以下、本発明の第1の実施形態について図1〜6を参照しつつ説明する。但し、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
まず、図1を用いて、本発明の実施形態における定着装置1を備えた電子写真方式でフルカラー対応の画像形成装置2の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置2の概略構成を示す正面から見た模型的断面図である。
図1に示すように、画像形成装置2は、箱形を呈したケース2aを有する。このケース2a内に、画像形成部10、中間転写部20、2次転写部30、シート供給部40、シート搬送路50、定着装置1、排出部60等を備えている。
前記画像形成部10は、画像形成装置2に入力された画像データに基づき、トナー像を形成するためのものである。画像形成部10は、画像形成装置2の内部の上方に位置するように設けられる。図1に示すように、画像形成部10は、ブラックの画像を形成する画像形成ユニット10Bと、イエローの画像を形成する画像形成ユニット10Yと、シアンの画像を形成する画像形成ユニット10Cと、マゼンタの画像を形成する画像形成ユニット10Mの4つの画像形成ユニット10B、10Y、10C、10Mを備えている。これにより、画像形成装置2は、フルカラーの画像形成を行えるようになっている。
4つの画像形成ユニット10B、10Y、10C、10Mは、図1の紙面の左側から右側へ向けて、順次、10B(ブラック)、10Y(イエロー)、10C(シアン)、10M(マゼンダ)の順に配される。尚、各画像形成ユニット10B、10Y、10C、10Mの構成は同様であるから、以下では、ブラックの画像を形成する画像形成ユニット10Bを例として説明する。従って、他の画像形成ユニット10Y、10C、10M、も同様に説明でき、以下、特に説明がない限り画像形成ユニット10Bについての説明は、他の画像形成ユニット10Y、10C、10Mにもあてはまる。
図1に示すように、画像形成ユニット10Bは、像担持体としての感光体ドラム11、帯電ローラ12、露光装置13、現像装置14、1次転写ローラ15、ドラムクリーニングローラ16等がそれぞれ設けられている。
前記感光体ドラム11は、その周面上に静電潜像が形成された後、トナーが供給されることで、トナー像を形成するためのものである。感光体ドラム11は、画像形成ユニット10Bの中央位置に配されている。例えば、感光体ドラム11は、アルミニウム製のドラムの外周面上に正帯電のOPCやアモルファスシリコンの感光層を有するように構成されていて、駆動装置(不図示)によって所定のプロセススピードで図1の正面視反時計方向に回転駆動される。
前記帯電ローラ12は、所定の電位で感光体ドラム11の周面を帯電させるためのものである。そのため帯電ローラ12には、所定の電圧が印加されるようになっている。そして、帯電ローラ12は、図1において感光体ドラム11上方に配されていて、所定のプロセススピードで図1の正面視時計方向に回転するようになっている。
前記露光装置13は、帯電ローラ12によって一様に帯電された感光体ドラム11の周面に、画像形成装置2に入力された形成すべき画像データに基づき、レーザ光を感光体ドラム11に対し照射し、感光体ドラム11の周面を走査・露光するためのものである。これにより、感光体ドラム11の周面上に静電潜像が形成される。そして、図1において、露光装置13は感光体ドラム11の上方であって、帯電ローラ12の感光体ドラム11の回転方向下流側に位置するように配されている。
前記現像装置14は、感光体ドラム11の周面上に形成された静電潜像に向けて、トナーを供給するものである。感光体ドラム11上の静電潜像に現像装置14からトナーが供給されることで、感光体ドラム11の周面上にトナー像が形成されることになる。そして、現像装置14は、図1において感光体ドラム11の左側方に設けられていて、感光体ドラム11と所定の隙間が設けられつつ対向する位置に現像ローラ14aが設けられている。又、現像ローラ14aは、所定のプロセススピードで図1の正面視時計又は反時計方向に回転するようになっている。
そして、現像装置14は、主としてブラックのトナーからなる現像剤を収容している(尚、画像形成ユニット10Yの現像装置14はイエローのトナーを含む現像剤を、画像形成ユニット10Cの現像装置14はシアンのトナーを含む現像剤を、画像形成ユニット10Mの現像装置14はマゼンタのトナーを含む現像剤を収納している)。現像剤は、現像ローラ14aの上方において現像装置14内に収容されている。又、現像ローラ14aの斜め上方に配されたトナー供給ローラ14bは、現像ローラ14aの周面にトナーの薄層が形成されるように、適切な量のトナー(現像剤)を現像ローラ14aに供給するためのものである。
前記1次転写ローラ15は、後述する中間転写部20において張架されている中間転写ベルト24に、感光体ドラム11上に形成されたトナー像を転写するためのものである。そして、1次転写ローラ15は、感光体ドラム11の下方に配され、感光体ドラム11と無端状の中間転写ベルト24を介して当接し、1次転写のためのニップを形成する。1次転写ローラ15には、トナー像の転写のため所定の電圧が印加される。又、1次転写ローラ15は、図1において感光体ドラム11及び中間転写ベルト24に従動し、図1の正面視反時計方向に回転するようになっている。
前記ドラムクリーニングローラ16は、感光体ドラム11の表面に残った1次転写残トナーを除去して回収するためのものであり、次に形成されるトナー像が適切に形成されるようにするためのものである。例えば、前記ドラムクリーニングローラ16は、周面がEPDMのような素材で、円筒状に形成されていて、所定のプロセススピードで図1の正面視反時計方向に回転駆動されている。
次に、中間転写部20について説明する。前記中間転写部20は、感光体ドラム11上に形成されたトナー像が転写され、転写されたトナー像をシートSに転写するためのものである。そして、中間転写部20は、本実施形態における画像形成装置2内のほぼ中心に配され、駆動ローラ21、2本のテンションローラ22、23、中間転写ベルト24、ベルトクリーニング装置25等を備えている。
駆動ローラ21は、画像形成ユニット10Bの下方に位置するように配されていて、中間転写ベルト24を回転させるためのものであり、モータ(不図示)から回転駆動力が伝達される。テンションローラ22、23は各画像形成ユニット10B、10Y、10C、10Mにおける各感光体ドラム11と各1次転写ローラ15の間のニップにおいて、中間転写ベルト24が一直線上となるように、図1において、画像形成ユニット10Bの感光体ドラム11の左方に1つ、画像形成ユニット10Mの右方に1つ設けられ、回転可能に支持されている。
そして、中間転写ベルト24は、これらの駆動ローラ21、テンションローラ22、23、各1次転写ローラ15に張架されていて、駆動ローラ21が回転することで、図1の正面視反時計方向に回転駆動される。又、中間転写ベルト24は上述したように、感光体ドラム11と1次転写ローラ15が形成するニップを通るように張架されていて、感光体ドラム11上のトナー像は、所定のタイミングで1次転写ローラ15に転写電圧を印加することで、中間転写ベルト24上に1次転写される。
尚、ベルトクリーニング装置25は、中間転写ベルト24の表面に残った2次転写残トナーを清掃し、除去して回収するためのものであり、中間転写ベルト24に接離機構(不図示)により接離自在となっていて、図1において、駆動ローラ21及びテンションローラ22の左方に設けられている
前記2次転写部30は、主として2次転写ローラ31及び駆動ローラ21から構成されている。前記2次転写ローラ31は、中間転写ベルト24上に1次転写されたトナー像を、用紙等のシートSに転写する2次転写を行うためのものである。そして、2次転写ローラ31は、中間転写ベルト24を介し、所定のタイミングで、接離機構(不図示)により、駆動ローラ21に圧接される。この際、2次転写ローラ31には、転写電圧が印加され、トナー像がシートSに転写される。
前記シート供給部40は、2次転写部30に向けて、例えば、コピー用紙、OHPシートS、ラベル用紙等のシートSを供給するためのものである。シート供給部40は、カセット41、ピックアップローラ42、重送防止ローラ対43等から構成されている。カセット41は、複数のシートSを収容するためのものであって、函型かつ上面が開放されている。又、カセット41内には複数のシートSが載置される載置板44が設けられている。又、図1におけるカセット41の右上方位置にピックアップローラ42が設けられる。具体的なシート供給動作をみると、載置板44に設けられたリフト機構(不図示)により、載置された最上位のシートSがピックアップローラ42に当接し、ピックアップローラ42の駆動により、シートSが1枚ずつシート搬送路50に送り出される。尚、ピックアップローラ42の近傍かつシート搬送方向下流側には、重送防止ローラ対43が設けられている。重送防止ローラ対43は、それぞれのローラが同方向に回転するようになっていて、シートSが重なったまま搬送されること防ぐ。
前記シート搬送路50は、シート供給部40から、2次転写部30及び定着装置1を経て排出部60までシートSを搬送するためのものであり、複数のガイド51や搬送ローラ対52で構成されている。尚、2次転写部30のシート搬送方向上流側には、レジストローラ対53が設けられている、レジストローラ対53は、一旦、搬送されてきたシートSを止め、2次転写部30でシートSの適切な位置でトナー像が転写されるように、所定のタイミングと速度でシートSを2次転写部30に送り出す。尚、図1において、シートの搬送方向を破線で示している。
定着装置1は、シートSに2次転写されたトナー像を加圧・加熱し、トナーを溶融し、シートSに固着させるためのものであるが、詳細は後述する。
排出部60は、画像が形成されたシートSを画像形成装置2内から排出するためのものであり、排出口には、シートSを排出するための排出ローラ対61が設けられている。更に、画像形成装置2の上面には、排出されたシートSを受け止めるための排出トレイ61が設けられ、一定部数の画像形成済みのシートSが載置可能となっている。
次に、上記した画像形成装置2による画像形成動作について説明する。
画像形成開始信号が発せられると、所定のプロセススピードで回転駆動される感光体ドラム11は、帯電ローラ12によって一様に正極性に帯電される。そして、露光装置13は、入力される画像信号を光信号にそれぞれ変換し、レーザを帯電された感光体ドラム11上を走査露光する。これにより、静電潜像が形成される。
そして、感光体ドラム11上に形成された静電潜像は、感光体ドラム11の帯電極性(正極性)と同極性の現像バイアスが印加された現像装置14によりトナーの供給を受け、トナー像として可視像化される。その後、トナー像は、感光体ドラム11と転写ローラ間の1次転写部にて1次転写バイアス(トナーと逆極性(負極性))が印加された転写ローラにより、回転(移動)している中間転写ベルト24上に1次転写される。
ここで、カラーの画像を形成する場合、上記と同様のプロセスで、まず画像形成ユニット10Bにてブラックのトナー像を中間転写ベルト24に一時転写する。次に、画像形成ユニット10Yに中間転写ベルト24の当該部分は回転移動される。そして、画像形成部10Yにおいてイエローのトナー像が、重ね合わされる。これを繰り返し、画像形成ユニット10Cにおいてシアンのトナー像が、画像形成部10Mにおいてマゼンダのトナー像上に重ね合わされる。このようにして、中間転写ベルト24に1次転写され、中間転写ベルト24を1回転させるだけで、フルカラーのトナー像が形成される。
そして、中間転写ベルト24上で重ね合わせられたトナー像は2次転写部50で搬送されてきたシートSに二次転写され、シートSは定着装置1に搬送されてトナー像が溶融、固着された後、排出部60より排出される。
次に、図2乃至図4に基づき、本発明の実施形態における定着装置1の構造、構成について述べる。図2は、本発明の実施形態に係る定着装置1の斜視図である。図3は、本発明の実施形態に係る定着装置1の一端部における拡大斜視図である。図4は、実施形態に係る定着装置1の断面図である。
図2乃至図4に示すように、本実施形態における定着装置1は、筐体71、加熱部材72、加圧部材73、受圧部材74、固定部材75、補強部材76等から構成されている。
前記筐体71は、図2における左右方向に長く形成されている。即ち、加熱部材72や加圧部材73の軸線方向と平行な方向に長く形成されている。そして、筐体71は基本的に3つの部材から構成されている。具体的には、矩形状の上面板71aと上面板71aの長手方向の端部で取り付けられた断面が略L字上の2枚の側面板71b、71cから構成されている。又、2枚の側面板71b、71cには小判形状の貫通孔71dが設けられている。このように構成される筐体71は、上面板71aの長手方向と垂直な方向から見て断面が略コの字状となっている。
図2及び図3に示すように、前記加熱部材72は、スリーブ状となっていて、本実施形態における加熱部材72は、円筒形状となっている。そして、加熱部材72の下方には、加熱部材72と接するようにして、加熱部材72の軸線と平行になるようにローラ状の加圧部材73が設けられている。又、加圧部材73の両端部からは、ローラ軸73aが突出していて、別途、画像形成装置1のケースその他の部材により回転可能に支持され、このローラ軸73aに駆動機構(不図示)及びモータ(不図示)を接続することにより、加圧部材73は所定の速さで回転駆動する。従って、加熱部材72と加圧部材73は接しているから、加圧部材73の回転に従動して加熱部材72も回転するようになっている。尚、加圧部材73は、加熱部材72よりも軸線方向において長く形成されており、又、加熱部材72の軸線の中点と、加圧部材73の軸線の中点がほぼ一致するように配されている。
筐体71の長手方向において、側面板71b、71cの内側と外側に跨るようにして、貫通孔71dの下部に固定部材75が配されている。固定部材75は、加熱部材72の軸線方向から見て凸型の形状となっている。又、固定部材75は、最終的に筐体71と結合され、固定される。
そして、図2及び図3に示すように、固定部材75と固定部材75に挟まれるようにして、受圧部材74及び補強部材76が、加熱部材72の内側で固定部材75により固定されている。図2及び3で示すように、受圧部材74の上面に受圧部材74と接して補強部材76が設けられている。尚、加熱部材72と受圧部材74と補強部材76との位置関係の詳細は後述する。
次に、図4に基づき、実施形態に係る定着装置1の詳細な構造について述べる。
図4に示す断面図からも明らかなように、実施形態に係る定着装置1は、筐体71の他、スリーブ形状で回転可能となっている加熱部材72、加熱部材72内に配された発熱源77、前記加熱部材72と圧接されるとともに回転駆動する加圧部材73、加熱部材72と加圧部材73が形成するニップにおいて加圧部材73の圧力を受けるため加熱部材72の内側に前記加熱部材72と接して設けられる受圧部材74、受圧部材74よりも内側で受圧部材74と接し加圧部材73の圧力を受け止めるための補強部材76、受圧部材74や補強部材76の位置を固定するための固定部材75から構成されている。
図4に示すように、前記加熱部材72は、薄肉に形成されたフィルム状又はベルト状のものであり、スリーブ状、円筒状に形成されている。本実施形態における加熱部材72は、例えば、厚さを30μm程度とすることが可能である。又、加熱部材72は、熱容量、強度、耐熱性、耐摩耗性等を鑑みて、例えば、SUS(ステンレス鋼)を用いることができる。尚、加熱部材72には、金属だけでなく、例えばポリイミドのような樹脂を用いることも可能である。又、加熱部材72の表面(周面)をフッ素樹脂等により離型性を高められた離型層を有するようにしてもよい。これにより、ニップを通過したシートSで溶融・固着されたトナーの粘着性により加熱部材72にシートSが貼り付いてしまうことを防ぐことができ、定着装置1でシートSが詰まることを防ぐことができる。
本実施形態では、前記発熱源77は、加熱部材72内に、加熱部材72の軸線方向に沿って2本設けられている。この発熱源77は、加熱部材72を暖めるためのものである。そして、発熱源77には、例えば輻射発熱源を用いることが可能であり、ハロゲンランプを用いることが可能である。尚、発熱源77としては、ハロゲンランプに限られるものではなく、公知のものを用いることが可能であり、加熱部材72を暖めることができるものであればよい。この発熱源77による輻射熱等により、薄肉に形成された加熱部材72はトナーを溶融させるのに必要な200°C程度まで急速に暖められる。
前記加圧部材73は、加熱部材72と圧接するようにして設けられる。例えば、加圧部材73は表面がフッ素樹脂等により離型性を高められた離型層を有する円筒状のゴムにより形成される。そして、加圧部材73が加熱部材72に圧接されることで、加圧部材73と加熱部材72との間でニップが形成される。このニップにトナー像が転写されたシートSを通過させることで、シートSを加熱部材72により加熱し、加圧部材73により加圧する。これにより、シートS上のトナーが溶融し、シートSに定着される。
図4に示すように、前記受圧部材74は、加熱部材72の内側で、加熱部材72の軸線方向に伸びて形成されていて、加熱部材72と加圧部材73のニップにおいて加圧部材73の圧力を受けるためのものであり、加熱部材72と接して設けられる。即ち、受圧部材74は、加熱部材72を介し、加圧部材73とニップを形成しているといえる。受圧部材74は圧力を受け止めるため一定の強度が必要であり、例えば、SUS(ステンレス鋼)を用いることができる。又、受圧部材74は、摺動する加熱部材72と接しているから熱容量、強度、耐熱性だけでなく、耐摩耗性にも優れたものである必要がある。尚、上記条件を備えるならば、樹脂を用いることも可能である。
ここで、受圧部材74の具体的な形状をみると、受圧部材74は、図4において、断面が略C字状となっており、加熱部材72と接触する接触面部74aとこれに対し略垂直な2つの側壁部74bを有している。そして、接触面部74aと側壁部74bをつなぐ接続面74cが形成されていてC面を形成している。このC面を有することで、加熱部材72の摺動が滑らかになる。
前記補強部材76は、受圧部材74が加圧部材73から受ける圧力を受け止めるため、即ち、受圧部材74を補助、補強するために設けられている。補強部材76は、断面が略T字状に形成されていて、T字における頭部が受圧部材74の接触面部74aに突き当てられている。
この補強部材76を設けることにより、受圧部材74が単独で加圧部材73からの圧力を受ける場合に比べ、受圧部材74を薄くすることができ、従来に比べ受圧部材74の熱容量を下げることができる。従って、画像形成装置2のウォームアップ時の加熱部材72の温度上昇や、連続して定着を行った場合の加熱部材72の温度維持を妨げることがなくなる。即ち、受圧部材74が加熱部材72から熱を奪わない。又、補強部材76を受圧部材74に突き当てるから、補強部材76自体も薄くしても加圧部材73からの圧力を十分に受け止めることができ、受圧部材74のみ設け、かつ分厚く形成する場合よりも、同様の強度を有しつつ熱容量を下げることができる。
前記固定部材75は、受圧部材74と補強部材76の位置を固定するためのものである。受圧部材74及び補強部材76は、その長手方向における両端を両側から挟み込まれるようにして、固定部材75に嵌め合わされる。そして、固定部材75は定着装置1の筐体71と結合され、これにより受圧部材74及び補強部材76の定着装置1内での位置が強固に固定される。
そして、図4に示すように、固定部材75は、加熱部材72の軸線方向に2つの側面部75aを有している。固定部材75に受圧部材74を嵌め合わす場合には、受圧部材74の弾性を利用する。具体的には、受圧部材74の2つの側壁部74bの距離が近づくようにして、受圧部材74を内側に弾性変形させつつ固定部材75に嵌め合わせる。このように、固定部材75の側面部75aと受圧部材74の側壁部74bの軸線方向における面が接することで、固定部材75が側壁部74bの弾性力を受け止めるようになっている。言い換えると、固定部材75が受圧部材74に覆い被さるようにして、固定部材75の側面部75aの内側と受圧部材74の側壁部74bの外側が接するように嵌め合わされる。
このように、受圧部材74の弾性を利用することで、固定部材75に受圧部材74が嵌め込まれた状態では、受圧部材74の側壁部74bが開こうとし、これを固定部材75が受け止めるから受圧部材74と固定部材75の嵌め合わせが強固になされ、受圧部材74は、固定されるべき正規位置から容易に移動できないものとなる。
更に、固定部材75は、補強部材76を支持固定するものである。そのため、固定部材75は、図4において垂直な方向に固定部材75の一端から途中まで溝部75bを有している(図2及び図3参照)。補強部材76を受圧部材74に突き当てた状態で溝部75bに差し込んでいくと、固定部材75により補強部材76の位置が的確に固定されることになる。これにより、補強部材76が受圧部材74を押さえつけるように構成でき、加熱部材72と加圧部材73のニップにおける圧力を一定以上とすることができ、定着不良やシートSの搬送不良を回避できる。
ここで、本実施形態における熱膨張について述べる。定着装置1が発熱源77により暖められると、一般的には、受圧部材74も当然熱の影響を受けて、熱で膨張する。受圧部材74は上述の通り、加圧部材73からの圧力を受け、加圧部材73と加熱部材72の間でのニップを事実上形成している。そのため、受圧部材74が熱膨張により膨らんだり、歪んだり、捻れたり、変形すると、加熱部材72に皺が生じたり、加熱部材72の回転が捻れてしまったりして、定着が均等になされないことによる定着不良や、加熱部材72がスラスト方向への移動(蛇行)が生じ、加熱部材72に傷が入ることがある。
しかし、本実施形態にあっては、固定部材75の側面部75a内側が受圧部材74の側壁部74bからの弾性力を受け止めるようになっているから、受圧部材74が熱膨張により歪み、変形等しようとしても、受圧部材74に対して、固定されるべき元の正規位置に押し戻そうとする力が働く。即ち、受圧部材74の側壁部74bの有する弾性力が、熱膨張を押さえ込み、応力が働くことで、加熱部材72と加圧部材73のニップにおける圧力の変化を減少させ均等なものとする。これにより、定着不良がなくなり、加熱部材72の傷も生じないから定着装置1の寿命も長くなり、ニップを通過するシートSの搬送においても斜行や詰まりの原因が解消される。
更に、本実施形態では受圧部材74を補強部材76が押さえ込んでいるから、この補強部材76によっても受圧部材74の変形等を抑えることが可能である。
次に、図5に基づき、本発明の実施形態に係る受圧部材74の側壁部74bの具体的な構成について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る受圧部材74の一端部における斜視図である。尚、図5では、説明の便宜のため、加圧部材73、受圧部材74、補強部材76以外の構成を省略している。
本実施形態における受圧部材74の側壁部74bは、加熱部材72の軸線方向にわたって受圧部材74に一面に形成されているのではなく、受圧部材74の長手方向端部から所定の長さで側壁部74bが設けられる。具体的には、側壁部74bは、加熱部材72のシート通過領域F外に設けるようにすればよい(図2、図3、図5、図6において、シート通過領域Fを2点鎖線で図示)。
このように形成する理由は、受圧部材74の熱容量を小さくするためである。側壁部74bを受圧部材74の長手方向の全長にわたって設けると、例えばハロゲンヒータを使用した場合、受圧部材74も少なからず輻射熱を奪うものとなる。しかし、図5に示すように、側壁部74bの長さを受圧部材74の長手方向端部から所定の長さに止めることで、加熱部材72を暖めるべき熱を奪わない。従って、定着装置1のウォーミングアップ時間を短縮することが可能であり、連続して定着を行っても加熱部材72と加圧部材73のニップ部における温度低下を無くすことが可能となる。
次に、図6に基づき、参考例としての受圧部材74の側壁部74bの具体的な構成について説明する。参考例は、実施形態と受圧部材74の側壁部74bの設け方について、差異を設けたものである。又、図6は、本発明の参考例に係る受圧部材74の一端部における斜視図である。尚、図6では、説明の便宜のため、加圧部材73、受圧部材74、補強部材76以外の構成を省略している。
尚、参考例の基本的な構成は、図1〜5を用いて説明した上記の実施形態と同じであるから、上記の実施形態と共通する構成については、図面の記載及び説明を省略する。即ち、受圧部材74の側壁部74bの形状に差異を有するが、その差異以外の点については図1〜4を用いて説明した実施形態と同様にすればよい。
本参考例における受圧部材74の側壁部74bは、加熱部材72の軸線方向にわたって受圧部材74に一面に形成されているものである。言い換えると、受圧部材74の長手方向端部から端部まで側壁部74bが設けられる。
このように形成すると受圧部材74の熱容量は大きくなるものの、受圧部材74の側壁部74bの有する弾性により、受圧部材74が強固に位置固定されるとともに、熱膨張によって受圧部材74に歪み、捻れが生じても、受圧部材74は、固定されるべき正規の位置を確実に維持する。従って、定着不良やシートSの搬送不良を無くすことが可能となる。
このようにして、スリーブ形状であって、回転可能となっている加熱部材72と、加熱部材72内に配された発熱源77と、加熱・加圧するためシートSを通過させるニップを形成するように加熱部材72と圧接されるとともに回転駆動する加圧部材73と、加熱部材72と加圧部材73が形成するニップにおいて加圧部材73の圧力を受けるため加熱部材72の内側に加熱部材72と接して設けられる受圧部材74と、受圧部材74の位置を固定するための固定部材75を備えた定着装置1において、受圧部材74は、加熱部材72の軸線方向に沿うように側壁部74bを備えるとともに、弾性変形されながら固定部材75に固定され、固定部材75は、側壁部74bの長手方向における面が、固定部材75と接することで、側壁部74bの弾性力を受け止めるようにすれば、受圧部材74は、弾性変形されながら固定部材75に固定されるから、受圧部材74が強固に固定され、受圧部材74が固定されるべき正規位置から移動し難いものとでき、又、受圧部材74の位置決めが容易となる。
更に、固定部材75は、受圧部材74の側壁部74bの軸線方向における面が、固定部材75と接することで、側壁部74bの弾性力を受け止める。これにより、定着装置1が暖められることで受圧部材74が熱で膨張し、受圧部材74に歪み、ねじれ、膨らみ等の変形が生じ、受圧部材74が固定されるべき正規の位置から移動しようとしても、固定部材75に押し当てられた側壁部74bが変形し、一定以上には受圧部材74が正規位置から移動しないようにするとともに、受圧部材74が正規位置に戻るように押し戻す。即ち、側壁部74bの弾性力で受圧部材74の熱膨張による歪み等の変形が吸収され、受圧部材74は正規位置を維持する。
従って、受圧部材74の熱膨張による加熱部材72の回転の歪み発生が防がれる。そうすると、加熱部材72における皺や傷が生じなくなることで、定着不良がなくなり、又、加熱部材72、定着装置1の長寿命化を図ることができる。又、加熱部材72と加圧部材73のニップにおける圧力の不均衡もなくなるからシートSの搬送不良も防ぐことができる。
又、加熱部材72と加圧部材73が形成するニップ部分において、加熱部材72内に、受圧部材74よりも内側であって、受圧部材74と接し加圧部材73の圧力を受け止めるための補強部材76を設けるようにすれば、加圧部材73から加熱部材72への圧力を受圧部材74だけで受けなくてもよくなり、受圧部材74の強度を下げることが可能となる。即ち、受圧部材74の大きさを小さく、厚さを薄くすることができ、受圧部材74の熱容量を従来よりも小さくすることができる。従って、受圧部材74に熱を奪われることを少なくでき、定着装置1を暖めるためのウォーミングアップ時間を短縮することができ、高速で連続して定着を行っても、定着不良の発生を防ぐことができる。
又、側壁部74bは、加熱部材72のシート通過領域F外に設けられるようにすれば、側壁部74bは、加熱部材72のシート通過領域F外に設けるから、シート通過領域Fにおける受圧部材74の熱容量を小さくでき、側壁部74bが発熱源77からの熱を吸収し、又、加熱部材72の熱を奪い難いものとできる。従って、定着装置1を暖めるためのウォーミングアップ時間を短縮することができ、高速で連続して定着を行っても、定着不良の発生を防ぐことができる。
又、画像形成装置2において、上記いずれかの定着装置1を備えるようにすれば、定着不良がない画像形成装置2が提供され、形成される画像の品質が高く、安定する。又、定着装置1を通過したシートSに皺が入ることや、シートSが詰まってしまうようなシートSの搬送不良のない画像形成装置2を提供できる。又、定着装置1を暖めるための時間を短縮でき使用者の利便性が向上した画像形成装置2を提供できる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。