JP4879644B2 - 樹脂被覆シームレス缶製造方法、及びその装置 - Google Patents
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Description
より詳しくは、金属板の片面もしくは両面に熱可塑性樹脂被覆層を設けた樹脂被覆金属板を絞り加工して得られたカップを、ドライ状態で薄肉化深絞りまたは絞りしごき加工して細長い缶体を形成するための、樹脂被覆シームレス缶製造手法の効率化に関する。
シームレス缶を製造するため、例えば、円板を打ち抜き絞り加工によりカップを成形し、再絞り、側壁しごき、底成形、所定の高さに缶胴をトリミング、洗浄が行われる。特に飲料缶用のシームレス缶には、外面塗装、印刷、内面塗装、ネッキング及びフランジ加工を行う。
樹脂被覆シームレス缶は、金属板の表面(少なくとも缶外面となる面)が熱可塑性樹脂の樹脂層で被覆された樹脂被覆金属板から製造される。樹脂被覆シームレス缶の製造においては、材料となる樹脂被覆金属板の表面(樹脂層の上)に予め潤滑剤を塗布しておくことで、中間成形品のカップ体を、絞りしごき成形やしごき成形により、細長有底円筒状のシームレス缶に成形する際に、冷却潤滑液(クーラント)の吹き付けを行わないドライ状態で行う。その後、樹脂被覆金属板に塗布されて缶体に付着している潤滑剤を、加熱により揮発させて、シームレス缶から除去することが従来から行われている。
このため、ドライ状態での製造においても、高速化が望まれており、このような要望に対して、例えば、絞りカップをドライ状態で、再絞り−しごき加工、底部加工を行った後、パンチから缶体を抜き落とす方式のボディメーカーを用いて樹脂被覆シームレス缶を製造する方法および装置が知られている(特許文献1、2参照)。
つまり、樹脂被覆シームレス缶は、従来のDI缶の場合と違って、ドライ状態でシームレス缶を成形するため、缶胴上部では缶軸方向の引っ張り力と円周方向の圧縮とが複雑に作用し、金属と樹脂との間でデラミと呼ばれる密着性低下ないしは剥離が起こり易く、このような樹脂被覆シームレス缶を従来のDI缶と同じように缶体の開口端部の耳部をトリム加工すると、金属部分は切れても被覆樹脂層が切れずにスクラップが缶に付いたまま排出されるという所謂“スクラップ残り”が発生して、次工程への搬送に支障がないように装置を停止させて不良缶を取り除かなければならず製造効率を大幅に低下させてしまうという問題があった。
前記目的を達成するために、本発明にかかる樹脂被覆シームレス缶製造方法は、カップ成形工程と、ボディ成形工程と、を備えた樹脂被覆シームレス缶製造方法において、
第1トリム工程と、熱処理工程と、第2トリム工程と、を備えることを特徴とする。
ここで、前記カップ成形工程は、潤滑剤が塗布された熱可塑性樹脂被覆金属板をカップに成形する。
また、前記ボディ成形工程は、前記カップ成形工程の後段に設けられ、前記カップをドライ状態で成形し、胴部と底部とが一体成形された缶体を得る。
前記第1トリム工程は、前記ボディ成形工程の後段に設けられ、前記缶体の開口端部の耳部を既定切断位置よりもエッジ側にずらした位置でトリム加工する。
前記熱処理工程は、前記第1トリム工程の後段に設けられ、前記缶体から前記潤滑剤が加熱除去されると共に、該缶体の少なくとも開口端部が該樹脂の融点以上の温度まで昇温されるように、該缶体を加熱する。
前記第2トリム工程は、前記熱処理工程の後段に設けられ、前記缶体の開口端部を既定切断位置で切り落とす。
前記第1トリム工程は、前記ボディ成形工程での胴部及び底部の成形後に、前記ダイスの前方に設けられたストリッパーを用いて、前記パンチから抜き落とされた前記缶体の開口端部の耳部を切断する際に、既定切断位置よりもエッジ側にずらした位置を切断位置として前記耳部を除去し、
前記熱処理工程は、前記第1トリム工程で得られた缶体を、その底部を上にしてコンベヤ上に倒立状態で載置して加熱オーブン内を搬送させながら、該缶体の少なくとも開口端部が該樹脂の融点以上の温度まで昇温されるように該缶体を加熱することにより、該缶体から前記潤滑剤を加熱除去すると共に該樹脂を溶融させ、
前記第2トリム工程は、前記熱処理工程による樹脂溶融後に冷却された前記缶体の開口端部を、既定切断位置で切り落とすことが好適である。
前記第2トリム工程は、前記無配向非晶質の熱可塑性樹脂が被覆されている缶体の開口端部を既定切断位置で切り落とすことが好適である。
前記第2トリム工程は、前記装飾工程よりも前段に設けられていることが好適である。
第1トリマーと、熱処理手段と、第2トリマーと、が順に配置されていることを特徴とする。
ここで、前記カップ成形手段は、潤滑剤が塗布された熱可塑性樹脂被覆金属板をカップに成形する。
また、前記ボディ成形手段は、前記カップ成形手段で得られた前記カップをドライ状態で成形し、胴部と底部とが一体成形された缶体を得る。
前記第1トリマーは、前記ボディ成形手段で得られた前記缶体の開口端部の耳部を既定切断位置よりもエッジ側にずらした位置でトリム加工する。
前記熱処理手段は、前記第1トリマーで得られた前記缶体から前記潤滑剤が加熱除去されると共に、該缶体の少なくとも開口端部が該樹脂の融点以上の温度まで昇温されるように、該缶体を加熱する。
前記第2トリマーは、前記熱処理手段で得られた前記缶体の開口端部を既定切断位置で切り落とす。
また、前記第2トリマーは、前記缶体の開口端部を間に挟んで対向配置され、所定のクリアランス及び噛み込み量を有する外刃と内刃とを含む第2トリマーカッターを備え、前記第1トリマーカッターが有する外刃と内刃の噛み込み量を、前記第2トリマーカッターが有する外刃と内刃の噛み込み量より大きくすることが好適である。
ここにいう既定切断位置とは、完成品の所望缶胴高さに基づき定められた最終切断位置をいう。
次に、本発明の樹脂被覆金属板の一例を示す。
すなわち、本発明の樹脂被覆金属板としては、例えばアルミニウム合金板や表面処理鋼板等の製缶用の金属板(金属薄板)の少なくとも缶の外面側となる金属表面に、予めポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の結晶性熱可塑性樹脂の保護被覆層をラミネートした厚さが、例えば0.1〜0.4mmの被覆金属薄板を一例として用いることができる。
ここで、本発明のポリエステル樹脂としては、例えばエチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、PET、PBT、更には、これらの樹脂と他のホモポリマー又はコポリマーとの混合物等が特に好ましい。
本発明においては、前記ラミネートで熱接着した熱可塑性樹脂フィルムを、一旦溶融させた後に、例えば水中を通す等により、急速冷却させて非晶化しておくことが、その後の加工性及び接着性を考慮すると特に好ましい。
本発明は、前記従来の問題点の原因の解明に基づきなされたものである。
すなわち、本発明者らが、樹脂被覆シームレス缶の製造について鋭意検討を重ねた結果、まず従来、製造効率の向上が困難な原因が下記の点にあることを突き止めた。
すなわち、本発明者らによれば、従来の製造効率の低下は、トリム加工後の缶体の開口端部(トリムエッジ部)の樹脂層に微細なケバ立ち等が発生することが原因で起こることが分かった。このケバ立ち等が、外観汚れや内面品位を低下させる。これは、目視で確認しにくいこともあり、従来は、課題の提起すらされていなかった不具合点である。
また、前述のように開口端部の被覆樹脂は過酷な成形により密着性が低下していることにより、缶胴成形後、樹脂層の一部が剥がされてトリムエッジ部に金属露出部を形成させたりすることがある。
このようにトリム後の缶にスクラップが付いたまま排出されると、次工程に搬送することができず、装置を停止させて不良缶を取り除かなければならず、大幅に稼働率を低下させてしまう。
しかしながら、カッタークリアランスを狭くし過ぎると、かえって刃こぼれや刃の摩耗が生じやすくなる。
また、金属エッジ部で、切り始めと切り終わりとに食い違いが生じて、フランジ割れにつながる、所謂トリミング段差を発生させたり、アルミニウム缶の場合では、アルミヘアーが発生して、それが缶胴外面に付いて印刷不良を起こし、外観性を低下させるなどの虞がある。
このケバ立ちは、図9に示すように、トリム端面を顕微鏡で見て、樹脂の厚みの数倍程度(約0.02〜0.05mm程度)に盛り上がったところが円周方向に数箇所程度確認できるものであるが、最悪の場合にはトリムエッジから外方に糸状に延びる、所謂フィルムヘアーが発生することもある。また、樹脂層がケバ立った状態でトリミングされる際に、樹脂層がトリマーカッターに付いて円周方向に引き剥がされて金属面を露出したりすることもある。
このため、ネックイン加工(ネック成形工程)を行う際に、そのこぶが起点となり、カジリを誘発させて内外面樹脂被覆層を傷付けて耐食性を低下させたり、フランジ加工(フランジ成形工程)を行う際にフランジ割れが発生する。また、樹脂層が熱収縮して金属面を露出させて金属面の擦れによる汚れで外観品位を低下させる。
即ち、このようなケバ立ちが発生したトリム缶を後工程で熱処理する場合、ケバ立った樹脂が熱収縮してこぶ状になったり、あるいは開口端部から樹脂端が後退して金属露出面を生じさせ、トリムエッジ部(缶体の開口端部)を下方にしてコンベヤ上に倒立状態で載置して加熱オーブン内を搬送させる際に、ケバ立ちの一部はコンベヤ面に溶着して搬送上の障害となったり、最終工程のネックイン及びフランジ加工を行う際に、そのこぶが起点となり、成形工具を荒らしたり(ビルドアップ)、フランジ割れを発生させることがある。
このような外観汚れや内面品位を低下させるケバ立ちは、目視で確認しにくいこともあり、今まで課題提起されていなかったものである。
この結果、本発明は、従来方式に比較し、より効率的に樹脂被覆シームレス缶を製造することができるという極めて優れた効果を奏する。
本発明にかかる樹脂被覆シームレス缶製造方法においては、前記第1トリム工程で、既定切断位置からエッジ側へ0.5mm以上ずらした位置で前記缶体の開口端部の耳部を切断することにより、前記樹脂被覆シームレス缶の製造を、より効率的に行うことができる。
本発明にかかる樹脂被覆シームレス缶製造方法においては、前記熱処理工程後の缶体が、非晶質無配向の熱可塑性樹脂で被覆されていることにより、前記樹脂被覆シームレス缶の製造を、より効率的に行うことができる。
本発明にかかる樹脂被覆シームレス缶製造方法においては、前記第2トリム工程は、缶体の外面に印刷、及び/又は塗装を施す装飾工程よりも前段に設けられていることにより、前記樹脂被覆シームレス缶の製造を、より効率的に行うことができる。
図1には本発明の一実施形態にかかる樹脂被覆シームレス缶製造方法を行うための樹脂被覆シームレス缶製造(装置)工程の概略構成が示されている。
同図に示す樹脂被覆シームレス缶製造(装置)工程10は、カップメーカー12と、ボディメーカー14と、第1トリマー16と、熱処理手段18と、第2トリマー20と、装飾工程22と、乾燥手段24と、ネック成形手段26と、フランジ成形手段28と、を備える。
また、ボディメーカー14は、ボディ成形工程(S12)を行う。
第1トリマー16は、第1トリム工程(S14)を行う。
熱処理手段18は、熱処理工程(S16)を行う。
第2トリマー20は、第2トリム工程(S18)を行う。
装飾手段22は、印刷ないし塗装等の装飾工程(S20)を行う
乾燥手段24は、乾燥工程(S22)ないし非晶質化処理を行う。
ネック成形手段26は、ネック成形工程(S24)を行う。
フランジ成形手段28は、フランジ成形工程(S26)を行う。
すなわち、本実施形態において、カップ成形工程(S10)では、金属板の少なくとも缶の外面側となる面に熱可塑性ポリエステル樹脂が被覆されている樹脂被覆金属板に潤滑剤を塗布して打ち抜き絞り加工によりカップ30を作る。
ボディ成形工程(S12)では、前記カップ30をドライ状態で薄肉化深絞りまたは絞りしごき加工を施して胴部と底部とが一体成形された缶体32を得る。
すなわち、第1トリム工程(S14)では、前記缶体32の開口端部の耳部34を既定の切断位置よりエッジ側にずらした位置で第1トリム加工を行い、スクラップ除去する。
次に、熱処理工程(S16)では、トリム加工された缶体32の潤滑剤を加熱除去すると共に、少なくともトリムエッジ部を樹脂組成物の融点以上の温度まで昇温されるように加熱して樹脂組成物を溶融させて開口部周縁の被覆樹脂をトリム部の金属面に付着させる。
その後、第2トリム工程(S18)を行っている。すなわち、第2トリム工程(S18)では、缶体32の開口端部を既定の切断位置で切り落とす。この時、エッジ部分(余剰部分)36が缶体32から完全にスクラップ除去される。
しかも、本実施形態によれば、製缶後の搬送性、耐食性、外観性に優れた樹脂被覆シームレス缶の製造方法を提供することができる。
この結果、本実施形態においては、密着力が向上している缶体の開口端部を第2トリム工程でトリム加工することにより、樹脂層の切れ不良に伴うスクラップ残りや、トリム部からの樹脂層のケバ立ちやフィルムヘアーの発生等を確実に解消することができる。しかも、本実施形態においては、第1トリム工程(S14)においてケバ立ちや金属露出部分が形成されても、これを第2トリム工程(S18)で確実に除去処理することができるので、外観性に優れた缶体を得ることができる。
したがって、本実施形態においては、樹脂被覆シームレス缶を効率的に製造することができる。
すなわち、第1トリム工程、第2トリム工程という2回のトリミングを行わずにボディメーカーの後にトリム部(缶体の開口端部)だけ熱処理すれば、1回のトリミングだけでも、本発明と同様の効果が得られのではないかと考えるかもしれない。
しかしながら、本発明者らによれば、樹脂被覆シームレス缶の製造においては、外面印刷する前に、潤滑剤を除去しなければならずヒートセットは必要になること、また、ボディ成形後、1回目のトリミングを行う前に、熱処理するテストを行ったが、短時間に均一に加熱すること(前述のような本発明の極めて優れた効果が得られるように加熱すること)は非常に困難であり、前記樹脂被覆シームレス缶製造の、より効率化を図るためには、第1トリム工程と、熱処理工程と、第2トリム工程との組み合せという解決手段を用いることが、特に好ましい。
前記熱処理工程は、第1トリム工程で得られた缶体を、底部を上にしてコンベヤ上に倒立状態で載置して加熱オーブン内を搬送させ、該樹脂組成物の融点以上の温度まで昇温されるように加熱して潤滑剤を加熱除去すると共に、樹脂組成物を溶融させ被覆樹脂の歪みを除去する。
前記第2トリム工程は、その後、冷却した前記缶体の開口端部を既定の切断位置で切り落とす。
すなわち、本実施形態にかかる樹脂被覆シームレス缶製造方法は、カップ成形工程(S10)と、缶胴成形工程(S12)と、第1トリム工程(S14)と、熱処理工程(S16)と、第2トリム工程(S18)と、装飾工程(装飾工程)(S20)と、乾燥工程(S22)と、ネック成形工程(S24)と、フランジ成形工程(S26)と、を備える。
本実施形態では、金属薄板(アルミ板等)の両面に、無配向非晶質化された状態の熱可塑性樹脂層(熱可塑性ポリエステル樹脂等)が形成されており、その樹脂の上から高温揮発性の潤滑剤が塗布された被覆金属薄板を、樹脂被覆シームレス缶の材料としている。
すなわち、缶胴成形工程(S12)では、ダイス及びパンチを用いて、カップ成形工程(S10)で作られたカップ30をドライ状態で薄肉化深絞りまたは絞りしごき加工を施し、胴部と底部とが一体成形された缶体32を作っている。
すなわち、第1トリム工程(S14)では、缶体32の開口端部の耳部34を切断する。
ここで、本実施形態では、缶体32の開口端部の耳部34を既定の缶高さより高くなる位置、つまり既定の切断位置よりエッジ側にずらした位置で第1トリム加工を行い、スクラップ除去する。
熱処理工程(S16)では、トリム加工された缶体32の潤滑剤を加熱除去すると共に、少なくともトリムエッジ部(開口端部)を、樹脂組成物の融点以上の温度まで昇温されるように加熱して、該樹脂組成物を溶融させて開口部周縁の被覆樹脂をトリム部の金属板面に対する密着性を向上させるため、熱処理工程(S16)を用いている。
すなわち、第2トリム工程(S18)では、前記熱処理工程後で溶融後に冷却した缶体32の開口端部を既定の切断位置で切り落とす。本実施形態では、缶体32が前段で熱処理されているので、第2トリム加工を、円滑に行うことができる。
印刷工程(S20)では、缶体32の円筒状の胴部に対して所望のデザイン(文字や装飾模様等)を印刷し、その上からトップコートを塗布している。
塗布後、乾燥工程(S22)を行う。
すなわち、乾燥工程(S22)では、加熱により印刷インキ層やトップコート層を十分に乾燥(焼付け)する。
ネック成形工程(S24)では、缶体32の開口端部に対して、ネックイン加工を施す。
フランジ成形工程(S26)では、缶体32の開口端部に対して、フランジ加工を施す。
このようにして缶体32の開口端部に対して、ネック成形工程とフランジ成形工程とを順次施すことにより、樹脂被覆シームレス缶の製造を完了している。
すなわち、通常は1回しか行われないトリミングを、本実施形態は、熱処理工程を挟んで2回行うこと、つまり1回目のトリミングではマージンをつけて既定の切断位置よりエッジ側の位置で切断し、多少の樹脂層のケバ立ちは無視し金属板の切断を優先したクリアランスで、且つカッターの噛み込み量を通常の噛み込み量より大にしてトリミングを行い、2回目のトリミングでは、熱処理後の缶体の開口端部を既定の位置で切り落とす最終のトリミングをしている。
ここで、熱処理工程は、樹脂の溶融のための熱処理と、潤滑剤の加熱除去と樹脂層の歪み除去のためのヒートセット処理とを行うので、これらの処理を別個に行った場合に比較し、工程(工数)の簡略化を図ることができる。
また、本実施形態においては、前記樹脂被覆シームレス缶を製造する際の、より効率化を図るため、下記の各工程での工夫も非常に重要であり、各工程について、より具体的に説明する。
<第1トリム工程>
すなわち、本実施形態においては、前記樹脂被覆シームレス缶を製造する際の、より効率化を図るため、第1トリム工程での第1トリム位置の選択も非常に重要である。
本実施形態において特徴的なことは、第1トリム工程が、既定の切断位置からエッジ側へ0.5mm以上ずらした位置で缶体の開口端部の耳部を切断したことである。
本実施形態においては、図2に示されるように、缶体32の開口端部の既定の位置40からエッジ側へ例えば0.5mm〜2.0mm程度ずらした位置を第1トリム位置42として耳部34を第1トリマーで切断し、耳部34をスクラップ除去している。つまり図中、斜線を施したエッジ部分(余剰部分)36をつけた状態でトリミングを行うようにしている。
図3はトリマー16(20)の一部を破断した部分拡大図、図4は図3に示したトリマー16(20)の正面図である。
トリマー16(20)は、円筒状のマンドレル50と、ツールホイール52と、を備える。
また、ツールホイール52は、マンドレル50の第1回転軸60に平行な第2回転軸62を有し、その外周にアウターカッター64と、ナールセクター66と、を備える。
そして、トリマー16(20)は、マンドレル50とツールホイール52とを互いに回転させ、マンドレル50に設けられた円環状のインナーカッター58と、ツールホイール52に設けられた円弧状のアウターカッター64とを、缶体32の開口縁部を挟んだ状態で噛み合わせ、耳部を切り落として開口端部を切り揃える。
このスクラップカッター70は、缶体32から円環状に切り離された開口縁部をナールローラ56上で押し切り切断し帯状のスクラップ72にしている。
本実施形態においては、アウターカッター(外刃)64と、インナーカッター(内刃)58とのクリアランスCと噛み込み量(オーバーラップ量)Lとの関係が重要になる。
なお、前記第1トリム工程での第1トリムカッターの噛み込み量(オーバーラップ量)Lを、トリム部の金属板厚(Tn)の0.9倍以上にすることが好ましいが、カッター側面と材料との摩擦力が増大するので、2倍を超えないようにするのが特に好ましい。
後段の第2トリム工程では、熱処理工程を経た缶体の開口端部をトリム加工する際に、開口端部の樹脂層の密着性があるため第1トリム工程のように噛み込み量(オーバーラップ量)Lを大きくしなくても樹脂層のトリミングは可能となるため必要以上に大きくする必要はない。
また本実施形態においては、より効率化を図るため、樹脂の非晶質化も非常に重要である。
すなわち、本実施形態において更に特徴的なことは、前記熱処理工程後の缶体を、非晶質無配向の熱可塑性樹脂で被覆したことである。
これにより、本実施形態においては、前記熱処理工程後の缶体が、エッジ部周辺を含めて全体的に非晶質無配向の熱可塑性樹脂で被覆されていることにより、後段でのネック成形およびフランジ成形等の後加工性を良好にしている。
すなわち、熱処理手段16のオーブン装置は、潤滑剤の除去と、製缶時に形成された樹脂の歪みを緩和あるいは無配向化させるためとに使用される。これは、当初の被覆金属薄板材料では、無配向非晶質化された状態であるが、その後の缶胴成形によって、缶軸方向に配向された熱可塑性樹脂層について、この段階で改めて加熱処理して樹脂層を無配向非晶質化するようにしている。
また、このような樹脂無配向非晶質化は、その後の印刷ないし塗装の乾燥焼付けを行う乾燥工程(S22)でも行うことができる。
また本実施形態においては、樹脂被覆シームレス缶の製造に関し、より効率化を図るため、第2トリム工程(S18)の配置も重要である。
すなわち、本実施形態においては、装飾工程(S20)の後段に第2トリム工程(S18)を設けることも一応可能である。
しかしながら、第2トリム工程(S18)の際に、塗膜割れ、エッジ割れ等の問題が起こらないようにするため、クリアー塗装の樹脂組成に制約が出てくることがある。すなわち、クリアー塗装の焼き付けで表面が固くなり過ぎるような場合には、クリアー塗料の組成にもよるが、トリミングの際に塗膜割れが生じる虞があり、これが、効率化を低下させてしまうこともある。
なお、本実施形態では、缶体の胴部成形と缶底成形を同じ工程で完了する例について説明しているが、これに限定されず、缶底成形が第2トリム工程(S18)の前であれば胴部成形と別工程で行うように配置しても良い。
この樹脂被覆アルミニウム板に潤滑剤を塗布して打ち抜き絞り加工によりカップを作り、その後、抜き落としタイプのボディメーカーを用いて、270cpmでカップはドライ状態で再絞りされ、パンチによって3つの連続するアイアニングダイスを通って缶胴が薄くなるように連続しごき加工が施され、ストロークの最後にドーミングステーションで缶底成形される。
続いて、缶底を上にして、コンベヤ上に倒立状態で載置して、加熱オーブン内を搬送させ、到達温度235℃で30秒間、熱処理して被覆樹脂層を無配向非晶質化させて潤滑剤除去と、製缶時に形成された樹脂の一軸配向を無配向化させると共に、樹脂層の金属面との密着性を回復させた後に、第2トリム工程においてトリムエッジを既定の位置で切り落とした。
ここで、第2トリム工程における第2トリムカッターの設定条件は、第1トリム工程での第1トリムカッターの噛み込み量(オーバーラップ量)L(0.14mm)よりも小さい0.1mm以下、好ましくは0.07〜0.1mmにしてカッターの側圧による樹脂割れを防いでいる。好ましくはその後、第2トリム工程で得られた缶体に、外面・印刷塗装を施して乾燥焼付け処理した後、ネック成形、フランジ成形を行った結果、特に問題なくネックイン・フランジ加工が行えた。
したがって、本実施例によれば、樹脂被覆シームレス缶を、従来に比較し、極めて効率的に製造することができた。
12 カップメーカー
14 ボディメーカー
16 第1トリマー
18 熱処理手段
20 第2トリマー
22 装飾手段
24 乾燥手段
26 ネック成形手段
28 フランジ成形手段
Claims (7)
- 潤滑剤が塗布された熱可塑性樹脂被覆金属板をカップに成形するカップ成形工程と、
前記カップ成形工程の後段に設けられ、前記カップをドライ状態で成形し、胴部と底部とが一体成形された缶体を得るボディ成形工程と、
を備えた樹脂被覆シームレス缶製造方法において、
前記ボディ成形工程の後段に設けられ、前記缶体の開口端部の耳部を既定切断位置よりもエッジ側にずらした位置でトリム加工する第1トリム工程と、
前記第1トリム工程の後段に設けられ、前記缶体から前記潤滑剤が加熱除去されると共に、該缶体の少なくとも開口端部が該樹脂の融点以上の温度まで昇温されるように、該缶体を加熱する熱処理工程と、
前記熱処理工程の後段に設けられ、前記缶体の開口端部を既定切断位置で切り落とす第2トリム工程と、
を備えたことを特徴とする樹脂被覆シームレス缶製造方法。 - 請求項1記載の樹脂被覆シームレス缶製造方法において、
前記ボディ成形工程は、ダイス及びパンチを用いて、前記カップ成形工程で作られたカップから、胴部と底部とが一体成形された缶体を作り、
前記第1トリム工程は、前記ボディ成形工程での胴部及び底部の成形後に、前記ダイスの前方に設けられたストリッパーを用いて、前記パンチから抜き落とされた前記缶体の開口端部の耳部を切断する際に、既定切断位置よりもエッジ側にずらした位置を切断位置として前記耳部を除去し、
前記熱処理工程は、前記第1トリム工程で得られた缶体を、その底部を上にしてコンベヤ上に倒立状態で載置して加熱オーブン内を搬送させながら、該缶体の少なくとも開口端部が該樹脂の融点以上の温度まで昇温されるように該缶体を加熱することにより、該缶体から前記潤滑剤を加熱除去すると共に該樹脂を溶融させ、
前記第2トリム工程は、前記熱処理工程による樹脂溶融後に冷却された前記缶体の開口端部を、既定切断位置で切り落とすことを特徴とする樹脂被覆シームレス缶製造方法。 - 請求項1又は2記載の樹脂被覆シームレス缶製造方法において、
前記第1トリム工程は、既定切断位置からエッジ側へ0.5mm以上5mm以下の範囲内でずらした位置で、前記缶体の開口端部の耳部を切断することを特徴とする樹脂被覆シームレス缶製造方法。 - 請求項項1又は2記載の樹脂被覆シームレス缶製造方法において、
前記熱処理工程は、さらに、前記缶体の前記熱可塑性樹脂を無配向非晶質とし、
前記第2トリム工程は、前記無配向非晶質の熱可塑性樹脂が被覆されている缶体の開口端部を既定切断位置で切り落とすことを特徴とする樹脂被覆シームレス缶製造方法。 - 請求項項1又は2記載の樹脂被覆シームレス缶製造方法において、
前記缶体の外面に、印刷及び/又は塗装を施す装飾工程を備え、
前記第2トリム工程は、前記装飾工程よりも前段に設けられていることを特徴とする樹脂被覆シームレス缶製造方法。 - 潤滑剤が塗布された熱可塑性樹脂被覆金属板をカップに成形するカップ成形手段と、
前記カップ成形手段で得られた前記カップをドライ状態で成形し、胴部と底部とが一体成形された缶体を得るボディ成形手段と、
を備えた樹脂被覆シームレス缶製造装置において、
前記ボディ成形手段で得られた前記缶体の開口端部の耳部を既定切断位置よりもエッジ側にずらした位置でトリム加工する第1トリマーと、
前記第1トリマーで得られた前記缶体から前記潤滑剤が加熱除去されると共に、該缶体の少なくとも開口端部が該樹脂の融点以上の温度まで昇温されるように、該缶体を加熱する熱処理手段と、
前記熱処理手段で得られた前記缶体の開口端部を既定切断位置で切り落とす第2トリマーと、
が順に配置されていることを特徴とする樹脂被覆シームレス缶製造装置。 - 請求項6記載の樹脂被覆シームレス缶製造装置において、
前記第1トリマーは、前記缶体の開口端部を間に挟んで対向配置され、所定のクリアランス及び噛み込み量を有する外刃と内刃とを含む第1トリマーカッターを備え、
前記第2トリマーは、前記缶体の開口端部を間に挟んで対向配置され、所定のクリアランス及び噛み込み量を有する外刃と内刃とを含む第2トリマーカッターを備え、
前記第1トリマーカッターが有する外刃と内刃との噛み込み量を、前記第2トリマーカッターが有する外刃と内刃との噛み込み量より大きくしたことを特徴とする樹脂被覆シームレス缶製造装置。
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