以下、図面を参照して、この発明の実施例である分析装置について、生化学検査、輸血検査等の各分野のうち、磁性粒子を固相担体として用いて被検血液の抗原抗体反応等の免疫検査を行なう分析装置を例に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。検体に対する分析処理のうち反応容器内の未反応物質を除去するBF洗浄処理の未反応物質除去不良の有無を特定する場合について説明する。また、実施の形態1においては、微量濃度の抗原が含まれる低濃度試薬における発光量を基準値とし、高濃度の抗原が含まれる高濃度試薬に対するBF洗浄後の発光量が基準値の所定倍以上である場合には、BF洗浄処理の未反応物質除去不良があると特定する。図1は、本実施の形態1にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる分析装置1は、検体と試薬との間の反応によって生じた発光を測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構4とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の免疫学的な分析を自動的に行なう。
測定機構2は、大別して検体移送部21、チップ格納部22、検体分注移送機構23、免疫反応テーブル24、BFテーブル25、第1試薬格納部26、第2試薬格納部27、第1試薬分注移送機構28、第2試薬分注移送機構29、酵素反応テーブル30、測光機構31、第1キュベット移送機構32および第2キュベット移送機構33を備える。測定機構2の各構成部位は、所定の動作処理を行なう単数または複数のユニットを備える。また、制御機構4は、制御部41、入力部43、分析部44、特定部45、記憶部46、出力部47および送受信部48を備える。測定機構2および制御機構4が備えるこれらの各部は、制御部41に電気的に接続されている。
まず、測定機構2について説明する。検体移送部21は、検体を収容した複数の検体容器21aを保持し、図中の矢印方向に順次移送される複数の検体ラック21bを備える。検体容器21aに収容された検体は、検体の提供者から採取した血液または尿等である。
チップ格納部22は、複数のチップを整列したチップケースを設置しており、このケースからチップを供給される。このチップは、感染症項目測定時のキャリーオーバー防止のため、検体分注移送機構23のノズル先端に装着され、検体分注ごとに交換されるディスポーザブルのサンプルチップである。
検体分注移送機構23は、検体の吸引および吐出を行なうプローブが先端部に取り付けられ鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。検体分注移送機構23は、検体移送部21によって所定位置に移動された検体容器21a内の検体をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって所定位置に搬送されたキュベットに分注して検体を所定タイミングでBFテーブル25上のキュベット内に移送する。
免疫反応テーブル24は、それぞれ配置されたキュベット内で検体と分析項目に対応する所定の試薬とを反応させるための反応ラインを有する。免疫反応テーブル24は、免疫反応テーブル24の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ラインごとに回動自在であり、免疫反応テーブル24に配置されたキュベットを所定タイミングで所定位置に移送する。免疫反応テーブル24においては、図1に示すように、前処理、前希釈用の外周ライン24a、検体と固相担体試薬との免疫反応用の中周ライン24bおよび検体と標識試薬との免疫反応用の内周ライン24cを有する3重の反応ライン構造を形成してもよい。
BFテーブル25は、所定の洗浄液を吸引吐出して検体または試薬における未反応物質を分離するBF(bound−free)分離を実施するBF洗浄処理を行なう。BFテーブル25は、BFテーブル25の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ラインごとに回動自在であり、BFテーブル25に配置されたキュベットを所定タイミングで所定位置に移送する。BFテーブル25は、BF分離に必要な磁性粒子担体を集磁する集磁機構とBF分離を実施するBF洗浄ノズルと集磁された担体を分散させる攪拌機構を有する。このBFテーブル25におけるBF洗浄処理として、第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理が行なわれ、第1BF洗浄処理と第2BF洗浄処理においては、異なるBF洗浄ノズル、および集磁機構が用いられる場合がある。
第1試薬格納部26は、BFテーブル25に配置されたキュベット内に分注される第1試薬が収容された試薬容器を複数収納できる。第2試薬格納部27は、BFテーブル25に配置されたキュベット内に分注される第2試薬が収容された試薬容器を複数収納できる。第1試薬格納部26および第2試薬格納部27は、図示しない駆動機構が駆動することによって、時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器を第1試薬分注移送機構28または第2試薬分注移送機構29による試薬吸引位置まで移送する。
第1試薬分注移送機構28は、第1試薬の吸引および吐出を行なうプローブが先端部に取り付けられ鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。第1試薬分注移送機構28は、第1試薬格納部26によって所定位置に移動された試薬容器内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって所定位置に搬送されたキュベットに分注する。なお、第1試薬分注移送機構28において試薬と接触した箇所は、試薬を分注するごとに洗浄される。
第2試薬分注移送機構29は、第1試薬分注移送機構28と同様の構成を有し、第2試薬格納部27によって所定位置に移動された試薬容器内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって所定位置に搬送されたキュベットに分注する。なお、第2試薬分注移送機構29において試薬と接触した箇所は、試薬を分注するごとに洗浄される。
酵素反応テーブル30は、基質液が注入されたキュベット内において光を発生させる酵素反応を行なうための反応ラインである。測光機構31は、キュベット内の反応液から発する発光を測定する。測光機構31は、たとえば、化学発光で生じた微弱な発光を検出する光電子倍増管を備えて、発光量を測定する。また、測光機構31は、光学フィルターを保持し、発光強度に応じて光学フィルターにより減光された測定値によって真の発光強度を算出する。
第1キュベット移送機構32は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行ない、液体を収容したキュベットを所定タイミングで、免疫反応テーブル24、BFテーブル25、酵素反応テーブル30、図示しないキュベット供給部および図示しないキュベット廃棄部の所定位置に移送するアームを備える。また、第2キュベット移送機構33は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行ない、液体を収容したキュベットを所定タイミングで、酵素反応テーブル30、測光機構31、図示しないキュベット廃棄部の所定位置に移送するアームを備える。
つぎに、制御機構4について説明する。制御機構4は、一または複数のコンピュータシステムを用いて実現され、測定機構2に接続する。制御機構4は、分析装置1の各処理にかかわる各種プログラムを用いて、測定機構2の動作処理の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう。
制御部41は、制御機能を有するCPU等を用いて構成され、分析装置1の各構成部位の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行ない、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。制御部41は、記憶部46が記憶するプログラムをメモリから読み出すことにより分析装置1の制御を実行する。制御部41は、処理制御部42を有する。
ここで、分析装置1は、微量濃度の抗原が含まれる低濃度試薬における発光量を基準値として取得し、さらに高濃度の抗原が含まれる高濃度試薬に対するBF洗浄後の発光量を異常特定用測定値として取得し、BF洗浄処理の未反応物質除去不良の有無を特定する。処理制御部42は、分析装置1の異常を特定するための基準値および異常測定値を取得するために、測定機構2の各機構の処理動作を制御する。
入力部43は、種々の情報を入力するためのキーボード、出力部47を構成するディスプレイの表示画面上における任意の位置を指定するためのマウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部44は、測定機構2から取得した測定結果に基づいて検体に対する分析処理等を行なう。
特定部45は、検体に対する分析処理のうち反応容器内の未反応物質を除去するBF洗浄処理の未反応物質除去不良の有無を特定する。特定部45は、微量濃度の抗原が含まれる低濃度試薬における発光量を基準値とし、高濃度の抗原が含まれる高濃度試薬に対するBF洗浄後の発光量である異常特定用測定値が基準値に基づく許容範囲を満すか否かをもとにBF洗浄処理の未反応物質除去不良の有無を特定する。
記憶部46は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部46は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
出力部47は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、処理制御部42の制御のもと、分析に関する諸情報を出力する。送受信部48は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。
つぎに、図2を参照して、分析装置1による異常特定処理の処理手順について説明する。図2に示すように、入力部43は、操作者による操作のもと、第1BF洗浄処理または第2BF洗浄処理のいずれの除去不良の特定を指示する指示情報を制御部41に入力し、制御部41は、入力部43から入力された指示情報をもとに除去不良の特定対象であるBF洗浄処理に対応した処理パターンを決定する(ステップS2)。そして、測定機構2の各機構は、処理制御部42の制御のもと、微量濃度の抗原が含まれる低濃度試薬を用いて得られた測定結果を基準値として取得する基準取得用測定処理を行なう(ステップS4)。そして、測定機構2の各機構は、処理制御部42の制御のもと、高濃度の抗原が含まれる高濃度試薬を用いて得られた測定結果を異常特定用測定値として取得する異常特定用測定処理を行なう(ステップS6)。そして、特定部45は、異常特定用測定処理において取得された異常特定用測定値が基準取得用測定処理において取得された基準値に基づく許容範囲を満たすか否かをもとに、BF洗浄処理の除去不良の有無を特定する異常特定処理を行なう(ステップS8)。
つぎに、図3〜図7を参照して、図2に示す基準取得用測定処理および異常特定用測定処理を説明する。図3は、図2に示す基準取得用測定処理および異常特定用測定処理の処理手順を示す図である。この図3においては、基準取得用測定処理および異常特定用測定処理とともに検体に対して通常行なわれる通常分析についても示している。また、図4は、図3に示す通常分析を説明する図である。
まず、通常分析において説明する。通常分析は、図3および図4(1)に示すように、図1に図示しないキュベット供給部より、BFテーブル25の所定位置に第1キュベット移送機構32によってキュベット20が移送され、このキュベット20内に磁性粒子61を含む第1試薬が第1試薬分注移送機構28によって分注される第1試薬分注処理が行なわれる(ステップS11)。その後、図4(2)に示すように、検体移送部21によって所定位置に移送された検体容器21a内から、チップ格納部22から供給されたチップを装着した検体分注移送機構23によって、BFテーブル25上のキュベット20内に抗原62を含む検体が分注される検体分注処理が行なわれる(ステップS12)。そして、キュベット20は、BFテーブル25の攪拌機構によって攪拌された後、第1キュベット移送機構32によって、免疫反応テーブル24の中周ライン24bに移送される。この場合、一定の反応時間経過によって、検体中の抗原62と磁性粒子61とが結合した磁性粒子担体が生成する。
そして、キュベット20は第1キュベット移送機構32によってBFテーブル25に移送され、図4(3)に示すように、BFテーブル25の集磁機構25aによる磁性粒子担体集磁およびBF洗浄ノズル25cによるBF分離が実施される1回目の第1BF洗浄処理が行なわれる(ステップS13)。この結果、図4(3)に示すように、キュベット20内の未反応物質63が除去される。
そして、図4(4)に示すように、BF分離後のキュベット20内に第2試薬である標識抗体65を含む標識試薬が第2試薬として第2試薬分注移送機構29によって分注され、攪拌機構によって攪拌される第2試薬分注処理が行なわれる(ステップS14)。この結果、磁性粒子担体と標識抗体65とが結合した免疫複合体67が生成される。その後、このキュベット20は、第1キュベット移送機構32によって免疫反応テーブル24の内周ライン24cに移送され、一定の反応時間が経過した後、BFテーブル25に移送される。
そして、図4(5)に示すように、キュベット20に対して、集磁機構25bによる磁性粒子担体集磁およびBF洗浄ノズル25dによるBF分離が実施される2回目の第2BF洗浄処理が行なわれる(ステップS15)。この結果、図4(5)に示すように、キュベット20から磁性粒子担体と結合していない標識抗体65が除去される。
そして、キュベット20には、図4(6)に示すように、基質66を含む基質液が分注され再度攪拌される基質注入処理が行なわれる(ステップS16)。つぎに、キュベット20は、第1キュベット移送機構32によって酵素反応テーブル30に移送され、酵素反応に必要な一定の反応時間が経過した後、第2キュベット移送機構33によって測光機構31に移送される。図4(7)に示すように、酵素反応を経て基質66と免疫複合体67とが結合することによって、免疫複合体67から光L0が発せられる。このため、測光機構31によってキュベットから発せられる光Lが測定される測定処理が行なわれる(ステップS17)。通常分析においては、分析対象の抗原が検体中に含まれる量を検出するために、抗原と磁性粒子を結合させた後、さらに標識抗体と磁性粒子担体とを結合させて免疫複合体を生成し、この免疫複合体を基質と反応させることによって光を発生させ、この発生した光量を測定する。そして、分析部44は、測定された光量に応じて抗原量を求めている。
このように、検体に対して行なわれる通常の分析処理においては、第1試薬分注処理(ステップS11)、検体分注処理(ステップS12)、第1BF洗浄処理(ステップS13)、第2試薬分注処理(ステップS14)、第2BF洗浄処理(ステップS15)、基質注入処理(ステップS16)および測定処理(ステップS17)が行なわれる。
つぎに、図3、図5および図6を参照して、基準取得用測定処理について説明する。図5は、図3に示す特定用BF洗浄処理の処理手順を説明するフローチャートであり、図6は、図3に示す基準取得用測定処理を説明する図である。
図3および図6(1)に示すように、通常分析における第1試薬分注処理に代えて、低濃度試薬および高濃度試薬に含まれる抗原と反応しない磁性粒子61aを含むダミー試薬を分注するダミー試薬分注処理が行なわれる(ステップS21)。そして、基準取得用測定処理においては、図6(2)に示すように、通常分析と異なり、検体分注処理(ステップS12)を行なわず、ダミー試薬分注処理において分注した磁性粒子61aの乾燥防止のため希釈液を注入する。
つぎに、基準取得用測定処理においては、図6(3)に示すように、特定用BF洗浄処理が行なわれる(ステップS23)が行なわれる。特定用BF洗浄処理においては、制御部41が決定した処理パターンにしたがって、除去不良の特定対象であるBF洗浄処理が行なわれる。特定用BF洗浄処理においては、図5に示すように、処理制御部42は、特定対象が、第1BF洗浄処理であるか、第2BF洗浄処理であるか、または、第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理であるかを判断する(ステップS231)。処理制御部42は、第1BF洗浄処理であると判断した場合(ステップS231:第1BF洗浄)、測定機構2の各機構に対して、集磁機構25aおよびBF洗浄ノズル25cを用いる第1BF洗浄処理を行なわせる(ステップS232)。また、処理制御部42は、第2BF洗浄処理であると判断した場合(ステップS231:第2BF洗浄)、測定機構2の各機構に対して、集磁機構25bおよびBF洗浄ノズル25dを用いる第2BF洗浄処理を行なわせる(ステップS233)。処理制御部42は、第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理であると判断した場合(ステップS231:第1BF洗浄および第2BF洗浄処理)、測定機構2の各機構に対して、第1BF洗浄処理を行なわせた後に(ステップS234)、第2BF洗浄処理を行なわせる(ステップS235)。
そして、基準取得用測定処理においては、図6(4)に示すように、標識抗体65とともに、たとえば0.3ppmの抗原62aが含まれる低濃度試薬と、低濃度試薬内の抗原62aと反応可能である磁性粒子61が分注される低濃度試薬分注処理が行なわれる(ステップS24)。
ここで、0.3ppmの抗原62aが含まれていた場合であっても、分析装置1は、臨床学的に十分に問題なく、分析対象である他の抗原に対する測定結果を出力できる。このため、基準取得用測定処理においては、0.3ppmの抗原62aに対応する発光量を基準値として取得するために、低濃度試薬を分注した後に、低濃度試薬内の抗原62aが発光可能となる分析処理を行なって発光量を測定する。具体的には、基準取得用測定処理においては、低濃度試薬分注処理後のキュベット20内の攪拌および一定の反応時間経過によって、図6(5)に示すように、磁性粒子61、低濃度試薬内の抗原62aおよび標識抗体65が反応し免疫複合体67aが生成される。つぎに、基準取得用測定処理においては、通常分析の場合と同様に、第2BF洗浄処理が行なわれ(ステップS15)、磁性粒子担体と結合しなかった標識抗体65が除去される。なお、免疫複合体67aは、BFテーブル25における集磁機構によって集磁されており、キュベット20外に除去されることはない。
そして、図6(6)に示すように、基準取得用測定処理においては、通常分析と同様に基質66を含む基質液がキュベット20に注入される基質注入処理が行なわれる(ステップS16)。この場合、図6(7)に示すように、免疫複合体67aは、図4(6)に示す免疫複合体67と同様に、酵素反応を経ることによって基質66と結合し、結合物671aとなって光La1を発する。基準取得用測定処理においては、結合物671aから発せられる光La1を測定する測定処理が行なわれ(ステップS17)、基準値となる発光量を取得できる。
0.3ppmの抗原が含まれていた場合であっても、分析装置1は、十分に臨床学的に問題なく、分析対象である他の抗原に対する測定結果を出力できる。このため、基準取得用測定処理における測定処理において基準値として測定された光La1の発光量は、分析装置1が臨床学的に十分に問題なく測定結果を出力できる不純物濃度の判断基準となる。
つぎに、図3および図7を参照して、異常特定用測定処理について説明する。図7は、図3に示す異常特定用測定処理を説明する図である。図3および図7(1)に示すように、異常特定用測定処理においては、基準取得用測定処理と同様に、磁性粒子61aを含むダミー試薬を分注するダミー試薬分注処理が行なわれる(ステップS21)。
そして、異常特定用測定処理においては、図7(2)に示すように、通常分析における検体分注処理(ステップS12)に代えて、高濃度の抗原62bが含まれる高濃度試薬をキュベット20内に分注する高濃度試薬分注処理が行なわれる(ステップS32)。この高濃度試薬においては、たとえば、100万ppmの抗原62bが含まれている。
つぎに、異常特定用測定処理においては、図7(3)に示すように、基準取得用測定処理において行なわれた特定用BF洗浄処理と同様に図5に示す処理手順を行なって特定用BF洗浄処理が行なわれる(ステップS23)。すなわち、異常特定用測定処理においては、基準取得用測定処理において特定用BF洗浄処理として第1BF洗浄処理を行なった場合には同様に第1BF洗浄処理を行ない、基準取得用測定処理において特定用BF洗浄処理として第2BF洗浄処理を行なった場合には同様に第2BF洗浄処理を行ない、基準取得用測定処理において特定用BF洗浄処理として第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理の双方を行なった場合には同様に第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理の双方を行なう。
ここで、BF洗浄処理が正常に行なわれる場合、高濃度試薬内の抗原62bは、キュベット20内から除去され、キュベット20内に残存することはない。しかしながら、たとえばBF洗浄ノズル25cまたはBF洗浄ノズル25dが詰まった場合には、洗浄液の吐出やキュベット20内の液体および洗浄液の吸引が正常に行なわれないことがある。このようなBF洗浄ノズル詰まり等に起因するBF洗浄不良があった場合には、図7(3)に示すように、抗原62bの少なくとも一部がキュベット20内に残存してしまう。
このようなBF洗浄不良の特定のために、異常特定用測定処理においては、特定用BF洗浄処理を行なった後に、キュベット20内に残存する抗原62bが発光可能となる分析処理を行なってキュベット20内に残存する抗原62bに対応する発光量を異常特定用測定値として測定する。具体的には、異常特定用測定処理においては、図7(4)に示すように、磁性粒子61および標識抗体65を含む試薬を分注する特定用試薬を分注する特定用試薬分注処理が行なわれる(ステップS34)。その後、キュベット20内の攪拌および一定の反応時間経過によって、図7(5)に示すように、磁性粒子61、残存する抗原62bおよび標識抗体65が結合し、免疫複合体67bが生成される。そして、異常特定用測定処理においては、通常分析と同様に、第2BF洗浄処理が行なわれ(ステップS15)、磁性粒子担体と結合しなかった標識抗体65が除去される。なお、免疫複合体67bは、BFテーブル25における集磁機構25bによって集磁されており、キュベット20外に除去されることはない。
そして、図7(6)に示すように、異常特定用測定処理においては、通常分析と同様に基質66を含む基質液がキュベット20に注入される基質注入処理が行なわれる(ステップS16)。この場合、免疫複合体67bは、図7(7)に示すように、図4(6)に示す免疫複合体67と同様に、酵素反応を経ることによって基質66と結合し、結合物671bとなって光Lb1を発する。ここで、異常特定用測定処理においては、結合物671bから発せられる光Lb1を異常特定用測定値として測定する測定処理が行なわれる(ステップS17)。異常特定用測定値として測定された光Lb1の発光量は、特定用BF洗浄処理を行なった後に残存する抗原62bの量に対応する。
つぎに、図2に示す異常特定処理について説明する。特定部45は、異常特定用測定処理において取得した異常特定用測定値が基準取得用処理において取得した基準値に基づいて設定された許容範囲を満たさない場合に、特定用BF洗浄処理において行なったBF洗浄処理において除去不良があると特定する。特定部45は、予め設定された許容範囲として、記憶部46内に記憶された図8に例示するテーブルT1を参照して異常特定処理を行なう。ここで、基準取得用測定処理において得られた基準値は、0.3ppmの抗原62aが含まれていた場合に発せられる光Laの発光量であって、臨床学的に問題なく分析対象である抗原そのものや他の抗原に対する測定結果を出力できる不純物濃度の発光量の判断基準となる。このため、テーブルT1においては、特定BF洗浄処理それぞれに対し各基準値をもととした判断基準が示されている。
基準取得用測定処理および異常特定用測定処理において、特定BF洗浄処理として第1BF洗浄処理を行なった場合の異常特定処理について説明する。特定BF洗浄処理として第1BF洗浄処理を行なった場合、たとえば異常特定用測定値が0.3ppmの抗原62aに応じた発光量である基準値の1.1倍未満であれば、分析対象である抗原に対する測定結果を臨床学的に問題なく出力できる。したがって、特定部45は、異常特定用測定値が基準値の1.1倍未満である場合、第1BF洗浄処理において臨床学的に問題ない程度まで高濃度試薬内の抗原62bを除去することができるものと考えられるため、BF洗浄ノズル詰まり等に起因する除去不良はないと判断する。一方、特定部45は、テーブルT1の行R1に示すように、異常特定用測定値が基準値の1.1倍以上である場合、第1BF洗浄処理において高濃度試薬内の抗原62bを十分に除去できず測定結果に影響を与えてしまう程度の抗原62bが残存していると判断し、BF洗浄ノズル25cの詰まり等に起因する除去不良があると判断する。
基準取得用測定処理および異常特定用測定処理において、特定BF洗浄処理として第2BF洗浄処理を行なった場合、たとえば異常特定用測定値が基準値の1.1倍未満であれば、分析対象である抗原に対する測定結果を臨床学的に問題なく出力できる。したがって、特定部45は、異常特定用測定値が基準値の1.1倍未満である場合、第2BF洗浄処理においてBF洗浄ノズル詰まり等に起因する除去不良はないと判断する。一方、特定部45は、テーブルT1の行R2に示すように、異常特定用測定値が基準値の1.1倍以上である場合、第2BF洗浄処理において高濃度試薬内の抗原62bを十分に除去できず臨床学的に測定結果に影響を与えてしまう程度の抗原62bが残存していると判断し、BF洗浄ノズル25dの詰まり等に起因する除去不良があると判断する。
また、基準取得用測定処理および異常特定用測定処理において、特定BF洗浄処理として第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理を行なった場合、たとえば異常特定用測定値が基準値の1.2倍未満であれば、分析対象である抗原に対する測定結果を臨床学的に問題なく出力できる。したがって、特定部45は、異常特定用測定値が基準値の1.2倍未満である場合、第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理においてBF洗浄ノズル詰まり等に起因する除去不良はないと判断する。一方、特定部45は、テーブルT1の行R3に示すように、異常特定用測定値が基準値の1.2倍以上である場合、第1BF洗浄処理および/または第2BF洗浄処理において高濃度試薬内の抗原62bを十分に除去できず臨床学的に測定結果に影響を与えてしまう程度の抗原62bが残存していると判断し、BF洗浄ノズル25c,25dの詰まり等に起因する除去不良があると判断する。
このように、実施の形態1にかかる分析装置1においては、臨床学的に十分に問題なく測定結果を出力できる不純物濃度に対応する発光量である基準値と、実際に高濃度試薬に対するBF洗浄処理を行なった後の発光量である異常特定用測定値とをもとに、BF洗浄処理が臨床学的に問題ない程度までキュベット内の内容物を除去しているか否かを判断している。このため、本実施の形態1によれば、基準取得用測定処理と異常特定用測定処理において、異常特定対象であるBF洗浄処理以外の処理をほぼ同様に行なうことによって、他の処理の異常に関する寄与を考慮する必要がなく、BF洗浄処理に対する除去不良のみを正確に検証することができる。また、本実施の形態1によれば、測光機構31によって測定された測定結果を用いてBF洗浄処理の異常の有無を特定できるため、従来において必要であった分析装置本体とは別個の分光光度計における比色測定を用いる必要がない。したがって、本実施の形態1によれば、正確かつ簡易に分析装置の異常を特定することができる。
なお、実施の形態1においては、血液や尿等の実際の検体に含まれる抗原と同様に磁性粒子61と反応する抗原を構成物として含む低濃度試薬および高濃度試薬を用いた場合を例に説明したが、これに限らない。たとえば、構成物として、発光基質として機能する基質(酵素)と反応する標識体を構成物として含む低濃度試薬および高濃度試薬を用いてもよい。この場合、分析装置1においては、低濃度試薬として所定の微量濃度の標識体を含む試薬を使用して、基準取得用測定処理を行なう。そして、分析装置1においては、高濃度試薬として所定の高濃度の標識体が含まれる試薬を使用して、異常特定用測定処理を行なう。
図9および図10を参照して、図2に示す基準取得用測定処理として、標識体を構成物として含む低濃度試薬を用いた場合について説明する。図9および図10(1)〜(3)に示すように、図3および図6(1)〜(3)に示す場合と同様に、磁性粒子61aを含むダミー試薬を分注するダミー試薬分注処理が行なわれ(ステップS121)、希釈液が注入された後に特定用BF洗浄処理が行なわれる(ステップS123)。次いで、図10(4)に示すように、たとえばバッファ液内に0.3ppmの標識抗体65aを含む低濃度試薬を分注する低濃度試薬分注処理が行なわれる(ステップS124)。この標識抗体65aと基質66とは酵素反応を経て結合することによって光を発する。このため、0.3ppmの標識抗体65aに対応する発光量を基準値として取得する処理として、まず、図9および図10(6)に示すように、基質66を含む基質液がキュベット20に注入される基質注入処理が行なわれる(ステップS16)。そして、分析装置1においては、所定の酵素反応を経た後に、基質66と標識抗体65aとの結合物651aから発せられる光La2を測定する測定処理が行なわれ(ステップS17)、基準値となる発光量を取得できる。
図9および図10に示すように、発光基質として機能する基質66と結合する標識抗体65aを構成物とした低濃度試薬を用いた場合には、分析装置1は、標識抗体65aと基質66との間の酵素反応を経るだけで、基準値となる発光量を取得することができる。すなわち、分析装置1は、標識抗体65aを構成物とした低濃度試薬を用いた場合には、抗原62aを含む低濃度試薬を用いた場合に必要となる抗原65aを発光可能とするための各処理、すなわち、図6(4)に示す磁性粒子61および標識抗体65の注入処理、磁性粒子担体と結合しなかった標識抗体65を除去するための第2BF洗浄処理(ステップS15)を行なう必要がない。
つぎに、図9および図11を参照して、図2に示す異常特定用定処理として、標識体を構成物とした高濃度試薬を用いた場合について説明する。図9および図11(1)〜(3)に示すように、図3および図7(1)に示す場合と同様に、磁性粒子61aを含むダミー試薬を分注するダミー試薬分注処理が行なわれる(ステップS121)。そして、図9および図11(2)に示すように、たとえば100万ppmの標識抗体65bが含まれる高濃度試薬をキュベット20内に分注する高濃度試薬分注処理が行なわれる(ステップS132)。次いで、図9および図11(3)に示すように、希釈液が注入された後に特定用BF洗浄処理が行なわれる(ステップS123)。標識抗体65bは、磁性を有しないため、BF洗浄処理に異常がない場合には、この特定用BF洗浄処理において、すべて除去されることとなる。しかしながら、BF洗浄不良があった場合には、キュベット20内に標識抗体65bが残存してしまう。BF洗浄処理の異常の有無を確認するために、標識抗体65bが発光可能となるキュベット20内に残存する抗原62bに対応する発光量を異常特定用測定値として測定する。具体的には、まず、図11(4)に示すように、基準取得用測定処理における低濃度試薬分注処理と同条件とするために、バッファ液のみを分注するバッファ液分注処理(ステップS134)が行なわれる。次いで、図9および図11(6)に示すように、基質66を含む基質液がキュベット20に注入される基質注入処理が行なわれる(ステップS16)。そして、分析装置1においては、所定の酵素反応を経た後に、基質66とキュベット20内に残存した標識抗体65bとの結合物651bから発せられる光Lb2を測定する測定処理が行なわれ(ステップS17)、基準値となる発光量を取得できる。
図9および図11に示すように、発光基質として機能する基質66と結合する標識抗体65bを構成物とした高濃度試薬を用いた場合には、分析装置1は、標識抗体65bと基質66との間の酵素反応を経るだけで、異常特定用測定値となる発光量を取得することができる。すなわち、分析装置1は、抗原62bを含む高濃度試薬を用いた場合に必要となるキュベット20内に残存する抗原62bを発光可能とするための各処理、すなわち、図7(4)に示す磁性粒子61および標識抗体65の注入処理、磁性粒子担体と結合しなかった標識抗体65を除去するための第2BF洗浄処理(ステップS15)を行なう必要がない。
そして、分析装置1においては、図8に例示するテーブルT1を参照し、図10(7)において取得した基準値および図11(7)において取得した異常特定用測定値を比較することによって、特定用BF洗浄処理において行なわれた各BF洗浄処理の異常を特定する。
このように、分析装置1は、識抗体を構成物として含む低濃度試薬および高濃度試薬を用いることによって、基準取得用測定処理および異常特定用測定処理において、図3、図6(5)および図7(5)に示す第2BF洗浄処理を省略することができ、さらに迅速にBF洗浄処理の異常特定を行なうことができる。
また、図3、図6および図7に示すように特定用BF洗浄処理に加えてさらに第2BF洗浄処理を行なうときにおいては、BF洗浄処理の未反応物質除去能力に異常があった場合には、異常特定用測定処理における高濃度試薬の残存量だけではなく、基準取得用測定処理における基準値に関しても正確に測定できない場合が考えられる。したがって、分析装置1は、図9、図10および図11に示すように、標識抗体を構成物とした低濃度試薬および高濃度試薬を用いた場合には、特定用BF洗浄処理以外のBF洗浄処理を行なう必要がないことから、BF洗浄処理の未反応物質除去能力に異常があった場合であっても、この異常の影響を受けることなく、基準値および異常特定用測定値を取得することができ、さらに正確にBF洗浄処理の異常特定を行なうことが可能になる。
また、図9、図10および図11に示すように、標識抗体は、基質(酵素)と結合してそのまま発光可能であるため、この標識抗体を構成物として含む低濃度試薬および高濃度試薬を用いた場合には、抗原を発光可能とするための磁性粒子および標識抗体を用いる必要がない。したがって、分析装置1においては、標識抗体を構成物として含む低濃度試薬および高濃度試薬を用いた場合には、BF洗浄処理の異常特定のために、磁性粒子および標識抗体を含む試薬を用いる必要がなく、BF洗浄処理の異常特定のために使用する試薬量を低減することができる。
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。実施の形態2においては、検体に対する分析処理のうち液体を分注する分注機構の洗浄不良の有無を特定する場合について説明する。実施の形態2においては、低濃度試薬における発光量を基準値とし、分注機構による高濃度試薬分注後に分注機構の洗浄処理を経て分注移送機構による抗原を含まない0濃度試薬分注後の発光量が基準値の所定倍以上である場合には、分注機構の洗浄不良があると特定する。なお、実施の形態2にかかる分析装置は、図1に示す分析装置1と同様の構成を有する。
まず、図12を参照して、本実施の形態2における異常特定処理の処理手順について説明する。図12に示すように、測定機構2の各機構は、処理制御部42の制御のもと、微量濃度の抗原が含まれる低濃度試薬を用いて得られた測定結果を基準値として取得する基準取得用測定処理を行なう(ステップS42)。つぎに、測定機構2の各機構は、高濃度の抗原が含まれる高濃度試薬を、洗浄不良の対象である分注移送機構を用いて注入する高濃度試薬使用処理を行なう(ステップS44)。そして、測定機構2の各機構は、洗浄された分注移送機構を用いて高濃度試薬が分注されたキュベットとは別のキュベット内に0濃度試薬を分注した後に異常特定用測定値として発光量を測定する異常特定用測定処理を行なう(ステップS46)。そして、特定部45は、異常特定用測定処理において取得された異常特定用測定値が基準取得用測定処理において取得された基準値に基づく許容範囲を満たすか否かをもとに、分注機構の洗浄不良の有無を特定する異常特定処理を行なう(ステップS48)。
つぎに、図13〜図16を参照して、図12に示す基準取得用測定処理、高濃度試薬使用処理および異常特定用測定処理について説明する。図13は、図12に示す基準取得用測定処理、高濃度試薬使用処理および異常特定用測定処理の処理手順を示す図である。図14は、図13に示す基準取得用測定処理を説明する図であり、図15は、図13に示す高濃度試薬使用処理を説明する図であり、図16は、図13に示す異常特定用測定処理を説明する図である。
まず、基準取得用測定処理について説明する。図13および図14(1)に示すように、基準取得用測定処理においては、低濃度試薬および高濃度試薬に含まれる抗原と反応可能である磁性粒子61を含む第1試薬を分注する第1試薬分注処理が行なわれる(ステップS51)。そして、基準取得用測定処理においては、図14(2)に示すように、たとえば0.3ppmの抗原62aが含まれる低濃度試薬を、洗浄不良の特定対象である分注移送機構のプローブを用いてキュベット20内に分注する低濃度試薬分注処理が行なわれる(ステップS52)。そして、キュベット20内の攪拌および一定の反応時間経過によって、磁性粒子61と低濃度試薬内の抗原62aとが結合した磁性粒子担体が生成する。
ここで、0.3ppmの抗原62aが含まれていた場合であっても、分析装置1は、臨床学的に十分に問題なく、分析対象である他の抗原に対する測定結果を出力できる。このため、基準取得用測定処理においては、0.3ppmの抗原62aに対応する発光量を基準値として取得するために、低濃度試薬を分注した後に、低濃度試薬内の抗原62aが発光可能となる分析処理を行なって発光量を測定する。
具体的には、基準取得用測定処理においては、図14(4)に示すように、低濃度試薬分注処理後に、第2試薬分注移送機構29による標識抗体65を含む第2試薬をキュベット20内に分注する第2試薬分注処理が行なわれる(ステップS54)。その後、キュベット20内の攪拌および一定の反応時間経過によって、図14(5)に示すように、磁性粒子担体および標識抗体65が結合した免疫複合体67aが生成される。つぎに、基準取得用測定処理においては、図14(5)に示すように、通常分析の場合と同様に、第2BF洗浄処理が行なわれ(ステップS55)、磁性粒子担体と結合しなかった標識抗体65が除去される。なお、免疫複合体67aは、BFテーブル25における集磁機構によって集磁されており、キュベット20外に除去されることはない。そして、図14(6)に示すように、基準取得用測定処理においては、通常分析と同様に基質66を含む基質液がキュベット20に注入される基質注入処理が行なわれる(ステップS56)。この場合、図14(7)に示すように、免疫複合体67aは、図4(6)に示す免疫複合体67と同様に、酵素反応を経ることによって基質66と結合し、結合物672aとなって光La3を発する。ここで、基準取得用測定処理においては、結合物672aから発せられる光La3を測定する測定処理が行なわれ(ステップS57)、基準値である発光量を取得できる。
つぎに、図13および図15を参照して、高濃度試薬使用処理について説明する。高濃度試薬使用処理においては、図13および図15(1)に示すように、基準取得用測定処理と同様に、磁性粒子61を含む第1試薬を分注する第1試薬分注処理が行なわれる(ステップS51)。そして、高濃度試薬使用処理においては、図15(2)に示すように、洗浄不良の特定対象である分注移送機構のプローブを用いて、高濃度の抗原62bが含まれる高濃度試薬をキュベット20内に分注する高濃度試薬分注処理が行なわれる(ステップS62)。この高濃度試薬においては、たとえば、100万ppmの抗原62bが含まれている。また、高濃度試薬を分注した分注移送機構のプローブは、次に分注対象である液体を分注する前に洗浄される。その後、図15(4)〜(6)に示すように、高濃度試薬使用処理においては、基準取得用測定処理と同様に、第2試薬分注処理(ステップS54)、第2BF洗浄処理(ステップS55)、基質注入処理(ステップS56)が行なわれる。なお、高濃度試薬使用処理においては、図15(7)に示すように、免疫複合体67bと基質66が結合することによって光Lが発せられるが、この光Lを測定せず、このまま高濃度試薬使用処理を終了する。
つぎに、図13および図16を参照して、異常特定用測定処理について説明する。異常特定用測定処理においては、図13および図16(1)に示すように、基準取得用測定処理および高濃度試薬使用処理と同様に、磁性粒子61を含む第1試薬を分注する第1試薬分注処理が行なわれる(ステップS51)。
つぎに、異常特定用測定処理においては、図16(2)に示すように、洗浄不良の特定対象である分注移送機構のプローブを用いて、0濃度試薬を分注する0濃度試薬分注処理が行なわれる(ステップS72)。ここで、図17に示すように、分注移送機構のブローブPa,Pbが十分に洗浄されていなかった場合、0濃度試薬を分注する前にプローブPa,Pbにおいて分注された高濃度試薬内の抗原62bが十分に除去されず、プローブPa,Pbに残存してしまう場合がある。そして、プローブPa,Pbに抗原62bが残存した状態で0濃度試薬を分注した場合、キュベット20内にプローブPa,Pbに残存していた抗原62bが混入することとなる。このようなプローブ洗浄不良を特定するために、異常特定用測定処理においては、0濃度試薬分注処理を行なった後に、プローブPa,Pbに残存しキュベット20内に混入した抗原62bが発光可能となる分析処理を行なって発光量を異常特定用測定値として測定する。
具体的には、異常特定用測定処理においては、図16(4)に示すように、0濃度試薬分注処理後に、キュベット20内の攪拌および一定の反応時間経過によって磁性粒子61とプローブPa,Pbに残存しキュベット20内に混入した抗原62bとが結合した磁性粒子担体61bを生成した後、標識抗体65を含む第2試薬をキュベット内に分注する第2試薬分注処理が行なわれる(ステップS54)。この場合、キュベット20内の攪拌および一定の反応時間経過によって、磁性粒子担体61bと標識抗体65とが結合した免疫複合体67bが生成される。つぎに、異常特定用測定処理においては、図16(5)に示すように、基準取得用測定処理と同様に、第2BF洗浄処理が行なわれステップS55)、磁性粒子担体61bと結合しなかった標識抗体65が除去される。なお、免疫複合体67bは、BFテーブル25における集磁機構25bによって集磁されており、キュベット20外に除去されることはない。
そして、図16(6)に示すように、異常特定用測定処理においては、基準取得用測定処理と同様に基質66を含む基質液がキュベット20に注入される基質注入処理が行なわれる(ステップS56)。この場合、免疫複合体67bは、図16(7)に示すように、図4(6)に示す免疫複合体67と同様に、酵素反応を経ることによって基質66と結合し、結合物672bとなって光Lc3を発する。ここで、異常特定用測定処理においては、結合物672bから発せられる光Lc3を測定する測定処理が行なわれ(ステップS77)、異常特定用測定値である発光量を取得できる。異常特定用測定値として測定された光Lc3の発光量は、洗浄不良対象であるプローブ洗浄後にプローブに残存し、次の液体分注時にキュベット20内に混入した抗原62bの量に対応する。
つぎに、図12に示す異常特定処理について説明する。特定部45は、異常特定用測定処理において取得した異常特定用測定値が基準取得用処理において取得した基準値に基づいて設定された許容範囲を満たさない場合に、高濃度試薬を分注したプローブに洗浄不良があると特定する。特定部45は、予め設定された許容範囲として、記憶部46内に記憶された図18に例示するテーブルT2を参照して異常特定処理を行なう。ここで、基準取得用測定処理において得られた基準値は、0.3ppmの抗原62aが含まれていた場合に発せられる光Laの発光量であって、臨床学的に問題なく分析対象である抗原そのものや他の抗原に対する測定結果を出力できる不純物濃度の発光量の判断基準となる。このため、テーブルT2においては、この基準値をもととした判断基準が示されている。
特定部45は、たとえば異常特定用測定値が0.3ppmの抗原62aに応じた発光量である基準値の1.1倍未満であれば、分析対象である抗原に対する測定結果を臨床学的に問題なく出力できる。したがって、特定部45は、異常特定用測定値が基準値の1.1倍未満である場合、高濃度試薬を分注した分注移送機構において臨床学的に問題ない程度までプローブに付着した高濃度試薬の抗原62bを洗浄除去できたものと考えられるため、高濃度試薬を分注した分注移送機構における洗浄不良はないと判断する。一方、特定部45は、テーブルT2に示すように、異常特定用測定値が基準値の1.1倍以上である場合、高濃度試薬を分注した分注移送機構において、プローブに付着した抗原62bを十分に除去できず測定結果に影響を与えてしまう程度の抗原62bが残存していると考えられるため、高濃度試薬を分注した分注移送機構におけるプローブ洗浄不良があると判断する。
このように、実施の形態2によれば、臨床学的に十分に問題なく測定結果を出力できる不純物濃度に対応する発光量である基準値と、特定対象である分注移送機構を用いて実際に高濃度試薬を分注した後に0濃度試薬を分注して得られた発光量である異常特定用測定値とをもとに、分注移送機構に対する洗浄処理において臨床学的に問題ない程度まで前に分注した液体内の物質が除去されているかを判断している。このため、本実施の形態2によれば、異常特定対象である分注移送機構の液体分注処理以外の処理をほぼ同様に行なうことによって、他の処理の異常に関する寄与を考慮する必要がなく、分注移送機構における洗浄不良のみを正確に検証することができる。また、本実施の形態2によれば、測光機構31によって測定された測定結果を用いて分注移送機構の洗浄不良の有無を特定できるため、従来において必要であった分析装置本体とは別個の分光光度計を用いる比色測定を行なう必要がない。したがって、本実施の形態2によれば、正確かつ簡易に分析装置の異常を特定することができる。
なお、実施の形態2においては、磁性粒子61と反応する抗原を構成物とした低濃度試薬、高濃度試薬および0濃度試薬に代えて、構成物として、発光基質として機能する基質(酵素)と反応する標識体を構成物とした低濃度試薬、0濃度試薬および高濃度試薬を用いてもよい。この場合、分析装置1においては、低濃度試薬として所定の微量濃度の標識体を含む試薬を使用して、基準取得用測定処理を行なう。そして、分析装置1においては、高濃度試薬として所定の高濃度の標識体が含まれる試薬を使用して高濃度試薬使用処理を行なった後、標識体を含まない0濃度試薬を使用して異常特定用測定処理を行なう。
図19および図20を参照して、図19に示す基準取得用測定処理として、標識体を構成物として含む低濃度試薬を用いた場合について説明する。図19および図20(2)に示すように、たとえばバッファ液内に0.3ppmの標識抗体65aを含む低濃度試薬を分注する低濃度試薬分注処理が行なわれる(ステップS352)。そして、図19および図20(6)に示すように、分析装置1においては、0.3ppmの標識抗体65aに対応する発光量を基準値として取得するため、基質66を含む基質液がキュベット20に注入される基質注入処理が行なわれ(ステップS56)、図20(7)に示すように、所定の酵素反応を経た後に基質66と標識抗体65aとの結合物652aから発せられる光La4を測定する測定処理が行なわれ(ステップS57)、基準値となる発光量を取得する。図19および図20に示すように、発光基質として機能する基質66と結合する標識抗体65aを構成物とした低濃度試薬を用いた場合には、分析装置1は、標識抗体65aと基質66との間の酵素反応を経るだけで、基準値となる発光量を取得することができる。すなわち、分析装置1は、標識抗体65aを構成物とした低濃度試薬を用いた場合には、抗原62aを含む低濃度試薬を用いた場合に必要となる抗原65aを発光可能とするための各処理、すなわち、図13および図14(1)、(4)、(5)に示す第1試薬である磁性粒子61の注入処理(ステップS51)、第2試薬である標識抗体65の注入処理(ステップS54)および磁性粒子担体と結合しなかった標識抗体65を除去するための第2BF洗浄処理(ステップS55)を行なう必要がない。
つぎに、図19および図21を参照して、図19に示す高濃度試薬使用処理として、標識体を構成物として含む高濃度試薬を用いた場合について説明する。図19および図21(2)に示すように、たとえばバッファ液内に100万ppmの標識抗体65bを含む高濃度試薬を分注する高濃度試薬分注処理が行なわれる(ステップS362)。そして、図19および図21(6)に示すように、分析装置1においては、100万ppmの標識抗体65bを発光させるため、基質66を含む基質液がキュベット20に注入される基質注入処理が行なわれる(ステップS56)。なお、図21(7)に示すように、標識抗体65bと基質66が結合することによって光Lが発せられるが、この光Lを測定せず、このまま高濃度試薬使用処理を終了する。図19および図21に示すように、標識抗体65bを構成物とした高濃度試薬を用いた場合には、分析装置1は、図13および図15(1)、(4)、(5)に示す第1試薬である磁性粒子61の注入処理(ステップS51)、第2試薬である標識抗体65の注入処理(ステップS54)および磁性粒子担体と結合しなかった標識抗体65を除去するための第2BF洗浄処理(ステップS55)を行なう必要がない。
つぎに、図19および図22を参照して、図19に示す異常特定用測定処理について説明する。分析装置1においては、図19および図22(2)に示すように、標識抗体を含まない0濃度試薬を分注する0濃度試薬処理を行なう(ステップS372)。そして、分析装置1は、0濃度試薬分注処理においてプローブに残存しキュベット20内に混入した標識抗体65bが発光可能となる分析処理を行なって異常特定用測定値を測定する。具体的には、図19および図22(6)に示すように、分析装置1においては、基質66を含む基質液がキュベット20に注入される基質注入処理が行なわれ(ステップS56)、所定の酵素反応を経た後に、図22(7)に示すように、基質66とキュベット20内に混入した標識抗体65bとの結合物652bから発せられる光Lc4を測定する測定処理が行なわれ(ステップS77)、異常特定用測定値となる発光量を取得する。図19および図22に示すように、標識抗体を構成物とした0濃度試薬を用いた場合には、分析装置1は、プローブ洗浄不良によりキュベット20内に混入した標識抗体65bと基質66との間の酵素反応を経るだけで、異常特定用測定値となる発光量を取得することができる。すなわち、分析装置1は、標識抗体を構成物とした0濃度試薬を用いた場合には、抗原62bを発光可能とするための各処理、すなわち、図13および図16(1)、(4)、(5)に示す第1試薬である磁性粒子61の注入処理(ステップS51)、第2試薬である標識抗体65の注入処理(ステップS54)および磁性粒子担体と結合しなかった標識抗体65を除去するための第2BF洗浄処理(ステップS55)を行なう必要がない。
そして、分析装置1においては、図18に例示するテーブルT2を参照し、図20(7)において取得した基準値および図22(7)において取得した異常特定用測定値を比較することによって、プローブ洗浄処理の異常を特定する。
このように、分析装置1は、標識体を構成物とした低濃度試薬、高濃度試薬および0濃度試薬を用いることによって、基準取得用測定処理、高濃度試薬使用処理および異常特定用測定処理において、図13、図14(5)、図15(5)および図16(5)に示す第2BF洗浄処理を省略することができ、さらに迅速にBF洗浄処理の異常特定を行なうことができる。
また、分析装置1は、図19〜図22に示すように、標識抗体を構成物とした低濃度試薬、高濃度試薬および0濃度試薬を用いた場合には、BF洗浄処理を行なう必要がないことから、BF洗浄処理の未反応物質除去能力に異常があった場合であっても、この異常の影響を受けることなく、基準値および異常特定用測定値を取得することができ、さらに正確にプローブ洗浄の異常特定を行なうことが可能になる。
また、図19〜図22に示すように、標識抗体は、酵素と結合してそのまま発光可能であるため、この標識抗体を構成物として含む低濃度試薬、高濃度試薬および0濃度試薬を用いた場合には、抗原を発光可能とするための磁性粒子および標識抗体を用いる必要がない。したがって、分析装置1においては、標識抗体を構成物として含む低濃度試薬、高濃度試薬および0濃度試薬を用いた場合には、プローブ洗浄処理の異常特定のために、磁性粒子および標識抗体を含む試薬を用いる必要がなく、プローブ洗浄処理の異常特定のために使用する試薬量を低減することができる。
また、上記実施例で説明した分析装置は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。このコンピュータシステムは、所定の記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することで分析装置の処理動作を実現する。ここで、所定の記録媒体とは、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカード等の「可搬用の物理媒体」の他に、コンピュータシステムの内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)等のように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを保持する「通信媒体」等、コンピュータシステムによって読み取り可能なプログラムを記録する、あらゆる記録媒体を含むものである。また、このコンピュータシステムは、ネットワークを介して接続した他のコンピュータシステムからプログラムを取得し、取得したプログラムを実行することで分析装置の処理動作を実現する。