JP4895663B2 - 電界放出型電子源の製造方法 - Google Patents

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本発明は、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバー等の繊維状カーボンを含むカーボン膜から電子を放出する電界放出型電子源の製造方法に関するものである
従来から、電界放出型電子源として、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバー等の繊維状カーボンを含むカーボン膜が用いられている。電界放出型電子源においては、カーボン膜に対して電界が印加されれば、カーボン膜から電子が放出される。
カーボン膜は、カソード電極層上に印刷法によって形成される。このカーボン膜の電子放出特性を改善するために、粘着テープ等をカーボン膜に付着させた後、それをカーボン膜から剥ぎ取る処理が行われている。この処理により、カーボン膜の表面層が除去される。その結果、繊維状カーボンの先端がカーボン膜の表面から突出する。
特開2003−203559号公報 特開2003−168355号公報
上記従来の方法によれば、カーボン膜の表面層の除去の程度が制御されていない。そのため、カーボン膜中に含まれる接着剤の役割を果たすガラス等の微粒子の大きさおよび量の面方向における分布のばらつきに起因して、表面層が除去された後のカーボン膜の露出面は、凹凸を有していることがある。
この場合、カーボン膜の露出面の凹凸に起因して、露出した複数の繊維状カーボンの先端に印加される電界のカーボン膜の面内方向の分布にばらつきが生じる。そのため、繊維状カーボンから放出される電子量がカーボン膜の上面の位置によって異なってしまう。その結果、電界放出型電子源が表示装置に用いられた場合には、表示装置の面内方向の発光の均一性にばらつきが生じてしまう。
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、均一な電子放出特性を有する電界放出型電子源の製造方法を提供することである。
電界放出型電子源は、カソード電極上に繊維状カーボンを含む複数層のカーボン膜を有する積層構造カーボンを形成するステップと、複数層のカーボン膜のいずれか2つのカーボン膜同士の界面で剥離が生じるように、積層構造カーボン膜に粘着テープを付着させた後、その粘着テープを引き剥がすステップとを備えている。
上記の製法によれば、積層構造を構成するカーボン膜同士の界面で剥離が生じる。そのため、カーボン膜の平坦な上面が露出する。その平坦な上面から繊維状カーボンが起立する。その結果、電界放出型電子源から放出される電子の分布の均一性が良好になる。
本発明の実施の形態の電界放出型電子源の製造方法においては、ピーリング処理によってカーボン膜の表面に凹凸が形成されることが抑制される。そのために、まず、複数種類のペーストを用いて複数種類のカーボン膜が積層された積層構造カーボン膜が形成される。その後、この積層構造カーボン膜を構成するカーボン膜同士の界面において剥離が発生するように、上層に位置するカーボン膜が除去される。
前述の積層構造カーボン膜を形成するために、ガラス微粒子等の接着剤の役割を果たす微粒子の重量混合比が異なる複数種類のペーストを用いて複数のカーボン膜が積層される。それにより、特定の積層構造の境界でピーリング時の剥離を発生させることが可能になる。その結果、ピーリング処理後のカーボン膜の上面の平坦性が改善される。したがって、カーボン膜の上面の凹凸に起因した電子放出特性の分布のばらつきが低減される。故に、カーボン膜からの電子放出の均一性が改善される。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態の電界放出型電子源を説明する。
まず、図1〜図3を用いて、本願の発明者らが実施しようとしていた電界放出型電子源の製造方法の問題点を説明する。
一般に、電界放出型電子源の繊維状電子放出材料として、スクリーン印刷またはスプレー印刷等の印刷法で形成されるカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバー等の繊維状カーボンが用いられる。なお、以下においては、説明の簡便のため、これらの繊維状カーボンの代表として、カーボンナノチューブが用いられた電界放出型電子源が一例として述べられる。
カーボン膜が印刷された直後においては、ペースト中の溶剤成分の表面張力によって、カーボンナノチューブが、カーボン膜の表面に沿って延びるように倒れている。このような場合においては、カーボンナノチューブの先端部分に電子放出が促進される程度の電界集中が発生しない。そのため、良好な電子放出特性は得られない。
そこで、カーボン膜が印刷法によって形成される場合には、カーボンナノチューブをカーボン膜の表面から起立させる表面処理が実行される。それによって、カーボンナノチューブの先端に電界集中が生じ易くなる。その結果、良好な電子放出特性が得られる。
前述のような表面処理としては、カーボン膜の表面に粘着性の粘着テープを貼り付け、カーボン膜の表面からその粘着テープを引きは剥がす処理(以下、「ピーリング処理」と呼ばれる。)が挙げられる。なお、カーボンナノチューブがカーボン膜の表面から起立している状態は起毛状態と呼ばれる。
図1は、スプレー法またはスクリーン印刷法によってカソード電極層上に形成されたカーボン膜の概略図である。一般的に、電子放出層としてカーボン膜が使用される場合には、ガラス基板101上のカソード電極層102上にカーボン膜111が形成される。カソード電極層102は、ITO、CrもしくはAl等の金属からなる。
このとき、カソード電極層102とカーボン膜111との間の密着力およびカーボン膜111内でのカーボンナノチューブ同士の密着力を高める必要がある。そのために、ガラス微粒子103がカーボン膜111を形成するための印刷ペースト中にカーボンナノチューブ104とともに混合されている。ガラス微粒子103は接着剤として機能する。また、ペーストは、ガラス微粒子とともに、銀またはニッケル等の微粒子からなる接着剤も含んでいてもよい。カーボン膜111が350℃以上の温度で焼成されれば、接着剤となる微粒子が溶融し、前述の密着力が確保される。以下、説明の簡便のため、接着剤となる微粒子としてガラス微粒子が用いられた電界放出型電子源の製造方法が述べられる。
一般に、スクリーン印刷法によってカーボン膜111が形成される場合には、ペースト中には、固形成分として、前述したように、カーボンナノチューブ104、接着剤の役割を果たすガラス、および、銀またはニッケル等の微粒子が混入される。また、ペースト中には、前述の固形成分のほかに、これらの固形成分をカソード電極層102に印刷するための、エチルセルロースまたはアクリル等の樹脂材料が含まれている。さらに、ペースト中には、前述の樹脂材料を溶解させるためのブチルカルビトール(BC)、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、およびターピネオール等の溶剤成分が含まれている。また、ペースト中には、カーボンナノチューブ111およびガラス等の微粒子103が凝集することを防止するための分散剤も含まれている。
なお、前述のカーボン膜111の焼成が実行されれば、ガラスまたは銀等の微粒子103が溶融するだけでなく、ペースト中の樹脂、溶剤、および分散剤等の成分が焼失する。
ペースト中にガラス、銀、またはニッケル等の微粒子103が混合されていなければ、カーボン膜111が焼成された後にカーボンナノチューブ104のみからなるカーボン膜111を残存させることが可能である。ただし、この場合には、カソード電極層102とカーボンナノチューブ104のみからなるカーボン膜111との間の接着力は、ファンデルワールス力のみであるため、小さい。また、カーボンナノチューブ104同士が絡み合う力が大きい。そのため、ピーリング処理が行われると、カーボン膜111がカソード電極層102から完全に剥離してしまう。
図1は、接着材料としてガラス微粒子103を含むカーボン膜111がカソード電極層102上で焼成された後の状態を示す図である。図1においては、カーボン膜111に含まれる繊維状カーボンとしてカーボンナノチューブが用いられている。図1は、ピーリング処理される前のカーボン膜111の状態を示している。図1に示すように、ピーリング処理が行われる前においては、ガラス基板上101上のカソード電極層102上にカーボン膜111が形成されており、カーボン膜111は接着剤の役割を果たすガラス微粒子103とカーボンナノチューブ104とからなっている。
図1に示されるカーボン膜111に対してピーリング処理が行われた後の状態が図2に示されている。図2に示されるように、ピーリング処理が行われれば、カーボン膜111の露出面から起立したカーボンナノチューブ112が形成される。
図1に示されるピーリング処理前の状態において、部分105においては、比較的ガラス微粒子103がカーボンナノチューブ104中に均一に混在している。部分105のうちピーリング処理によって引き剥がされたカーボン膜111の膜厚は、およそガラス微粒子1個または2個分程度の大きさである。したがって、ピーリング処理後においては、図1における部分105は、図2における部分108になる。部分108の上表面は、図2におけるA−A’線で示されるピーリング処理前のカーボン膜111の上表面よりも、およそガラス微粒子103の1個または2個分の大きさ程度低くなっている。
一方、図1における部分106においては、比較的広い範囲において、ガラス微粒子103の密度がカソード電極層102の近傍で低くなり、ガラス微粒子103がカソード電極層102に接触していない。この部分106では、カーボン膜111とカソード電極層102との間の密着力が小さい。そのため、ピーリング処理が行われると、部分106からカーボン膜111が完全に剥離してしまう。その結果、図2に示す部分109のように、カソード電極層102が露出してしまう。
また、図1における部分107に示されるように、カーボン膜111の厚さ方向の中央部においてカーボン膜111中のガラス微粒子103の密度が低い部分107においても、接着力が小さい。そのため、ピーリング処理が行われると、図2に示すように、部分110の上面は、所望のピーリング処理によって形成された部分108の上面よりも低い位置に形成されてしまう。
このように、カソード電極層102とカーボン膜111との間の接着力が不均一であったり、カーボン膜111中の部位同士の接着力が不均一であったりすると、ピーリング処理後のカーボン膜111の表面の凹凸が大きくなってしまう。
図2に示された電界放出型電子源の製造方法においては、まず、ガラス基板101上にカソード電極層102が形成される。次に、カソード電極層102上にカーボンナノチューブを含むカーボン膜111が印刷法で形成される。その後、カーボン膜111は、焼成された後、ピーリング処理される。
前述のような製法により形成された電界放出型電子源において、図3に示されるように、カーボン膜111の直上にカーボン膜111から電子を引き出すための電界がカソード電極層102とカソード電極層102に対向するアノード電極層114との間の空間に印加される。
アノード電極層114は、カソード電極層102に対向する位置に、カーボン膜111から放出された電子を吸引するために設けられている。また、アノード電極層114は、ITOまたはAl等の金属膜がその表面上に形成されたガラス基板、または、AlもしくはMo等の金属板からなる。また、アノード電極層114は、カーボン膜111の所望のピーリング処理が施された部分108に対して距離dを隔てて配置されている。
前述のような2極構造の電界放出型電子源が真空槽内に設置され、カソード電極層102の電位が0Vに設定され、アノード電極層114の電位が正の値に設定されると、カーボン膜111の表面とアノード電極層114との間の空間に電界が印加される。それにより、カーボン膜111の表面から起立したカーボンナノチューブ112の先端に電界集中が発生して、電子が放出される。このときに、カーボンナノチューブ112から放出される電子の量は、カーボン膜111の表面の電界集中の程度に依存する。そのため、カーボンナノチューブ112の先端とカノード電極層114の上面との間に印加された電界が大きいほど、カーボンナノチューブ112の先端から放出される電子の量は増加する。
カーボン膜111とカノード電極層114との間に印加された電界は、カーボン膜111の主表面とアノード電極層114との間の空間に印加される電界が一定の場合には、アノード電極層114の主表面とカーボン膜111の主表面との間の距離に依存する。つまり、前述の距離が長くなるほど、電界は小さくなる。
図3に示されるように、部分109においては、ピーリング処理でカーボン膜111が底部まで引き剥がされる。そのため、カーボン膜111が殆ど残っていない。一方、部分110においては、所望のピーリング処理が施されている部分108より低い位置までピーリング処理がなされている。また、部分108は、所望のピーリング処理がなされている。
したがって、部分109および110のそれぞれとアノード電極層114との間の距離は、部分108とアノード電極層114との間の距離に比較して、大きい。そのため、部分109および部分110のそれぞれとアノード電極層102との間の空間に印加される電界は、部分108とアノード電極層114との間の空間に印加される電界に比較して、小さい。したがって、部分110および109のそれぞれにおけるカーボンナノチューブ112からの電子放出量は、部分108のカーボンナノチューブ112からの電子放出量より小さい。また、部分109においては、カーボンナノチューブ112自体が少ないため、電子放出量が最も小さい。
以上述べたように、ピーリング処理によってカーボン膜111の表面に凹凸が発生すると、その凹凸に応じてカーボン膜111の表面で電子放出量にばらつきが生じる。そのため、カーボン膜111の表面から均一に電子が放出されない。したがって、カーボン膜111からの均一な電子放出を実現するためには、ピーリング処理後のカーボン膜111の表面の凹凸を小さくする必要がある。
ピーリング処理によって形成されたカーボン膜の表面の凹凸の発生を抑制するためには、平坦に形成されたカーボン膜の表面でカーボン膜を剥離させることが必要である。そのため、以下に説明する実施の形態の電界放出型電子源の製造方法においては、カーボン膜が異なる複数種類のペーストから形成された積層構造を有し、その積層構造の界面においてピーリング処理によって剥離を発生させる。
以下、図4〜図17を用いて、本発明の実施の形態の電界放出型電子源の製造方法が説明される。
実施の形態1.
まず、図4を用いて、本発明の実施の形態の電界放出電源の製造方法が説明される。本実施の形態の電界放出電源の製造方法においては、まず、ガラス基板401上にITO膜からなるカソード電極層402が形成される。次に、カソード電極層402上にスクリーン印刷法を用いて第1のカーボン膜407が形成される。その後、たとえば、120℃の温度で10分間、第1のカーボン膜407の乾燥工程が実行される。次に、第1のカーボン膜407上に第2のカーボン膜408がスクリーン印刷法を用いて形成される。その後、たとえば、120℃の温度で10分間、カーボン膜407および第2のカーボン膜408の乾燥工程が実行される。前述のような2回の乾燥工程によってカーボン膜407およびカーボン膜408からなる積層構造カーボン膜409が形成される。
次に、積層構造カーボン膜409のカーボン膜中に含まれるガラス微粒子403および404が軟化する温度以上の温度、たとえば、470℃の温度の大気中で1時間、積層構造カーボン膜409の焼成工程が実行される。それにより、第1のカーボン膜407および第2のカーボン膜408中に含まれる樹脂、溶剤、および分散剤が除去される。また、カーボン膜407および408中に含まれるガラス微粒子403および404が軟化する。
本実施の形態においては、ガラスの軟化点は420℃程度であり、焼成温度は、この軟化点温度以上であればいかなる温度であってもよい。ただし、カーボンナノチューブの耐熱性が低い場合には、焼成によってカーボンナノチューブが消失してしまうおそれがある。そのため、N2もしくはAr雰囲気中または真空雰囲気中等の酸素が存在しない雰囲気中でカーボン膜407および408の焼成が行われることが望ましい。ただし、これらの雰囲気中でカーボン膜407および408の焼成が行われた場合には、ペースト中に含まれる樹脂および分散剤が完全には除去されない。そのため、樹脂および分散剤が分解して消失する400℃までの温度では、カーボン膜407および408は、大気中で焼成され、400℃以上の温度では、N2もしくはAr雰囲気中、または真空雰囲気中でカーボン膜407および408の焼成が行われることが望ましい。
図4に示される積層構造カーボン膜409においては、第1のカーボン膜407とカソード電極層402との接合は、第1のカーボン膜407中に含まれるガラス微粒子403によって実現される。さらに、第1のカーボン膜407と第2のカーボン膜408との接合は、第1のカーボン膜407中のガラス微粒子403と第2のカーボン膜408中のガラス微粒子404との接着力、第1のカーボン膜407中のガラス微粒子403と第2のカーボン膜408中のカーボンナノチューブ406との接着力、および第1のカーボン膜407中のカーボンナノチューブ405と第2のカーボン膜408中のガラス微粒子404との接着力によって実現される。
次に、前述の積層構造カーボン膜409に対して表面に粘着剤を有する粘着テープが貼り付けられる。その後、粘着テープを引き剥がすピーリング処理が行われる。
図5は、粘着剤412が付された粘着テープ417が、積層構造カーボン膜409に貼り付けられた状態を示す模式図である。図5に示された状態において、積層構造カーボン膜409に貼り付けられた粘着テープ417が引き剥がされる。
このとき、カソード電極層402と第1のカーボン膜407との界面413、第1のカーボン膜407と第2のカーボン膜408との界面414、第2のカーボン膜408と粘着剤412との界面415、粘着テープ基材411と粘着剤412との界面416、第1のカーボン膜407中のガラス微粒子403とカーボンナノチューブ405との接着面、および第2のカーボン膜408中のガラス微粒子404とカーボンナノチューブ406との接着面のうちの最も密着力が小さい位置で剥離が発生する。
すなわち、前述の界面または接着面のうちの第1のカーボン膜407と第2のカーボン膜408との界面414の密着力が最も小さければ、図6に示されるように、界面414において必ず剥離が生じる。
そのため、この界面414が平坦になっていれば、ピーリング処理が実行された後、図2に示されたようなカーボン膜111の表面の凹凸の発生が抑制される。したがって、ピーリング処理の後のカーボン膜407の上面の平坦性が確保される。つまり、カーボン膜407の平坦な上面からカーボンナノチューブ405が起立する。そのため、カーボン膜407の凹凸に起因した電界の不均一性が抑制される。したがって、カーボン膜407の電子放出特性の均一化を図ることができる。
次に、このような積層構造カーボン膜の製造方法を具体的に説明する。
まず、第1のカーボン膜407をスクリーン印刷で形成するためのペーストが準備される。
ペーストには、カーボンナノチューブ、ガラス微粒子、エチルセルロース(樹脂)、ブチルカルビトールアセテートとターピネオールとの混合溶剤、および分散剤が含まれている。
ペースト中に混合されたガラス微粒子の粒径は、次のような観点から決定される。
ピーリング処理が実行された後においては、カーボンナノチューブ405がカーボン膜407から起立している。そのため、カーボン膜407の表面の凹凸がカーボン膜407の電子放出特性に悪影響を与えないことが必要である。そのため、焼成された後の第1のカーボン膜407の表面の凹凸を示す算術平均表面粗さRaが、カーボンナノチューブ405のカーボン膜407の上面からの高さのばらつき3μmの1/10である0.3μm以下であることが望ましい。したがって、ガラス微粒子403の平均粒径は、0.2μmから1.2μmまでの範囲内であることが望ましい。
カーボン膜407の上面を平坦化することのみを考慮すれば、0.2μmよりも小さな粒径を有するガラス微粒子403を使用することが可能である。しかしながら、平均粒径が0.2μm以下であるガラス微粒子403が用いられる場合には、ガラス微粒子403は、焼成によって軟化し、その後、カーボンナノチューブ405同士の隙間を毛細管現象によって流れ、第1のカーボン膜407の表面に集まる。そのため、第1のカーボン膜407の表面がガラス微粒子403によって覆われてしまう。その結果、第1のカーボン膜407と第2のカーボン膜408との界面414にガラス層が形成される。
したがって、ピーリング処理がなされた後には、前述のガラス層の表面にカーボンナノチューブ405の起毛処理がなされる。この起毛したカーボンナノチューブ405とカソード電極層402とがガラス層によって電気的に絶縁されている。そのため、カソード電極層402から起毛したカーボンナノチューブ405へ電子が供給されない。その結果、電子放出が生じないという不具合が発生する。したがって、ガラス微粒子403の粒径は、前述のように、0.2μm以上であることが望ましい。
また、ペーストを形成する際のカーボンナノチューブ405とガラス微粒子403との重量混合比は、次のような観点から決定される。
本実施の形態においては、カーボンナノチューブ405の重量が1である場合に、ガラス微粒子403の重量が1〜10であるものとする。つまり、カーボンナノチューブ405に対するガラス微粒子403の混合重量比は、1〜10の範囲内である。
前述の重量混合比がその下限値である1よりも小さい場合には、積層構造カーボン膜409が形成された後において、カソード電極層402と第1のカーボン膜407との接着力および第1のカーボン膜407中のガラス微粒子403とカーボンナノチューブ405との接着力が、十分に確保されない。そのため、ピーリング処理がなされた後に、部分的に第2のカーボン膜408内もしくはカソード電極層402と第1のカーボン膜407との界面413で部分的に剥離が発生する。したがって、カーボンナノチューブ405に対するガラス微粒子403の重量混合比は、1以上であることが必要である。
前述の重量混合比がその1よりも大きい場合には、カソード電極層402と第1のカーボン膜407との接着力および第1のカーボン膜407中のガラス微粒子403とカーボンナノチューブ405との接着力が、カーボンナノチューブ405に対するガラス微粒子403の重量混合量の増加につれて大きくなる。しかしながら、カーボンナノチューブ405に対するガラス微粒子403の重量混合量が増加するにつれて、第1のカーボン膜407の表面とカソード電極層402との間の電気抵抗が、位置によってばらつく。さらに、カソード電極層402と第1のカーボン膜407中のカーボンナノチューブ405との電気的な接触に不良が発生する。その結果、電子放出特性が不均一になる。したがって、カーボンナノチューブ405に対するガラス微粒子403の重量混合比は、10以下であることが望ましい。
また、焼成された後の第1のカーボン膜407の上面の平坦性が重要である。第1カーボン膜407の上面の平坦性は、前述のガラス微粒子の粒径のみならず、ペーストに混合されたカーボンナノチューブ405、ガラス微粒子403、樹脂、溶剤、および分散剤の各材料の重量混合比にも依存する。
カーボンナノチューブ405に対するガラス微粒子403の重量混合比は、前述のように、カーボンナノチューブ405の重量を1とした場合にガラス微粒子403の重量が1から10までの範囲内の値に設定されている。
その他の樹脂、分散剤、および溶剤の重量混合比は、第1のカーボン膜407の焼成後の平坦性Raが0.3μm以下の値になるように設定されている。この重量混合比は、ガラス微粒子403の粒径、および、カーボンナノチューブ405とガラス微粒子403との重量混合比によって異なっているが、たとえば、平均粒径0.3μmのガラス微粒子403がカーボンナノチューブ405に対して重量比5で混合されたペーストが用いられる場合には、全材料の重量混合比に関しては、カーボンナノチューブ:ガラス微粒子:樹脂(エチルセルロース)+分散剤:溶剤(ブチルカルビトールアセテート)=1:5:20:74という関係が成立している。
ペーストは、前述のようにして作成され、スクリーン印刷法で、たとえば、ガラス基板401上に形成されたITOからなるカソード電極層402上に印刷される。次に、120℃で10分間、ペーストの乾燥が行なわれる。それにより、第1のカーボン膜407が形成される。その後、第2のカーボン膜408が第1のカーボン膜407上に形成される。第2カーボン膜408は、第1のカーボン膜407と同様に、スクリーン印刷法で印刷される。
この第2のカーボン膜408の形成のために使用されるペーストに関しては、積層構造カーボン膜409が焼成された後の第1のカーボン膜407と第2のカーボン膜408との界面414での接着力を考慮して作製される。
具体的には、第1のカーボン膜407と第2のカーボン膜408との界面414での接着力が、カソード電極層402と第1のカーボン膜407との界面413、第2のカーボン膜408の表面と粘着剤412との界面415、粘着テープ基材411と粘着剤412との界面416、および第1のカーボン膜407中のガラス微粒子403とカーボンナノチューブ405との接触面のそれぞれの接着力のそれぞれよりも、小さくなるように、ペーストを構成する材料の重量混合比が決定されている。
そのため、積層構造カーボン膜409は、ピーリング処理によって、第1のカーボン膜407と第2のカーボン膜408との界面414、または、第2のカーボン膜408の内部で発生する。これを実現するために、第2のカーボン膜408を形成するためのペースト中のガラス微粒子404のカーボンナノチューブ406に対する重量混合比が、第1のカーボン膜407を形成するためのペースト中のガラス微粒子403のカーボンナノチューブ405に対する重量混合比より小さくなっている。つまり、ガラス微粒子403の分布は、焼成後の積層構造カーボン膜409の膜厚方向において一定ではない。
より具体的には、第1のカーボン膜407の内部、第1のカーボン膜407と第2のカーボン膜408との界面414、および第2のカーボン膜408の内部の順番で、単位体積当たりのガラス微粒子の量が少なくなっている。第2のカーボン膜408内に含まれるガラス微粒子404の粒径は、特に限定されない。本実施の形態においては、第1のカーボン膜408のために使用されたペースト内に含まれるガラス微粒子404と同一粒径のガラス微粒子404が含まれている第2のカーボン膜408が一例として用いられる。
たとえば、第1のカーボン膜407を形成するために用いられるペーストとして、前述のカーボンナノチューブ:ガラス:樹脂+分散剤:溶剤=1:5:20:74という重量混合比を有するペーストが用いられた場合には、第2のカーボン膜408を形成するためのペーストとして、カーボンナノチューブ:ガラス:樹脂+分散剤:溶剤=4:3:9:84という重量混合比を有するペーストが用いられる。
前述のペーストの個々の部分でのカーボンナノチューブとガラス微粒子との接着力は、ガラス量が少ない部分ほど小さくなり、ガラス量の少ない部分でピーリング処理によって剥離が発生する。したがって、上記のような構成において、粘着テープ417の粘着剤412と第2のカーボン膜408との接着力が、第2のカーボン膜408中のカーボンナノチューブ406とガラス微粒子404との接着力よりも大きければ、積層構造カーボン膜409の剥離は、ピーリング処理によって、第2のカーボン膜408内で発生する。このときの剥離面の状態は、基本的には、図2で示される単層カーボン膜にピーリング処理がなされた後の剥離面の状態と同様である。つまり、平坦な剥離面は得られない。
この場合には、ピーリング処理が複数回実行される。それにより、第1のカーボン膜407の平坦な上面が露出する。したがって、その第1カーボン膜407の平坦な上面からカーボンナノチューブ405を起立させることができる。
しかしながら、このような接着力を有する粘着テープの選択の幅は狭い。また、前述のような接着力を有する粘着テープが選択され、それを用いて複数回のピーリングが行われた場合においても、第1のカーボン膜中407中のカーボンナノチューブ405とガラス微粒子403との間の接着力にばらつきがある。そのため、第2のカーボン膜408とともに第1のカーボン膜407もピーリング処理されてしまう。つまり、所望の接着力を有する粘着テープが用いられても、第1のカーボン膜407の平坦な上面を露出させることは困難である。さらに、複数回ピーリング処理がなされると、カーボン膜の表面の粘着剤の残渣によってカーボンナノチューブの起毛の阻害およびカーボンナノチューブの汚染というような電子放出特性の低下させる原因を生じさせてしまう。
そこで、本実施の形態においては、1回のピーリング処理によって第1のカーボン膜407と第2のカーボン膜408との界面414で積層構造カーボン膜409の剥離が発生するような構造の積層構造カーボン膜409が形成される。そのため、第2のカーボン膜408が焼成された後の厚さが、1回のピーリング処理で剥離される平均的なカーボン膜の厚さ以下の厚さになっている。
図7は、焼成されたカーボン膜に複数回ピーリングがなされたときのカーボン膜の平均膜厚の変化を示す図である。ピーリング処理がなされた後のカーボン膜の平均膜厚は、図2に示される所定のピーリング処理がなされている部分108のみの膜厚の平均値によって算出されている。つまり、カソード電極層402が露出する程度までカーボン膜が完全に除去されてしまっている部分109、および、カーボン膜が大きく除去されている部分110における膜厚は、カーボン膜の平均値の算出のためのデータから除外されている。
図7から、カーボン膜中に含まれるガラス微粒子404の平均粒径が0.3μmである場合には、1回のピーリング処理によって剥離される平均的な第2のカーボン膜408の膜厚は約0.5μmであることが分かる。また、図7から、第2のカーボン膜408中に含まれるガラス微粒子404の平均粒径が1.2μmである場合には、1回のピーリング処理によって剥離される平均的な第2のカーボン膜408の膜厚は2μmであることが分かる。この測定においては、ペースト中のカーボンナノチューブ406とガラス微粒子404との重量混合比は、1:0.75である。なお、重量混合比が1:10まで増加しても、上述の効果と同様の結果が得られている。
この結果から、1回のピーリング処理によって剥離される第2のカーボン膜408の厚さは、第2のカーボン膜408中のガラス微粒子404の粒径に依存しており、ガラス粒径に対する比はほぼ一定である。具体的には、ガラス粒径404の約1.7倍の厚さのカーボン膜408が、1回のピーリング処理で剥離されることが、前述の結果から明らかになっている。
したがって、第2のカーボン膜408を1回のピーリング処理で剥離するためには、焼成された後の第2のカーボン膜408の膜厚が、第2カーボン膜408内に含まれるガラス微粒子404の平均粒径の1.7倍以下であることが望ましい。
図8は、第1のカーボン膜407におけるカーボンナノチューブ405とガラス微粒子403との重量混合比が1:5でありかつ第2のカーボン膜408のカーボンナノチューブ405とガラス微粒子403との重量混合比が1:0.75である積層構造カーボン膜409、第1のカーボン膜407のみからなる単層膜、および第2のカーボン膜408のみからなる単層膜のそれぞれのピーリング処理後の膜の平坦性の変化を算術平均表面粗さRaで評価した結果を示す図である。
第2のカーボン膜408中に混合されているガラス微粒子403の平均粒径は0.3μmである。焼成後の積層構造カーボン膜409においては、第1のカーボン膜407の膜厚は3μmであり、第2のカーボン膜408の膜厚は、1回のピーリング処理によって剥離され得る膜厚である0.45μmである。
本実施の形態においては、焼成された第2のカーボン膜408の膜厚を0.45μmにするために、前述のペーストが溶剤によって希釈化されたものが使用される。また、本実施の形態においては、ペーストを希釈するための溶剤として、ブチルカルビトールが用いられる。焼成された第1のカーボン膜407のみかなる単層膜の膜厚および焼成された第2のカーボン膜408のみからなる単層膜の膜厚は、それぞれ、3μmである。
第1のカーボン膜407のみからなる単層膜、および、第2のカーボン膜408のみからなる単層膜のいずれにおいても、ピーリング回数の増加に伴って、表面粗さは増大している。一方、積層構造カーボン膜409においては、ピーリング前の表面粗さは第2のカーボン膜408の表面粗さが第1のカーボン膜407の表面粗さより大きい。そのため、積層構造カーボン膜409の表面粗さは、第1のカーボン膜407のみかななる単層膜の表面粗さより大きい。しかしながら、積層構造カーボン膜409の1回目のピーリング後の表面粗さは、ピーリング前の表面粗さと比較して小さい。つまり、積層構造カーボン膜409においては、ピーリング処理によって平坦性が改善されており、その表面粗さが第1のカーボン膜407の表面粗さと一致している。また、積層構造カーボン膜409に対し1回のピーリング処理がなされた後の第1のカーボン膜407の膜厚が、第1のカーボン膜407の膜厚と一致している。
以上の結果から、積層構造カーボン膜409を1回ピーリングすることによって第1のカーボン膜407と第2のカーボン膜408との界面414での剥離が実現されていることが分かる。さらに、積層構造カーボン膜409に2回以上ピーリング処理がなされると、表面粗さが増加する。これは、2回目以降のピーリング処理によって、第1のカーボン膜407にピーリング処理がなされてしまうためである。このことは、積層構造カーボン膜409の2回目以降のピーリング処理がなされた後の表面粗さの増加の傾向が、第1のカーボン膜407のみからなる単層膜にピーリング処理がなされたときの表面粗さの増加の傾向と一致していることからも分かる。
図9は、単層カーボン膜および積層構造カーボン膜409のそれぞれのピーリング処理がなされた状態を上方から見たときの顕微鏡写真である。図9の(a)に示される単層カーボン膜においては、ピーリング処理によってカソード電極層として用いられているITOが露出している部分701が存在することが分かる。一方、図9の(b)に示される積層構造カーボン膜においては、ITOが露出しておらず、平坦性が改善されていることが分かる。
本実施の形態においては、前述の積層構造カーボン膜409にピーリング処理がなされ、第1のカーボン膜407からカーボンナノチューブ405が起立している構造が形成される。この構造が電子源として用いられる。したがって、電子源は、第1カーボン膜407の平坦な上面からカーボンナノチューブ405が起立している。そのため、電子源から放出される電子の分布が均一化される。
図10(a)は、単層構造カーボン膜の電子放出に起因する蛍光体の発光状態を示す図である。図10(b)は、積層構造カーボン膜409の電子放出に起因する蛍光体の発光状態を示す図である。
単層構造カーボン膜および積層構造カーボン膜409のいずれも、テフロン(登録商標)系粘着テープ基材とSi系の粘着剤とからなり3.6Nという粘着力を有する粘着テープを用いてピーリング処理が1回実施されている。また、単層構造カーボン膜および積層構造カーボン膜409のいずれも、ITO付きのガラス基板に低圧蛍光体(ZnO:Zn)が設けられたアノード電極に対して電子を放出している。
また、単層構造カーボン膜および積層構造カーボン膜409のいずれも、2mm×2mmの平面形状を有しており、単層構造カーボン膜が形成されたガラス基板とアノード電極との間の距離、および、積層構造カーボン膜409が形成されたガラス基板とアノード電極との間の距離のいずれも、約60μmである。また、カソード電極には200μAの電流が流され、発光状態が観察された。
図10の(a)に示された電子源は、単層構造カーボン膜が設けられ、ピーリング後の膜の凹凸に起因して発光しておらず暗い領域を有している。一方、図10の(b)に示された電子源は、積層構造カーボン膜の第2のカーボン膜が除去され、第1のカーボン膜のみからなり、単層カーボン膜と比較して、輝点の数が多く、かつ、カーボン膜の面方向において良好な発光均一性を有している。
実施の形態2.
次に、図11〜図17を用いて、本発明の実施の形態2の電界放出型電子源が説明される。
図11は、本実施の形態の電界放出型電子源の概略図である。本実施の形態の電界放出型電子源は、ガラス基板901上にたとえばITO等からなるカソード電極層902が形成されている。カソード電極層902上には、ガラス微粒子903を含む第1のカーボン膜908、ガラス微粒子を含まない第2のカーボン膜909、およびガラス微粒子904を含む第3のカーボン膜910が積層されている。第1のカーボン膜908、第2のカーボン膜909、および第3のカーボン膜910のそれぞれは、所定の重量混合比で、カーボンナノチューブ905、ガラス微粒子、樹脂、分散剤、および溶剤が混合されたペーストの印刷によって形成されている。なお、第2のカーボン膜909にはガラス微粒子が含まれていない。
第1のカーボン膜908は、そのペーストが印刷された後に、たとえば、120℃で10分間の乾燥工程を経て形成される。次に、第2のカーボン膜909は、そのペーストが印刷された後に、たとえば、120℃で10分間の乾燥工程を経て形成される。その後、第1のカーボン膜908は、そのペーストが印刷された後に、たとえば、120℃で10分間の乾燥工程を経て形成される。
さらに、この積層構造カーボン膜911は、印刷工程の後に含有されるガラス微粒子903および904の軟化点以上の温度、たとえば470℃の温度の大気雰囲気中で焼成される。それにより、溶剤成分、樹脂成分、および分散剤成分が、第1のカーボン膜908、第2のカーボン膜909、および第3のカーボン膜910から除去される。また、第1のカーボン膜908、第2のカーボン膜909、および第3のカーボン膜910中のガラス微粒子903および904が軟化する。図11は、この焼成工程後の積層構造カーボン膜の構造を示す断面図である。
積層構造カーボン膜911においては、第1のカーボン膜908とカソード電極層902とは、第1のカーボン膜908中に含まれるガラス微粒子903によって接合される。さらに、第1のカーボン膜908と第2のカーボン膜909との間の界面916における接合は、第1のカーボン膜908内のガラス微粒子903、第2のカーボン膜909中のカーボンナノチューブ907、および第3のカーボン膜910内のガラス微粒子904によってなされる。
次に、このような積層構造カーボン膜911に、粘着剤914を有する粘着テープ912を貼り付ける。その後、粘着テープ912を引き剥がすピーリング処理が行われる。図12は、積層構造カーボン膜911に対して、粘着剤914が付された粘着テープ912が貼り付けられた状態の模式図である。
図12に示された積層構造カーボン膜911に貼り付けられた粘着テープ912が引き剥がされた場合には、次の接着力のうちの最も小さい接着力を有する面で剥離が発生する。
カソード電極層902と第1のカーボン膜908との界面915の接着力
第1のカーボン膜908と第2のカーボン膜909との界面916の接着力
第2のカーボン膜909と第3のカーボン膜910との界面917の接着力
第3のカーボン膜910と粘着剤914との界面918の接着力
粘着テープ基材913と粘着剤914との界面919の接着力
第1のカーボン膜908中のガラス微粒子903とカーボンナノチューブ905との接着面の接着力
第3のカーボン膜910中のガラス微粒子904とカーボンナノチューブ906との接着面の接着力
第2のカーボン膜909においては、ガラス微粒子403が含まれていないため、カーボンナノチューブ905同士が絡まっている。そのため、カーボンナノチューブ905同士が極めて強く密着している。その結果、第2のカーボン膜909の内部で剥離が発生することはない。
したがって、本実施の形態においては、前述の接着力のうち第2のカーボン膜909と第3のカーボン膜910との界面917の接着力が最も小さいか、または、第1のカーボン膜908と第2のカーボン膜909との界面916の接着力が最も小さいものとする。それにより、界面916または界面917で必ず剥離が生じる。
したがって、この界面917が平坦であれば、図2に示されたようなピーリング処理後の第2のカーボン膜909の上面の凹凸の発生は抑制される。したがって、ピーリング処理後においても第2のカーボン膜907の上面の平坦性が確保される。その結果、第2のカーボン膜909の上面からカーボンナノチューブ905が起立する。そのため、第2のカーボン膜909の上面の凹凸に起因した電界の不均一性が抑制される。したがって、カーボン膜から放出される電子の分布を均一化させることができる。
一方、第1のカーボン膜908と第2のカーボン膜909との界面916で剥離を発生させる場合には、第2のカーボン膜909と第3のカーボン膜910との界面917での接着力を、第1のカーボン膜908と第2のカーボン膜909との界面916での接着力よりも大きくすることが必要になる。
したがって、第1のカーボン膜908内に含まれるガラス微粒子903の単位体積あたりの量が第3のカーボン膜910内に含まれるガラス微粒子904の単位体積あたりの量よりも少なくなければならない。しかしながら、この場合には、カソード電極層902と第1のカーボン膜908との界面915での接着力が不十分である。そのため、ピーリング処理に用いる粘着テープ912の粘着剤914の粘着力を適切に選択しなければ、ピーリング処理によって界面915で剥離が発生するおそれがある。
したがって、前述のような3層の積層構造カーボン膜911においては、第1のカーボン膜908と第2のカーボン膜909との界面916で剥離を発生させるよりも、第2のカーボン膜909と第3のカーボン膜910との界面917で剥離を生じさせることが望ましい。そのため、第1のカーボン膜908内に含まれるガラス微粒子903の単位体積あたりの量が、第3のカーボン膜910内に含まれるガラス微粒子904の単位体積あたりの量よりも多いことが望ましい。これによれば、第2のカーボン膜909と第3のカーボン膜910との界面917での接着力が、第1のカーボン膜908と第2のカーボン膜909との界面916での接着力よりも小さくなり、界面917で剥離が発生し、カソード電極層902と第1のカーボン膜908との界面915で剥離が発生しなくなる。
以下、具体的に、図11に示されるような3層構造を有する積層構造カーボン膜の作製方法が説明される。
まず、ガラス基板901上に所定のパターンを有するカソード電極(たとえば、ITO、Al、Cr、または、これらの積層膜)901が形成される。次に、カソード電極層901上に印刷法によってペーストが所定の形状に塗布される。ペーストは、カーボンナノチューブ、平均粒径が0.3μm〜1.2μmの範囲にあるガラス微粒子、樹脂(エチルセルロースまたはアクリル)、および溶剤(ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ターピネオール、または、これらの混合物)からなる。その後、120℃で10分間、ペーストの乾燥が行われる。それにより、第1のカーボン膜908が形成される。
この第1のカーボン膜908を形成するためのペーストに使用されるカーボンナノチューブ905とガラス微粒子903との重量混合比は、実施の形態1の電界放出電子源の製造方法における第1のカーボン膜908を形成するためのペーストにおける重量混合比と同様の理由から、ガラス微粒子903の重量がカーボンナノチューブ905の重量の1倍から10倍までの間に設定されている。本実施の形態のペーストにおける樹脂、分散剤、および溶剤の重量混合比もまた、第1のカーボン膜908に要求される平坦性の観点から、実施の形態1の第1のカーボン膜908におけるそれと同様の重量混合比に設定されている。
第1カーボン膜908を形成するために用いられるペースト内の物質の重量混合比は、樹脂としてエチルセルロースが用いられ、溶剤としてターピネオールが用いられる場合には、CNT:ガラス:樹脂+分散剤:溶剤=1:5:20:74である。
前述のペーストが使用されれば、第1のカーボン膜908の表面の平坦性は、表面粗さを示す指標であるRaで表わせば、0.3μm以下となる。つまり、平坦な上面を有する第1カーボン膜908が形成される。ペースト内に混合されたガラス微粒子の粒径が増加するにつれて、第1カーボン膜908の平坦性は悪化する。そのため、1.2μm以上の粒径を有するガラス微粒子を用いることは好ましくない。また、0.3μm以下の粒径を有するガラス微粒子を用いることもまた、実施の形態1において説明された理由と同様の理由で、好ましくない。
次に、第1のカーボン膜908上にペーストが印刷法によって所定の形状に塗布される。このペーストは、カーボンナノチューブと樹脂(エチルセルロースまたはアクリル)、溶剤(ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ターピネオール、または、これらの混合物)からなる。その後、120℃で10分間、ペーストの乾燥が行われる。それにより、第2のカーボン膜909が形成される。たとえば、この第2のカーボン膜909を形成するために用いられるペースト中の各物質の重量混合比は、樹脂としてエチルセルロースが用いられ、溶剤としてターピネオールが用いられる場合には、カーボンナノチューブ:樹脂:溶剤=3:4:93である。この第2のカーボン膜909の上面の平坦性は、この第2のカーボン膜909の単体の印刷によって得られるカーボン膜の平坦性が算術平均表面粗さRaで0.15μm以下になるように、設定される。そのために、カーボンナノチューブの粉砕がなされ、かつ、ペーストが形成されるときに、樹脂、分散剤、および溶剤の重量混合比が所定の値に設定される。
図14は、前述の3層のカーボン膜からなる積層構構造カーボン膜のうちの最上層が除去された2層のカーボン膜からなる積層構造カーボン膜の表面の算術平均表面粗さRaを示す図である。図13に示される積層構造カーボン膜は、ガラス微粒子を含まない第2のカーボン膜909が、算術表面粗さRaが異なる第1のカーボン膜908上に形成されたものである。
図14から、第1のカーボン膜908の算術表面粗さRaの増加に伴って第1のカーボン膜908の上に形成された第2のカーボン膜909の算術表面粗さRaは増加する傾向があることが分かる。また、第1のカーボン膜908の算術表面粗さRaが0.3μm以下であれば、第2のカーボン膜909の表面粗さも0.3μm以下になることが分かる。また、第1のカーボン膜908の表面粗さRaが0.3μm以上の場合には、第1のカーボン膜908の算術表面粗さRaよりも第2のカーボン膜909の算術表面粗さRaのほうが小さくなる傾向にあることが分かる。この結果は、焼成された第2のカーボン膜909の膜厚が1.5μmである積層構造カーボン膜から得られた結果である。なお、第2のカーボン膜909の算術表面粗さRaが0.15μm程度であれば、第2のカーボン膜909の膜厚によらず、前述の結果と同様の結果が得られている。
また、図14に示すグラフに表わされた関係は、第2のカーボン膜909単体での表面粗さによって異なるものになる。ただし、第2のカーボン膜909単体での表面粗さが0.3μmまでは、図14に示すグラフと同様の傾向を示すグラフになる。
以上のように、第2のカーボン膜909の上面の表面粗さは、第2のカーボン膜909内にガラス微粒子が含まれていないため、第1のカーボン膜908の上面の平坦性が反映される。したがって、第1のカーボン膜908の上面の平坦性を改善することによって、第2のカーボン膜909の上面の平坦性が改善される。このような第2のカーボン膜909が、第1のカーボン膜908上に印刷法によって形成された後に、前述の120℃で10分間、乾燥工程が実行される。
次に、第3のカーボン膜910が第2のカーボン膜909上に印刷法によって形成される。第1のカーボン膜908と同様に、第3のカーボン膜にはガラス微粒子904が含まれている。第3のカーボン膜910に含まれるガラス微粒子904の粒径は、特に限定されない。本実施の形態においては、第1のカーボン膜908に含まれるガラス微粒子903と同一の粒径を有するガラス微粒子904が用いられているものとする。
第3のカーボン膜910の形成のために使用されるペーストに含まれる、カーボンナノチューブ906、ガラス微粒子904、樹脂、分散剤、および溶剤の重量混合比は、次のように決定される。
第2のカーボン膜909と第3のカーボン膜910との界面917での接着力が、第1のカーボン膜908と第2のカーボン膜909との界面916での接着力よりも小さくなることが必要である。そのため、第3のカーボン膜910内のカーボンナノチューブ906に対するガラス微粒子904の重量混合比が、第1のカーボン膜908内のカーボンナノチューブ905に対するガラス微粒子903の重量混合比より小さくなっている。また、カーボンナノチューブ:ガラス:樹脂+分散剤:溶剤=4:3:9:84という関係が成立するものとする。第3のカーボン膜910が第2カーボン膜909上に印刷された後、再度、120℃で10分間、乾燥工程が実行され、3層構造を有する積層構造カーボン膜911が形成される。
次に、3層構造を有する積層構造カーボン膜911が、470℃で1時間、大気中で焼成され、それによって、第1のカーボン膜908、第2のカーボン膜909および第3のカーボン膜910内に含まれる樹脂、溶剤、および分散剤が除去される。また、第1カーボン膜908および第3のカーボン膜中910に含まれるガラス微粒子903および904が軟化する。
本実施の形態において用いられたガラス微粒子の軟化点は、420℃程度である。そのガラス微粒子の焼成温度は、ガラス微粒子の軟化点以上の温度であればよい。
なお、カーボンナノチューブの耐熱性が低い場合には、焼成工程においてカーボンナノチューブが消失してしまう場合がある。そのため、焼成工程は、N2雰囲気、Ar雰囲気、または真空雰囲気中で行われることが望ましい。ただし、N2雰囲気、Ar雰囲気、または真空雰囲気中において、焼成工程が行われる場合には、ペースト中に含まれる、樹脂および分散剤が完全には除去されない。そのため、樹脂および分散剤が分解して消失する400℃までの温度の大気中で焼成が行われ、400℃以上の温度のN2雰囲気、Ar雰囲気、または真空雰囲気中において、焼成工程が行われることが望ましい。
前述のような焼成工程を経た3層構造を有する積層構造カーボン膜911に対してピーリング処理が実施される。このピーリング処理が図11を用いて説明される。
図11に示されるように、ガラス基板901上にカソード電極層902が形成される。次に、カソード電極層902上に、ガラス微粒子903を含む第1のカーボン膜908、ガラス微粒子を含まない第2のカーボン膜909、および、ガラス微粒子904を含む第3のカーボン膜910がこの順番で積層された積層構造カーボン膜911が形成される。
第1のカーボン膜908中のカーボンナノチューブ905に対するガラス微粒子903の重量混合比は、第3のカーボン膜910中のガラス微粒子904の重量混合比よりも大きくなっている。すなわち、第1のカーボン膜908中の単位体積あたりに含まれるガラス微粒子903の量は、第3のカーボン膜910中の単位体積あたりに含まれるガラス微粒子904の量より大きくなっている。つまり、第2のカーボン膜908中のカーボンナノチューブ907に接着されたガラス微粒子903の重量が、第3カーボン膜910中のカーボンナノチューブ907に接着されたガラス微粒子904の重量よりも大きい。そのため、第1のカーボン膜908と第2のカーボン膜909の界面916での接着力は、第2のカーボン膜909と第3のカーボン膜910との界面917での接着力より大きくなる。
したがって、前述の3層のカーボン膜を有する積層構造カーボン膜911に対してピーリング処理を行うと、最も密着力が小さい第2のカーボン膜909と第3のカーボン膜910との界面917で剥離が生じる。それにより、図12に示されるように、第2のカーボン膜909の平坦な上表面からカーボンナノチューブ907が起立した構造が形成される。
ただし、実施の形態1において説明された電界放出型電子源の製造方法と同様に、第3のカーボン膜910の膜厚が、第3のカーボン膜910内に含まれるガラス微粒子904の1.7倍より大きい場合には、1回のピーリング処理では、第3のカーボン膜910の一部が、第2のカーボン膜909上に残存する場合がある。
このような場合には、カーボンナノチューブ907は、凹凸を有する第1のカーボン膜908の上面から起立する構造が形成される。この構造によれば、第2のカーボン膜909の平坦な上面から起立する構造との比較において、電子放出特性のばらつきが大きい。そのため、複数回ピーリング処理が施され、第2のカーボン膜909の平坦な上面が露出するように、第3カーボン膜910の剥離が実行されてもよい。しかしながら、これによれば、実施の形態1において説明された理由と同様の理由で、粘着テープ912の粘着剤914が第2のカーボン膜909の上面上に残存してしまう。この場合、電子放出特性の劣化およびばらつきの増加を引きこすおそれがある。
したがって、本実施の形態においても、実施の形態1において説明された理由と同様の理由から、第3のカーボン膜910の膜厚は、1回のピーリング処理で剥離される膜厚、すなわち、ガラス微粒子904の平均粒径の1.7倍以下の厚さであることが好ましい。
そこで、実施の形態1の場合と同様に、平均粒径0.3μmのガラス微粒子904を含む第3のカーボン膜910が、焼成工程が実行された後に、0.45μmの膜厚を有することが望ましい。そのため、第3のカーボン膜910の形成のために使用されるペーストとして、前述のカーボンナノチューブ:ガラス:樹脂+分散剤:溶剤=4:3:9:84というの混合比率を有するペーストが、ブチルカルビトールアセテートによって希釈されたものが用いられる。このペーストによって第3のカーボン膜910が形成され、3層構造の積層構造カーボン膜911が形成される。
積層構造カーボン膜911の各層が焼成された後においては、第1のカーボン膜908の膜厚が2μmであり、第2のカーボン膜909の膜厚が1μmであり、第3のカーボン膜の膜厚が0.45μmである。この積層構造カーボン膜911がピーリング処理された後のカーボン膜の表面が図15に示されている。図15から、積層構造カーボン膜911の上面は、図9の(b)に示された2層構造カーボン膜の表面と同様に、局所的にカソード電極層102が露出するようなことはなく、均一にピーリング処理がなされていることが分かる。
図16は、ピーリング処理の前後に3層構造カーボン膜の断面がSEM(Scanning Electronic Microscope)によって観察されたときの写真である。図16の(a)はピーリング処理の前の状態を示し、図16の(b)は、ピーリング処理の後の状態を示している。
図16の(a)と図16の(b)とを比較すると、ピーリング処理によって第3のカーボン膜910が除去され、第2のカーボン膜909と第3カーボン膜908との界面917から、つまり、第2のカーボン膜909の上面から、カーボンナノチューブ907が起毛していること、および、第2カーボン膜909の上面の平坦性が良好であることが分かる。したがって、画素内の複数のカーボンナノチューブ907から放出される電子の分布の均一化が図られる。
次に、図17を参照して、単層のカーボン膜を有する電子源の発光状態と3層構造の最上層が除去された2層構造のカーボン膜を有する電子源の発光状態とが比較される。
図17の(a)は、電子源としての単層構造を有するカーボン膜から放出された電子が、ITO付きのガラス基板に低圧蛍光体(ZnO:Zn)が付されたアノードの蛍光体に衝突したときの発光状態を示す写真である。なお、単層カーボン膜に対しては、テフロン(登録商標)系粘着テープ基材とSi系の粘着剤とからなる粘着力306Nを有する粘着テープを用いて、ピーリング処理が1回実施され、その上部が除去されている。
図17の(b)は、電子源としての2層構造を有するカーボン膜から放出された電子が、ITO付きのガラス基板に低圧蛍光体(ZnO:Zn)が付されたアノードの蛍光体に衝突したときの発光状態を示す写真である。2層構造を有する積層構造カーボン膜は、3層のカーボン膜を有する積層構造カーボン膜に対して、テフロン(登録商標)系粘着テープ基材とSi系の粘着剤とからなる粘着力306Nを有する粘着テープを用いて、ピーリング処理が1回実施され、最上層のカーボン膜が除去されたものである。
前述の図17の(a)および(b)に示される構造のいずれにおいても、カーボン膜のサイズは2mm角であり、カーボン膜が形成されたガラス基板とアノード電極層との間の距離は約60μmである。また、発光状態の観察は、200μAの電流がカソード電極層102に流れる状態で実施される。
図17の(a)に示されるように、上部が除去された単層カーボン膜を用いた電子源は、ピーリング処理の後のカーボン膜の凹凸に起因して均一に発光していない領域を有している。一方、図17の(b)に示されるように、最上層が除去された2層構造を有する積層構造カーボン膜は、ピーリング処理後のカーボン膜の平坦性において良好であり、単層カーボン膜と比較して、輝点数が多く、良好な発光均一性を有している。
なお、界面916で剥離が生じる場合には、図18に示されるように、第1のカーボン膜908の上面からカーボンナノチューブ905が起立する。つまり、3層からなる積層構造カーボン膜の最上層および中間層のカーボン膜909および910が除去され、カーボン膜908の上面が平坦になっている。これによっても、界面917で剥離が生じる積層構造カーボン膜によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
上記各実施の形態においては、電界放出電子源として、カーボンナノチューブが用いられているが、電界効果を利用する電子放出源であれば、たとえば、カーボファイバおよびカーボンナノワイヤなどの他の繊維状カーボンが用いられてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
比較例の単層カーボン膜を説明するための図である。 比較例のピーリング処理後のカーボン膜を説明する断面図である。 比較例の単層カーボン膜の電子放出特性を評価するときの状態を示す断面図である。 実施の形態1の積層構造カーボン膜を説明するための断面図である。 実施の形態1の積層構造カーボン膜に対して粘着テープが貼り付けられた状態を説明するための断面図である。 実施の形態1の積層構造カーボン膜から粘着テープが引き剥がされた状態を説明するための断面図である。 実施の形態1において説明されたピーリング処理の回数とカーボン膜の膜厚との関係を示すグラフである。 実施の形態1において説明された単層カーボン膜および積層構造カーボン膜のそれぞれのピーリング処理の回数とピーリング処理後のカーボン膜の表面粗さとの関係を示す図である。 実施の形態1で説明された単層カーボン膜および積層構造カーボン膜のピーリング後の表面の顕微鏡観察結果の写真である。 実施の形態1において説明された単層カーボン膜および積層構造カーボン膜にピーリング処理がなされた電子源から放出された電子による蛍光体の発光状態を示す写真である。 実施の形態2の積層構造カーボン膜を説明する断面図である。 実施の形態2の積層構造カーボン膜に対し粘着テープが貼り付けた状態を説明するための断面図である。 実施の形態2の積層構造カーボン膜から粘着テープが引き剥がされた状態を説明するための断面図である。 実施の形態2において説明された第1のカーボン膜の表面粗さと第1のカーボン膜上に第2のカーボン膜が形された積層構造カーボン膜の表面粗さとの関係を示す図である。 実施の形態2の積層構造カーボン膜のピーリング後の表面の顕微鏡観察結果の写真である。 実施の形態2に示した積層構造カーボン膜のピーリング処理の前後のそれぞれのカーボン膜の断面の電子顕微鏡写真である。 実施の形態2において説明された単層カーボン膜および積層構造カーボン膜のそれぞれが、ピーリング処理がなされた後、電子源として用いられた場合の蛍光体の発光状態を示す写真である。
符号の説明
101 ガラス基板、102 カソード電極層、103 ガラス微粒子、104 カーボンナノチューブ、105,106,107,108,109,110 部分、111 カーボン膜、112 カーボンナノチューブ、114 アノード電極層、203 カーボン膜、205 部分、401 ガラス基板、402 カソード電極層、403 ガラス微粒子、404 ガラス微粒子、405,406 カーボンナノチューブ、407,408 カーボン膜、409 積層構造カーボン膜、411 粘着テープ基材、412 粘着剤、413,414,415,416 界面、417 粘着テープ、701 部分、901 ガラス基板、902 カソード電極層、903,904 ガラス微粒子、905,906,907 カーボンナノチューブ、908,909,910 カーボン膜、911 積層構造カーボン膜、912 粘着テープ、913 粘着テープ基材、914 粘着剤、915,916,917,918,919 界面。

Claims (9)

  1. カソード電極上に繊維状カーボンを含む複数層のカーボン膜を有する積層構造カーボン膜を形成するステップと、
    前記複数層のカーボン膜のいずれか2つのカーボン膜同士の界面で剥離が生じるように、前記積層構造カーボン膜に粘着テープを付着させた後、前記粘着テープを引き剥がすステップとを備えた、電界放出型電子源の製造方法。
  2. 前記積層構造カーボン膜は、前記カソード電極上に形成された第1のカーボン膜と、前記第1のカーボン膜上に形成された第2のカーボン膜とからなり、
    前記第1のカーボン膜および前記第2のカーボン膜は、それぞれ、第1のペーストおよび第2のペーストの焼成によって形成され、
    前記第1のペーストは、第1の繊維状カーボンと第1の微粒子とを含み、
    前記第2のペーストは、第2の繊維状カーボンと第2の微粒子とを含み、
    前記第2の繊維状カーボンに対する第2の微粒子の重量混合比が、前記第1の繊維状カーボンに対する前記第1の微粒子の重量混合比よりも小さい、請求項1に記載の電界放出型電子源の製造方法。
  3. 前記第1の繊維状カーボンに対する前記第1の微粒子の重量混合比は、1〜10の範囲内である、請求項2に記載の電界放出型電子源の製造方法。
  4. 前記第2のカーボン膜の膜厚が前記第2の微粒子の平均粒径の1.7倍以下である、請
    求項2に記載の電界放出型電子源の製造方法。
  5. 前記引き剥がすステップは、1回のみ実行される、請求項2に記載の電界放出型電子源の製造方法。
  6. 前記積層構造カーボン膜は、前記カソード電極上に形成された第1のカーボン膜と、前記第1のカーボン膜上に形成された第2のカーボン膜と、前記第2カーボン膜上に形成された第3カーボン膜とからなり、
    前記第1のカーボン膜、前記第2のカーボン膜、および前記第3カーボン膜は、それぞれ、第1のペースト、第2のペースト、および第3のペーストの焼成によって形成され、
    前記第1のペーストは、第1の繊維状カーボンと一方の微粒子とを含み、
    前記第2のペーストは、微粒子を含むことなく、第2の繊維状カーボンを含み、
    前記第3のペーストは、第3の繊維状カーボンと他の微粒子とを含み、
    前記引き剥がすステップにおいては、前記第3のカーボン膜と前記第2のカーボン膜との界面で剥離が生じる、請求項1に記載の電界放出型電子源の製造方法。
  7. 前記第3の繊維状カーボンに対する前記他の微粒子の重量混合比が、前記1の繊維状カーボンに対する前記一方の微粒子の重量混合比よりも小さい、請求項6に記載の電界放出型電子源の製造方法。
  8. 前記第3のカーボン膜の膜厚が、前記他の微粒子の平均粒径の1.7倍以下である、請求項6に記載の電界放出型電子源の製造方法。
  9. 前記引き剥がすステップは、1回のみ実行される、請求項6に記載の電界放出型電子源の製造方法。
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