JP4895897B2 - 薄膜構造体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は薄膜構造体及びその製造方法に係り、特に、樹脂製の基体の表面に密着層を介して無機薄膜が形成された薄膜構造体及びその製造方法に関する。
プラスチックなどの樹脂からなる基板の表面に酸化チタンなど無機薄膜が形成された光学部品が知られている。プラスチック樹脂の成形体は、ガラスや金属などと比較して軽量、耐腐食性を有し、かつ加工が容易であることから、幅広い分野において装飾などの目的に使用されている。
樹脂基板と無機薄膜は、密着性が低く、膨張係数も大きく異なるため、樹脂基板の表面に形成された無機薄膜が物品の接触などにより容易に剥がれたり、応力の差により無機薄膜の表面にクラック等が生じたりすることがあった。
そこで、従来、樹脂基板と無機薄膜との間に密着層を介在させて、両者の密着性を向上させる技術が開発されてきた(例えば、特許文献1)。
特許文献1では、密着層として中間層を介在させている。この中間層は、半金属・半導体膜が樹脂基板側、酸化膜が無機膜側に偏在した構造を有している。中間層は、樹脂基板と無機膜との間に金属膜又は半金属・半導体膜を介在させ、これらの膜の一部をプラズマ酸化することで形成している。
この中間層は、樹脂との密着性のよい金属膜や半金属・半導体膜が樹脂基板側にあり、無機膜との密着性のよい酸化膜が無機膜側にあるため、基板と無機膜の両方に対して密着性が高い性質を有している。このため、中間層を介して樹脂基板上に無機膜を形成することで、両者が強固に密着し、無機膜の耐摩耗性、耐環境性を向上させることができる。
この従来技術では、プラズマ酸化により半金属・半導体膜の全部が酸化膜に改質されないようにある程度の膜厚、具体的には5nm以上にする必要がある。実施例では、膜厚が5nmよりも大きいと半金属・半導体膜がやや黄色を呈しており、酸化されてないSiが存在するが、3nmよりも小さいと黄色の呈色が見られず、半金属・半導体膜の全部が酸化膜に改質されていることが示されている。
特開2004−85643号公報(段落0016、0022ほか)
しかしながら、この従来の薄膜構造体でも、樹脂と無機膜との密着性が必ずしも十分であるとは言えず、更に密着性を向上させる技術の開発が求められていた。
加えて、この従来技術では、プラズマ酸化により半金属・半導体膜の全部が酸化膜に改質されないようにある程度の膜厚、具体的には5nm以上にする必要がある。一般に、反射防止膜を形成する目的は、基板表面や裏面での光の反射による透過光量の損失を改善するためである。
しかしながら、半金属・半導体膜の膜厚が大きくなると、入射光が半金属・半導体膜で反射率や吸収率が上昇する。このため、半金属・半導体膜の透過光量が低下して、反射防止層としての機能を十分に発揮できなくなるという問題があった。
本発明の目的は、樹脂基板と無機薄膜との密着性が特に優れ、製造される光学物品の耐摩耗性、耐環境性を顕著に向上させることが可能な薄膜構造体及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、密着層の膜厚を小さくすることで、密着層を形成したことによる無機薄膜層への光学的影響を少なくした薄膜構造体及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、密着層に対して反応性ガスによる処理を行った後で、不活性ガスのプラズマやイオンによる処理を行うことで、基板と無機薄膜層との間の密着性が顕著に向上するという新たな知見を得て、本発明を完成させた。
すなわち、上記課題は、本発明の薄膜構造体によれば、樹脂製の基体の表面に形成された薄膜構造体であって、前記基体の表面に形成された1〜5nmの膜厚からなる密着層と、該密着層の表面に形成された無機薄膜層とを備え、前記密着層は、前記基体の表面に4価の金属から選択される1又は2種類以上の金属膜を形成し、該金属膜の表面側から反応性ガスのイオン又はラジカルによる処理を行って前記金属膜の不完全反応物を生成させ、続いて反応後の前記金属膜に対して不活性ガスのイオン又はラジカルによる処理を行うことで形成されることにより解決される。
このように、従来の反応性ガス処理に加えて、密着層に不活性ガス処理を行うことで、
樹脂製の基体と無機薄膜層との間の密着性を顕著に向上させることができる。
また、このように、密着層を膜厚1〜5nmの厚さの小さい薄膜とすることで、密着層を形成したことによる無機薄膜層への光学的な影響がほとんどなくなり、光学物品の光学特性の低下を少なくすることが可能となる。
この場合、前記4価の金属は、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム及びハフニウムからなる群より選択される1又は2種類以上の金属であることが好ましい。
この場合、前記基体は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート−ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリカーボネート−ポリブチレンテレフタレート共重合体、アクリル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群より選択される1又は2種類以上の樹脂材料、又はこれらの材料とガラス繊維及び/又はカーボン繊維との混合物で形成されていることが好ましい。
また、前記反応性ガスは、酸素ガス又は窒素ガス若しくはこれらの混合ガスであることが好ましい。
上記課題は、本発明の薄膜構造体によれば、樹脂製の基体の表面に形成された薄膜構造体であって、前記基体の表面に形成された1〜5nmの膜厚からなる密着層と、該密着層の表面に形成された無機薄膜層とを備え、前記密着層は、4価の金属から選択される1又は2種類以上の金属又はその反応物で形成されるとともに、前記基体側よりも前記無機薄膜側で前記反応物の密度が高くなるよう構成され、前記基体の表面の炭素原子と前記密着層を構成する前記4価の金属原子とが共有結合していることにより解決される。
このように、密着層は、基体側よりも無機薄膜層側の方が反応物の密度が高くなっており、基体の炭素原子と密着層の4価の金属原子が共有結合しているため、樹脂製の基体と無機薄膜層との間の密着性を顕著に向上させることができる。
また、このように、密着層を膜厚1〜5nmの厚さの小さい薄膜とすることで、密着層を形成したことによる無機薄膜層への光学的な影響がほとんどなくなり、光学物品の光学特性の低下を少なくすることが可能となる。
上記課題は、本発明の薄膜構造体の製造方法によれば、樹脂製の基体の表面に形成された薄膜構造体の製造方法であって、前記基体の表面に4価の金属から選択される1又は2種類以上の金属膜を形成する工程と、前記金属膜の表面側から反応性ガスのイオン又はラジカルによる処理を行って前記金属膜の不完全反応物を生成させる反応性ガス処理工程と、反応後の前記金属膜に対して不活性ガスのイオン又はラジカルによる処理を行うことで、膜厚が1〜5nmの範囲内である密着層を形成する不活性ガス処理工程と、前記密着層の表面に無機薄膜を形成する無機薄膜形成工程と、を行うことにより解決される。
このように、金属膜を形成し、反応性ガスにより不完全反応物を生成し、続いて不活性ガスによる処理を行うという一連の工程で、基体と無機薄膜層との密着性に優れた薄膜構造体を形成することができる。
また、このように、密着層を膜厚1〜5nmの厚さの小さい薄膜とすることで、密着層を形成したことによる無機薄膜層への光学的な影響がほとんどなくなり、光学物品の光学特性の低下を少なくすることが可能となる。
また、上記課題は、本発明の薄膜構造体の製造方法によれば、互いに離間する位置に少なくとも1つずつ設けられた成膜プロセス領域及び反応プロセス領域を内部に備えた真空容器を用いて、樹脂製の基体の表面に無機薄膜を形成する薄膜構造体の製造方法であって、前記成膜プロセス領域内で4価の金属からなるターゲットをスパッタリングして前記基体の表面に前記金属からなる金属膜を付着させるスパッタリング工程と、前記反応プロセス領域内に前記基体を搬送する基体搬送工程と、前記反応プロセス領域内に反応性ガスを導入してプラズマを発生させ、生成した前記反応性ガスのイオン又はラジカルと前記金属膜を反応させて前記金属膜の不完全反応物を生成させる反応性ガス処理工程と、前記反応プロセス領域と同一又は異なる他の反応プロセス領域内で反応後の前記金属膜に対して不活性ガスのイオン又はラジカルによる処理を行うことで、密着層を形成する不活性ガス処理工程と、前記成膜プロセス領域と同一又は異なる他の成膜プロセス領域内でスパッタリングにより前記密着層の表面に無機薄膜を形成する無機薄膜形成工程と、を行うことにより解決される。
このように、成膜プロセス領域と反応プロセス領域が離れた位置にあるため、ターゲットの異常放電が発生しにくい。このため、基体の温度を高くする必要がなく、低い温度でかつ成膜レートを高く維持した状態で成膜を行うことができる。したがって、樹脂製の基体の変形等が生じにくい。
加えて、成膜プロセス領域と反応プロセス領域が離れた位置にある真空容器を用いて密着層を形成することで、密着層の膜厚を1〜5nmと小さくすることができる。このため、密着層を形成したことによる無機薄膜層への光学的な影響がほとんどなくなり、光学物品の光学特性の低下を少なくすることが可能となる。
また、前記反応性ガスは、酸素ガス又は窒素ガス若しくはこれらの混合ガスであることが好ましい。
このように、本発明の薄膜構造体及びその製造方法によれば、反応性ガス処理に加えて不活性ガス処理を行って密着層を形成することで、樹脂製の基体と無機薄膜層との密着性を向上させることができる。したがって、このような構造を有する光学物品の耐摩耗性、耐環境性を向上させることが可能となる。
また、反応プロセス領域と成膜プロセス領域が離れた位置にある真空容器を用いて密着層を形成することで、密着層の膜厚を1〜5nmと小さくすることができるため、密着層が無機薄膜層へ及ぼす光学的な影響をほとんどなくし、光学物品の光学特性の低下を少なくすることが可能となる。
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材,配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
図1は本発明の薄膜構造体の横断面形状を模式的に示した説明図、図2は薄膜構造体の製造手順を示す説明図、図3は薄膜形成装置を上側から見た状態を示す説明図、図4は他の実施形態に係る薄膜形成装置を上側から見た状態を示す説明図である。なお、図1と図2では、発明の理解を容易にするために、薄膜の膜厚を実際の厚さよりも厚く描いてある。
図1に示すように、本発明の薄膜構造体Pは、樹脂製の基板Sの表面に形成された密着層Mと、この密着層Mの表面に形成された無機薄膜層Fとを有する構造をしている。
基板Sは、本発明の基体に相当するものであり、炭素を含むプラスチック樹脂材料で形成された部材である。本実施形態では基板Sとして円板状のものを用いているが、本発明の基体の形状としてはこのような円板状に限定されず、表面に薄膜を形成できる他の形状、例えばレンズ形状、円筒状、円環状といった形状であってもよい。
基板Sの材料としては、例えば、ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート−ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリカーボネート−ポリブチレンテレフタレート共重合体、アクリル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂材料が挙げられる。また、基板Sの強度を向上させるために、これらの樹脂材料にガラス繊維やカーボン繊維もしくはこれらの混合物を混合させたものでもよい。
密着層Mは、基板Sの表面に形成された薄膜であり、無機薄膜層Fと基板Sとの間に介在して基板Sと無機薄膜層Fの間の密着性を向上させるための層である。
密着層Mは、4価の金属、すなわちケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ゲルマニウム(Ge)、ハフニウム(Hf)からなる群より選択される1又は2種類以上の金属とその反応物で形成されている。
密着層Mは、基板S側よりも無機薄膜層F側のほうが反応物の密度が高くなっている。すなわち、密着層Mのうち基板Sと接触する面は反応物の密度が小さく多くの金属が未反応のままであり、無機薄膜層Fと接触する面は反応物の密度が大きくほぼ金属反応物で構成されている。
密着層Mの膜厚は、基板Sと無機薄膜層Fとの密着性を向上させるものであればよいが、密着層Mが及ぼす光学的影響を考慮すると可能な限り小さいほうが好ましく、具体的には1〜5nmの範囲内が好適である。
無機薄膜層Fは、ケイ素(Si)、チタン(Ti)などの公知の材料で形成された薄膜であり、反射防止層、ハードコート層、撥水コート層などとして機能する。無機薄膜層Fは単層であっても多層であってもよく、その光学的膜厚などは要求される光学的・物理的特性に応じて適宜設定される。また、無機薄膜層Fは、1種類の金属やその反応物のみから形成されてもよく、2種類以上の金属材料やそれらの反応物から構成されてもよい。
(薄膜構造体の製造方法)
次に、図2を参照して薄膜構造体Pの製造手順について説明する。
薄膜構造体Pを製造するには、まず樹脂製の基板Sを準備し、4価の金属から選択される1又は2種類以上の金属膜M0を基板Sの表面に形成する金属膜形成工程を行う(図2(a))。金属膜M0は、スパッタリングや真空蒸着などの公知の成膜技術を用いて形成することができる。
次に、金属膜M0に対して表面側から反応性ガスのイオンやラジカルによる反応性ガス処理工程を行う(図2(b))。反応性ガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、これらの混合ガスなどが挙げられる。この反応性ガスによる処理により金属膜M0の一部が金属反応物に変換された不完全反応金属膜M1が生成する(図2(c))。反応性ガスは、金属膜M0の表面側から導入されるため、金属膜M0のうち基板S側よりも表面側(無機薄膜層F側)のほうが反応性ガスへの暴露量が多い。このため、表面側では多くの金属が反応性ガスと反応して反応物の密度が高くなり、逆に基板S側ではほとんど反応せずに金属のまま残存するため反応物の密度が低い。
なお、反応性ガスによる処理は、処理時間が長すぎても短すぎても基板Sと無機薄膜層Fとの間の密着性が悪くなるため好ましくない。
続いて、不完全反応金属膜M1に対して不活性ガスのイオンやラジカルによる不活性ガス処理工程を行う(図2(d))。不活性ガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガスなどが挙げられる。このうち、安価であるなどの理由によりアルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガスが好ましい。この不活性ガスによる処理により密着層Mが生成する(図2(e))。
なお、不活性ガスによる処理についても、処理時間が長すぎても短すぎても密着性が悪くなるため好ましくない。以上の反応性ガス処理工程と不活性ガス処理工程により、密着層Mが形成される。
最後に、不活性ガス処理後の密着層Mの表面に無機薄膜層Fを形成する無機薄膜層形成工程を行う(図2(f))。無機薄膜層Fも、スパッタリングなどの公知の成膜方法で形成することができる。無機薄膜層Fの膜厚は、製造する光学物品に求められる物理的・光学的性能に合わせて所望の厚さとする。
上述したように、密着層Mのうち基板S側は樹脂との密着性の高い不活性ガス処理後の不完全反応金属が多く、無機薄膜層F側は無機薄膜との密着性の高い金属反応物が多い。金属は樹脂との密着性が高く、金属反応物は無機薄膜との密着性が高いため、密着層Mを介在させることで基板Sと無機薄膜層Fとの間の密着性が向上すると考えられる。
本発明では、反応性ガスによる処理に加えて不活性ガスによる処理を行うことで、基板Sと無機薄膜層Fとの間の密着性を向上させた点を特徴としている。
なお、不活性ガス処理により密着性が向上する理由については明らかではないが、密着層Mの金属原子と基板Sの炭素原子の間で新たな共有結合が形成されるためと考えられる。
すなわち、不活性ガスのイオンやラジカルが密着層Mの金属原子や基板Sの炭素と衝突することにより、密着層Mでの金属原子間の共有結合や基板Sでの炭素原子間の共有結合が開裂し、密着層Mの金属原子と基板Sの炭素原子の間で新たな共有結合が形成される。この共有結合により、基板Sの表面に密着層Mが強固に付着し、密着層Mの表面に形成された無機薄膜層Fも基板Sの表面から剥離しにくくなると考えられる。
(薄膜構造体の製造装置1)
本発明の薄膜構造体Pは、以下に説明する成膜プロセス領域と反応プロセス領域とが分離された薄膜形成装置を用いて製造することが好ましい。
この薄膜形成装置では、スパッタリングを行う成膜プロセス領域と反応性ガスによる処理を行う反応プロセス領域が分離しているため、成膜プロセス領域内には窒素ガスや酸素ガスなどの反応性ガスが導入されないようになっている。このため、ターゲットの表面の金属が反応性ガスと反応することがなく、高周波電圧を印加する際に生じるターゲットの異常放電を抑制することができる。従来では、異常放電を抑制しつつ成膜を行うため基板の温度を高くしていたが、この薄膜形成装置では基板の温度を高くする必要がないため、低い温度でかつ成膜レートを高く維持した状態で成膜を行うことができる。
本実施形態では、薄膜形成装置としてスパッタの一例であるマグネトロンスパッタを行う薄膜形成装置を用いているが、本発明の薄膜形成装置としては、このようなマグネトロンスパッタに限定されず、マグネトロン放電を用いない2極スパッタ等の他の公知のスパッタを行う薄膜形成装置を用いることもできる。
本実施形態の薄膜形成装置では、目的の膜厚よりも薄い薄膜を基板Sの表面に付着するスパッタリング処理工程と、この薄膜に対して酸化などの処理を行って薄膜の組成を変換するプラズマ処理工程とにより基板Sの表面に中間薄膜を形成し、このスパッタリング処理とプラズマ処理を複数回繰り返すことで、中間薄膜を複数積層して目的の膜厚を有する最終薄膜を基板Sの表面に形成している。
具体的には、スパッタリング処理とプラズマ処理によって組成変換後における膜厚の平均値が0.01〜1.5nm程度の中間薄膜を基板Sの表面に形成する工程を、回転ドラムの回転毎に繰り返すことにより、目的とする数nm〜数百nm程度の膜厚を有する最終薄膜を形成している。
以下、薄膜形成装置について説明する。
図3に示すように、本実施形態の薄膜形成装置1は、真空容器11と、回転ドラム13と、スパッタリング手段20と、スパッタリングガス供給手段30と、プラズマ発生手段60と、反応性ガス供給手段70と、を主要な構成要素としている。
なお、図中では、スパッタリング手段20とプラズマ発生手段60を破線で、スパッタリングガス供給手段30と反応性ガス供給手段70を一点鎖線で表示している。
真空容器11は、公知の薄膜形成装置で通常用いられるようなステンレススチール製で、ほぼ直方体形状をした中空体である。真空容器11の内部は、開閉扉としての扉11Cによって薄膜形成室11Aとロードロック室11Bに分けられる。真空容器11の上方には扉11Cを収容する扉収納室(不図示)が接続されており、扉11Cは真空容器11の内部と扉収納室の内部との間でスライドすることで開閉する。
回転ドラム13は、表面に薄膜を形成させる基板Sを真空容器11の内部で保持するための筒状の部材であり、基体保持手段としての機能を有する。回転ドラム13にはドラム回転軸18が設けられており、このドラム回転軸18は図示しないモータの出力軸に対して同軸状に接続されている。ドラム回転軸18と真空容器11の壁面との間はOリングなどで気密性が保たれている。このため、回転ドラム13は、真空容器11の内部で気密状態のまま回転可能となっている。
なお、本実施形態の回転ドラム13は、横断面が多角形をした多角柱状をしているが、このような多角柱状に限定されず円筒状や円錐状であってもよい。
真空容器11の内部に設置された回転ドラム13は、薄膜形成室11Aとロードロック室11Bとの間を移動できるように構成されており、回転ドラム13から基板Sを取り外すときは回転ドラム13をロードロック室11Bに移動させてから取り外すことができる。
真空容器11の内壁には、回転ドラム13へ面した位置に仕切壁12と仕切壁14が立設されている。本実施形態における仕切壁12と仕切壁14は、いずれも真空容器11と同じステンレススチール製の部材である。仕切壁12と仕切壁14は、いずれも上下左右に一つずつ配設された平板部材により構成されており、真空容器11の内壁面から回転ドラム13に向けて四方を囲んだ状態で立設されている。これにより、成膜プロセス領域20Aと反応プロセス領域60Aが真空容器11の内部でそれぞれ区画される。
真空容器11の側壁は、外方に突出した横断面凸状をしており、突出した壁面にはスパッタリング手段20が設けられている。成膜プロセス領域20Aは、真空容器11の内壁面と、仕切壁12と、回転ドラム13の外周面と、スパッタリング手段20により囲繞された領域に形成されている。この成膜プロセス領域20Aでは、基板Sの表面に膜原料物質を付着させるスパッタリング処理が行われる。
また、成膜プロセス領域20Aからドラム回転軸18を中心として90°離間した真空容器11の側壁もまた、外方に突出した横断面凸状をしており、突出した壁面にはプラズマ発生手段60が設けられている。反応プロセス領域60Aは、真空容器11の内壁面と、仕切壁14と、回転ドラム13の外周面と、プラズマ発生手段60により囲繞された領域に形成されている。この反応プロセス領域60Aでは、基板Sの表面に付着した膜原料物質に対してプラズマ処理が行われる。
モータによって回転ドラム13が回転すると、回転ドラム13の外周面に保持された基板Sが公転して、成膜プロセス領域20Aに面する位置と反応プロセス領域60Aに面する位置との間を繰り返し移動する。そして、成膜プロセス領域20Aでのスパッタリング処理と、反応プロセス領域60Aでのプラズマ処理とが順次繰り返し行われ、基板Sの表面に薄膜が形成される。
(成膜プロセス領域20A)
以下に、成膜プロセス領域20Aについて説明する。
成膜プロセス領域20Aにはスパッタリング手段20が設置されている。スパッタリング手段20は、一対のマグネトロンスパッタ電極21a,21bと、これらマグネトロンスパッタ電極21a,21bにそれぞれ保持されるターゲット22a,22bと、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに供給される電力量を調整する電力制御手段としてのトランス23と、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに電力を供給する交流電源24と、により構成される。
真空容器11の壁面は外方に突出しており、この突出部の内壁にマグネトロンスパッタ電極21a,21bが側壁を貫通した状態で配設されている。このマグネトロンスパッタ電極21a,21bは、接地電位にある真空容器11に不図示の絶縁部材を介して固定されている。
マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、複数の磁石が所定の方向に配置された構造を有している。マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、トランス23を介して交流電源24に接続され、両電極に1k〜100kHzの交番電界が印加できるように構成されている。
本実施形態のターゲット22a,22bは、膜原料物質を平板状に形成したものであり、後述するように回転ドラム13の側面に対向するようにマグネトロンスパッタ電極21a,21bにそれぞれ着脱可能に保持される。ターゲット22a,22bの材質としては、金属膜M0や無機薄膜層Fの成膜時にそれぞれ形成される薄膜の材料を適宜選択して採用する。
金属膜M0の成膜時には、ターゲット22a,22bの材料として、チタン(Ti)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ゲルマニウム(Ge)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)といった4価の金属や、これらの金属の合金などを用いる。また、これらの金属や合金の酸化物、窒化物、酸窒化物を含んでもよい。
無機薄膜層Fの成膜時には、ターゲット22a,22bの材料として、最終的に得られる無機薄膜の色調、硬度、耐摩耗性などの特性に応じて、種々に材料の中から適当な材料を選択して採用する。このような材料の具体例としては、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、タングステン(W)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)若しくはこれらの金属の合金などを採用することができる。
成膜プロセス領域20Aの外部にはアルゴン等のスパッタリングガスを供給するスパッタリングガス供給手段30が設けられている。スパッタリングガス供給手段30は、スパッタリングガス貯蔵手段としてのスパッタリングガスボンベ31と、スパッタリングガスの流量を調整するスパッタリングガス流量調整手段としてのマスフローコントローラ32と、を主要な構成要素として具備している。スパッタリングガスは、配管を通じて成膜プロセス領域20Aの内部に導入される。
スパッタリングガスとしては、例えばアルゴンやヘリウム等の不活性ガスが挙げられる。
マスフローコントローラ32はガスの流量を調節する装置である。スパッタリングガスボンベ31からのスパッタリングガスは、マスフローコントローラ32により流量を調節されて成膜プロセス領域20A内に導入される。
成膜プロセス領域20Aにスパッタリングガス供給手段30からスパッタリングガスが供給されると、ターゲット22a,22bの周辺が不活性ガス雰囲気になる。この状態で、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに交流電源24から交番電極が印加されると、ターゲット22a,22b周辺のスパッタリングガスの一部は電子を放出してイオン化する。マグネトロンスパッタ電極21a,21bに配置された磁石によりターゲット22a,22bの表面に漏洩磁界が形成されるため、この電子はターゲット22a,22bの表面近傍に発生した磁界中を、トロイダル曲線を描きながら周回する。この電子の軌道に沿って強いプラズマが発生し、このプラズマに向けてスパッタリングガスのイオンが加速され、ターゲット22a,22bに衝突することでターゲット22a,22bの表面の原子や粒子(ターゲット22a,22bがケイ素の場合はケイ素原子やケイ素粒子)が叩き出される。この原子や粒子は薄膜の原料である膜原料物質であり、基板Sの表面に付着して薄膜を形成する。
(反応プロセス領域60A)
続いて、反応プロセス領域60Aについて説明する。上述したように、反応プロセス領域60Aでは、成膜プロセス領域20Aで基板Sの表面に付着した膜原料物質をプラズマ処理し、膜原料物質の完全反応物や不完全反応物の形成を行う。
プラズマ発生手段60は、反応プロセス領域60Aに面して設けられている。本実施形態のプラズマ発生手段60は、ケース体61と、誘電体板62と、アンテナ63と、マッチングボックス64と、高周波電源65と、を有して構成されている。
ケース体61は、真空容器11の壁面に形成された開口を塞ぐように固定されたステンレス製の板状部材である。ケース体61が真空容器11の壁面に固定されることで、プラズマ発生手段60は真空容器11の壁面に取り付けられている。
誘電体板62は、ケース体61に固定された板状の誘電体部材である。本実施形態の誘電体板62は石英で形成されているが、Al等のセラミックス材料で形成されたものでもよい。誘電体板62がケース体61に固定されることで、ケース体61と誘電体板62によって囲まれた領域にアンテナ収容室が形成される。
誘電体板62は、真空容器11の内部(反応プロセス領域60A)に向けて設置されている。このとき、アンテナ収容室は、真空容器11の内部と分離している。すなわち、アンテナ収容室と真空容器11の内部は、誘電体板62で仕切られた状態で独立した空間を形成している。また、アンテナ収容室と真空容器11の外部は、ケース体61で仕切られた状態で独立の空間を形成している。
アンテナ収容室は配管を介して真空ポンプ15に連通しており、真空ポンプ15で真空引きすることで内部を排気して真空状態にすることができる。
アンテナ63は、高周波電源65から電力の供給を受けて真空容器11の内部(反応プロセス領域60A)に誘導電界を発生させ、反応プロセス領域60Aにプラズマを発生させるための手段である。本実施形態の薄膜形成装置1では、高周波電源65からアンテナ63に周波数1〜27MHzの交流電圧を印加して、反応プロセス領域60Aに反応性ガスのプラズマを発生させるように構成されている。
アンテナ63は、マッチング回路を収容するマッチングボックス64を介して高周波電源65に接続されている。マッチングボックス64内には、図示しない可変コンデンサが設けられており、高周波電源65からアンテナ63に供給される電力を変更できるようになっている。
反応プロセス領域60Aの外部には反応性ガス供給手段70が設けられている。反応性ガス供給手段70は、反応性ガスを貯蔵する反応性ガスボンベ71と、反応性ガスボンベ71より供給される反応性ガスの流量を調整するマスフローコントローラ72と、不活性ガスを貯蔵する不活性ガスボンベ73と、不活性ガスボンベ73より供給される不活性ガスの流量を調整するマスフローコントローラ74と、を主要な構成要素として具備している。
なお、反応性ガスボンベ71と不活性ガスボンベ73は、成膜プロセス領域20Aのスパッタリングガスボンベ31と同様の装置とすることが可能である。また、マスフローコントローラ72とマスフローコントローラ74は、成膜プロセス領域20Aのマスフローコントローラ32と同様の装置を採用することが可能である。
反応性ガスボンベ71から配管を通じて反応性ガスや不活性ガスが反応プロセス領域60Aに導入された状態で、アンテナ63に高周波電源65から電力が供給されると、反応プロセス領域60A内のアンテナ63に面した領域にプラズマが発生する。これにより、基板Sの表面に形成された膜原料物質がプラズマ処理される。
具体的には、金属膜M0を反応性ガスによりプラズマ処理する反応性ガス処理工程では、反応性ガスボンベ71から反応性ガスのみが導入され、膜原料物質の反応物が生成する。
一方、不完全反応金属膜M1に不活性ガス処理を行う不活性ガス処理工程では、不活性ガスボンベ73から不活性ガスのみが導入され、プラズマ処理が行われる。
また、反応プロセス領域60Aで無機薄膜層Fを形成する場合において、無機薄膜層Fが金属反応物で形成されるときは、反応性ガスと不活性ガスの混合ガスが反応プロセス領域60Aに導入される。
本実施形態の薄膜形成装置1は、このようにスパッタによる膜原料物質の供給を行う成膜プロセス領域20Aと、膜原料物質と反応性ガスの反応を行う反応プロセス領域60Aが真空容器11内の離間した位置に分離した状態で形成されているため、従来の一般的な反応性スパッタリング装置を用いた場合のように、ターゲット22a,22bと反応性ガスが反応して異常放電が起こるといった不都合が生じにくい。このため、反応プロセス領域60A内の反応性ガスの供給量を多くしたり、プラズマの発生密度を上昇させたりして、膜原料物質と反応性ガスの反応を促進させることができる。
したがって、従来のように基板Sの温度を上昇させて反応性を向上させる必要が無く、低い温度で十分に反応を行うことが可能となる。これにより、耐熱性の低いプラスチック樹脂からなる基板Sなどに対しても、十分に反応を行うことが可能となり、膜質のよい薄膜構造体Pを提供することができる。
次に、この薄膜形成装置1を用いて樹脂製の基板Sに密着層Mと無機薄膜層Fを形成する場合について説明する。
まず、回転ドラム13に基板Sをセットし、真空容器11内に収容する。そして、真空容器11内を密閉した状態で、真空ポンプ15を用いて真空容器11内を10−1〜10−5Pa程度の高真空状態にする。
続いて、基板Sの表面に金属膜M0を形成する。まず、回転ドラム13を回転して基板Sを成膜プロセス領域20A内に移動させ(基体搬送工程)、成膜プロセス領域20Aでターゲット22a,22bをスパッタリングして基板Sの表面に金属膜M0を付着させる(スパッタリング工程)。次に、回転ドラム13を回転して、基板Sを反応プロセス領域60Aに搬送する(基体搬送工程)。続いて、反応プロセス領域60Aに反応性ガスを導入する。そして、反応プロセス領域60Aの内部で反応性ガスのプラズマを発生させて金属膜M0の金属と反応させ、不完全反応金属膜M1に変換する(プラズマ処理工程)。
プラズマ処理工程の後、回転ドラム13を停止し、反応性ガスに換えて不活性ガスを反応プロセス領域60A内に導入して不活性ガスのプラズマを発生させる。不活性ガスの流量が安定した後に、再度回転ドラム13の回転を再開する。そして、不完全反応金属膜M1が形成された基板Sを反応プロセス領域60Aに搬送し、不活性ガスのプラズマにより処理する(不活性ガス処理工程)。以上により、密着層Mが形成される。
次に、密着層Mの表面に無機薄膜層Fを形成する。無機薄膜層Fの材料が密着層Mの金属と同質である場合は、ターゲット22a,22bを交換せずにそのまま使用する。この場合、成膜プロセス領域20A内に基板Sを搬送し、ターゲット22a,22bをスパッタリングすることで密着層Mの表面に無機薄膜層Fを構成する中間薄膜を形成する。回転ドラム13の回転により基板Sは反応プロセス領域60Aに搬送されて反応性ガスによる処理を受け、中間薄膜が反応性ガスと反応し、金属反応物に変換される。
回転ドラム13を回転して成膜プロセス領域20Aでの中間薄膜の形成と反応プロセス領域60Aでの金属反応物への変換を複数回繰り返し、所定の膜厚となるまで成膜を継続する(無機薄膜層形成工程)。これにより、無機薄膜層Fが形成される。
以上の工程により、基板Sの表面に薄膜構造体Pが形成される。形成後は、回転ドラム13の回転やガスの供給を停止し、回転ドラム13をロードロック室11Bに搬送する。その後、ロードロック室11Bを大気に開放し、回転ドラム13から基板Sを取り外す。
なお、無機薄膜層Fの材料と密着層Mの金属材料とが異なる場合は、回転ドラム13の回転を一旦停止し、真空容器11内を大気に開放してターゲット22a,22bを取り出し、無機薄膜層Fの金属材料で形成された他のターゲットに交換する。その後、真空容器11内を再び真空状態にし、上述した工程を行って無機薄膜層Fを形成する。
(薄膜構造体の製造装置2)
上述した第1の実施形態の薄膜形成装置1は、成膜プロセス領域20Aと反応プロセス領域60Aをそれぞれ一つずつ設けて成膜を行うように構成されているが、成膜プロセス領域20A以外の別の領域に他の成膜プロセス領域を更に設けて、2種類のターゲットを用いて成膜を行ってもよい。このようにすることで、真空容器11を大気に開放してターゲットを交換することなく2種類の金属を成膜することができる。
以下、図4を参照して第2の実施形態に係る薄膜形成装置について説明する。この図に示すように、ドラム回転軸18を中心として成膜プロセス領域20A(第1成膜プロセス領域)と対称となる真空容器11内部の領域には、仕切壁19により区画された第2成膜プロセス領域としての成膜プロセス領域40Aが形成されている。そして、成膜プロセス領域40Aには、第2スパッタリング手段としてのスパッタリング手段40と、第2スパッタリングガス供給手段としてのスパッタリングガス供給手段50が配設されている。
なお、スパッタリング手段40はスパッタリング手段20(第1スパッタリング手段)と同様の構成であり、スパッタリングガス供給手段50はスパッタリングガス供給手段30(第1スパッタリングガス供給手段)と同様の構成であるため、詳細な説明はここでは省略する。
スパッタリング手段40にはターゲット42a,42bが配設されている。ターゲット42a,42bは、第1スパッタリング手段であるスパッタリング手段20のターゲット22a,22bとは異なる材料で形成されている。
異なる材料の薄膜が積層した多層膜からなる無機薄膜層Fを製造する場合、ターゲット22a,22bと回転ドラム13との間に図示しないシャッターを設けておき、膜原料物質(第1の金属)が基板Sに付着しないようにしておく。また、ターゲット42a,42bと回転ドラム13との間にも図示しないシャッターを設けておき、ターゲット42a,42bから供給される膜原料物質(第2の金属)が基板Sに付着しないようにしておく。
成膜開始後に、まず成膜プロセス領域20Aでターゲット22a,22bをスパッタして基板Sの表面に第1の金属を付着させる(第1スパッタリング工程)。次に、基板Sを反応プロセス領域60A内に搬送し(第1基体搬送工程)、反応プロセス領域60Aで反応性ガスのプラズマを発生させて第1の金属を反応物に変換させる(第1プラズマ処理工程)。この工程を所定の膜厚になるまで複数回繰り返す(第1中間層形成工程)。
続いて、成膜プロセス領域20Aでは、ターゲット22a,22bと回転ドラム13との間を図示しないシャッターで遮蔽し、基板Sへの膜原料物質の供給を停止する。一方、成膜プロセス領域40Aでは、ターゲット42a,42bと回転ドラム13との間に設けられたシャッターを退避させ、ターゲット42a,42bから供給される膜原料物質(第2の金属)が基板Sへ付着するようにする(第2スパッタリング工程)。次に、基板Sを反応プロセス領域60A内に搬送し(第2基体搬送工程)、反応プロセス領域60Aで反応性ガスのプラズマを発生させて第2の金属を反応物に変換させる(第2プラズマ処理工程)。この工程を所定の膜厚になるまで複数回繰り返す(第2中間層形成工程)。
以上の第1中間層形成工程と第2中間層形成工程を所望の膜厚になるまで順次繰り返して、最終膜厚を有する無機薄膜層Fを形成する。
このように、本実施形態の薄膜形成装置1は、異なる材料からなる膜原料物質を付着させる成膜プロセス領域20Aと成膜プロセス領域40Aを備えているため、密着層Mや無機薄膜層Fが異なる金属材料を積層したものであっても、真空容器11の真空状態を解除してターゲットを交換する必要がない。このため、薄膜構造体Pの製造に要するタクトタイムの短縮を図ることが可能となる。
なお、反応プロセス領域についても同様に、2つ以上設けることができる。この場合、一方の反応プロセス領域で反応性ガス処理を行い、他方の反応プロセス領域で不活性ガス処理を行う。反応プロセス領域が1つの場合は、反応ガス処理工程の後で反応プロセス領域60Aに導入するガスを反応性ガスから不活性ガスに交換する必要があったが、このようにすることでガス交換を行う必要がなく、成膜に要する時間を短縮することができる。
次に、実際に薄膜構造体を製造した実施例について説明する。いずれの実施例でも、図3に示される薄膜形成装置1を用いて薄膜構造体Pの形成を行った。各実施例に示す種々の条件で薄膜構造体Pを形成し、基板Sと無機薄膜層Fとの密着性を評価した。
無機薄膜層Fの密着性は、JIS−K5400の碁盤目テープテストを行って評価した。
なお、各実施例中のプロセスA〜Dは、以下の工程を示す。
プロセスA:金属膜形成工程
プロセスB:酸素ガスラジカル/プラズマ/イオン処理工程
プロセスC:アルゴンラジカル/プラズマ/イオン処理工程
プロセスD:無機薄膜形成工程(TiO/SiO又はNbO/SiO
(実施例1:プロセス順序/組合せ評価1)
各プロセスの順序と組合せを変えて薄膜構造体Pを作成し、密着性の評価を行った。
各プロセスの内容と条件は以下のとおりである。
プロセスA;
材料・・金属シリコン
膜厚・・3nm
パワー・・約3.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.2Pa
プロセスB;
処理時間・・3min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス+酸素ガス
圧力・・0.15Pa
プロセスC;
処理時間・・2min
パワー・・約3.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.2Pa
プロセスD;
材料・・反射防止層(NbO/SiO 4層)
膜厚・・約250nm
Figure 0004895897
表1の結果から、プロセスA、B、C、Dの順に処理を行った場合(実験1−4)のみ、密着性の向上が見られ、それ以外では密着性の向上が見られなかった。
特に、実験1−2と1−4、実験1−3と1−4の比較から、金属膜M0に酸素ガスラジカル処理(プロセスB)を行わない場合や、アルゴンガスラジカル処理(プロセスC)を行わない場合のいずれも、密着性の向上が見られなかった。このことから、これら2つの処理は密着性向上における必須の処理であることがわかる。
また、実験1−4と1−5の比較から、酸素ガスラジカル処理(プロセスB)とアルゴンガスラジカル処理(プロセスC)の順序を入れ替えても、密着性の向上が見られなかった。このことから、これらのプロセスは、A〜Dをこの順で行うことが必須であることがわかった。
(実施例2:プロセス順序/組合せ評価2)
密着層Mの材料をケイ素からチタンに代え、無機薄膜層Fの材料を酸化ニオブ/酸化ケイ素から酸化チタン/酸化ケイ素に代えて、実施例1と同様の実験を換えて行った。その他の条件は実施例1とほぼ同様である。
各プロセスの内容と条件は以下のとおりである。
プロセスA;
材料・・金属チタン
膜厚・・1.5nm
パワー・・約4W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.2Pa
プロセスB;
処理時間・・3min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス+酸素ガス
圧力・・0.27Pa
プロセスC;
処理時間・・2min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.18Pa
プロセスD;
材料・・反射防止層(TiO/SiO 4層)
膜厚・・約250nm
Figure 0004895897
実験2−4から、密着層Mの材料をケイ素からチタンに代えても密着性の向上が見られた。このことから、密着層Mの材料はケイ素に限定されず、他の4価の金属であるチタンでも密着性の向上を実現できることがわかった。
(実施例3:密着層の膜厚評価)
密着層Mの膜厚を種々に変化させて密着性試験を行った。この実施例では、下記プロセスA〜Dをこの順で行った。
各プロセスの内容と条件は以下のとおりである。
プロセスA;
材料・・金属チタン
膜厚・・変量
パワー・・約4W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.2Pa
プロセスB;
処理時間・・3min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス+酸素ガス
圧力・・0.27Pa
プロセスC;
処理時間・・2min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.18Pa
プロセスD;
材料・・反射防止層(TiO/SiO 4層)
膜厚・・約250nm
Figure 0004895897
実験3−4と3−5で、密着層Mの透過色が「やや茶色」であることから、密着層Mのチタンがほぼ完全に酸化されて酸化チタンになっていることがわかる。
これらの実験結果から、密着層Mの膜厚が6nmよりも大きいと密着性が悪いことがわかった。また、膜厚が1nm以下や5nm以上の場合も密着性がそれほど良好でなく、1.5nm〜3nmでは密着性が良好であることがわかった。
(実施例4:密着層の金属種評価)
密着層Mを形成する金属材料を種々に変更して密着性試験を行った。この実施例では、下記プロセスA〜Dをこの順で行った。
各プロセスの内容と条件は以下のとおりである。
プロセスA;
材料・・金属種(変種)
膜厚・・3nm
パワー・・約3〜4W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.2Pa
プロセスB;
処理時間・・3min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス+酸素ガス
圧力・・0.27Pa
プロセスC;
処理時間・・2min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.18Pa
プロセスD;
材料・・反射防止層(TiO/SiO 4層)
膜厚・・約250nm
Figure 0004895897
これらの実験結果から、ケイ素(実験4−2)、チタン(実験4−3)、ゲルマニウム(実験4−4)、ジルコニウム(実験4−5)については密着性が向上したが、他の金属については密着性の向上が見られなかった。
このことから、4価の金属を密着層Mの材料として用いた場合のみ密着性が向上することがわかった。これは、4価の金属原子は同じ4価の炭素原子と共有結合しやすいため、密着層Mの金属原子と基板Sの炭素原子とが共有結合を形成し、このため基板Sと密着層Mが強固に密着したためであると考えられる。
(実施例5:反応性ガスによる処理時間の評価1)
密着層Mに対する反応性ガスによる処理時間を種々に変更して密着性試験を行った。この実施例では、下記プロセスA〜Dをこの順で行った。
各プロセスの内容と条件は以下のとおりである。
プロセスA;
材料・・金属チタン
膜厚・・1.5nm
パワー・・約4W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.2Pa
プロセスB;
処理時間・・変量
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス+酸素ガス
圧力・・0.27Pa
プロセスC;
処理時間・・1min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.18Pa
プロセスD;
材料・・反射防止層(TiO/SiO 4層)
膜厚・・約250nm
Figure 0004895897
これらの実験から、処理時間1分(実験5−1)では密着性がやや劣るものの、1.5分(実験5−2)、2分(実験5−3)では密着性の向上が見られた。一方、処理時間3分(実験5−4)では密着性の向上は見られなかった。なお、実験5−1で密着層Mの透過色が「やや茶色」であることから、処理時間1分では密着層Mはほとんど反応していないと考えられる。
これらの実験結果から、密着層Mの酸化が不十分だと密着性の向上が見られず、逆に酸化が十分すぎて密着層Mのほとんどが酸化物となった場合も密着性が向上しないことがわかった。これは、密着層Mの酸化が不十分である場合には密着層Mと無機薄膜層Fとの密着性が十分でなく、密着層Mの酸化が十分すぎると密着層Mと基板Sとの密着性が十分でないためであると考えられる。
(実施例6:反応性ガスによる処理時間の評価2)
実施例5と同様に、密着層Mに対する反応性ガスによる処理時間を種々に変更して密着性試験を行った。この実施例では、下記プロセスA〜Dをこの順で行った。
各プロセスの内容と条件は以下のとおりである。
プロセスA;
材料・・金属チタン
膜厚・・3nm
パワー・・約3〜4W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.2Pa
プロセスB;
処理時間・・変量
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス+酸素ガス
圧力・・0.27Pa
プロセスC;
処理時間・・2min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.18Pa
プロセスD;
材料・・反射防止層(TiO/SiO 4層)
膜厚・・約250nm
Figure 0004895897
これらの実験から、処理時間2分(実験6−1)や4分(実験6−3)では密着性がやや劣るものの、3分(実験6−2)では密着性の向上が見られた。一方、処理時間5分(実験6−4)では密着性の向上は見られなかった。なお、実験6−1で密着層Mの透過色が「やや茶色」であることから、処理時間2分では密着層Mはほとんど反応していないと考えられる。
このことから、密着層Mの酸化が不十分だと密着性の向上が見られず、逆に酸化が十分すぎて密着層Mのほとんどが酸化物となった場合も密着性が向上しないことがわかった。
(実施例7:不活性ガスによる処理時間の評価1)
密着層Mに対する不活性ガスによる処理時間を種々に変更して密着性試験を行った。この実施例では、下記プロセスA〜Dをこの順で行った。
各プロセスの内容と条件は以下のとおりである。
プロセスA;
材料・・金属チタン
膜厚・・1.5nm
パワー・・約4W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.2Pa
プロセスB;
処理時間・・1.5min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス+酸素ガス
圧力・・0.27Pa
プロセスC;
処理時間・・変量
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.18Pa
プロセスD;
材料・・反射防止層(TiO/SiO 4層)
膜厚・・約250nm
Figure 0004895897
これらの実験から、処理時間0.5分(実験7−1)や2分(実験7−3)では密着性がやや劣るものの、1分(実験7−2)では密着性の向上が見られた。一方、処理時間3分(実験7−4)では密着性の向上は見られなかった。
このことから、密着層Mに対するアルゴンガス処理が不十分だと密着性が向上せず、逆に処理が十分すぎても密着性が向上しないことがわかった。
(実施例8:不活性ガスによる処理時間の評価2)
実施例7と同様に、密着層Mに対する不活性ガスによる処理時間を種々に変更して密着性試験を行った。この実施例では、下記プロセスA〜Dをこの順で行った。
各プロセスの内容と条件は以下のとおりである。
プロセスA;
材料・・金属チタン
膜厚・・3nm
パワー・・約3〜4W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.2Pa
プロセスB;
処理時間・・3min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス+酸素ガス
圧力・・0.27Pa
プロセスC;
処理時間・・変量
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.18Pa
プロセスD;
材料・・反射防止層(TiO/SiO 4層)
膜厚・・約250nm
Figure 0004895897
これらの実験から、処理時間1分(実験8−2)や3分(実験8−4)では密着性がやや劣るものの、2分(実験8−3)では密着性の向上が見られた。一方、処理時間0.5分(実験8−1)では密着性の向上は見られなかった。
このことから、密着層Mに対するアルゴンガス処理が不十分だと密着性が向上せず、逆に処理が十分すぎても密着性が向上しないことがわかった。
(実施例9:多層膜の膜種の評価)
無機薄膜層F(多層膜)の膜種を種々に変更して密着性試験を行った。この実施例では、下記プロセスA〜Dをこの順で行った。
各プロセスの内容と条件は以下のとおりである。
プロセスA;
材料・・金属チタン
膜厚・・1.5nm
パワー・・約4W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.2Pa
プロセスB;
処理時間・・1.5min
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス+酸素ガス
圧力・・0.27Pa
プロセスC;
処理時間・・変量
パワー・・約2.5W/cm
供給ガス・・アルゴンガス
圧力・・0.18Pa
プロセスD;
材料・・多層膜(変種)
膜厚・・変量
Figure 0004895897
表中の「Air」は表面側の大気層を示している。すなわち、「TiO/SiO/Air」では、密着層Mの表面にTiOとSiOがこの順で形成され、SiOの表面は大気層であることを示している。
これらの実験から、無機薄膜層Fの材質や構成順によらず、すべての膜構成において密着性の向上が見られた。すなわち、密着層Mの界面側が金属チタンであっても金属ケイ素であってもよく、また、これらの金属が酸化されていてもよいことがわかる。
本発明の薄膜構造体の横断面形状を模式的に示した説明図である。 薄膜構造体の製造手順を示す説明図である。 薄膜形成装置を上側から見た状態を示す説明図である。 他の実施形態に係る薄膜形成装置を上側から見た状態を示す説明図である。
符号の説明
1 薄膜形成装置
11 真空容器
11A 薄膜形成室
11B ロードロック室
11C 扉
12 仕切壁
13 回転ドラム
14 仕切壁
15 真空ポンプ
18 ドラム回転軸
19 仕切壁
20 スパッタリング手段(第1スパッタリング手段)
20A 成膜プロセス領域(第1成膜プロセス領域)
21a マグネトロンスパッタ電極
21b マグネトロンスパッタ電極
22a ターゲット
22b ターゲット
23 トランス
24 交流電源
30 スパッタリングガス供給手段(第1スパッタリングガス供給手段)
31 スパッタリングガスボンベ
32 マスフローコントローラ
40 スパッタリング手段(第2スパッタリング手段)
40A 成膜プロセス領域(第2成膜プロセス領域)
42a ターゲット
42b ターゲット
50 スパッタリングガス供給手段(第2スパッタリングガス供給手段)
60 プラズマ発生手段
60A 反応プロセス領域
61 ケース体
62 誘電体板
63 アンテナ
64 マッチングボックス
65 高周波電源
70 反応性ガス供給手段
71 反応性ガスボンベ
72 マスフローコントローラ
73 不活性ガスボンベ
74 マスフローコントローラ
P 薄膜構造体
S 基板(基体)
M 密着層
M0 金属膜
M1 不完全反応金属膜
F 無機薄膜層

Claims (8)

  1. 樹脂製の基体の表面に形成された薄膜構造体であって、
    前記基体の表面に形成された1〜5nmの膜厚からなる密着層と、該密着層の表面に形成された無機薄膜層とを備え、
    前記密着層は、前記基体の表面に4価の金属から選択される1又は2種類以上の金属膜を形成し、該金属膜の表面側から反応性ガスのイオン又はラジカルによる処理を行って前記金属膜の不完全反応物を生成させ、続いて反応後の前記金属膜に対して不活性ガスのイオン又はラジカルによる処理を行うことで形成されることを特徴とする薄膜構造体。
  2. 前記4価の金属は、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム及びハフニウムからなる群より選択される1又は2種類以上の金属であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜構造体。
  3. 前記基体は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート−ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリカーボネート−ポリブチレンテレフタレート共重合体、アクリル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群より選択される1又は2種類以上の樹脂材料、又はこれらの材料とガラス繊維及び/又はカーボン繊維との混合物で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜構造体。
  4. 前記反応性ガスは、酸素ガス又は窒素ガス若しくはこれらの混合ガスであることを特徴とする請求項1に記載の薄膜構造体。
  5. 樹脂製の基体の表面に形成された薄膜構造体であって、
    前記基体の表面に形成された1〜5nmの膜厚からなる密着層と、該密着層の表面に形成された無機薄膜層とを備え、
    前記密着層は、4価の金属から選択される1又は2種類以上の金属又はその反応物で形成されるとともに、前記基体側よりも前記無機薄膜側で前記反応物の密度が高くなるよう構成され、
    前記基体の表面の炭素原子と前記密着層を構成する前記4価の金属原子とが共有結合していることを特徴とする薄膜構造体。
  6. 樹脂製の基体の表面に形成された薄膜構造体の製造方法であって、
    前記基体の表面に4価の金属から選択される1又は2種類以上の金属膜を形成する工程と、
    前記金属膜の表面側から反応性ガスのイオン又はラジカルによる処理を行って前記金属膜の不完全反応物を生成させる反応性ガス処理工程と、
    反応後の前記金属膜に対して不活性ガスのイオン又はラジカルによる処理を行うことで、膜厚が1〜5nmの範囲内である密着層を形成する不活性ガス処理工程と
    前記密着層の表面に無機薄膜を形成する無機薄膜形成工程と、を行うことを特徴とする薄膜構造体の製造方法。
  7. 互いに離間する位置に少なくとも1つずつ設けられた成膜プロセス領域及び反応プロセス領域を内部に備えた真空容器を用いて、樹脂製の基体の表面に無機薄膜を形成する薄膜構造体の製造方法であって、
    前記成膜プロセス領域内で4価の金属からなるターゲットをスパッタリングして前記基体の表面に前記金属からなる金属膜を付着させるスパッタリング工程と、
    前記反応プロセス領域内に前記基体を搬送する基体搬送工程と、
    前記反応プロセス領域内に反応性ガスを導入してプラズマを発生させ、生成した前記反応性ガスのイオン又はラジカルと前記金属膜を反応させて前記金属膜の不完全反応物を生成させる反応性ガス処理工程と、
    前記反応プロセス領域と同一又は異なる他の反応プロセス領域内で反応後の前記金属膜に対して不活性ガスのイオン又はラジカルによる処理を行うことで、密着層を形成する不活性ガス処理工程と、
    前記成膜プロセス領域と同一又は異なる他の成膜プロセス領域内でスパッタリングにより前記密着層の表面に無機薄膜を形成する無機薄膜形成工程と、を行うことを特徴とする薄膜構造体の製造方法。
  8. 前記反応性ガスは、酸素ガス又は窒素ガス若しくはこれらの混合ガスであることを特徴とする請求項又はに記載の薄膜構造体の製造方法。
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