JP4894332B2 - 磁気共鳴画像用造影剤 - Google Patents
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Description
そのため、磁性ナノ粒子をデキストランまたはデキストラン誘導体で被覆したMRI用造影剤が知られている。例えばアドバンスド・マグネテックス社製の「AMI−25」などの磁性ナノ粒子造影剤は、超常磁性の効果を発揮するもので、デキストランで被覆することで毒性が低減することが知られている。
しかしながら、従来のデキストラン系磁性ナノ粒子造影剤は、体内循環系(血管系)に長く滞留することができず、肝あるいは牌に急速に取り込まれる、また、低血圧ショック、アレルギー反応などの副作用もある。例えば、点滴にて静脈内投与し、1時間後に肝のMRI撮影を行う場合、その間に血圧低下、ショック、脈動低下などが起こることが確認され、場合によっては死に至ることもある。また、従来の造影剤は、単に磁性ナノ粒子をデキストランで被覆しただけであるため、酸化鉄とデキストランとの結合が弱く、そのため血液中で解離しやすく、加熱滅菌時における安定性や経時安定性も悪かった。(例えば、特許文献1)。
つまり、正常細胞のpH(6〜8)の領域では、磁性ナノ粒子(P)が保護剤(A)により、水性分散媒(S)中で安定に分散させられており、磁性ナノ粒子複合体(C)とアニオン性ポリマー(B)は静電的相互作用をしているが、アニオン性ポリマー(B)のアニオン性の官能基同士の反発のため、(B)の会合体は形成されていない。これに対して腫瘍細胞近辺での低pHの領域では磁性ナノ粒子複合体(C)とアニオン性ポリマー(B)の静電相互作用だけでなく、(B)の電離していない官能基が増えるため、アニオン性ポリマー(B)同士の会合体が形成される。この結果、腫瘍細胞などの低pHの領域でのみ(B)同士の会合体が形成される。
(B)同士の会合体は、複数個の(C)を取り込み、(C)と(B)との凝集体(X)が形成される。凝集体(X)の形成により、腫瘍細胞近辺では正常細胞近辺と比較して、(X)のサイズが大きく滞留するようになる。このようにして腫瘍細胞近辺では相対的に磁性ナノ粒子(P)の濃度が高くなり、選択的に造影能が増強されようになる。
また、この凝集体(X)の形成は可逆的であり、pHが正常細胞のpH6以上になると凝集体(X)は分解し、もとの複合体(C)とアニオン性ポリマー(B)に戻る。
このように本発明のMRI用造影剤は、腫瘍等、異常な細胞の出現に伴う生体環境の変化を反映したMRI造影能のon−offスイッチングが可能な造影剤である。
(p)としては、具体的には、Fe,Co,Niの金属類、又はFePt、CoPt、FePd、MnAl、FePtM、CoPtM、FePdM、MnAlMからなる群から選択される合金類(化学式中、Mは金属元素を表し、MとしてはLi、Mg、Al、Si、P、S、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Au、Tl、Bi、Po、Atが含まれる。)又は、酸化鉄Fe2O3を含有する金属酸化物があげられる。これらの中でも酸化鉄Fe2O3を含有する金属酸化物が好ましい。金属酸化物としては、例えば一般式: (NO)m・Fe2O3(式中、Nは2価の金属原子を表し、mは0≦m≦1の数である。)で表されるフェライトがあげられ、2価の金属原子Nとしては、例えばマグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、ストロンチウム、バリウム等があげられる。とくにNが2価の鉄である場合の磁性酸化鉄(例えばマグネタイトFe3O4、γ-Fe2O3など)は本発明において好適に使用される。なお、磁性ナノ粒子(P)は(p)の他に結晶水を含んでいてもよい。
磁性ナノ粒子(P)が酸化鉄を含有する場合は、酸化鉄は表面に水酸基を持っていることから、様々な保護剤(A)と共有結合を形成することができるため、保護剤(A)による分散安定効果が大きい。酸化鉄の等電位点はpH=5.7〜6.9であり、これより高いpH領域では粒子表面に水酸基が存在する。この水酸基と保護剤(A)の官能基とが共有結合を形成することにより、保護剤が酸化鉄ナノ粒子表面を被覆するため、分散安定性が酸化鉄以外のナノ粒子と比較して向上する。
まず、磁性ナノ粒子のみからなる水性ゾルを調製する。この水性ゾルの調製法は、アルカリ共沈法やイオン交換樹脂法などを例示することができる。アルカリ共沈法では、例えば塩化鉄(III)と塩化鉄(II)とをモル比で1:3〜2:1程度の比率で含む約0.1〜2モルの水溶液と、NaOH,KOH,NH4OH等の塩基とをpHが約7〜12になるように混合し、必要に応じて加熱熟成し、酸化鉄磁性ナノ粒子(P1)を得る。精製が必要な場合は、生成した酸化鉄磁性ナノ粒子(P1)を分離、水洗した後、水性溶媒に再分散する。酸化鉄磁性ナノ粒子(P1)、保護剤(A)、及びアニオン性ポリマー(B)を水性溶媒中で混合することにより、MRI用造影剤を得る。
好ましくは、水性溶媒に再分散した酸化鉄磁性ナノ粒子(P1)に保護剤(A)を加え、場合により保護剤(A)と酸化鉄表面との反応を行うことで、保護剤に被覆された酸化鉄磁性ナノ粒子を得る。この水性ゾルは、必要に応じて透析、限外ろ過、遠心分離などにより精製または濃縮してもよい。ついで、これと水性溶媒に溶解したアニオン性ポリマー(B)の溶液を混合し、必要に応じてpHを調節し、MRI用造影剤を得る。
金属塩、例えば酢酸鉄、白金アセチルアセトナートなどの金属塩の水溶液に保護剤(A)をあらかじめ溶解させておき、これに水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を投入して、金属イオンを還元することにより、場合により保護剤(A)と金属粒子表面との反応を行うことで、保護剤(A)に被覆された金属磁性ナノ粒子複合体(C1)を得る。合金の場合は溶解させておく金属イオン種を複数にすることにより合金ナノ粒子を得ることができる。酸化鉄の場合と同様に必要に応じて透析、限外ろ過、遠心分離などにより精製または濃縮してもよい。金属磁性ナノ粒子複合体(C1)、及びアニオン性ポリマー(B)を水性溶媒中で混合することにより、MRI用造影剤を得る。好ましくは、金属磁性ナノ粒子複合体(C1)と水性溶媒に溶解したアニオン性ポリマー(B)の溶液を混合し、pHを調節し、MRI用造影剤を得る。
保護剤(A)としては、磁性ナノ粒子(P)の表面と共有結合を形成しない保護剤(A1)と共有結合を形成する保護剤(A2)が挙げられる。
磁性ナノ粒子複合体(C)の体積平均粒径は好ましくは、4〜110nmであり、さらに好ましくは5〜55nmである。磁気共鳴画像用造影剤中に含まれる、磁性ナノ粒子複合体の体積平均粒径は磁性ナノ粒子複合体(C)の体積平均粒径と同じである。
(A1)の具体例としては、カルボキシル基含有イミダゾリウム塩化合物(1−メチル−3−カルボキシヘキシルイミダゾリウムクロライド等)、カルボキシル基含有ピリジニウム塩化合物(N−カルボキシヘキシルピリジニウムクロライド等)、カルボキシル基含有4級アンモニウム塩化合物(N−カルボキシプロピル−N,N−ジエチル−N−メチルアンモニウムクロライド等)、カルボキシル基含有3級アンモニウム塩化合物(N−カルボキシプロピル−N,N−ジエチルアンモニウムクロライド等)、カルボキシル基含有2級アンモニウム塩化合物(N−カルボキシプロピル−N−エチルアンモニウムクロライド等)、アミノ基含有イミダゾリウム塩化合物(1−メチル−3−アミノヘキシルイミダゾリウムクロライド等)、アミノ基含有ピリジニウム塩化合物(N−アミノヘキシルピリジニウムクロライド等)、アミノ基含有4級アンモニウム塩化合物(N−アミノプロピル−N,N−ジエチル−N−メチルアンモニウムクロライド等)、アミノ基含有3級アンモニウム塩化合物(N−アミノプロピル−N,N−ジエチルアンモニウムクロライド等)、アミノ基含有2級アンモニウム塩化合物(N−アミノプロピル−N−エチルアンモニウムクロライド等)、チオール基含有イミダゾリウム塩化合物(1−メチル−3−メルカプトヘキシルイミダゾリウムクロライド等)、チオール基含有ピリジニウム塩化合物(N−メルカプトヘキシルピリジニウムクロライド等)、チオール基含有4級アンモニウム塩化合物(N−メルカプトプロピル−N,N−ジエチル−N−メチルアンモニウムクロライド等)、チオール基含有3級アンモニウム塩化合物(N−メルカプトプロピル−N,N−ジエチルアンモニウムクロライド等)、チオール基含有2級アンモニウム塩化合物(N−メルカプトプロピル−N−エチルアンモニウムクロライド等)などが挙げられる。
(B)の分子量としては、重量平均分子量が4000〜20万が好ましく、1万〜10万がより好ましい。重量平均分子量が4000以上であると、複数の磁性ナノ粒子間でのネットワークが生成し有意な大きさの複合体(X)を形成することがでるので好ましい。また20万以下であると複合体(X)の体積が好適となる。
磁性ナノ粒子(P)の測定は透過型電子顕微鏡(日立製作所、H−7100)で観察を行い100個の粒子の粒径を測定した結果から計算により算出した。測定サンプルはコロジオン膜処理した銅メッシュ上に、磁性ナノ粒子(P)を含有する分散液をスポイトで一滴垂らし、そのまま風乾することで調整した。
磁気共鳴画像用造影剤の粒子測定は動的光散乱粒径測定装置(堀場製作所、LB−550)を用いて、各実施例の磁気共鳴画像用造影剤を測定セルに注入し、測定を行った。
541mgの塩化鉄(III)六水和物および397mgの塩化鉄(II)4水和物を150mlのイオン交換水に溶解させた。これを窒素気流下40℃に温調し、25%のアンモニア水16mlを加え、30分間反応させた。得られた黒色沈殿を磁気的に分別し、水を用いて数回洗浄することにより酸化鉄ナノ粒子(P−1)を得た。体積平均粒径は8.5nmであった。
N2雰囲気下で以下の操作を行った。
H2PtCl6の6水和物を93mg、FeCl2の4水和物を59.7mg、保護剤(A−2)0.2gを蒸留水:エタノール=1:1の溶液100mlに溶解した後、100℃で5時間還流した。次にFeSO4の7水和物の12μmol/ml水溶液を10ml加えた。その後0.07gのNaBH4を50mlの蒸留水に溶解したものを添加した。これによりFePtナノ粒子複合体(C−3)を得た。体積平均粒径は3.9nmであった。
N2雰囲気下で以下の操作を行った。
1−メチルイミダゾールを60.4mmolと3−クロロプロピルトリメトキシシランを54.9mmolを混合し、90℃で72時間反応させた。酢酸エチルで数回洗浄した後、酢酸エチルを減圧で除去し、53.1mmolの1−メチル−3−トリメトキシシランプロピルイミダゾリウムクロライド(A−1)を得た。
ボルハルト・ショアー 現代有機化学 p816の方法に準じて、ドデカン二酸より、10−ブロモデカン酸を合成し、精製する。合成した10−ブロモデカン酸を50mmolと1−メチルイミダゾール40mmolを混合し、90℃で72時間反応させた。酢酸エチルで数回洗浄した後、酢酸エチルを減圧で除去し、37mmolの1−メチル−3−カルボキシデシルイミダゾリウムブロマイド(A−2)を得た。
3−アミノプロピルトリメトキシシラン (ワコーケミカル品)を、そのまま使用した。
作製した酸化鉄ナノ粒子(P−1)300mgを水/エタノール=1/1の混合溶媒150mlに超音波をかけて分散させ、下記分子式(II)で示される保護剤(A−1)200mgを加え80℃で10時間反応させることにより表面を(II)の分子で被覆された磁性ナノ粒子複合体(C−1)を得た。この分散液にテトラヒドロフランを加えることで、磁性ナノ粒子複合体を沈殿させ、これをイオン交換水で数回洗浄した後、イオン交換水50mlに分散させることで0.7%の磁性ナノ粒子複合体が分散した分散液を得た。これに重量平均分子量25000のポリアクリル酸を8重量%の濃度で溶解させた水溶液を175ml添加することで、磁性ナノ粒子は凝集した。この時のpHは2.5であった。これに水酸化ナトリウムを添加していくと、生じた沈殿は溶解し始め、pH6.0で目視で溶解したことを確認し、さらにpHが7.0になるまで水酸化ナトリウムを添加してMRI用造影剤を調製した。
保護剤として(A−1)200mgの代わりに下記分子式(III)で示される保護剤(A−2)200mgを使用し、室温で保護剤(A−2)と酸化鉄ナノ粒子(P−1)との混合を行った。それ以外は、実施例1と同様にしてMRI用造影剤を得た。
磁性ナノ粒子複合体(C−3)の分散液を、アドバンテック社製のウルトラフィルターユニット USY−1.5−2.0を用いて、残留イオンを濾過で除き、得られた(C−3)に水を添加して更に濾過を行うといった工程を5回行い、最後に磁性ナノ粒子複合体(C−3)の濃度が0.7%となるようにイオン交換水を加えた。これに重量平均分子量25000のポリアクリル酸を8質量%の濃度で溶解させた水溶液を、ポリアクリル酸の重量が磁性ナノ粒子複合体(C−3)の重量に対して80倍の量になる量を添加することで、磁性ナノ粒子は凝集した。この時のpHは2.5であった。これに水酸化ナトリウムを添加していくと、生じた沈殿は溶解し始め、pH6.0で目視で溶解したことを確認し、さらにpHが7.0になるまで水酸化ナトリウムを添加してMRI用造影剤を調製した。
実施例1において、添加するポリアクリル酸8重量%の水溶液175mlの代わりに、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬、セロゲンBS−H)8重量%の水溶液175mlを用いる以外は、実施例1と同様の方法で、MRI用造影剤を得た。
実施例1において、保護剤(A−1)200mgの代わりに下記一般式(IV)の保護剤(A−3)200mgを使用した以外は、実施例1と同様にしてMRI用造影剤を得た。
市販のMRI用肝臓造影剤「フェリデックス」(田辺製薬株式会社)を用いて、実施例と同様の物性を確認した。
またこれらのMRI用造影剤の毒性が低いことが、マウスへの静脈注射による毒性試験からもわかる。比較例に示した従来品フェリデックスは分散安定性では本発明品と同様に優れているが、経時での安定性が悪い。
またフェリデックスは粒径が大きいため、尿中***率が悪いという問題もあるが、本発明のMRI用造影剤は粒径はいずれも10nm以下であり***率は高いと考えられる。
Claims (8)
- 磁性ナノ粒子(P)の表面がカチオン性の官能基(a)を有する保護剤(A)で被覆されてなる磁性ナノ粒子複合体(C)が、アニオン性ポリマー(B)を含有する水性分散媒(S)中に、分散されてなる磁気共鳴画像用造影剤であって、前記磁性ナノ粒子(P)と前記保護剤(A)が共有結合で結合されてなり、前記磁性ナノ粒子(P)が鉄属元素酸化物(p)であり、前記カチオン性の官能基(a)がアルキルアンモニウム基、ジアルキルアンモニウム基、トリアルキルアンモニウム基、テトラアルキルアンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリニウム基、イミダゾリウム基及びグアニジウム基からなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオン性の官能基であり、前記アニオン性ポリマー(B)がアクリル酸、メタクリル酸、アルギン酸、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸から誘導されるアニオン性ポリマー並びにカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の、カルボキシル基を含有するアニオン性ポリマーであることを特徴とする磁気共鳴画像用造影剤。
- 磁性ナノ粒子(P)の体積平均粒径が3〜100nmである請求項1に記載の造影剤。
- 磁性ナノ粒子(P)が酸化鉄を含有する粒子である請求項1又は2に記載の造影剤。
- 磁性ナノ粒子(P)と保護剤(A)がFe−O−Si結合で結合されてなる請求項3に記載の造影剤。
- 保護剤(A)のカチオン性の官能基(a)がイミダゾリウムカチオン基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の造影剤。
- アニオン性ポリマー(B)が分子内に少なくとも2つ以上のカルボキシル基を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の造影剤。
- アニオン性ポリマー(B)が多糖類のカルボン酸変性物である請求項6に記載の造影剤。
- 水性溶媒中で塩化鉄と塩基から得られる酸化鉄磁性ナノ粒子(P1)、保護剤(A)、及びアニオン性ポリマー(B)を水性溶媒中で混合することを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の磁気共鳴画像用造影剤の製造方法。
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