JP4891581B2 - ポリペプチドの製造方法およびキット - Google Patents

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Description

本発明は、ポリペプチドの製造方法およびこの製造方法に用いるキットに関する。より詳細には、GLDプロテアーゼとその切断アミノ酸配列を用いたポリペプチドの製造方法および糖タンパク質であるコンジェリンIIを用いたポリペプチドの製造方法に関する。さらに、これらの製造方法に利用するキットに関する。
タンパク質は、生体を形成すると同時にホルモンや酵素等種々の生理活性物質の多くを構成する物質であり、アミノ酸がペプチド結合でつながった高分子化合物である。これらが、体内で相互作用することで生体は機能している。
現在では、種々のタンパク質の中から目的のタンパク質に限定したクローニング、発現、検出、ならびに精製を簡便におこなえるキットが販売され、未知タンパク質の機能解明だけにとどまらず、既知タンパク質の新しい機能の発見などの重要且つ有用なツールとなっている。
発現させたい目的のタンパク質をコードしている遺伝子を、市販されている発現ベクターにサブクローニングするためには様々な方法がある。もっとも簡便な方法は、発現ベクターのマルチクローニング領域内の制限酵素認識部位を利用する方法で、2種類の制限酵素認識部位を用いることによりインサートを目的の方向にクローニングすることができる。
市販されている発現ベクターには、目的のタンパク質と融合することにより様々な機能を発揮する多くのタグをコードする配列を有するものも存在する。
この融合タグには目的のタンパク質の検出や精製を容易にするものもあれば、細胞内での融解性やペリプラズムへの移行に影響を及ぼすことにより生理活性の発現率を高めるものもある。
重要な意味を有するタグも利用し終わった後は、ベクター由来の不純物であるため目的のタンパク質と効率的に分離(除去)させたい。そのためには、予めタグと目的のタンパク質との間にプロテアーゼの切断アミノ酸配列を挿入しておけばよい。そうすれば、タグの機能を利用した後、挿入したアミノ酸配列を切断することが可能なプロテアーゼにより簡単にタグと目的のタンパク質を分離(除去)することが可能となる。
従来から、この方法は利用されている。使用されているプロテアーゼは、トロンビン、血液凝固Xa因子、エンテロキナーゼ等が挙げられる (特許文献1〜4) 。
特開平6-98791号公報 特開平9-183794号公報 特表2002-518017号公報 特表2001-512306号公報
しかし、従来の方法で挙げられているプロテアーゼを用いると、インサートしたタンパク質のアミノ酸配列によっては目的のタンパク質まで分解してしまうことがあった。そのため、プロテアーゼの目的のタンパク質への作用を抑制するために界面活性剤を併用するなどの方法が提案されている(特許文献1)。
また、目的のタンパク質が分解されない場合にも、切断部位直後のアミノ酸配列によっては切断効率が低下するため精製効率が悪い等の欠点もあった。
そこで本発明の第1の目的は、これらの欠点、即ち、目的のタンパク質の分解を抑制でき、かつ切断部位直後のアミノ酸配列によって切断効率が影響を受けず、高い精製効率が得られる新規なタグと目的のタンパク質との分解方法を利用するポリペプチドの製造方法を提供することにある。
ところで、目的のタンパク質を適当な宿主を用いて発現させて製造する場合、アミノ酸配列は目的タンパク質と同一でも立体構造が目的タンパク質と異なる場合やインクルージョンボディーとして不溶化してしまうことがある。この場合、タンパク質が例えば、酵素である場合、所望の酵素活性が得られない、という問題がある。
従来は、このような場合、尿素やグアニジン塩酸などでポリペプチドを可溶化し、メルカプトエタノールやジチオスレイトールで還元後、高希釈下ポリペプチドを再酸化させることにより、リフォールディング反応を行うことによって活性のある酵素を得る方法がある。しかし、ポリペプチドの種類によってリフォールディング反応の条件が異なるため、最適条件探索のために試行錯誤を繰り返し、さらに専門的知識が必要であった。
そこで本発明の第2の目的は、目的タンパク質とアミノ酸および立体構造が同一であるポリペプチドを製造できる方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、GLDプロテアーゼ(特開2004-350513号公報)とGLDプロテアーゼの切断部位を含む切断アミノ酸配列を用いることで、上記本発明の第1の目的を達成できることを見いだして本発明を完成した。
さらに、本発明者らは、タグアミノ酸配列としてシャペロン様活性をもつコンジェリンIIを含むガレクチンを用いることで、上記本発明の第2の目的を達成できることを見いだして本発明を完成した。
本発明は、以下のとおりである。
[1]
タグアミノ酸配列、GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列およびターゲットアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドを調製し、前記融合ポリペプチドにGLDプロテアーゼを作用させて、前記GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列で切断し、ターゲットアミノ酸配列を含むポリペプチドを回収するポリペプチドの製造方法であって、
前記GLDプロテアーゼが分離用タグを有し、かつ融合ペプチドをGLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列で切断した後、GLDプロテアーゼを、前記分離用タグを利用して分離する、ポリペプチドの製造方法
[2]
タグアミノ酸配列が、コンジェリンII、レクチン、または精製用タグアミノ酸配列である[1]に記載の製造方法。
[3]
精製用タグ配列がT7・Tag、S・Tag、His・Tag、HSV・Tag、CBD・Tag、Nus・Tag、GST・Tag、またはPKA siteである[2]に記載の製造方法。
[4]
GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列が
Pro-Gln-Gly-Phe-Gln-Gly-Pro(PQGFQGP)、
Pro-Ala-Gly-Phe-Ala-Gly-Pro(PAGFAGP)または
Gln-Thr-Gln-Ser-Leu-Val-Tyr-Pro(QTQSLVYP)
である[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[]
融合ポリペプチドの調製は、
タグアミノ酸配列、GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列およびターゲットアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターを用いる[1]〜[4]のいずれかに製造方法。
[]
発現ベクターで形質転換した宿主を培養することで、融合ポリペプチドを調製する、[5]に記載の製造方法。
[]
宿主が、細菌、脊椎動物細胞、またはバキュロウイルス感染昆虫細胞である[6]に記載の製造方法。
[]
発現ベクターが、選択マーカーを含む[5]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[]
前記GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列での切断を温度20〜40℃の範囲、pHを2〜9の範囲、1〜120分間の範囲で行う[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]
前記GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列での切断は、融合ポリペプチドをコンジェリンIIタグにて固相担体に吸着させた後に、固相担体上で行う、[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]
ターゲットアミノ酸配列を含むポリペプチドの回収は、融合ポリペプチドをコンジェリンIIタグにて固相担体に吸着させた後に、固相担体上で不要なタンパク質成分を洗浄除去し、溶出液により溶出することで行う、[1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]
分離用タグがビオチンである[1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]
分離用タグがビオチンであり、固相に固定化したアビジンまたはストレプトアビジンを用いてビオチン化GLDプロテアーゼを捕捉する[1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[14]
GLDプロテアーゼ、GLDプロテアーゼ用緩衝液、切断参照タンパク質、および抗コンジェリンII抗体を含む、ターゲットアミノ酸配列を含むポリペプチド回収用キットであって、
前記GLDプロテアーゼが分離用タグを有するキット
[15]
分離用タグがビオチンである[14]に記載のキット。
[16]
固相に固定化したアビジンまたはストレプトアビジンをさらに含む[15]に記載のキット。
本発明の第1の態様によれば、目的のタンパク質の分解を抑制でき、かつ切断部位直後のアミノ酸配列によって切断効率が影響を受けず、高い精製効率が得られるタグと目的のタンパク質との分解方法を利用するポリペプチドの新規な製造方法を提供することができる。特に本発明の第1の態様によれば、GLDプロテアーゼを用いることで、従来のプロテアーゼを用いる方法に比べて、格段に高い切断効率が得られ、少量の酵素で、タグと目的タンパク質の切断が可能であり、非常に高い精製効率が得られるという、予想外の利点がある。
例えば、従来のプロテアーゼであるトロンビンの場合、被切断タンパク質に対して必要なトロンビン添加量は、フィブリノーゲン重量当たり1/100程度である。それに対して本発明におけるGLDの場合には、基質であるゼラチンまたはにカゼインの1/100,000程度加えるだけで同等程度の切断が可能である。即ち、切断高率はトロンビンの1000倍程度である。
さらに本発明の第2の態様によれば、目的タンパク質とアミノ酸および立体構造が同一であるポリペプチドを製造できる方法を提供することができる。
本発明のキットを用いることで、微量にしか発現されない有用且つ高価なタンパク質をコードする遺伝子とより適切なタグとを機能的に切断アミノ酸配列と結合させ、クローニング、発現、検出、精製が低コストでおこなえるようにすることが可能である。
[ポリペプチドの製造方法(その1)]
本発明のポリペプチドの製造方法は、
(1)タグアミノ酸配列、GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列およびターゲットアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドを調製し、
(2)前記融合ポリペプチドにGLDプロテアーゼを作用させて、前記GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列で切断し、
(3)ターゲットアミノ酸配列を含むポリペプチドを回収する。
(1)融合ポリペプチド調製工程
第一の工程では、融合ポリペプチドを調製する。融合ポリペプチドは、タグアミノ酸配列、GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列およびターゲットアミノ酸配列を含むものである。タグ配列は、識別用の標識となす物質を構成する配列であり、またタグのリガンドに対する特異的親和性により、リガンドを固定化したアフィニティークロマトグラフィーにより1段階での精製を可能とするものである。タグ配列の具体例としては、例えば、コンジェリンII、ガレクチンなどのレクチン、精製用タグ配列が挙げられる。
ガレクチンには、例えば、プロト型ガレクチンがあり、さらに、プロト型ガレクチンには、たとコンジェリンがある。ガレクチンには、構造の違いによりプロト型、キメラ型、タンデムリピート型の3種に分類される。プロト型は、糖結合部位1箇所のサブユニットが2量体で存在する。キメラ型は糖結合部位1箇所のサブユ ニットに別の機能ドメインが結合、タンデムリピート型は、糖結合部位を含むドメイン が繰り返した(1本のペプチド鎖に糖結合部位が2箇所)ものである。
コンジェリンは、マアナゴ体表粘液から単離したガ レクチンファミリーに属するタンパク質であり、ガレクチンと同様の作用があると考えられる。ConIIの塩基配列とアミノ酸配列を配列番号1および2に示す。
精製用タグ配列には、例えば、T7・Tag、S・Tag、His・Tag、HSV・Tag、CBD・Tag、Nus・Tag、GST・Tag、PKA site等を挙げることができる。
T7・Tagは、塩基配列がATGGCTAGCATGACTGGTGGACAGCAAATGGGT(配列番号3)であり、アミノ酸配列がMetAlaSerMetThrGlyGlyGlnGlnMetGly(配列番号4)である。T7・Tag(T7遺伝子)を含む目的のタンパク質の免疫アフィニティー精製をワンステップで行なえるように設計されている。架橋アガロースに共有結合したT7モノクローナル抗体に目的のタンパク質を結合させ、未結合のタンパク質を洗い出すことができる。
S・Tagは、塩基配列がAAAGAAACCGCTGCTGCGAAATTTGAACGCCAGCACATGGACTCG(配列番号5)であり、アミノ酸配列がLysGluThrAlaAlaAlaLysPheGluArgGlnHisMetAspSer(配列番号6)である。S・Tagは、S-protein AgaroseアフィニティクロマトグラフィーによってS・Tagを含む目的のタンパク質をワンステップで精製できるように設計されている。S・Taq融合タンパク質と特異的に結合するS-protein Agaroseに結合させた後、未結合のタンパク質を洗い出すことができる。
His・Tagは、塩基配列がCACCATCACCACCATCAC(配列番号7)であり、アミノ酸配列がHisHisHisHisHisHis(配列番号8)である。His・Tagは、固定化金属アフィニティクロマトグラフィーによってHis・Tagを含む目的のタンパク質をワンステップで精製できるように設計されている。連続したHis残基は固定された二価カチオン(Ni2+)と結合させ、未結合のタンパク質を洗い出すことができる。
HSV・Tagは、塩基配列がCAGCCAGAACTCGCCCCGGAAGACCCCGAGGAT(配列番号9)であり、アミノ酸配列がGlnProGluLeuAlaProGluAspProGluAsp(配列番号10)である。HSV・Tagは、HSV・Tagを含む目的のタンパク質をワンステップで精製できるように設計されている。Herpes Simplex VirusグライコプロテインDに由来する11アミノ酸配列に対して、高い特異性とアフィニティーをもつ抗体に目的のタンパク質を結合させ、未結合のタンパク質を洗い出すことができる。
Nus・Tagは、塩基配列がATGAACAAAGAAATTTTGGCT***1356bp***GCCGAACAGGGCATTGATGATCTGGCTGATATCGAA
GGGTTGACCGACGAAAAAGCCGGAGCACTGATTATGGTCGCCCGTAATATTTGCTGGTTCGGTGACGAA
GCG(配列番号11)であり、アミノ酸配列がMetAsnLysGluIleLeuAla***452aa***AlaGluGlnGlyIleAspAspLeuAlaAspIleGlu
GlyLeuThrAspGluLysAlaGlyAlaleuIleMetAlaAlaArgAsnIleCysTrpPheGlyAspGlu
Ala(配列番号12)である。Nus・Tagは、NusAタンパク質に高い親和性を示す抗体にNus・Tagを含む目的のタンパク質を結合させ、未結合のタンパク質を洗い出すことができる。
GST・Tagは、塩基配列がATGGCATCCCCTATACTAGGTTATTGGAAA***1815bp***GGTGGCGACCATCCTCCAAAATCGGAT(配列番号13)であり、アミノ酸配列がMetAlaSerProIleLeuGlyTyrTrpLys*** 605aa***GlyGlyAspHisProProlysSerAsp(配列番号14)である。GST・Tagは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼとグルタチオンとのアフィニティーを利用してGST・Tagを含む目的の融合タンパク質を結合させ、未結合のタンパク質を洗い出すことができる。
His-TagとGST-Tagを用いたアフニティー精製については、以下の論文の記載を参照することができる。BMC Biotechnol. 2003 Jul 28;3:12. Epub 2003 Jul 28., Christoph Scheich, Volker Sievert, and Konrad Bussow, "An automated method for high-throughput protein purification applied to a comparison of His-tag and GST-tag affinity chromatography"
GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列は、GLDプロテアーゼが切断部位として認識するアミノ酸配列を含む配列である。GLDプロテアーゼは、特開2004-350513号公報に記載されたプロテアーゼであり、以下の(A)及び(B)に示す性質を有するプロテアーゼである。
(A)分子量、21000±1000 (SDS-PAGEによる)
(B)特異的プロテアーゼ活性、以下に示すアミノ酸配列(1) を含むペプチドまたはタンパク質をGly-Phe部位で切断するか、アミノ酸配列(2) を含むペプチドまたはタンパク質をGly-Phe部位で切断するか、またはアミノ酸配列(3) を含むペプチドまたはタンパク質をSer-Leu部位で切断する。
Pro-Gln-Gly-Phe-Gln-Gly-Pro (1)
Pro-Ala-Gly-Phe-Ala-Gly-Pro (2)
Gln-Thr-Gln-Ser-Leu-Val-Thr-Pro (3)
上述のように、GLDプロテアーゼにより切断されるアミノ酸配列は、
Pro-Gln-Gly-Phe-Gln-Gly-Pro(PQGFQGP)、
Pro-Ala-Gly-Phe-Ala-Gly-Pro(PAGFAGP)および
Gln-Thr-Gln-Ser-Leu-Val-Tyr-Pro(QTQSLVYP)
であり、本発明におけるGLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列は上記いずれかのアミノ酸配列である。
さらに、GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列は、
Pro-Gln-Gly-Phe-Gln-Gly-Pro(PQGFQGP)、
Pro-Ala-Gly-Phe-Ala-Gly-Pro(PAGFAGP)または
Gln-Thr-Gln-Ser-Leu-Val-Tyr-Pro(QTQSLVYP)
において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、GLDプロテアーゼにより切断されるアミノ酸配列であることもできる。GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列について言う「1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から3個、好ましくは1から2個、より好ましくは1個を意味する。
さらに、GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列は
Pro-Gln-Gly-Phe-Gln-Gly-Pro(PQGFQGP)、
Pro-Ala-Gly-Phe-Ala-Gly-Pro(PAGFAGP)または
Gln-Thr-Gln-Ser-Leu-Val-Tyr-Pro(QTQSLVYP)
に対して50%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、GLDプロテアーゼにより切断されるアミノ酸配列であることもできる。GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列について言う上記「アミノ酸配列に対して50%以上の相同性を有するアミノ酸配列」における相同性は、50%以上であれば特に限定されないが、より好ましくは60%以上、より一層好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
ターゲットアミノ酸配列は、目的とするタンパク質のアミノ酸配列であり、特に限定はない。いかなるアミノ酸配列でも良い。例えば、構造タンパク質・酵素・ホルモン・免疫タンパク質が挙げられる。但し、これらに限定される意図ではない。
上記融合ポリペプチドの調製は、タグアミノ酸配列、GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列およびターゲットアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターを用いて行うことができきる。より具体的には、上記発現ベクターで形質転換した宿主を培養することで、融合ポリペプチドを調製することができる。
用いる発現ベクターは、特に制限されない。タンパク質の発現や選択に必要な要素(例えば、プロモーター、ターミネーター、および選択マーカー等)が機能的に存在しているものであれば良い。例えば、具体的には、pTV118N, pBluescript II, pBR322, pRIT5, pUC, pcDNA, pCMVScript等の発現ベクターを挙げることができる。但し、これらに限定される意図ではない。
タグアミノ酸配列、GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列およびターゲットアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードするDNAが挿入される位置は発現ベクター内の、マルチクローニング領域内の、適当な制限酵素認識部位にすることができる。
上記発現ベクターはプロモーターを含み、プロモーターは、宿主において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することが可能である。
細菌細胞で作動可能なプロモーターとしては、バチルス・ステアロテルモフィルス・マルトジェニック・アミラーゼ遺伝子(Bacillus stearothermophilus maltogenic amylase gene)、バチルス・リケニホルミスαアミラーゼ遺伝子(Bacillus licheniformis alpha−amylase gene)、バチルス・アミロリケファチエンス・BANアミラーゼ遺伝子(Bacillus amyloliquefaciens BAN amylase gene)、バチルス・サブチルス・アルカリプロテアーゼ遺伝子(Bacillus subtilis alkaline protease gene)もしくはバチルス・プミルス・キシロシダーゼ遺伝子(Bacillus pumilus xylosldase gene)のプロモーター、またはファージ・ラムダのPRもしくはPLプロモーター、大腸菌のlac、trpもしくはtacプロモーター等が挙げられる。
また、ターゲットアミノ酸配列をコードするDNAの下流にターミネーターを結合することができる。
さらに上記融合ポリペプチドをコードするDNAのいずれかの部位に選択マーカーが含まれてもよい。例えば、ジヒドロ葉酸レダクダーゼ(DHFR)またはシゾサッカロマイセズ・ポンベTPI遺伝子のようなその補体が宿主にかけている遺伝子、また例えば、カナマイシン、テトラサイクリン、アンピシリン、クロラルフェニコール、ネオマイシンもしくはヒグロマイシンのような薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。
目的のタンパク質(ターゲットアミノ酸配列)のDNAのクローニングやプロテアーゼの切断配列挿入等の操作は当業者に既知であり、例えば、Molecular Cloning : A laboratory Mannual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987−1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載の方法に準じておこなうことができる。
用いる宿主も制限されない。通常は、細菌、脊椎動物細胞、およびバキュロウイルス感染昆虫細胞が挙げられ、より適した細菌宿主としてE. coli K12株のJM109、DH5α、JM101、XL1-Blue、BL21、HB101、LE392等が挙げられる。
本発明は、上記融合ポリペプチドをコードするDNAを挿入した発現ベクターを含む形質転換体も包含する。
上記発現ベクターを含む形質転換体を培養して、融合タンパク質を発現させる。培養は宿主の種類に応じて適宜決定できる。宿主が例えば、大腸菌の場合、以下のように行うことができる。
融合タンパク質発現ベクターを含む形質転換大腸菌のコロニーを50μg/mLアンピシリンを含むLB液体培地5mLで37℃一晩、前培養後、1mLの培養液をLB液体培地1L中に加え、37℃、3時間培養する(OD600が〜0.3)。さらに、目的タンパク質の発現量・可溶性を最大にする培養条件(培地組成:LB培地、培養温度:30℃、培養時間:IPTG添加後3時間、誘導物質(IPTG)濃度:0.1mM)で培養した。上記の融合タンパク質を含む大腸菌を8000rpm、4℃、10分間遠心分離により、集菌後、15 mLの3.5%NaClを含む50 mMトリス塩酸緩衝液(pH 7.5)に懸濁し、超音波処理(ソニケーション)により融合タンパク質を抽出した。抽出液を遠心分離し、その上清画分を塩酸処理したSepharose 4Bカラムに添加し、3.5%NaClを含む50 mMトリス塩酸緩衝液(pH 7.5)で洗浄した。0.2Mラクトースを含む50 mMトリス塩酸-3.5%NaCl緩衝液(pH 7.5)で吸着画分(融合ポリペプチド)を溶出することができる。
(2)切断工程
上記融合ポリペプチドにGLDプロテアーゼを作用させて、前記GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列で融合ポリペプチドを切断する。GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列での切断は、具体的には以下のように実施することができる。
反応温度範囲:20〜40℃(37℃を最適温度とする)
時間:1分〜120分
pH:2〜9
推奨緩衝液:2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)バッファー、pH 6.5
ポリペプチド回収
GLDプロテアーゼで切断したターゲットアミノ酸配列を含むポリペプチドを回収する。例えば、GLDプロテアーゼ反応液を塩酸処理したSepharose 4Bカラムに添加し、3.5%NaClを含む50 mMトリス塩酸緩衝液(pH 7.5)で溶出することにより、タグであるコンジェリンII(特異的に吸着する)と目的のポリペプチドを回収することができる。
GLDプロテアーゼは分離用タグを有するものであることができる。分離用タグとしては、例えば、ビオチン等を挙げることができる。
分離用タグを有するGLDプロテアーゼを用いることで、融合ペプチドをGLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列で切断した後、GLDプロテアーゼを、分離用タグを利用して分離することができる。具体的には、固相に固定化したアビジンまたはストレプトアミジンを用いてビオチン化GLDプロテアーゼを分離することができる。
[キット]
本発明は、(1)GLDプロテアーゼ、(2)GLDプロテアーゼ用緩衝液、(3)切断参照タンパク質、および(4)抗Con II抗体を含む、ターゲットアミノ酸配列を含むポリペプチド回収用キットを包含する。
本発明によれば、切断アミノ酸配列を含む発現ベクターを用いた「新しい切断配列(3パターン)を有したタンパク質発現キット」が提供できる。このキットには、目的遺伝子のクローニングと発現に必要な主要試薬が含まれており、従来のキットでは発現が困難であったタンパク質に対して有効なものになり得る。このキットの提供は、プロテインエンジニアリングへの更なる活性化に繋がるものである。
GLDプロテアーゼは前述の特開2004-350513号公報に記載されたプロテアーゼである。GLDプロテアーゼ用緩衝液は、例えば、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)バッファー、pH 6.5、または3.5%NaClを含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH 7.5)であることができる。切断参照タンパク質は、前述のGLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列を含むポリペプチドまたはオリゴペプチドである。具体的には、構造タンパク質・酵素・ホルモン・免疫タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
さらに、GLDプロテアーゼは分離用タグを有するものであることができる。分離用タグとしては、例えば、ビオチンを挙げることができる。ビオチン化GLDプロテアーゼを、アビジンまたはストレプトアビジン等を用いて、分離用カラムに固定化させることも可能である。固定化することで、高価なGLD酵素を繰り返し使用できるだけでなく、精製する際にGLD酵素の混入を低減させることが可能である。
さらに、GLDプロテアーゼが分離用タグを有するものである場合、本発明のキットは、固相に固定化したアビジンまたはストレプトアビジンをさらに含むことができる。
[ポリペプチドの製造方法(その2)]
本発明の第二の態様のポリペプチドの製造方法は、
(1)コンジェリンIIをコードするDNAおよびこのDNAの下流にターゲットアミノ酸配列をコードするDNAを含む発現ベクターを形質転換した宿主を培養し、次いで
(2)ターゲットアミノ酸配列を有するポリペプチドを回収する、
ポリペプチドの製造方法である。
コンジェリンIIをコードするDNAおよびこのDNAの下流にターゲットアミノ酸配列をコードするDNAを発現させることで、発現され、回収されたポリペプチドは、天然型と同様の立体構造を有する。
コンジェリンIIは、アナゴ体表粘液由来のガレクチであり、ある種の糖タンパク質である。コンジェリンIIのアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に記載されている。さらに、コンジェリンIIをコードするDNAは、例えば、配列表の配列番号1に記載された塩基配列を有するものであることができる。但し、本発明の製造方法で使用する、コンジェリンIIをコードするDNAは、
(1)配列表の配列番号2に記載されたアミノ酸配列をコードするDNA、
(2)配列表の配列番号2に記載されたアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、コンゲリンII と同等の立体構造維持活性を有するタンパク質をコードするDNA、
(3)配列表の配列番号2に記載されたアミノ酸配列に対して50%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、コンゲリンII と同等の立体構造維持活性を有するタンパク質をコードするDNA、
(4)配列表の配列番号1に記載された塩基配列を有するDNA、
(5)配列表の配列番号1に記載された塩基配列において、1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、コンゲリンII と同等の立体構造維持活性を有するタンパク質をコードするDNA、または
(6)配列表の配列番号1に記載された塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイスする塩基配列と相補的な配列を有し、コンゲリンII と同等の立体構造維持活性を有するタンパク質をコードするDNA
であることができる。
コンジェリンIIをコードするDNA(アミノ酸配列)について言う「1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から4個、好ましくは1から3個、より好ましくは1から2個、さらに好ましくは1個を意味する。
コンジェリンIIをコードするDNA(アミノ酸配列)について言う上記「アミノ酸配列に対して50%以上の相同性を有するアミノ酸配列」における相同性は、50%以上であれば特に限定されないが、より好ましくは70%以上、より一層好ましくは90%以上である。
コンジェリンIIをコードするDNAについて言う「1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から40個、好ましくは1から30個、より好ましくは1から20個、より好ましくは1から10個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
上記した「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、DNAをプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味し、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNA又は該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNA等を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、モレキュラークローニング第2版等に記載されている方法に準じて行うことができる。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げられ、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。
上記コンジェリンIIをコードするDNAの取得方法は特に限定されない。例えば、コンジェリンIIに特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR法によって増幅するなどして得られる。
前記発現ベクターは、コンジェリンIIをコードするDNAとターゲットアミノ酸配列をコードするDNAとの間に、プロテアーゼ切断アミノ酸配列をコードするDNAをさらに含むことができる。
上記プロテアーゼ切断アミノ酸配列をコードするDNAを含むDNAを発現させることで、プロテアーゼ切断アミノ酸配列を含むポリペプチドを回収することができ、回収されたポリペプチドをプロテアーゼで処理して、コンジェリンIIとターゲットアミノ酸配列とを解裂させ、ターゲットアミノ酸配列を含むポリペプチドを回収することができる。
プロテアーゼ切断アミノ酸配列およびこのアミノ酸配列を切断するプロテアーゼには特に制限はなく、例えば、(1)トロンビン切断アミノ酸配列であり、プロテアーゼがトロンビンであるか、(2)プロテアーゼ切断アミノ酸配列がエンテロキナーゼ切断アミノ酸配列であり、プロテアーゼがエンテロキナーゼであるか、(3)プロテアーゼ切断アミノ酸配列がファクターXa切断アミノ酸配列であり、プロテアーゼがファクターXaであるか、または(4)プロテアーゼ切断アミノ酸配列がGLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列であり、プロテアーゼがGLDプロテアーゼであることができる。GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列およびGLDプロテアーゼは、前述の本発明の第一の態様の製造方法で使用したものと同様である。また、トロンビン切断アミノ酸配列及びトロンビン、エンテロキナーゼ切断アミノ酸配列及びエンテロキナーゼ、並びにファクターXa切断アミノ酸配列及びファクターXaはいずれも公知である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
例1
コンジェリンIIをタグとして利用したBPII発現ベクターの作製は、図1のようなデザインでおこなった。切断アミノ酸配列はGly-Pro-Ala-Gly-Phe-Ala-Gly-Pro(GPAGFAGP)である。BPIIの塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号15及び16に記載する。
BPII発現ベクターの作製は具体的には、以下のように行った。発現ベクターpTV118Nへ導入したコンジェリンIIcDNAの終止コドン(TAA)をGlyのコドン(GGG)へ置換し、さらに3'側へEco RI制限酵素認識配列を導入した。次にBPIIをコードするcDNAを鋳型にして、切断アミノ酸配列Gly-Pro-Ala-Gly-Phe-Ala-Gly-ProをBPIIのアミノ末端側に含み、さらに5'側にEco RI制限酵素認識配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー(CTGGAATTCGGCAGGGCCAGCGGGGTTCGCGGGGCCAAGCCTGGTCCAATTGTGGAAG(配列番号17))とBPIIのカルボキシ末端側を含み終止コドンおよびPst I制限酵素認識配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー(TGCCTGCAGAAGCTTAGCATGTAT(配列番号18))を用いてPCR法によりBPIIを含む遺伝子を増幅し、制限酵素Eco RIおよびPstIにより消化後、上記の様に改変したコンジェリンII発現ベクターpTV-ConIIのC末端側へEco RIおよびPst I部位で導入し、BPII発現ベクターpTV-ConII/GPAGFAGP/BPIIを構築した。
作製されたpTV-ConII/GPAGFAGP/BPIIを大腸菌株JM109に導入し形質転換を得た。具体的には、以下のように行った。大腸菌株JM109コンピーテントセル50μLにpTV-ConII/GPAGFAGP/BPII5μLを加え、氷中30分間インキュベート後、42℃で30秒間ヒートショックを与え、氷中3分間冷却する。SOC培地500μLを加え、37℃で1時間震盪する。アンピシリン50μg/mLを含むLB寒天培地上で37℃、一晩形質転換体を含む大腸菌コロニーを培養した。
この形質転換体を用いて、目的タンパク質の発現量・可溶性を最大にする培養条件(培地組成:LB培地、培養温度:30℃、培養時間:IPTG添加後3時間、誘導物質(IPTG)濃度:0.1mM)で培養したものをWestern blotで検出し、NIH imageを用いて定量を行った。その結果、およそ4割の融合タンパク質(ConII/GPAGFAGP/BPII)を含む可溶性画分を回収することができた。回収した可溶性画分は、塩酸処理をしたSepharose 4Bカラムを用いてAffinity Chromatographyをおこない、融合タンパク質のみを分離した。
融合タンパク質の分離は以下のように行った。融合タンパク質を含む大腸菌を8000rpm、4℃、10分間遠心分離により、集菌後、15 mLの3.5%NaClを含む50 mMトリス塩酸緩衝液(pH 7.5)に懸濁し、ソニケーションにより融合タンパク質を抽出した。抽出液を遠心分離し、その上清画分を塩酸処理したSepharose 4Bカラムに添加し、3.5%NaClを含む50 mMトリス塩酸緩衝液(pH 7.5)で洗浄した。0.2Mラクトースを含む50 mMトリス塩酸-3.5%NaCl緩衝液(pH 7.5)で吸着画分(融合タンパク質)を溶出した。
分離した融合タンパク質は、SDS-PAGEの結果から分子量である29kDaの位置にバンドが得られ、Western blotの結果から目的のタンパク質であることが確認された(図2)。Aは、発現させた融合タンパク質(ConII/BPII/GPAGFAGP)のSDS-PAGEの結果であり、Bは、抗BPII抗体を用いたWestern blotの結果である。
凍結乾燥させた融合タンパク質をMES bufferに1mg/mlとなるよう溶解し、酵素:凍結乾燥物=1:500の割合になるようにGLD溶液を加え、37℃で最大60分間インキュベートした。抗BPII抗体を用いたWestern blotにより分離したBPIIを確認した(図3、A)。その結果、目的のBPIIタンパク質はGLDによって分解されることなく、タグと切り離されていく様子がはっきりと確認できた。
例2
切断アミノ酸配列Gln-Thr-Gln-Ser-Leu-Val-Tyr-Pro(QTQSLVYP)を挿入した発現ベクターpTV-ConII/QTQSLVYP/BPIIも実施例1と同様に作成し、BPIIタンパク質の発現を行った。その結果、用いた配列も目的のBPIIタンパク質は分解されることなく、融合タンパク質から分離することができた。実施例1と同様可溶性画分に融合タンパク質が回収された(図4)。また、GLDによる切断は例1の配列に比べて速く進行するが、適切な消化反応により目的のBPIIタンパク質が分解されることなく、融合タンパク質から分離することができた。
例3
切断アミノ酸配列Pro-Gln-Gly-Phe-Gln-Gly-Pro(PQGFQGP)をコードするDNAを挿入した発現ベクターも実施例1と同様に作成し、BPIIタンパク質の発現を行った。その結果、用いた配列も目的のBPIIタンパク質は分解されることなく、融合タンパク質から分離することができた。
例4
切断アミノ酸配列Gln-Thr-Gln-Ser-Leu-Val-Tyr-Pro(QTQSLVYP)ならびに目的のタンパク質としてレクチン(Lectin)(配列塩基配列およびアミノ酸を配列表の配列番号19及び20に記載する。) を挿入した発現ベクターを用いて実施例1と同様に実施した。その経時的な変化量をNIH imageを用いて解析した(図5A)。その結果、目的のレクチンは分解されることなく、融合タンパク質から分離することができた。BPII以外の融合タンパク質の分解もおこなえることが確認できた。
例5
切断アミノ酸配列Pro-Ala-Gly-Phe-Ala-Gly-Pro(PAGFAGP)ならびに目的のタンパク質としてウシ血清アルブミン(Serum Albumin)(アミノ酸配列および塩基配列を配列表の配列番号21及び22に記載する。)を挿入した発現ベクターを用いて実施例1と同様に実施した。その経時的な変化量をNIH imageを用いて解析した(図5B)。その結果、用いた配列も目的の血清アルブミンは分解されることなく、融合タンパク質から分離することができた。BPIIならびにレクチン以外の融合タンパク質の分解もおこなえることが確認できた。
例6
切断アミノ酸配列Pro-Ala-Gly-Phe-Ala-Gly-Pro(GPAGFAGP)ならびに目的のタンパク質としてペプシン(Pepsin)(アミノ酸配列および塩基配列を配列表の配列番号23及び24に記載する。)を挿入した発現ベクターを用いて実施例1と同様に実施した。その経時的な変化量をNIH imageを用いて解析した(図5C)。その結果、用いた配列も目的のペプシンは分解されることなく、融合タンパク質から分離することができた。BPII、レクチンならびに血清アルブミン以外の融合タンパク質の分解もおこなえることが確認できた。
本発明は、タンパク質合成の分野で有用である。
切断アミノ酸配列であるGPAGPAGPを含むConII/BPII発現ベクターの作製デザインを示す 説明図。 A:発現させた融合タンパク質(ConII/GPAGFAGP/BPII)のSDS-PAGEの結果。 B:抗BPII抗体を用いたWestern blotの結果。 GLDによって分解反応をおこなった融合タンパク質(ConII/ GPAGFAGP/BPII)に対して抗BPII抗体を用いて視覚化したWestern blotの結果 発現させた融合タンパク質(ConII/QTQSLVYP/BPII)のSDS-PAGEの結果 A:GLDによって分解反応をおこなった融合タンパク質(ConII/ QTQSLVYP/Lectin)に対するブロットの経時的変化をNIH imageを用いて定量した結果。 B:GLDによって分解反応をおこなった融合タンパク質(ConII/GPAGFAGP /Serum Albumin)に対するブロットの経時的変化をNIH imageを用いて定量した結果。 C:GLDによって分解反応をおこなった融合タンパク質(ConII/GPAGFAGP/Pepsin)に対するブロットの経時的変化をNIH imageを用いて定量した結果。

Claims (16)

  1. タグアミノ酸配列、GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列およびターゲットアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドを調製し、前記融合ポリペプチドにGLDプロテアーゼを作用させて、前記GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列で切断し、ターゲットアミノ酸配列を含むポリペプチドを回収するポリペプチドの製造方法であって、
    前記GLDプロテアーゼが分離用タグを有し、かつ融合ペプチドをGLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列で切断した後、GLDプロテアーゼを、前記分離用タグを利用して分離する、ポリペプチドの製造方法
  2. タグアミノ酸配列が、コンジェリンII、レクチン、または精製用タグアミノ酸配列である請求項1に記載の製造方法。
  3. 精製用タグ配列がT7・Tag、S・Tag、His・Tag、HSV・Tag、CBD・Tag、Nus・Tag、GST・Tag、またはPKA siteである請求項2に記載の製造方法。
  4. GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列が
    Pro-Gln-Gly-Phe-Gln-Gly-Pro(PQGFQGP)、
    Pro-Ala-Gly-Phe-Ala-Gly-Pro(PAGFAGP)または
    Gln-Thr-Gln-Ser-Leu-Val-Tyr-Pro(QTQSLVYP)
    である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 融合ポリペプチドの調製は、
    タグアミノ酸配列、GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列およびターゲットアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターを用いる請求項1〜4のいずれか1項に製造方法。
  6. 発現ベクターで形質転換した宿主を培養することで、融合ポリペプチドを調製する、請求項5に記載の製造方法。
  7. 宿主が、細菌、脊椎動物細胞、またはバキュロウイルス感染昆虫細胞である請求項6に記載の製造方法。
  8. 発現ベクターが、選択マーカーを含む請求項5〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列での切断を温度20〜40℃の範囲、pHを2〜9の範囲、1〜120分間の範囲で行う請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記GLDプロテアーゼ切断アミノ酸配列での切断は、融合ポリペプチドをコンジェリンIIタグにて固相担体に吸着させた後に、固相担体上で行う、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. ターゲットアミノ酸配列を含むポリペプチドの回収は、融合ポリペプチドをコンジェリンIIタグにて固相担体に吸着させた後に、固相担体上で不要なタンパク質成分を洗浄除去し、溶出液により溶出することで行う、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 分離用タグがビオチンである請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 分離用タグがビオチンであり、固相に固定化したアビジンまたはストレプトアビジンを用いてビオチン化GLDプロテアーゼを捕捉する請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
  14. GLDプロテアーゼ、GLDプロテアーゼ用緩衝液、切断参照タンパク質、および抗コンジェリンII抗体を含む、ターゲットアミノ酸配列を含むポリペプチド回収用キットであって、
    前記GLDプロテアーゼが分離用タグを有するキット
  15. 分離用タグがビオチンである請求項14に記載のキット。
  16. 固相に固定化したアビジンまたはストレプトアビジンをさらに含む請求項15に記載のキット。
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