JP4884283B2 - 二枚貝類の増殖方法、および底質改善基材 - Google Patents

二枚貝類の増殖方法、および底質改善基材 Download PDF

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Description

本発明は、二枚貝類の増殖方法および底質改善基材に関するものである。
干潟などの浅場には多数の二枚貝類の生息が確認されており、例えば東京湾の盤州干潟にはアサリやホトトギスガイが生息する。上記アサリは体外受精によって繁殖し、孵化した個体は幼生(浮遊幼生)として水中を漂った後、着底して稚貝から成貝へと成長する。アサリの幼生あるいは稚貝は、着底に際して小石の脇などの比較的安定した場所を好むことが経験的に知られており、タンパク質からなる足糸を小石等に付着させ、この後、小石等の脇の砂に潜る行動をとることが観察されている。このように砂に潜る行為は潜砂行動と呼ばれる。一方、上記ホトトギスガイは同じ二枚貝類であるが、足糸を小石等に付着させて潜砂行動をとることなくそのまま着底を完了する。
以上のようなアサリ等の二枚貝類は、近年我が国において大幅な減少傾向にあり、資源復活としてその増殖が強く求められている。特にこれらの幼生、稚貝は、上述した小石等の安定した基質に着底できないという理由によって生存率が極めて低くなることが確認されており、これを高めることが資源復活のみならず生物多様性や水底質改善の有効な対策になる。
この点、特許文献1には、アサリの幼生期から成貝期までのライフサイクルを考慮し、適切な粗砂分の含有率を備えた干潟覆砂材料を用いる干潟造成方法が提案されている。
特開2006-274690
しかしながら、上記従来例は、外部環境をあまり考慮していないために、以下の欠点がある。すなわち、自然の水生環境下においては、波の流れにより定常的な所定の水勢が生じる場合のほかに、時折、大型低気圧の襲来などによって極めて強い水勢を生じる場合がある。この点、上記従来例のように粗砂、すなわち単に細粒分との嵩の違いに基づく重量差によって定常時における水中での安定性を確保する場合、極めて強い水勢を受けて粗砂が細粒分とともに流されてしまうと、波等のうねりによってある種の分級がなされて粗砂が水底表層部に露出しにくくなり、以後アサリ等の二枚貝類の幼生、稚貝の着底が良好に促進されなくなってしまう。
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、アサリ等の二枚貝類の幼生、稚貝の着底をより長期に渡って安定して促進することができる二枚貝類の増殖方法、および底質改善基材の提供を目的とする。
本発明によれば上記目的は、
ぼ粒状の底質改善基材2の多数をアサリ等の二枚貝類の生息域における砂1を含む水底3に散布してアサリ等の二枚貝類の幼生、稚貝5の着底を促してなり、
前記底質改善基材2は、通常の波を受けてあまり移動しないとともに、強い波によってシートフローが生じた際に底質が液状化してなる層状の漂砂に埋もれることなく水底表層部4をほぼ維持する1.1から1.7までの範囲内の嵩比重、および砂1よりも嵩の張る大きさに、砕いた貝殻を比重調整材料として粘土に加えて成形、焼成することにより形成される二枚貝類の増殖方法を提供することにより達成される。
本発明によれば、水底3に散布される底質改善基材2は、底質の砂1よりも嵩比重を小さくされ、したがって水底表層部4の砂1よりも沈降しにくく、極めて強い水勢を受けて底質が液状化したときにも、容易に砂1に埋もれてしまうことはない。また底質改善基材2は、砂1よりも嵩の張るほぼ粒状に形成され、これにより上述した小さい嵩比重に起因する個体としての小さい質量が補われ、少なくとも一部のみを水中に露出させて砂1に多少埋もれた状態になれば、定常的な水勢を受けても水中に完全に露出する砂1に比べて流されにくい。
一般に、干潟などにおける底質の移動、漂砂は、通常の波を受けて砂などが転動等しながら粒子単位で運ばれるいわゆる掃流移動と、強い波を受けて底質自体が液状化して層状に移動するいわゆるシートフローに大別することができる。したがって本発明によれば、底質改善基材2を容易に掃流移動しないようにすることができ、シートフローにおいては層状の塊として捉えることが可能な砂などに埋もれにくくすることができ、これにより、干潟などの水底表層部4にアサリ等の二枚貝類の幼生、稚貝5の着底に適した安定した基質を長期に渡って確保することができる。
なお、底質における砂の動きやすさを示す指標であるいわゆるシールズ数の計算方法によれば、砂の動きやすさは、比重と、粒径、すなわち嵩とのそれぞれに反比例する。これから演繹的に推論すれば、底質改善基材2について、シートフローにおいて砂に埋もれにくいための嵩比重を備えていても、砂よりも嵩張らせることによって、掃流移動しにくくすることができ、このように比重と嵩のバランスをとることによって、長期的に水底表層部4に維持させることができると考えることができる。
底質改善基材2を水底3に散布すれば、定常的な波によって底質改善基材2の水底3側の部位が自然と水底表層部4の砂1等に埋もれた底質が形成され、これにより上述したように底質改善基材2が流されにくくなることから、本発明によれば、水底3で安定した基質として機能する底質改善基材2のみを散布するだけで、アサリ等の二枚貝類の幼生、稚貝5の着底をより長期に渡って安定して促進させることができる。また、二枚貝類の幼生等5が潜砂行動をとる場合における砂1は、そのまま干潟等の現地におけるものになるために、外部から持ち込むことによる生物親和性や二枚貝類の幼生等5への違和感の心配はない。さらに、定常的な所定の水流によって運ばれる極めて長期間に渡る砂1の積み重ねや生物の摂餌等に伴う撹乱によって底質改善基材2が仮に埋没してしまったとしても、耕耘をすれば足り、底質改善基材2の嵩比重の小ささによって耕耘による機能回復を極めて良好にすることができる。
上記底質改善基材2は、上述した小石に相当するようなほぼ粒状に形成され、水流が過剰に衝突しないように配慮される。より具体的な形状は適宜決定することが可能であるが、例えば円柱形状などの転がりやすい形状にすれば、ホトトギスガイのように着底後に移動しない種別の幼生等の増殖を適宜抑えると同時に、アサリのように着底後に移動できる種別の幼生等5の増殖を伸ばすことも可能になる。
底質改善基材2の多数の水底3への散布は、それぞれの底質改善基材2同士が水底3で積み重ならないように行うことも可能であるが、積み重ねたときには、底質改善基材2、2間に狭い隙間が生じ、該隙間への砂1等の充填によって、より安定性の高い二枚貝類の幼生等5の潜砂領域を形成することが可能である。なお、上記隙間への砂1等の充填や、上述した底質改善基材2の水底3側の部位の砂1等による埋設は、上述したように砂1等が自然の水流によって流されることを利用して実現することが可能であるが、このように密集して散布した場合など、条件に応じて人工的に行うことも可能である。また、以上の点などを考慮した場合には、底質改善基材2の具体的な大きさ、嵩については、仮に粒径で特定するならば2mmから50mmの範囲内であることが望ましいと考えられる。
また、上述した底質改善基材2の嵩比重を定量的に表現するならば、少なくとも砂1の一般的な真比重である2.6前後よりも低いものとして特定することが可能で、これによれば砂1よりも沈降しにくいという効果を期待できると言える。この砂1の真比重は砂1よりも小さい水底の土粒子、すなわちシルトや粘土にも一般に共通し、したがって極めて強い水勢を受けた後の底質改善基材2のこれらによる埋没についても同時に良好に抑制することができる。また、発明者の知見、実験によれば、シートフローによって底質が液状化した層状になった場合、かかる層としての嵩比重を想定、比較考慮すれば、上記底質改善基材2の嵩比重は1.1から1.7までの範囲内であることが望ましい。このような数値範囲の比重を有する自然素材はアサリ等の二枚貝類の生息域における底質には見付けることができず、したがってこれによればアサリ等の二枚貝類の増殖に適した新たな底質を創出することができる。
さらに、上記底質改善基材2は、長期の物理的安定性を考慮すればセラミックスにより形成することが望ましい。セラミックスの代表的な主原料としての陶土は真比重が高く、仮に気泡などの空間を内部に豊富に備えた多孔質体からなるセラミックスであっても上述した嵩比重を実現するには真比重の低い添加材料を混合する必要がある。この点、貝殻は一般に真比重が水にほぼ近似する程度と低く、かかる比重調整に適する上に、これを添加材料として用いることにより、貝との生物親和性が高い基質を容易に構成することができる。
また、貝殻の主成分である炭酸カルシウム(CaCO)は、焼成によって、より具体的には約900度以上の焼成によって、酸化カルシウム(CaO)に変化し、さらにこの酸化カルシウムは、水和反応によって水酸化カルシウム(Ca(OH))に変化する。水和反応時のpH上昇は水酸化カルシウム同士、すなわち底質改善基材2、2同士の適度の癒着をもたらし、したがって嵩比重の小さい底質改善基材2を流失しにくくすることができる。さらに、底質改善基材2の多数が相互に癒着することを実現するために、水底3に適宜積み重なるように底質改善基材2の多数を水上から散布すれば、水底3の地形に合わせて底質改善基材2を配置することができる。この底質改善基材2は量産性を考慮すれば定形であることが望ましく、この場合、多数を散布したときに互い間隙を持って積み重なる形状、例えば曲面を備えるものであることが望ましい。
加えて、水和反応に伴う発熱による底質改善基材2の破損や水生生物への悪影響を防ぐため、底質改善基材2における酸化カルシウムの含有量は適度に抑えておくことが望ましい。焼成によって製作する場合における底質改善基材2の嵩比重の軽減には、上述したように貝殻などの真比重の低い材料を添加する以外に、気泡を豊富にしたり、吸水性を高めることが有効で、焼き締まりを抑える低温焼成が効果的である。通常の陶磁器などにおける1200度以上の焼成温度よりも低い温度で焼成するときには、より耐熱性能が高く、粒径の小さな材料をさらに添加しておけば、効率的に嵩を増やして嵩比重を軽減することが期待できる。
また、水中において砂1よりも沈降しにくくすることを考えれば、底質改善基材2は、実質的には、その水中重量を体積で割った水中における嵩比重を基準に考えたときに、砂1よりも小さいものであることが有効である。この場合において底質改善基材2をセラミックスで形成したときには、独立気泡(閉気孔)を設けて水中重量を大きく軽減したり、連続気泡(開気孔)を増やして底質改善基材2の吸水率を高めたりすることが望ましい。高い吸水率は、干潮時に干出する水底3に底質改善基材2が散布された時には、打ち上げ波に対する安定度を高めるとともに、周辺土壌の保水率を高めることにもつながり、例えば水温の過度な上昇を防ぐ、間隙水による呼吸可能時間が長くなるなどアサリをはじめとする干潟生物の生息環境を安定化し、結果として資源の減耗を防ぐことになると考えられる。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、アサリ等の二枚貝類の幼生、稚貝の着底をより長期に渡って安定して促進することができる二枚貝類の増殖方法、および底質改善基材を提供することができ、アサリ等の二枚貝類の資源復活、再生を良好に図ることができる。
図1および図2に本発明の実施の形態を示す。図1は底質改善基材2の水底表層部4での状態を示すもので、この実施の形態において底質改善基材2は、転がりやすく、積み重ねたときに隙間を生じる円柱形状に形成される。図2(b)に示すように、底質改善基材2は、直径D、長さLがともに約10mmからなるほぼ粒状で、粘土としての陶土に比重調整材料を添加して成形、焼成することによって、1.6程度の嵩比重(空気中)を有して砂1よりも水中嵩比重が小さくなるように調整される。
上述した比重調整材料として貝殻を用いるこの実施の形態において、成形原料は、陶土と貝殻を約80%と約20%の割合で混合して生産される。この混合原料は、ボールミルに調合された陶土としての木節粘土と貝殻をともに投入して粉砕、混合することにより、木節粘土がおよそ30ミクロン以下、貝殻が陶土よりもやや粗い程度、およそ300ミクロン以下のパウダー状で混和した成形原料としての粉体が生産される。
底質改善基材2の生産は、以上のようにして得られた粉体に水を加えて泥状にした後、フィルタープレスにより濾過、脱水したケーキ状にし、この後ニーダーで混練し、押し出し成形機に充填してなされる。押し出し成形は成形原料を直径約10mmの長尺の円柱状に成形し、成形後の原料は、適宜乾燥した後、ロータリーキルンや電気炉等に投入されて焼成される。焼成温度は1080度から1100度で、これにより適宜の強度、吸水率が確保される。なお、成形は乾式の加圧成形により行うことも可能で、この場合には上述した泥状の粉体をスプレードライヤで適宜乾燥すれば足りる。
この後、長尺の円柱状からなる焼成体を長さが10mm程度になるように適宜切断することにより底質改善基材2は完成する。以上のように嵩比重の小さい貝殻を適宜の調合具合で陶土に添加し、低温焼成することによって、底質改善基材2は10%の吸水率を備えた表面が粗面からなる多孔質体として形成され、嵩比重が砂1よりも低く抑えられる。また、焼成によって貝殻に含まれる炭酸カルシウムが酸化カルシウムになり、底質改善基材2は貝殻の調合量、粉砕粒度、貝殻に含有される炭酸カルシウムの量に応じた適度の水和反応性を備える。
なお、以上においては陶土と貝殻のみを原料とする場合を示したが、陶土を他の原料で代替したり、あるいは他の材料をさらに添加して水和反応性や比重、強度、吸水率などの能力を調整することも可能である。例えば、蛙目粘土、ドロマイト、長石、陶石、あるいは、比重調整材料としての珪砂、磁器セルベン、軽量骨材、さらには適宜の焼結体を代替材料、添加材料にすることができる。また、このような底質改善基材2の能力は、底質改善基材2が散布される水域の状況に合わせて適宜決定され、例えば原料の調合分量、粉砕の程度、焼成温度、焼成時間、さらには発泡剤の添加によっても適宜調整することが可能である。加えて、上述した焼成温度では融解あるいはあまり軟化しない材料を添加し、単に嵩張らせたり、あるいは適宜に焼結させて空隙率をより高めることも可能である。
また、以上においては長尺の円柱状からなる焼成体を長さ10mm毎に切断して多数の底質改善基材2、2・・を得る場合を示したが、成形時に予め10mm長さの円柱形状に成形した後、焼成して製造することも可能である。
以上のようにして得られた底質改善基材2を水底3に散布して二枚貝類の増殖に適するように底質を改善するこの発明において、この実施の形態においては、特にアサリの増殖に適した底質の改善がなされる。底質の改善は、アサリの生息域である例えば干潟の潮間帯付近に底質改善基材2の多数を相互に適度に積み重なるように水上から散布してなされる。
嵩比重が砂1より小さい底質改善基材2は、水上からの散布によってゆっくりと沈降し、例えば、干潟水底3に形成される砂漣の形状に合わせて多数が適宜に積み重なる。図2(a)に示すように、積み重なりが自然と不均一になるその円柱形状と相まって、底質改善基材2の多数は不均一に積み重なり、平面視や側面視で多数の間隙を形成する。また、水中に投入され、積み重なることにより接触する底質改善基材2、2同士は、それぞれが含有する酸化カルシウムの水和反応によって癒着し、単体であるときに比べて水流に対する安定性が高められる。
この後、干潟の波によって、水底3に沈降した底質改善基材2の周囲や上述した間隙には、次第に干潟の底質の砂泥が適宜流れ着き、これにより底質改善基材2がその嵩との相乗効果で水底3に適宜露出する安定した基質を構成し、その周囲の間隙によりアサリの幼生等5の着底に適した安定した潜砂領域を提供する。また、上記間隙は底質の空隙率を高めて適宜の通水を導き、酸素や栄養塩供給を活発にしてアサリの幼生等5の餌となるプランクトン等の増殖をも確保する。
散布によって水底3に豊富に露出する底質改善基材2は、図1に示すように、アサリの繁殖期において水中を浮遊するアサリの幼生等5に見付けられやすく、砂1等よりも大きく、安定した底質改善基材2が、小石等に代替する着底対象として選択できるようになる。底質改善基材2は表面が粗面であるために、アサリの幼生等5が着底に際して足糸11を付着させることも容易である。アサリの幼生等5は、適宜底質改善基材2の端まで移動すれば、底質改善基材2、2間の間隙を埋める砂1等に潜り、着底を完了することができる。後述する発明者の実験によれば、このように底質改善基材2の多数を散布したことにより、散布しないときに比べて、アサリの稚貝5の水底3における採取数が大きく向上したことが確認された。
一方、底質改善基材2が散布される干潟の潮間帯付近にはアサリ以外にホトトギスガイも多く生息しており、繁殖期が重なったときにはホトトギスガイの幼生等が底質改善基材2に着底することによってアサリの幼生等5の着底を妨げることも想定される。このような場合には、貝殻の分量を減らすなどして底質改善基材2、2同士の癒着を適宜抑制しておけば、個々の底質改善基材2は円柱形状であるために水流を受けて水底3上を多少転がりやすくなり、これにより着底後に移動できないホトトギスガイの幼生等の成長を妨げ、移動できるアサリの幼生等5の成長を優先させることができる。
また、大型の低気圧などが襲来して水流が激しくなり、底質が層状に流動化しても、砂1等よりも嵩比重が小さい底質改善基材2はその後の静穏化、沈降によって水底表層部4に再度積み重ねられ、これによりアサリの幼生等5の着底を促進する水底3の安定した基質としての役割を維持することができる。さらに、発明者の実験によれば、上述した底質改善基材2、2同士の癒着はそれほど強固ではないため、仮にアサリ漁などの漁場に底質改善基材2を散布しても、アサリ漁に悪影響を与えることははない。
すなわち、一般にアサリ漁は、砂1等の中に潜るアサリの成貝を砂1等ごと適宜の籠ですくった後、籠を揺らして水で洗うようにして砂1等を落として成貝のみを得る。この籠はアサリの成貝の大きさに合わせて例えば20mm以下のものが抜けるように形成される。したがって相互に癒着した底質改善基材2の多数が仮に籠ですくい上げられたとしても、籠を揺らしたときの震動によって癒着が解消し、個々の底質改善基材2は10mm程度の長さに過ぎないために、この後、籠を抜けることができる。
また、焼成によって形成される底質改善基材2は、容易に破損等することがなく、長期に渡ってアサリの増殖を促進することができる。長期間の経過にともなう砂1等の堆積によって底質改善基材2が水底3下に埋没したときには、耕耘をすればよく、耕耘によって砂1等とともに掘り起こされた底質改善基材2は、砂1等よりも小さい嵩比重よって水底表層部4に高い割合で露出する。さらに、原料が貝殻と粘土である底質改善基材2は、上述したように長期に水中に存在しても、自然環境に害を与える心配がない。
なお、以上においては、直径および長さが10mm程度の円柱形状の底質改善基材2を用いる場合を示したが、沈降速度を考慮して適宜の形状、寸法、比重に変更することができる。底質改善基材2、2間に生じる隙間をアサリの幼生等5の潜砂領域にする場合でも、アサリの幼生等5は一般に殻長が500μmにも満たないため、上述した10mm程度よりも小さな底質改善基材2を積み重ねたときに生じる隙間でも問題はない。また、上述したようにホトトギスガイの幼生等の増殖を適宜抑えるには、底質改善基材2が転がりやすい形状であれば足り、上述したように円柱形状以外に、例えば図2(c)に示す截頭円錐形状でもほぼ同様の効果を期待できる。
さらに、以上においてはアサリの自然な繁殖によって生じた幼生等5の着底率を高め、その増殖を図る場合を示したが、飼育あるいは採取した幼生等5を底質改善基材2の散布領域に放流し、その着底を確保して増殖を図ることも可能である。
(実施例1)アサリの生息域である盤州干潟の潮間帯付近の水底において、2006年11月2日に上述した実施の形態に示す底質改善基材2の多数を岸から沖合に向かって長さ1m、幅0.5mの範囲内に適宜積み重なるように散布し、同年11月14日、12月7日のそれぞれにおいてその後の変化を確認した。底質改善基材2の比重、サイズは現地の波浪条件を考慮して適宜決定した。
また、比較例1として粒径10mmの砂礫(砕石)を、比較例2としてサイズのみを直径5mm、長さ5mmに変更したものを、比較例3として比重のみを1.5に変更したものを、比較例4として比重が1.5で、かつサイズが直径5mm、長さ5mmであるものを同じ広さの範囲内でほぼ同様に多数が積み重なるように散布した。これらの比較例は実施例と同時に、それぞれの散布範囲が実施例の散布範囲と砂漣に対して平行になるように適宜隣接して並べた。
盤州干潟から比較的近く、当該海域における風浪条件を推定可能な千葉灯標における平均風速の経時変化を確認したところ、11月7日にいわゆる爆弾低気圧が襲来したことなどにより、11月2日から12月7日までの期間中複数回にわたって秒速20m以上の風が確認された。したがって干潟の水底にはシートフローが生じていたことが推測される。
結果は、目視によれば11月14日、12月7日のそれぞれの時点で、実施例1については多数を水底表面に確認することができた。また、11月14日、12月7日のそれぞれの状況にほぼ変わりがないことが確認された。比較例1ないし4については11月14日の時点で既にほとんど確認することができなかった。強波浪により流失し、また早期に水底に埋没したことを確認している。
また、実施例1に関し、12月7日の時点で、底質改善基材2同士が癒着し、全体として碁盤のようになっていることが確認された。なお、11月14日の時点については、当日の天候の都合上確認作業が目視のみとなったため、癒着について確認できていないが、上述したように目視において12月7日の時点と比較してほとんど変化が認められなかったことから、この時に既に癒着が生じていたと考えられる。
さらに、その水底表面に露出する部位には珪藻が付着し、加えて、比較例1ないし4に比べて雑食性のヤドカリを範囲内により多く確認された。以上によれば、底質改善基材2の比重、サイズについて、散布域の状況に応じて適宜にその条件を選定することにより、干潟の水底の表面に長期に安定した基質を構築することができることが確認できた。また、生物親和性が良好で、生物多様性が実現されることも確認することができた。
(実施例2)アサリの生息域である横浜の海の公園の潮下帯付近の適宜の水底において、2006年11月2日に上述した実施の形態に示す底質改善基材2の多数を1m四方の範囲内に適宜積み重なるように散布し、同年12月15日のにおいてその後の変化を確認した。底質改善基材2の比重、サイズは現地の波浪条件を考慮して適宜決定されている。また、散布範囲である1m四方の広さは、一般にアサリの稚貝の活動範囲と言われているため、アサリ幼生の着底地点との高い関連性が認められると推測される。
この実施例においては、散布範囲内の任意の3箇所から二枚貝類の稚貝の出現状況をサンプリングするとともに、範囲外についても同様に任意の3箇所からサンプリングを行った。
結果を図3に示す。グラフから明らかなように、散布範囲内(基材内)で散布範囲外(基材外)に比して多くの二枚貝類の稚貝を確認することができた。また、散布範囲内で散布範囲外に比べて出現量が明らかに増大した二枚貝類の稚貝としては、アサリ以外に、ホトトギスガイについても確認された。以上によれば、底質改善基材の散布された範囲内で、アサリ漁場、ホトトギスガイ繁殖場が有効に創出されていることを確認することができた。なお、上記アサリやホトトギスガイ以外に、ムラサキガイやムールガイなどが含まれるイガイ科の貝についてもサンプリングでその出現が特定、確認された。
底質改善基材の水底での状態、および二枚貝類の幼生等の着底行動を説明する図である。 底質改善基材を説明する図で、(a)は多数を水底に散布したときの状態を示す平面図、(b)は単体の斜視図、(c)は底質改善基材の変形例を示す斜視図である。 実施例2の結果を示すグラフである。
符号の説明
1 砂
2 底質改善基材
3 水底
4 水底表層部
5 二枚貝類の幼生、稚貝

Claims (4)

  1. ぼ粒状の底質改善基材の多数をアサリ等の二枚貝類の生息域における砂を含む水底に散布してアサリ等の二枚貝類の幼生、稚貝の着底を促してなり、
    前記底質改善基材は、通常の波を受けてあまり移動しないとともに、強い波によってシートフローが生じた際に底質が液状化してなる層状の漂砂に埋もれることなく水底表層部をほぼ維持する1.1から1.7までの範囲内の嵩比重、および砂よりも嵩の張る大きさに、砕いた貝殻を比重調整材料として粘土に加えて成形、焼成することにより形成される二枚貝類の増殖方法。
  2. 前記底質改善基材は、粒径が2mmから50mmの範囲内である請求項1記載の二枚貝類の増殖方法。
  3. 1.1から1.7までの範囲内の嵩比重、および砂よりも嵩の張る大きさに、砕いた貝殻を比重調整材料として粘土に加えて成形、焼成して形成された底質改善基材。
  4. 粒径が2mmから50mmの範囲内である請求項3記載の底質改善基材。
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