JP4891846B2 - 超微細ハンダ組成物 - Google Patents

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本発明は、金属間のハンダ付け接合に利用可能な、超微細な金属微粒子をハンダ材料として含有するインク状のハンダ組成物に関する。より具体的には、錫ナノ粒子を主成分とし、銀ナノ粒子を少量配合してなる、金属ナノ粒子の混合物を含有する組成物であり、加熱によって、金属ナノ粒子相互の融着を行い、Sn−Ag系合金ハンダと同等のハンダ付け接合に利用可能な、インク状のハンダ組成物に関する。電子部品同士の電気的、物理的接合手段として広く普及している、錫合金系ハンダ微粒子を含有するハンダ組成物が利用されるハンダ付け接合、主として、プリント配線及び半導体パッケージ内の層間接続、プリント配線板と電子部品の接合、配線の修復等に利用できる、インク状のハンダ組成物に関する。
電子部品同士の電気的、物理的接合手段として、錫合金系ハンダを利用するハンダ付け接合が広く普及している。特に、錫合金系ハンダ材料として、鉛を含有していない錫合金系ハンダ、所謂、鉛フリー・ハンダの利用が進んでいる。この鉛フリー・ハンダとしては、Snを主成分として、少量のAgを含む、Sn−Ag合金、さらには、Snを主成分として、少量のAgとCuを配合した、Sn−Ag−Cu合金などが利用されている。
錫合金系ハンダ粉末と、フラックスを混合してなる、ペースト状のハンダ組成物を利用して、プリント配線のハンダ接合用パッド上に、スクリーン印刷法により、該ハンダ組成物の塗布がなされている。その際、錫合金系ハンダ粉末の粒子径は、一般に、10〜40μm程度であり、該ハンダ組成物の塗布膜の膜厚、描画精度(下限)は、前記ハンダ粉末の粒子径により制限されている。
さらに、スクリーン印刷に代えて、インクジェット印刷に利用可能な、粒子径0.5〜2.0μm程度の錫合金系ハンダ微粒子を、分散溶媒中に均一に分散してなるインク状のハンダ組成物も提案されている(特許文献1を参照)。該インク状のハンダ組成物中において、錫合金系ハンダ微粒子の均一分散を図るため、該微粒子の表面に共重合ポリマー型の分散剤による被覆層を形成している。一方、錫合金系ハンダ微粒子の表面に生成している酸化被膜を除去する機能を有する活性剤として、例えば、有機酸、有機アミン塩が添加されている。
上記の錫合金系ハンダ粒子の利用に代えて、金属錫粒子と、銀イオン、銅イオンを含有する金属含有有機錯体を配合し、加熱処理を施し、前記錯体の加熱分解に伴って、還元析出する銀、銅と、金属錫粒子から、Sn−Ag合金、Sn−Ag−Cu合金を系内で形成する手法も提案されている(特許文献2を参照)。
特開2005−161341号公報 特開2003−251494号公報
前記の金属錫粒子と、銀イオン、銅イオンを含有する金属含有有機錯体を配合し、加熱処理を施し、前記錯体の加熱分解に伴って、還元析出する銀、銅と、金属錫粒子から、Sn−Ag合金、Sn−Ag−Cu合金を系内で形成する手法(析出型ハンダ組成物)は、予め、錫合金系ハンダ微粒子を調製する手法よりも、遥かに簡便な方法である。
析出型ハンダ組成物では、金属錫粒子の表面において、銀イオン、銅イオンを含有する金属含有有機錯体から、銀、銅を選択的に還元析出させる過程では、金属錫と置換して、銀イオン、銅イオンが還元され、銀原子、銅原子となる、置換還元の機構を利用している。置換還元の機構を利用する際には、金属錫粒子の表面に、清浄な金属錫が出現していることが必要である。スクリーン印刷やディスペンサーを利用する塗布法では、塗布するハンダ組成物は、流動性を抑えたペースト状であることが望ましい。一方、インクジェット印刷法を適用する塗布では、微小な液滴として、吐出する必要があり、液粘度が低い、高流動性のハンダ組成物であることが必要である。さらには、微小な液滴の吐出がなされる吐出口の開口径は小さいため、ハンダ組成物中に含有される金属粒子の粒子径は、少なくとも、2μmを超えない範囲に選択する必要がある。また、ハンダ組成物中に含有される金属粒子は、分散溶媒中に均一に分散している状態とすることが必要である。換言すると、含有される金属粒子の分散性を高く維持するため、金属粒子の表面の分散溶媒との親和性を有する分散剤にとる被覆層を設ける必要がある。そのため、インクジェット印刷に適用可能な析出型ハンダ組成物を構成する場合には、例えば、粒子径0.5〜2.0μm程度の金属錫粒子の表面に共重合ポリマー型の分散剤による被覆層を形成することが必要である。その場合、析出型ハンダ組成物を塗布した後、前記置換還元を行う前に、例えば、共重合ポリマー型の分散剤による被覆層を予め除去することが必要となる。
一方、配線基板上にハンダ接合により実装されるチップ状の電子部品の小型化、また、実装密度が高くなると、ハンダ接合に利用されるパッドのサイズがますます微小化する。従って、インク状のハンダ組成物を塗布するパッドのサイズが、さらに微細化すると、そのインクジェット印刷に利用されるインク中に含有される金属粒子の粒子径は、さらに、微小化する必要がある。同時に、インクジェット印刷によって、パッド面上に塗布されるインク状のハンダ組成物の塗布膜の膜厚の均一性、再現性を高める必要がある。具体的には、微細なパターンのインクジェット印刷に適合するように、インク状のハンダ組成物中に含有される金属微粒子として、平均粒子径が100nm以下の金属ナノ粒子を利用する、インク状のハンダ組成物の開発が望まれる。特に、微細なパターンのインクジェット印刷に利用する際、含有される金属ナノ粒子は塊を形成してなく、全体の液粘度が50mPa・s(20℃)以下である、高流動性のインク状のハンダ組成物の開発が望まれる。その際、ハンダ組成物自体は、所謂、鉛フリー・ハンダ、例えば、Sn−Ag系合金ハンダ、Sn−Ag−Cu系合金ハンダに相当する組成を有することが必要とされる。
本発明は、前記の課題を解決するものである。すなわち、本発明の目的は、微細なパターンのインクジェット印刷に適合するように、インク状のハンダ組成物中に含有される金属微粒子として、平均粒子径が100nm以下の金属ナノ粒子を利用し、含有される金属ナノ粒子は塊を形成してなく、全体の液粘度が50mPa・s(20℃)以下である、高流動性のインク状のハンダ組成物を提供することにある。特には、所謂、鉛フリー・ハンダ、例えば、Sn−Ag系合金ハンダ、Sn−Ag−Cu系合金ハンダに相当する組成を有する、Sn−Ag系合金ハンダ、Sn−Ag−Cu系合金ハンダに相当する組成を有する、高流動性のインク状のハンダ組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するため、先ず、Sn−Ag系合金、Sn−Ag−Cu系合金からなる、平均粒子径100nm以下の合金ナノ粒子の利用を検討した。一般に、合金の微粒子の作製には、遠心噴霧法やガスアトマイズ(ガス噴霧法)が利用されるが、噴霧可能な液滴のサイズは、0.1μmが下限であり、平均粒子径100nm以下の合金ナノ粒子を形成するは、困難であることが判明した。加えて、これらの手法で作製される合金微粒子は、しばしば、複数の微粒子が互いに固着し、塊を形成すること粒状物となったものであることも確認された。
一方、金属単体で構成される、平均粒子径1〜100nmの金属ナノ粒子は、その金属表面は、金属元素と配位可能な被覆剤分子(アミンなど)で被覆され、この被覆剤分子を分散剤として利用することで、有機溶媒中に安定に分散できる。また、金属表面全体を被覆剤分子層で被覆されている状態では、平均粒子径1〜100nmの金属ナノ粒子の表面には、酸化皮膜は形成されていない。そして、金属表面全体を被覆している被覆剤分子層を除去すると、金属ナノ粒子は、その金属表面を互いに接触させると、比較的に低温でも、相互に融着を起し、金属ナノ粒子の焼結体を構成できる。さらには、清浄な金属表面を露呈しているバルク金属表面と、金属ナノ粒子とを接触させると、金属ナノ粒子表面における金属原子の拡散に起因して、バルク金属面と金属ナノ粒子との界面融合が起こることを、既に検証している(特開2002−126869号公報を参照)。前記の現象を利用すると、バルク金属表面間を、金属ナノ粒子の焼結体層を介して接合する、金属間のロウ付け接合が達成できることも検証している。
前記の手法は、接合すべきバルク金属の表面がともに清浄な金属表面である際には、ハンダ接合と遜色のない接合強度を示す。一方、接合すべきバルク金属の表面に、極僅かな膜厚の酸化皮膜が存在する際には、その酸化皮膜が障壁となり、金属ナノ粒子表面における金属原子の拡散に起因する、バルク金属面と金属ナノ粒子との界面融合が阻害を受ける。その場合、見かけの接合形成領域の面積のうち、実際に、バルク金属面と金属ナノ粒子との界面融合が達成されている割合は、僅かなものとなる。その結果、見かけの接合形成領域の面積当たりの接合強度は、前記の割合に従って、低いものとなる。
本発明者らは、前記の「見かけの接合形成領域の面積当たりの接合強度」の低下を、実質的に回避する手段を付加すると、接合すべきバルク金属の表面に極僅かな膜厚の酸化皮膜が存在する際にも、良好なロウ付け接合を達成できることに想到した。
実際には、前記のバルク金属面と金属ナノ粒子との界面融合を利用するロウ付け接合では、個々の界面融合部位の面積Sparticleは、概ね、金属ナノ粒子の平均粒子径dの二乗(d2)に比例して、微細な面積である。一方、酸化皮膜が存在していない場合に、接合すべき面全体に、本来、生成される界面融合部位の面密度:Dparticleは、金属ナノ粒子の平均粒子径dの二乗(d2)に反比例して、大きな密度となっている。そのため、単位面積当たり、バルク金属面と金属ナノ粒子との界面融合が達成されている面積の総和:Sparticle×Dparticleは、金属ナノ粒子の平均粒子径dには、顕著には依存しないものとなっている。さらに、詳細に、バルク金属面と金属ナノ粒子との界面融合部分の形態を検討すると、個々の界面融合部位の面積Sparticleは、Sparticle∝a(d)・d2と、金属ナノ粒子の平均粒子径dに依存する因子a(d)に依存している。この因子a(d)は、金属ナノ粒子の平均粒子径dが大きいほど小さく、平均粒子径が小さいほど大きくなっている。具体的には、界面融合が生じる場合、バルク金属面上において、金属ナノ粒子の表面を構成する金属原子が表面拡散することで、界面融合部位の面積Sparticleが決定されている。その現象に起因して、平均粒子径2nm〜100nmの範囲では、因子a(d)は、二つの平均粒子径dとd’の間に、a(d)/a(d’)≒(d’/d)で近似できるような依存性が存在する。
一方、バルク金属面と金属ナノ粒子との界面融合部位は、金属表面から表面酸化が進行すると、実際に金属間結合によって接合がなされている実効的な界面融合部位の面積Sparticleは減少していく。この経時的な表面酸化に由来する、実効的な界面融合部位の面積Sparticleの減少の影響は、金属ナノ粒子の平均粒子径dが小さいほど顕著となる。
本発明者らは、一旦、前記のバルク金属面と金属ナノ粒子との界面融合を利用して、バルク金属表面間を、金属ナノ粒子の焼結体層を介して接合し、その後、前記金属ナノ粒子の焼結体層全体が熔融するまで加熱すると、バルク金属表面間全体がロウ付け接合された状態となることに想到した。その際、前記金属ナノ粒子の焼結体層全体の平均組成が、ハンダ接合に利用される、鉛フリー・ハンダ、例えば、Sn−Ag系合金ハンダ、Sn−Ag−Cu系合金ハンダに相当する組成であると、バルク金属表面間全体がハンダ接合された状態となることに想到した。
仮に、金属ナノ粒子として、鉛フリー・ハンダ、例えば、Sn−Ag系合金ハンダ、Sn−Ag−Cu系合金ハンダに相当する組成を有する合金ナノ粒子を採用できると、理想的であるが、上述するように、かかる合金ナノ粒子の作製は困難である。そのため、目的とする合金の組成に相当する比率で、構成金属からなる金属ナノ粒子の混合物を利用し、均一な混合がなされている金属ナノ粒子の焼結体層を形成した後、前記金属ナノ粒子の焼結体層全体が熔融するまで加熱すると、全体が均一な合金化された状態とできることを見出した。その際、目的とする、Sn−Ag系合金ハンダ、Sn−Ag−Cu系合金ハンダに相当する組成は、Snが95wt%〜99.5wt%、Agが5wt%〜0.5wt%であるため、各構成金属からなる金属ナノ粒子の平均粒子径を等しく選択すると、微視的には、平均組成が不均一な状態となることを見出した。この微視的な組成の不均一性を回避する上では、錫ナノ粒子の平均粒子径d1と、銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率;d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択することで、構成金属からなる金属ナノ粒子の混合物中において、錫ナノ粒子の個数N1と銀ナノ粒子の個数N2の比率が、N1≦N2の関係を満たすことが有効であることを見出した。すなわち、前記の条件が満たされると、錫ナノ粒子の周囲に、銀ナノ粒子が接する状況が達成されることを見出した。その状況で、均一な混合がなされている金属ナノ粒子の焼結体層全体が熔融するまで加熱すると、速やかに、全体が均一な合金化された状態とできる。
その際、Sn−Ag−Cu系合金ハンダに相当する組成では、Cuは0.7wt%〜0.1wt%であり、Cuナノ粒子を利用すると、錫ナノ粒子の個数N1と銅ナノ粒子の個数N3の比率が、N1≦N3の関係を満たすようにする上では、錫ナノ粒子の平均粒子径d1と、銅ナノ粒子の平均粒子径d3の比率;d1:d3を、10:1以下の範囲に選択することになる。その際、銅ナノ粒子は、銀ナノ粒子と比較して、遥かに、表面酸化を受け易い点を考慮に入れた。銅に関しては、有機酸銅塩として配合し、加熱処理の過程で、有機酸銅塩から金属銅を生成させ、錫ナノ粒子の表面に、生成される銅の被覆層を形成する形態がより好ましいことを見出した。
金属ナノ粒子の混合物を利用し、均一な混合組成の金属ナノ粒子の焼結体層を形成した後、該金属ナノ粒子の焼結体層全体が熔融する過程では、熔融した金属の表面が酸化を受けることを回避するため、焼結体層全体が高沸点の非極性溶媒で浸漬されていることが必要である。この状況を利用して、該金属ナノ粒子の焼結体層全体を熔融して、接合すべき金属表面全体に濡れる状態とするため、高沸点の非極性溶媒中にフラックス剤を溶解した形態とすることが望ましいことを見出した。
勿論、高沸点の非極性溶媒中にフラックス剤を溶解し、必要に応じて、少量の有機酸銅塩を溶解し、錫ナノ粒子、銀ナノ粒子を均一に分散してなる分散液は、全体の液粘度が100mPa・s(20℃)以下である、高流動性のインク状のハンダ組成物とすることができることも確認した。従って、インクジェット印刷に適用できることを確認した。
本発明者らは、これらの一連の知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の形態にかかるインク状のハンダ組成物は、
平均粒子径が2〜100nmの錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、ならびに、フラックス成分を含み、高沸点の無極性溶媒中に該錫ナノ粒子と銀ナノ粒子を均一に分散してなるインク状のハンダ組成物であって、
前記錫ナノ粒子と銀ナノ粒子の混合比率WSn:WAg(但し、WSn+WAg=100とする)を、95:5〜99.5:0.5の範囲に選択し;
前記錫ナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択し;
前記錫ナノ粒子10質量部当たり、前記フラックス成分の添加量を、0.5質量部〜2質量部の範囲に選択し;
前記高沸点の無極性溶媒として、沸点が200℃〜320℃の範囲の、炭化水素系溶剤を選択している
ことを特徴とするインク状のハンダ組成物である。
また、本発明の第二の形態にかかるインク状のハンダ組成物は、
平均粒子径が2〜100nmの錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、有機酸銅塩、ならびに、フラックス成分を含み、高沸点の無極性溶媒中に該錫ナノ粒子と銀ナノ粒子を均一に分散してなるインク状のハンダ組成物であって、
前記錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、有機酸銅塩中に含有される銅の配合比率WSn:WAg:WCu(但し、WSn+WAg+WCu=100とする)は、
Snを、95〜99.5の範囲に、
Agを、5〜0.5の範囲に、
Cuを、0.7〜0.1の範囲に選択し、
前記錫ナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択し;
前記錫ナノ粒子10質量部当たり、前記フラックス成分の添加量を、0.5質量部〜2質量部の範囲に選択し;
前記高沸点の無極性溶媒として、沸点が200℃〜320℃の範囲の、炭化水素系溶剤を選択している
ことを特徴とするインク状のハンダ組成物である。その際、前記有機酸銅塩として、ロジン酸銅が好適に使用できる。
上述する本発明の第一の形態、ならびに第二の形態のかかるインク状のハンダ組成物にいずれにおいても、下記の態様を選択することが好ましい。
まず、該インク状のハンダ組成物の液粘度は、5 mPa・s〜30 mPa・s(20℃)の範囲に選択されていることが好ましい。
さらに、
前記錫ナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択する際、前記の比率を満たす範囲で、
前記錫ナノ粒子の平均粒子径d1を、10〜100nmの範囲に選択し、
前記銀ナノ粒子の平均粒子径d2を、2〜20nmの範囲に選択することがより好ましい。
一方、前記銀ナノ粒子は、その表面の銀原子に対して、アミノ基の窒素原子上の孤立電子対を利用して、配位的な結合が可能なアルキルアミンにより被覆された状態で、前記高沸点の無極性溶媒中に分散されていることが好ましい。
その際、前記アルキルアミンの配合量は、前記銀ナノ粒子10質量部あたり、1〜6質量部の範囲に選択されていることが望ましい。
特に、前記アルキルアミンは、炭素数8〜14の第1アルキルアミンであることが望ましい。
上述する本発明の第一の形態、ならびに第二の形態のかかるインク状のハンダ組成物にいずれにおいても、
前記フラックス成分として、ロジンまたは水添ロジンを添加している形態を選択することが好ましい。
本発明にかかるインク状のハンダ組成物は、高沸点の非極性溶媒中にフラックス剤を溶解し、必要に応じて、少量の有機酸銅塩を溶解し、錫ナノ粒子、銀ナノ粒子を均一に分散してなる分散液は、全体の液粘度が100mPa・s(20℃)以下である、高流動性のインク状のハンダ組成物となっている。従って、この高流動性のインク状のハンダ組成物は、例えば、インクジェット印刷法を適用して、目標とする微細なパターン形状で均一な塗布膜厚で塗布することはできる。さらに、金属錫の融点よりは低いが、錫ナノ粒子、銀ナノ粒子相互の低温焼結、接合対象の金属表面と錫ナノ粒子、銀ナノ粒子との界面融合、配合されている有機酸銅塩からの銅原子の析出が可能な温度に加熱することで、一旦、錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、析出した金属銅の析出層は均一に混合している金属ナノ粒子の焼結体層を形成して、接合対称の金属面を該金属ナノ粒子の焼結体層を介して、接合することができる。最終的に、前記金属ナノ粒子の焼結体層を、目的の錫合金の融点以上の温度に加熱することで、高沸点の非極性溶媒中に溶解されているフラックス剤を存在下で、金属ナノ粒子の焼結体層の熔融を行い、良好な接合強度を有するハンダ接合を行うことができる。
以下に、本発明にかかるインク状のハンダ組成物と、それを利用するハンダ接合方法をより詳細に説明する。
まず、本発明にかかるインク状のハンダ組成物は、所謂、鉛フリー・ハンダと称される、Sn−Ag系合金ハンダ、Sn−Ag−Cu系合金ハンダをハンダ材料として利用する、金属間のハンダ接合への利用を目的としている。
本発明の第一の形態にかかるインク状のハンダ組成物は、Sn−Ag系合金ハンダをハンダ材料として利用する、金属間のハンダ接合への利用を目的としている。従って、平均粒子径が2〜100nmの錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、ならびに、フラックス成分を含み、高沸点の無極性溶媒中に該錫ナノ粒子と銀ナノ粒子を均一に分散してなるインク状のハンダ組成物としている。
目的とするSn−Ag系合金ハンダの組成に相当するように、含有される錫ナノ粒子と銀ナノ粒子の混合比率(質量比)WSn:WAg(但し、WSn+WAg=100とする)は、95:5〜99.5:0.5の範囲に選択している。その際、前記の錫ナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択している。錫の密度(20℃):7.265g・cm-3、銀の密度(20℃):10.49g・cm-3を考慮すると、比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択すると、錫ナノ粒子1個の質量W1と銀ナノ粒子1個の質量W2の比率 W1:W2は、44.3:1〜693:1の範囲となる。
例えば、WSn:WAg=95:5の場合、比率d1:d2を、4:1に選択すると、前記の混合比率となる、錫ナノ粒子の個数N1と銀ナノ粒子の個数N2の比率N1/N2は、43/100となっている。WSn:WAg=99.5:0.5の場合、比率d1:d2を、10:1の範囲に選択すると、前記の混合比率となる、錫ナノ粒子の個数N1と銀ナノ粒子の個数N2の比率N1/N2は、29/100となっている。記錫ナノ粒子の個数N1と銀ナノ粒子の個数N2の比率N1/N2を、少なくとも、1/50<N1/N2<5、好ましくは、1/20≦N1/N2≦2、より好ましくは、1/10≦N1/N2≦1となるように、混合比率(質量比)WSn:WAgに応じて、錫ナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲で選択する。
仮に、N1/N2=4と仮定すると、立方格子状に積層されている錫ナノ粒子2×2×2=8個当たり、少なくとも、銀ナノ粒子1個が存在する状態となっている。すなわち、上記のように、混合比率(質量比)WSn:WAgに応じて、錫ナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲で選択すると、均一に混合されている錫ナノ粒子と銀ナノ粒子の混合物中では、局所的に組成比が、目標とする混合比率(質量比)WSn:WAgから、極端にずれた状態となることは回避されている。
さらに、錫ナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択する際、前記の比率を満たす範囲で、錫ナノ粒子の平均粒子径d1を、10〜100nmの範囲に選択し、銀ナノ粒子の平均粒子径d2を、2〜20nmの範囲に選択することがより好ましい。特には、比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択する際、前記の比率を満たす範囲で、錫ナノ粒子の平均粒子径d1を、20〜50nmの範囲に選択し、銀ナノ粒子の平均粒子径d2を、2〜10nmの範囲に選択することがさらに好ましい。
一方、分散溶媒の高沸点の無極性溶媒中に、錫ナノ粒子と銀ナノ粒子を均一に分散する状態とするため、錫ナノ粒子と銀ナノ粒子の表面には、金属元素に対して、配位的な結合が可能な被覆剤分子による被覆剤分子層を設ける。具体的には、銀ナノ粒子に対しては、末端アミノ基を有するアミン化合物を利用して、被覆剤分子層を設ける。また、錫ナノ粒子に対しても、アミノ基、またはヒドロキシル基を有する化合物を利用して、被覆剤分子層を設ける。
この被覆剤分子に利用する末端アミノ基を有するアミン化合物、例えば、アルキルアミンは、銀ナノ粒子の表面に対して、アミノ基の窒素原子上の孤立電子対を利用して、配位的な結合を行って、緻密な被覆剤分子層を形成している。一方、末端アミノ基を有するアミン化合物、例えば、アルキルアミンは、分散溶媒の高沸点の無極性溶媒に対して、その炭化水素骨格に由来する親和性を有している。従って、末端アミノ基を有するアミン化合物、例えば、アルキルアミンによる被覆剤分子層を具える銀ナノ粒子は、被覆剤分子層に起因する、高沸点の無極性溶媒に対する親和性を利用することで、分散性を有する状態となっている。また、表面が被覆剤分子層で被覆されている状態では、金属表面相互が直接接することは回避されるため、相互に融着した塊を形成する事態も回避されている。銀ナノ粒子に対する被覆剤分子としては、末端アミノ基を有するアミン化合物として、アルキルアミンを用いることが好ましい。例えば、アルキルアミンとして、そのアルキル基は、好ましくは、C8〜C14の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にアミノ基を有するものが用いられる。例えば、前記C8〜C14の範囲のアルキルアミンは、熱的な安定性もあり、また、その蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。
同様に、錫ナノ粒子に対しても、アミノ基、またはヒドロキシル基を有する化合物は、アミノ基の窒素原子上の孤立電子対、あるいは、ヒドロキシル基の酸素原子上の孤立電子対を利用して、配位的な結合を行って、緻密な被覆剤分子層を形成している。一方、アミノ基を有するアミン化合物、例えば、アルキルアミン、あるいは、ヒドロキシル基を有する化合物、例えば、アルキルアルコールは、分散溶媒の高沸点の無極性溶媒に対して、その炭化水素骨格に由来する親和性を有している。従って、アミノ基を有するアミン化合物、例えば、アルキルアミン、あるいは、ヒドロキシル基を有する化合物、例えば、アルキルアルコールによる被覆剤分子層を具える錫ナノ粒子は、被覆剤分子層に起因する、高沸点の無極性溶媒に対する親和性を利用することで、分散性を有する状態となっている。また、表面が被覆剤分子層で被覆されている状態では、金属表面相互が直接接することは回避されるため、相互に融着した塊を形成する事態も回避されている。
錫ナノ粒子に対する被覆剤分子としても、末端アミノ基を有するアミン化合物として、アルキルアミンを用いることが好ましい。例えば、アルキルアミンとして、そのアルキル基は、好ましくは、C8〜C14の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にアミノ基を有するものが用いられる。例えば、前記C8〜C14の範囲のアルキルアミンは、熱的な安定性もあり、また、その蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。
なお、前記の有機溶媒中に安定に分散可能な、表面に被覆剤分子層を具える金属ナノ粒子の製造方法として、特開平3−34211号公報には、ガス中蒸発法を用いて調製される10nm以下の金属微粒子をコロイド状に分散したものとその製造方法が開示されている。また、特開平11−319538号公報などには、還元にアミン化合物を用いる還元析出法を利用して、平均粒子径が数nm〜数10nm程度の金属微粒子をコロイド状に分散したものとその製造方法が開示されている。
一方、分散溶媒として利用する高沸点の無極性溶媒には、沸点が200℃〜320℃の範囲の炭化水素系溶剤を選択している。本発明の第一の形態にかかるインク状のハンダ組成物では、錫ナノ粒子の表面を被覆する被覆剤分子、ならびに、銀ナノ粒子の表面を被覆する被覆剤分子を、錫の融点(232℃)よりも、有意に低い温度T1で加熱することで、該高沸点の無極性溶媒中に溶出させることで、錫ナノ粒子と銀ナノ粒子を沈降させ、接合する対象の金属面上に積層した構造を形成する。また、この加熱処理の過程では、接合する対象の金属面上に残余している、酸化皮膜を、フラックス剤を利用することで除去している。これら液相での反応を行うため、この加熱処理の段階では、錫ナノ粒子と銀ナノ粒子は、高沸点の無極性溶媒に浸された状態であることが必要である。上記の選択を行うことで、前記の加熱処理の過程に先立ち、分散溶媒が完全に蒸散する状態となることを回避している。沸点が200℃〜320℃の範囲の炭化水素系溶剤として、炭素数が12〜18の範囲の直鎖のアルカン、炭素数が11〜16の範囲の分岐を有するアルカンが好適に利用可能である。前記被覆剤分子の離脱を行う第一の加熱処理の温度T1は、少なくとも、錫の融点(232℃)よりも、有意に低い温度であり、また、目標とするSn−Ag系合金の融点よりも低い温度とすることができる。例えば、第一の加熱処理の温度T1は、180℃〜225℃の範囲に選択することが好ましい。
一方、高沸点の無極性溶媒中に含有させるフラックス成分は、金属表面に残留する酸化皮膜を除去するために利用される。また、フラックス成分は、高沸点の無極性溶媒中に溶解した状態で含有させる。勿論、前記の錫の融点(232℃)よりも、有意に低い温度T1で加熱する段階で、大部分が蒸散するものではあってはならない。その条件を満足する、有機酸、一般に、沸点が200℃以上のモノカルボン酸、例えば、炭素数8以上のモノカルボン酸(R−COOH)が好適に利用できる。金属表面に残留する酸化皮膜は、一般に、M(II)Oの形態の金属酸化物で構成されている。この金属酸化物M(II)Oに、モノカルボン酸(R−COOH)が作用すると、まず、下記のような反応によって、カルボン酸の塩基性金属塩が生成される。
M(II)O+R−COOH → R−COO-[M2+・OH-

その際、高沸点の無極性溶媒中には、銀ナノ粒子や錫ナノ粒子の被覆剤分子として利用される、アミノ基を有する化合物、例えば、アルキルアミン(R’−NH2)などのアミン化合物が溶解している。このアルキルアミン(R’−NH2)は、金属原子Mに対する配位よりも、金属イオンM2+に対する配位を遥かに起し易い。従って、前記のカルボン酸の塩基性金属塩に対して、アルキルアミン(R’−NH2)が作用して、例えば、下記のようアミン錯体を生成する。
R-COO-[M2+・OH-]+4R'-NH2 → R-COO-[M2+(R'-NH24]OH-
上記のアミン錯体を構成すると、高沸点の無極性溶媒中への溶解がより容易になる。その際、高沸点の無極性溶媒中に溶解している、アルキルアミン(R’−NH2)自体の濃度は低下するため、銀ナノ粒子や錫ナノ粒子の金属表面の金属原子に配位的に結合しているアルキルアミン(R’−NH2)の解離が促進される。
R’−NH2:Ag → R’−NH2 + Ag
R’−NH2:Sn → R’−NH2 + Sn

例えば、接合すべき金属面が、銅パッド面である際には、この銅パッド表面は、予め、2.5N硫酸で洗浄すると、自然酸化膜は、除去されており、表面には、殆ど酸化皮膜は存在しない状態となっている。一方の接合対象である、電子部品のハンダ接合用の端子電極面に施されている錫メッキ膜の表面は、酸化錫SnO型の酸化皮膜が存在している。また、端子電極面に、銅メッキ膜、あるいは、銀/パラジウムメッキ膜が形成されている場合、一分子層程度の酸化皮膜が存在するのみである。従って、フラックス成分としては、沸点が200℃以上のモノカルボン酸、例えば、ロジン(アビエチン酸)や水添ロジンを利用することで、十分に、酸化皮膜の除去効果が達成できる。なお、フラックス成分の含有量は、高沸点の無極性溶媒中における濃度が、前記のフラックス処理が適正に進行する範囲となるように選択する。例えば、ロジン(アビエチン酸)や水添ロジンを利用する際には、高沸点の無極性溶媒100質量部当たり、1〜2質量部の範囲に選択することが好ましい。
銀ナノ粒子と錫ナノ粒子の合計と、高沸点の無極性溶媒との配合比率は、作製されるハンダ組成物の液粘度を決定する。勿論、高沸点の無極性溶媒自体の液粘度にも依存するが、インク状のハンダ組成物中、錫ナノ粒子と銀ナノ粒子と、分散溶媒の体積比率は、1:70〜1:140の範囲に選択することが好ましい。その際、本発明の第一の形態にかかるインク状のハンダ組成物では、該インク状のハンダ組成物の液粘度は、少なくとも、50mPa・s(20℃)以下、通常、5 mPa・s〜30 mPa・s(20℃)の範囲に選択されていることが好ましい。実際には、液粘度が前記の範囲となるように、高沸点の無極性溶媒の配合比率を、前記の範囲内で調節する。
本発明の第一の形態にかかるインク状のハンダ組成物を利用する際には、錫の融点(232℃)よりも、有意に低い温度T1で加熱する、第一の加熱処理工程において、上述する促進過程を利用して、被覆剤分子を該高沸点の無極性溶媒中に溶出させることで、錫ナノ粒子と銀ナノ粒子を沈降させ、接合する対象の金属面上に積層した構造を形成する。その結果、接合する対象の金属面上に積層した錫ナノ粒子と銀ナノ粒子は、清浄な金属面上において、金属面との間で界面融合を引き起こし固着される。また、積層構造を形成している、錫ナノ粒子と銀ナノ粒子は、相互に金属表面が接する状態となり、相互に融着を引き起こし、全体として、金属ナノ粒子で構成される低温焼結体層と一旦構成する。また、この積層構造の上面に接する、他方の金属面との間でも、金属面との間で界面融合を引き起こし、部分的な固着かなされる。高沸点の無極性溶媒との配合比率が相対的に高いため、この段階で形成される低温焼結体層は、相対的に金属成分の示す密度は低い状態に留まっている。
本発明の第一の形態にかかるインク状のハンダ組成物の利用する場合、さらに、第二の加熱処理工程として、引き続いて、錫の融点(232℃)よりも高い温度T2に加熱することで、金属ナノ粒子で構成される低温焼結体層中に含まれる錫ナノ粒子の熔融を進めると、その錫ナノ粒子と融着している銀ナノ粒子との間で合金化が進行し、全体的に目的とする組成のSn−Ag系合金が熔融した状態となる。その際、残余しているフラックス剤が存在している状態で、下側の清浄な金属面、上側の清浄な金属面の双方に濡れ拡がり、両者をSn−Ag系合金によるハンダ接合がなされた状態となる。この第二の加熱処理工程の温度T2は、従来のSn−Ag系合金によるハンダ接合を実施する温度を選択する。従って、第二の加熱処理の温度T2は、240℃〜280℃の範囲に選択することが好ましい。第二の加熱処理工程が完了した段階で、Sn−Ag系合金によるハンダ接合部分の層厚は、3μm〜20μmの範囲、好ましくは、5μm〜15μmの範囲となるように、本発明の第一の形態にかかるインク状のハンダ組成物の塗布膜厚を、30μm〜200μmの範囲、好ましくは、50μm〜150μmの範囲に選択することが望ましい。
なお、本発明の第一の形態にかかるインク状のハンダ組成物を利用して、ハンダ接合を形成する対象としては、配線基板上の設けるハンダ接合用のパッドと、そのパッド上にハンダ接合により実装される電子部品のハンダ接合用の端子が挙げられる。ハンダ接合用のパッドとしては、銅パッド、銅パッドの表面に、ハンダ濡れ性を向上する目的で、錫メッキ膜を形成しているもの、あるいは、ニッケル/金メッキ膜を形成しているものの何れにも、適用できる。一方、電子部品のハンダ接合用の端子としては、ハンダ濡れ性を向上する目的で、錫メッキ膜を形成しているもの、あるいは、銅メッキ膜を形成しているもの、銀/パラジウムメッキを施しているものの何れにも、適用できる。
次に、本発明の第二の形態にかかるインク状のハンダ組成物は、Sn−Ag−Cu系合金ハンダをハンダ材料として利用する、金属間のハンダ接合への利用を目的としている。従って、平均粒子径が2〜100nmの錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、有機酸銅塩、ならびに、フラックス成分を含み、高沸点の無極性溶媒中に該錫ナノ粒子と銀ナノ粒子を均一に分散してなるインク状のハンダ組成物としている。
目的とするSn−Ag−Cu系合金ハンダの組成に相当するように、含有される錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、有機酸銅塩中に含有される銅の配合比率WSn:WAg:WCu(但し、WSn+WAg+WCu=100とする)は、
Snを、95〜99.5の範囲に、
Agを、5〜0.5の範囲に、
Cuを、0.7〜0.1の範囲に選択している。その際、前記の錫ナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択している。
実際には、銅成分として添加される有機酸銅塩を除くと、錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、ならびに、フラックス成分、高沸点の無極性溶媒に関しては、上記の本発明の第一の形態にかかるインク状のハンダ組成物の実質的に同じ構成となっている。従って、上記の本発明の第一の形態にかかるインク状のハンダ組成物において、好適な形態は、本発明の第二の形態にかかるインク状のハンダ組成物においても、同様に好適な形態となっている。
Sn−Ag−Cu系合金ハンダの組成を構成する際、銅に関しては、銅ナノ粒子に代えて、有機酸銅塩を添加している。第一の加熱処理工程の際、下記の置換析出過程により、Snナノ粒子表面において、有機酸銅塩から選択的に銅原子を析出させたものを利用している。例えば、有機酸銅塩として、モノカルボン酸の銅塩:(R”COO)2Cuを使用すると、高沸点の無極性溶媒中では、二量体型の該モノカルボン酸の銅塩:[(R”COO)2Cu:Cu(R”COO)2]として溶解している。加熱すると、前記二量体から解離するモノカルボン酸の銅塩:(R”COO)2Cuは、下記の過程を経て、Snナノ粒子表面に析出する。
[(R"COO)2Cu:Cu(R"COO)2] → 2(R”COO-2Cu2+
(R”COO-2Cu2++Sn → Cu+(R”COO-2Sn2+
(R"COO-2Sn2++4R'-NH2 → (R"COO-2[Sn2+(R'-NH24

Snナノ粒子表面に析出する銅原子は、表面拡散により凝集する結果、Snナノ粒子表面に銅の被覆層を構成する。同時に、加熱に伴って、相互拡散も進行し、Snナノ粒子表面は、部分的な拡散領域を有する銅の被覆層が形成される。
上記の過程で利用される有機酸銅塩としては、高沸点の無極性溶媒に対して、十分な溶解性を具えるモノカルボン酸の銅塩:(R”COO)2Cuは好ましく、例えば、炭素数7〜14のモノカルボン酸の銅塩を利用することが好ましい。特に、置換析出過程により副生する、モノカルボン酸の錫塩:(R”COO)2Snが、高沸点の無極性溶媒中に速やかに溶出可能であることが好ましい。その観点では、ロジンの銅塩、ナフテン酸の銅塩などの利用が好適である。
なお、本発明の第二の形態にかかるインク状のハンダ組成物中に含有される有機酸銅塩は、加熱によって、二量体型から解離し、単量体となるが、無極性溶媒中では、単量体の溶解性は高くないため、被覆剤分子層が除去された錫ナノ粒子の表面の錫原子に対して、(R”COO)2Cu:Snの形態で選択的に吸着する。その上で、上記の過程を経て、置換析出がなされる。なお、錫メッキ膜の表面でも、同様の置換析出が進行するが、錫金属が露呈している表面積の総和は、錫ナノ粒子の表面積の総和が桁違いに大きいため、錫メッキ膜の表面への析出は、無視できる量である。
特に、被覆剤分子層で表面が保護されている錫ナノ粒子を利用しているので、被覆剤分子層を除去した時点で、その表面は、酸化皮膜が存在しない状態となっている。そのため、有機酸銅塩の置換析出が効果的に進行し、配合されている有機酸銅塩の概ね全量を、錫ナノ粒子の表面に置換析出させることが可能である。
従って、第一の加熱処理工程では、表面に銅の被覆層が形成された錫ナノ粒子と、銀ナノ粒子とで形成される低温焼結体層を介して、接合対象の金属面間が固着された状態となる。さらに、第二の加熱処理工程として、引き続いて、錫の融点(232℃)よりも高い温度T2に加熱することで、金属ナノ粒子で構成される低温焼結体層中に含まれる錫ナノ粒子の熔融を進めると、その表面に銅の被覆層が形成された錫ナノ粒子と融着している銀ナノ粒子との間で合金化が進行し、全体的に目的とする組成のSn−Ag−Cu系合金が熔融した状態となる。その際、残余しているフラックス剤が存在している状態で、下側の清浄な金属面、上側の清浄な金属面の双方に濡れ拡がり、両者をSn−Ag−Cu系合金によるハンダ接合がなされた状態となる。この第二の加熱処理工程の温度T2は、従来のSn−Ag−Cu系合金によるハンダ接合を実施する温度を選択する。従って、第二の加熱処理の温度T2は、240℃〜280℃の範囲に選択することが好ましい。第二の加熱処理工程が完了した段階で、Sn−Ag−Cu系合金によるハンダ接合部分の層厚は、3μm〜20μmの範囲、好ましくは、5μm〜15μmの範囲となるように、本発明の第二の形態にかかるインク状のハンダ組成物の塗布膜厚を、30μm〜200μmの範囲、好ましくは、50μm〜150μmの範囲に選択することが望ましい。

以上に説明したように、本発明のインク状のハンダ組成物は、均一な塗布膜厚で金属面上に塗布した後、他方の金属面をその上面に接触させた状態で、第一の加熱処理を施すことで、両金属面間を錫ナノ粒子と、銀ナノ粒子とで形成される低温焼結体層を介して、一旦、固着された状態としている。さらに、その後、第二の加熱処理工程を施すことで、錫ナノ粒子と、銀ナノ粒子とで形成される低温焼結体層中の錫ナノ粒子の熔融を進めると、全体が目的とする組成のSn−Ag系合金、Sn−Ag−Cu系合金に速やかに合金化され、接合面全体に良好なハンダ接合が達成される。特に、第一の加熱処理工程の段階で、インク状のハンダ組成物と接触する金属面は、配合されているフラックス成分が作用するため、供に、清浄な表面となっている。その結果、第二の加熱処理によりハンダ接合が形成される際には、界面には、全く酸化皮膜が残留してなく、極めて、高い接合強度が達成される。
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。これらの実施例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定を受けるものではない。
(実施例1)
錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、ロジン銅塩、およびフラックス成分として、水添ロジンを添加して、下記の手順でインク状のハンダ組成物を調製する。
錫ナノ粒子の原料として、市販されている錫ナノ粒子分散液、具体的には、平均粒径42nmの錫ナノ粒子 10質量部を、分散溶媒のトルエン(沸点110.6℃、比重d4 20=0.867) 90質量部中に分散している、錫ナノコロイド(新光化学工業(株))を使用している。銀ナノ粒子の原料として、ドデシルアミン(分子量185.36、融点28.3℃、沸点248℃、比重d4 40=0.7841)7質量部をトルエン 58質量部中に溶解した分散溶媒中に、平均粒子径3nmの銀ナノ粒子 35質量部を分散している、市販されている銀ナノ粒子分散液(商品名:独立分散超微粒子Ag1T 真空冶金製)を使用している。該銀ナノ粒子分散液中では、アルキルアミンである、ドデシルアミンがアミノ基の窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、銀原子に対する配位的な結合を介して、銀ナノ粒子表面に被覆分子層を形成している。従って、表面に被覆分子層を形成するドデシルアミンを分散剤として、分散溶媒中に、銀ナノ粒子は均一に分散されている。ロジン銅塩(アビエチン酸の銅(II)塩)の原料には、ロジン銅塩のトルエン溶液(濃度20wt%、銅含有量1.91wt%)を利用している。
また、フラックス剤として添加される、水添ロジン(分子量304)の原料には、水添ロジン22.9質量%のトルエン溶液を使用している。
先ず、100mlのナス型フラスコ中に、錫ナノコロイド(Sn10wt%含有)30質量部、銀超微粒子分散液Ag1T(Ag40.2wt%含有)0.22質量部、ロジン銅塩のトルエン溶液(濃度20wt%、銅含有量1.91wt%)0.80質量部、水添ロジンのトルエン溶液(濃度22.9wt%)1.67質量部を加え、混合し、40℃で1時間攪拌する。攪拌終了後、減圧濃縮により、分散溶媒のトルエンを脱溶剤する。前記脱溶剤後の混合物は、錫ナノ粒子3質量部当たり、銀ナノ粒子0.09質量部、ドデシルアミン0.016質量部、水添ロジン0.38質量部が含まれている。
この脱溶剤後の混合物 3.11質量部当たり、分散溶媒として、N14(テトラデカン、粘度2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、比重d4 20=0.7924、日鉱石油化学製)を27.3質量部添加する。その後、室温(25℃)で攪拌して、均一な分散液とする。攪拌終了後、0.2μmメンブランフィルターで分散液の濾過を行った。
得られる分散液は、液粘度(B型回転粘度計、測定温度20℃)10mPa・sの高流動性組成物であり、均一な黒色のインク状のハンダ組成物である。該ハンダ組成物中における、錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、ロジン銅塩中の銅の配合比率:WSn:WAg:WCuは、96.5:3:0.5であり、Sn−Ag−Cu合金ハンダに適する比率となっている。金属錫の融点232℃に対して、この比率のSn−Ag−Cu合金の融点は、219℃である。錫の密度(20℃):7.265g・cm-3、銀の密度(20℃):10.49g・cm-3、錫ナノ粒子の平均粒子径d1=42nmと銀ナノ粒子の平均粒子径d2=3nmの比率d1:d2=42:3を考慮すると、錫ナノ粒子の個数N1と銀ナノ粒子の個数N2の比率:N1:N2は、18:1060と見積もられる。インク状のハンダ組成物中、錫ナノ粒子と銀ナノ粒子と、分散溶媒の体積比率は、0.4:35である。

作製されたインク状のハンダ組成物を利用して、基板上の銅パッド上に、Snメッキ電極を有する3216チップ部品をハンダ接合した。予め、基板上の銅パッドを2.5N硫酸で洗浄し、水洗後、乾燥する。前記の酸洗処理により、銅パッドの表面の酸化皮膜が除去される。この銅パッド表面に、インクジェット装置を用いて、インク状のハンダ組成物をインクジェット印刷する。印刷されたインク状のハンダ組成物の塗布膜厚は、約100μmであった。
銅パッド上のインク状のハンダ組成物の塗布膜上に、3216チップ部品を、そのSnメッキ電極が密着する形状で載せる。220℃、5分間、その後、270℃、3分間の加熱処理を行う。220℃に加熱する間に、フラックス剤による金属表面の酸化皮膜の除去がなされる。同時に、この加熱処理に伴って、銀ナノ粒子表面の被覆分子層を構成するドデシルアミンの離脱がなされる。加えて、溶解しているロジン銅塩(アビエチン酸の銅(II)塩)は、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子の表面において、下記の置換型還元反応によって、金属錫表面に銅原子を析出させる。錫ナノ粒子の金属錫表面に析出する銅原子は、一旦、錫ナノ粒子表面を覆う被膜層を構成する。
[(C19H29COO)2Cu:Cu(OOCH29C192]→2(C1929COO-2Cu2+
(C1929COO-2Cu2++Sn → Cu+(C1929COO-2Sn2+

結果的に、清浄な表面を示す銅パッド上に、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子と、銀ナノ粒子が沈積して、緻密に積層した状態となる。錫ナノ粒子、銀ナノ粒子相互が金属面を接する部位では、融着が進行し、また、銅パッド表面と接する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子は、銅表面との接触部位では、同じく融着が進行する。特に、その表面の銅原子の被膜層が生成している錫ナノ粒子と、銅表面との接触部位では、より密な融着が進行する。一方、インク状のハンダ組成物の塗布膜上に載せられている、3216チップ部品のSnメッキ電極の表面も、清浄な金属面が露呈された状態となる。分散溶媒のテトラデカンが蒸散すると、緻密に積層した状態の錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層の上面に、Snメッキ電極の表面が密に接する状態となる。このSnメッキ電極の表面に接する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子は、錫メッキ表面との接触部位では、同じく融着が進行する。
次に、270℃、3分間の加熱(リフロー)処理では、既に相互融着がなされている錫ナノ粒子、銅原子の被覆層が有する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層において、金属錫の融点を超える結果、全体に融解が進み、合金化が進行する。従って、生成するSn−Ag−Cu合金によって、銅パッドの表面、Snメッキ電極の表面が濡れた状態が達成され、ハンダ接合がなされる。この段階において、ハンダ接合部位における、Sn−Ag−Cu合金層の層厚は、10μmに相当している。
このハンダ接合部位の面積サイズ0.8mm2の条件において、3216チップ部品のダイシェア強度を測定すると、室温で、50Nの高強度を示した。さらに、200℃において、ダイシェア強度を測定すると、38Nであり、十分に高い接合強度を維持している。
(実施例2)
錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、ロジン銅塩およびフラックス成分として、水添ロジンを添加して、下記の手順でインク状のハンダ組成物を調製する。
錫ナノ粒子の原料として、市販されている錫ナノ粒子分散液、具体的には、平均粒径42nmの錫ナノ粒子 10質量部を、分散溶媒のトルエン(沸点110.6℃、比重d4 20=0.867) 90質量部中に分散している、錫ナノコロイド(新光化学工業(株))を使用している。銀ナノ粒子の原料として、ドデシルアミン(分子量185.36、融点28.3℃、沸点248℃、比重d4 40=0.7841)7質量部をトルエン 52.8質量部中に溶解した分散溶媒中に、平均粒子径10nmの銀ナノ粒子 40.2質量部を分散している、市販されている銀ナノ粒子分散液(商品名:独立分散超微粒子Ag1T 真空冶金製)を使用している。該銀ナノ粒子分散液中では、アルキルアミンである、ドデシルアミンがアミノ基の窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、銀原子に対する配位的な結合を介して、銀ナノ粒子表面に被覆分子層を形成している。従って、表面に被覆分子層を形成するドデシルアミンを分散剤として、分散溶媒中に、銀ナノ粒子は均一に分散されている。ロジン銅塩(アビエチン酸の銅(II)塩)の原料には、ロジン銅塩のトルエン溶液(濃度20wt%、銅含有量1.91wt%)を利用している。
また、フラックス剤として添加される、水添ロジン(分子量304)の原料には、水添ロジン22.9質量%のトルエン溶液を使用している。
先ず、100mlのナス型フラスコ中に、錫ナノコロイド(Sn10wt%含有)100質量部、銀超微粒子分散液Ag1T(Ag40.2wt%含有)0.773質量部、ロジン銅塩のトルエン溶液(濃度20wt%、銅含有量1.91wt%)2.71質量部、水添ロジンのトルエン溶液(濃度22.9wt%)5.59質量部を加え、混合し、40℃で1時間攪拌する。攪拌終了後、減圧濃縮により、分散溶媒のトルエンを脱溶剤する。前記脱溶剤後の混合物は、錫ナノ粒子10質量部当たり、銀ナノ粒子0.311質量部、ロジン銅塩(銅含有量換算)0.0518質量部、ドデシルアミン0.054質量部、水添ロジン1.28質量部が含まれている。
この脱溶剤後の混合物 3.11質量部当たり、分散溶媒として、N14(テトラデカン、粘度2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、比重d4 20=0.7924、日鉱石油化学製)を27.3質量部添加する。その後、室温(25℃)で攪拌して、均一な分散液とする。攪拌終了後、0.2μmメンブランフィルターで分散液の濾過を行った。
得られる分散液は、液粘度(B型回転粘度計、測定温度20℃)15mPa・sの高流動性組成物であり、均一な黒色のインク状のハンダ組成物である。該ハンダ組成物中における、錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、ロジン銅塩中の銅の配合比率:WSn:WAg:WCuは、96.5:3:0.5であり、Sn−Ag−Cu合金ハンダに適する比率となっている。金属錫の融点232℃に対して、この比率のSn−Ag−Cu合金の融点は、219℃である。錫の密度(20℃):7.265g・cm-3、銀の密度(20℃):10.49g・cm-3、錫ナノ粒子の平均粒子径d1=42nmと銀ナノ粒子の平均粒子径d2=10nmの比率d1:d2=42:10を考慮すると、錫ナノ粒子の個数N1と銀ナノ粒子の個数N2の比率:N1:N2は、18:29と見積もられる。インク状のハンダ組成物中、錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、ならびに、ロジン銅塩由来の銅の合計と、分散溶媒との体積比率は、0.4:35である。
作製されたインク状のハンダ組成物を利用して、基板上の銅パッド上に、Snメッキ電極を有する3216チップ部品をハンダ接合した。予め、基板上の銅パッドを2.5N硫酸で洗浄し、水洗後、乾燥する。前記の酸洗処理により、銅パッドの表面の酸化皮膜が除去される。この銅パッド表面に、インクジェット装置を用いて、インク状のハンダ組成物をインクジェット印刷する。印刷されたインク状のハンダ組成物の塗布膜厚は、約100μmであった。
銅パッド上のインク状のハンダ組成物の塗布膜上に、3216チップ部品を、そのSnメッキ電極が密着する形状で載せる。220℃、10分間、その後、270℃、3分間の加熱処理を行う。220℃に加熱する間に、フラックス剤による金属表面の酸化皮膜の除去がなされる。同時に、この加熱処理に伴って、銀ナノ粒子表面の被覆分子層を構成するドデシルアミンの離脱がなされる。加えて、溶解しているロジン銅塩(アビエチン酸の銅(II)塩)は、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子の表面において、下記の置換型還元反応によって、金属錫表面に銅原子を析出させる。錫ナノ粒子の金属錫表面に析出する銅原子は、一旦、錫ナノ粒子表面を覆う被膜層を構成する。
[(C19H29COO)2Cu:Cu(OOCH29C19)]→2(C1929COO-2Cu2+
(C1929COO-2Cu2++Sn → Cu+(C1929COO-2Sn2+

結果的に、清浄な表面を示す銅パッド上に、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子と、銀ナノ粒子が沈積して、緻密に積層した状態となる。錫ナノ粒子、銀ナノ粒子相互が金属面を接する部位では、融着が進行し、また、銅パッド表面と接する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子は、銅表面との接触部位では、同じく融着が進行する。特に、その表面の銅原子の被膜層が生成している錫ナノ粒子と、銅表面との接触部位では、より密な融着が進行する。一方、インク状のハンダ組成物の塗布膜上に載せられている、3216チップ部品のSnメッキ電極の表面も、清浄な金属面が露呈された状態となる。分散溶媒のテトラデカンが蒸散すると、緻密に積層した状態の錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層の上面に、Snメッキ電極の表面が密に接する状態となる。このSnメッキ電極の表面に接する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子は、錫メッキ表面との接触部位では、同じく融着が進行する。
次に、270℃、3分間の加熱(リフロー)処理では、既に相互融着がなされている錫ナノ粒子、銅原子の被覆層が有する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層において、金属錫の融点を超える結果、全体に融解が進み、合金化が進行する。従って、生成するSn−Ag−Cu合金によって、銅パッドの表面、Snメッキ電極の表面が濡れた状態が達成され、ハンダ接合がなされる。この段階において、ハンダ接合部位における、Sn−Ag−Cu合金層の層厚は、10μmに相当している。
このハンダ接合部位の面積サイズ0.8mm2の条件において、3216チップ部品のダイシェア強度を測定すると、室温で、40Nの高強度を示した。さらに、200℃において、ダイシェア強度を測定すると、35Nであり、十分に高い接合強度を維持している。
(実施例3)
錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、およびフラックス成分として、水添ロジンを添加して、下記の手順でインク状のハンダ組成物を調製する。
錫ナノ粒子の原料として、市販されている錫ナノ粒子分散液、具体的には、平均粒径42nmの錫ナノ粒子 10質量部を、分散溶媒のトルエン(沸点110.6℃、比重d4 20=0.867) 90質量部中に分散している、錫ナノコロイド(新光化学工業(株))を使用している。銀ナノ粒子の原料として、ドデシルアミン(分子量185.36、融点28.3℃、沸点248℃、比重d4 40=0.7841)7質量部をトルエン 52.8質量部中に溶解した分散溶媒中に、平均粒子径10nmの銀ナノ粒子 40.2質量部を分散している、市販されている銀ナノ粒子分散液(商品名:独立分散超微粒子Ag1T 真空冶金製)を使用している。該銀ナノ粒子分散液中では、アルキルアミンである、ドデシルアミンがアミノ基の窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、銀原子に対する配位的な結合を介して、銀ナノ粒子表面に被覆分子層を形成している。従って、表面に被覆分子層を形成するドデシルアミンを分散剤として、分散溶媒中に、銀ナノ粒子は均一に分散されている。
また、フラックス剤として添加される、水添ロジン(分子量304)の原料には、22.9質量%のトルエン溶液を使用している。
先ず、100mlのナス型フラスコ中に、錫ナノコロイド(Sn10wt%含有)100質量部、銀超微粒子分散液Ag1T(Ag40.2wt%含有)0.77質量部、水添ロジンのトルエン溶液(濃度22.9wt%)5.56質量部を加え、混合し、40℃で1時間攪拌する。攪拌終了後、減圧濃縮により、分散溶媒のトルエンを脱溶剤する。前記脱溶剤後の混合物は、錫ナノ粒子10質量部当たり、銀ナノ粒子0.31質量部、ドデシルアミン0.054質量部、水添ロジン1.27質量部が含まれている。
この脱溶剤後の混合物 3.11質量部当たり、分散溶媒として、N14(テトラデカン、粘度2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、比重d4 20=0.7924、日鉱石油化学製)を27.3質量部添加する。その後、室温(25℃)で攪拌して、均一な分散液とする。攪拌終了後、0.2μmメンブランフィルターで分散液の濾過を行った。
得られる分散液は、液粘度(B型回転粘度計、測定温度20℃)13mPa・sの高流動性組成物であり、均一な黒色のインク状のハンダ組成物である。該ハンダ組成物中における、錫ナノ粒子と銀ナノ粒子の配合比率:WSn:WAgは、97:3であり、Sn−Ag合金ハンダに適する比率となっている。金属錫の融点232℃に対して、この比率のSn−Ag合金の融点は、221 ℃である。錫の密度(20℃):7.265g・cm-3、銀の密度(20℃):10.49g・cm-3、錫ナノ粒子の平均粒子径d1=42nmと銀ナノ粒子の平均粒子径d2=10nmの比率d1:d2=42:10を考慮すると、錫ナノ粒子の個数N1と銀ナノ粒子の個数N2の比率:N1:N2は、18:29と見積もられる。インク状のハンダ組成物中、錫ナノ粒子と銀ナノ粒子と、分散溶媒との体積比率は、0.4:35である。
作製されたインク状のハンダ組成物を利用して、基板上の銅パッド上に、Snメッキ電極を有する3216チップ部品をハンダ接合した。予め、基板上の銅パッドを2.5N硫酸で洗浄し、水洗後、乾燥する。前記の酸洗処理により、銅パッドの表面の酸化皮膜が除去される。この銅パッド表面に、インクジェット装置を用いて、インク状のハンダ組成物をインクジェット印刷する。印刷されたインク状のハンダ組成物の塗布膜厚は、約100μmであった。
銅パッド上のインク状のハンダ組成物の塗布膜上に、3216チップ部品を、そのSnメッキ電極が密着する形状で載せる。220℃、10分間、その後、270℃、3分間の加熱処理を行う。220℃に加熱する間に、フラックス剤による金属表面の酸化皮膜の除去がなされる。同時に、この加熱処理に伴って、銀ナノ粒子表面の被覆分子層を構成するドデシルアミンの離脱がなされる。
結果的に、清浄な表面を示す銅パッド上に、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子と、銀ナノ粒子が沈積して、緻密に積層した状態となる。錫ナノ粒子、銀ナノ粒子相互が金属面を接する部位では、融着が進行し、また、銅パッド表面と接する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子は、銅表面との接触部位では、同じく融着が進行する。一方、インク状のハンダ組成物の塗布膜上に載せられている、3216チップ部品のSnメッキ電極の表面も、清浄な金属面が露呈された状態となる。分散溶媒のテトラデカンが蒸散すると、緻密に積層した状態の錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層の上面に、Snメッキ電極の表面が密に接する状態となる。このSnメッキ電極の表面に接する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子は、錫メッキ表面との接触部位では、同じく融着が進行する。
次に、270℃、3分間の加熱(リフロー)処理では、既に相互融着がなされている錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層において、金属錫の融点を超える結果、全体に融解が進み、合金化が進行する。従って、生成するSn−Ag合金によって、銅パッドの表面、Snメッキ電極の表面が濡れた状態が達成され、ハンダ接合がなされる。この段階において、ハンダ接合部位における、Sn−Ag合金層の層厚は、13μmに相当している。
このハンダ接合部位の面積サイズ0.8mm2の条件において、3216チップ部品のダイシェア強度を測定すると、室温で、50Nの高強度を示した。さらに、200℃において、ダイシェア強度を測定すると、36 Nであり、十分に高い接合強度を維持している。
(実施例4)
錫ナノ粒子、二種類の銀ナノ粒子、およびフラックス成分として、水添ロジンを添加して、下記の手順でインク状のハンダ組成物を調製する。
錫ナノ粒子の原料として、市販されている錫ナノ粒子分散液、具体的には、平均粒径42nmの錫ナノ粒子 10質量部を、分散溶媒のトルエン(沸点110.6℃、比重d4 20=0.867) 90質量部中に分散している、錫ナノコロイド(新光化学工業(株))を使用している。銀ナノ粒子の原料として、平均粒子径が5nmと、30nmと異なる二種の銀ナノ粒子をそれぞれ含む銀ナノ粒子分散液を使用している。
平均粒子径5nmの銀ナノ粒子の分散液には、ドデシルアミン(分子量185.36、融点28.3℃、沸点248℃、比重d4 40=0.7841)7質量部をトルエン 52.8質量部中に溶解した分散溶媒中に、平均粒子径5nmの銀ナノ粒子 40.2質量部を分散している、市販されている銀ナノ粒子分散液(商品名:独立分散超微粒子Ag1T 真空冶金製)を使用している。該銀ナノ粒子分散液中では、アルキルアミンである、ドデシルアミンがアミノ基の窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、銀原子に対する配位的な結合を介して、銀ナノ粒子表面に被覆分子層を形成している。従って、表面に被覆分子層を形成するドデシルアミンを分散剤として、分散溶媒中に、銀ナノ粒子は均一に分散されている。
一方、平均粒子径30nmの銀ナノ粒子の分散液は、次の方法で調製されている。前記平均粒子径5nmの銀ナノ粒子を核粒子として、その表面に湿式還元により銀を析出させ、平均粒子径30nmの銀ナノ粒子としている。その際、銀原料として、有機酸銀(II)塩のオレイン酸銀を、還元剤として、ヒドラジンを利用し、溶媒エタノール中において還元を行い、その反応液中に添加されている銀ナノ粒子の表面を核として、銀原子の析出層を形成する。前記溶媒中において、平均粒子径5nmの銀ナノ粒子の表面を被覆するドデシルアミンが離脱し、露出する表面に銀原子が選択的に析出する。その銀析出層の膜厚は、広い分布を有するが、平均粒子径は30nmの銀ナノ粒子が形成される。また、作製される平均粒子径30nmの銀ナノ粒子の表面は、分散剤として機能する、エタノールアミンにより被覆された状態となっている。反応液から分離した後、平均粒子径30nmの銀ナノ粒子 40質量部を、分散溶媒のトルエン 60質量部中に分散した分散液を調製する。
また、フラックス剤として添加される、水添ロジン(分子量304)の原料には、水添ロジン22.9質量%のトルエン溶液を使用している。
先ず、100mlのナス型フラスコ中に、錫ナノコロイド(Sn10wt%含有)100質量部、銀超微粒子分散液Ag1T(Ag40.2wt%含有)0.0769質量部、平均粒子径30nmの銀ナノ粒子分散液(Ag40wt%含有)0.696質量部、水添ロジンのトルエン溶液(濃度22.9wt%)5.56質量部を加え、混合し、40℃で1時間攪拌する。攪拌終了後、減圧濃縮により、分散溶媒のトルエンを脱溶剤する。前記脱溶剤後の混合物は、錫ナノ粒子10質量部当たり、銀ナノ粒子0.31質量部、ドデシルアミン0.054質量部、水添ロジン1.27質量部が含まれている。
この脱溶剤後の混合物 3.11質量部当たり、分散溶媒として、N14(テトラデカン、粘度2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、比重d4 20=0.7924、日鉱石油化学製)を27.3質量部添加する。その後、室温(25℃)で攪拌して、均一な分散液とする。攪拌終了後、0.2μmメンブランフィルターで分散液の濾過を行った。
得られる分散液は、液粘度(B型回転粘度計、測定温度20℃)11mPa・sの高流動性組成物であり、均一な黒色のインク状のハンダ組成物である。該ハンダ組成物中における、錫ナノ粒子と二種の銀ナノ粒子の合計の配合比率:WSn:WAgは、97:3であり、Sn−Ag合金ハンダに適する比率となっている。金属錫の融点232℃に対して、この比率のSn−Ag合金の融点は、221℃である。錫の密度(20℃):7.265g・cm-3、銀の密度(20℃):10.49g・cm-3、錫ナノ粒子の平均粒子径d1=42nmと、平均粒子径5nmの銀ナノ粒子の平均粒子径d2=5nmの比率d1:d2=42:5を考慮すると、錫ナノ粒子の個数N1と平均粒子径5nmの銀ナノ粒子の個数N2の比率:N1:N2は、18:33と見積もられる。また、錫ナノ粒子の個数N1と平均粒子径30nmの銀ナノ粒子の個数N3の比率:N1:N3は、18:1.3と見積もられる。平均粒子径5nmの銀ナノ粒子の個数N2と平均粒子径30nmの銀ナノ粒子の個数N3の比率:N2:N3は、33:1.3と見積もられ、配合される銀ナノ粒子の個数の95%は、平均粒子径5nmの銀ナノ粒子が占めている。換言するならば、大多数は、平均粒子径5nmの銀ナノ粒子である中に、平均粒子径30nmの銀ナノ粒子を僅かな個数、さらに加えている状態に相当している。
なお、インク状のハンダ組成物中、錫ナノ粒子と銀ナノ粒子と、分散溶媒との体積比率は、0.4:35である。
作製されたインク状のハンダ組成物を利用して、基板上の銅パッド上に、Snメッキ電極を有する3216チップ部品をハンダ接合した。予め、基板上の銅パッドを2.5N硫酸で洗浄し、水洗後、乾燥する。前記の酸洗処理により、銅パッドの表面の酸化皮膜が除去される。この銅パッド表面に、インクジェット装置を用いて、インク状のハンダ組成物をインクジェット印刷する。印刷されたインク状のハンダ組成物の塗布膜厚は、約100μmであった。
銅パッド上のインク状のハンダ組成物の塗布膜上に、3216チップ部品を、そのSnメッキ電極が密着する形状で載せる。220℃、10分間、その後、270℃、3分間の加熱処理を行う。220℃に加熱する間に、フラックス剤による金属表面の酸化皮膜の除去がなされる。同時に、この加熱処理に伴って、平均粒子径5nmの銀ナノ粒子表面の被覆分子層を構成するドデシルアミンの離脱がなされる。また、平均粒子径30nmの銀ナノ粒子表面を被覆する分散剤層を構成するエタノールアミンの離脱もなされる。
結果的に、清浄な表面を示す銅パッド上に、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子と、平均粒子径5nmの銀ナノ粒子、平均粒子径30nmの銀ナノ粒子が沈積して、緻密に積層した状態となる。その際、平均粒子径30nmの銀ナノ粒子の個数は僅かであるため、銅パッド表面と接する確率は、僅かである。錫ナノ粒子、銀ナノ粒子相互が金属面を接する部位では、融着が進行し、また、銅パッド表面と接する錫ナノ粒子、平均粒子径5nmの銀ナノ粒子は、銅表面との接触部位では、同じく融着が進行する。一方、インク状のハンダ組成物の塗布膜上に載せられている、3216チップ部品のSnメッキ電極の表面も、清浄な金属面が露呈された状態となる。分散溶媒のテトラデカンが蒸散すると、緻密に積層した状態の錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層の上面に、Snメッキ電極の表面が密に接する状態となる。このSnメッキ電極の表面に接する錫ナノ粒子、平均粒子径5nmの銀ナノ粒子は、錫メッキ表面との接触部位では、同じく融着が進行する。
次に、270℃、3分間の加熱(リフロー)処理では、既に相互融着がなされている錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層において、金属錫の融点を超える結果、全体に融解が進み、合金化が進行する。従って、生成するSn−Ag合金によって、銅パッドの表面、Snメッキ電極の表面が濡れた状態が達成され、ハンダ接合がなされる。この段階において、ハンダ接合部位における、Sn−Ag合金層の層厚は、15μmに相当している。
このハンダ接合部位の面積サイズ0.8mm2の条件において、3216チップ部品のダイシェア強度を測定すると、室温で、45Nの高強度を示した。さらに、200℃において、ダイシェア強度を測定すると、30Nであり、十分に高い接合強度を維持している。

(参考例1)
錫ナノ粒子、2−エチルヘキサン酸銀(II)、およびフラックス成分として、水添ロジンを添加して、下記の手順でペースト状のハンダ組成物を調製する。
錫ナノ粒子の原料として、市販されている錫ナノ粒子分散液、具体的には、平均粒径42nmの錫ナノ粒子 10質量部を、分散溶媒のトルエン(沸点110.6℃、比重d4 20=0.867) 90質量部中に分散している、錫ナノコロイド(新光化学工業(株))を使用している。2−エチルヘキサン酸銀(II)の原料として、2−エチルヘキサン酸銀(II)((CH3-CH2-CH2-CH2-CH(C2H5)-COO)2Ag)を、ジブチルアミノプロピルアミン(沸点205℃、比重d4 20=0.827)中に濃度4.89wt%で溶解した溶液(Ag2.1wt%含有)を使用している。
また、フラックス剤として添加される、水添ロジン(分子量304)の原料には、22.9質量%のトルエン溶液を使用している。
先ず、100mlのナス型フラスコ中に、錫ナノコロイド(Sn10wt%含有)100質量部、2−エチルヘキサン酸銀(II)のジブチルアミノプロピルアミン溶液(Ag2.1wt%含有)14.71質量部、水添ロジンのトルエン溶液(濃度22.9wt%)5.56質量部を加え、混合し、40℃で1時間攪拌する。攪拌終了後、減圧濃縮により、分散溶媒のトルエンを脱溶剤する。前記脱溶剤後の混合物は、錫ナノ粒子10質量部当たり、2−エチルヘキサン酸銀(II)0.31質量部、ジブチルアミノプロピルアミン14.4質量部、水添ロジン1.27質量部が含まれている。
この脱溶剤後の混合物中、デカリンを除く部分の3.11質量部当たり、分散溶媒として、N14(テトラデカン、粘度2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、比重d4 20=0.7924、日鉱石油化学製)を27.3質量部添加する。その後、室温(25℃)で攪拌して、均一な分散液とする。攪拌終了後、0.2μmメンブランフィルターで分散液の濾過を行った。
得られる分散液は、液粘度(B型回転粘度計、測定温度20℃)20mPa・sの高流動性組成物であり、均一な黒色のインク状のハンダ組成物である。該ハンダ組成物中における、錫ナノ粒子と2−エチルヘキサン酸銀(II)由来の銀の配合比率:WSn:WAgは、97:3であり、Sn−Ag合金ハンダに適する比率となっている。金属錫の融点232℃に対して、この比率のSn−Ag合金の融点は、221℃である。
なお、インク状のハンダ組成物中、錫ナノ粒子と、分散溶媒との体積比率は、0.4:35である。
作製されたインク状のハンダ組成物を利用して、基板上の銅パッド上に、Snメッキ電極を有する3216チップ部品をハンダ接合した。予め、基板上の銅パッドを2.5N硫酸で洗浄し、水洗後、乾燥する。前記の酸洗処理により、銅パッドの表面の酸化皮膜が除去される。この銅パッド表面に、インクジェット装置を用いて、インク状のハンダ組成物を塗布する。インク状のハンダ組成物の塗布膜厚は、約120μmであった。
銅パッド上のインク状のハンダ組成物の塗布膜上に、3216チップ部品を、そのSnメッキ電極が密着する形状で載せる。220℃、30分間、その後、270℃、3分間の加熱処理を行う。220℃に加熱する間に、フラックス剤による金属表面の酸化皮膜の除去がなされる。同時に、この加熱処理に伴って、2−エチルヘキサン酸銀(II)から、例えば、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子の表面においては、下記の置換型還元反応によって、金属錫表面に銀原子が析出する。錫ナノ粒子の金属錫表面に析出する銀原子は、一旦、錫ナノ粒子表面を覆う被膜層を構成する。

(C715COO-2Ag2++Sn → Ag+(C715COO-2Sn2+

加えて、一部、2−エチルヘキサン酸銀(II)の熱分解に因って、銀原子が遊離し、相互に凝集して、銀ナノ粒子が系内で生成する。
結果的に、清浄な表面を示す銅パッド上に、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子、表面に銀被覆層が生成されている錫ナノ粒子、系内で生成する銀ナノ粒子が沈積して、緻密に積層した状態となる。錫ナノ粒子、銀ナノ粒子相互が金属面を接する部位では、融着が進行し、また、銅パッド表面と接する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子は、銅表面との接触部位では、同じく融着が進行する。一方、ペースト状のハンダ組成物の塗布膜上に載せられている、3216チップ部品のSnメッキ電極の表面も、清浄な金属面が露呈された状態となる。分散溶媒のテトラデカンが蒸散すると、緻密に積層した状態の錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層の上面に、Snメッキ電極の表面が密に接する状態となる。このSnメッキ電極の表面に接する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子は、錫メッキ表面との接触部位では、同じく融着が進行する。
次に、270℃、3分間の加熱(リフロー)処理では、既に相互融着がなされている錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層において、金属錫の融点を超える結果、全体に融解が進み、合金化が進行する。従って、生成するSn−Ag合金によって、銅パッドの表面、Snメッキ電極の表面が濡れた状態が達成され、ハンダ接合がなされる。この段階において、ハンダ接合部位における、Sn−Ag合金層の層厚は、13μmに相当している。
このハンダ接合部位の面積サイズ0.8mm2の条件において、3216チップ部品のダイシェア強度を測定すると、室温で、48Nの高強度を示した。さらに、200℃において、ダイシェア強度を測定すると、31Nであり、十分に高い接合強度を維持している。

(参考例2)
錫ナノ粒子、2−エチルヘキサン酸銀(II)、およびフラックス成分として、水添ロジンを添加して、下記の手順でペースト状のハンダ組成物を調製する。
錫ナノ粒子の原料として、市販されている錫ナノ粒子分散液、具体的には、平均粒径42nmの錫ナノ粒子 10質量部を、分散溶媒のトルエン(沸点110.6℃、比重d4 20=0.867) 90質量部中に分散している、錫ナノコロイド(新光化学工業(株))を使用している。2−エチルヘキサン酸銀(II)の原料として、2−エチルヘキサン酸銀(II)((CH3-CH2-CH2-CH2-CH(C2H5)-COO)2Ag)を、有機溶媒のデカリン(cis-体:沸点195.7℃、比重d4 20=0.8963)中に濃度4.89wt%で溶解した溶液(Ag2.1wt%含有)を使用している。
また、フラックス剤として添加される、水添ロジン(分子量304)の原料には、水添ロジン22.9質量%のトルエン溶液を使用している。
先ず、100mlのナス型フラスコ中に、錫ナノコロイド(Sn10wt%含有)100質量部、2−エチルヘキサン酸銀(II)のデカリン溶液(Ag2.1wt%含有)14.71質量部、水添ロジンのトルエン溶液(濃度22.9wt%)5.56質量部を加え、混合し、40℃で1時間攪拌する。攪拌終了後、減圧濃縮により、分散溶媒のトルエンを脱溶剤する。前記脱溶剤後の混合物は、錫ナノ粒子10質量部当たり、2−エチルヘキサン酸銀(II)0.31質量部、デカリン14.4質量部、水添ロジン1.27質量部が含まれている。
この脱溶剤後の混合物中、デカリンを除く部分の3.11質量部当たり、分散溶媒として、N14(テトラデカン、粘度2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、比重d4 20=0.7924、日鉱石油化学製)を27.3質量部添加する。その後、室温(25℃)で攪拌して、均一な分散液とする。攪拌終了後、0.2μmメンブランフィルターで分散液の濾過を行った。
得られる分散液は、液粘度(B型回転粘度計、測定温度20℃)500mPa・sの低流動性組成物であり、均一な黒色のペースト状のハンダ組成物である。該ハンダ組成物中における、錫ナノ粒子と2−エチルヘキサン酸銀(II)由来の銀の配合比率:WSn:WAgは、97:3であり、Sn−Ag合金ハンダに適する比率となっている。金属錫の融点232℃に対して、この比率のSn−Ag合金の融点は、221℃である。
なお、ペースト状のハンダ組成物中、錫ナノ粒子と、分散溶媒との体積比率は、0.4:35である。
作製されたペースト状のハンダ組成物を利用して、基板上の銅パッド上に、Snメッキ電極を有する3216チップ部品をハンダ接合した。予め、基板上の銅パッドを2.5N硫酸で洗浄し、水洗後、乾燥する。前記の酸洗処理により、銅パッドの表面の酸化皮膜が除去される。この銅パッド表面に、ディスペンサーを用いて、ペースト状のハンダ組成物を塗布する。ペースト状のハンダ組成物の塗布膜厚は、約120μmであった。
銅パッド上のペースト状のハンダ組成物の塗布膜上に、3216チップ部品を、そのSnメッキ電極が密着する形状で載せる。220℃、30分間、その後、270℃、3分間の加熱処理を行う。220℃に加熱する間に、フラックス剤による金属表面の酸化皮膜の除去がなされる。同時に、この加熱処理に伴って、2−エチルヘキサン酸銀(II)から、例えば、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子の表面においては、下記の置換型還元反応によって、金属錫表面に銀原子が析出する。錫ナノ粒子の金属錫表面に析出する銀原子は、一旦、錫ナノ粒子表面を覆う被膜層を構成する。

(C715COO-2Ag2++Sn → Ag+(C715COO-2Sn2+

加えて、2−エチルヘキサン酸銀(II)の熱分解に因って、銀原子が遊離し、相互に凝集して、銀ナノ粒子が系内で生成する。
結果的に、清浄な表面を示す銅パッド上に、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子、表面に銀被覆層が生成されている錫ナノ粒子、系内で生成する銀ナノ粒子が沈積して、緻密に積層した状態となる。錫ナノ粒子、銀ナノ粒子相互が金属面を接する部位では、融着が進行し、また、銅パッド表面と接する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子は、銅表面との接触部位では、同じく融着が進行する。一方、ペースト状のハンダ組成物の塗布膜上に載せられている、3216チップ部品のSnメッキ電極の表面も、清浄な金属面が露呈された状態となる。分散溶媒のテトラデカンが蒸散すると、緻密に積層した状態の錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層の上面に、Snメッキ電極の表面が密に接する状態となる。このSnメッキ電極の表面に接する錫ナノ粒子、銀ナノ粒子は、錫メッキ表面との接触部位では、同じく融着が進行する。
次に、270℃、3分間の加熱(リフロー)処理では、既に相互融着がなされている錫ナノ粒子、銀ナノ粒子の混合物層において、金属錫の融点を超える結果、全体に融解が進み、合金化が進行する。従って、生成するSn−Ag合金によって、銅パッドの表面、Snメッキ電極の表面が濡れた状態が達成され、ハンダ接合がなされる。この段階において、ハンダ接合部位における、Sn−Ag合金層の層厚は、15μmに相当している。
このハンダ接合部位の面積サイズ0.8mm2の条件において、3216チップ部品のダイシェア強度を測定すると、室温で、48Nの高強度を示した。さらに、200℃において、ダイシェア強度を測定すると、32Nであり、十分に高い接合強度を維持している。

(比較例1)
錫ナノ粒子、銀粒子、ロジン銅塩、およびフラックス成分として、水添ロジンを添加して、下記の手順でインク状のハンダ組成物を調製する。
錫ナノ粒子の原料として、市販されている錫ナノ粒子分散液、具体的には、平均粒径42nmの錫ナノ粒子 10質量部を、分散溶媒のトルエン(沸点110.6℃、比重d4 20=0.867) 90質量部中に分散している、錫ナノコロイド(新光化学工業(株))を使用している。銀粒子の原料として、平均粒子径1μmの銀粒子 40質量部を、トルエン 90質量部中に分散している、銀粒子分散液を使用している。ロジン銅塩(アビエチン酸の銅(II)塩)の原料には、ロジン銅塩のトルエン溶液(濃度20wt%、銅含有量1.91wt%)を利用している。
また、フラックス剤として添加される、水添ロジン(分子量304)の原料には、水添ロジン22.9質量%のトルエン溶液を使用している。
先ず、100mlのナス型フラスコ中に、錫ナノコロイド(Sn10wt%含有)100質量部、銀粒子分散液(Ag40wt%含有)0.773質量部、ロジン銅塩(トルエン溶液、20%、銅含有用1.91%)を2.71重量部、水添ロジンのトルエン溶液(濃度22.9wt%)5.59質量部を加え、混合し、40℃で1時間攪拌する。攪拌終了後、減圧濃縮により、分散溶媒のトルエンを脱溶剤する。前記脱溶剤後の混合物は、錫ナノ粒子10質量部当たり、銀粒子0.311質量部、ロジン銅塩(銅含有量換算)0.0518質量部、水添ロジン1.28質量部が含まれている。
この脱溶剤後の混合物3.11質量部当たり、分散溶媒として、N14(テトラデカン、粘度2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、比重d4 20=0.7924、日鉱石油化学製)を27.3質量部添加する。その後、室温(25℃)で攪拌して、均一な分散液とする。
得られる分散液は、液粘度(B型回転粘度計、測定温度20℃)12mPa・sの高流動性組成物であり、均一なインク状のハンダ組成物である。該ハンダ組成物中における、錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、ロジン銅塩中の銅の配合比率:WSn:WAg:WCuは、96.5:3:0.5であり、Sn−Ag−Cu合金ハンダに適する比率となっている。金属錫の融点232℃に対して、この比率のSn−Ag−Cu合金の融点は、221℃である。錫の密度(20℃):7.265g・cm-3、銀の密度(20℃):10.49g・cm-3、錫ナノ粒子の平均粒子径d1=42nmと、銀粒子の平均粒子径d2=1μmの比率d1:d2=42:1000を考慮すると、錫ナノ粒子の個数N1と平均粒子径1μmの銀粒子の個数N2の比率:N1:N2は、1800000:3と見積もられる。
なお、インク状のハンダ組成物中、錫ナノ粒子、銀粒子、ならびに、ロジン銅塩由来の銅の合計と、分散溶媒との体積比率は、0.4:35である。
作製されたインク状のハンダ組成物を利用して、基板上の銅パッド上に、Snメッキ電極を有する3216チップ部品のハンダ接合を試みた。予め、基板上の銅パッドを2.5N硫酸で洗浄し、水洗後、乾燥する。前記の酸洗処理により、銅パッドの表面の酸化皮膜が除去される。この銅パッド表面に、ディスペンサーを用いて、インク状のハンダ組成物を塗布する。インク状のハンダ組成物の塗布膜厚は、約140μmであった。
銅パッド上のインク状のハンダ組成物の塗布膜上に、3216チップ部品を、そのSnメッキ電極が密着する形状で載せる。220℃、10分間、その後、270℃、3分間の加熱処理を行う。220℃に加熱する間に、フラックス剤による金属表面の酸化皮膜の除去がなされる。加えて、溶解しているロジン銅塩(アビエチン酸の銅(II)塩)は、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子の表面において、下記の置換型還元反応によって、金属錫表面に銅原子を析出させる。錫ナノ粒子の金属錫表面に析出する銅原子は、一旦、錫ナノ粒子表面を覆う被膜層を構成する。
[(C19H29COO)2Cu:Cu(OOCH29C19)]→2(C1929COO-2Cu2+
(C1929COO-2Cu2++Sn → Cu+(C1929COO-2Sn2+

次に、270℃、3分間の加熱(リフロー)処理では、既に相互融着がなされている錫ナノ粒子の層中に限られた個数の銀粒子が混入している状態で、金属錫の融点を超える結果、錫ナノ粒子の融解は進むが、全体的に均一な組成を示す合金化には達していない。従って、大半の部分では、融解した金属錫によって、銅パッドの表面、Snメッキ電極の表面が濡れた状態となっており、錫単体を用いた接合がなされている。この段階において、ハンダ接合部位における、見かけの合金層の層厚は、17μmに相当している。
この接合部位の面積サイズ0.8mm2の条件において、3216チップ部品のダイシェア強度を測定すると、室温で、7Nの強度しか示していなかった。

(比較例2)
錫ナノ粒子、銀粒子、ロジン銅塩を添加して、下記の手順でインク状のハンダ組成物を調製する。
錫ナノ粒子の原料として、市販されている錫ナノ粒子分散液、具体的には、平均粒径42nmの錫ナノ粒子 10質量部を、分散溶媒のトルエン(沸点110.6℃、比重d4 20=0.867) 90質量部中に分散している、錫ナノコロイド(新光化学工業(株))を使用している。銀粒子の原料として、平均粒子径1μmの銀粒子 40質量部を、トルエン 90質量部中に分散している、銀粒子分散液を使用している。ロジン銅塩(アビエチン酸の銅(II)塩)の原料には、ロジン銅塩のトルエン溶液(濃度20wt%、銅含有量1.91wt%)を利用している。
先ず、100mlのナス型フラスコ中に、錫ナノコロイド(Sn10wt%含有)100質量部、銀粒子分散液(Ag40wt%含有)0.773質量部、ロジン銅塩(トルエン溶液、20%、銅含有用1.91%)を2.71重量部を加え、混合し、40℃で1時間攪拌する。攪拌終了後、減圧濃縮により、分散溶媒のトルエンを脱溶剤する。前記脱溶剤後の混合物は、錫ナノ粒子10質量部当たり、銀粒子0.311質量部、ロジン銅塩(銅含有量換算)0.0518質量部が含まれている。
この脱溶剤後の混合物3.11質量部当たり、分散溶媒として、N14(テトラデカン、粘度2.0〜2.3 mPa・s(20℃)、融点5.86℃、沸点253.57℃、比重d4 20=0.7924、日鉱石油化学製)を27.3質量部添加する。その後、室温(25℃)で攪拌して、均一な分散液とする。
得られる分散液は、液粘度(B型回転粘度計、測定温度20℃)20mPa・sの高流動性組成物であり、均一なインク状のハンダ組成物である。該ハンダ組成物中における、錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、ロジン銅塩中の銅の配合比率:WSn:WAg:WCuは、96.5:3:0.5であり、Sn−Ag−Cu合金ハンダに適する比率となっている。金属錫の融点232℃に対して、この比率のSn−Ag−Cu合金の融点は、219℃である。錫の密度(20℃):7.265g・cm-3、銀の密度(20℃):10.49g・cm-3、錫ナノ粒子の平均粒子径d1=42nmと、銀粒子の平均粒子径d2=1μmの比率d1:d2=42:1000を考慮すると、錫ナノ粒子の個数N1と平均粒子径1μmの銀粒子の個数N2の比率:N1:N2は、1800000:3と見積もられる。
なお、インク状のハンダ組成物中、錫ナノ粒子、銀粒子、ならびに、ロジン銅塩由来の銅の合計と、分散溶媒との体積比率は、0.4:35である。
作製されたインク状のハンダ組成物を利用して、基板上の銅パッド上に、Snメッキ電極を有する3216チップ部品のハンダ接合を試みた。予め、基板上の銅パッドを2.5N硫酸で洗浄し、水洗後、乾燥する。前記の酸洗処理により、銅パッドの表面の酸化皮膜が除去される。この銅パッド表面に、ディスペンサーを用いて、インク状のハンダ組成物を塗布する。インク状のハンダ組成物の塗布膜厚は、約90μmであった。
銅パッド上のインク状のハンダ組成物の塗布膜上に、3216チップ部品を、そのSnメッキ電極が密着する形状で載せる。220℃、10分間、その後、270℃、3分間の加熱処理を行う。フラックス剤は含まれていないので、220℃に加熱する間に、金属表面の酸化皮膜の除去はなされない。そのため、溶解しているロジン銅塩(アビエチン酸の銅(II)塩)は、表面酸化皮膜がない錫ナノ粒子の表面において、下記の置換型還元反応を行うことは困難となっている。
[(C19H29COO)2Cu:Cu(OOCH29C19)]→2(C1929COO-2Cu2+
(C1929COO-2Cu2++Sn → Cu+(C1929COO-2Sn2+

次に、270℃、3分間の加熱(リフロー)処理では、表面酸化皮膜が残留している錫ナノ粒子の層中に限られた個数の銀粒子が混入している状態で、金属錫の融点を超える結果、錫ナノ粒子の融解は進むが、全体的に均一な組成を示す合金化には達していない。従って、大半の部分では、融解した金属錫が、銅パッドの表面、Snメッキ電極の表面に接触するが、フラックス処理を施さず、錫単体を用いた接合を試みた状態となっている。
この接合部位の面積サイズ0.8mm2の条件において、3216チップ部品のダイシェア強度の測定を試みたが、室温で、その強度が測定不能であった。すなわち、接合面に酸化皮膜層が残余している結果、ハンダ接合がなされていない状態であった。
本発明の微細ハンダ組成物は、配線基板上のハンダ接合用のパッド面上に、電子部品チップの電極をハンダ接合する場合を含め、接合部位の面積が小さなハンダ接合に利用可能である。特には、インクジェット印刷法を適用して、微細なパターン形状で塗布することができるため、配線基板上に高密度で電子部品チップを、鉛フリー・ハンダを利用して、ハンダ接合により実装する際に、インク上のハンダ組成物として好適に利用できる。

Claims (9)

  1. 平均粒子径が2〜100nmの錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、ならびに、フラックス成分を含み、高沸点の無極性溶媒中に該錫ナノ粒子と銀ナノ粒子を均一に分散してなるインク状のハンダ組成物であって、
    前記錫ナノ粒子と銀ナノ粒子の混合比率WSn:WAg(但し、WSn+WAg=100とする)を、95:5〜99.5:0,5の範囲に選択し;
    前記錫ナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択し;
    前記錫ナノ粒子10質量部当たり、前記フラックス成分の添加量を、0.5質量部〜2質量部の範囲に選択し;
    前記高沸点の無極性溶媒として、沸点が200℃〜320℃の範囲の、炭化水素系溶剤を選択している
    ことを特徴とするインク状のハンダ組成物。
  2. 平均粒子径が2〜100nmの錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、有機酸銅塩、ならびに、フラックス成分を含み、高沸点の無極性溶媒中に該錫ナノ粒子と銀ナノ粒子を均一に分散してなるインク状のハンダ組成物であって、
    前記錫ナノ粒子、銀ナノ粒子、有機酸銅塩中に含有される銅の配合比率WSn:WAg:WCu(但し、WSn+WAg+WCu=100とする)は、
    Snを、95〜99.5の範囲に、
    Agを、5〜0.5の範囲に、
    Cuを、0.7〜0.1の範囲に選択し、
    前記錫ナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択し;
    前記錫ナノ粒子10質量部当たり、前記フラックス成分の添加量を、0.5質量部〜2質量部の範囲に選択し;
    前記高沸点の無極性溶媒として、沸点が200℃〜320℃の範囲の、炭化水素系溶剤を選択している
    ことを特徴とするインク状のハンダ組成物。
  3. 前記有機酸銅塩として、ロジン酸銅が使用されている
    ことを特徴とする請求項2に記載のインク状のハンダ組成物。
  4. 該インク状のハンダ組成物の液粘度は、5 mPa・s〜30 mPa・s(20℃)の範囲に選択されている
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク状のハンダ組成物。
  5. 前記錫ナノ粒子の平均粒子径d1と銀ナノ粒子の平均粒子径d2の比率d1:d2を、4:1〜10:1の範囲に選択する際、前記の比率を満たす範囲で、
    前記錫ナノ粒子の平均粒子径d1を、10〜100nmの範囲に選択し、
    前記銀ナノ粒子の平均粒子径d2を、2〜20nmの範囲に選択する
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク状のハンダ組成物。
  6. 前記銀ナノ粒子は、その表面の銀原子に対して、アミノ基の窒素原子上の孤立電子対を利用して、配位的な結合が可能なアルキルアミンにより被覆された状態で、前記高沸点の無極性溶媒中に分散されている
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のインク状のハンダ組成物。
  7. 前記アルキルアミンの配合量は、前記銀ナノ粒子10質量部あたり、1〜6質量部の範囲に選択されている
    ことを特徴とする請求項6に記載のインク状のハンダ組成物。
  8. 前記アルキルアミンは、炭素数8〜14の第1アルキルアミンである
    ことを特徴とする請求項6または7に記載のインク状のハンダ組成物。
  9. 前記フラックス成分として、ロジンまたは水添ロジンを添加している
    ことを特徴とする1〜8のいずれか一項に記載のインク状のハンダ組成物。
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