒸留装置。
- 前記仕込み部には、仕込み液を加熱する加熱装置が設けられ、前記凝縮液貯留部には、前記凝縮液を加熱する加熱装置が設けられ、かつ前記蒸留部から留出した蒸気を前記冷却部に導入して生じた凝縮液の一部または全部を前記凝縮液貯留部に還流する還流装置が配設されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の蒸留装置。
- 前記凝縮液貯留部には、精留機能を備えた棚段または充填物が配されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の蒸留装置。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の蒸留装置を用いた蒸留方法であって、
前記仕込み部の仕込み液を加熱して発生した蒸気を前記逆流防止機構を経て前記凝縮液貯留部に導入する工程と、
前記凝縮液貯留部の蒸気を前記冷却部に導入し、前記冷却部を冷却して生じた凝縮液の一部または全部を前記凝縮液貯留部に還流し、かつ前記凝縮液の残部を留出液として得る工程と、
前記凝縮液貯留部で発生および貯留する蒸気の凝縮液を加熱し、発生した蒸気を前記冷却部に導入して留出液を得る工程とを含む、蒸留方法。 - 前記仕込み液は、前記仕込み部容量の67%以下である、請求項6記載の蒸留方法。
- 前記仕込み部の仕込み液の加熱が、前記仕込み部の下部に配置された蒸気導入機構によってスチームを導入して行うものである、請求項6または7記載の蒸留方法。
- 前記仕込み部の仕込み液を加熱し、加熱により発生した仕込み部の蒸気のアルコール濃度、または仕込み液のアルコール濃度が所定値以下となった場合に前記仕込み部の加熱を停止し、次いで、前記凝縮液貯留部の前記凝縮液を加熱し、発生した蒸気を前記冷却部に導入して留出液を得ることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の蒸留方法。
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